JP3694800B2 - 光学式エンコーダ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環状の固定スリットを使用して複数の信号を検出する光学式エンコーダに関するもので、特に検出した複数の光信号を同一面積の各方形受光素子に集光できる集光レンズを有する光学式エンコーダに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の光学式エンコーダとしては、図11に示すようなものがあった。すなわち、回転円板51の外周にスリット51aを形成し、この回転円板51のスリット51aの下部に同形状のスリットを形成する固定スリット52を配置し、この固定スリット52の下部に受光素子53を配置するとともに、前記回転円板51のスリット51a上部よりランプ54の光を照射して、受光素子53の照度変化を電気信号に変換するものであった。
【0003】
このような光学式エンコーダは、検出領域が回転円板51の一部であるため、固定スリット52の形成に高い精度が要求されるという不都合があった。また、検出領域が回転円板51の一部であるため十分な光量が得られず、したがって、十分な光量を得るためには光量の大きいランプ54が必要となった。
【0004】
そこで次に考えられたのが、図10のような回転円板の全周を検出領域として用いる光学式エンコーダである。図10Aは光学式エンコーダの分解斜視図、図10Bは光学式エンコーダの縦断面図である。図10において、点光源ランプ40が発する光がレンズ41を通過して平行光線となり、拡散ガイド42の中心部に入射せしめられた後、中心部の45°テーパ面によって放射状に反射せしめられ、外周部の45°テーパ面によって下方に再び反射せしめられる。この拡散ガイド42より導出された光は、外周に等間隔でn個のスリットを切欠形成して成る回転軸一体回転の回転側スリット円板43のスリットと集光ガイド45のスリットにより集光ガイド45への入射を周期的に遮られる。スリットを通過して集光ガイド45に入射する断続光はスリット下部の45°テーパ面によって内周へ反射せしめられ、中心部の45°テーパ面にて再度、下方に反射せしめられる。この集光ガイド45より導出された光は受光素子46を断続的に照射し、この受光素子46のインピーダンスを回転軸44の回転速度の1/n倍の周期で変化する。
【0005】
このように、図10の従来の光学式エンコーダによれば、回転検出領域が円板外周全域に拡張されるためスリットの形成誤差が平均化され、スリットの形成誤差に起因する回転検出誤差も軽減され、光源からの光も円板外周の全スリットから集光されるので、出力の小さな光源でよくなったものの、しかしながら、図10の従来の光学式エンコーダでは、2信号以上の検出ができない欠点があった。
【0006】
そこで、このような2信号以上の検出ができるという課題を解決する光学式エンコーダが、従来、提案されている。図8はこのような光学式エンコーダを示している。図8によると、回転軸1にハブ2で固定された回転側スリット円板5には全周を所定数N等分したピッチPの放射状の回転スリット51(図3)が環状に設けられ、回転側スリット円板5の一方の面に対向して円板状の回転側全周光反射部3が回転側スリット円板5と同心になるように設けられている。
ハブ2には、回転軸1に対し45度の角度を持った円錐面からなる回転側光反射部4と、この回転側光反射部4と対向して回転軸1に対し45度の角度を持った円錐面の一部からなる回転側全周光反射部3とが備わっている。この回転側光反射部4と回転側全周光反射部3とで、回転側中心軸方向へ入射してきた光を固定側全周方向へ導く光ガイドの働きをしている。
ハブ2の構成材質は透明な樹脂を使用しており、45度の角度を有する反射部は鏡面の精度で仕上げされているため、内部を透過する光が反射部にて全反射する構成である。また、固定部の材質もハブ2の材質と同様の透明樹脂を使用しており、固定側反射部も透過した光がこの部分で反射する構成である。したがって、発光部11に配置されている発光素子13から発光した光は、凸レンズ14を透過して平行光L1として、回転側光反射部4に入光する。回転側光反射部4では、前述のように光が全反射され回転中心軸に対し直角方向にしかも放射状に反射されL2として回転側全周光反射部3に入光する。回転側全周光反射部3では、同様に直角方向に全反射されL3となる。回転側全周光反射部3は、回転中心軸に対し45度の角度を有しているため、光束L3は回転中心軸に対し平行となり、回転側スリット円板と同一径で環状の平行光束となる。
【0007】
回転側スリット円板5の他方の面に対して円板状の固定側スリット円板6が設けられている。この固定側スリット円板6は図3に示した回転側スリット円板5のスリット51と同じピッチPの固定スリットが全周に設けられている。図4はその固定側スリット円板6における固定スリット61の配置を示しており、固定スリット61Aと同心でP/4ピッチずれた角度の位置に固定スリット61Bが設けられて、2つのトラックを備えた固定スリット61を形成している。固定スリットのAチャンネル61AおよびBチャンネル61Bを通過した光は光束LAおよび光束LBの2光束になり、固定側全周光反射部7で直角に全反射され、回転軸中心に集光する光束L4になる。
【0008】
それぞれ全反射した光束は、回転軸中心付近に配置された固定側光反射部8で直角に全反射する事により、回転中心軸と平行で環状平行光束となって受光部10’に入光する。その場合、光束LAはフォトダイオード10A’に、光束LBはフォトダイオード10B’にそれぞれ入光する。図9は受光素子10’であるフォトダイオード10A’、10B’の配列状態を示している。光束LAは外周側に集まるためフォトダイオード10A’も外周側に配置され、光束LBは内周側に集まるためフォトダイオード10B’は内周側に配置され、全体で同心状配置となっている。
このように、この光学式エンコーダでは外周側のフォトダイオード10A’と内周側のフォトダイオード10B’とで複数の信号が検出できることとなる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような構造の光学式エンコーダの場合、図9に示したように受光素子を同心状に配置する必要がある。そして受光素子をフォトダイオード等で構成した同心状配置の場合、フォトダイオードの各素子受光面積が異なり、フォトダイオードの電極間容量が各素子で異なる結果、周波数特性がそれぞれ違って、検出した信号の精度がバラツキ、性能が悪くなるという問題点があった。そこで、環状になる複数の検出素子の受光面積を同一にして、フォトダイオードの電極間容量を同一にすることで、周波数特性を揃え、高精度の光学式エンコーダを得ることが課題となっている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するため、本発明によれば、固定側に配置されて被測定回転体の回転軸側へ向けて発光する発光部と、該発光部から光ガイドを介して環状領域に送られた光を通過・遮蔽するスリットを備えて回転軸に配置される環状の回転側スリット円板と、該回転側スリット円板に近接配置されて該回転側スリット円板のスリットに対応するスリットを周方向に複数段有する環状の固定側スリット円板と、該固定側スリット円板のスリットを通過した光を前記複数段に対応づけて光ガイドを介して送られる集光部と、該集光部により集光された光を受光して光量変化を電気信号に変換する受光素子を有する受光部と、から構成された光学式エンコーダにおいて、集光部が複数の同心状レンズを有し、各レンズの焦点が同一光軸上にないようにしたことを特徴としている。
【0011】
このように構成することにより、受光素子を同心状に配置することが不要となり、したがって各受光素子の受光面積を同一にでき、各素子の周波数特性が揃う結果、周波数特性のバラツキなくなり、エンコーダ性能が向上する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の光学式エンコーダの一実施例を示す断面図である。
回転軸1にハブ2で固定された回転側スリット円板5には全周を所定数N等分したピッチPの放射状の図3に示す回転スリット51が環状に設けられ、回転側スリット円板5の一方の面に対向して円板状の回転側全周光反射部3が回転側スリット円板5と同心になるように設けられている。
【0013】
ハブ2には、回転軸1に対し45度の角度を持った円錐面からなる回転側光反射部4と、この回転側光反射部4と対向して回転軸1に対し45度の角度を持った円錐面の一部からなる回転側全周光反射部3と、が備わっている。この回転側光反射部4と回転側全周光反射部3とで、回転側中心軸方向へ入射してきた光を固定側全周方向へ導く光ガイドの働きをしている。
ハブ2の構成材質は、透明な樹脂を使用しており、45度の角度を有する反射部は鏡面の精度で仕上げされているため、内部を透過する光が反射部にて全反射する構成である。また、固定部の材質もハブ2の材質と同様の透明樹脂を使用しており、固定側光反射部を透過した光がこの部分で反射する構成である。また、発光部11は発光素子基板12に発光ダイオード等の発光素子13を取り付け、その発光素子13の発する光を平行光線に変える凸レンズ14を発光素子13の前方に配置して成るものである。したがって、発光素子基板12に配置されている発光素子13から発光した光は凸レンズ14を透過して平行光L1として回転側光反射部4に入光する。
【0014】
回転側光反射部4では、前述のように光が全反射され回転中心軸に対し直角方向にしかも放射状に反射されL2として回転側全周光反射部3に入光する。回転側全周光反射部3では、同様に直角方向に全反射されL3となる。回転側全周光反射部3は回転中心軸に対し45度の角度を有しているため、光束L3は回転中心軸に対し平行となり、回転側スリット円板と同一径で環状の平行光束となる。回転側スリット円板5の他方の面に対して円板状の固定側スリット円板6が設けられている。この固定側スリット円板6は図3に示した回転側スリット円板5のスリット51と同じピッチPの固定スリットが全周に設けられている。図4はその固定側スリット円板6における固定スリット61の配置を示しており、Aチャンネル固定スリット61Aと同心でP/4ピッチずれた角度の位置にBチャンネル固定スリット61Bが設けられて、2つのトラックを備えた固定スリット61を形成している。固定側全周光反射部7と固定側光反射部8とで、固定側全周へ入射してきた光を固定側中心軸にガイドする光ガイドの働きをしている。そこで、Aチャンネル固定スリット61AおよびBチャンネル固定スリット61Bを通過した光は、光束LAおよび光束LBの2光束になり、V溝部71付きの固定側全周光反射部7で直角に全反射され、回転軸中心に集光する2チャンネルの光束L4になる。それぞれ全反射した光束は、回転軸中心状に配置されたV溝部81付きの固定側光反射部8で直角に全反射する事により、回転中心軸と平行で環状平行な2チャンネルの光束となって集光部15に入光する。
【0015】
図2はその集光部15の拡大図を示している。集光部30は、同心状レンズ15Aと同心状レンズ15Bで構成されている集光レンズである。それぞれの同心状集光レンズの焦点は、一定の角度を持たせフォトダイオード上に焦点が結ぶように設計されている。それぞれの同心状レンズは、入射光に対し一定の傾斜角度を持った平面であり、出射光部は凸レンズ構造である。また、平面の傾斜角度は、互いに逆の角度になるように構成されている。つまり、プリズムとレンズが合体し、しかも同心形状であると考えれば理解しやすい。入射光は、プリズム部で一定の角度曲がり、レンズ部で集光する構造である。そして、それぞれの集光レンズを透過した光束LAはフォトダイオード10Aに、光束LBはフォトダイオード10Bにそれぞれ集光して入光する。
【0016】
なお、プリズムのため環状の入射光は、集光されると楕円形状になって集光されるが、これが問題になる場合は、レンズに非球面レンズを採用すれば円形の環状に補正することができる。そして、それぞれの検出信号は変換装置(図示せず)によってパルス信号などに変換される。
【0017】
このように、同一光軸上に焦点を結ばない設計の同心状レンズで検出光を集光させてフォトダイオードに入光させることにより、フォトダイオードが小面積となり、フォトダイオードの電極間容量が小さくなり、したがって周波数特性が向上し、コストダウンにもなる。また、フォトダイオードの形状を同一面積にできるので、特性の揃った2つの信号が得られ、エンコーダの性能が向上する。さらに、それぞれのフォトダイオードの形状を環状にしなければいけないという制限がなくなるので、設計目的にあった場所にフォトダイオードを配置することができる。
【0018】
図5には、この光束を検出するためのフォトダイオードの詳細配置図を示した。受光部10は、正方形のフォトダイオード10Aとフォトダイオード10Bの2素子を配置しており、2つの異なる電気信号が得られるように同一フォトダイオード上に配置されている。
なお、本発明では、2信号について説明したが、多数の信号検出する場合には、固定スリットと集光レンズは同一光軸上に配置し、それぞれの集光レンズは同一光軸上に配置しないようにレンズ設計をすればよいことは明白である。
また、本光学式エンコーダの全体の構成は、透明な樹脂モールドにて形成するのに適しているため、一体成形部品にて構成できるという特徴がある。
【0019】
図6は、図1の応用例を示した断面図である。本実施例は、集光部15のレンズの外径延長部15Cに受光素子基板9を取り付ける機能と位置決めを行なう位置決め部16を設けて、部品個数を減らした構造となっている。この構造を採用することにより、同心状レンズとフォトダイオードの取り付け時の機械誤差がなくなり、集光した光が正確にフォトダイオードに入光するためエンコーダの性能が向上するという効果がある。
さらに、部品の減少によるコストダウンができるという効果も発生する。
【0020】
図7には。同心状レンズにフレネル構造のレンズを採用した応用実施例を示す。フレネルレンズを採用することにより、レンズの厚さを薄くできエンコーダが小形になるという効果が発生する。
なお、本発明においてはフォトダイオードについてのみ説明したが、受光素子としてフォトトランジスタや受光素子と波形整形のための集積回路を一体化した光ICを採用しても、同一の効果があることは言うまでもない。
【0021】
【発明の効果】
以上の実施例からわかるように、本発明に示したように、同一光軸上に焦点を結ばない同心状レンズで集光させてフォトダイオードに入光させることにより、
1.小面積のフォトダイオードで良いため、フォトダイオードの電極間容量が小さくなり、周波数特性が向上する。
2.フォトダイオードの形状を同一面積にできるため、特性の揃った二つの信号が得られ、エンコーダの特性が向上する。
3.それぞれのフォトダイオードの形状を環状にしなければならないという制限がなくなり、設計目的にあった場所にフォトダイオードを配置することができる。
4.フォトダイオードの面積が小さくなる結果、コストダウンにもなる。
などの効果が出てくる。
5.また、同心状集光部と受光素子基板を取り付ける機能と位置決め部を集光レンズの外径部に設けて部品個数を減らすことにより、同心状レンズとフォトダイオードの取り付け時の機械誤差がなくなり、集光した光が正確にフォトダイオードに入光するためエンコーダの性能が向上するという効果、さらに、部品の減少によるコストダウンができるという効果も発生する。
6.フレネルレンズを採用することにより、同心状集光レンズの厚さを薄くできエンコーダが小形になるという効果が発生する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図。
【図2】本発明の集光レンズの詳細の拡大図。
【図3】回転側スリット円板の詳細部分図。
【図4】固定スリットの詳細部分図。
【図5】本発明のフォトダイオードの配置図。
【図6】本発明の第1の応用例を示す部分断面図。
【図7】本発明のフレネルレンズを使用した応用例を示す部分断面図。
【図8】従来例3を示す断面図。
【図9】従来例3のフォトダイオードの配置図。
【図10】従来例2を示す断面図で、図10Aは光学式エンコーダの分解斜視図、図10Bは光学式エンコーダの縦断面図。
【図11】従来例1を示す断面図。
【符号の説明】
1 回転軸
2 ハブ
3 回転側全周光反射部
4 回転側光反射部
5 回転側スリット円板
51 回転スリット
6 固定側スリット円板
61A Aチャンネル固定スリット
61B Bチャンネル固定スリット
7 固定側全周光反射部
71、81 V溝部
8 固定側光反射部
9 、9’、9A 受光素子基板
10 、10’ 受光部
10A、10B、10A’、10B’ フォトダイオード
11 発光部
12 発光素子基板
13 発光素子(発光ダイオード)
14 凸レンズ
15 集光部
15A、15B 同心状レンズ
15C 外径延長部
16 位置決め部
17 フレネルレンズ
Claims (6)
- 被測定回転体の回転軸側へ向けて発光する発光部と、該発光部から光ガイドを介して環状領域に送られた光を通過・遮蔽するスリットを備えて回転軸に配置される環状の回転側スリット円板と、該回転側スリット円板に近接配置されて該回転側スリット円板のスリットに対応するスリットを周方向に複数段有する環状の固定側スリット円板と、該固定側スリット円板のスリットを通過した光を前記複数段に対応づけて光ガイドを介して送られる集光部と、該集光部により集光された光を受光して光量変化を電気信号に変換する受光素子を有する受光部と、から構成された光学式エンコーダにおいて、
前記集光部が複数の同心状レンズを有し、各同心状レンズの焦点が同一光軸上にないようにしたことを特徴とする光学式エンコーダ。 - 前記光学式エンコーダにおいて、
前記同心状レンズが平凸レンズにて構成されたことを特徴とする請求項1記載の光学式エンコーダ。 - 前記光学式エンコーダにおいて、
前記同心状レンズが平面と非球面凸レンズにて構成されたことを特徴とする請求項1記載の光学式エンコーダ。 - 前記光学式エンコーダにおいて、
前記同心状レンズがフレネルレンズ構造であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の光学式エンコーダ。 - 前記光学式エンコーダにおいて、
前記集光部が受光素子の固定および位置決め機能を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の光学式エンコーダ。 - 前記光学式エンコーダにおいて、
前記受光部が方形の受光素子から成ることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の光学式エンコーダ。
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