一実施形態のプリンタ10について説明する。図1は、プリンタ10の全体構成を示す概略図である。図1には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。プリンタ10は、1色(例えばブラック)のトナー(現像剤)を用いて、例えば記録用紙やOHPシート等のシートWに画像を形成する電子写真式のプリンタである。プリンタ10は、画像形成装置の一例である。
図1に示すように、プリンタ10は、筐体100と、シート供給部200と、画像形成部400とを備える。筐体100は、シート供給部200と画像形成部400とを収容する。また、筐体100の上面には、排出口110と、排出トレイ120とが形成されており、筐体100内の排出口110付近に排出ローラ130が設けられている。
シート供給部200は、トレイ210と、ピックアップローラ220とを備える。トレイ210は、シートWを収容する収容体である。ピックアップローラ220は、トレイ210に収容されたシートWをトレイ210から1枚ずつ取り出して、画像形成部400に向けて搬送する。
画像形成部400は、露光部500と、プロセス部600と、定着装置700とを備える。露光部500は、レーザ光L(光ビーム)を、プロセス部600に備えられた感光体610に照射する。
プロセス部600は、感光体610と、帯電部620と、現像部630と、転写ローラ640とを備える。帯電部620は、感光体610の表面を一様に帯電させる。帯電部620により帯電された感光体610の表面に、露光部500からのレーザ光Lが照射されると、感光体610の表面に静電潜像が形成される。現像部630によって感光体610の表面にトナーが供給されると、感光体610の表面に形成された静電潜像が現像されてトナー像が形成される。感光体610の表面に形成されたトナー像は、転写ローラ640によって、感光体610と転写ローラ640との間の位置を通過するシートW上に転写される。
定着装置700は、プロセス部600を通過したシートWを加熱し、シートWに転写されたトナー像をシートWに定着させる。これにより、シートWに画像が形成される。定着装置700の詳細な構成について後述する。排出ローラ130は、定着装置700を通過したシートWを、排出口110を介して排出トレイ120へと排出する。以下、シート供給部200から排出ローラ130に至るまでのシートWの搬送経路を、搬送経路Rといい、搬送経路Rに沿ってシートWが定着装置700を通過する方向を、シート搬送方向Fという。
図2は、定着装置700の構成を示す概略図である。なお、図2は、後述の図5のII−IIの位置におけるニップ部材714、板バネ800、摺動シート900および押さえ部材850のXZ断面構成を示す図でもある。図2に示すように、定着装置700は、加熱回転体710と、加圧回転体720とを備える。
加熱回転体710は、シート搬送方向Fに直交する水平方向(Y軸方向 以下、幅方向Yということがある)に延びた円筒状の回転体であり、当該幅方向Yに沿った軸周りに回転可能に設けられている。加熱回転体710の構成については後述する。加圧回転体720は、搬送経路Rに対して加熱回転体710とは反対側に配置されている。加圧回転体720は、幅方向Yに略平行な軸周りに回転可能に設けられたローラ体である。加圧回転体720は、加熱回転体710に向けて押圧されており、これにより、加熱回転体710と加圧回転体720との間にニップ部Pが形成されている。なお、加熱回転体710は、第1の回転体の一例であり、加圧回転体720は、第2の回転体の一例である。
加熱回転体710は、定着ベルト711と、ハロゲンヒータ713と、ニップ部材714と、反射部材715と、ステイ716と、断熱部材717と、板バネ800と、摺動シート900と、押さえ部材850とを備える。なお、ステイ716および断熱部材717は、保持部材の一例である。
定着ベルト711は、幅方向Yに延びた筒状のベルト体であり、当該幅方向Yに沿った軸周りに回転可能に設けられている。なお、定着ベルト711は、金属製であり、例えば、ステンレス鋼やニッケルなどにより形成されている。ハロゲンヒータ713は、幅方向Yに延びた棒状体であり、図示しない交流電源からの電力供給を受けることにより発熱する発熱体である。ハロゲンヒータ713は、定着ベルト711の内周面側において、定着ベルト711から離間した位置に配置されている。なお、定着ベルト711は、環状のベルトの一例であり、ハロゲンヒータ713は、ヒータの一例である。
図3は、ニップ部材714と、反射部材715と、ステイ716と、断熱部材717と、板バネ800と、摺動シート900と、押さえ部材850とが分解された状態を示す斜視図である。図2および図3に示すように、反射部材715は、定着ベルト711の内周面側において、ハロゲンヒータ713から離間した位置に配置されている。反射部材715は、幅方向Yに延びた部材であり、平坦部分715Aと、一対のフランジ部分715Bとを含む。平坦部分715Aは、ハロゲンヒータ713と加圧回転体720との並び方向(Z軸方向)に略直交する平板状の部分であり、ハロゲンヒータ713の下方に配置されている。一対のフランジ部分715Bは、平坦部分715Aのシート搬送方向Fの両端のそれぞれから下方に延びた部分である。反射部材715は、例えばアルミニウムなどの金属により形成されており、少なくとも平坦部分715Aのハロゲンヒータ713側の上面は、鏡面加工が施されている。
図2および図3に示すように、ステイ716は、定着ベルト711の内周面側において、反射部材715の下方に配置されている。ステイ716は、幅方向Yに延びた鋼板であり、平坦部分716Aと、一対のフランジ部分716Bとを含む。平坦部分716Aは、ハロゲンヒータ713と加圧回転体720との並び方向(Z軸方向)に略直交する平板状の部分であり、反射部材715の平坦部分715Aから離間した下方の位置に配置されている。一対のフランジ部分716Bは、平坦部分716Aのシート搬送方向Fの両端のそれぞれから反射部材715に向けて上方に延びた部分である。各フランジ部分716Bの上端は、反射部材715の平坦部分715Aの下面に接触している。
図2および図3に示すように、断熱部材717は、定着ベルト711の内周面側において、反射部材715の外周を下側から覆うように配置されている。断熱部材717は、幅方向Yに延びた樹脂製の部材であり、平坦部分717Aと、一対のフランジ部分717Bとを含む。平坦部分717Aは、ハロゲンヒータ713と加圧回転体720との並び方向(Z軸方向)に略直交する平板状の部分であり、ステイ716の平坦部分716Aの下面に接触するように配置されている。一対のフランジ部分717Bは、平坦部分717Aのシート搬送方向Fの両端のそれぞれから反射部材715に向けて上方に延びた部分である。各フランジ部分717Bの上部は、ステイ716のフランジ部分716Bと反射部材715のフランジ部分715Bとの間に挟み込まれている。これにより、反射部材715がステイ716および断熱部材717に保持されている。
図2および図3に示すように、ニップ部材714は、幅方向Yに延びた板状の部材であり、断熱部材717の下面と定着ベルト711との間に配置されている。ニップ部材714は、例えばアルミニウムなどの金属により形成されている。ニップ部材714は、ベース部分714Aと、複数の突出部分714Bとを含む。ベース部分714Aは、幅方向Yに延びた平板状の部分であり、下面がニップ部Pにおける定着ベルト711の内周面部分に対向するように配置されている。各突出部分714Bは、ベース部分714Aの定着ベルト711とは反対側の背面、すなわち、ベース部分714Aの上面から突出するように配置されている。複数の突出部分714Bは、幅方向Yに沿って並べて配置されており、かつ、幅方向Yにおいて突出部分714B同士の間に間隔が空けられている。本実施形態では、図3に示すように、ベース部分714Aの上面においてシート搬送方向Fの互いに異なる2箇所の位置のそれぞれに、幅方向Yに沿って並ぶ3つの突出部分714Bが配置されている。また、ニップ部材714のベース部分714Aには、幅方向Yにおける突出部分714B同士の間の位置に、凹所714Cが形成されている。
図4は、板バネ800の一部分を下側から見た斜視図である。図2から図4に示すように、板バネ800は、幅方向Yに延びた板状の部材であり、断熱部材717とニップ部材714のベース部分714Aとの間に配置されている。板バネ800は、1枚のバネ鋼などの金属薄板を折り曲げ加工して形成されたものである。具体的には、板バネ800は、変位部分810と、一対の折り曲げ部分820とを含む。変位部分810は、加熱回転体710と加圧回転体720との対向方向(Z軸方向)に略直交する平板状の部分であり、ニップ部材714の上面側において、ニップ部材714のベース部分714Aから離間した位置に配置されている。変位部分810には、ニップ部材714の6つの突出部分714Bのそれぞれに対応する位置に6つの係止孔811が貫通形成されている。係止孔811の開口サイズは、突出部分714Bを収容可能なサイズである。図2に示すように、変位部分810の各係止孔811内に、ニップ部材714の各突出部分714Bが上下動可能に挿入されている。なお、変位部分810は、可動部材の一例であり、係止孔811は、係止部の一例である。
また、板バネ800の変位部分810には、幅方向Yにおける係止孔811同士の間の位置に、スナップボタンの雌部813が設けられている。雌部813の下端部は、変位部分810の下面から下方(Z軸負方向)に突出している。さらに、変位部分810の上面には、各雌部813に対してシート搬送方向Fの前後の位置のそれぞれに、幅方向Yに並ぶ一対の嵌合孔812が形成されている。
一対の折り曲げ部分820は、変位部分810のシート搬送方向Fの両端からニップ部材714側に向けて下方にそれぞれ延びた部分である。幅方向Yから見たときに、各折り曲げ部分820の延びる方向は、上記対向方向(Z軸方向)に対して傾斜している。より具体的には、各折り曲げ部分820と変位部分810とがなす角度は鋭角である。換言すれば、一対の折り曲げ部分820同士の距離は、一対の折り曲げ部分820の先端側に近づくほど狭くなっている。
図4に示すように、各折り曲げ部分820の先端部分の内、シート搬送方向Fにおいて係止孔811と並ぶ部分には、折り曲げ部分820の形状に対応するように切り欠き821が形成されている。これにより、板バネ800とニップ部材714の突出部分714Bとが干渉することが抑制されている。これに対して、各折り曲げ部分820の先端部分の内、シート搬送方向Fにおいて係止孔811同士の間の部分と並ぶ部分には、切り欠き821よりも長く延びた延長部分822が突出している。
図2および図3に示すように、摺動シート900は、幅方向Yに延びた略矩形状のシート体であり、例えばガラス繊維、ステンレス鋼、メッシュ、カーボンクロスなどにより形成されている。摺動シート900のシート搬送方向Fの両端部分(各長辺側部分)のそれぞれには、互いに間隔を空けて幅方向Yに並ぶ3つの挿通孔910が貫通形成されている。また、摺動シート900のシート搬送方向Fの一方端部分(X軸正方向側の長辺側部分)には、シート搬送方向Fにおいて挿通孔910同士の間の部分と並ぶ位置に、2つの耳部920が突出するように形成されている。各耳部920には、スナップボタンの雌部813と嵌合可能なスナップボタンの雄部930が設けられている。一方、摺動シート900のシート搬送方向Fの他方端部分(X軸負方向側の長辺側部分)には、シート搬送方向Fにおいて挿通孔910同士の間の部分と並ぶ位置に、2つの耳部940が突出するように形成されている。各耳部940には、挿通孔950が貫通形成されている。また、板バネ800の変位部分810の幅方向Yの長さは、摺動シート900の幅方向Yの長さに比べて長い。
図5は、板バネ800に摺動シート900を組み付けた状態を上方から見た斜視図であり、図6は、図5のVI−VIの位置におけるニップ部材714、板バネ800、摺動シート900および押さえ部材850のXZ断面構成を示す説明図である。なお、図5では、ニップ部材714および押さえ部材850が省略されている。また、図6では、板バネ800の延長部分822(折り曲げ部分820)と変位部分810とのなす角度が、自然状態に比べて最も小さい状態、即ち、板バネ800が最も弾性変形している状態を示している。
図2、図5および図6に示すように、摺動シート900のシート搬送方向Fの中央部分は、板バネ800の下側に配置されており、摺動シート900のシート搬送方向Fの両端側部分は、板バネ800の上面側に折り返されて、板バネ800に設けられたスナップボタンの雌部813の上方の位置において重ねられている。耳部920に設けられたスナップボタンの雄部930が、耳部940の挿通孔950を介して、板バネ800に設けられたスナップボタンの雌部813に嵌合されることによって、摺動シート900のシート搬送方向Fの両端側部分が、ニップ部材714に固定されている。また、図6に示すように、板バネ800の変位部分810の下面から下方に突出する雌部813は、ニップ部材714のベース部分714Aの上面に形成された凹所714C内に収容されるため、雌部813とニップ部材714との干渉が抑制されるとともに、加熱回転体710の内部構成の高さ寸法を抑制することができる。
図2および図6に示すように、スナップボタンの雄部930と雌部813とが嵌合されると、延長部分822は、摺動シート900によって上下方向(Z軸方向)から力を受けることによって弾性変形し、延長部分822(折り曲げ部分820)と変位部分810とがなす角度が、図3および図4の自然状態に比べて小さくなっている。このため、延長部分822は、その復元力によって、板バネ800の変位部分810をニップ部材714から離間する方向に付勢している。そして、その変位部分810への付勢力によって、摺動シート900に対してシート搬送方向Fに沿って張力が付与されている。なお、折り曲げ部分820の内、延長部分822に対応する部分が、傾斜部分、付勢部材の一例である。
図3に示すように、各押さえ部材850は、シート搬送方向Fに延びた板状の部材であり、幅方向Yの両端部のそれぞれには、幅方向Yに並ぶ一対の係止爪851が下方に突出するように設けられている。図6に示すように、各係止爪851は、摺動シート900を介して、板バネ800の変位部分810に形成された上述の各嵌合孔812内に嵌められており、これにより、摺動シート900のシート搬送方向Fの両端部分のそれぞれが板バネ800の変位部分810に強固に固定されている。なお、摺動シート900が板バネ800に固定された状態で、上方に突出するスナップボタンの雄部930は、押さえ部材850に形成された貫通孔内に収容されている。これにより、スナップボタンの雄部930と押さえ部材850とが干渉することを抑制することができる。
本実施形態によれば、摺動シート900のシート搬送方向Fの両端部分が板バネ800の変位部分810に固定されており、この変位部分810は、折り曲げ部分820の延長部分822によってニップ部材714から離間する方向に付勢されている。このため、摺動シート900に対して、シート搬送方向Fに張力が付与されている。言い換えると、摺動シート900のシート搬送方向Fの中央部分は、摺動シート900のシート搬送方向Fの両端部分、より具体的には、各耳部920、940に常に引っ張られている。従って、摺動シート900の伸びによる皺の発生を抑制することができる。また、板バネ800がステイ716とニップ部材714との間に配置されているため、可動部材や付勢部材をニップ部材714よりもシート搬送方向Fの外側に配置する場合よりも、定着ベルト711の外径を小さくすることができ、定着装置700をコンパクトにすることができる。
また、変位部分810の係止孔811は、ニップ部材714の突出部分714Bに係止されることによって、板バネ800とニップ部材714との位置ずれを抑制することができる。変位部分810の移動軌跡を突出部分714Bによって規制することができる。また、摺動シート900には、ニップ部材714の突出部分714Bが挿入される挿通孔910が形成されている。これにより、摺動シート900の挿通孔910が突出部分714Bによって係止されるため、摺動シート900を板バネ800の変位部分810に、より確実に固定することができる。
板バネ800の延長部分822は、変位部分810より定着ベルト711の径方向外側に配置されている。このため、延長部分822が変位部分810より定着ベルト711の径方向内側に配置されている場合に比べて、簡単な構成によって摺動シート900に張力を付与することができる。また、延長部分822は、ニップ部材714と変位部分810との間で、且つ、隣り合う突出部分714Bの間に配置されている。このため、ニップ部材714や変位部分810に対する延長部分822の位置ずれを抑制することができる。
また、可動部材としての変位部分810と、付勢部材としての延長部分822とが板バネ800によって一体形成されている。このため、可動部材と付勢部材とが別体である場合に比べて部品点数を低減することができる。また、延長部分822は、幅方向Yから見たときに、加熱回転体710と加圧回転体720との対向方向(Z軸方向)に対して傾斜しており、当該延長部分822の弾性変形の復元力によって変位部分810をニップ部材714から離間する方向に付勢する。このように、板バネ800の折り曲げ加工によって付勢部材を簡単に構成することができる。しかも、延長部分822は、シート搬送方向Fに並ぶように2つ設けられている。このため、延長部分822が1つである場合に比べて、板バネ800が確実に位置決めされ、変位部分810を安定した軌跡で変位させることができる。
また、摺動シート900のスナップボタンの雄部930と、板バネ800に設けられたスナップボタンの雌部813とが嵌合されることによって、摺動シート900のシート搬送方向Fの両端部分が板バネ800の変位部分810に固定されている。このため、摺動シート900のシート搬送方向Fの両端部分の一方のみが変位部分810に固定されている場合に比べて、部品点数を低減することができる。また、摺動シート900のシート搬送方向Fの両端部分同士は、互いに重ねられて変位部分810に固定されているので、摺動シート900を、延長部分822の復元力に抗して、より確実にニップ部材714に固定配置することができる。
また、板バネ800の変位部分810の幅方向Yの長さは、摺動シート900の幅方向Yの長さに比べて長い。そして、図5に示すように、変位部分810の両端部分は、摺動シート900の両端より幅方向Yの外側に突出している。このため、摺動シート900を板バネ800およびニップ部材714に巻き付ける際、変位部分810の両端部分を下方に押圧して延長部分822を弾性変形させつつ摺動シート900を容易に変位部分810に固定することができる。
また、押さえ部材850によって、摺動シート900を変位部分810に、より強固に固定することができる。また、ハロゲンヒータ713と板バネ800との間に、ステイ716および断熱部材717が配置されていることによって、板バネ800にハロゲンヒータ713からの熱が伝わりにくくなるので、板バネ800や摺動シート900の熱劣化を抑制できる。
また、本実施形態では、スナップボタンの雄部930と雌部813との嵌合によって摺動シート900を板バネ800に固定するため、接着剤を使用しなくてもよい。
図7は、別の実施形態におけるニップ部材714X、板バネ800X、摺動シート900Xおよび押さえ部材850XのXZ断面構成を示す説明図である。本実施形態の構成の内、上述した一実施形態と同一の構成については、同一符号を付すことによって、その説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態のニップ部材714Xは、幅方向Yに延びた平板状の部材である。ニップ部材714Xのシート搬送方向Fの上流側部分の上面には、ネジ穴714XOが形成されており、ニップ部材714Xのシート搬送方向Fの下流側部分の上面には、凹所714XCが計形成されている。板バネ800Xは、1枚のバネ鋼などの金属薄板を折り曲げ加工して形成されたものである。具体的には、板バネ800Xは、第1の部分810Xと、第2の部分820Xとを含む。第1の部分810Xは、ニップ部材714Xに略平行な平板状の部分であり、ニップ部材714Xの上流側部分の上面上に配置されている。そして、ネジ970の先端が第1の部分810Xに形成された孔を介してネジ穴714XOに螺合されることによって、第1の部分810Xはニップ部材714Xに固定されている。また、摺動シート900のシート搬送方向Fの上流端部分は、第1の部分810Xとニップ部材714Xとの間に挟み込まれることによって固定されている。
一方、第2の部分820Xは、幅方向Yから見たときに、上記対向方向(Z軸方向)に対して傾斜しており、ニップ部材714Xの下流側部分の上面から片持ち状に離間している。第2の部分820Xの上面に、摺動シート900のシート搬送方向Fの下流端部分が配置され、さらにその上に平板状の押さえ部材850Xが配置されている。ネジ930Xの先端が、摺動シート900および押さえ部材850Xに形成された孔を貫通し、ナット950Xに螺合されることによって、摺動シート900の下流端部分は、第2の部分820Xとニップ部材714Xとの間に挟み込まれることによって固定されている。このとき、第2の部分820Xの下流端側が下方に弾性変形しており、その復元力によって、摺動シート900の下流端に特に強い張力が付与されている。なお、第2の部分820Xは、可動部材および付勢部材の一例である。
摺動シート900におけるシート搬送方向Fの下流端部で特に皺が発生し易い。これに対して、本実施形態によれば、摺動シート900の上流端部分がニップ部材714Xに固定され、摺動シート900の下流端部分が第2の部分820Xに固定されている。このため、摺動シート900の下流端部分に特に強い張力を付与することにより、下流端部側で皺が発生することを抑制することができる。
図8は、さらに別の実施形態におけるニップ部材714、可動部材810Y、コイルバネ820Yおよび摺動シート900のXZ断面構成を示す説明図である。本実施形態の構成の内、上述した一実施形態と同一の構成については、同一符号を付すことによって、その説明を省略する。
図8に示すように、本実施形態では、ニップ部材714のベース部分714Aと断熱部材717との間には、幅方向Yに延びた平板状の可動部材810Yが配置されている。可動部材810Yには、係止孔811Yが形成されており、その係止孔811Y内に突出部分714Bが挿入されている。また、ニップ部材714のベース部分714Aと可動部材810Yとの間には、コイルバネ820Yが圧縮状態で配置されており、このコイルバネ820Yの復元力によって可動部材810Yがニップ部材714から離間する方向に付勢されている。このように可動部材と付勢部材とを別体で構成することにより、それぞれの機能に適した別々の材料で構成できるなどのメリットがある。
図9は、さらに別の実施形態におけるニップ部材714、板バネ800Wおよび摺動シート900のXZ断面構成を示す説明図である。本実施形態の構成の内、上述した一実施形態と同一の構成については、同一符号を付すことによって、その説明を省略する。
図9に示すように、本実施形態の板バネ800Wは、1枚のバネ鋼などの金属薄板を折り曲げ加工して形成されたものである。具体的には、板バネ800Wは、シート搬送方向Fの両端から中央部に向かうに連れてニップ部材714のベース部分714Aから離間するように凸状に傾斜した形状である。板バネ800Wには、係止孔811Wが形成されており、その係止孔811W内に突出部分714Bが挿入されている。摺動シート900のシート搬送方向Fの両端のそれぞれは、折り返されて板バネ800Wの上面に固定されている。このとき、板バネ800Wの折り曲げ部分のなす角度が大きくなるように板バネ800Wが弾性変形しており、その復元力によって、摺動シート900に張力が付与されている。なお、板バネ800Wは、可動部材および付勢部材の一例である。
本実施形態によれば、板バネを二つ折りするだけの極めて簡単な加工により、可動部材および付勢部材を構成することができる。
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態において、板バネ800は、ニップ部材714と同等の長さのものであったが、これに限らず、幅方向Yにおける板バネ800の係止孔811同士の間のスペースだけに配置される構成としてもよい。
摺動シート900を板バネ800やニップ部材714に固定する方法は、スナップボタンやネジ止めに限らず、カシメやステープラー等の固定部材によって固定する方法でもよいし、接着剤によって固定する方法でもよい。
上記実施形態において、付勢部材が、可動部材とステイとの間に配置され、ステイ側から可動部材を引っ張る構成としてもよい。
上記実施形態において、板バネ800の一対の折り曲げ部分820同士の距離は、一対の折り曲げ部分820の先端側に近づくほど広くなっているとしてもよい。また、板バネ800は、一対の折り曲げ部分820の一方だけを含む構成としてもよい。また、折り曲げ部分820は、変位部分810の幅方向Yの両端からニップ部材714側に向けて下方にそれぞれ延びた部分であるとしてもよい。
上記実施形態では、係止部として、全周に亘って閉塞している係止孔811を例示したが、これに限定されず、例えば、板バネ800の復元力に対してニップ部材714の突出部分714Bに係止可能であれば、一部分が開放している切り欠きでもよい。
上記一実施形態において、スナップボタンの雄部を、押さえ部材850に設けてよい。この場合、押さえ部材850に設けられた雄部は、耳部920に貫通形成された挿通孔(図示せず)と、耳部940に貫通形成された挿通孔950とを介して、板バネ800に設けられたスナップボタンの雌部813に嵌合される。これにより、摺動シート900のシート搬送方向Fの両端側部分が、ニップ部材714に固定されている。なお、スナップボタンの雄部が板バネ800に設けられ、雌部が摺動シート900の耳部920や押さえ部材850に設けられているとしてよい。
定着装置700が備えられる画像形成装置として、プリンタ10は一例であり、種々変形可能である。上記実施形態では、プリンタ10は、1色(ブラック)のトナーを用いて印刷を行うとしているが、印刷に用いられるトナー色の種類や色数はこれに限られない。また、画像形成装置は、プリンタ単体に限らず、複写機、ファクシミリ装置や複合機でもよい。これらの複写機等にも本発明を適用することができる。さらに、定着装置700は、画像形成装置に限定されず、他の装置に備えられるものでもよい。
また、上記実施形態では、定着装置のヒータ(発熱体)として、ハロゲンヒータ713を例示したが、これに限定されず、例えば、赤外線ヒータやカーボンヒータなどでもよい。また、ヒータは、環状のベルトの外側に配置されていてもよい。