JP2017185634A - 防曇性物品 - Google Patents

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健一 近江
亜希 高崎
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Abstract

【課題】水滴接触角が7度以下という優れた親水性を示し、ヘイズ率が0.2%以下という高度な透明性を有し、かつ簡便に成膜することができる薄い膜厚の防曇膜を有する防曇性物品の提供。【解決手段】基体11と、基体11上の最表面を少なくとも部分的に覆う防曇膜からなり、該防曇膜は、部分縮合ポリシリケート膜12に非晶質シリカ微粒子13が分散された構造を有し、防曇膜の膜厚は10〜60nm、非晶質シリカ微粒子は、部分縮合されたポリシリケート膜に島状又は網目状に分散し、少なくとも一部は、部分縮合ポリシリケート膜上に露出していることが望ましい防曇性物品。【選択図】図7

Description

本発明は、主としてガラスやプラスチックからなる透明基体上の最表面に防曇膜を形成することにより、湿気の多い環境下でも、透明で良好な視界を確保することのできる防曇性物品に関する。
ガラスやプラスチックからなる透明基体は、透明であることが重要な特性である。しかし、これら基体の表面が、その環境における露点以下の温度になったときには、これら基体の表面に水滴が付着することになる。そして、付着した水滴が光を散乱するために、これら基体の透明性が損なわれる。
基体表面に反射防止膜や光学フィルターなどの機能性コーティングが施されている場合がある。このような場合には、これら機能性コーティングの表面が周囲の環境の露点以下の温度になったとき、これら機能性コーティングの表面に水滴が付着し、やはり透明性が損なわれる。
このような基体表面又は基体上の機能性コーティングの表面への水滴の付着による曇りを防止するため、従来から、基体や機能性コーティングの表面を親水性にしたり、吸水性にしたりする方法が取られてきた。
特許文献1は、親水性被膜及びその製造方法に関するものであって、基板上の最表層に、チタニア及び非晶質酸化物の複合体と粒径3〜15nmのシリカ微粒子を含み、非晶質酸化物が被膜全体に対して5〜25wt%となることを特徴とする親水性被膜及びその製造方法を開示している。ここで、チタニアは、光触媒作用によって汚れを分解し、親水性を持続させるためのものであり、非晶質酸化物は膜の緻密性を高め、耐摩耗性を向上させるものであり、シリカ微粒子は、水分を多く吸着することにより親水性を高めるものであると記載されている。なお、水に対する接触角は2〜3°と記載されているが、防曇性及びヘイズ率は評価されていない。
特許文献2は、防曇鏡およびその製造方法に関するものであって、透明基材の裏面に鏡面加工が施された鏡の表面に、少なくともシリカ及びジルコニアよりなるマトリックス形成用金属酸化物中に、平均粒子径が30〜60nmである表面に水酸基を有するコロイダルシリカ等の金属酸化物微粒子及びノニオン系界面活性剤が添加されてなる防曇膜を被覆し、膜表面の凹凸組織との相乗効果により水膜を形成し長期に亘り優れた保水性を有するようにしたものである。膜表面の粗さ(Ra)は1〜50nmで、防曇膜の曇価(ヘイズ率)が1%以下であることが記載されている。
特許文献3は、防曇性物品およびその製造方法、防曇膜形成用コーティングキットに関するものであって、基体と、基体の少なくとも一部の表面に防曇膜を有する防曇性物品であって、防曇膜は、基体表面に吸水性樹脂層と防汚層が順次形成されたもので、防汚層は、一次粒子径が5〜60nmの微粒子を主体として形成され、防汚層表面の水接触角が40〜120°であることを特徴とする防曇性物品が開示されている。
特許文献4は、防曇性被膜物品に関するものであって、ガラス板状に膜厚が500〜3000nmの防曇膜が形成され、該防曇膜には2本の鎖型の陰イオン界面活性剤と、ポリオール加工物が含まれ、内部に複数の閉じた孔が形成されている。そして、該防曇膜は、酸化ケイ素を主成分とし、該酸化ケイ素は、酸化ケイ素微粒子と、シリコンアルコキシドの加水分解反応及び縮重合反応により生成した酸化ケイ素成分を含むとされている。
特許文献5は、コロイダルシリカと金属アルコレートの混合液を、加水分解し部分縮合させたゾル液をコーティングし、熱処理することによりシリカ微粒子を含むガラス質の反射防止膜を形成する方法が開示されている。
特許文献6には、ガラス体の表面上にSiOの微粒子を添加したSi(OR)(Rはアルキル基)のアルコール溶液を塗布後焼成し、ガラス体表面上にSiO微粒子およびこれを被覆するSiO薄膜を付着させてなる反射防止膜が開示されている。
特許文献7は、鎖状シリカ微粒子およびその鎖状シリカ微粒子の重量に対して5〜30重量%のシリカからなり、110〜250nmの厚みを有する膜がガラス基板表面の少なくとも一方に被覆されており、その膜表面に凹凸が形成されている、可視光反射防止ガラス板が開示されている。
特許文献8は、低反射ガラス物品に関するものであって、所定の粒径の非凝集シリカ微粒子又は鎖状凝集シリカ微粒子とバインダーを所定の重量比で含有させ、加水分解可能な金属酸化物の存在下で加水分解して調製されたコーティング液をガラス基体上に被覆・加熱処理して形成した低反射ガラス物品が開示されている。明細書中には「最表面を凹凸形状にしたことにより、二酸化珪素が持つ親水性が向上し、付着水蒸気による曇りが生じにくいガラス表面となる。水滴が付着しても、その接触角は小さく、非常に親水性の表面となる・・・」と記載されている。
特開平10−338820 特開2003−73146 WO2011/004873 特開2011−213555 特開昭62−17044 特開昭63−193101 特開平11−292568 特開2001−278637
特許文献1で開示された親水性被膜では、防曇性とヘイズ率が不明である。特に、ヘイズ率に関しては、屈折率の高いチタニア膜中にシリカ微粒子が存在することから、両者の界面での屈折率差に基づく反射と光散乱によって、高い透過率と低いヘイズ率を得ることが困難と考えられる。
特許文献2で開示された防曇鏡では、防曇性が不明であり、またシリカ及びジルコニアよりなるマトリックス形成用金属酸化物中に平均粒子径が30〜60nmである金属酸化物微粒子が分散されているので、ヘイズ率をせいぜい0.4%までしか低くできていない。
特許文献3で開示された防曇性物品は、吸水性樹脂層を形成し、次に硬化剤をコーティングし、さらにその上に、汚染物が吸水性樹脂層に侵入するのを防止するための微粒子を主体とする撥水性の防汚層を形成するため、3種類のコーティング剤が必要であることから、手間がかかりコストも高くなるという課題がある。
特許文献4で開示された防曇性被膜物品は、防曇膜の膜厚として500〜3000nmという厚みが必要であり、膜が薄すぎると防曇持続性が低下するという課題があり、膜が厚すぎると膜の透過率が低下して物品の透明性を損なうことがあるという課題がある。
特許文献5で開示された技術では、シリカ微粒子の粒径が5〜40μmと非常に大きく、また得られた膜も多孔質のガラス質被膜であることから、ヘイズ率が高いと想定される。透明度や親水性(水に対する接触角)も不明である。
特許文献6は反射防止膜に関するものであって、親水性(水に対する接触角)、透過率及びヘイズ率がどのような性能であるか不明である。SiO微粒子の粒径やSiO薄膜の構造から親水性が十分ではなく、ヘイズ率も小さくないことが想定される。
特許文献7は反射防止ガラス板に関するものであって、親水性、透過率及びヘイズ率がどのような値であるか不明である。鎖状シリカ微粒子およびシリカの含有量が多く、110〜250nmの厚みであることから、透過率が低下し、ヘイズ率も高くなることが想定される。
特許文献8には水に対する接触角がどのような値であったかは記載されていない。また、非凝集シリカ微粒子の平均粒径が50nm以上と大きく、被膜の平均膜厚も100nm以上と厚い。
本発明は、上記従来の課題を解決し、かつ簡便で低コストの方法で、広い用途に適用可能な防曇性物品を提供するものである。より具体的には、60nm以下という薄い膜厚の防曇膜を形成するだけで、水滴接触角が7度以下という低い接触角の表面とすることができ、水蒸気に対して曇らず、優れた防曇耐久性を示し、かつヘイズ率が0.2%以下という高度な透明性を確保できるという特徴を有する防曇性物品を提供するものである。
上記従来の課題を解決するため本発明は、基体と、該基体上の最表面を少なくとも部分的に覆う防曇膜からなり、該防曇膜は、部分的に加水分解・重縮合されたポリシリケート膜(以下、部分縮合ポリシリケート膜と呼ぶ)に非晶質シリカ微粒子が分散された構造を有し、水に対する接触角が7度以下であり、ヘイズ率が0.2%以下であることを特徴とする防曇性物品である。
基体上の最表面に形成される防曇膜の構造は、部分縮合ポリシリケート膜に非晶質シリカ微粒子が分散した構造を有するものである。
ここで、部分縮合ポリシリケート膜は、ポリシリケート膜の前駆体であるポリシリケート化合物を加水分解・重縮合する際に、該ポリシリケート化合物にある官能基(エトキシ基及びシラノール基)の全てを加水分解・重縮合するのではなく、一部のシラノール基は脱水縮合させることなく、そのままの状態で残すという意味である。
部分縮合ポリシリケート膜は、加水分解・重縮合をほぼ完全に進行させて得られるポリシリケート膜と比べて、柔らかく、弾力性のある膜となる。そして、部分縮合ポリシリケート膜は、基体と非晶質シリカ微粒子をつなぐバインダーとしての役割を果たすと考えられる他、柔らかく弾力性のあることから、摩耗に対する抵抗力が向上し、摩耗を受けても部分縮合ポリシリケート膜に分散して存在する非晶質シリカ微粒子が除去されることなく残存することから、防曇性が維持され、防曇耐久性が向上する。
このような部分縮合ポリシリケート膜は、例えばエチルポリシリケートのような原料溶液を用いてスプレー法などによって膜を形成する際、原料溶液中の水分及び酸触媒の量を少なく抑え、成膜後には、例えば80〜110℃程度という比較的低温で、例えば10分以内という短時間で、加水分解・重縮合させることにより得ることができる
非晶質シリカ微粒子は、部分縮合ポリシリケート膜を形成する原料液(例えばエチルポリシリケート液)に非晶質シリカ微粒子を混合して、スプレー法などによって成膜することにより、部分縮合ポリシリケート膜中に分散して存在させることができる。そして、本発明においては、これら非晶質シリカ微粒子は、部分縮合ポリシリケート膜に全て覆われることなく、部分的に埋め込まれた構造であって、少なくとも一部の非晶質シリカ微粒子の表面は空気中に露出している。
ここで、防曇膜が基体上の最表面を少なくとも部分的に覆うとは、防曇膜が連続して基体上の最表面全体を一様に覆っている必要はなく、島状や網目状の構造を有していてもよいという意味である。すなわち、基体上もしくは基体上の最表面には、防曇膜が形成されていない空間が残されていてもよいのである。前記した構造を有する防曇膜を、基体上もしくは基体上の最表面を少なくとも部分的に覆うように形成することによって、水に対する接触角が7度以下という極めて優れた親水性と、ヘイズ率が0.2%以下という極めて優れた透明性を併せ持つ防曇性物品とすることができる。
但し、このような場合でも、基体上の最表面は、一部基体が露出していることはあっても、ほぼ一様に部分縮合ポリシリケート膜で覆われ、非晶質シリカ微粒子が島状や網目状に凝集体を形成している場合の方が多い。
本発明の防曇性物品において、前記防曇膜の膜厚は10〜60nmであることが望ましい。ここで、膜厚とは基体表面から防曇膜の最も高い部分、すなわち非晶質シリカ微粒子の表面までの厚みをいう。膜厚が10nm以下になると、最表面のうち、防曇膜で覆われる部分が少なくなりすぎて、防曇性が発揮されない。
膜厚が10〜20nm程度になると、防曇膜が島状の構造を形成するようになる。島状の部分には、島状に形成された部分縮合ポリシリケート膜に、非晶質シリカ微粒子が埋め込まれ、一部の非晶質シリカ微粒子は空気中に露出した構造を有する。そして、このような構造に基づいて、優れた防曇性が得られる。
膜厚を20〜50nm程度に増大させると、部分縮合ポリシリケート膜は、基体上のほとんど部分を覆うようになり、そして、このような部分縮合ポリシリケート膜に、非晶質シリカ微粒子が網目状の構造を取って拡大していくようになる。この場合も、一部の非晶質シリカ微粒子は、部分縮合ポリシリケート膜から空気中に露出した構造を有する。そして、このような構造に基づいて、優れた防曇性が得られる。
このように、膜厚を増大させていった場合、すぐに連続した一様な構造の防曇膜になるのではなく、部分縮合ポリシリケート膜に、非晶質シリカ微粒子が、島状構造から網目状の構造を取って形成され、徐々に空間を埋めながら拡がっていくのである。
そして、膜厚を50nm以上に増大させると、防曇膜において、非晶質シリカ微粒子が形成された部分と、形成されていない空隙部分の段差が大きくなってしまい、水に対する接触角が増大し、またヘイズ率も増大するため、防曇性も透明性も徐々に悪化する傾向を示すようになる。したがって、防曇膜の膜厚は60nm程度以下であることが望ましい。
さらに防曇膜の膜厚を増大さる60nm以上にすると、基体上もしくは基体上の最表面の全てが、少なくとも部分縮合ポリシリケート膜で覆われ、その中に非晶質シリカ微粒子が空気中に露出することなく埋め込まれ、全てが部分縮合ポリシケート膜で覆われた構造となるため、防曇性が低下する。
本発明において、前記非晶質シリカ微粒子の粒子径は、20〜30nmの範囲にあることが望ましい。20nmより小さいと防曇性が不十分となる。逆に30nmより大きいと、前記島状ないしは網目状の構造において、非晶質シリカ微粒子が形成された部分と形成されていない部分の段差や凹凸が大きくなりすぎて、防曇膜のヘイズ率が高くなってしまう。
本発明において、防曇膜は、反射防止膜のような他の機能性コーティング膜の最表面に形成することができる。
逆に、前記防曇膜を、基体上に直接形成して、防曇性物品としてもよい。この場合、前記基体をガラスにすると、防曇性ガラス物品とすることができる。このような防曇性ガラス物品は、時計のカバーガラスやカメラのレンズや防犯カメラのカバーガラスなどとして利用することができる。
本発明によると部分縮合ポリシリケート膜中に、島状ないしは網目状の非晶質シリカ微粒子が存在し、これら非晶質シリカ微粒子は全て部分縮合ポリシケート膜中に埋め込まれているのではなく、一部非晶質シリカ微粒子は空気中に露出しているという構造から、水に対する接触角が7度以下という非常に親水性に優れた防曇性物品を得ることができる。
本発明において、防曇膜が形成された部分の膜厚を10〜60nmとすることにより、防曇膜のヘイズ率を0.2%以下にすることができ、きわめて透明性に優れた防曇性物品を得ることができる。
本発明によれば、防曇性に優れ、かつヘイズ率の低い防曇性物品を、簡便に得ることができ、時計のカバーガラスやカメラのレンズや防犯カメラのカバーガラスなどとして利用することができる
ガラス基体上に膜厚20nmの島状防曇膜が形成された本発明の防曇性物品の表面状態を表す写真である(50倍拡大写真) 図1における非晶質シリカ微粒子の分散状態を表す拡大写真である(倍率2万倍)。 ガラス基体上に膜厚80nmの防曇膜が形成された場合の、非晶質シリカ微粒子の分散状態を表す写真である(倍率2万倍) ガラス基体上の膜厚40nmの防曇膜が形成された防曇性物品の表面状態を表す図である(倍率2万倍)。 非晶質シリカ微粒子の粒子サイズ(一次粒子径)を表す図である。 ガラス基体上の膜厚約10nmの防曇膜の構造を示す模式図である。 ガラス基体上の膜厚約20nmの防曇膜の構造を示す模式図である。 ガラス基体上の膜厚約30〜40nmの防曇膜の構造を示す模式図である。 ガラス基体上の膜厚約40〜60nmの防曇膜の構造を示す模式図である。 ガラス基体上の膜厚60nm以上の防曇膜の構造を示す模式図である。
(防曇性物品の作製と成膜)
85.3重量%のイソプロピルアルコール、3.5重量%のエチルアルコール及び6重量%のメトキシプロパノールからなる溶液に、2重量%のエチルポリシリケート(シリケート45:多摩化学株式会社製)と2重量%の非晶質シリカ微粒子(スノーテックスST−50:日産化学工業株式会社製)、1重量%の水及び0.2重量%HClを加えて原料溶液とした。この溶液をスプレーガンの容器に入れて、ミスト状に噴霧し、3mm厚みのガラス基板上に塗布した。塗布後、直ちに加熱乾燥用オーブンに投入し、加熱乾燥させた。加熱乾燥後、自然冷却した。
(防曇膜の評価方法)
(1)防曇性評価
沸騰水(温度:99〜100℃)の湯面から上方約14cmの位置で防曇膜面を沸騰水側に向け、湯気に2秒曝した。そして、防曇膜面の状態によって防曇性を評価した。
優(◎)と判定したのは、一様な水の膜ができ、防曇膜面に映した蛍光灯の反射像が滲むことなく観察できた場合である。
良(〇)と判定したのは、大部分の領域で水膜ができているが、一部が不均一になり、防曇膜面に映した蛍光灯の反射像が一部滲む場合である。
不可(△)と判定したのは、一様な水膜が形成されず、水滴が付着した場合である。但し、ある程度の透明性は維持できていた。
否(×)と判定したのは、ほぼ全面に水滴が付着し、白く曇ってしまっていた場合で、透明性も失われている場合である。
(2)水に対する接触角の測定
協和界面科学のDrop master(DM-501)を用いて、液滴法によって測定した。水滴2μlを防曇膜上に着滴させ、着滴してから1秒後の画像を撮影した。その画像からθ/2法によって接触角を求めた。3点で測定を行い、平均値を採用した。
(3)非晶質シリカ微粒子の粒径測定
電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM-6701F)により10万倍に拡大し、非晶質シリカ微粒子の1次粒子径を測定した。
(4)ヘイズ測定
日本電色工業株式会社製ヘイズメーター(NDH-5000)を用いた。光路の中心に塗布面の中心がくるように試料をセットして測定した。3点で測定を行い、平均値を採用した。
(5)耐摩耗試験
新東科学社製表面性測定器(TYPE:38)にガーゼを付けた摩耗具を塗布面に接するようにさせ、500gの荷重をかけ、20回往復摺動を加えた。摺動速度は600mm/分とし、摩耗具と塗布面の接触面積は直径12mmの円とした。摩耗を加えた後、接触角及びヘイズ率を測定した。
防曇性物品の作製と成膜に記載した方法により、3mm厚みのガラス基体上に防曇膜を成膜し、防曇性物品を得た。成膜後の加熱乾燥条件は、80℃−10分間とした。同条件で3つの防曇性物品を作製し、防曇膜の評価方法に記載した各種評価を行った。リファレンスとして3mm厚みのガラス基体の初期ヘイズ率と初期全光透過率も測定した。
評価結果を表1に示した。本発明の防曇性物品の防曇性は、一様な水膜が形成され、防曇膜面に映した蛍光灯の反射像が滲むことなく観察できたことから、優と判定された。初期接触角は3つの防曇性物品のいずれもが7°以下という小さな接触角であって、優れた親水性を示すことがわかった。ヘイズ率は、いずれも0.3%以下であり、ガラス基体のヘイズ率が約0.2%であることから、防曇膜自体のヘイズ率は0.1%以下と推定され、非常に小さな曇価(ヘイズ率)であることがわかった。
電子顕微鏡(SEM)を用いて防曇膜の断面と表面を観察し、防曇膜の厚み及び防曇膜の表面に分散している非晶質シリカ微粒子の粒径を測定した。その結果、膜厚は約20nm、非晶質シリカ微粒子の粒径(表中には平均粒子サイズとして記載している)は、20〜22nmであることがわかった。
前記した耐摩耗性試験を実施し、試験後の接触角及びヘイズ率を測定した結果を表1中に示した。接触角は8.8°〜15°であり、ガラス基体と防曇膜からなる防曇性物品のヘイズ率は0.4〜0.5%であった(防曇膜だけのヘイズ率は約0.2%〜0.3%である)。
(比較例1)
比較例として、実施例と同一の方法で防曇膜を成膜した後、加熱乾燥条件を、110℃−30分及び150℃−60分として防曇性物品を得た。比較例においても、同条件で3つの防曇性物品を作製し、実施例と同様の各種評価を行った。
評価結果を表2に示した。このような加熱乾燥条件で得られた防曇膜は、ヘイズ率はいずれの条件でも低かった。一方、110℃―30分の条件では初期接触角がやや大きく、実施例と比べて防曇性はやや劣り(良(〇))、さらに150℃−60分の条件では、初期接触角が10°以上となり、防曇性は不可(×)であった。また、摩耗試験後の接触角及びヘイズ率は実施例と比べて劣っていた。実施例と比べて防曇性が劣る理由は、ポリシリケート膜の加水分解・重縮合反応が進み過ぎた結果、ポリシリケート膜中のシラノール基(−OH基)の寄与が小さくなったためと推測される。
(比較例2)
次に、エチルポリシリケート及び非晶質シリカ微粒子の濃度を、実施例に比べて2倍及び3倍とした原料溶液を準備した。この液をスプレーガンにて実施例と同様の方法でガラス基体上に吹き付けで成膜した。成膜後、乾燥用オーブンに投入し、80℃10分の条件で乾燥させた。乾燥後はオーブンから取り出して自然冷却させた。
実施例及び比較例1と同様の評価を行った結果を表3に示した。加熱乾燥条件は、実施例と同じく80℃―10分とした。エチルポリシリケート及び非晶質シリカ微粒子の濃度を高めると、濃度が増大した影響に加えて、原料溶液の粘度が高まるため、同じ条件で成膜しても、形成される防曇膜の厚みが濃度の比以上に厚くなる傾向が認められた。濃度を2倍にして得られた防曇膜の膜厚は約58nmであった。接触角は7度前後で、防曇性も優れていたが、ヘイズ率が0.8%以上と大きく、摩耗試験後も同様の傾向であった。
濃度を3倍にして得られた防曇膜の膜厚は約117nmであった。接触角は10度前後であったが、防曇性は優れていた。一方、防曇性物品のヘイズ率は0.8%以上と大きく、摩耗試験後も同様の傾向であった。
(加熱乾燥条件と接触角の関係)
実施例、比較例1及び比較例2の評価結果から、本発明の防曇性物品を作製する上で、加熱乾燥条件の影響が大きいことが明らかとなったので、さらに条件を追加して、加熱乾燥条件と接触角の関係を評価した。評価結果を表4に示した。
実施例と同じ条件で成膜し、同じ80℃で加熱乾燥した場合でも、乾燥時間が長くなるにつれて接触角が増大していく傾向が認められた。そして、加熱乾燥温度を高くすると短時間であっても接触角が増大する傾向が認められ、加熱乾燥温度を150℃にすると短時間であっても接触角が7度以上になってしまうことがわかった。
乾燥温度が40℃の場合は、初期の水滴接触角は5度以下と良好であるが、短時間で水滴接触角が増大し、防曇性が悪化する傾向が見られた。
(乾燥条件と防曇膜のヘイズ率の関係)
接触角との関係と同様に、加熱乾燥条件とヘイズ率の関係を評価した結果を表5に示した。実施例と同じ条件で成膜し、加熱乾燥条件を変更した場合でも、ヘイズ率に対する影響は大きくないことがわかった。3mm厚みのガラス基体のヘイズ率が約0.2%であったことを考慮すると、いずれの条件で加熱乾燥しても、防曇膜自体のヘイズ率は0.2%以下であることがわかった。
(防曇膜の表面状態の観察結果)
実施例で作製した防曇膜の表面構造を、レーザー顕微鏡で撮影した画像で示す。図1は、実施例で示した膜厚20nmの防曇膜であって、島状構造が観察された。図中、黒く見えている部分が、島状の部分であって、島と島の間に白く見えている部分は、ガラス基体の表面又は部分縮合ポリシリケートの薄い膜だけが形成された箇所と考えられる。
図2は、図1と同様の島状構造を有した防曇膜の拡大写真であって、島状構造の部分に非晶質シリカ微粒子が分散している状態が観察された。図中、白く見えている部分が非晶質シリカ微粒子である。島状の防曇膜に、非晶質シリカ微粒子が分散して存在している構造が、親水性を高め、防曇性を発揮させているものと判断された。
図3は、防曇膜の膜厚が約80nmの防曇性物品の表面構造であって、白く観察される部分に非晶質シリカ微粒子が凝集して存在して様子が観察された。このような防曇膜は、防曇性は良好であったが、ヘイズ率が1%程度まで高くなって、白曇りが目立つものであった。
図4は、膜厚が約40nmの防曇膜の表面状態であって、図2と図3の中間のような状態であった。白く見えている部分が、非晶質シリカ微粒子であって、網目状に存在している様子がわかる。このような防曇膜は、防曇性に優れ、ヘイズ率も小さい。
図5は、防曇膜の表面の非晶質シリカ微粒子を電子顕微鏡(SEM)で観察したものであって、非晶質シリカ微粒子の粒子径が20〜30nmの範囲にあることが観察された。
以上の評価結果及び電子顕微鏡写真による観察結果から、本発明において、防曇膜の膜厚の増大とともに、その構造がどのように変化するかについて、図6〜図10に模式的に示した。
防曇膜の膜厚が約20nmの場合(図7)には、島状構造が形成される。そして、部分縮合ポリシリケート膜中に非晶質シリカ微粒子が埋め込まれ、一部の微粒子は空気中に露出した構造をとる。膜厚が約10nm程度まで薄くなると(図6)、同様に島状の防曇膜が形成されるが、基体表面上を占める割合が小さくなりすぎて、防曇性が発揮されない。
防曇膜の膜厚が約30nm〜約60nm程度までは、防曇膜中の非晶質シリカ微粒子は網目状に分散し(図8)、防曇膜の防曇性及びヘイズ率はともに望ましい性能を示す。しかし、50nm以上に膜厚を増大させると、非晶質シリカ微粒子の網目状部分の高さが増大し始め、さらに網目状の間の平滑な部分にも非晶質シリカ微粒子が分散するようになって(図9)ヘイズ率が増大し始める。
防曇膜の膜厚が60nm以上になると(図10)、非晶質シリカ微粒子による凹凸の高さ及び密度がさらに増大する。そして、これら非晶質シリカ微粒子は空気中に露出することなく、すべて部分縮合ポリシリケート膜中に埋め込まれるようになる。その結果、親水性(接触角)やヘイズ率が悪化してしまう。
11・・・基体
12・・・部分縮合ポリシリケート膜
13・・・非晶質シリカ微粒子

Claims (6)

  1. 基体と、該基体上の最表面を少なくとも部分的に覆う防曇膜からなり、該防曇膜は、部分的に加水分解・重縮合されたポリシリケート膜に非晶質シリカ微粒子が分散された構造を有し、水滴接触角が7度以下であり、ヘイズ率が0.2%以下であることを特徴とする防曇性物品。
  2. 前記防曇膜の膜厚が10〜60nmであることを特徴とする請求項1に記載の防曇性物品
  3. 前記非晶質シリカ微粒子が、前記部分的に加水分解・重縮合されたポリシリケート膜に島状又は網目状に分散し、少なくとも一部の該非晶質シリカ微粒子は、該部分的に加水分解・脱水縮合されたポリシリケート膜上に露出していることを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の防曇性物品。
  4. 前記非晶質シリカ微粒子の粒径が20〜30nmの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の防曇性物品。
  5. 前記防曇膜が前記基体上に直接形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の防曇性物品
  6. 前記基体がガラスであることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の防曇性物品、
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