<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態について詳細に説明する。各図面を通して同一の符号は、同一又は対応する部分を示している。なお、本実施形態では、主にトナー像(トナー画像)の形成及び転写に係る主要部について説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施可能である。
[画像形成装置]
まず、図1を参照して、本実施形態における画像形成装置について説明する。図1は、本実施形態におけるタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタ等の画像形成装置50の概略構成を示す概略断面図である。
図1に示すように、画像形成装置50は、装置本体50aを有している。装置本体50aには、画像形成装置50の各部を制御する、ROM、RAM及びCPUを有する制御部45が内蔵されている。この制御部45には、後述する駆動モータ41を介して接続された一次転写接離機構30や、図示しない他の駆動機構等が接続されている。
画像形成装置50では、トナー像の形成は、像担持体(感光体)としての感光ドラム1(1a〜1d)、帯電手段としての帯電ローラ2(2a〜2d)、露光手段としての露光ユニット3、現像手段としての現像ユニット4(4a〜4d)などにより行なわれる。
以下、例えば、感光ドラムを個々にいう場合は感光ドラム1a,1b,1c,1dのように表記し、感光ドラムを総称していう場合は感光ドラム1のように表記する。このことは、他の部分においても同様である。
[トナー像の形成プロセス]
各感光ドラム1a,1b,1c,1dの周囲には、各回転方向に沿って順に、感光ドラム表面を均一に帯電する帯電ローラ2a,2b,2c,2dと、画像情報に基づきレーザを照射して感光ドラム上に静電潜像を形成する露光ユニット3とが配置される。現像ユニット4a,4b,4c,4dと、感光ドラム上のトナー像を、被移動体としての中間転写ベルト12eに一次転写する一次転写ローラ12a,12b,12c,12dとが配置される。現像ユニット4a〜4dは、感光ドラム上の静電潜像にトナーを付着させトナー像として顕像化する。更に、一次転写後に感光ドラム表面に残った転写後トナーを除去するクリーニング手段8(8a,8b,8c,8d)などが配置される。
一次転写ローラ12a〜12dは、ステッピングモータ等のパルスモータからなる駆動モータ41の駆動により、被移動体としての中間転写ベルト12eを、感光ドラム(像担持体)1a〜1dに対する異なる3つの配置(位置)に移動可能に構成される。パルスモータからなる駆動モータ41は、駆動信号のパルス数に基づいて双方向に回転駆動可能に構成される。上記3つの配置等に関しては、後述する。
帯電ローラ2及びクリーニング手段8は、クリーニングユニット5(5a,5b,5c,5d)として一体的にユニット化されている。感光ドラム1、クリーニングユニット5及び現像ユニット4等は、プロセスカートリッジ7(7a,7b,7c,7d)として一体的にカートリッジ化されている。
プロセスカートリッジ7a〜7dはそれぞれ、装置本体50aに対して挿入及び引き抜き可能(着脱可能)となるように構成されている。これら4個のプロセスカートリッジ7a〜7dは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)のトナーを用いて異なる色の画像を形成する点で相違しているが、基本的な構成は同じである。
現像ユニット4a,4b,4c,4dはそれぞれ、現像ローラ24a,24b,24c,24dと、現像剤塗布ローラ25a,25b,25c,25dと、トナー容器(不図示)とを有している。トナー容器には、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色のトナーが収納されている。
クリーニングユニット5a,5b,5c,5dは、感光ドラム(像担持体,感光体)1a,1b,1c,1dと、帯電ローラ2a,2b,2c,2dと、クリーニング手段8a,8b,8c,8dと、転写残トナー回収容器(不図示)とを有している。
感光ドラム1a〜1dはそれぞれ、アルミニウム製シリンダの外周面に、有機光導伝体層(OPC)を塗布して構成されており、その両端部がフランジによって回転可能に支持されている。感光ドラム1a〜1dの各一方の端部に駆動モータ(不図示)から駆動力が伝達されると、感光ドラム1a〜1dは、図1中の矢印で示す時計回り方向に回転駆動される。
帯電ローラ2a〜2dはそれぞれ、ローラ状に形成された導電性ローラからなる。この導電性ローラを、感光ドラム1a〜1dの各表面に当接させると共に、電源回路(不図示)から帯電電圧が印加されることで、感光ドラム1a〜1dの各表面が一様に帯電される。また、露光ユニット3は、プロセスカートリッジ7a〜7dの鉛直方向の下方に配置されており、画像信号に基く露光を各感光ドラム1a,1b,1c,1dに対して行う。
現像ローラ24a〜24dはそれぞれ、感光ドラム1a〜1dの各表面に隣接して配置されており、駆動部(不図示)により回転駆動されると共に、電圧が印加されことにより、感光ドラム1a〜1dの各表面を現像する。
以上の構成により、感光ドラム1a〜1dの各表面に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)のトナー像がそれぞれに形成される。感光ドラム1a〜1dの各表面に形成されたトナー像は、順次、中間転写ベルト(被移動体)12eの表面に一次転写される。その後、感光ドラム1a〜1dの各表面に残ったトナーは、対応するクリーニング手段8a〜8dによってそれぞれ除去され、クリーニングユニット5a〜5d内の転写残トナー回収容器(不図示)に回収される。
[記録材への転写及び定着プロセス]
装置本体50aの下部には、記録材Sを収納する給紙カセット11が配置されている。給紙カセット11は、装置本体50aの手前方向(図1中における装置本体50aの左側)に引き抜くことが可能に装着されている。ユーザーは、給紙カセット11を引き抜いて装置本体50aから引き出した後、この給紙カセット11内に記録材Sを収納積載してセットし、装置本体50aに挿入することで、記録材Sの補給を行なうことができる。
画像形成時には、記録材Sが給紙装置13の給紙ローラ9によって給紙カセット11から送り出され、搬送ローラ対10を介してレジストローラ対17に搬送される。給紙装置13は、半月状の給紙ローラ9、分離手段23、及び、記録材Sを挟持搬送する搬送ローラ対10を有する。搬送ローラ対10の下流には、レジストローラ対17が配置されている。
給紙ローラ9は、給紙カセット11に収納された記録材Sに当接可能に配置されており、制御部45による所定の制御タイミングで回転させられて記録材Sを送り出す。送り出された記録材Sは、分離手段23で一枚ずつに分離されて、下流の搬送ローラ対10に送り出される。その後、記録材Sは、搬送ローラ対10によりレジストローラ対17に搬送され、レジストローラ対17で一旦停止された後、所定のタイミングで二次転写部15に送り出される。
一方、中間転写ユニットとしての中間転写ベルトユニット12では、一次転写プロセスにより形成された中間転写ベルト12eにトナー像が担持され、このトナー像が中間転写ベルト12eにより二次転写部15まで搬送される。この中間転写ベルト12e上の4色のトナー像が、レジストローラ対17により搬送されてきた記録材Sに対し、タイミングを合わせて、二次転写ニップ部からなる二次転写部15で二次転写される。つまり、二次転写部15では、二次転写外ローラ16にバイアスが印加され、中間転写ベルト12e上のトナー像が、二次転写部15に搬送されてきた記録材上に二次転写される。
中間転写ベルト12e表面における二次転写内ローラとしての駆動ローラ12fと対向する位置には、上記二次転写外ローラ16が配設されている。この二次転写外ローラ16は、装置本体50aに対して着脱可能に構成された二次転写ユニット61に設けられている。二次転写外ローラ16は、駆動ローラ12fとの間に中間転写ベルト12eを挟持し、二次転写外ローラ16と中間転写ベルト12eとの間には、上記二次転写部15が形成されている。
二次転写部15の下流に配置される定着装置14は、加熱体14cが内部に配置された定着ベルト14aと、定着ベルト14aに加圧されて定着ベルト14aとの間に定着ニップ部Nを形成する加圧ローラ14bとを備えている。定着ベルト14aは、無端円筒状のベルトからなり、その外周面が記録材上のトナー像面側に位置している。加熱体14cは、定着ベルト14aの内側に配置されており、加圧ローラ14bが定着ベルト14aを介して圧接されている。
この定着装置14では、加圧ローラ14bが駆動手段(不図示)により回転駆動されると、それに伴なって定着ベルト14aが連れ回り回転(従動回転)し、加熱体14cにより定着ベルト14aが加熱される。二次転写部15から搬送された記録材Sが、定着ベルト14aと加圧ローラ14b間の定着ニップ部Nに挟持されて搬送されると、トナー像は定着ニップ部Nで加熱及び加圧されて記録材上に定着される。
定着装置14の下流には、排紙ローラ対20が配置されている。定着装置14で定着された記録材Sは、排紙ローラ対20を介して装置本体50a上部の排紙トレイ100に排出される。
[中間転写ベルトユニット]
次に、図1及び図2を参照して、本実施形態における中間転写ベルトユニット12について説明する。なお、図2は、中間転写ベルトユニット12の着脱方向(矢印Rの方向)が分かるように画像形成装置50の全体を描いた斜視図である。
本実施形態における中間転写ベルトユニット12は、装置本体50aに対して着脱可能なユニットとして構成されている。この中間転写ベルトユニット12は、図2に示すように、装置本体50aに対して矢印Rの方向において着脱可能となるように構成される。装置本体50aの一側部(図1、図2の右側部)には、装置本体50aに対して開閉可能に支持された開閉ドア50bが支持されている。
図2に示すように、開閉ドア50bを開放した状態で中間転写ベルトユニット12を装置本体50aに着脱する際に、中間転写ベルトユニット12を着脱方向(矢印R方向)においてガイドするガイド部62が着脱方向の両側に設けられている。ガイド部62の手前側には、中間転写ベルトユニット12側に備えた後述の被駆動カップリング47のその付勢力に抗して押し戻しながらガイド部62に案内する傾斜案内面62aが形成されている。この傾斜案内面62aは、図2における手前側に位置する不図示のガイド部62にも形成されている。また、一側のガイド部62の奥側には、装置本体側に搭載された後述の駆動カップリング46が突出した状態に配置されている。
中間転写ベルトユニット12は、中間転写ベルト12e、二次転写内ローラとしての駆動ローラ12f、従動ローラ12g、一次転写手段である一次転写ローラ12a〜12d、及びクリーニング装置22を有している。更に、中間転写ベルトユニット12は、一次転写接離機構30(図3も参照)を有している。無端ベルト状の中間転写ベルト12eは、複数のローラである駆動ローラ12fと従動ローラ12gとによって周方向に回転可能となるように張架されている。
従動ローラ12gは、付勢手段(不図示)によって図1の矢印E方向に付勢されて、中間転写ベルト12eに所定の張力(テンション力)を付与している。中間転写ベルト12eは、駆動ローラ12fがモータ(不図示)の駆動力を受けて回転駆動することにより、図1の矢印F方向に所定の速度で回転させられる。
一次転写ローラ12a〜12dは、それぞれ、感光ドラム1a〜1dの対応するものに対向するように中間転写ベルト12e内周側に配設されて、圧縮コイルバネ等の付勢部材31(図3参照)により対応する感光ドラム側に付勢されている。一次転写ローラ12a〜12dにそれぞれ一次転写バイアス電圧が印加されることで、感光ドラム1a〜1dの各表面に形成されたトナー像は、中間転写ベルト12e上に順次、一次転写される。このように、中間転写ベルト上に4色のトナー像が重ねて一次転写されると、そのトナー像は、中間転写ベルト12eによって二次転写部15まで搬送される。
中間転写ベルト上のトナー像が二次転写部15で記録材Sに二次転写されると、中間転写ベルト12e上に残った転写残トナーは、クリーニング装置22で除去される。そして、除去された転写残トナーは、転写残トナー搬送路(不図示)を経由して、装置本体50a内に配設された転写残トナー回収容器(不図示)に回収される。
中間転写ベルトユニット12は、一次転写接離機構30の作動で、カラー画像形成時に中間転写ベルト12eを介して感光ドラム1a,1b,1cに当接していたY、M、Cの一次転写ローラ12a,12b,12cが感光ドラム1a〜1cから離間される。これは、モノクロモード(Bk単色モード)での画像形成時には使用されない感光ドラム1a〜1cが感光ドラム1a〜1cと摺擦することを回避して、感光ドラム1a〜1cの寿命を延ばすために行われる。
さらに、一次転写接離機構30は、Y、M、Cに対応する一次転写ローラ12a,12b,12cの離間構成とは独立して動作する、Bkに対応する一次転写ローラ12dの離間構成を有している。これは、上記ベルトユニット12や上記カートリッジ7a〜7dのメンテナンスのために夫々を装置本体50aに対し着脱する際に、中間転写ベルト12eと感光ドラム1dとの間で褶擦による傷等を回避し、画像不良の原因にならないようにするためである。
[一次転写接離機構の詳細]
次に、図3、図4及び図5を参照して、本実施形態における一次転写接離機構30の詳細について説明する。なお、図3は、本実施形態に係る一次転写接離機構30を示す概略斜視図(位相Gを含む)、図4は、一次転写接離機構30を示す概略斜視図(位相Hを含む)、図5は、一次転写接離機構30を示す概略斜視図(位相Lを含む)である。なお、これら図3〜図5では、中間転写ベルト12eを、透視した状態で描いている。
一次転写接離機構30は、図3〜図5に示すように、スライド部材33a,33b,33c,33d、及び、カム部材34a,34b(図6(a)参照),34c(図6(b)参照),34dを有している。図6(a)、図7(a)及び図8(a)に示すように、カム部材34aとカム部材34bは、対称形状で同じ位相となるようにカム軸32の両端部にそれぞれ固定されている。図6(b)、図7(b)及び図8(b)に示すように、カム部材34cとカム部材34dは、対称形状で同じ位相となるようにカム軸32の両端部にそれぞれ固定されている。
カム軸32は、駆動モータ41の回転を受けて回転可能となるように支持された状態で、中間転写ベルトユニット12の幅方向(中間転写ベルト12eの幅方向)に延設されている。このカム軸32には、伝達ギア列49(図10参照)を介して被駆動カップリング47からの回転が伝達される。なお、カム軸32、カム部材(回転部材)34a〜34d、被駆動カップリング47及び伝達ギア列49等により、駆動モータ41の回転駆動で中間転写ベルト12eを感光ドラム1a〜1dに対する異なる3つの配置に変更可能な移動機構が構成される。
図3〜図5に示すように、一次転写ローラ12a,12b,12cの両端部にはスライド部材33a,33bがそれぞれ配設され、また、一次転写ローラ12dの両端部にはスライド部材33c,33dがそれぞれ配設されている。スライド部材33a,33b、及びスライド部材33c,33dは、中間転写ベルトユニット12の幅方向で所定の間隔をあけて互いに平行となるように配置されている。そして、スライド部材33a,33b及びスライド部材33c,33dはそれぞれ、不図示のスライド機構によって、図3の左右方向に移動可能となるように支持されている。
対を成すスライド部材33a,33bは、対を成すカム部材34a,34bの回転によって図3の矢印Q方向(中間転写ベルト12eの周方向)に移動させられる。対を成すスライド部材33c,33dは、対を成すカム部材34c,34dの回転によって図3の矢印Q方向に移動させられる。カム部材34a,34b,34c,34dは、それぞれ、断面円形状のカム軸32を中心として半径方向に90゜の範囲で広がる扇形状に形成されている。スライド部材33a〜33dが矢印Q方向にそれぞれに移動することで、一次転写ローラ12a,12b,12cの各感光ドラム1a,1b,1cに対する接離位置や、一次転写ローラ12dの感光ドラム1dに対する接離位置が変更される。
[スライド部材とカム部材の動作]
次に、スライド部材33a〜33d及びカム部材34a〜34dの動作について、図3〜図5、並びに、図6(a),(b)、図7(a),(b)及び図8(a),(b)を参照して詳細に説明する。
ここで、図3は図6(a),(b)と、図4は図7(a),(b)と、図5は図8(a),(b)と、それぞれに対応している。なお、図6(a),(b)は、カラー画像形成時(フルカラーモード時、全当接配置)のカム部材34a〜34d及びスライド部材33a〜33dの動作を説明した図である。図7(a),(b)は、モノクロ画像形成時(モノクロモード時、一部当接配置)のカム部材34a〜34d及びスライド部材33a〜33dの動作を説明した図である。図8(a),(b)は、全離間時(全離間モード時、全離間配置)のカム部材34a〜34d及びスライド部材33a〜33dの動作を説明した図である。
上記フルカラーモード(全当接配置)では、複数の像担持体である感光ドラム1a〜1dの全てに中間転写ベルト(被移動体)12eを当接させる。上記モノクロモード(一部当接配置)では、感光ドラム1a〜1dのうちの一部(感光ドラム1d)に中間転写ベルト12eを当接させる。上記全離間モード(全離間配置)では、感光ドラム1a〜1dの全てから中間転写ベルト12eを離間させる。制御部(制御手段)45は、駆動モータ(パルスモータ)41の駆動制御により、フルカラーモード(全当接配置)と、モノクロモード(一部当接配置)と、フルカラーモード(全当接配置)とを切換える。
スライド部材33a,33bは、カム軸32に対応する部分に、カム部材34a,34bをそれぞれ挿入可能な矩形状の空間を有する係合部33S1を備えている。また、スライド部材33c,33dは、カム軸32に対応する部分に、カム部材34c,34dをそれぞれ挿入可能な矩形状の空間を有する係合部33S2を備えている。
そして、スライド部材33a,33bは、係合部33S1に挿入されているカム部材34a,34bの回転動作に追従するように、不図示の付勢部材で図6(a)の右方向に常時付勢されている。また、スライド部材33c,33dは、係合部33S2に挿入されているカム部材34c,34dの回転動作に追従するように、不図示の付勢部材で図6(b)の右方向に常時付勢されている。
[フルカラーモード時]
カラー画像形成時には、図3におけるカム部材34a,34bが、後述する駆動伝達装置40からカム軸32に動力を伝達されることで、図6(a)に示す位相Gの状態となり、スライド部材33a,33bが図6(a)に示す位置Jの状態に保持される。これにより、スライド部材33a,33bの各爪部38から一次転写ローラ12a,12b,12cの各軸方向両端部が解放され、付勢部材31により加圧されることで、中間転写ベルト12eを介して感光ドラム1a,1b,1cにそれぞれ当接する。
同時に、図3におけるカム部材34c,34dが、カム軸32の回転で図6(b)に示す位相Gの状態となり、スライド部材33c,33dが図6(b)に示す位置Jの状態に保持される。これにより、スライド部材の爪部39から一次転写ローラ12d軸方向両端部が解放され、付勢部材31により加圧されることで、中間転写ベルト12eを介して感光ドラム1dに当接する。
以上より、カラー画像形成時には、一次転写ローラ12a,12b,12c,12dが、中間転写ベルト12eを介して対応する感光ドラム1a,1b,1c,1dにそれぞれ当接した全当接状態となる。
[モノクロモード時]
モノクロ画像形成時には、図4におけるカム部材34a,34bがカム軸32の回転で図7(a)の反時計回り方向(矢印Cの方向)に90°回転し、同図に示す位相Hの状態となり、スライド部材33a,33bが同図に示す位置Kの状態に保持される。つまり、スライド部材33a,33bの係合部33S1が、回転するカム部材34a,34bの形状に追従することで、スライド部材33a,33bは矢印D方向にそれぞれ所定距離だけ移動する。
これにより、Y、M、Cに対応する一次転写ローラ12a,12b,12cの各軸方向両端部が、スライド部材33a,33bの各爪部38により、付勢部材31の付勢力に抗して感光ドラム1a,1b,1cから離間する方向に持ち上げられる。このため、一次転写ローラ12a,12b,12cが、対向する感光ドラム1a,1b,1cから離間した状態に保持される。
同時に、図4におけるカム部材34c,34dも、カム軸32の回転で図7(b)の位相Hの状態となるが、カム部材34c,34dは、扇形状における円形状の先端を係合部33S1に沿わせている。このため、スライド部材33c,33dは矢印D方向に移動することなく、図6(a)と同じ位置Jに保持される。これにより、Bkに対応する一次転写ローラ12dは、その対応する感光ドラム1dに当接した状態に維持される。
以上より、モノクロ画像形成時には、一次転写ローラ12a〜12cが、中間転写ベルト12eの内周面から退避して中間転写ベルト12eを感光ドラム1a〜1cから離間させ、一次転写ローラ12dを感光ドラム1dに当接させた状態となる。
[全離間モード時]
全離間時には、図5におけるカム部材34a,34bがカム軸32の回転で図8(a)の反時計回り方向に90°回転し、同図に示す位相Lの状態となるが、スライド部材33a,33bは、図7(a)と同じ位置Kの状態に保持される。つまり、スライド部材33a,33bの係合部33S1が、回転するカム部材34a,34bの形状に追従するが、カム部材34c,34dは、カム軸32と同心の部分に係合部33S1に沿わせるだけである。
このため、スライド部材33c,33dは矢印D方向に移動することなく、図7(a)と同じ位置Kに保持される。これにより、Y、M、Cに対応する一次転写ローラ12a,12b,12cが、上述と同様に、対向する感光ドラム1a,1b,1cから離間した状態に保持される。
同時に、図8におけるカム部材34c,34dがカム軸32の回転で図8(b)の位相Lの状態となるため、カム部材34c,34dの円形状の先端が係合部33S1から離れて回転する。これにより、スライド部材33c,33dは矢印D方向に移動して、位置Kとなる。このため、一次転写ローラ12dが、対向する感光ドラム1dから離間した状態に保持される。
以上より、全離間時には、一次転写ローラ12a,12b,12c,12dが、対応する感光ドラム1a,1b,1c,1dから全て退避して、中間転写ベルト12eを感光ドラム1a,1b,1c,1dから離間させた全離間状態となる。
[駆動カップリングを備えた駆動伝達装置]
次に、図9を参照して、本実施形態に係る駆動伝達装置40について詳細に説明する。なお、図9は、本実施形態における駆動伝達装置40を示す概略斜視図である。
図9に示すように、駆動伝達装置40は、制御手段としての制御部45と、制御部45の制御で駆動されるパルスモータ(ステッピングモータ)等からなる駆動モータ41を有している。また、駆動伝達装置40は、駆動モータ41の回転軸41aに固着されたピニオン41bを有している。更に駆動伝達装置40は、ピニオン41bに噛合する伝達ギア42と、伝達ギア42に噛合するフラグギア43と、フラグギア43のフラグ部(遮光部)43aを検知するセンサ44とを有している。そして、上記ピニオン41b、伝達ギア42及びフラグギア43は、回転軸41a、回転軸42c及び回転軸43cの各軸方向が互いに平行となるように支持されている。
なお、フラグ部43aは、駆動モータ(パルスモータ)41の所定の回転位置を示すフラグを構成し、センサ44は、フラグ部43aを検知する検知部を構成する。フラグ部(フラグ)43aは、中間転写ベルト(被移動体)12eの配置に同期して回転し、移動機構(32,34a〜34d,47,49)に設けられたカム部材(回転部材)34a〜34dの特定の回転位相の範囲に対応する位置に配置される。
また制御部45は、第1の停止モードと第2の停止モードとのいずれかを使って移動機構(32,34a〜34d,47,49)を制御する。第1の停止モードは、中間転写ベルト(被移動体)12eを異なる3つの配置のうち一の配置から他の配置に変更する際に、センサ(検知部)44の検知に基づいて移動機構を停止させるモードである。第2の停止モードは、駆動モータ(パルスモータ)41への駆動信号のパルス数に基づいて移動機構を停止させるモードである。
制御部45は、中間転写ベルト(被移動体)12eの3つの配置のうち第2又は第3の配置から第1の配置に変更するときは前記第1の停止モードを使う。また制御部45は、第1又は第3の配置から第2の配置に変更するとき、及び第1又は第2の配置から第3の配置に変更するときは前記第2の停止モードを使う。制御部45は、少なくとも第2の配置と第3の配置との間の配置の変更を駆動モータ41の一方向の回転駆動のみで行うように移動機構(32,34a〜34d,47,49)を制御する。
また、装置本体50a側には、駆動カップリング46が配置されている。中間転写ベルトユニット12における、着脱時に駆動カップリング46と対向可能となる位置には、被駆動カップリング47(図10参照)が配置されている。駆動カップリング46は、ギア部43bと軸方向で反対側の位置となるように、フラグギア43の回転軸43cに取り付けられている。
伝達ギア42は、ピニオン41bに噛合する大径ギア42aと、大径ギア42aより小径の小径ギア42bとを同軸状に備えている。フラグギア43は、小径ギア42bに噛合する大径のギア部43bと、ギア部43bから軸方向に断面円弧状に突出するフラグ部(遮光部)43aとを有している。駆動モータ41の回転が、ピニオン41bから大径ギア42aに伝達されて伝達ギア42が回転させられ、小径ギア42bからギア部43bに伝達されてフラグギア43が回転させられ、フラグギア43と共に駆動カップリング46が同方向に回転させられる。
センサ44は、発光部44aと受光部44bとを有し、発光部44aと受光部44b間の隙間44cにフラグ部43aが進入し、隙間44cを投・受光される光を遮光状態と透光状態に切換えることで検知信号を出力するフォトインタラプタ型センサである。センサ44は、隙間44cにフラグ部43aが進入するとフラグ部43aを検知して制御部45にフラグON信号を送信し、隙間44cにフラグ部43aが進入しないときにはフラグ部43aを検知しない。
[被駆動カップリングを備えた伝達ギア列]
中間転写ベルトユニット12側には、図10に示す、被駆動カップリング47と、付勢部材48と、駆動カップリング46から被駆動カップリング47に伝達された回転をカム軸32に伝達する伝達ギア列49とが配設されている。この伝達ギア列49は、ギア49a,49b,49c,49dから構成される。駆動カップリング46に連結可能な被駆動カップリング47は、同軸状に固定されたギア58にその回転を伝達し、このギア58の回転が伝達ギア列49を介して、ギア49dに連結されたカム軸32に伝達される。
ギア58は、圧縮コイルバネからなる付勢部材48によって矢印Bの方向に、即ち装置本体50a側に向って付勢されている。被駆動カップリング47は、中間転写ベルトユニット12が装置本体50aに装着された状態で駆動カップリング46と対向するように配置されている。
被駆動カップリング47は、装置本体50aへの中間転写ベルトユニット12の装着時に(図2参照)、傾斜案内面62aからガイド部62に案内される際の押圧力で、被駆動カップリング47が付勢部材48に抗して矢印Mの方向に押し込まれる。そして、中間転写ベルトユニット12が適正に装着されると、この時点で被駆動カップリング47がガイド部62から解放されて付勢部材48の付勢力で突出して駆動カップリング46に噛み合う。これにより、被駆動カップリング47は、駆動カップリング46を介して駆動モータ41の回転が伝達されて回転する。
[フラグ部とセンサ位置との関係]
次に、図9、図15及び図17を参照して、フラグ部43aとセンサ44との位置関係について説明する。なお、図15は、本実施形態に係る駆動伝達装置40のフラグ部43aとセンサ44との各動作を示す模式図である。図17は、本実施形態に係るフラグギア43の回転位置を示す、図9の矢印U方向から見た状態の模式図である。図15も、図9の矢印U方向から見た状態で示している。
図15に示す符号Aは、フルカラーモード時(カラー画像形成時)のフラグ部43aとセンサ44との位置関係を示している。この状態Aは、一次転写接離機構30における前述したカム部材34a〜34dの位相G(図3、図6(a),(b)参照)に対応する。この際、中間転写ベルトユニット12では、図3及び図6に示すように、カム部材34a,34b及びカム部材34c,34dがそれぞれ位相Gとなるため、スライド部材33a,33b及びスライド部材33c,33dはそれぞれ位置Jに保持される。
ここで、図17では、フラグギア43のフラグ部43aが、実線で示す位相Gにあり、円周方向の幅(円弧長)がWとされる。フラグ部43aの円弧長をWとする場合、駆動モータ41の駆動でフラグ部43aが図17の反時計回り方向(CCW方向)に回転させられるとき、フラグ部43aが位相Gから位相Hまでの回転に要する時間をT1とする。また、駆動モータ41の駆動でフラグ部43aが図17の時計回り方向(CW方向)に回転させられるとき、フラグ部43aが位相Hから位相Gまでの回転に要する時間をT2とする。また、駆動モータ41の駆動でフラグ部43aが図17の反時計回り方向(CCW方向)に回転させられるとき、フラグ部43aが位相Hから位相Lまでの回転に要する時間をT3とする。
次いで、上記状態Aから、フラグギア43が駆動モータ41の更なる回転で図15の反時計回り方向(CCW方向)に回転すると、図15における符号Bの状態となる。この状態Bは、一次転写接離機構30における前述したカム部材34a〜34dの位相H(図4、図7(a),(b)参照)に対応する。ここで、図17では、フラグ部43aは、円弧長Wの中心が時間T1進んで破線の位相Hに移動している。
この際、中間転写ベルトユニット12では、図4及び図7に示すように、カム部材34a,34b及びカム部材34c,34dが位相Hとなる。しかし、前述したように、スライド部材33a,33bは位置Kに移動するが、スライド部材33c,33dは位置Jに留まる。これにより、中間転写ベルトユニット12は、モノクロモード(Bk単色モード)となる。
次いで、上記状態Bから、フラグギア43が駆動モータ41の更なる回転で図15の反時計回り方向(CCW方向)に回転すると、図15における符号Cの状態となる。この状態Cは、一次転写接離機構30における前述したカム部材34a〜34dの位相L(図5、図8(a),(b)参照)に対応する。ここで、図17では、フラグ部43aは、円弧長Wの中心が位相Hから時間T3進んで破線の位相Lに移動している。
この際、中間転写ベルトユニット12では、図5及び図8に示すように、カム部材34a,34b及びカム部材34c,34dが位相Hとなり、前述のように、スライド部材33a,33bは位置Kに留まり、スライド部材33c,33dは位置Kに移動する。これにより、中間転写ベルトユニット12は、全離間モードとなる。
次に、フルカラーモードからモノクロモードへの切換え動作について、図15、図17及び図18を参照して説明する。なお、図18は、フルカラーモードからモノクロモードへの切換えに係る制御フローを示すフローチャートである。
まず、制御部45の制御に応答する駆動モータ41が、フラグ部43aを図17の反時計回り方向(CCW方向)に回転するように駆動する(ステップS1)。フラグ部43aが隙間44cに進入してセンサ44がフラグOFF信号を出力することに基づき、制御部45がフラグOFFを検出すると(S2:Yes)、制御部45は、T1−W/2の時間経過を待って(S3:Yes)、駆動モータ41を停止する(S4)。
そして制御部45は、センサ44の検知に基づき、フラグOFFであるか否かを判断し(S5)、フラグOFFであれば(S5:Yes)処理を終了し、フラグOFFでなければ(S5:No)エラーとする(S6)。このエラーの発生時には、例えば、装置本体50aに設けられた操作部(不図示)に、「サービスへ連絡して下さい」等の文字をエラーコード(複数桁の番号)などと共に表示し、装置本体50aの動作を停止することが可能である。
次に、モノクロモードからフルカラーモードへの切換え動作について、図15、図17及び図19を参照して説明する。なお、図19は、モノクロモードからフルカラーモードへの切換えに係る制御フローを示すフローチャートである。
まず、制御部45の制御に応答する駆動モータ41が、フラグ部43aを図17の時計回り方向(CW方向)に回転するように駆動する(S11)。次いで、制御部45は、駆動モータ41の回転開始からT2の時間経過を待って(S12:Yes)、駆動モータ41を停止し(S13)、フラグ部43aが隙間44cに進入してフラグONになっていることを確認する(S14)。そして、制御部45は、フラグONであれば(S14:Yes)処理を終了し、フラグONでなければ(S14:No)エラーとする(S15)。
次に、フルカラーモードから全離間モードへの切換え動作について、図15、図17及び図20を参照して説明する。なお、図20は、フルカラーモードから全離間モードへの切換えに係る制御フローを示すフローチャートである。
まず、制御部45の制御に応答して駆動モータ41が、フラグ部43aを図17の反時計回り方向(CCW方向)に回転するように駆動する(S21)。次いで、制御部45は、フラグOFFを検知すると(S22:Yes)、T1+T3−W/2の時間経過を待って(S23:Yes)、駆動モータ41を停止し(S24)、フラグOFFになっていることを確認する(S25)。そして、制御部45は、フラグOFFであれば(S25:Yes)処理を終了し、フラグOFFでなければ(S25:No)エラーとする(S26)。
以上のように、本実施形態における制御部45は、一次転写ローラ12a〜12dを介して移動される被移動体としての中間転写ベルト12eの3つの位置を、次のように制御している。つまり、中間転写ベルト12eの感光ドラム1a〜1dに対する異なる3つの配置は、全当接配置、一部当接配置、全離間配置である。前述のように、全当接配置は、感光ドラム1a〜1dの全てと中間転写ベルト12eとが当接する配置である。一部当接配置は、感光ドラム1a〜1dのうちの一部(1d)と中間転写ベルト12eとが当接する配置である。全離間配置は、感光ドラム1a〜1dの全てと中間転写ベルト12eとが離間する配置である。
制御部45は、センサ44のフラグ部43aの検知に基づく第1の配置(例えば全当接配置(フルカラーモード))と、センサ44でフラグ部43aを検知せずに駆動モータ41への駆動信号のパルス数に基づく第2及び第3の配置とした際に以下の制御を行う。即ち、制御部45は、少なくとも第2の配置(例えば一部当接配置(モノクロモード))と第3の配置(例えば全離間配置(全離間モード))との間の配置の変更を駆動モータ41の一方向の回転駆動のみで行うように移動機構を制御する(図15参照)。
言い換えると、上記3つの配置は、第1の配置(例えば図15の状態A)、第2の配置(例えば図15の状態B)、第3の配置(例えば図15の状態C)である。第1の配置は、センサ44のフラグ部43aの検知に基づく位置であり、第2の配置と第3の配置は、センサ44でフラグ部43aを検知せずに駆動モータ41への駆動信号のパルス数に基づく位置である。この場合、制御部45は、少なくとも第2の配置と第3の配置との間の移動を駆動モータ41の一方向回転のみで行うように制御している。これにより、モード切換えや装置立ち上げ時間の長時間化を回避すると共に、ダウンタイムの長期化を抑止して生産性を高め、ユーザーストレスや装置短寿命化等の問題の発生の防止が可能になる。
制御部45は、第1の配置(例えば状態A)と第2の配置(例えば状態B)との間の中間転写ベルト12eの配置の変更を、駆動モータ41の双方向回転で行う。そして、第1の配置と第3の配置(例えば状態C)との間の配置の変更を、駆動モータ41の一方向回転で行うように制御する。これにより、図15における状態A→状態B→状態Cに駆動モータ41の一方向回転(反時計回り)だけで移行できるので、駆動モータ41からカム軸32までの間のギア等の所謂ガタを詰めるガタ詰めに貢献することができる。
或いは制御部45の制御を一部変更して、図16のように、実施することも可能である。即ち、第1の配置と第2の配置間の中間転写ベルト12eの配置の変更を駆動モータ41の双方向回転で行い、第1の配置と第3の配置間の配置の変更も駆動モータ41の双方向回転で行うように制御するのである。この場合、上記のようなガタ詰めに対する効果はやや低減するが、モード切換えや装置立ち上げ時間の長時間化を回避し、ダウンタイムの長期化を抑止して生産性を高めるなどの効果は同様に得ることができる。
[中間転写ベルトユニット着脱時の駆動連結機構]
次に、図10、図11〜図14を参照して、中間転写ベルトユニット12を装置本体50aに対して着脱する際に用いられるカップリング部について説明する。なお、図11(a)〜(d)は、カップリング部を示す概略図である。
中間転写ベルト12eは、装置本体50aに対する中間転写ベルトユニット12の着脱により、全離間モード時の全離間配置で装置本体50aに装着及び離脱可能に構成されている。この装置本体側には、上述の駆動モータ(パルスモータ)41が設けられている。そして、中間転写ベルト12eとの間に接続及び分離可能に設けられ、接続状態で駆動モータ41と中間転写ベルト12eとの間で動力伝達可能なカップリング部を有している。
即ち、中間転写ベルトユニット12は、中間転写ベルト12eと移動機構(32,34a〜34d,47,49)とを含み、装置本体50aに装着及び離脱可能に配置されている。カップリング部は、装置本体50a側に設けられた駆動モータ41と移動機構との間に設けられ、中間転写ベルト12eの感光ドラム1a〜1dに対する配置が全離間配置のときに駆動モータ41と移動機構との間の動力の伝達と解除の切換えを可能にする。
このカップリング部は、図10、図11〜図14に示すように、全離間配置で接続及び分離可能となる駆動カップリング46と被駆動カップリング47とを有している。これにより、中間転写ベルトユニット12を装置本体50a側のガイド部62(図2参照)に沿って挿入及び引抜き方向に移動させるだけで、このベルトユニット12を装置本体50aに対して極めて簡単且つ確実に脱着させることができる。
すなわち、駆動カップリング46及び被駆動カップリング47は、図11(a)に示すように、対向した状態で互いに噛み合い可能となるように、駆動カップリング46の方が被駆動カップリング47よりやや大径の円筒部材として構成される。
図10に示す駆動カップリング46と被駆動カップリング47との噛み合い状態(係合状態)では、図11に示す被駆動カップリング47の第2係合部47aが、駆動カップリング46の内周に設けられた傾斜面46e(図11(c))に接触している。そのため、中間転写ベルトユニット12を装置本体50aから引き抜く際には、着脱方向(図12の矢印Aの方向、図2の矢印Rの方向)において中間転写ベルトユニット12に引き抜く力が働くことにより、第2係合部47aが傾斜面46eに摺接する。
これにより、被駆動カップリング47に、付勢部材48による付勢方向(図10の矢印B方向)とは逆向きの矢印M方向に移動させる力が働く。このため、被駆動カップリング47は、駆動カップリング46から矢印M方向に一時的に退避し、第1係合部46bと第2係合部47aとの係合が解除されると、中間転写ベルトユニット12を装置本体50aから引き抜くことができる。
図11(c)に示すように、駆動カップリング46における傾斜面46eの内周側には、平坦状に形成された底部46aから「Tの字状」に突出するように第1係合部46bが形成されている。一方、図11(b)に示すように、被駆動カップリング47の駆動カップリング46と対向する側には、T字状の第1係合部46bを上下左右から挟み込むように係合可能な第2係合部47aが、平坦面47bの縁部から突出するように形成されている。そして、図11(d)に示すように、駆動カップリング46が例えば矢印L方向に回転すると、T字状の第1係合部46bの接触面46cが第2係合部47aに係合しながら、第2係合部47aを介して被駆動カップリング47を同じ方向に回転させる。
以下、カップリング部について、図12及び図13を用いて更に詳細に説明する。なお、図12(a)〜(c)は、中間転写ベルトユニット12が離脱開始する前のカップリング部の状態を示す概略図である。また、図13(a)〜(c)は、カップリング部の第1係合部と第2係合部の接触が解除された状態を示す概略図、図14(a)〜(c)は、カップリング部の回転軸間の距離を示す概略図である。
図12(a)及び図13(a)は、駆動カップリング46と被駆動カップリング47との係合の状態を示している。また、図12(b)及び図13(b)は、駆動カップリング46と被駆動カップリング47との係合の状態を、回転軸に直交する方向から見た状態で示す断面図である。さらに、図12(c)及び図13(c)は、駆動カップリング46と被駆動カップリング47との係合の状態を、回転軸方向から見た状態で示す図である。
中間転写ベルトユニット12が装置本体50aから離脱する前の状態では、図12(b)に示すようになっている。即ち、3つの第2係合部47aのうちで中間転写ベルトユニット離脱方向の最上流側に位置している第2係合部47a(以下、第2係合部47fと称する)と、第1係合部46bの接触面46cとの間には、回転方向で充分に隙間があるように構成されている。なぜならこのとき、フラグギア43は、位相Lの状態である(図5、図8参照)。前述したように、位相Lへの移行は、必ず位相HからのCCW方向の回転のみで行われるためである(図15、図16参照)。
装置本体50aから中間転写ベルトユニット12を、駆動カップリング46の回転軸Jに対して垂直な方向へ引き抜くと、このユニット12の離脱方向に働く力で、第2係合部47fが接触面46cに接近するように、被駆動カップリング47が回動する。このとき、被駆動カップリング47は、駆動カップリング46の回転軸Jと異なる位置であって駆動カップリング46と被駆動カップリング47とが接触している位置を回動の中心にしている。
図12(c)、図13(c)に示すように、第2係合部47fと第1係合部46bとの間に位置する第2係合部を、以下、第2係合部47hと称する。従って、第2係合部47hと接触面46cとが接触する位置kが回動の中心となる。
被駆動カップリング47が位置kを中心に回動開始すると、第2係合部47fは第1係合部46bの接触面46cに向かって近づくため、第2係合部47fと接触面46cとの間の隙間は減少する。被駆動カップリング47が回動すると、第2係合部47aの内で上記ベルトユニット12の離脱方向の最下流側に位置する第2係合部(以下、第2係合部47gという)が、傾斜面46eに沿って上記ベルトユニット12の離脱方向(矢印M方向)に移動する。
これにより、被駆動カップリング47が離脱方向(矢印M方向)に退避するため、図13(a)〜(c)に示すように、第1係合部46bと第2係合部47f,47g,47hとの噛み合いが解除される。つまり、第1係合部46bの接触面46cから、第2係合部47f,47g,47hの接触面が離間する。第1係合部46bと第2係合部47f,47g,47hとの係合が解除されるまで、被駆動カップリング47の回転軸Vが駆動カップリング46の回転軸Jに対してユニット離脱方向に移動する距離はβである。
次に、上記ベルトユニット12を駆動カップリング46の回転軸Jに対して垂直な方向に引き抜く際、ユニット離脱方向に働く力で、被駆動カップリング47の回転軸Vが回転軸Jよりも上記離脱方向に移動可能となる構造について説明する。
すなわち、図11(a)〜(d)から解るように、被駆動カップリング47には、駆動カップリング46が嵌るための十分な広さのある領域がある。これにより、駆動カップリング46と被駆動カップリング47とが噛み合って回転する際には、すき間ができることになる。
ここで、図14(a)〜(c)に示すように、被駆動カップリング47の回転軸Vが駆動カップリング46の回転軸Jに対してユニット離脱方向(矢印Aの方向)に移動可能な最大距離はαである。
本実施形態のカップリング部(46,47)では、距離αは距離βよりも大きくなるように構成されている。距離αが距離β以上であることによって、被駆動カップリング47が位置kを中心として回転する際に、第2係合部47fが第1係合部46bに接触する前に被駆動カップリング47のM方向への退避が完了する。
従って、本実施形態のカップリング部を用いた構成によると、上記ベルトユニット12を装置本体50aから引き抜くだけで、第1係合部46bと第2係合部47f,47g,47hとの係合を簡単に且つ確実に解除することができる。これにより、駆動カップリング46と被駆動カップリング47との噛み合いを簡単に解除することができる。これとは逆に、上記ベルトユニット12を装置本体50aのガイド部62に沿って挿入するだけで、このベルトユニット12を装置本体50aに対して極めて簡単且つ確実に装着することができる。
本実施形態では、図15で説明したように、一連のモード切換えにおいて駆動モータ41の動力でフラグギア43をCCW方向のみに回転させるが、モノクロモードからフルカラーモードへの切換え時のみには駆動モータ41をCW方向に回転させる。そして、センサ44の位置をフルカラーモードである位相Gに配置している。
その理由は、第2係合部47aと第1係合部46bの接触面41cとの間に、回転方向で十分な隙間を作り、中間転写ベルトユニット12を装置本体50aから容易に離脱可能にするためである。更に、切換え頻度の高いモノクロモードとフルカラーモードの切換えにおいて、センサ44をフルカラーモードの位相に配置しないでモータ回転方向を繰り返し切換えて最短な切換えを行おうとすると、フラグ部43aの停止位相のずれが累積する可能性が高い。この問題も回避するためである。
以下、本実施形態の構成を採用することで得られる効果について、図21(a),(b)に示す比較例を参照しながら説明する。
この比較例では、フラグギア43’を用いて、図21(a),(b)に示すように全離間モードのフラグ位置のときにセンサ44がフラグONとなる構成とされている。この構成で、フルカラーモードとモノクロモードの切換えをモータ回転方向を繰り返し切換えて行うと、フラグ部43aの停止位置のずれが累積されてしまう。
例えば、フルカラーモードの位相Gからモノクロモードの位相Hに切換える場合、外乱によって図20(a)のようにフラグ部43aの停止位置がずれると、次に位相Hから位相Gに戻る際には、位相Hではなく位相H’から動作を始めることになる。このため、位相Gで停止するときに更に外乱が生じると、ずれを助長するおそれがある。
このように停止位置のずれが累積すると、モノクロモードにも拘わらずカラー対応の一次転写ローラが回転して、装置の寿命低下を招いたり、全ての一次転写ローラが離間した状態で作像動作が開始されることによる白紙出力の問題を発生するおそれがある。
これに対し、本実施形態の構成によると、より最短に切換えを行うために駆動モータ41の回転方向を繰り返し切換えても、2回に1回はセンサ44でのフラグON検知を行うため、誤差の累積もなく動作させることができる。それにより、画像形成装置50の寿命を損なうことなく、生産性を向上させることが可能になる。
また、別の比較例として、誤差の累積を防止するために、フラグギアの全ての位相位置にそれぞれ別々の幅をもったフラグを配置することも考えられる。しかしこの場合は、全てのモードにおいてフラグON検知のため、モードを区別するのに必ずモータを回転させる必要があり、装置本体の電源ON時やリセット時にダウンタイムが長くなるといった問題が生じることになる。
本実施形態の構成によれば、ホームポジション(フルカラーモード)のみがフラグON検知のため、装置本体50aの電源ON時やリセット時に、フラグON検知でない場合のみ駆動モータ41を回転させればよいため、ダウンタイムの軽減が可能である。
<第2の実施形態>
次に、画像形成装置50の二次転写ユニット61に本発明を適用した第2の実施形態について、図22及び図23を参照して説明する。図22(a)は、本実施形態における二次転写外ローラを駆動ローラに当接させた状態の断面図、図22(b)は、二次転写外ローラを待機位置に移動させた状態の断面図である。図23は、本実施形態における二次転写外ローラを離間位置に移動させた状態の断面図である。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同一の部材には同一符号を付すと共に、構成、機能が同じものについてはその説明を省略することとする。
図22(a),(b)に示すように、装置本体50a(図1参照)に対して着脱可能な二次転写ユニット61には、二次転写外ローラ(転写ローラ)16、二次転写外ローラ16を移動させるローラ接離機構63、及び接離駆動ユニット68が備えられている。ローラ接離機構63は、駆動ローラ(二次転写内ローラ)12fに対向する位置となるように画像形成装置50の装置本体50aに支持された支持部材69を有している。支持部材69には、中央部分に位置するようにやや屈曲された形状の二次転写アーム53が配設されている。二次転写アーム53の中央部には、回動支持孔53aが形成されている。
支持部材69には、駆動ローラ12fに向かうように略直線状に形成された収納部64が形成されている。収納部64内には、ローラホルダ70が、駆動ローラ12fに近接する側に移動可能に且つ図22(a)に示す位置以上に駆動ローラ12f側に突出しないように規制された状態で収納されている。収納部64内におけるローラホルダ70の駆動ローラ12fと反対の側には、ローラホルダ70の後端部と底部64aとの間に、圧縮バネから成るホルダ付勢バネ52が縮めて設けられている。
ローラホルダ70は、図22(a),(b)の手前側に突出する突起部67を有している。この突起部67は、二次転写アーム53の回動支持孔53aに摺動可能に挿入されている。二次転写アーム53は、基端部を回動支持軸66で支持部材69に回動可能に支持され、自由端部に回転自在な円板状の被押圧部材65が支持されている。
上記構成により、二次転写外ローラ16は、回転軸51をローラホルダ70で保持された状態で、ホルダ付勢バネ52の付勢力によって駆動ローラ12fに当接(圧接)される。ローラホルダ70及び二次転写外ローラ16は、回動支持軸66を中心として回動可能に保持された二次転写アーム53により、駆動ローラ12fに向かう当接方向と駆動ローラ12fから離間する離間方向とに移動可能に構成される。二次転写外ローラ16は、当接方向に向かうと、中間転写ベルト12eを挟んだ形で駆動ローラ12fに圧接される。
支持部材69の被押圧部材65に対向する位置には、偏心カム54を支持するカム支持軸55が配置されている。中心位置をずらした状態でカム支持軸55により支持された偏心カム54に対し、被押圧部材65が、ホルダ付勢バネ52で中央部を付勢された二次転写アーム53を介して当接している。
本実施形態では、像担持体としての中間転写ベルト12eは、別の像担持体としての感光ドラム1a〜1dに担持されたトナー像が転写される。また、被移動体としての二次転写外ローラ(転写ローラ)16は、中間転写ベルト12eとの間で二次転写部(ニップ部)15を形成し、二次転写部15を通過する記録材Sに中間転写ベルト12eからトナー像を転写する。
そして、カム支持軸55は、偏心カム54を固定支持し且つ支持部材69に対して回転可能に支持された状態で、接離駆動ユニット68に備えられたパルスモータからなるモータ71の駆動で回転して、偏心カム54を回転させる。偏心カム54は、制御部45(図1参照)の制御で駆動するモータ71の駆動で回転することにより被押圧部材65との接触位置(接触する位相)を変化させることで、二次転写外ローラ16を、当接位置、待機位置(中間位置)、離間位置の間で移動させる。
つまり、二次転写外ローラ16の中間転写ベルト12eに対する異なる3つの配置は、当接位置、離間位置、待機位置(中間位置)である。当接位置は、二次転写外ローラ16と中間転写ベルト12eとが当接する配置である。離間位置は、二次転写外ローラ16を有する二次転写ユニット(転写ユニット)61が装置本体50a(図1参照)に対して着脱可能な位置であって二次転写外ローラ16と中間転写ベルト12eとを離間する配置である。待機位置(中間位置)は、離間位置と当接位置との間の配置である。
このように、制御手段としての制御部45は、モータ(パルスモータ)71の駆動制御により、当接位置と待機位置と離間位置とに切換えるように制御する。言い換えると、当接位置は、プリント(印刷)中に二次転写が実施されている際の位置であり、待機位置は、印刷中に中間転写ベルト上に基準トナーパターン(補正パッチ)が形成された際に離間する位置である。さらに、離間位置は、印刷中以外での離間位置である。待機位置は、補正パッチが通過した場合に二次転写外ローラ16側に付着しない最低限必要な離間量となっている。離間位置は、ジャム紙の処理性、或いはメンテナンスや輸送時の二次転写ユニット61の装置本体50aからの挿入及び引抜き性能(挿抜性)を考慮した離間量となっている。なお、本発明に係る第1の配置は「当接位置」に対応し、第2の配置は「待機位置(中間位置)」に対応し、第3の配置は「離間位置」に対応する。
以上の本実施形態における当接位置、待機位置及び離間位置は、それぞれ第1の実施形態における位相G、位相H、位相L(図15、図16参照)に対応している。このような本実施形態によっても、第1の実施形態と略同様の効果を得ることができる。