本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。まず、本実施形態の画像形成装置の概略の構成について説明する。ここでは、画像形成装置として、電子写真方式で画像を形成するタンデム型のカラーの複合機を例に挙げて説明する。
(1.画像形成装置の概略構成)
図1は、本実施形態に係る複合機100の概略の構成を模式的に示す断面図であり、図2は、複合機100における1つの画像形成部5を拡大して示す断面図である。本実施形態の複合機100は、正面上部に操作パネル1(図1では破線で図示、設定部に相当)を備えており、最上部に原稿搬送装置2、その下方に画像読取部3(スキャナ)を備えている。また、複合機100の本体内には、給紙部4a、搬送路4b、画像形成部5、中間転写部6、定着部6b等が設けられている。
操作パネル1は、印刷時の設定(例えば枚数、部数)や後述する感光体ドラム52の位相合わせの方式に関する設定(生産性優先の位相合わせ方式か、耐久性優先の位相合わせ方式かの設定)、印刷動作モードに関する設定(画質優先の印刷動作モードか、生産性優先の印刷動作モードかの設定)など、各種の設定を行うための設定部として機能しているとともに、各種の情報を表示する表示部としての機能も有している。本実施形態では、操作パネル1は、タッチパネル式の液晶表示部と、複数の押圧ボタンとで構成されており、液晶表示部は設定部および表示部として、押圧ボタンは設定部として機能している。なお、上記の押圧ボタンは、テンキー(0〜9の数字キー、#やC(クリア)などの記号キー)、機能選択キー(コピーモードやFAX送信モードなどの動作モード設定キー)、スタート、リセット、ストップの各種キーを含む。
原稿搬送装置2は、原稿の複写時、複数のローラの回転駆動で原稿載置トレイ21に積載された原稿を1枚ずつ、自動的、連続的に、画像読取部3の読み取り位置(送り読取用コンタクトガラス30)に向けて搬送する。原稿搬送装置2は、図1の紙面奥側に支点が設けられ持ち上げ可能であり、後述する載置読取用コンタクトガラス31に原稿を載置する場合には、原稿搬送装置2を持ち上げて原稿を載置した後、原稿搬送装置2を回動させて原稿を押さえることになる。
画像読取部3は原稿を読み取り、画像データを生成する。画像読取部3の上面には、送り読取用コンタクトガラス30と載置読取用コンタクトガラス31とが設けられおり、画像読取部3内には露光ランプ、ミラー、レンズ、イメージセンサ(例えばCCD)等の光学系部材(不図示)が設けられている。これらの光学系部材を用い、原稿搬送装置2が搬送する原稿や載置読取用コンタクトガラス31上の原稿に光を照射し、その原稿の反射光を受けたイメージセンサの各画素の出力値をA/D変換することにより、画像データが生成される。複合機100は、読み取りにより得られた画像データに基づき印刷を行うことができる(コピー機能)。
給紙部4aは、例えば、各種(コピー用紙、ラベル用紙等)、各サイズ(A判、B判用紙等)の用紙(シート)を収容する。給紙部4aに設けられる給紙ローラ41は、モータ等の駆動機構(不図示)により回転し、用紙を搬送路4bに送り出す。
搬送路4bは、給紙部4aから供給された用紙を排出トレイ42まで搬送する通路を構成している。搬送路4bには、ガイド板のほか、駆動部74(図3参照)等から駆動力の供給を受けて用紙を搬送する搬送ローラ対43〜45(図1では、上方のものから順に符号を付す)が設けられている。また、搬送路4bには、用紙を中間転写部6の手前で待機させ、タイミングを合わせて送り出すレジストローラ対46や、用紙を排出トレイ42に排出する排出ローラ対47等が設けられている。
画像形成部5は、形成すべき画像の画像データに基づき、トナー像を形成する部分であり、画像形成ユニット50と露光装置51とを有している。画像形成ユニット50は、4色分の画像形成ユニット、すなわち、図1左側から、ブラックの画像を形成する画像形成ユニット50Bkと、シアンの画像を形成する画像形成ユニット50Cと、マゼンタの画像を形成する画像形成ユニット50Mと、イエローの画像を形成する画像形成ユニット50Yとで構成されている。画像形成部5にて形成されたトナー像は、後述する中間転写ベルト62に一旦転写(1次転写)され、この中間転写ベルト62から用紙に転写(2次転写)される。
ここで、図2に基づき、各画像形成ユニット50Bk〜50Yの詳細について説明する。なお、各画像形成ユニット50Bk〜50Yは、形成するトナー像の色が異なるだけで、基本的に同様の構成である。そこで、図2では画像形成ユニット50の1色分のみを図示し、以下では、特に説明する場合を除き、各画像形成部5の色の識別用の符号であるBk(ブラック)、Y(イエロー)、C(シアン)、M(マゼンタ)の符号を省略して説明する。
まず、各画像形成ユニット50に設けられる各感光体ドラム52(像担持体)は、周面にトナー像を担持する。各感光体ドラム52は、例えばアルミニウム製のドラムの外周面上にアモルファスシリコン等の感光層を有し、駆動装置(不図示)によって所定のプロセススピードで紙面反時計方向に回転駆動される。すなわち、画像形成部5は、上記4色の異なる色に対応する複数の感光体ドラム52を含む。
各帯電装置53は、帯電ローラを接触させて感光体ドラム52を一定の電位で帯電させる。なお、帯電装置53は、コロナ放電式のものやブラシ等を用いたもので構成されてもよい。各画像形成部5の下方の露光装置51(図1参照)は、入力されるカラー色分解された画像信号をレーザ出力部(不図示)にて光信号にそれぞれ変換し、変換された光信号であるレーザ光(破線で図示)を4色分出力可能であり、帯電後の感光体ドラム52の表面に走査露光によって静電潜像を形成する。
各現像装置54は、対応する色のトナーを収納している。つまり、画像形成ユニット50Bkの現像装置54はブラックのトナーを、画像形成ユニット50Yの現像装置54はイエローのトナーを、画像形成ユニット50Cの現像装置54はシアンのトナーを、画像形成ユニット50Mの現像装置54はマゼンタのトナーをそれぞれ収納している。そして、各現像装置54は、トナーを担持する現像ローラ55をそれぞれ有している。各現像ローラ55は、各感光体ドラム52に対向し、トナーを供給する。各清掃装置56は、感光体ドラム52表面の転写残トナー等の清掃、除去を行う。
図1に戻り説明を続ける。中間転写部6は、給紙部4aから給紙された用紙に、各感光体ドラム52上の画像を転写するものである。つまり、中間転写部6は、感光体ドラム52からトナー像の1次転写を受けて用紙に2次転写を行う。この中間転写部6は、1次転写ローラ61(61Bk〜61Yの計4本)と、中間転写ベルト62(被転写材)と、駆動ローラ63と、従動ローラ64a・64b・64c・65と、2次転写ローラ66と、ベルト清掃装置67とを有している。
各1次転写ローラ61は、各感光体ドラム52と無端状の中間転写ベルト62を介して対向して設けられており、中間転写ベルト62と当接している。各1次転写ローラ61は、交流および直流が重畳された転写用の電圧を印加する転写バイアス印加部(不図示)に接続されており、各感光体ドラム52上のトナー像を中間転写ベルト62に転写する。
中間転写ベルト62は、1次転写ローラ61、駆動ローラ63、従動ローラ64a・64b・64c・65に張架され、モータ等の駆動機構に接続される駆動ローラ63の回転駆動により、図1の紙面時計方向に周回する。また、駆動ローラ63は、2次転写ローラ66とで中間転写ベルト62を挟んでいる。
各画像形成部5で形成されたブラック、イエロー、シアン、マゼンタの各色のトナー像は、タイミングを取られ、順次、ずれることなく重畳されつつ、中間転写ベルト62に1次転写される。なお、1次転写時、各1次転写ローラ61に転写バイアスが印加される。そして、重ね合わされた各色のトナー像は、所定の電圧を印加された2次転写ローラ66によって用紙に転写される。2次転写後の中間転写ベルト62上の残トナー等は、ベルト清掃装置67で除去されて回収される。
なお、上記した1次転写ローラ61C・61M・61Yおよび従動ローラ64b・64cは、位置切り替え機構76(図3参照)によって中間転写ベルト62の位置を切り替えるためにユニット化されているが、この点については後述する。
定着部6bは、用紙に2次転写されたトナー像を加熱・加圧して定着させる。この定着部6bは、主として、ヒータを内蔵する加熱ローラ68とこれに圧接される加圧ローラ69とで構成されている。トナー像の転写された用紙は、加熱ローラ68と加圧ローラ69のニップを通過すると加熱・加圧され、その結果、トナー像が用紙に定着する。定着後の用紙は、排出トレイ42に排出され、画像形成処理が完了する。
(2.複合機のハードウェア構成)
次に、本実施形態の複合機100のハードウェア構成について説明する。図3は、本実施形態の複合機100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。なお、本実施形態の位相合わせに関係する構成については後述する。
本実施形態に係る複合機100は、内部の制御基板上に制御部7を有している。制御部7は、複合機100の各部の制御を司る部分であり、装置本体内に設けられている。そして、制御部7は、CPU71と、ROM、RAM、HDD等からなる記憶部72とを有しており、制御上、各種の時間を計時する計時部73も有している。
CPU71は、中央演算処理装置であり、ROM等に格納されるプログラムやデータをRAM等に展開し、展開された制御プログラムやデータに基づき複合機100の各部の制御や演算を行う。また、CPU71は、画像読取部3にて読み取った原稿の画像データやコンピュータ200から送信される画像データに基づいて、印刷しようとする画像がカラー画像かモノクロ画像かを自動的に判断するACS(オートカラーセレクション)機能を有している。
記憶部72のROMは、電源投入時の起動用プログラム等、複合機100に関するプログラムや、複合機100のシステムに関するデータや、複合機100の制御に関するデータや、ユーザによる複合機100の設定データなどの各種データを記憶する。そして、記憶部72のRAMに、制御用プログラム、制御用データ、画像データ等、各種プログラムやデータを展開する。記憶部72のHDDは、例えば、画像データを記憶する大容量の記憶装置である。
そして、制御部7は、原稿搬送装置2、画像読取部3、操作パネル1、給紙部4a、I/F部75と接続されているとともに、駆動部74を介して、搬送路4b、画像形成部5、中間転写部6、位置切り替え機構76、定着部6bと接続されており、複合機100が適切に動作するように制御を行う。
制御部7は、駆動部74に指示して、各種回転体を回転させる。駆動部74は、例えば、排出モータ、搬送モータ、駆動モータ、中間転写モータ、定着モータ等と接続されており、制御部7の指示に基づき、上記各モータ等の駆動のON/OFFや回転速度の制御を行う。
なお、上記の排出モータは、排出ローラ対47(図1参照)を回転させるモータである。上記の搬送モータは、搬送路4bに設けられる各搬送ローラ対を回転させる。上記の定着モータは、加熱ローラ68等、定着部6b内の回転体を回転させる。上記の駆動モータは、各感光体ドラム52等の画像形成部5の各種回転体を回転させる。上記の中間転写モータは、駆動ローラ63を回転させ中間転写ベルト62を周回させる。なお、本実施形態の複合機100では、駆動モータと中間転写モータとは、感光体ドラム52の周速度と中間転写ベルト62の周速度とが同じになるような回転速度で回転する。
I/F部75は、複合機100を他の機器と接続するためのインターフェイスであり、複数のコネクタ、ソケットを備えている。このI/F部75によって、ネットワークを介して複合機100と複数のコンピュータ200(例えばパーソナルコンピュータ)を通信可能に接続することができる。したがって、複合機100は、コンピュータ200から送信された画像データや指示に基づき、印刷を行うことができ(プリンタ機能)、また、画像読取部3で得られた画像データをコンピュータ200に送信することもできる(スキャナ機能)。さらに、I/F部75にモデム等を設けることにより、公衆通信回線等を利用して、外部のFAX装置300とFAX通信を行うこともできる(FAX機能)。なお、便宜上、図3では、コンピュータ200およびFAX装置300を1台のみ図示している。
位置切り替え機構76は、カラープロセスとモノクロプロセスとで中間転写ベルト62の位置を切り替える機構である。ここで、上記のカラープロセスとは、全ての感光体ドラム52に中間転写ベルト62を接触させてカラー画像またはモノクロ画像を印刷するプロセスを指す。一方、モノクロプロセスとは、ブラックに対応する感光体ドラム52のみに中間転写ベルト62を接触させてモノクロ画像を印刷するプロセスを指す。
位置切り替え機構76は、カラープロセスからモノクロプロセスへ移行する場合は、中間転写部6の1次転写ローラ61C・61M・61Yおよび従動ローラ64b・64cを一体的に上方へ移動させる。このとき、図4に示すように、1次転写ローラ61Bk・61Cの間には搬送ローラ68が設けられており、駆動モータ63および搬送ローラ68の位置は変化しないため、駆動ローラ63および従動ローラ64a・64b・64c・65で張架された中間転写ベルト62は、搬送ローラ68で折れ曲がり、シアン、マゼンタ、イエローに対応する各感光体ドラム52から離間する。これにより、ブラックに対応する感光体ドラム52上に形成されたブラックのトナー像のみを中間転写ベルト62に転写して、モノクロ画像を印刷することができる。また、1次転写ローラ61C・61M・61Yおよび従動ローラ64b・64cのみが上方に移動し、従動ローラ65およびベルト清掃装置67の位置は変化しないため、ベルト清掃装置67で回収したトナーを廃棄トナー容器(図示せず)に送る機構を簡素化することができる。
一方、モノクロプロセスからカラープロセスへ移行する場合、位置切り替え機構76は、1次転写ローラ61C・61M・61Yおよび従動ローラ64b・64cを一体的に下方に移動させ、中間転写ベルト62を図1に示す元の位置、すなわち、全ての感光体ドラム52と接触する位置に戻す。これにより、4色全ての感光体ドラム52上に形成された4色のトナー像を中間転写ベルト62に転写してカラー画像を印刷することが可能となる。なお、カラープロセスでモノクロ画像を印刷することもできるが、この場合は、シアン、マゼンタ、イエローに対応する各感光体ドラム52上に各色トナー像を形成しないようにすればよい。
(3.位相合わせ部について)
タンデム型の画像形成装置では、色ずれを抑えるために各感光体ドラム52の回転時の位相を合わせる必要があることは前述の通りである。そこで、本実施形態の複合機100は、そのような位相合わせを行う位相合わせ部を有している。以下、位相合わせ部の詳細について説明する。
図5は、本実施形態の複合機100が備える位相合わせ部80の主要部の構成を示す斜視図であり、図6は、位相合わせ部80のブロック図である。位相合わせ部80は、各感光体ドラム52の回転時の位相を合わせるものであり、回転位置検知部57と、ドラムモータ58と、上記のCPU71および記憶部72とを有して構成されている。回転位置検知部57およびドラムモータ58は、画像形成ユニット50Bk・50C・50M・50Yの各感光体ドラム52に対応して設けられている。
回転位置検知部57は、感光体ドラム52の回転位置を検知するものであり、位置センサ57aと、ロータリーエンコーダ57bとで構成されている。位置センサ57aは、例えばフォトインタラプタからなり、感光体ドラム52のドラム軸52aに取り付けられたギア59の側面に記されたマーク59aが感光体ドラム52の回転によって移動し、位置センサ57aによる検出位置を通過したときに、CPU71に信号を送る。
ロータリーエンコーダ57bは、感光体ドラム52のドラム軸52aに取り付けられたインクリメンタル型のエンコーダであり、感光体ドラム52の回転方向および回転角度を検知する。ロータリーエンコーダ57bからの検知信号をCPU71に送ることにより、CPU71は、位置センサ57aにてマーク59aを検知してからの感光体ドラム52の回転位置(回転角度)を把握することが可能となる。
ドラムモータ58は、感光体ドラム52を回転駆動するためのモータであり、ギア58aを回転させることにより、このギア58aと噛合するギア59を回転させ、感光体ドラム52を回転させる。このドラムモータ58は、CPU71の制御によって駆動される。したがって、ドラムモータ58とCPU71とで、感光体ドラム52を回転駆動させる駆動制御部が構成されている。
また、記憶部72には、上述したデータ等のほか、位相合わせに関して、各感光体ドラム52の位相調整用の制御プログラムが記憶されるとともに、感光体ドラム52の回転によって位置センサ57aがマーク59aを検知してから、感光体ドラム52がホームポジションに至るまでの、ロータリーエンコーダ57bから出力される信号のパルス数が記憶される。なお、感光体ドラム52のホームポジションとは、中間転写ベルト62への転写位置で位相が揃うような各感光体ドラム52の回転位置を指す。
ここで、各感光体ドラム52のホームポジションは、例えばテストプリントに基づいて予めユーザによって設定することが可能である。つまり、カラー画像のテストプリントを行い、そのテストプリントを見てユーザが各色のずれ量を判断し、対応する色の感光体ドラム52の位相を何度進めるか(遅らせるか)を0〜360度の数値で操作パネル1を介して入力し、CPU71およびドラムモータ58によって上記の入力値に基づいて各感光体ドラム52を回転させた後、再度テストプリントを行う。この作業を繰り返すことにより、色ずれが生じないような各感光体ドラム52の回転位置を決定することができ、その回転位置をホームポジションとすることができる。
位相合わせを行う際には、CPU71は、対応する画像形成ユニット50ごとに、ドラムモータ58を駆動制御して、位置センサ57aがマーク59aを検知してから、記憶部72に記憶されたパルス数だけ進んだ時点で各感光体ドラム52を止めることにより、各感光体ドラム52の位相を揃えることができる。
なお、ロータリーエンコーダ57bは、アブソリュート型のエンコーダで構成されてもよい。この場合は、感光体ドラム52の絶対的な位置(角度)を検知することが可能である。したがって、例えば各感光体ドラム52のホームポジションを記憶部72に記憶させておけば、CPU71は、ロータリーエンコーダ57bからの出力信号に基づき、対応する画像形成ユニット50ごとにドラムモータ58を駆動制御して、記憶部72に記憶されたホームポジションに一致するように感光体ドラム52を回転させることにより、各感光体ドラム52の位相を揃えることができる。したがって、この場合は、位置センサ57aを省略して回転位置検知部57の構成を簡素化することができる。
なお、上述した各感光体ドラム52の位相合わせを行う方法は一例であり、上記の方法に限定されるわけではない。例えば特許文献1に記載の方法をはじめとして、他の公知の方法で位相合わせを行ってもよい。
(4.位相合わせのタイミングについて)
次に、各感光体ドラム52の位相合わせのタイミングについて説明する。なお、以下での説明の便宜上、印刷ジョブとは、例えば同じ原稿を複数部数コピーする場合や、コンピュータ200から送信される画像データに基づいて複数ページ分の文書を印刷する場合など、時間的に連続する印刷を行う形態を指すものとする。また、2つの印刷ジョブが時間を空けて行われる場合に、先に行われる印刷ジョブを前ジョブとも称し、次に行われる印刷ジョブを次ジョブとも称する。
図7は、印刷動作が画質優先モードに設定されている場合の位相合わせのタイミングを示す説明図であり、図8は、印刷動作が生産性優先モードに設定されている場合の位相合わせのタイミングを示す説明図である。本実施形態では、操作パネル1(図1参照)により、印刷動作モード(画質優先モード、生産性優先モード)を設定できるとともに、位相合わせの方式(第1の位相合わせ方式、第2の位相合わせ方式)を設定することができる。ここで、位相合わせの方式について説明する前に、先に印刷動作モードについて説明する。
(4−1.印刷動作モードについて)
上記のように、印刷動作モードとしては、画質優先モードと生産性優先モードとの2種類がある。画質優先モードとは、1つの印刷ジョブ中にカラープロセスによるカラー画像の印刷とモノクロプロセスによるモノクロ画像の印刷とが混在する場合に、上述した位置切り替え機構76(図3参照)によって、その都度中間転写ベルト62の位置を切り替えて印刷を行う動作モードを指す。したがって、この印刷動作モードでは、カラープロセスでは、図1のように常に中間転写ベルト62が4つの感光体ドラム52に押圧された状態でカラー画像が印刷されるが、モノクロプロセスでは図4のように中間転写ベルト62がブラックに対応する感光体ドラム52のみに押圧されて(他の感光体ドラム52から離間して)モノクロ画像が印刷される。
この印刷動作モードでは、モノクロプロセスのときにブラック以外の残りの3色に対応する各感光体ドラム52を印刷時に使用しないので、カラープロセスでモノクロ画像を印刷する場合に比べて、上記3色の感光体ドラム52表面の中間転写ベルト62との接触、摩耗による劣化や、上記3色の感光体ドラム52を駆動する駆動系(ギアやモータ)の劣化を抑えることができる。上記3色の感光体ドラム52の表面の劣化等は、上記3色の感光体ドラム52を用いて形成されるカラー画像の画質に直接影響を与えるので、上記の劣化を抑えることにより、カラー画像の画質を向上させることができる。このことから、上記印刷動作モードのことを画質優先モードと呼んでいる。
一方、生産性優先モードとは、1つの印刷ジョブ中にカラープロセスによるカラー画像の印刷とモノクロプロセスによるモノクロ画像の印刷とが混在する場合に、カラープロセスからモノクロプロセスへの切り替えを禁止して印刷を行う動作モードを指す。つまり、この印刷動作モードでは、印刷動作がモノクロプロセス(図4参照)から一旦カラープロセス(図1参照)に切り替わると、それ以降はカラープロセスで印刷が行われ、中間転写ベルト62が4つの感光体ドラム52に押圧された状態でカラー画像またはモノクロ画像が印刷される。
この印刷動作モードでは、印刷動作がモノクロプロセスから一旦カラープロセスに切り替わると、それ以降はカラープロセスで印刷が行われるので、上述した画質優先モードに比べて、位置切り替え機構76による中間転写ベルト62の各感光体ドラム52への押圧/離間という機械的な切り替えの回数が減少する。したがって、印刷ジョブ中にカラー画像の印刷とモノクロ画像の印刷とが混在していても、速やかにその印刷ジョブを終了させることができ、生産性、すなわち印刷ジョブの処理速度を向上させることができる。以上のことから、上記印刷動作モードのことを生産性優先の印刷動作モードと呼んでいる。なお、生産性優先の印刷動作モードでは、上記したように機械的な切り替えの回数が減るので、位置切り替え機構76の構成部品の耐久性も向上させることができ、生産性および耐久性の両方を向上させることができる。
(4−2.位相合わせの方式について)
次に、位相合わせの方式について説明する。各感光体ドラム52の位相合わせの方式としては、生産性優先の位相合わせ方式(第1の位相合わせ方式)と、耐久性優先の位相合わせ方式(第2の位相合わせ方式)との2種類がある。
生産性優先の第1の位相合わせ方式とは、1つの印刷ジョブがモノクロプロセスで終了する場合には、そのモノクロプロセスによる印刷終了後、直ちに位相合わせを行う方式である。なお、第1の位相合わせ方式の詳細については後述する。第1の位相合わせ方式では、次の印刷ジョブがカラープロセスで開始される場合であっても、次の印刷ジョブの開始時(カラープロセスの前)には位相合わせを行わなくて済むので、次の印刷ジョブを速やかに開始させて生産性を向上させることができる。
これに対して、耐久性優先の第2の位相合わせ方式とは、1つの印刷ジョブ(前ジョブ)がモノクロプロセスで終了した後、次の印刷ジョブ(次ジョブ)がカラープロセスで開始される場合に、次ジョブにおけるカラープロセスの開始前に位相合わせを行う方式である。なお、第2の位相合わせ方式の詳細についても後述する。第2の位相合わせ方式では、モノクロプロセスで終了した前ジョブの次のジョブのカラープロセスの前に位相合わせを行うという、位相合わせが必要な場合のみ位相合わせを行うので、位相合わせに関係する部品の摩耗(例えば感光体ドラム52を回転させるギア58a・59の摩耗)を低減することができ、耐久性を向上させることができる。
次に、上記した2種類の印刷動作モードに応じた位相合わせの具体的な制御について説明する。
図9は、位相合わせに関する全体の動作の流れを示すフローチャートである。まず、印刷ジョブの印刷が開始されると、位相合わせ部80のCPU71は、印刷動作モードが生産性優先モードに設定されているか、画質優先モードに設定されているかを判断する(S1)。S1にて、印刷動作モードが生産性優先モードであれば、位相合わせ部80は、操作パネル1にて設定された位相合わせ方式に関係なく、生産性優先の第1の位相合わせ方式で位相合わせを行う(S2)。つまり、S2では、操作パネル1にて、たとえ耐久性優先の第2の位相合わせ方式が設定されていても、生産性優先の第1の位相合わせ方式で位相合わせを行う。
一方、S1にて、印刷動作モードが画質優先モードであれば、位相合わせ部80は、操作パネル1にて設定された位相合わせの方式(生産性優先の第1の位相合わせ方式または耐久性優先の第2の位相合わせ方式)で位相合わせを行う(S3)。したがって、第2の位相合わせ方式による位相合わせは、結局、印刷動作モードが画質優先モードであって、位相合わせ方式が第2の位相合わせ方式に設定されている場合にのみ行われることになる。
ここで、上記した第1の位相合わせ方式の詳細について説明する。図10は、第1の位相合わせ方式で位相合わせを行う際の動作の流れを示すフローチャートである。第1の位相合わせ方式で位相合わせを行う場合、位相合わせ部80のCPU71は、1つの印刷ジョブ(前ジョブ)がモノクロプロセスで終了しているか否かを判断する(S11)。
S11にて、1つの印刷ジョブがモノクロプロセスで終了している場合、図7および図8で示したように、位相合わせ部80は、その印刷ジョブ(前ジョブ)のモノクロプロセスの終了後に位相合わせを行い、次の印刷ジョブ(次ジョブ)の開始時に位相合わせを行わない(S12)。
なお、印刷動作が画質優先モードの場合には、カラー画像はカラープロセスで印刷され、モノクロ画像はモノクロプロセスで印刷されるので、図7では、カラープロセスでモノクロ画像を印刷する例を記載していない(図8にのみ、カラープロセスでモノクロ画像を印刷する例を記載している)。
また、印刷動作が生産性優先モードの場合において、1つの印刷ジョブがモノクロプロセスで終了する場合としては、例えば図11に示すように、1つの印刷ジョブが全てモノクロプロセスで行われる場合を想定することができる。生産性優先の印刷動作モードでは、1つの印刷ジョブの中でモノクロプロセスからカラープロセスに切り替わると、その後はモノクロプロセスには切り替わらないが、1つの印刷ジョブが全てモノクロプロセスで行われる場合は、モノクロプロセスからカラープロセスへの切り替えが一度も行われないため、1つの印刷ジョブは最初から最後までモノクロプロセスで行われ、モノクロプロセスで終了することになる。
一方、S11にて、1つの印刷ジョブがカラープロセスで終了している場合、各感光体ドラム52の位相が揃った状態で印刷が終了するため、次のジョブに備えるための位相合わせは不要である。それゆえ、位相合わせ部80は、前ジョブの終了後および次ジョブの開始時のいずれにも位相合わせを行わない(S13)。
次に、耐久性優先の第2の位相合わせ方式の詳細について説明する。なお、第2の位相合わせ方式による位相合わせは、上述したように、印刷動作モードが図7に示した画質優先モードのときのみ行われる。
図12は、第2の位相合わせ方式で位相合わせを行う際の動作の流れを示すフローチャートである。第2の位相合わせ方式で位相合わせを行う場合、位相合わせ部80のCPU71は、1つの印刷ジョブ(前ジョブ)がモノクロプロセスで終了しているか否かを判断する(S21)。S21にて、前ジョブがモノクロプロセスで終了している場合には、CPU71は、次の印刷ジョブ(次ジョブ)がカラープロセスで開始されるか否かを判断する(S22)。S22にて、次ジョブがカラープロセスで開始される場合には、位相合わせ部80は、次ジョブの開始時(カラープロセスの前)に位相合わせを行う(S23)。
一方、S21にて、前ジョブがカラープロセスで終了している場合や、S22にて、次ジョブがモノクロプロセスで開始される場合には、すでに各感光体ドラム52の位相が揃っているか、モノクロ画像の印刷のために位相合わせを行う必要がないので、位相合わせ部80は、前ジョブ終了後および次ジョブの開始時のいずれにも位相合わせを行わない(S24)。
上記したように、本実施形態では、印刷動作モードが生産性優先モードであれば、位相合わせ部80は、位相合わせの方式として生産性優先の第1の位相合わせ方式が設定されている場合は勿論のこと、耐久性優先の第2の位相合わせ方式が設定されていても、第1の位相合わせ方式で位相合わせを行う(図9のS1、S2、図10参照)。つまり、位相合わせ部80は、1つの印刷ジョブ中でカラープロセスからモノクロプロセスへの切り替えを禁止する印刷動作モードにおいて、印刷ジョブがモノクロプロセスで終了する場合には、図8で示したように、そのモノクロプロセスによる印刷終了後、直ちに位相合わせを行う(次の印刷ジョブの開始時に位相合わせを行わない)。これにより、次の印刷ジョブがカラープロセスで開始される場合でも、次の印刷ジョブの開始時(カラープロセスの前)に位相合わせを行う必要がなく、次の印刷ジョブを速やかに開始させて、位相合わせの観点から生産性を向上させることができる。
また、生産性優先の印刷動作モードにおいては、印刷ジョブ中にモノクロプロセスからカラープロセスに切り替わると、以降はカラープロセスのままで印刷が行われるため、印刷ジョブがモノクロプロセスで終了する可能性は少ないが、図11に示したように、1つの印刷ジョブが全てモノクロプロセスで行われると、その印刷ジョブはモノクロプロセスで終了する。この場合に、位相合わせを最後のモノクロプロセスの終了後に行うようにしても、モノクロプロセスで終了すること自体が少ないことから、その印刷ジョブの印刷終了から次の印刷ジョブの印刷開始までに入る位相合わせの回数を、全体として少なく抑えることができると言える。これにより、感光体ドラム52を回転させる駆動系(例えばギア)の摩耗など、位相合わせに伴う部品の消耗の著しい低下を回避することができ、生産性を向上させる位相合わせ方式でありながら、同時に耐久性も満足させることができる。
つまり、印刷動作モードが生産性優先モードの場合には、上記したタイミングで位相合わせを行うことにより(生産性優先の第1の位相合わせ方式で位相合わせを行うことにより)、位相合わせの観点から生産性および耐久性を両方とも満足させることができる。
また、位相合わせ部80は、印刷動作モードが生産性優先モードの場合には、操作パネル1による位相合わせの方式(生産性優先の第1の位相合わせ方式、耐久性優先の第2の位相合わせ方式)の設定に関係なく、第1の位相合わせ方式で位相合わせを行うので、印刷動作モードが画質優先モードの場合には操作パネル1による位相合わせ方式の自由な設定を可能としつつ、印刷動作モードが生産性優先モードの場合に生産性および耐久性を両方とも満足させる構成を実現することができる。
また、印刷動作モードが生産性優先モードの場合において、印刷ジョブが全てモノクロプロセスで行われる場合(図11参照)、4つの感光体ドラム52のうち、ブラックに対応する感光体ドラム52のみが回転し、印刷に使用されるため、最後のモノクロプロセスが終了した時点では、全ての感光体ドラム52間では位相が揃っていない可能性が高い。したがって、位相合わせ部80は、生産性優先の印刷動作モードにおいて、印刷ジョブが全てモノクロプロセスで行われる場合に、最後のモノクロプロセスによる印刷終了後、直ちに位相合わせを行うことにより、次の印刷ジョブに備えることができる。つまり、次の印刷ジョブがカラープロセスで開始される場合であっても、色ずれのないカラー画像を印刷することができる。また、印刷ジョブが全てモノクロプロセスで行われる場合に上述したタイミングで位相合わせを行うことにより、位相合わせの観点から生産性および耐久性を両方とも満足させるという本発明の効果を得ることができる。
なお、本実施形態では、像担持体として感光体ドラム52の例を挙げたが、感光体ベルトを用いた場合でも、上述した本発明の位相合わせ方法を適用することは可能であり、これによって同一の作用効果を得ることができる。
なお、本実施形態では、各感光体ドラム52からトナー像が転写される被転写材が、中間転写ベルト62の場合を例にして説明したが、被転写材は用紙であってもよい。つまり、中間転写ベルト62を用いずに、感光体ドラム52から用紙に直接トナー像を転写する構成であっても、本発明の位相合わせ方法を適用することができる。この場合、位置切り替え機構76は、被転写材としての用紙を搬送する搬送ベルトを各感光体ドラム52に対して押圧/離間させることにより、用紙を各感光体ドラム52に押圧/離間させれば、印刷動作モードとして、画質優先モードと生産性優先モードとを実現することができる。
なお、本実施形態では、画像形成装置を複合機100で構成した例について説明したが、本実施形態で示した構成および位相合わせ方法は、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの他の画像形成装置にも適用可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。