JP2017199084A - 誘導力を用いた構造体の力学的弱点を発見可能な構造体設計支援装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 コンピュータを用いた構造体の力学特性の数値解析に於いて、荷重を伝達する機能が発揮されない湾曲部位の特定と変形し易いか否かについての考察のための一つの指標として荷重の方向とは別の方向に作用する誘導力を算出する装置を提供すること。【解決手段】 本発明の数値解析装置は、構造体の数値モデルに於いて荷重を与えた場合に構造体の各解析要素にて荷重の方向とは別の方向に作用する誘導力ベクトルを算出する手段と、荷重に対する各解析要素の非修正変位を算出する手段と、構造体に対して荷重から誘導力ベクトルを減算して得られる修正荷重を与えた場合の各解析要素の修正荷重を算出する手段と、各解析要素の非修正変位と修正変位とを比較して誘導力ベクトルの寄与を評価する手段と、誘導力ベクトルの寄与を出力又は表示する手段とを含む。【選択図】 図7
Description
本発明は、コンピュータを用いて構造体の力学特性の数値解析装置に係り、より詳細には、有限要素法等の数値解析を用いた構造体の応力分布等の解析を通じて構造体の設計に於いて有用な情報を得ることが可能な構造体の設計支援装置に係る。
コンピュータに数値計算技術の発展により、車両のボディーを初め、種々の機械器具、建築物などの構造体の力学的又は機械的特性が、コンピュータを用いた有限要素法などによって数値的に解析され、そこで得られた情報が構造体の設計のために利用されるようになっている。かかるコンピュータによる数値解析による構造体の力学的又は機械的特性の解析手法によれば、実際の構造体を製作する前の設計段階に於いて、構造体が、要求される特性を備えているか否かの把握が可能となり、また、そのような要求される特性を構造体に備えさせるための設計変更が可能となる点で有利である。そのようなコンピュータによる構造体の力学的又は機械的特性の数値解析を行う技術としては、種々の手法が提案されている。例えば、特許文献1に於いては、位相最適化手法を用いて、所定の制約条件の下で目的関数を満足する最適な構造物の形状を求める場合に、有限要素法の構造解析の結果、構造物の剛性が制約条件より低いときには、構造物の剛性を仮想的に高く設定して余裕を持たせてから位相最適化を行い、これにより、解析にかかる工数の削減を図ることが提案されている。特許文献2では、非線形に変形する乗用車の客室構造体の衝突時の荷重経路の数値解析に於いて、線形弾性変位が支配的な部分を完全な線形弾性体に置き換え、その衝突時の線形弾性体の変形に於ける荷重データを有限要素法により算出して、荷重経路の解析を行う手法が提案されている。特許文献3は、車両構造に於ける構造物の載荷時に於ける部品の変形を定量的に評価する場合に、部品の曲率を数値解析により算出して、その結果に基づいて、補剛する部品と板厚を減らす部品を選定することを提案している。更に、特許文献4では、積層材料に対して曲げ応力を付与した際に層間に発生する応力を算出する場合に、重ねる層別に、有限要素法により得られる曲率半径と主応力とから表面の応力を計算し、それらの差し引きにより層間の最大引っ張り応力を求め、これにより、乖離しやすい部分を補強するための設計に利用することが提案されている。
ところで、湾曲した部分を有する構造体に於いて、荷重を与えた場合、その荷重の向きによっては、湾曲した部分に於いて、付与した荷重を伝達する機能が十分に発揮されていない状態の部位が生じ得る。例えば、図8(A)に例示されている如き、図中、上下の曲板の間に板面に垂直な方向に中板を介在させたH字断面の梁状構造体(初めから二枚の平行な板が面の垂直な方向に湾曲した梁状構造体)に対して、図示の如く、曲げモーメントを発生する荷重を与えた場合、図8(B)に示されている如く湾曲の程度が増大する方向に変形するところ、更に、図8(C)に模式的描かれている如く、上下の曲板はその両縁が互いに近づく方向にも変形する。かかる上下の曲板の互いに近づく方向に変形した両縁の部分の変形は、図示の梁状構造体に与えた曲げモーメントを発生する荷重に起因するものであるところ、両縁の部分は、与えられた荷重を支持する機能を果たしておらず、即ち、荷重を伝達する機能を十分に発揮せずに変形する部分であるということができる。図8(B)にて、濃淡で示された(有限要素法で得られた)応力分布を見ると、両縁の部分には、殆ど応力が発生していないことが理解される。これは、後に説明する誘導力による力の逃げが起こり、荷重を伝達する機能を十分に発揮できなくなっていることを示しており、このような部位に於いては、力の逃げを防止する適切な補強により、その強度剛性を改善することが可能である。
上記のコンピュータによる有限要素法等を利用した数値解析の手法によれば、図8(B)の濃淡で示された応力分布の如く、構造体に力を与えた場合の構造体内の応力やひずみの分布の算出が可能となり、構造体内に荷重を伝達する機能を発揮しない部位があるとき、即ち、応力の小さい部位があるとき、応力分布を参照することで、その部位の空間上の位置や範囲は特定できる。しかしながら、従前の有限要素法等を利用した数値解析の手法の場合、構造体内に荷重を伝達する機能を発揮しない部位があるとき、そうなる理由を特定することは一般に困難であり、理由が特定されないと、構造改善する設計変更の方法を見つけることも困難となる。例えば、図8(B)に示された例の場合、まず、有限要素法により応力分布を算出し、更に、変形解析を行った結果、荷重の伝達に寄与しない応力の小さい部分が変形していることは把握されるが、かかる変形が如何に生じるかの原因は、応力分布と変形の程度を参照しただけでは特定することは困難である。また、このような例に対して、荷重経路の解析を行う手法(特許文献2など)を適用した場合には、そもそも、荷重を伝達する機能を発揮しない部位は何ら表示されないこととなり、或いは、構造体の形状を自動的に最適化する手法(特許文献3など)を適用した場合には、荷重を伝達する機能を発揮しない部位は削られる一方となってしまい、適切に補強を加えて構造を改善する方向には最適化されない。
上記の如き湾曲した部分を有する構造体に於いて荷重を与えた際の荷重を伝達する機能が発揮されない部位の変形に関して、本発明の発明者は、特願2015−009978に於いて、かかる変形が、湾曲した部分に作用した荷重の向きに依存して、その荷重の伝達方向(その部位における応力の主応力に平行な方向)とは別の方向に作用する力が生ずることに起因する、ということを見出した。そして、かかる荷重の伝達方向とは別の方向に作用する力とそのベクトルを「誘導力」、「誘導力ベクトル」として定義し、その大きさは、構造体内の各部位の主応力のその方向についての変化率(微分値)で表すことができ、荷重を伝達する機能が発揮されない部位の特定と変形し易いか否かについての考察のための一つの指標として用いることが可能であることを示した。
上記の如き誘導力に関して、それに基づく構造体に於ける荷重を伝達する機能が発揮されない部位の特定と変形のし易さについて考察する場合、単に誘導力の分布を参照するだけでなく、誘導力による構造体の変位に対する影響がより定量的に把握できるようになると、更に有利である。また、前記出願に於いては、「誘導力ベクトル」は、解析対象の構造体の数値モデルに於いて数値解析的に得られた主応力の微分演算により算出されているが、かかる「誘導力ベクトル」は、主応力を陽に算出することなく、付与した荷重又は変位から直接的に算出が可能である。
かくして、本発明の課題は、コンピュータを用いた数値解析により構造体の力学特性の解析をする場合に於いて、より定量的な構造体の変位に対する誘導力の影響の考察を可能とする新規な指標とその算出手法並びに「誘導力」の新規な算出手法とを提供することである。
本発明によれば、上記の課題の一つは、コンピュータを用いた構造体の力学的特性の数値解析装置であって、複数の解析要素を有する構造体の数値モデルに於いて構造体に対して荷重を与えた場合に解析要素の各々にて荷重の方向とは別の方向に作用する誘導力ベクトルを算出する手段と、構造体の数値モデルに於いて構造体に対して荷重を与えた場合に解析要素の各々にて生ずる非修正変位を算出する手段と、構造体の数値モデルに於いて、荷重から誘導力ベクトルを減算して得られる修正荷重を構造体に対して与えた場合に解析要素の各々にて生ずる修正荷重を算出する手段と、解析要素の各々に於ける非修正変位と修正変位とに基づいて誘導力ベクトルの寄与を表す指標値を算出する手段と、誘導力ベクトルの寄与を表す指標値を出力又は表示する手段とを含む装置によって達成される。
上記の構成に於いて、「構造体」とは、車両のボディーを初め、種々の機械器具、建築物又はそれらを構成する任意の部材などの構造体であって、応力が定義可能な構造体であってよい。「数値解析」は、典型的には、有限要素法であってよいが、これに限定されず、構造体に対して任意の荷重を与えた場合の、構造体の任意の部位に設定される複数の解析要素の応力及び/又は変位を算出できる任意の解析方法であってよい。「誘導力ベクトル」は、構造体が固体力学の適用される弾性体であって、応力の微分値が任意の方向に算出できる場合には、それぞれの主応力のその対応する主軸方向についての微分値を成分とするベクトルとして定義される。また、構造体の数値モデルがシェル構造の弾性体であり、構造体が複数の解析要素に分割され、各解析要素が3つ以上の節点にて画定される多角形の要素であるモデルである場合には、厚み方向の応力の微分値が算出されないことから、誘導力ベクトルは、各解析要素の各節点毎の厚み方向の成分Fnが、各解析要素の曲率行列Qijと応力テンソルσijとを用いて、
Fn=ΣiΣjQijσij …(A)
によっても表される。(ここに於いては、Σi、Σjは、i、jについての総和を表す。)
Fn=ΣiΣjQijσij …(A)
によっても表される。(ここに於いては、Σi、Σjは、i、jについての総和を表す。)
上記の本発明の構造体の力学的特性の数値解析装置の構成に於いては、まず、上記に説明された「誘導力ベクトル」が算出される。「誘導力ベクトル」は、端的に述べれば、後により詳細に説明される如く、構造体の湾曲した部分に於いて、その湾曲方向に沿った方向(周方向)の荷重がかかった場合に、その荷重に対して垂直な方向に発生する力(単位は、体積当たりの力となる。)に相当する。即ち、この「誘導力ベクトル」は、構造体に与えた荷重に対して、その荷重とは別の方向に作用する力の大きさの指標値として参照することができる量である。そして、本発明の数値解析装置に於いては、更に、誘導力ベクトルが発生する状態、即ち、誘導力ベクトルを惹起する荷重が付与された状態での解析要素の各々にて生ずる変位(「非修正変位」と称する。)と、荷重から誘導力ベクトルを減算して得られる荷重(「修正荷重」と称する。)が構造体に付与された状態での解析要素の各々にて生ずる変位(「修正変位」と称する。)が算出され、かかる「修正変位」と「非修正変位」に基づいて誘導力ベクトルの寄与を表す指標値として算出される。
上記の構成に於いて、「修正荷重」を付与した状態は、初めの荷重を付与した状態に於いて誘導力ベクトルが減算された状態となっているので、その状態に於ける「修正変位」は、誘導力ベクトルを除去した状態での変位を想定したものである。実際には、誘導力ベクトルを初めに与えた荷重から除去すると、構造体に於いて有意に誘導力が発生していなかった部位での変位も変化する可能性があるので、「修正変位」が単純に誘導力ベクトルによる変位分を除去した変位とはならない場合があるところ、「修正変位」と「非修正変位」とを比較することにより、構造体に於いて、誘導力ベクトルが如何なる影響を及ぼしているかについての考察に於いて有用となる。そこで、上記の如く、非修正変位と修正荷重とを比較するべく、「修正変位」と「非修正変位」に基づく誘導力ベクトルの寄与を表す指標値(「誘導力影響指標値」と称する。)が算出され、出力又は表示されることとなる。そして、或る解析要素に於いて、「修正変位」と「非修正変位」との比較に於ける指標値が大きいとき、その部位に於いては、荷重の伝達の機能が十分に発揮されず、力が「逃げている」部位(与えた荷重が期待する方向とは別の方向に作用する)部位であると判断できることとなる。
「誘導力影響指標値」としては、後述の実施形態の欄に於いて説明される如く、「修正変位」と「非修正変位」との差分、比等が採用されてよい。或いは、構造体の任意の或る部位に於ける「修正変位」に対する「非修正変位」の比を構造体の別の部位の「修正変位」に乗算した値と、その別の部位の「非修正変位」の値との差分、比等が誘導力影響指標値として算出されてよい。この場合、或る部位に対する別の部位の誘導力の影響が相対的に把握できることとなり、有利である。
本発明の数値解析装置の実施の形態に於いては、構造体に於ける「誘導力ベクトル」の分布や「誘導力影響指標値」の分布が調製されて、その分布が出力又はグラフィック表示等により表示されてよい。また、有限要素法等による数値解析を実行して、各解析要素の応力や変位を算出する装置の一部として、本発明による「誘導力ベクトル」や「誘導力影響指標値」を算出する装置が組み込まれても良い。
また、本発明によれば、シェル構造を成す構造体の力学的特性の数値解析を有限要素法に従って実行する場合、上記の課題のもう一つは、有限要素法に従ってコンピュータを用いた構造体の力学的特性の数値解析装置であって、複数の解析要素を有する構造体のシェル構造を仮定した数値モデルに於いて構造体に対して与えられる荷重及び該荷重を与えた場合に生ずる構造体の解析要素の各々の変位を算出する影響変数行列、或いは、荷重と影響変数行列とを用いて算出された解析要素の各々の変位と、解析要素の剛性行列と、解析要素の曲率行列とを用いて、構造体に対して荷重を与えた場合に解析要素の各々にて荷重の方向とは別の方向に作用する誘導力ベクトルを算出する手段と、誘導力ベクトルを出力又は表示する手段とを含む装置によって達成される。
構造体の力学的特性の数値解析を有限要素法に従って実行する場合、一般に、構造体の数値モデルに於いて、或る荷重を付与した場合の解析要素の各々の変位は、その荷重と、構造体の数値モデルの構造によって影響変数行列とを用いて算出され、更に、かかる変位と、構造体の数値モデルによって決定される剛性行列とを用いて、応力が決定される。一方、誘導力ベクトルは、解析要素の各々の応力に基づいて決定されるところ、後述の実施形態の欄に於いて説明される如く、かかる誘導力ベクトルは、シェル構造を仮定した数値モデルに於いては、解析要素の曲率行列と応力テンソルとによっても表すことが可能である。そうすると、構造体の力学的特性の数値解析に於いて有限要素法が実行される場合には、誘導力ベクトルは、直接的に、構造体に対して与えられる荷重及び該荷重を与えた場合に生ずる構造体の解析要素の各々の変位を算出する影響変数行列と剛性行列と曲率行列とを用いて、或いは、荷重と影響変数行列とを用いて算出された解析要素の各々の変位と剛性行列と曲率行列とを用いて、算出することが可能であり、解析要素の応力を陽に算出しなくてもよいこととなる。
かくして、上記の本発明によれば、一つの態様に於いて、構造体の力学的特性の数値解析に於いて、荷重を与えられた構造体にて、その荷重の方向と別の方向に作用する誘導力ベクトルの影響を表す指標値が算出され、出力又は表示することが可能となる。誘導力ベクトルと誘導力影響指標値を参照すれば、構造体に於いて、与えられた荷重を伝達する機能が発揮されない部位又は領域とその程度が把握されると伴に、誘導力ベクトルと誘導力影響指標値の大きさ又は分布の状況と、構造体の形状とを対比させることにより、或る部分が変形し易いか否か或いは変形し易い部分又は領域の推定に有用な情報となる。そして、そのような情報を利用することで、荷重を伝達する機能が発揮されない部位又は領域に対して荷重を伝達する機能が有効に発揮できるようにするため、或いは、変形を防止するため、の補強等の構造体の設計の変更がより容易になることが期待される。
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
1…コンピュータ本体
2…コンピュータ端末
3…モニター
4…キーボード、マウス(入力装置)
2…コンピュータ端末
3…モニター
4…キーボード、マウス(入力装置)
コンピュータ装置の構成
本発明による構造体の力学的特性の数値解析装置は、この分野で通常使われている形式の、図1(A)に例示されている如き、コンピュータ装置1に於けるコンピュータ・プログラムの作動により実現されてよい。コンピュータ装置1には、通常の態様にて、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、記憶装置、入出力装置(I/O)が装備され、記憶装置は、本発明の演算で使用する演算処理を実行する各プログラムを記憶したメモリと、演算中に使用されるワークメモリ及びデータメモリを含んでいる。また、実施者によるコンピュータ装置1への指示及び計算結果その他の情報の表示及び出力は、コンピュータ装置1に接続されたコンピュータ端末装置2を通じて為される。コンピュータ端末装置2には、通常の態様にて、モニター3とキーボード並びにマウスといった入力装置4が設けられ、プログラムが起動されると、実施者は、プログラムの手順に従ってモニター3上の表示に従って、入力装置4を用いてコンピュータ装置1に各種の指示及び入力を行うとともに、モニター3上にてコンピュータ装置1からの演算状態及び演算結果等を視覚的に確認することが可能となる。なお、図示していないその他の周辺機器(結果を出力するプリンタ、計算条件及び演算結果情報等を入出力するための記憶装置など)がコンピュータ装置1及びコンピュータ端末装置2に装備されていてよいことは理解されるべきである。コンピュータ装置1を用いて、以下に述べる各種の処理又は演算を実行する際には、通常の態様にて、各種の処理又は演算に必要なプログラムが起動され、実施者は、コンピュータ端末装置2に於いて、プログラムに於いて準備された入力手順に従って、演算に必要なデータ、演算時の計算条件その他の各種設定を入力し、演算が開始される。そして、演算の実行中又は終了後に、演算結果が、適宜、コンピュータ端末装置2を通じて出力可能となる。
本発明による構造体の力学的特性の数値解析装置は、この分野で通常使われている形式の、図1(A)に例示されている如き、コンピュータ装置1に於けるコンピュータ・プログラムの作動により実現されてよい。コンピュータ装置1には、通常の態様にて、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、記憶装置、入出力装置(I/O)が装備され、記憶装置は、本発明の演算で使用する演算処理を実行する各プログラムを記憶したメモリと、演算中に使用されるワークメモリ及びデータメモリを含んでいる。また、実施者によるコンピュータ装置1への指示及び計算結果その他の情報の表示及び出力は、コンピュータ装置1に接続されたコンピュータ端末装置2を通じて為される。コンピュータ端末装置2には、通常の態様にて、モニター3とキーボード並びにマウスといった入力装置4が設けられ、プログラムが起動されると、実施者は、プログラムの手順に従ってモニター3上の表示に従って、入力装置4を用いてコンピュータ装置1に各種の指示及び入力を行うとともに、モニター3上にてコンピュータ装置1からの演算状態及び演算結果等を視覚的に確認することが可能となる。なお、図示していないその他の周辺機器(結果を出力するプリンタ、計算条件及び演算結果情報等を入出力するための記憶装置など)がコンピュータ装置1及びコンピュータ端末装置2に装備されていてよいことは理解されるべきである。コンピュータ装置1を用いて、以下に述べる各種の処理又は演算を実行する際には、通常の態様にて、各種の処理又は演算に必要なプログラムが起動され、実施者は、コンピュータ端末装置2に於いて、プログラムに於いて準備された入力手順に従って、演算に必要なデータ、演算時の計算条件その他の各種設定を入力し、演算が開始される。そして、演算の実行中又は終了後に、演算結果が、適宜、コンピュータ端末装置2を通じて出力可能となる。
上記のコンピュータ装置1に於いて、本発明による構造体の「誘導力ベクトル」及び/又は「誘導力影響指標値」の算出を行う場合、端的に述べれば、それに先立って、まず、構造体の数値モデルのデータ、即ち、或る座標空間、例えば、三次元空間座標の(x,y,z)方向に於いて構造体の形状を現す座標値データと構造体の弾性特性などの材料の力学的特性のデータが入力され、しかる後、典型的には、有限要素法による構造体の力学特性の数値解析が実行される。有限要素法に於いては、よく知られている如く、数値モデルとして現された構造体を複数の三角形又は四角形の解析要素に分割し、構造体の任意の解析要素の節点に任意の荷重を与えた場合の各要素の応力、変位等のデータが算出される。典型的には、ここで算出される各要素のデータは、具体的には、数値モデルの入力の際の座標空間(入力座標系)に於ける成分で表した応力値、主応力値、座標空間に対する主軸方向(主応力の方向)から成るデータ群であってよく、また、後に説明される「誘導力影響指標値」を算出する場合には、更に、数値モデルの入力の際の座標空間(入力座標系)に於ける成分で表した各節点の変位値から成るデータ群であってよい。そして、これらの有限要素法で得られたデータ群を用いて、後に説明される「誘導力ベクトル」の大きさと方向及び/又は「誘導力影響指標値」が算出される。なお、誘導力ベクトルは、任意の座標系の成分で表されてよいところ、典型的には、一般的な構造体の場合には、主軸方向の座標系に於ける成分にて表されてよく、シェル構造体の場合には、シェル面に垂直な方向の成分にて表されてよい。また、誘導力ベクトルは、後に説明される例の如く、モニター3上にてグラフィック表示された構造体の数値モデルの各要素上にて大きさと方向を表すベクトル(矢印)にて表示されてよく、誘導力影響指標値を算出する場合には、荷重を与えた場合(誘導力ベクトルがそのまま生ずる場合及び/又は誘導力が除去された場合)の変形後の構造体、即ち、変位が形状に反映された構造体のグラフィック表示がモニター3上に表示されてよい。
誘導力ベクトルの定義と物理的な意味
図2(A)を参照して、図示の如き直線状の部材に対して、その延在する方向に荷重F(図示の場合では引っ張り荷重)を与えたとき、部材の内部では、その荷重Fと略同じ方向に力T(図示の場合では、張力)が作用することとなる。即ち、この場合には、部材は、荷重Fが伝達される構造であり、換言すると、部材内部は、荷重を伝達する機能を果たしているということができる。一方、図2(B)に描かれている如き湾曲した部材に対してその延在する方向に荷重Fを与えた場合(部材の紙面の垂直方向の位置は拘束されていると仮定する。)、部材の内部の或る点(黒点)について見ると、力Tの向きが正反対ではないために、その合力として荷重Fとは向きの異なる力Sが作用することとなる。そして、力Sの作用により、部材が変形すると、図2(B)に点線にて描かれているように、部材が伸びて張力をいなしてしまうので、荷重Fの伝達には寄与しないこととなり、部材内部は、荷重を伝達する機能を果たしていない状態であるということができる。これを「力が逃げる」と表現することもできる。即ち、或る構造体に対して荷重を与えた場合に、上記の例の如く、荷重Fとは異なる向きに作用する力Sの大きさを参照すれば、構造体に於いて荷重を伝達する機能を果たしていない部分又は領域の位置又は大きさと、そこに於いて作用する力の向きと大きさとが特定できることとなる。このような力の逃げが起こっている部位では、前記の力Sを受け止めて変形を防止する部材を追加することにより、大幅に構造の剛性や強度を改善することが可能である。なお、本発明に於いて、上記の如き付与された荷重とは向きの異なる力Sを「誘導力ベクトル」と称することとする。即ち、誘導力とそれによる変形によって力が逃げている個所を特定することができれば、この情報に基づいて、設計者が構造を改善する設計変更を容易に提案することが可能となる。
図2(A)を参照して、図示の如き直線状の部材に対して、その延在する方向に荷重F(図示の場合では引っ張り荷重)を与えたとき、部材の内部では、その荷重Fと略同じ方向に力T(図示の場合では、張力)が作用することとなる。即ち、この場合には、部材は、荷重Fが伝達される構造であり、換言すると、部材内部は、荷重を伝達する機能を果たしているということができる。一方、図2(B)に描かれている如き湾曲した部材に対してその延在する方向に荷重Fを与えた場合(部材の紙面の垂直方向の位置は拘束されていると仮定する。)、部材の内部の或る点(黒点)について見ると、力Tの向きが正反対ではないために、その合力として荷重Fとは向きの異なる力Sが作用することとなる。そして、力Sの作用により、部材が変形すると、図2(B)に点線にて描かれているように、部材が伸びて張力をいなしてしまうので、荷重Fの伝達には寄与しないこととなり、部材内部は、荷重を伝達する機能を果たしていない状態であるということができる。これを「力が逃げる」と表現することもできる。即ち、或る構造体に対して荷重を与えた場合に、上記の例の如く、荷重Fとは異なる向きに作用する力Sの大きさを参照すれば、構造体に於いて荷重を伝達する機能を果たしていない部分又は領域の位置又は大きさと、そこに於いて作用する力の向きと大きさとが特定できることとなる。このような力の逃げが起こっている部位では、前記の力Sを受け止めて変形を防止する部材を追加することにより、大幅に構造の剛性や強度を改善することが可能である。なお、本発明に於いて、上記の如き付与された荷重とは向きの異なる力Sを「誘導力ベクトル」と称することとする。即ち、誘導力とそれによる変形によって力が逃げている個所を特定することができれば、この情報に基づいて、設計者が構造を改善する設計変更を容易に提案することが可能となる。
そこで、まず、一般的な構造体に於いて、「誘導力ベクトル」を定義する。図2(C)を参照して、構造体内の一つの微小領域に於いて、その一つの主軸x1方向について、図中下面に下向きに応力σ1が作用し、上面に上向きに応力σ1+∂σ1/∂x1・dx1が作用する場合を考える。そして、微小領域には、図2(B)に描かれている如く荷重Fに起因する張力Tが両側から作用し、その力の主軸x1方向の成分即ち、誘導力ベクトルの成分を、-S/2とすると、力の釣り合いは、下記の式で表される。
σ1+∂σ1/∂x1・dx1−σ1+2・S/2=0 …(1)
従って、誘導力ベクトルの成分Sは、
S=−(∂σ1/∂x1)・dx1 …(2)
となる。更に、体積当たりの力の成分I1に換算して、
I1=−(∂σ1/∂x1) …(3)
が得られる。この式(3)の関係式は、図3に示されている如き、立体に於いて、他の二つの主軸方向にも成立するので、誘導力ベクトルIは、下記の表式により定義される。
ここに於いて、e1、e2、e3は、主軸方向x1、x2、x3のそれぞれの単位ベクトルである。
σ1+∂σ1/∂x1・dx1−σ1+2・S/2=0 …(1)
従って、誘導力ベクトルの成分Sは、
S=−(∂σ1/∂x1)・dx1 …(2)
となる。更に、体積当たりの力の成分I1に換算して、
I1=−(∂σ1/∂x1) …(3)
が得られる。この式(3)の関係式は、図3に示されている如き、立体に於いて、他の二つの主軸方向にも成立するので、誘導力ベクトルIは、下記の表式により定義される。
また、解析される構造体がシェル構造であるとき、x3方向をシェルの面に垂直な厚さ方向とし、x1、x2方向をシェルの面の延在方向とすると、σ3には厚さ方向の中央値(有限要素法では、面の表面と裏面の応力の平均値)が用いられ、σ3の微分値が算出できないので、その場合には、下記の力の釣り合い式:
を用いて、式(4)は、下記の式に書き換えられる。
ここで、τ13、τ23は、x1、x2方向を向いた面に於けるx3方向のせん断応力である。なお、シェル面が曲面であるとき、シェル面の方向が場所によって変化し、座標軸の方向が場所によって異なるので、有限要素法によって算出されるσ3が0であっても、τ13、τ23が0とはならない。かくして、図4の中心点Oの近傍Cにおいてx1の方向が角度にしてθだけとすると、O点の座標系におけるC点のτ13の値は、
τ13=cosθsinθ・σ1〜θ・σ1 …(7)
となる。また、OC間の距離をΔxとすると、シェルのx方向の曲率半径Rと角度θの間に
R=Δx/θ …(8)
の関係があり、τ13の微分は差分で近似できて、
∂τ13/∂x1
〜{τ13(点C)−τ13(点O)}/Δx=τ13(点C)/Δx …(9)
により与えられる。以上の考察を一般化すれば、面の延在方向の応力σij(i,j=x又はy。有限要素法では、面の表面と裏面の応力の平均値)と、それによる誘導力ベクトル成分のシェル面に垂直な成分(e3の方向)Fn(i,j)との関係は、図4(A)から理解される如く、
Fn(i,j)=σij/Rij …(10)
となる。ここで、式(10)は一般化されているので、xとyの方向は応力の主軸方向である必要は無く、シェル面の延在方向に取られた任意の座標系であってよい。Rijは、R11(Rxx)、R12(Rxy)、R21(Ryx)、R22(Ryy)の成分があり、R11はシェル面のx方向に沿った線上の曲率半径、R22はシェル面のy方向に沿った線上の曲率半径、R12はシェル面のx=y方向に沿った線上の曲率半径とx=−y方向に沿った線上の曲率半径の差であり、また、R21=R12である。従って、図4(B)に模式的に描かれている如きシェル構造の曲面片に於いて、厚み方向の誘導力ベクトルの成分Fnは、全ての面の延在方向の応力σijからの成分の和となるので、
Fn=σxx/Rxx+σyy/Ryy+2σxy/Rxy …(11)
により表されることとなる。ここで、Rxx、Ryy、Rxyは、図4(B)に示されている如く、それぞれの応力σijの作用する部位に於ける曲面片の曲率半径である(応力の釣り合いから、σxy=σyxであり、対称性からRxy=Ryxである。)。また、上記の式(6)に於いて、1/Rxx,1/Ryy,1/Rxyは、それぞれ、曲面片に於ける曲率行列Qijの成分であるので、結局、シェル面に於いて、誘導力ベクトルの厚み方向の成分は、曲率行列Qijと応力テンソルσij(i,j=x,y)を用いて、
Fn=ΣiΣjQijσij …(A)
(ここに於いては、Σi、Σjは、i、jについての総和を表す。)
により算出される。なお、ここに示す計算は、各要素に対して、または各接点に対して、あるいはそれらの両方に対して行うことができ、どちらの方法であっても本発明の目的は達成できる。
τ13=cosθsinθ・σ1〜θ・σ1 …(7)
となる。また、OC間の距離をΔxとすると、シェルのx方向の曲率半径Rと角度θの間に
R=Δx/θ …(8)
の関係があり、τ13の微分は差分で近似できて、
∂τ13/∂x1
〜{τ13(点C)−τ13(点O)}/Δx=τ13(点C)/Δx …(9)
により与えられる。以上の考察を一般化すれば、面の延在方向の応力σij(i,j=x又はy。有限要素法では、面の表面と裏面の応力の平均値)と、それによる誘導力ベクトル成分のシェル面に垂直な成分(e3の方向)Fn(i,j)との関係は、図4(A)から理解される如く、
Fn(i,j)=σij/Rij …(10)
となる。ここで、式(10)は一般化されているので、xとyの方向は応力の主軸方向である必要は無く、シェル面の延在方向に取られた任意の座標系であってよい。Rijは、R11(Rxx)、R12(Rxy)、R21(Ryx)、R22(Ryy)の成分があり、R11はシェル面のx方向に沿った線上の曲率半径、R22はシェル面のy方向に沿った線上の曲率半径、R12はシェル面のx=y方向に沿った線上の曲率半径とx=−y方向に沿った線上の曲率半径の差であり、また、R21=R12である。従って、図4(B)に模式的に描かれている如きシェル構造の曲面片に於いて、厚み方向の誘導力ベクトルの成分Fnは、全ての面の延在方向の応力σijからの成分の和となるので、
Fn=σxx/Rxx+σyy/Ryy+2σxy/Rxy …(11)
により表されることとなる。ここで、Rxx、Ryy、Rxyは、図4(B)に示されている如く、それぞれの応力σijの作用する部位に於ける曲面片の曲率半径である(応力の釣り合いから、σxy=σyxであり、対称性からRxy=Ryxである。)。また、上記の式(6)に於いて、1/Rxx,1/Ryy,1/Rxyは、それぞれ、曲面片に於ける曲率行列Qijの成分であるので、結局、シェル面に於いて、誘導力ベクトルの厚み方向の成分は、曲率行列Qijと応力テンソルσij(i,j=x,y)を用いて、
Fn=ΣiΣjQijσij …(A)
(ここに於いては、Σi、Σjは、i、jについての総和を表す。)
により算出される。なお、ここに示す計算は、各要素に対して、または各接点に対して、あるいはそれらの両方に対して行うことができ、どちらの方法であっても本発明の目的は達成できる。
誘導力ベクトルの算出
上記の誘導力ベクトルI、Fnは、有限要素法によって得られた応力値のデータを用いて算出される。構造体が図3に例示されている如き立体であり、誘導力ベクトルIの式として、式(4)が用いられる場合、誘導力ベクトルIの式の中のx1、x2、x3方向(主軸方向)の主応力の微分値は、例えば、各要素に於いて、それと隣り合う要素との差分と要素間の距離Δx,Δy,Δzから最小二乗法等の方法を用いて算出されてよい。一つの要素についての演算に於いて、隣り合う要素の数は、図示していない厚み方向も含めれば、最大26個になるところ、そのうちのいくつを計算に使用するかは任意であり、より広い範囲の要素まで含めて計算しても良い。構造体がシェル構造である場合、誘導力ベクトルのうち、特に重要であるのは、面に垂直方向(厚み方向)の成分Fnである。なぜなら、面に垂直方向の力は容易にシェル構造を変形させうるので、前述した力が逃げる現象を起こしやすいからである。誘導力ベクトルの厚み方向の成分Fnの式として、式(A)が用いられる場合、曲率行列の成分Qijは、例えば、特許文献5に記載された手法により算出されてよい。
上記の誘導力ベクトルI、Fnは、有限要素法によって得られた応力値のデータを用いて算出される。構造体が図3に例示されている如き立体であり、誘導力ベクトルIの式として、式(4)が用いられる場合、誘導力ベクトルIの式の中のx1、x2、x3方向(主軸方向)の主応力の微分値は、例えば、各要素に於いて、それと隣り合う要素との差分と要素間の距離Δx,Δy,Δzから最小二乗法等の方法を用いて算出されてよい。一つの要素についての演算に於いて、隣り合う要素の数は、図示していない厚み方向も含めれば、最大26個になるところ、そのうちのいくつを計算に使用するかは任意であり、より広い範囲の要素まで含めて計算しても良い。構造体がシェル構造である場合、誘導力ベクトルのうち、特に重要であるのは、面に垂直方向(厚み方向)の成分Fnである。なぜなら、面に垂直方向の力は容易にシェル構造を変形させうるので、前述した力が逃げる現象を起こしやすいからである。誘導力ベクトルの厚み方向の成分Fnの式として、式(A)が用いられる場合、曲率行列の成分Qijは、例えば、特許文献5に記載された手法により算出されてよい。
図5は、図8(A)のH字型の梁状部材に曲げ荷重を与えた場合に算出された誘導力ベクトルの分布の例を示している。同図を参照して、誘導力ベクトルが上下の板部材に於いて互いに向かっており、また、上下の板部材の中心線とそれと平行な両縁の中間辺りで大きさが増大していることが理解される。この誘導力ベクトルの分布と図8(B)の変形解析のグラフィック表示を対照すると、既に触れた如く、上下の板部材は、両縁が互いに向かう方向に湾曲しており、誘導力ベクトルの向きと一致することが理解される。かくして、誘導力ベクトルを参照することで、上下の板部材の中心線とそれと平行な両縁の中間辺りで荷重伝達方向とは別の方向の力が作用し、かかる領域では付与した荷重(曲げモーメント)の伝達の寄与が小さく、又、付与した荷重伝達方向とは別の方向の湾曲が生じるという理由を考察することが可能となる。
誘導力影響指標値の演算
上記の如く、誘導力ベクトルの分布が得られると、付与した荷重とは別の方向の湾曲が生ずる領域についての考察が可能となるところ、かかる誘導力ベクトルの構造体に対する影響又は寄与は、誘導力ベクトルが存在する場合と誘導力ベクトルが存在しない場合とに於ける変形後の構造体の状態を観察すると、より明確に把握できることが期待される。そこで、本発明の装置に於いては、誘導力ベクトルの算出とともに、誘導力ベクトルが存在した状態に於ける構造体の各要素の変位(非修正変位)と、誘導力ベクトルが存在していない状態に於ける構造体の各解析要素の変位(修正変位)とがそれぞれ算出される。そして、非修正変位と修正変位とを比較して、誘導力ベクトルの寄与の考察するために、非修正変位と修正変位とに基づいて「誘導力影響指標値」、即ち、誘導力ベクトルの寄与を表す指標値が算出される。
上記の如く、誘導力ベクトルの分布が得られると、付与した荷重とは別の方向の湾曲が生ずる領域についての考察が可能となるところ、かかる誘導力ベクトルの構造体に対する影響又は寄与は、誘導力ベクトルが存在する場合と誘導力ベクトルが存在しない場合とに於ける変形後の構造体の状態を観察すると、より明確に把握できることが期待される。そこで、本発明の装置に於いては、誘導力ベクトルの算出とともに、誘導力ベクトルが存在した状態に於ける構造体の各要素の変位(非修正変位)と、誘導力ベクトルが存在していない状態に於ける構造体の各解析要素の変位(修正変位)とがそれぞれ算出される。そして、非修正変位と修正変位とを比較して、誘導力ベクトルの寄与の考察するために、非修正変位と修正変位とに基づいて「誘導力影響指標値」、即ち、誘導力ベクトルの寄与を表す指標値が算出される。
具体的には、まず、誘導力ベクトルの算出は、上記の如く実行され、誘導力ベクトルが存在した状態に於ける構造体の各要素の非修正変位は、通常の態様にて、荷重を構造体の任意の部位に付与した状態にて有限要素法に従って算出されてよい。
誘導力ベクトルが存在していない状態に於ける構造体の各要素の修正変位については、誘導力ベクトルが存在した状態に於ける荷重から誘導力ベクトルを減算した状態にて、構造体の各要素の変位が算出される。より詳細には、まず、構造体に対して或る荷重を付与した場合の各解析要素の誘導力ベクトルが算出されると、各解析要素の節点の各々に付与された荷重(ベクトル)から誘導力ベクトルが減算される。なお、先の誘導力ベクトル及び構造体の変位の演算に於いて荷重が付与されていない節点に於いては、荷重=0の状態から誘導力ベクトルの大きさに相当する分が差し引かれることとなる。特に、構造体が図6(A)に示されている如きシェル構造である場合、各節点iに於いて下記の修正荷重Pi *が付与されることとなる。
Pi *=Pi−fi …(12)
ここに於いて、iは、節点の符号であり、Piは、誘導力ベクトルを算出した際に各節点に付与された荷重である(従って、荷重を付与しなかった節点では、Pi=0である。)。fiは、各節点に作用する誘導力ベクトル成分である(即ち、誘導力ベクトルの成分の減算は、シェル構造の場合には、厚み方向のみ行われてよい。)。誘導力ベクトルが各要素a に対してのみ算出される場合においては、節点毎の式(7)の修正荷重Pi *を算出する場合には、図6(B)に示されている如く、節点が属する解析要素にて算出された誘導力ベクトルの平均値がfiとして用いられてよい。即ち、各節点の誘導力ベクトルの成分fiは、
fi=(1/Ni)ΣFn aVa …(13)
により与えられる。ここに於いて、Niは、節点iの属する解析要素の数であり、aは、解析要素の符号であり、Fn aは、解析要素aの厚み方向の誘導力ベクトル成分であり、Vaは、解析要素aの体積(面積×厚み)であり、Σは、節点iの属する解析要素についての値の総和である。そして、式(7)による修正荷重Pi *を付与した状態で構造体の各要素の変位は、通常の態様にて、有限要素法に従って算出されてよい。
Pi *=Pi−fi …(12)
ここに於いて、iは、節点の符号であり、Piは、誘導力ベクトルを算出した際に各節点に付与された荷重である(従って、荷重を付与しなかった節点では、Pi=0である。)。fiは、各節点に作用する誘導力ベクトル成分である(即ち、誘導力ベクトルの成分の減算は、シェル構造の場合には、厚み方向のみ行われてよい。)。誘導力ベクトルが各要素a に対してのみ算出される場合においては、節点毎の式(7)の修正荷重Pi *を算出する場合には、図6(B)に示されている如く、節点が属する解析要素にて算出された誘導力ベクトルの平均値がfiとして用いられてよい。即ち、各節点の誘導力ベクトルの成分fiは、
fi=(1/Ni)ΣFn aVa …(13)
により与えられる。ここに於いて、Niは、節点iの属する解析要素の数であり、aは、解析要素の符号であり、Fn aは、解析要素aの厚み方向の誘導力ベクトル成分であり、Vaは、解析要素aの体積(面積×厚み)であり、Σは、節点iの属する解析要素についての値の総和である。そして、式(7)による修正荷重Pi *を付与した状態で構造体の各要素の変位は、通常の態様にて、有限要素法に従って算出されてよい。
図7は、上記の一連の処理を実行した場合の構造体の状態を模式的に描いたものである。同図を参照して、図7(A)に於いて、或る解析部材に対して、荷重を付与した状態にて、誘導力ベクトル分布(左図)と、変形後の構造体の変位(右図)が算出される。そうすると、変形後の構造体に於いて、誘導力ベクトル分布に対応して、荷重の伝達方向とは別の方向の変形(図中、点線にて囲んだ部位)をする領域が発生する場合がある。かかる領域の変形は、誘導力ベクトルに起因するもので、力が逃げている現象が起きていると予想される。そこで、図7(B)に於いて描かれている如く、誘導力ベクトルを相殺するように荷重を付与した状態(左図)にて、変形後の構造体の変位(右図)が算出される。その場合、図7(A)で力の逃げが起きている領域に於いて、誘導力ベクトルの相殺の効果により、力の逃げの消失などの変化が生ずることが期待される。かくして、図7(C)に於いて描かれている如く、荷重の修正前の構造体の状態(A)と荷重の修正後の構造体の状態(B)とを比較することにより、誘導力ベクトルの影響又は寄与がより明確に把握できることとなる。なお、通常の構造解析において、変位は、構造体の大きさに比べると微小であり、変位によって形状が変化する事の影響は無視できる事が多い。本発明に於いても非修正変位と修正変位は共に微小であるとみなしており、図7、図8では説明の為に変形が拡大されて表示されている。変形が無視できないような場合においては、一般的に、少し変形した後の形状から構造モデルを作り直し、作り直した構造に対して解析を行うという事を繰り返して最終的に大きな変形に対する解析を行うという方法が用いられており、本発明に於いても同様の事が可能である。
図7(C)に描かれている如き、上記の荷重の修正前の構造体の状態(A)と荷重の修正後の構造体の状態(B)との比較に於いて、単に、それぞれの構造体の形状を比較して観察するだけでは、誘導力ベクトルの影響を定量的に把握することは困難である。そこで、本発明の装置に於いては、更に、上記の如く、非修正変位と修正変位とに基づいて「誘導力影響指標値」が算出される。具体的には、誘導力ベクトルが存在した状態に於ける構造体の各節点の非修正変位uiと、誘導力ベクトルが存在していない状態に於ける構造体の各節点の修正変位ui*とを用いて、それらの差分、
βi=ui−ui* …(14a)
それらの比、
γi=ui/ui* …(14b)
などが各節点について算出されてよい。或いは、構造体の任意の一部の領域、例えば、有意な荷重を付与した領域(図中、Tにて囲まれた領域)の非修正変位uiと修正変位ui*とについて、下記の補正係数λTを定義し、
λT=Σui/Σui* …(15)
(ここに於いて、Σは、領域τ内での総和である。)、
更に、下記の影響度βiτが算出されてよい。
βiT=(ui−λTui*) …(16a)
又は
βiT=(ui−λTui*)・fi …(16b)
ここに於いて、・は、ベクトルの内積を表している。
上記の式(11a、b)に於いて、(ui−λTui*)は、領域T内に於いては、その値が実質的に0となることが期待される一方、領域T以外の誘導力ベクトルの存在した領域では、その有無による差異が顕著となり、誘導力ベクトルの寄与をより明瞭に把握するのに有利である。領域Tの選択は、有意な誘導力ベクトルの存在した領域に於けるβiTの値が大きくなるように或いは有意な誘導力ベクトルの存在していない領域に於けるβiTの値が小さくなるように適宜選択されてよい。上記のβi、γi、βiTは、構造体のグラフィック表示と伴にモニター3上に表示されてよい。
βi=ui−ui* …(14a)
それらの比、
γi=ui/ui* …(14b)
などが各節点について算出されてよい。或いは、構造体の任意の一部の領域、例えば、有意な荷重を付与した領域(図中、Tにて囲まれた領域)の非修正変位uiと修正変位ui*とについて、下記の補正係数λTを定義し、
λT=Σui/Σui* …(15)
(ここに於いて、Σは、領域τ内での総和である。)、
更に、下記の影響度βiτが算出されてよい。
βiT=(ui−λTui*) …(16a)
又は
βiT=(ui−λTui*)・fi …(16b)
ここに於いて、・は、ベクトルの内積を表している。
上記の式(11a、b)に於いて、(ui−λTui*)は、領域T内に於いては、その値が実質的に0となることが期待される一方、領域T以外の誘導力ベクトルの存在した領域では、その有無による差異が顕著となり、誘導力ベクトルの寄与をより明瞭に把握するのに有利である。領域Tの選択は、有意な誘導力ベクトルの存在した領域に於けるβiTの値が大きくなるように或いは有意な誘導力ベクトルの存在していない領域に於けるβiTの値が小さくなるように適宜選択されてよい。上記のβi、γi、βiTは、構造体のグラフィック表示と伴にモニター3上に表示されてよい。
誘導力ベクトルの算出の別の実施形態
既に述べた如く、構造体がシェル構造である場合、誘導力ベクトルは、式(A)に従って、曲率行列Qijと応力テンソルσijとにより算出される。この点に関し、有限要素法による数値解析に於いて、各節点の応力テンソルσijは、剛性行列Sと変位ベクトルuiとを用いて
σij=S・ui
の形式にて算出され、また、変位ベクトルuiは、各節点の荷重ベクトルPiと影響変数行列Kとを用いて、
ui=K・Pi
の形式にて算出される。ここに於いて、式(A)の演算を
Q*σ=ΣiΣjQijσij …(A)
と表記すると、誘導力ベクトルFnは、
Fn=Q*S・ui …(17a)
Fn=Q*S・K・Pi …(17b)
により与えられる。剛性行列Sと影響変数行列Kとは、数値モデルの設定により決定されるので、誘導力ベクトルは、応力を陽に算出せずに、変位ベクトルuiから、或いは、荷重ベクトルPiから直接的に算出されてよい。なお、この場合に算出される誘導力ベクトルは、構造体の変形後の誘導力ベクトルの成分となる。
既に述べた如く、構造体がシェル構造である場合、誘導力ベクトルは、式(A)に従って、曲率行列Qijと応力テンソルσijとにより算出される。この点に関し、有限要素法による数値解析に於いて、各節点の応力テンソルσijは、剛性行列Sと変位ベクトルuiとを用いて
σij=S・ui
の形式にて算出され、また、変位ベクトルuiは、各節点の荷重ベクトルPiと影響変数行列Kとを用いて、
ui=K・Pi
の形式にて算出される。ここに於いて、式(A)の演算を
Q*σ=ΣiΣjQijσij …(A)
と表記すると、誘導力ベクトルFnは、
Fn=Q*S・ui …(17a)
Fn=Q*S・K・Pi …(17b)
により与えられる。剛性行列Sと影響変数行列Kとは、数値モデルの設定により決定されるので、誘導力ベクトルは、応力を陽に算出せずに、変位ベクトルuiから、或いは、荷重ベクトルPiから直接的に算出されてよい。なお、この場合に算出される誘導力ベクトルは、構造体の変形後の誘導力ベクトルの成分となる。
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
Claims (2)
- コンピュータを用いた構造体の力学的特性の数値解析装置であって、
複数の解析要素を有する前記構造体の数値モデルに於いて前記構造体に対して荷重を与えた場合に前記解析要素の各々にて前記荷重の方向とは別の方向に作用する誘導力ベクトルを算出する手段と、
前記構造体の数値モデルに於いて前記構造体に対して前記荷重を与えた場合に前記解析要素の各々にて生ずる非修正変位を算出する手段と、
前記構造体の数値モデルに於いて前記構造体に対して前記荷重から前記誘導力ベクトルを減算して得られる修正荷重を与えた場合に前記解析要素の各々にて生ずる修正荷重を算出する手段と、
前記解析要素の各々に於ける前記非修正変位と前記修正変位とに基づいて前記誘導力ベクトルの寄与を表す指標値を算出する手段と
前記誘導力ベクトルの寄与を表す前記指標値を出力又は表示する手段と
を含む装置。 - 有限要素法に従ってコンピュータを用いた構造体の力学的特性の数値解析装置であって、
複数の解析要素を有する前記構造体のシェル構造を仮定した数値モデルに於いて前記構造体に対して与えられる荷重及び該荷重を与えた場合に生ずる前記構造体の解析要素の各々の変位を算出する影響変数行列又は前記荷重と前記影響変数行列とを用いて算出された前記解析要素の各々の変位と、前記解析要素の剛性行列と、前記解析要素の曲率行列とを用いて、前記構造体に対して荷重を与えた場合に前記解析要素の各々にて前記荷重の方向とは別の方向に作用する誘導力ベクトルを算出する手段と、
前記誘導力ベクトルを出力又は表示する手段と
を含む装置。
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---|---|---|---|
JP2016087304A JP2017199084A (ja) | 2016-04-25 | 2016-04-25 | 誘導力を用いた構造体の力学的弱点を発見可能な構造体設計支援装置 |
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---|---|---|---|---|
JP6440892B1 (ja) * | 2018-09-04 | 2018-12-19 | 義昭 新納 | 内部状態推定システム |
CN110427683A (zh) * | 2019-07-29 | 2019-11-08 | 同济大学建筑设计研究院(集团)有限公司 | 筒仓式地下结构力学参数确定方法、装置和设备 |
-
2016
- 2016-04-25 JP JP2016087304A patent/JP2017199084A/ja active Pending
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JP2020038128A (ja) * | 2018-09-04 | 2020-03-12 | 義昭 新納 | 内部状態推定システム |
CN110427683A (zh) * | 2019-07-29 | 2019-11-08 | 同济大学建筑设计研究院(集团)有限公司 | 筒仓式地下结构力学参数确定方法、装置和设备 |
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