図1は本発明の建設機械の第1の実施の形態を備えた油圧ショベルを示す斜視図である。図1に示すように、油圧ショベルは下部走行体9と上部旋回体10と作業機15を備えている。下部走行体9は左右のクローラ式走行装置を有し、左右の走行油圧モータ3b、3a(左側3bのみ図示)により駆動される。上部旋回体10は下部走行体9上に旋回可能に搭載され、旋回油圧モータ4により旋回駆動される。上部旋回体10には、原動機としてのエンジン14と、エンジン14により駆動される油圧ポンプ装置2とを備えている。
作業機15は上部旋回体10の前部に俯仰可能に取り付けられている。上部旋回体10には運転室が備えられ、運転室内には走行用右操作レバー装置1a、走行用左操作レバー装置1b、作業機15の動作及び旋回動作を指示するための右操作レバー装置1c、左操作レバー装置1d等の操作装置が配置されている。
作業機15はブーム11、アーム12、バケット8を有する多関節構造であり、ブーム11はブームシリンダ5の伸縮により上部旋回体10に対して上下方向に回動し、アーム12はアームシリンダ6の伸縮によりブーム11に対して上下及び前後方向に回動し、バケット8はバケットシリンダ7の伸縮によりアーム12に対して上下及び前後方向に回動する。
また、作業機15の位置を算出するために、上部旋回体10とブーム11との連結部近傍に設けられ、ブーム11の角度を検出する角度検出器13aと、ブーム11とアーム12との連結部近傍に設けられ、アーム12の角度を検出する角度検出器13bと、アーム12とバケット8との近傍に設けられ、バケット8の角度を検出する角度検出器13cとを備えている。これらの角度検出器13a〜cが検出した角度信号は、後述するメインコントローラ100に入力されている。
コントロールバルブ20は、油圧ポンプ装置2から上述したブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7、左右の走行油圧モータ3b、3a等の油圧アクチュエータのそれぞれに供給される圧油の流れ(流量と方向)を制御するものである。
図2は本発明の建設機械の第1の実施の形態を備えた建設機械の油圧駆動装置を示す構成図である。なお、説明の簡略化のため、油圧アクチュエータとしてブームシリンダ5とアームシリンダ6のみを備えた構成として説明し、本発明の実施の形態と直接的に関係しないドレーン回路等の図示と説明は省略する。また、従来の油圧駆動装置と構成および動作が同様のロードチェック弁などの説明を省略する。
図2において、油圧駆動装置は、油圧ポンプ装置2と、第1油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ5と、第2油圧アクチュエータとしてのアームシリンダ6と、右操作レバー装置1cと、左操作レバー装置1dと、コントロールバルブ20と、メインコントローラ100と、情報コントローラ200とを備えている。
油圧ポンプ装置2は、第1油圧ポンプ21と第2油圧ポンプ22とを備えている。第1油圧ポンプ21と第2油圧ポンプ22は、エンジン14によって駆動され、それぞれ第1ポンプラインL1と第2ポンプラインL2に圧油を吐出する。本実施の形態では、第1油圧ポンプ21及び第2油圧ポンプ22は固定容量型の油圧ポンプとして説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、可変容量型の油圧ポンプを用いて構成してもよい。
コントロールバルブ20は、第1ポンプラインL1と第2ポンプラインL2からなる2系統のポンプラインから構成されている。第1ポンプラインL1には第1方向制御弁としてのブーム方向制御弁23が接続されていて、第1油圧ポンプ21が吐出した圧油は、ブームシリンダ5へ供給される。同様に、第2ポンプラインL2には第1増速方向制御弁としてのブーム増速方向制御弁24と、第2方向制御弁としてのアーム方向制御弁25とが接続されていて、第2油圧ポンプ22が吐出した圧油は、ブームシリンダ5とアームシリンダ6へ供給される。なお、ブーム増速方向制御弁24とアーム方向制御弁25はパラレル回路L2aによって、分流可能に構成されている。
第1ポンプラインL1と第2ポンプラインL2とには、それぞれ個別にリリーフ弁26、27が設けられている。それぞれのポンプラインの圧力が予め設定されたリリーフ圧に達した場合、それぞれのリリーフ弁26、27が開いて圧油をタンクへ逃がす。
ブーム方向制御弁23は、電磁比例弁23a、23bを介して受圧部へ供給されるパイロット圧油によって駆動されて動作する。同様に、ブーム増速方向制御弁24は電磁比例弁24a、23b(ブーム方向制御弁23と共用)を介して、アーム方向制御弁25は電磁比例弁25a、25bを介して、各弁の受圧部にパイロット圧油が供給されて動作する。
これらの電磁比例弁23a,23b,24a,25a,25bは、パイロット油圧源29から供給されるパイロット圧油を元圧として、メインコントローラ100からの指令電流に応じて減圧した2次パイロット圧油を、各方向制御弁23〜25へ出力する。
右操作レバー装置1cは、操作レバーの操作量と操作方向に応じた電圧信号を、ブーム操作信号としてメインコントローラ100に出力する。同様に、左操作レバー装置1dは、操作レバーの操作量と操作方向に応じた電圧信号を、アーム操作信号としてメインコントローラ100に出力する。
ブームシリンダ5には、ボトム側油室の圧力を検出するブームシリンダボトム室側圧力センサ5bが設けられ、アームシリンダ6には、ボトム側油室の圧力を検出する請求項に記載の掘削負荷検センサとしてのアームシリンダボトム室側圧力センサ6bが設けられている。ブームシリンダボトム室側圧力センサ5bとアームシリンダボトム室側圧力センサ6bは、それぞれ検出した圧力信号をメインコントローラ100に出力する。
モード設定スイッチ32は、運転室内に配置されており、建設機械の作業において、半自動制御を有効にするか否かをオペレータが選択可能とするものであって、真:半自動制御有効、又は、偽:半自動制御無効のいずれかを選択可能とする。
メインコントローラ100は、モード設定スイッチ32から送信される半自動制御有効フラグ、情報コントローラ200から送信される目標面情報、角度検出器13a、13bから送信されるそれぞれブーム角度信号、アーム角度信号、ブームシリンダボトム室側圧力センサ5b、アームシリンダボトム室側圧力センサ6bから送信されるそれぞれブームボトム圧信号、アームボトム圧信号を入力し、これら入力信号に応じて、各電磁比例弁23a,23b,24a,25a,25bを駆動する指令信号をそれぞれへ出力する。なお、情報コントローラ200で行う演算は、本発明と直接的に関係しないため、その説明を省略する。
次に、本発明の建設機械の第1の実施の形態を構成するメインコントローラ100について図を用いて説明する。図3は本発明の建設機械の第1の実施の形態を構成するメインコントローラの構成を示す概念図、図4は本発明の建設機械の第1の実施の形態を構成するメインコントローラのメインスプール制御部の演算内容の一例を示す制御ブロック図、図5は本発明の建設機械の第1の実施の形態を構成するメインコントローラのブーム増速制御部の演算内容の一例を示す制御ブロック図である。
図3に示すように、メインコントローラ100は、目標パイロット圧演算部110と、作業機位置取得部120と、目標面距離取得部130と、メインスプール制御部140と、ブーム増速制御部150とを備えている。
目標パイロット圧演算部110は、右操作レバー装置1cからのブーム操作量信号と、左操作レバー装置1dからのアーム操作量信号とを入力し、入力信号に応じてブーム上げ目標パイロット圧と、ブーム下げ目標パイロット圧と、アームクラウド目標パイロット圧と、アームダンプ目標パイロット圧を演算して、メインスプール制御部140へ出力する。なお、ブーム操作量がブーム上げ方向に大きいほど、ブーム上げ目標パイロット圧を大きくし、ブーム操作量がブーム下げ方向に大きいほど、ブーム下げ目標パイロット圧を大きくする。同様に、アーム操作量がアームクラウド方向に大きいほど、アームクラウド目標パイロット圧を大きくし、アーム操作量がアームダンプ方向に大きいほど、アームダンプ目標パイロット圧を大きくする。
作業機位置取得部120は、角度検出器13a、13bからのブーム角度信号とアーム角度信号を入力し、入力信号に応じて予め設定されているブーム11とアーム12の幾何学情報を用いてバケット8の先端位置を演算して、作業機位置信号として目標面距離取得部130へ出力する。ここで、作業機位置は、例えば建設機械に固定された座標系の1点として演算される。ただし、作業機位置はこれに限らず、作業機15の形状を考慮した複数の点群として演算されてもよい。また、特許文献1に記載されている建設機械の軌跡制御装置と同様の演算を行ってもよい。
目標面距離取得部130は、情報コントローラ200から送信される目標面情報と、作業機位置取得部120からの作業機位置信号とを入力し、作業機15と施工目標面との距離(以下、目標面距離という)を演算し、メインスプール制御部140、ブーム増速制御部150へ出力する。ここで目標面情報は、例えば建設機械に固定された2次元平面座標系の2点として与えられる。ただし、目標面情報はこれに限らず、グローバル3次元座標系に平面を構成する3点として与えられてもよいが、この場合は作業機位置と同じ座標系へ座標変換を行う必要がある。また、作業機位置が点群として演算された場合は、目標面情報に最も近い点を用いて目標面距離を演算してもよい。また、特許文献1に記載されている建設機械の軌跡制御装置の最短距離Δhと同様の演算を行ってもよい。
メインスプール制御部140は、モード設定スイッチ32から送信される半自動制御有効フラグと、目標パイロット圧演算部110からのブーム上げ目標パイロット圧と、ブーム下げ目標パイロット圧と、アームクラウド目標パイロット圧と、アームダンプ目標パイロット圧と、目標面距離取得部130からの目標面距離信号とを入力し、半自動制御有効フラグが真である場合には、目標面距離に応じて各目標パイロット圧を補正演算して、ブーム上げ電磁弁駆動信号、ブーム下げ電磁弁駆動信号、アームクラウド電磁弁駆動信号、アームダンプ電磁弁駆動信号を演算し、それぞれの信号に対応する電磁比例弁23a、23b、25a、25bを駆動する駆動信号を出力する。メインスプール制御部140で行う演算の詳細は後述する。
ブーム増速制御部150は、モード設定スイッチ32から送信される半自動制御有効フラグと、メインスプール制御部140からのブーム上げ制御パイロット圧と、目標面距離取得部130からの目標面距離信号と、圧力センサ5b、6bから送信されるそれぞれブームシリンダボトム側油室の圧力信号(以下ブームボトム圧信号ともいう)、アームシリンダボトム側油室の圧力信号(以下アームボトム圧信号ともいう)を入力し、ブーム上げ目標パイロット圧を補正演算して、ブーム上げ増速電磁弁駆動信号を演算し、電磁比例弁24aを駆動する駆動信号を出力する。ブーム増速制御部150で行う演算の詳細は後述する。
メインスプール制御部140で行う演算の一例を、図4を用いて説明する。メインスプール制御部140は、ブーム上げ補正パイロット圧テーブル141と、最大値選択器142と、アームクラウド補正パイロット圧ゲインテーブル143と、乗算器144と、選択器145a、145cと、電磁弁駆動信号テーブル146a、146b、146c、146dとを備えている。
ブーム上げ補正パイロット圧テーブル141は、目標面距離信号を入力し、予め設定したテーブルを用いてブーム上げ補正パイロット圧を演算して、最大値選択器142へ出力する。最大値選択器142は、ブーム上げ目標パイロット圧とブーム上げ補正パイロット圧とを入力し、いずれかの最大値を選択して、選択器145aの第2入力端へ出力する。ブーム上げ補正パイロット圧テーブル141は、目標面距離が負の方向に大きくなるほど、すなわち作業機15が目標面に深く侵入するほど、ブーム上げ補正パイロット圧が大きくなるように設定する。これにより、目標面距離に応じてブーム上げ動作が行われ、作業機15の目標面への侵入を制限することができる。
選択器145aは、ブーム上げ目標パイロット圧信号を第1入力端に、上述した最大値選択器142の出力信号を第2入力端にそれぞれ入力すると共に、半自動制御有効フラグ信号を切換入力端に入力する。選択器145aは、半自動制御有効フラグ信号が偽の場合にブーム上げ目標パイロット圧信号を選択出力し、半自動制御有効フラグ信号が真の場合に、ブーム上げ目標パイロット圧信号とブーム上げ補正パイロット圧信号のいずれかの最大値を選択出力する。選択器145aからの出力信号は、ブーム上げ制御パイロット圧信号として、電磁弁駆動信号テーブル146aとブーム増速制御部150へ出力する。
電磁弁駆動信号テーブル146aは、入力するブーム上げ制御パイロット圧信号に応じて、予め設定したテーブルを用いて、電磁弁駆動信号を演算して出力し、電磁比例弁23aを駆動する。同様に電磁弁駆動信号テーブル146bは、入力するブーム上げ下げ目標パイロット圧信号に応じて、予め設定したテーブルを用いて、電磁弁駆動信号を演算して出力し、電磁比例弁23bを駆動する。
アームクラウド補正パイロット圧ゲインテーブル143は、目標面距離信号を入力し、目標面距離に応じて、予め設定したテーブルを用いて、アームクラウド補正パイロット圧ゲインを演算して、乗算器144へ出力する。乗算器144は、アームクラウド目標パイロット圧とアームクラウド補正パイロット圧ゲインとを入力し、入力値を乗算して、選択器145cの第2入力端へ出力する。アームクラウド補正パイロット圧ゲインテーブル143は、目標面距離が負の方向に大きくなるほど、すなわち作業機15が目標面に深く侵入するほど、アームクラウド補正パイロット圧ゲインが小さくなるように設定する。これにより、目標面距離に応じてアームクラウド速度が小さくなり、作業機15の目標面への侵入を制限することができる。
選択器145cは、アームクラウド目標パイロット圧信号を第1入力端に、上述した乗算器144の出力信号を第2入力端にそれぞれ入力すると共に、半自動制御有効フラグ信号を切換入力端に入力する。選択器145cは、半自動制御有効フラグ信号が偽の場合にアームクラウド目標パイロット圧信号を選択出力し、半自動制御有効フラグ信号が真の場合に、アームクラウド目標パイロット圧信号とアームクラウド補正パイロット圧ゲインとを乗算したアームクラウド補正パイロット圧信号を選択出力する。選択器145cからの出力信号は、アームクラウド制御パイロット圧信号として、電磁弁駆動信号テーブル146cへ出力する。
電磁弁駆動信号テーブル146cは、入力するアームクラウド制御パイロット圧信号に応じて、予め設定したテーブルを用いて、電磁弁駆動信号を演算して出力し、電磁比例弁25aを駆動する。同様に電磁弁駆動信号テーブル146dは、入力するアームダンプ目標パイロット圧信号に応じて、予め設定したテーブルを用いて、電磁弁駆動信号を演算して出力し、電磁比例弁25bを駆動する。
なお、特許文献1に記載されているベクトル方向補正によりブーム上げ目標パイロット圧、アームクラウド目標パイロット圧を補正しても良い。
次に、ブーム増速制御部150で行う演算の一例を、図5を用いて説明する。ブーム増速制御部150は、減算器151と、パイロット圧上限値テーブル152と、第2パイロット圧上限値テーブル153と、第3パイロット圧上限値テーブル154と、最大値選択器155と、最小値選択器156と、選択器157と、電磁弁駆動信号テーブル158とを備えている。
減算器151は、ブームボトム圧信号とアームボトム圧信号を入力し、ブームボトム圧信号からアームボトム圧信号を引いて圧力偏差を演算してパイロット圧上限値テーブル152に出力する。ここで、圧力偏差が小さくなることは、ブームボトム圧に対してアームボトム圧が増加することを示し、これは、作業機15にかかる掘削負荷が増加したことを示している。パイロット圧上限値テーブル152は入力した圧力偏差に応じて、予め設定したテーブルを用いて、パイロット圧上限値を演算して最大値選択器155へ出力する。
パイロット圧上限値テーブル152は、ブームボトム圧信号とアームボトム圧信号の圧力偏差が小さいほど、すなわち作業機15にかかる掘削負荷が大きいほど、パイロット圧上限値が小さくなるように設定する。こうすることにより、掘削負荷が増大した場合に、アームボトム圧が増加してブームボトム圧との偏差が小さくなったことを検出し、電磁比例弁24aが吐出するブーム上げ増速パイロット圧を制限してブーム増速方向制御弁24のメータイン開口を制限する。よって、第2油圧ポンプ22からブームシリンダ5への分流が抑制され、アームシリンダ6とブームシリンダ5の速度バランスが保たれるため、所定の仕上げ精度を得ることができる。
第2パイロット圧上限値テーブル153は、入力したアームボトム圧信号に応じて、予め設定したテーブルを用いて、第2パイロット圧上限値を演算して最大値選択器155へ出力する。第2パイロット圧上限値テーブル153は、アームボトム圧信号が大きいほど、第2パイロット圧上限値が大きくなるように設定する。なお、図中に点線Aで示すアームボトム圧はリリーフ圧と略一致しており、アームボトム圧がリリーフ圧と略一致するまでに第2パイロット圧上限値を最大とする。こうすることにより、アームボトム圧が増加してリリーフ圧に近づいたことを検出し、電磁比例弁24aが吐出するブーム上げ増速パイロット圧を増加してブーム増速方向制御弁24のメータイン開口を大きくする。よって、第2油圧ポンプ22からブームシリンダ5への分流を可能とし、リリーフによる損失を回避できる。結果として、上述したアームボトム圧が増加してブームボトム圧との偏差が小さくなった場合であっても、アームシリンダ6とブームシリンダ5の速度バランスを保つべくブーム増速方向制御弁24のメータイン開口が制限された後、アームボトム圧が大きくなりすぎた場合にブーム増速方向制御弁24のメータイン開口を大きくすることにより、ブーム及びアームの速度バランスを保ったままリリーフによる圧損を回避することが可能となる。
第3パイロット圧上限値テーブル154は、目標面距離信号を入力し、予め設定したテーブルを用いて、第3パイロット圧上限値を演算して最大値選択器155へ出力する。第3パイロット圧上限値テーブル154は、目標面距離が大きいほど、第2パイロット圧上限値が大きくなるように設定する。こうすることにより、作業機15が目標面から遠い位置では、第2油圧ポンプ22からブームシリンダ5への分流を確実に可能とし、リリーフによる損失を回避できる。
最大値選択器155は、パイロット圧上限値と第2パイロット圧上限値と第3パイロット圧上限値とを入力し、いずれかの最大値を選択して、パイロット圧上限値を補正して最小値選択器156へ出力する。
最小値選択器156は、オペレータのレバー操作により発生したブーム上げ制御パイロット圧と最大値選択器155からのパイロット圧上限値とを入力し、いずれかの最小値を選択することでブーム上げ制御パイロット圧を補正して選択器157の第2入力端へ出力する。
選択器157は、ブーム上げ制御パイロット圧信号を第1入力端に、上述した最小値選択器156の出力信号を第2入力端にそれぞれ入力すると共に、半自動制御有効フラグ信号を切換入力端に入力する。選択器157は、半自動制御有効フラグ信号が偽の場合にブーム上げ制御パイロット圧信号を選択出力し、半自動制御有効フラグ信号が真の場合に、ブーム上げ制御パイロット圧をブームボトム圧、アームボトム圧、目標面距離に応じて補正した値を選択して出力する。選択器157からの出力信号は、電磁弁駆動信号テーブル158へ出力する。
電磁弁駆動信号テーブル158はブーム上げ制御パイロット圧に応じて、予め設定したテーブルを用いて、ブーム上げ増速電磁弁駆動信号を演算して出力し、電磁比例弁24aを駆動する。
次に、ブーム増速制御部150の演算フローについて図6を用いて説明する。図6は本発明の建設機械の第1の実施の形態を構成するメインコントローラのブーム増速制御部の演算のフローの一例を示すフローチャート図である。
メインコントローラ100のブーム増速制御部150は、半自動制御が有効か否かを判断する(ステップS101)。具体的には、半自動制御有効フラグ信号が真か偽かを判断する。半自動制御有効フラグ信号が真の場合(ステップS102)へ進み、それ以外の場合はリターンへ進む。
ブーム増速制御部150は、パイロット圧上限値と第2パイロット圧上限値と第3パイロット圧上限値とを演算する(ステップS102、S103、S104)。具体的には、上述したパイロット圧上限値テーブル152と第2パイロット圧上限値テーブル153と第3パイロット圧上限値テーブル154とで実行される。
ブーム増速制御部150は、パイロット圧上限値が第2パイロット圧上限値超過か否かを判断する(ステップS105)。パイロット圧上限値が第2パイロット圧上限値超過の場合(ステップS107)へ進み、それ以外の場合は(ステップS106)へ進む。
(ステップS105)にて、パイロット圧上限値が第2パイロット圧上限値超過でない場合、ブーム増速制御部150は、パイロット圧上限値を第2パイロット圧上限値に設定する(ステップS106)。その後、(ステップS107)へ進む。
ブーム増速制御部150は、パイロット圧上限値が第3パイロット圧上限値超過か否かを判断する(ステップS107)。パイロット圧上限値が第3パイロット圧上限値超過の場合(ステップS109)へ進み、それ以外の場合は(ステップS108)へ進む。
(ステップS107)にて、パイロット圧上限値が第3パイロット圧上限値超過でない場合、ブーム増速制御部150は、パイロット圧上限値を第3パイロット圧上限値に設定する(ステップS108)。その後、(ステップS109)へ進む。
ブーム増速制御部150は、ブーム制御パイロット圧がパイロット圧上限値未満か否かを判断する(ステップS109)。ブーム制御パイロット圧がパイロット圧上限値未満の場合は、リターンに進み、ブーム上げ制御パイロット圧に応じてブーム上げ増速電磁弁24aを制御する。この場合には、本願発明の特徴である掘削負荷等によるブーム増速方向制御弁24の駆動量の制御は実行されない。ブーム制御パイロット圧がパイロット圧上限値未満でない場合は(ステップS110)へ進む。
(ステップS109)にて、ブーム制御パイロット圧がパイロット圧上限値未満でない場合、ブーム増速制御部150は、ブーム上げ制御パイロット圧をパイロット圧上限値に設定する(ステップS110)。具体的にはパイロット圧上限値に応じてブーム上げ増速電磁弁24aを制御する。この結果、掘削負荷等によるブーム増速方向制御弁24の駆動量の制御がなされるので、掘削負荷が増大してもリリーフによる損失を回避しつつ、分流を抑制して目標軌跡からの逸脱を防止できる。
次に、本発明の建設機械の第1の実施の形態の動作について図を用いて説明する。図7Aは従来の建設機械の時系列の動作の一例を示す特性図、図7Bは本発明の建設機械の一実施の形態における建設機械の時系列の動作の一例を示す特性図である。
図7Aは、ブーム方向制御弁23、ブーム増速方向制御弁24を同一のパイロット圧で駆動した場合の例を示し、図7Bはブーム方向制御弁23、ブーム増速方向制御弁24を個別のパイロット圧で駆動した場合の例を示す。
図7Aおよび図7Bにおいて、横軸は時間を示していて、縦軸は、(a)目標面距離、(b)シリンダ速度、(c)メータイン開口面積、(d)アームボトム圧力とシリンダボトム圧力をそれぞれ示している。なお、目標面距離とは作業機15と施工目標面までの距離をいう。また、時刻T1は、ブームシリンダ5のブームボトム圧よりもアームシリンダ6のアームボトム圧の圧力が高くなった時刻を示している。
図7Aにおいて、時刻T0から掘削を開始すると、アームシリンダ6へ圧油が供給され(b)に示すようにアームシリンダ速度が増加する。目標面距離が0になると(c)に示すようにブーム方向制御弁23のメータイン開口面積が増加し、ブームシリンダ5へ圧油が供給されブームシリンダ速度が増加する。なお、ここでは図の簡略化のため、ブーム方向制御弁23とブーム増速方向制御弁24のパイロット圧に対する開口特性が同一であったと仮定して説明する。ブームシリンダ速度が増加することで、(a)に示すように作業機15が施工目標面に沿って動作し、目標面距離が0付近に保たれる。また、このとき、(d)に示すように掘削反力によってアームボトム圧が増加し、逆にブームボトム圧が減少する。
時刻T1において、ブームボトム圧よりもアームボトム圧が高くなるにつれ、ブーム増速方向制御弁24を通過する分流量が増加するので、(b)に示すようにブームシリンダ速度が増加してアームシリンダ速度が減少する。この結果、目標面距離が増加する。これは、換言すると、作業機15が施工目標面から浮き上がってしまうという問題を生起する。
次に、本実施の形態における動作を図7Bを用いて説明する。図7Bにおいても、時刻T1’までは、図7Aの場合と同様に動作する。本実施の形態においては、時刻T1’から時刻T1において、アームボトム圧がブームボトム圧に近づくと、(c)に示すようにブーム増速方向制御弁24のメータイン開口面積が減少するので、ブーム増速方向制御弁24を通過する分流量が増加しない。このことにより、(b)に示すようにブームシリンダ速度とアームシリンダ速度のバランスが保たれる。
これは、上述したようにブーム増速制御部150における制御により、アームボトム圧に応じてブーム増速方向制御弁24に作用するパイロット圧が制限されるためである。この結果、(a)に示すように目標面距離が0付近に保たれる。
上述した本発明の建設機械の第1の実施の形態によれば、掘削負荷に応じて第2方向制御弁と分流可能に構成された第1増速方向制御弁の駆動量を制御するので、掘削負荷が増大してもリリーフによる損失を回避しつつ、分流を抑制して目標軌跡からの逸脱を防止できる。この結果、所定の仕上げ精度を確保できる。
以下、本発明の建設機械の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。図8Aは従来の建設機械におけるブーム方向制御弁、ブーム増速方向制御弁の開口特性の一例を示す開口特性図、図8Bは本発明の建設機械の第2の実施の形態を構成するブーム方向制御弁、ブーム増速方向制御弁の開口特性の一例を示す開口特性図である。
本発明の建設機械の第2の実施の形態において、油圧駆動装置の構成は、大略第1の実施の形態と同じであるが、パイロット圧に対する開口面積特性を一般的な従来技術の特性から変更した点が異なる。
図8Aの(a)は従来の建設機械におけるブーム上げパイロット圧に対するブーム方向制御弁23のブーム上げ側の開口面積を示し、図8Aの(b)は従来の建設機械におけるブーム上げ増速パイロット圧に対するブーム増速方向制御弁24のブーム上げ側の開口面積を示している。同様に、図8Bの(a)は本発明の第2の実施の形態におけるブーム上げパイロット圧に対するブーム方向制御弁23のブーム上げ側の開口面積を示し、図8Bの(b)は本発明の第2の実施の形態におけるブーム上げ増速パイロット圧に対するブーム増速方向制御弁24のブーム上げ側の開口面積を示している。なお、各図において、実線はメータインの開口面積特性を示し、破線はメータアウトの開口面積特性を示している。
従来技術では、図8Aに示すように、ブーム方向制御弁23、ブーム増速方向制御弁24において、それぞれのブーム上げパイロット圧に対してメータインの開口面積とメータアウトの開口面積が同時に開くように設定されているのが一般的である。
これに対して、本実施の形態においては、図8Bの(a)に示すように、ブーム方向制御弁23を、ブーム上げパイロット圧に対してメータインの開口面積が、メータアウトの開口面積よりも先に増加し始めるように設定し、ブーム増速方向制御弁24を図8Bの(b)に示すように、ブーム上げ増速パイロット圧に対してメータアウトの開口面積が、メータインの開口面積よりも先に増加し始めるように設定している。また、ブーム方向制御弁23のメータアウトの開口面積とブーム増速方向制御弁24のメータアウトの開口面積とを同じパイロット圧が作用したとして比較した場合、ブーム増速方向制御弁24のメータアウトの開口面積の方が、ブーム方向制御弁23のメータアウトの開口面積より先に増加し始めるように設定している。換言すると、ブーム増速方向制御弁24の開き始めのパイロット圧を、ブーム方向制御弁23の開き始めのパイロット圧より低い値に設定している。
このように開口面積特性を設定することにより、パイロット圧が低い領域、すなわちブーム速度が低い領域では、ブームのメータアウトの開口面積をブーム増速方向制御弁24のみで調節することができる。
例えば、本実施の形態においてブーム上げパイロット圧を図8Bの(a)に示す破線Pi1、ブーム上げ増速パイロット圧を図8Bの(b)に示す破線Pi2として与えた場合と、従来技術においてブーム上げパイロット圧を図8Aの(a)に示す破線Pi1、ブーム上げ増速パイロット圧を図8Aの(b)に示す破線Pi2として与えた場合とを比較すると、合計のメータアウト開口面積は、本実施の形態のほうが従来技術よりも小さくなる。
このため、本実施の形態においては、例えば掘削負荷が増大した場合に、ブーム上げ増速パイロット圧を制限すると、ブーム増速方向制御弁24のメータイン開口を閉じると同時にメータアウト開口面積を小さくすることができるので、ブームロッド圧を上昇させることができる。このことにより、掘削反力によるブームシリンダ5の伸長方向の負荷圧力低下を防止できるので、アームシリンダ6とブームシリンダ5の速度バランスが保たれる。この結果、所定の仕上げ精度を得ることができる。
次に、本発明の建設機械の第2の実施の形態の動作について図を用いて説明する。図9Aは本発明の建設機械の第2の実施の形態において、従来技術の開口面積特性を備えた方向制御弁を適用した建設機械の時系列の動作の一例を示す特性図、図9Bは本発明の建設機械の第2の実施の形態における建設機械の時系列の動作の一例を示す特性図である。
図9Aおよび図9Bにおいて、横軸は時間を示していて、縦軸は、(a)目標面距離、(b)シリンダ速度、(c)メータイン開口面積、(d)メータアウト開口面積、(e)アームボトム圧力とシリンダボトム圧力をそれぞれ示している。なお、目標面距離とは作業機15と施工目標面までの距離をいう。また、時刻T1は、ブームシリンダ5のブームボトム圧よりもアームシリンダ6のアームボトム圧の圧力が高くなった時刻を、時刻T2はブームシリンダ5のブームボトム圧が略0となった時刻を示している。
図9Aにおいて、時刻T0から掘削を開始すると、アームシリンダ6へ圧油が供給され(b)に示すようにアームシリンダ速度が増加する。目標面距離が0になると(c)に示すようにブーム方向制御弁23、ブーム増速方向制御弁24のメータイン開口が順次開き、ブームシリンダ5へ圧油が供給されブームシリンダ速度が増加する。同時に、(d)に示すようにブーム方向制御弁23、ブーム増速方向制御弁24のメータアウト開口も順次開き、これらの開口面積とブームシリンダ速度に応じたブームシリンダ5のロッド側の圧力(以下、ブームロッド圧と記載)が(e)に示すように発生する。ブームシリンダ速度が増加することで、(a)に示すように作業機15が施工目標面に沿って動作し、目標面距離が0付近に保たれる。また、このとき掘削反力によってアームボトム圧が増加し、逆にブームボトム圧が減少する。
時刻T1’から時刻T1において、アームボトム圧がブームボトム圧に近づくと、上述したようにブーム増速方向制御弁24に作用するパイロット圧が制限され、結果として(c)に示すようにブーム増速方向制御弁24のメータイン開口面積が減少するので、ブーム増速方向制御弁24を通過する分流量が増加せず、(b)に示すようにブームシリンダ速度とアームシリンダ速度のバランスが保たれる。このとき、(d)に示すようにブーム増速方向制御弁24のメータアウト開口面積も減少するが、ブーム方向制御弁23のメータアウト開口面積が相対的に大きいため、合計のメータアウト開口が比較的大きくなるので、(e)に示すブームロッド圧の増加量は小さい。
時刻T2において、(e)に示すように掘削反力によってブームボトム圧がさらに減少し、略0に達すると、(b)に示すようにブームシリンダ5が供給流量以上の速度で伸長し始める。この結果、(a)に示す目標面距離が増加する。これは、換言すると、作業機15が施工目標面から浮き上がってしまうという問題を生起する。
次に、本実施の形態における動作を図9Bを用いて説明する。図9Bにおいても、時刻T1’までは、図9Aの場合と同様に動作する。本実施の形態においては、時刻T1’から時刻T1においても、(c)に示すメータイン開口面積については図9Aと同様に動作する。一方、メータアウト開口面積については、(d)に示すように、ブーム増速方向制御弁24のメータアウト開口面積が大きく減少する。ブーム方向制御弁23のメータアウト開口面積よりもブーム増速方向制御弁24のメータアウト開口面積が相対的に大きく構成されているため、2弁の合計のメータアウト開口面積が比較的小さくなる。このことにより、(e)で示すように、ブームロッド圧が比較的大きく増加する。
時刻T2において、掘削反力によってブームボトム圧がさらに減少し、略0に達した場合であっても、(e)に示すようにブームロッド圧が比較的大きいため、(b)に示すようにブームシリンダ5が供給流量以上の速度で伸長することを防止できる。この結果、(a)に示すように目標面距離が0付近に保たれる。
上述した本発明の建設機械の第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態では、ブームシリンダ5及びアームシリンダ6を例に本発明を説明したが、これに限るものではない。
さらに、上記した実施形態は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。