以下、図面を参照して、位置変換器について詳細に説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
図1Aは、位置変換器100の縦断面図である。図1Bは、図1Aに対して90度側方から見た位置変換器100の縦断面図である。図1Cは、位置変換器100の分解斜視図である。図1Dは、位置変換器100を一部破断して示した斜視図である。
位置変換器100は、回転制限モータ1、拡散光吸収体3、LEDダイ4、ケース5、プリント基板6、バタフライ形状反射器7、検出器11などから構成される。位置変換器100は、LEDダイ4から出射され、バタフライ形状反射器7により反射された光を検出器11で検出することにより、回転制限モータ1の回転角度を検出する反射型光学式位置変換器である。
回転制限モータ1は、ロータ10の端部に回転軸2を有し、回転軸2は軸受け8により支持されている。回転軸2の先端部には反射器取付部2aが突出している。反射器取付部2aには、バタフライ形状反射器7が取り付けられる。バタフライ形状反射器7は、回転制限モータ1の駆動により、回転軸2とともに回転する。
回転制限モータ1の上部には、バタフライ形状反射器7から距離を持って拡散光吸収体3が配置されている。図1Dに示すように、拡散光吸収体3は、円板形状部3cと、円板形状部3cの中央付近に形成された台形形状部3aと、台形形状部3aの中央に形成された貫通孔3bとを有する。拡散光吸収体3は、回転軸2が貫通孔3bを挿通するように、回転制限モータ1の上端に取り付けられている。拡散光吸収体3は、円筒形のケース5に組み込まれている。
拡散光吸収体3とケース5は、回転制限モータ1によっては回転しない固定側の部材である。バタフライ形状反射器7の反射面から距離を持った固定側の拡散光吸収体3とケース5の表面には、LEDダイ4からの光を吸収する拡散光吸収部材3d(図2参照)が配置されている。すなわち、拡散光吸収体3とケース5で形成される内部の空間は、拡散光吸収部材3dで取り囲まれている。拡散光吸収体3とケース5は、LEDダイ4から出射され、バタフライ形状反射器7に当たらなかった光を、拡散光吸収部材3dにより吸収する。
図2は、拡散光吸収部材3dの表面の拡大図である。拡散光吸収部材3dは、表面処理が施された黒色の部材であり、その表面に、光の波長に合うピッチおよび高さをもった凹凸などの、立体的で複雑な微細構造を有する。拡散光吸収部材3dは、その表面への入射光Lをこの微細構造にて繰り返し反射させることにより、その光を閉じ込めて吸収する(迷光効果)。表面処理は、蒸着、めっき、無機系焼付塗装、または静電植毛などの方法により行われる。
ケース5の上には、プリント基板6(回路基板の一例)が被せて取り付けられている。LEDダイ4は、図1Aに示すように、プリント基板6の下面で、回転軸2の中心に対応する位置に実装されている。LEDダイ4は、バタフライ形状反射器7に対向して、プリント基板6上に配置される。LEDダイ4は、一点から光が出射し、出射した光が所定の広がりをもって放出される拡散光源である。図1Aおよび図1Bでは、LEDダイ4から照射される光を矢印で示している。位置変換器100では、LEDダイ4として、例えば、ピーク波長が870nmであるアルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs)が使用される。
プリント基板6には、10ピンの端子を有するコネクタ9が取り付けられている。コネクタ9の各ピンは、プリント基板6に形成されているパターン(図示されていない)の各ランドに、半田付けなどによって電気的に接続されている。図1Cでは5個のピン9aが見えており、残りのピンはコネクタの裏側に配置されており見えていない。各ピンは、検出器11やLEDダイ4の端子に繋がるパターンに接続されている。コネクタ9には、信号処理回路の接続端子などが接続されている雌(または雄)のコネクタ(図示されていない)が電気結合される。
図3は、バタフライ形状反射器7の上面図である。バタフライ形状反射器7は、嵌合により回転軸2の反射器取付部2aに取り付けるための取付孔7aを中央に有し、中央から突出するバタフライ形状の平坦な反射面7bを有する。バタフライ形状反射器7は、反射領域である反射面7bを有するが、非反射領域を有していない。LEDダイ4から出射され、バタフライ形状反射器7の反射面7bに当たった光は、反射面7bで検出器11に向けて反射される。一方、LEDダイ4から出射された光のうち、反射面7b以外の領域を通過してバタフライ形状反射器7の裏面側へ通り抜けた光は、拡散光吸収部材3dで吸収される。
バタフライ形状反射器7は、冷間圧延などによる鏡面仕上げ加工された金属板をエッチングやワイヤカットなどでバタフライ形状に加工して作製される。反射面7bにアルミ、銀、金などを蒸着して金属コーティングを施すことにより、バタフライ形状反射器7の反射率をさらに向上させてもよい。
図4は、プリント基板6上の検出器11の配置を示す図である。検出器11は、4つのフォトダイオードダイで構成され、これらのフォトダイオードA1,A2,B1,B2は、プリント基板6の下面で、LEDダイ4の周囲に配置されている。それぞれのフォトダイオードは、感度波長が800〜900nmのシリコンウェハにより構成される。LEDダイ4とフォトダイオードA1,A2,B1,B2は、パッケージングされることなく、プリント基板6に直接実装されている(チップオンボード)。
フォトダイオードA1,A2,B1,B2は、プリント基板6の中央点に配置されたLEDダイ4を挟んで、フォトダイオードA1,A2が互いに向かい合い、フォトダイオードB1,B2も互いに向かい合うように実装されている。さらに、1対のフォトダイオードA1,B1は互いに近接して実装され、他の1対のフォトダイオードB2,A2も互いに近接して実装されている。また、プリント基板6上では、フォトダイオードA1,A2が並列に接続され、フォトダイオードB1,B2が並列に接続されている。
LEDダイ4から出射されバタフライ形状反射器7により反射されたバタフライ形状の像は、回転制限モータ1の回転とともに移動する。検出器11は、回転する複数の反射面7bによる反射光の像を受光して、各対を構成する2つのフォトダイオードの間における像の受光面積の割合に応じて変化する信号を出力する。具体的には、フォトダイオードA1,A2とフォトダイオードB1,B2は、その像を受光して、それぞれの受光領域の面積に応じた光電流Ia,Ibを出力する。光電流Ia,Ibは、次に説明する信号処理回路13により電流電圧変換されて、それぞれ電圧Va,Vbとなる。この電圧差Va−Vbが位置変換器100の出力となる。
図5は、位置変換器100の信号処理回路13の回路図である。図1A〜図1Dには示していないが、位置変換器100は、回転制限モータ1の回転角度に応じたフォトダイオードA1,A2,B1,B2よる光電流を電圧信号に変換する信号処理回路13を有する。
フォトダイオードA1,A2の出力である光電流Iaは、電流電圧変換部21aに入力される。また、フォトダイオードB1,B2の出力である光電流Ibは、電流電圧変換部21bに入力される。電流電圧変換部21aの出力電圧Vaと電流電圧変換部21bの出力電圧Vbは、減算器22に入力され、減算処理がなされる。信号処理回路13で処理された位置変換器出力Voは、
Vo=(Ia−Ib)Vref/(Ia+Ib) ・・・(1)
となる。Vrefは参照電圧である。
また、信号処理回路13は、高精度な位置変換出力を得るために、光学系で補償しきれない温度変化に対する温度補償および直線性補償を行うAGC回路28aを有する。電流電圧変換部21aの出力電圧Vaと電流電圧変換部21bの出力電圧Vbは、AGC回路28aに導かれ、加算器23で加算される。この加算出力は、比較器24により参照電圧Vrefと比較される。比較器24の出力は、積分回路25で積分処理され、電流アンプ26aによって増幅される。これにより、抵抗器27を介してLED20に電流Ifが供給される。
図6(a)〜図6(c)は、フォトダイオードA1,A2,B1,B2とバタフライ形状の像12a,12b,12cの位置関係を示す図である。バタフライ形状反射器7からフォトダイオードA1,A2,B1,B2に照射された像は、図6(a)〜図6(c)の像12a,12b,12cのように、回転制限モータ1の回転角度により移動する。
以下では、フォトダイオードA1,A2の受光領域の面積をSaとして、フォトダイオードA1,A2の受光領域のことを「Sa領域」という。同様に、フォトダイオードB1,B2の受光領域の面積をSbとして、フォトダイオードB1,B2の受光領域のことを「Sb領域」という。図6(a)〜図6(c)は、それぞれ、Sa領域がSb領域よりも大きい場合、Sa領域とSb領域が同じ大きさの場合、Sa領域がSb領域よりも小さい場合を示す。
例えば、バタフライ形状の像が像12a,12b,12cであるときに、それぞれ回転角度が正、0、負であるとする。すると、図6(a)の場合は面積差がSa−Sb>0であるから、回転角度が正であることに対応して、位置変換器100の出力電圧はVa−Vb>0になる。また、図6(b)の場合は面積差がSa−Sb=0であるから、回転角度が0であることに対応して、位置変換器100の出力電圧はVa−Vb=0になる。図6(c)の場合は面積差がSa−Sb<0であるから、回転角度が負であることに対応して、位置変換器100の出力電圧はVa−Vb<0になる。
図7は、位置変換器出力Voと回転角度の関係を示したグラフである。位置変換器出力は、図7に示すように、回転角度に比例して増大する。
一般に、反射器からの照度に対する光電流の変換係数をKr、反射器からの受光面積をSa,Sb、反射器の反射率をα、拡散光吸収体からの照度に対する光電流の変換係数をKe、フォトダイオードの総面積をS、拡散光吸収体からの反射の受光面積をS−Sa,S−Sb、拡散光吸収体の反射率をβと表すと、フォトダイオードの光電流Ia,Ibは、
Ia=Kr・Sa・α+Ke・(S−Sa)・β ・・・(2)
Ib=Kr・Sb・α+Ke・(S−Sb)・β ・・・(3)
となる。これらを(1)式に代入することで、実際に近い出力Voが計算される。
拡散光が反射器を介して検出器に到達するまでの光学距離と、拡散光が拡散光吸収体を介して検出器に到達するまでの光学距離が実質的に同じである場合、αに対するβの比率を小さくしないと良好なコントラストが得られず、S/N比が悪化してしまう。位置変換器としての信号を大きくするためには、LEDの順電流を大きくする必要があるため、LED光源のジャンクション温度が上昇し、LED光源の温度変化に影響を与えてしまう。
図6(b)に示すようにSa=Sbの場合は、(1)式の分子項はゼロとなるので、温度による位置変換器の出力変化は発生しない。しかしながら、図6(a)および図6(c)に示すようにSa≠Sbの場合は、温度によりαに対するβの比率が変化するため、温度変化時に、位置変換器の出力変化であるドリフトが発生する。このドリフトにより、図7に示すように、位置変換器出力Voと回転角度の比例関係の傾きが変化する。このドリフトのことを、「ゲインドリフト」という。高精度な位置変換器では、ゲインドリフトができるだけ小さいことが要求される。また、上記のKeまたはβを小さく保つことにより、(1)式を理想に近づけることが可能となる。つまり、ゲインドリフトを低下させることが可能となる。
反射光は光学距離の2乗に反比例して減衰するため、位置変換器100では、バタフライ形状反射器7から固定側の拡散光吸収体3までの距離を適切にとることで、拡散光吸収体3からの照度に対する光電流の変換係数Keを低下させている。これにより、反射領域と非反射領域を反射器の同一平面上に設けた場合と比べてS/N比が向上する。また、LEDダイ4の温度に対する発光波長の変化の影響と、温度上昇による拡散光吸収体3の吸収率変化の影響が低減され、温度に対する出力の安定性が向上する。
また、位置変換器100では、反射領域と非反射領域が、バタフライ形状反射器7と、その反射器から距離を持って固定側に設置された拡散光吸収体3とで構成される。これにより、反射器に反射性または非反射性の微粒子が付着したとしても、検出器に照射される像に悪影響が及びにくくなる。また、位置変換器100では、反射領域と非反射領域が別部材であるから、それぞれを高反射膜、高光吸収膜とすることが容易になる。さらに、バタフライ形状反射器7は、非反射領域の部分がないため、低イナーシャとなり、回転制限モータ1の高速応答性に有利になる。
図8は、位置変換器30のLEDダイの配置を示す図である。位置変換器30は、拡散光源であるLEDダイの個数および実装位置のみが図1A〜図1Dに示した位置変換器100とは異なる。それ以外の点では、位置変換器30の構成は、位置変換器100のものと同じである。図8では、位置変換器30について、図1A〜図1Dに示したプリント基板6上におけるLEDダイとフォトダイオードの位置関係を示している。また、図8では、回転するバタフライ形状反射器7からの反射光がプリント基板6上に照射して形成された像の形状も、符号7の破線で重ねて示している。
位置変換器30の検出器11は、位置変換器100のものと同じであり、プリント基板6上における回転軸2(図1Cなどを参照)の直上の点Oを中心とする円周C上に実装された複数対のフォトダイオードA1,A2,B1,B2を有する。フォトダイオードA1,A2,B1,B2は、点Oを中心とする円の径方向に幅を持っており、図8では、図をわかりやすくするために、円周Cとして、その径方向における各フォトダイオードの真ん中を通る円を示している。図8からわかるように、フォトダイオードA1,A2,B1,B2は、それぞれ、円周Cに沿って延びる円弧状の2つの端部と、円周Cの径方向に延びる直線状の2つの端部とを有する。
また、位置変換器30は、バタフライ形状反射器7に対向して回路基板6の下面上にチップオンボードで実装された2つのLEDダイ4a,4bを有する。LEDダイ4aは、1対のフォトダイオードA1,B1がそれぞれ円周上で占める弧の長さによって定まる扇形領域D1の内側であり、かつ回転軸2の直上における回転軸2に対応する径の中心領域C1の外側に配置されている。LEDダイ4bは、他の1対のフォトダイオードA2,B2がそれぞれ円周上で占める弧の長さによって定まる扇形領域D2の内側であり、かつ中心領域C1の外側に配置されている。フォトダイオードの受光面上にLEDダイを重ねて配置することはできないため、より正確には、扇形領域D1は、フォトダイオードA1,B1の点Oに近い側の円弧状の端部と点Oによって定まる領域である。同様に、扇形領域D2は、フォトダイオードA2,B2の点Oに近い側の円弧状の端部と点Oによって定まる領域である。
位置変換器30では、LEDダイ4aと1対のフォトダイオードA1,B1とが対応し、LEDダイ4bと他の1対のフォトダイオードA2,B2とが対応するように、LEDダイ4a,4bおよびフォトダイオードA1,A2,B1,B2が配置されている。このため、LEDダイ4aからの出射光は、バタフライ形状反射器7の一方の反射面7bで反射し、その反射光は、主にフォトダイオードA1,B1により受光される。また、LEDダイ4bからの出射光は、バタフライ形状反射器7の他方の反射面7bで反射し、その反射光は、主にフォトダイオードA2,B2により受光される。
位置変換器30の信号処理回路は、LED20が直列に2個接続されることを除けば、図5に示した信号処理回路13と同様である。
図9(a)〜図9(c)は、位置変換器100,200,30におけるLEDダイから検出器までの光学距離の長さを比較するための図である。図9(a)は、図1Aに示した位置変換器100の縦断面の一部を示す。図9(b)は、プリント基板6の下面で回転軸2の中心に対応する位置に2つのLEDダイ4a,4bを有し、それ以外の構成は位置変換器100のものと同じである位置変換器200の縦断面の一部を示す。また、図9(c)は、図8に示した位置変換器30の縦断面の一部を示す。位置変換器100のLEDダイ4と位置変換器200のLEDダイ4a,4bは、回転軸2の直上における回転軸2に対応する径の中心領域C1の内側に配置されている。一方、位置変換器30のLEDダイ4a,4bは、上記の通り、中心領域C1の外側に配置されている。
図9(a)〜図9(c)では、LEDダイ4またはLEDダイ4a,4bから照射され、バタフライ形状反射器7で反射して検出器11に到達する光の光路L1〜L3を矢印で示している。検出器11の実装位置は、位置変換器100,200,30のいずれも同じである。一方、LEDダイの実装位置は、位置変換器100では中心領域C1の中心にあるが、位置変換器200,30では、この順に中心領域C1の中心から遠ざかり、検出器11の実装位置に近付く。このため、図9(a)〜図9(c)を比較するとわかるように、位置変換器100の光路L1よりも位置変換器200の光路L2の方が短く、位置変換器30の光路L3の方がさらに短い。したがって、位置変換器30では、位置変換器100,200と比べて、LEDダイ4a,4bからバタフライ形状反射器7を経て検出器11に至るまでの光学距離が短いため、検出器11での受光量が増加し、それによってS/N比が向上する。
また、拡散光源としてLEDダイを2個使用することにより、出射光の強度が平均化され、LEDの個体差によるバラツキが平均化される。このため、位置変換器30では、位置変換器100よりも出力がさらに安定する。また、位置変換器30では、位置変換器100と比べてLEDの順電流を低くしても、LEDダイが1個のときと同じ出力が得られる。このため、位置変換器30では、S/N比を良好に維持したまま、LEDの順電流を低下させることが可能になる。さらに、LEDの順電流を低下させれば、LEDのジャンクション温度の影響が小さくなり、温度に対する出力の安定性がより向上する。LEDの順電流を低下させることで、省電力化およびLEDの長寿命化が図れるという効果もある。
図10(a)〜図10(c)は、それぞれ、位置変換器40,50,60のLEDダイの配置を示す図である。位置変換器40,50は、LEDダイの個数および実装位置のみが図1A〜図1Dに示した位置変換器100とは異なる。位置変換器60は、LEDダイの個数および実装位置ならびにフォトダイオードの形状のみが図1A〜図1Dに示した位置変換器100とは異なる。それ以外の点では、位置変換器40,50,60の構成は、位置変換器100のものと同じである。図10(a)〜図10(c)では、位置変換器40,50,60について、図1A〜図1Dに示したプリント基板6上におけるLEDダイとフォトダイオードの位置関係を示している。また、図10(a)〜図10(c)では、回転するバタフライ形状反射器7からの反射光がプリント基板6上に照射して形成された像の形状も、符号7の破線で重ねて示している。
図10(a)に示す位置変換器40は、位置変換器30と同様に扇形領域D1,D2の内側かつ中心領域C1の外側に実装されたLEDダイ4a,4bに加えて、中心領域C1の中央に実装されたLEDダイ4cを有する。LEDダイ4cは、バタフライ形状反射器7の複数の反射面7bに対向してプリント基板6の中心領域C1上に実装された中央拡散光源の一例である。位置変換器40では、プリント基板6の下面上で、3つのLEDダイ4a,4b,4cが1直線上に配置されている。位置変換器40のように、扇形領域D1,D2の内側かつ中心領域C1の外側にLEDダイがあれば、中心領域C1上に別のLEDダイが実装されていてもよい。また、位置変換器40のように、LEDダイ(拡散光源)の個数は、バタフライ形状反射器7の反射面7bの枚数と同数でなくてもよい。
図10(b)に示す位置変換器50は、検出器11のフォトダイオードA1,A2,B1,B2の個数と同じ4つのLEDダイ4d,4e,4f,4gを有する。LEDダイ4d,4eは、扇形領域D1の内側かつ中心領域C1の外側に実装されており、LEDダイ4f,4gは、扇形領域D2の内側かつ中心領域C1の外側に実装されている。位置変換器50では、4つのLEDダイ4d,4e,4f,4gは、4つのフォトダイオードA1,B1,A2,B2にそれぞれ対応するように、4角形状に配置されている。位置変換器50のように、扇形領域D1と扇形領域D2のそれぞれに、複数のLEDダイを実装してもよい。
図10(c)に示す位置変換器60は、位置変換器100の検出器11に代えて、4つのフォトダイオードA1’,A2’,B1’,B2’で構成される検出器11’を有する。今まで説明してきたフォトダイオードA1,A2,B1,B2は矩形のチップの上に形成されたものであるが、フォトダイオードA1’,A2’,B1’,B2’は、図10(c)に示すように、それぞれ、中心領域C1に面する側の一部が切り欠かれたチップの上に形成されている。
また、位置変換器60は、フォトダイオードA1’,B1’のチップの切欠き部E1内に実装されたLEDダイ4aと、フォトダイオードA2’,B2’のチップの切欠き部E2内に実装されたLEDダイ4bとを有する。位置変換器60のLEDダイ4a,4bは、プリント基板6の下面上において、扇形領域D1,D2の内側であり、かつバタフライ形状反射器7のうちで反射面7bを除く中心部分の直上の領域である中心領域C2の外側に配置されている。中心領域C2は、中心領域C1と同じく点Oを中心とする円形領域であり、中心領域C1よりも面積が大きい。位置変換器60のように、各フォトダイオードのチップを切り欠いて、LEDダイを位置変換器30〜50よりもさらにフォトダイオードに近付けてもよい。
位置変換器40,50では、回転制限モータ1の回転軸2に対向する中心領域C1と検出器11との間に、複数のLEDダイが配置されている。これにより、LEDダイが中心領域C1の内側のみに配置される場合よりも、LEDダイの配置位置が検出器に近くなる。したがって、位置変換器40,50でも、位置変換器30と同様に、検出器11での受光量が増加し、S/N比が向上する。また、位置変換器40,50でも、複数のLEDダイを用いることで出射光の強度が平均化される。特に位置変換器50では、LEDダイ4d,4e,4f,4gがフォトダイオードA1,B1,A2,B2に対応して4角形状に配置されているので、各LEDダイと各フォトダイオードとの間の距離が均一になり、この平均化の効果が強くなる。また、位置変換器40,50でも、位置変換器30と同様に、LEDの電流が削減されるので、温度に対する出力の安定性も向上する。
また、位置変換器60では、バタフライ形状反射器7の反射面7b以外の中央部分に対向する中心領域C2と検出器11’との間に、複数のLEDダイが配置されている。したがって、位置変換器60では、位置変換器30〜50と比べて、LEDダイ4a,4bから検出器11’に至るまでの光学距離が短いため、検出器11’での受光量がさらに増加し、S/N比が向上する。また、位置変換器60では、位置変換器30〜50と比べて、LEDダイ間の距離が長いため、各対のフォトダイオードは近接して配置された一方のLEDダイからの光を主に受光するため、各フォトダイオードでの受光量がより均一化される。
なお、図10(b)および図10(c)に示す位置変換器50,60でも、追加で、中心領域C1の中央にLEDダイを配置してもよい。また、位置変換器60でも、位置変換器50のように、切欠き部E1,E2内に、フォトダイオードA1’,A2’,B1’,B2’にそれぞれ対応するように計4つのLEDダイを配置してもよい。
図11は、位置変換器70のLEDダイと検出器11aの配置を示す図である。位置変換器70は、LEDダイの個数および検出器の形状のみが図1A〜図1Dに示した位置変換器100とは異なる。それ以外の点では、位置変換器70の構成は、位置変換器100のものと同じである。図11では、位置変換器70について、図1A〜図1Dに示したプリント基板6上におけるLEDダイとフォトダイオードの位置関係を示している。また、図11では、回転するバタフライ形状反射器7からの反射光がプリント基板6上に照射して形成された像の形状も、符号7の破線で重ねて示している。
位置変換器70は、プリント基板6の下面上における、回転制限モータ1の回転軸2に対向する中心領域C1の内側に実装された2つのLEDダイ4a,4bを有する。
また、位置変換器70は、4つのフォトダイオードA1,A2,B1,B2で構成される検出器11aを有する。フォトダイオードA1,A2,B1,B2は位置変換器100のものと同じであるが、位置変換器70の検出器11aでは、フォトダイオードA1,A2,B1,B2の配置が位置変換器100の検出器11とは異なる。図11に示すように、検出器11aでは、1対のフォトダイオードA1,B1の矩形のチップがプリント基板6の面内で互いに傾いており、他の1対のフォトダイオードA2,B2の矩形のチップも、プリント基板6の面内で互いに傾いている。また、フォトダイオードA1,B1およびフォトダイオードA2,B2は、プリント基板6上における回転軸2(図1Cなどを参照)の直上の点Oを中心とする円周C上で、同じ角度の隙間Gを空けて配置されている。
図11に示した例では、隙間Gの角度は14度である。この角度は、1対を構成する一方のフォトダイオードの端部(例えば、フォトダイオードA1の図11における右側端部)と他方のフォトダイオードの端部(例えば、フォトダイオードB1の図11における左側端部)とがなす角の大きさである。なお、図11に示した例では、バタフライ形状反射器7における1枚の反射面7bの開き角は60度であり、各フォトダイオードの対向する2つの端部がなす角度は50度である。
位置変換器70の信号処理回路は、LED20が直列に2個接続されることを除けば、図5に示した信号処理回路13と同様である。
図12(a)および図12(b)は、検出器のフォトダイオード間における隙間Gの大きさの範囲を説明するための図である。これらの図では、図1A〜図1Dに示したプリント基板6上におけるLEDダイとフォトダイオードの位置関係を示しており、バタフライ形状反射器7からの反射光による像の形状も符号7で重ねて示している。図12(a)は位置変換器100についての図であり、図12(b)は、実用的な観点で隙間Gを最大限広げた位置変換器80についての図である。位置変換器80は、隙間Gの角の大きさのみが図11に示した位置変換器70とは異なり、それ以外の点では、位置変換器80の構成は、位置変換器70のものと同じである。
図12(a)に示す位置変換器100の検出器11では、位置変換器70の検出器11aとは異なり、フォトダイオードA1,B1の矩形のチップは互いに傾いておらず、他の1対のフォトダイオードA2,B2の矩形のチップも傾いていない。検出器11では、1対を構成する一方のフォトダイオードの端部と他方のフォトダイオードの端部とがなす角の大きさは、4度である。したがって、隙間Gの角度は4度よりも大きいことが必要である。
図12(b)に示す位置変換器80は、4つのフォトダイオードA1,A2,B1,B2で構成される検出器11bを有する。位置変換器80の検出器11bでは、1対のフォトダイオードA1,B1の矩形のチップがプリント基板6の面内で互いに傾いており、他の1対のフォトダイオードA2,B2の矩形のチップも、プリント基板6の面内で互いに傾いている。検出器11bでは、隙間Gの角度は40度である。また、位置変換器80では、バタフライ形状反射器7における1枚の反射面7bの開き角は86度であり、各フォトダイオードの対向する2つの端部がなす角度は50度である。
位置変換器として機能するためには、バタフライ形状反射器7が回転したときに、反射面7bでの反射光の像ができることによって、1対を構成する2つのフォトダイオードの間で受光面積の差が生じる必要がある。このため、隙間Gの角度の上限は、反射面7bの開き角の大きさに依存する。位置変換器80では、位置変換器100と比べて反射面7bの開き角を広げているが、反射面7bの開き角を拡大できる範囲には限度がある。隙間Gの角度を40度以上にすると、バタフライ形状反射器7が回転したときに、1対を構成する2つのフォトダイオードの間で受光面積の差が生じにくくなる。また、隙間Gの角度を40度以上にすると、各フォトダイオードのチップの傾きが大きくなって、フォトダイオードA1,B2の間およびフォトダイオードB1,A2の間でチップ同士が接触するおそれもある。したがって、実用的には、隙間Gの角度は40度よりも小さいことが好ましい。
図13は、位置変換器100,70における電流電圧変換部21a,21bの出力電圧Va,Vbの波形を示した図である。横軸は時間tを表し、縦軸は電圧Vを表す。曲線a,bは、それぞれ、位置変換器100におけるフォトダイオードA1,A2の出力電圧VaおよびフォトダイオードB1,B2の出力電圧Vbの波形である。曲線a’,b’は、それぞれ、図11に示した位置変換器70におけるフォトダイオードA1,A2の出力電圧VaおよびフォトダイオードB1,B2の出力電圧Vbの波形である。すなわち、曲線a,bは、各対のフォトダイオードの間に実質的に隙間Gが形成されていない位置変換器の電圧の波形であり、曲線a’,b’は、各対のフォトダイオードの間に隙間Gが形成されている位置変換器の電圧の波形である。回転制限モータ1の回転角度に応じて電圧値が変化するので、図13では、回転角度と波形との対応関係も示している。
位置変換器100の出力電圧の波形には、図13内の破線の丸印で囲んだところに歪みが見られる。ただし、位置変換器100で実際に使用される回転角度(機械角)の範囲は、図13に示した約30度分だけである。波形歪みはこの範囲外で生じており、図示した30度の範囲内では、回転角度に対して電圧の出力波形が直線的に変化している。したがって、30度の回転角度では、波形歪みの影響を受けずに位置変換器100を使用することができる。
位置変換器70の出力電圧の波形にも、図13内の破線の丸印で囲んだところに歪みが見られる。しかしながら、位置変換器70の場合には、各対のフォトダイオードの間に隙間Gを設けたことにより、位置変換器100の場合よりも、出力電圧Vaの波形に対する出力電圧Vbの波形の位相が遅れている。このため、位置変換器70では、図13に示したように、30度よりもΔθ(約10度)だけ広い30度+Δθの範囲内で、回転角度に対して電圧の出力波形が直線的に変化している。言い換えると、位置変換器70では、位置変換器100と比べて、1対を構成する2つのフォトダイオードの出力波形の直線部分が重なる領域が広がっている。
したがって、位置変換器70では、回転制限モータ1の回転角度の範囲を位置変換器100と比べて広くしても、波形上で歪んでいる部分がその角度範囲に対応する波形部分に入らなくなる。このため、位置変換器70は、位置変換器100よりもΔθだけ広い30度+Δθの回転角度で、波形歪みの影響を受けずに使用可能である。
図14(a)および図14(b)は、それぞれ、位置変換器100,70における検出角度の誤差を示したグラフである。各グラフの横軸は回転制限モータ1の回転角度θ(機械角)を表し、縦軸は、実際の回転角度と位置変換器100,70により検出された角度との間の誤差E(%)を表す。回転角度は、−15度から+15度までの30度分の範囲を示している。
図14(a)に示した位置変換器100(各対のフォトダイオードの間に実質的に隙間Gが形成されていない位置変換器)の場合には、誤差Eの幅は0.381%である。一方、図14(b)に示した位置変換器70(各対のフォトダイオードの間に14度の隙間Gが形成されている位置変換器)の場合には、誤差Eの幅は0.035%である。誤差Eの幅が0.1%以内であれば、実用上は、回転角度に対して電圧の出力波形が直線的に変化していると言える。したがって、各対のフォトダイオードの間に隙間Gを形成することにより、回転制限モータの回転角度に対して検出器の出力信号の直線性が保たれる角度範囲が広がることがわかる。
図15は、位置変換器90のLEDダイと検出器11cの配置を示す図である。位置変換器90は、LEDダイの実装位置および隙間Gの角の大きさのみが図11に示した位置変換器70とは異なり、それ以外の点では、位置変換器90の構成は、位置変換器70のものと同じである。図15では、位置変換器90について、図1A〜図1Dに示したプリント基板6上におけるLEDダイとフォトダイオードの位置関係を示しており、バタフライ形状反射器7からの反射光による像の形状も符号7で重ねて示している。
位置変換器90は、4つのフォトダイオードA1,A2,B1,B2で構成される検出器11cを有する。検出器11cでは、1対のフォトダイオードA1,B1の矩形のチップがプリント基板6の面内で互いに傾いており、他の1対のフォトダイオードA2,B2の矩形のチップも、プリント基板6の面内で互いに傾いている。検出器11cでは、隙間Gの角度は30度である。また、位置変換器90は、プリント基板6の下面上において、1対を構成するフォトダイオードA1,B1の隙間Gの内側に実装されたLEDダイ4aと、他の1対を構成するフォトダイオードA2,B2の隙間Gの内側に実装されたLEDダイ4bとを有する。隙間GにLEDダイを配置する場合には、隙間Gの角の大きさは、図11に示した位置変換器70の14度よりも大きい30度程度が最適である。
位置変換器90では、位置変換器70と比べて、LEDダイ4a,4bの配置位置がフォトダイオードA1,A2,B1,B2に近くなる。したがって、位置変換器90でも、位置変換器70と同様に回転制限モータの回転角度に対して検出器の出力信号の直線性が保たれる角度範囲が広がる効果に加えて、位置変換器30〜60と同様に、検出器11cでの受光量が増加しS/N比が向上する効果もある。
なお、位置変換器70では、中心領域C1の内側に2つのLEDダイ4a,4bが実装されているが、各対のフォトダイオードの間に隙間Gを形成する位置変換器では、LEDダイの個数は1個でもよく、3個以上でもよい。また、各対のフォトダイオードの間に隙間Gを形成する位置変換器でも、図8、図10(a)および図10(b)に示したように、複数のLEDダイを、扇形領域D1,D2の内側かつ中心領域C1の外側に配置してもよい。あるいは、図10(c)に示したように、フォトダイオードのチップを切り欠いて、複数のLEDダイを、その切欠き部内に配置してもよい。
なお、複数個のLEDダイを設ける代わりに、例えば、長方形状のLEDチップを使用し、その中央部を遮光性部品で覆って2つの光源としてもよい。また、拡散光源として、チップ面積の大きいLEDを使用してもよい。光学素子の材質を変更し、可視光領域の光を使用してもよい。また、LEDダイの拡散光を効率よくバタフライ形状反射器に向けるために、チクソ性の高い透明樹脂やガラスなどを用いて、半球状のレンズを設けてもよい。
LEDダイは、プリント基板に直接実装し、LEDダイの拡散光が直接フォトダイオードに照射されないようにすることが好ましい。しかしながら、LEDダイとフォトダイオードを必ずしも同一平面上に配置しなくてもよい。
反射器は、金型などで例えばバタフライ形状に製作した樹脂にメッキなどを施して反射面を設けたものを使用してもよい。また、中央部に孔を設けた反射器を、回転制限モータの回転軸に嵌合だけでなく圧入で固定してもよい。反射器を回転軸に嵌合で取り付けることによって、回転軸との調芯作業が不要となり、製造コストが削減される。
拡散光吸収部材には、黒色つや消しを施したアルミ材を利用してもよい。また、黒ニッケルメッキなどの非反射コーティング剤や黒色樹脂などを利用してもよい。可視光領域の光を使用する場合には、拡散光吸収部材として、陽極酸化被膜(黒色つや消しアルマイト)を利用してもよい。
バタフライ形状反射器の反射面から拡散光吸収体までの距離は、広い程改善効果は高いが、実用的には0.2mm〜5mm程度とするのが好ましい。なお、反射器以外から検出器に届く光が十分減衰する距離に回転制限モータの固定側の部材がある場合には、固定側の部材に拡散光吸収部材を配置しなくてもよい。ケースの内面が検出器から十分に離れている場合には、ケースの内面を拡散光吸収部材で覆わなくてもよい。
フォトダイオードダイは、表面にアルミ蒸着などで扇形形状のヌケを設けて、検出器として不要な部位を遮光することが好ましい。また、4つのフォトダイオードには、特性のバラツキを低減させるために、それぞれを1枚のウェハ内の互いに近傍した場所から取り出したものを使用することが好ましい。また、フォトダイオードの分光感度波長は、上記のLEDのピーク波長と同じであることが好ましい。
4つのフォトダイオードの実装精度を向上させる目的で、例えばフォトダイオードA1,B1が1対になったフォトダイオードアレイを製作してもよい。また、そのフォトダイオードアレイには、後段の信号処理回路を共通化するために、P層基板を利用してもよい。さらに、フォトダイオードA1,B1およびフォトダイオードA2,B2の2対となったフォトダイオードアレイを、LEDダイが実装される領域をくり抜き加工して使用してもよい。また、モノリシックで形成されたフォトダイオードアレイを使用し、それぞれに対応したLEDを配置してもよい。