JP2017190484A - フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた高温クリープ強度が長期間維持されるフェライト系ステンレス鋼を提供する。【解決手段】C:0.05質量%以下、Si:0.1〜1.0質量%、Mn:0.1〜2.0質量%、Cr:13.5〜16.5質量%、Ti:0.5〜3.0質量%、Zr:0.2〜1.5質量%、Ni:1.0〜5.0質量%、Al:0.88〜4.0質量%、Cu:0.5〜3.0質量%、B:0.005質量%以下、N:0.05質量%以下、P:0.005〜0.05質量%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなると共に、前記不可避不純物におけるSが0.005質量%以下に制限され、前記Ti,Alの各含有量(質量%)をそれぞれ[Ti]、[Al]で表したときに、下式(1)、(2)を満足することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼である。[Al]/27+[Ti]/48≧0.05 ・・・(1)[Al]/[Ti]×(48/27)≧1.85 ・・・(2)【選択図】なし

Description

本発明は、フェライト系ステンレス鋼に関し、特に高温クリープ強度の優れるものに関する。
火力発電プラントや化学プラントの熱交換器に使用される鋼管は、耐酸化性、耐食性に加えて、限界温度650℃もの優れた耐熱性が要求されるため、オーステナイト系ステンレス鋼やフェライト系ステンレス鋼で形成される。オーステナイト系ステンレス鋼は、耐酸化性、耐食性、およびクリープ強度を含む高温強度のいずれも良好であり、耐熱材料として良好な特性を備えているが、Niを多量に含有する(例えば、SUS304で8質量%)ために原料コストが高い。一方、フェライト系ステンレス鋼は、Ni含有量が少なく原料コストが安い上、熱膨張率や熱伝導率など熱交換器としてより優れた特性を有しているが、オーステナイト系ステンレス鋼と比べて高温での強度に劣る。
そのため、高温強度を向上させたフェライト系ステンレス鋼が開発されている。例えば、Crを9質量%含有する9Cr系焼戻しマルテンサイト鋼が開発され実用化されている。9Cr系焼戻しマルテンサイト鋼は、安価で熱膨張率が小さく熱疲労等の懸念が少ないという利点があるものの、高温クリープ強度がオーステナイト系ステンレス鋼に及ばない。
ここで、フェライト系ステンレス鋼には、鋼中にマルテンサイト組織を形成させた後に焼戻し処理を施された焼戻しマルテンサイト鋼と、フェライトの単相組織が形成されたフェライト単相鋼が知られ、これらは材料組織的に明確な相違がある。フェライト単相鋼は、製造における最終工程が析出物を固溶させるための溶体化処理であって、材料組織は結晶粒組織のみであり、製品として高温環境で使用されて初めて析出形成が生じる。これに対し、焼戻しマルテンサイト鋼は微細なラス組織を有し、製造段階の焼戻し処理で析出形成が生じる。前記の9Cr系焼戻しマルテンサイト鋼等の既に実用化されているフェライト系ステンレス鋼の多くは、焼戻しマルテンサイト鋼である。しかし、焼戻しマルテンサイト鋼は、高温環境で長期間保持される間にマルテンサイト組織のラス構造が崩れ、クリープ強度が長期間維持されないという問題がある。そこで、例えば特許文献1には、フェライト粒内やマルテンサイト粒内にL10型またはL12型規則構造を有する金属間化合物相を析出させることにより、長期間クリープ強度を有するフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
一方、フェライト単相鋼では高温環境での組織変化を生じ得ないので、長期信頼性が良好であるものの、焼戻しマルテンサイト鋼のような高温クリープ強度を有さない。そこで、例えば特許文献2,3には、金属間化合物の相の一つであるLaves相によって強化されたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。鉄基合金におけるLaves相とは、Fe2M型(M:遷移金属等)の金属間化合物であり、通常、フェライト系ステンレス鋼に遷移金属を添加し、かつ、この遷移金属が炭化物や窒化物等の非金属化合物を形成しないような低い炭素・窒素濃度であるときに形成される。
特許第4221518号公報 特開2001−158947号公報 特開2014−214348号公報
特許文献1に記載されたフェライト系ステンレス鋼は、クリープ強度向上のための金属間化合物相を析出させるために、Pd,Ptのような貴金属を添加されているので、原料コストが高くなり、フェライト系ステンレス鋼の低コストという利点が損なわれる。また、特許文献2,3に記載されたフェライト系ステンレス鋼は、Laves相によって強化されているが、Laves相は高温下で粗大化し易く、高温環境では強化作用が長期間安定したものにならない。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、熱交換器等の高温機器に使用される鋼管として、高コスト化することなく、優れた高温クリープ強度を長期間維持されるフェライト系ステンレス鋼を提供することにある。
本発明者らは、フェライト単相鋼について、高温環境で長期間の優れたクリープ強度を付与すべく鋭意研究した結果、Laves相を形成する遷移金属の中で比較的安価なTiを添加し、さらにNi,Alを添加すると、Ti−Fe−Ni−Al金属間化合物(TiFe0.4Ni1.6Al)が析出して、Laves相(Fe2Ti)が形成され難くなることに着目した。本発明者らは、このTiFe0.4Ni1.6Alが、高温環境でLaves相よりも格段に微細な状態を維持し、高温クリープ強度をいっそう向上させる上、長期間維持し得ることを見出した。具体的には、650℃で300hr程度経過すると、Fe2Tiが円相当径500〜1000nm程度まで粗大化するのに対し、TiFe0.4Ni1.6Alは100nm程度を維持し、高い個数密度で分散させることができる。本発明者らは、TiFe0.4Ni1.6Alが十分に形成されるために、Ti,Ni,Alを所定量添加すると共に、Tiの炭化物、窒化物を形成させるC,Nの含有量を抑制し、さらに、TiがFe2TiよりもTiFe0.4Ni1.6Alを形成するために、AlをTiに対して十分に添加することに想到した。
すなわち、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼は、C:0.05質量%以下、Si:0.1〜1.0質量%、Mn:0.1〜2.0質量%、Cr:13.5〜16.5質量%、Ti:0.5〜3.0質量%、Zr:0.2〜1.5質量%、Ni:1.0〜5.0質量%、Al:0.88〜4.0質量%、Cu:0.5〜3.0質量%、B:0.005質量%以下、N:0.05質量%以下、P:0.005〜0.05質量%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなると共に、前記不可避不純物として含まれるSが0.005質量%以下に制限され、前記Ti、前記Alの各含有量(質量%)をそれぞれ[Ti]、[Al]で表したときに、下式(1)および下式(2)を満足することを特徴とする。
[Al]/27+[Ti]/48≧0.05 ・・・(1)
[Al]/[Ti]×(48/27)≧1.85 ・・・(2)
かかる構成のフェライト系ステンレス鋼は、C,Nの含有量を抑制し、Tiと共にNi,Alを添加して、さらにAlをTiに対して所定以上の含有量とすることにより、高温環境で、TiFe0.4Ni1.6Alが十分に形成されて鋼中に微細に析出、分散する。その結果、フェライト系ステンレス鋼は、高温クリープ強度が高く、かつ長期間維持される。また、フェライト系ステンレス鋼は、Alを十分に含有するので、フェライト相の安定性がNiにより低下することがなく、フェライト単相組織からなり、その結果、耐熱性に優れ、また、高濃度のCrにより十分な耐酸化性を有する。
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼によれば、耐酸化性および耐熱性に優れているので、熱交換器等の高温機器に好適に使用される鋼管になり、さらに原料コストが増大しない上に、高温でのクリープ強度が高くて耐クリープ変形能に優れているため、高温機器の肉厚を薄く形成することができて製造コストを削減することができる。
実施例および比較例に係るフェライト系ステンレス鋼材の、Al,Tiの原子濃度の和とNi含有量との分布図である。
以下、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼を実現するための形態について説明する。
〔フェライト系ステンレス鋼〕
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼は、C:0.05質量%以下、Si:0.1〜1.0質量%、Mn:0.1〜2.0質量%、Cr:13.5〜16.5質量%、Ti:0.5〜3.0質量%、Zr:0.2〜1.5質量%、Ni:1.0〜5.0質量%、Al:0.88〜4.0質量%、Cu:0.5〜3.0質量%、B:0.005質量%以下、N:0.05質量%以下、P:0.005〜0.05質量%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなると共に、前記不可避不純物として含まれるSが0.005質量%以下に制限される。さらに、前記Ti、前記Alの各含有量(質量%)をそれぞれ[Ti]、[Al]で表したときに、下式(1)および下式(2)を満足する。以下に、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼の化学成分組成について説明する。
[Al]/27+[Ti]/48≧0.05 ・・・(1)
[Al]/[Ti]×(48/27)≧1.85 ・・・(2)
(C:0.05質量%以下)
Cは、高温環境において炭化物を形成して、高温強度や高温クリープ強度を向上させる作用を有する元素である。しかし、Cは、Tiを炭化物として固定するので、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼においては、TiをNi,Al等との金属間化合物(TiFe0.4Ni1.6Al)として十分に析出させてクリープ強度を向上させるために、含有量が少ないことが好ましく、下限は特に規定しない。具体的には、C含有量は0.05質量%以下とし、好ましくは0.04質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下である。
(Si:0.1〜1.0質量%)
Siは、溶鋼中で脱酸作用を有する元素であり、また、微量であっても耐酸化性の向上に有効に作用する。これらの効果を発揮させるために、Si含有量は0.1質量%以上とし、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。一方で、Siを過剰に含有すると、σ相を形成させて靭性が低下するので、Si含有量は1.0質量%以下とし、好ましくは0.7質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
(Mn:0.1〜2.0質量%)
Mnは、Siと同様に溶鋼中で脱酸作用を有する元素であり、この効果を発揮させるために、Mn含有量は0.1質量%以上とし、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。一方で、Mnを過剰に含有すると、オーステナイト相の安定性が高くなってフェライト単相組織が維持され難くなるので、Mn含有量は2.0質量%以下とし、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
(Cr:13.5〜16.5質量%)
Crは、ステンレス鋼としての耐食性(耐酸化性)を発現するために必須の元素である。十分な耐酸化性を発揮させるために、Cr含有量は13.5質量%以上とし、好ましくは14.0質量%以上、より好ましくは14.5質量%以上である。一方で、Crを過剰に含有すると、高温環境下でスピノーダル分解を生じて延性や靱性が低下する虞があるので、Cr含有量は16.5質量%以下とし、好ましくは16.0質量%以下、より好ましくは15.5質量%以下である。
(Ti:0.5〜3.0質量%)
Tiは、高温下でフェライト相中に金属間化合物として析出することにより強度が向上し、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼において高温強度を向上させるための必須の元素である。この効果を十分に発揮させるために、Ti含有量は0.5質量%以上とし、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上である。一方で、Ti含有量が増加すると、高温下で析出量が過剰となって靱性が低下するので、Ti含有量は3.0質量%以下とし、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下である。
(Zr:0.2〜1.5質量%)
Zrは、炭化物、窒化物を形成することにより鋼中に固溶するC,Nを固定して、Tiが炭化物や窒化物を形成することを抑制し、金属間化合物を形成し易くする。この効果を十分に発揮させるために、Zr含有量は、0.2質量%以上とし、好ましくは0.3%質量以上、より好ましくは0.4質量%以上である。一方で、Zr含有量が過剰になると熱間加工性が低下するため、1.5質量%以下とし、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.6質量%以下である。
(Ni:1.0〜5.0質量%)
Niは、固溶強化によって高温強度を向上させる元素として知られ、また、鋼中にAl,Tiと共存して高温下でTiFe0.4Ni1.6Alを形成し、鋼中に微細に分散してクリープ強度を向上させるので、Niは、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼において高温クリープ強度を向上させるための必須の元素である。この効果を発揮させるために、Ni含有量は1.0質量%以上とし、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上である。一方で、Niを多量に含有させると原料コストが高くなるので、Ni含有量は5.0質量%以下とし、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。
(Al:0.88〜4.0質量%)
Alは、フェライト相を安定化する作用を有し、また、鋼中にNi,Tiと共存して高温下でTiFe0.4Ni1.6Alを形成しする。そのため、Alは、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼において、フェライト単相組織を維持し難くする作用を有するNiを十分に添加するために、また、高温クリープ強度を向上させるために、必須の元素である。前記作用を十分に得るために、後記するように原子濃度でTiとの和およびTiに対する比をそれぞれ所定値以上とするように、Al含有量は0.88質量%以上とし、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上である。一方で、Alを過剰に含有すると、Al酸化物を主体とした介在物によって表面性状が損なわれるため、Al含有量は4.0質量%以下とし、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下である。
(Cu:0.5〜3.0質量%)
Cuは、フェライト相中に単独で析出し、析出強化によって強度を向上させ、特に高温環境において金属間化合物よりも短時間で強化に寄与することができる。この効果を十分に発揮させるために、Cu含有量は0.5質量%以上とし、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.3質量%以上である。一方で、Cuを過剰に含有すると、製造時の熱間加工で割れを生じる虞があるので、Cu含有量は3.0質量%以下とし、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下である。
(B:0.005質量%以下)
Bは、鋼中に固溶することで熱間加工性を向上させる作用がある。一方で、Bを過剰に含有すると、溶接時の延性を低下させるので、B含有量は0.005質量%以下とし、好ましくは0.003質量%以下、より好ましくは0.0025質量%以下である。
(N:0.05質量%以下)
Nは、高温環境において窒化物を形成して、高温強度や高温クリープ強度を向上させる作用を有する元素である。しかし、Nは、Tiを窒化物として固定するので、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼においては、TiをNi,Al等との金属間化合物(TiFe0.4Ni1.6Al)として十分に析出させてクリープ強度を向上させるために、含有量が少ないことが好ましく、下限は特に規定しない。具体的には、N含有量は0.05質量%以下とし、好ましくは0.04質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下である。
(P:0.005〜0.05質量%)
Pは、高温環境に長期間曝される状況でリン化物を形成して高温強度を向上させる作用があるため、P含有量は0.005質量%以上とし、好ましくは0.015質量%以上、より好ましくは0.020質量%以上である。一方で、Pを0.05質量%を超えて含有すると、溶接割れを生じ易くなるので、P含有量は0.05質量%以下とし、好ましくは0.04質量%以下、より好ましくは0.035質量%以下である。
(不可避不純物、S:0.005質量%以下)
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼は、不可避不純物として、Sを含有していてもよいが、その含有量が増加すると熱間加工性を劣化させるため、0.005質量%以下に抑制し、好ましくは0.002質量%以下、より好ましくは0.001%質量以下である。
(その他の不可避不純物)
また、スクラップ原料に由来するSn,Pb,Sb,As,Zn等の低融点不純物金属は、熱間加工時や高温環境での使用時に粒界の強度を低下させるので、低濃度に抑えることが好ましく、具体的には、それぞれ0.015質量%以下に抑制し、その総量を0.04質量%以下とする。また、Mo,W,Nb,Hf,Ta,Co,V等の遷移金属は、Tiと同様に高温下でLaves相を形成して強度を向上させるものの長期間維持し難く、さらに室温ではFe母相中に固溶して延性を低下させるため、それぞれ0.3質量%以下に抑制する。さらにこれらの成分は、合計(Sを除く)で1.0質量%以下とする。このような含有量であれば、本発明の所望する効果に影響しない。
(Ti,Alの原子濃度の和:0.05at%以上、AlのTiに対する原子濃度の比:1.85以上)
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼において、高温下でTiFe0.4Ni1.6Alを十分に析出させてクリープ強度を向上させるために、Ti,Alは、各含有量がそれぞれ前記範囲であると共に、原子濃度(at%)での和が0.05以上とする。すなわち、Ti,Alの各原子量が48,27であるから、Ti,Alの各含有量(質量%)は、それぞれ[Ti]、[Al]で表されたときに、下式(1)を満足させる。TiFe0.4Ni1.6Alの析出量をより多くして高温クリープ強度をいっそう向上させるために、前記和は、好ましくは0.075以上、より好ましくは0.1以上である。一方で、フェライト系ステンレス鋼において、Tiが、Alに対して多く含有されると、TiFe0.4Ni1.6Alを形成し難くなって、Fe2Ti(Laves相)を形成し、その結果、クリープ強度が高温下で保持されない。したがって、Alは、Tiに対して多く含有され、具体的には、原子濃度でTiの1.85倍以上とし、すなわち、下式(2)を満足させる。TiFe0.4Ni1.6Alがより安定して形成されるために、前記比は、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上である。
[Al]/27+[Ti]/48≧0.05 ・・・(1)
[Al]/[Ti]×(48/27)≧1.85 ・・・(2)
(フェライト系ステンレス鋼材の製造方法)
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼の化学成分組成を有する鋼材(フェライト系ステンレス鋼材)は、溶解にて原料の割合を適宜調節することで容易に得られ、得られた鋳塊は必要に応じてソーキング(均質化熱処理)や熱間加工による形状の調整を経た後、適切な溶体化処理を行う。ソーキングについては、造塊法であれば、例えば1250〜1300℃の範囲で10時間程度保持することで凝固偏析が解消され、連続鋳造で作製した場合は、より短い時間か省略することもできる。熱間加工は概ね1000℃以上に加熱した状態で加工することができる。このようにして得られた鋼材は適宜、中間工程として冷間加工と熱処理を組み合わせて金属組織の制御を行うことも可能であり、冷間加工を加えることで熱処理後の結晶粒径を微細化・均質化し易い場合がある。本発明に係るフェライト系ステンレス鋼材の製造においては、中間工程の有無によらず、最終工程を溶体化のための熱処理とする。溶体化処理は、1100℃以上の温度で60秒間以上保持し、その後、保持温度から300℃以下まで、60秒間以内で冷却することが好ましい。このような冷却方法として、空冷よりも水冷が急冷し易く好ましい。
以上、本発明を実施するための形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例によって制限を受けるものではなく、請求項に示した範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
〔試験材作製〕
表1に示す化学成分組成からなる鋼材を溶解し、真空溶解炉(VIF)にて溶製した20kgインゴットに、1280℃で8時間のソーキング処理を施した後、幅60mm×厚さ20mmに熱間鍛造加工した。さらに、1200℃で5分間保持後、浸漬水冷の溶体化処理を施して母材とした。なお、表1に、鋼材のAl,Tiの原子濃度の和([Al]/27+[Ti]/48)および比([Al]/[Ti]×(48/27))を併記する。
(高温クリープ強度)
高温クリープ強度の評価としてクリープ破断時間を測定した。母材から、ゲージ部の寸法がφ6mm×30mmの鍔付きクリープ試験片を作製した。650℃で120MPaの条件で、JIS Z 2271に準拠してクリープ試験を実施した。応力の負荷の開始から試験片が破断するまでをクリープ破断時間とした。クリープ破断時間を表1に示す。また、図1に、Al,Tiの原子濃度の和とNi含有量(原子濃度)との分布図を、クリープ破断時間別のマーカで示す。ただし、図1に、Al,Tiの原子濃度の比が1.85未満の(本発明の式(2)を満たさない)鋼材No.12,13は記載しない。合格基準は、クリープ破断時間が130時間以上とする。
表1に示すように、鋼材No.1〜11は、化学成分組成が本発明の範囲内の実施例であり、高温クリープ強度が良好であった。また、図1に示すように、Ni,Al,Tiの各含有量のいずれもが多いと、高温クリープ強度がより高い(クリープ破断時間がより長い)傾向が観察された。
これに対して、鋼材No.12〜15は、化学成分組成が本発明の範囲外の比較例である。鋼材No.12〜14はAl含有量が、鋼材No.15はNi含有量が、それぞれ不足しているため、いずれも高温クリープ強度が不十分であった。特に、鋼材No.12,13は、Ni,Tiが共に好ましい含有量であっても、Alが不足したことにより、相対的に過剰となったTiが、TiFe0.4Ni1.6Alを形成せずにFe2Ti(Laves相)を形成したと推測される。

Claims (1)

  1. C:0.05質量%以下、Si:0.1〜1.0質量%、Mn:0.1〜2.0質量%、Cr:13.5〜16.5質量%、Ti:0.5〜3.0質量%、Zr:0.2〜1.5質量%、Ni:1.0〜5.0質量%、Al:0.88〜4.0質量%、Cu:0.5〜3.0質量%、B:0.005質量%以下、N:0.05質量%以下、P:0.005〜0.05質量%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなると共に、前記不可避不純物として含まれるSが0.005質量%以下に制限され、前記Ti、前記Alの各含有量(質量%)をそれぞれ[Ti]、[Al]で表したときに、下式(1)および下式(2)を満足することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
    [Al]/27+[Ti]/48≧0.05 ・・・(1)
    [Al]/[Ti]×(48/27)≧1.85 ・・・(2)
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