JP2017179315A - 導電性樹脂成形体 - Google Patents

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海里 大丹生
Kairi Onyu
海里 大丹生
浩信 吉田
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浩信 吉田
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Koichi Maeno
耕一 前野
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Abstract

【課題】少量の導電性フィラーで導電性および樹脂の流動性に優れた導電性樹脂成形体を提供する。【解決手段】導電性フィラー及び互いが非相溶性である2種類の熱可塑性樹脂(A)、(B)を含有する導電性樹脂成形体であって、熱可塑性樹脂(A)と(B)の全体に対する熱可塑性樹脂(A)の含有量が30〜70容量%であり、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の領域において、導電性フィラーが熱可塑性樹脂(A)内に占める面積の割合αAと導電性フィラーが熱可塑性樹脂(B)内に占める面積の割合αBが、αB/αAが2以上である導電性樹脂成形体。【選択図】図1

Description

本発明は、導電性フィラーを含有する導電性樹脂成形体に関する。
カーボン系フィラーに代表される導電性ナノフィラーは、導電性、熱伝導性、機械的特性などに優れることから、これを樹脂に含有させることで、樹脂にこれらの特性を付与もしくは向上させることが検討されている。しかしながら、高い導電性を付与するには、樹脂材料中に多量に導電性フィラーを含有させる必要があることから、ベース樹脂本来の物性が変わってしまう。特に、流動性の低下が著しく、高い導電性と流動性を両立することが困難であった。
一方、熱伝導性と絶縁性を高め、射出成形時のせん断下での加工における熱伝導率の異方性を発現しにくくし、さらに耐衝撃性を改善するために、導電性ナノフィラーを、エポキシ基を有する化合物とポリフェニレンスルフィド樹脂とともに、ポリオレフィン樹脂に含有させ、分散相(島)のポリオレフィン領域に導電性ナノフィラーを偏在させることが提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、これは、導電性の向上を目的とするものではない。
特開2011−195756号公報
本発明は、少量の導電性フィラーで導電性および樹脂の流動性に優れた導電性樹脂成形体を提供することを課題とする。
本発明者らは、互いに非相溶な熱可塑性樹脂を組み合わせた場合の状態を、走査型顕微鏡写真観察することで、得られた知見をもとに、鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち、本発明の上記課題は、以下の手段によって達成された。
(1)導電性フィラーおよび互いが非相溶性である2種類の熱可塑性樹脂(A)、(B)を含有する導電性樹脂成形体であって、
該熱可塑性樹脂(A)と(B)の全体に対する前記熱可塑性樹脂(A)の含有量が30〜70容量%であり、
前記熱可塑性樹脂(A)と前記熱可塑性樹脂(B)の領域において、
前記導電性フィラーが前記熱可塑性樹脂(A)内に占める面積の割合αと前記導電性フィラーが前記熱可塑性樹脂(B)内に占める面積の割合αが、α/αが2以上であることを特徴とする導電性樹脂成形体。
(2)前記熱可塑性樹脂(A)と前記熱可塑性樹脂(B)の溶解度パラメータの差が4〜11(J/cm1/2であることを特徴とする(1)に記載の導電性樹脂成形体。
(3)前記熱可塑性樹脂(A)の溶解度パラメータが、前記熱可塑性樹脂(B)の溶解度パラメータより低いことを特徴とする(1)または(2)に記載の導電性樹脂成形体。
(4)前記熱可塑性樹脂(A)がポリオレフィン樹脂であり、前記熱可塑性樹脂(B)がポリアミド樹脂であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の導電性樹脂成形体。
(5)前記導電性フィラーが、カーボンブラックであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の導電性樹脂成形体。
(6)前記導電性樹脂成形体中、前記導電性フィラーの含有量が、0.1〜35容量%であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の導電性樹脂成形体。
本発明により、少量の導電性フィラーで導電性および樹脂の流動性に優れた導電性樹脂成形体を提供することが可能となった。
これは、導電性フィラーを互いに非相溶性(非相溶)な熱可塑性樹脂を使用し、少なくとも一方の熱可塑性樹脂領域に偏在もしくは局在させることで、少量の導電性フィラーで効率よく導電ネットワークが形成されることによる。
本発明による導電ネットワーク形成を示す模式図である。 従来の導電性フィラーの多量添加による導電ネットワーク形成を示す模式図である。
<<導電性樹脂組成物および、導電性樹脂成形体>>
本発明の導電性樹脂成形体は、導電性フィラーと少なくとも2種の熱可塑性樹脂を含有する。
導電性樹脂成形体は、導電性樹脂組成物を成形したものである。
<導電性フィラー>
導電性フィラーは、導電性を示すのであれば、有機フィラーでも無機フィラーでも構わない。また、無機と有機の複合体であっても構わない。
本発明では、有機フィラーが好ましく、なかでもカーボン系のフィラーが好ましい。
(カーボン系のフィラー)
カーボン系のフィラーとしては、特に制限はなく、例えば、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンナノフレーク、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、カーボンマイクロコイル、カーボンナノウォール、カーボンナノチャプレット、フラーレンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。
カーボン系のフィラーの形状としては、1本の幹状でも多数のカーボン系のフィラーが枝のように外方に成長している樹枝状であってもよい。
カーボン系のフィラーには炭素以外の原子、分子などが含まれていてもよく、必要に応じて金属や他のナノ構造体を内包させてもよい。
なお、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーの場合、これらは単層、2層以上の多層であっても構わない。
本発明では、カーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックは、表面が化学処理されていても構わない。
カーボンブラックのうち、疑似グラファイト構造と呼ばれる結晶子から構成され、その結晶子が集合して一次粒子を形成し、一次粒子が融着することによりアグリゲートとなり、アグリゲート同士がVan der Waals力により結合した構造体(アグロメレート)から成り立っているものが好ましい。なお、アグリゲート(一次凝集体)はこれ以上微細化できない最小単位である。
導電性カーボンブラックは、粒子径が小さく、比表面積が大きく、アグリゲートやアグロメレートが直線的に発達しており、ネットワーク構造を形成するようにアグリゲート同士が結合し、アグロメレートを形成しているものが好ましい。
導電性カーボンブラックとしては、(株)ライオン製のケッチェンブラックシリーズが好ましい。ケッチェンブラックシリーズとしては、ケッチェンブラックEC600JD、ケッチェンブラックEC300J、カーボンECP、カーボンECP600JDが挙げられ、ケッチェンブラックEC600JD、ケッチェンブラックEC300Jが好ましい。
本発明では、導電性カーボンブラックそのものを使用してもよいが、使用する熱可塑性樹脂と同じ樹脂が使用されている、カーボンブラックを充填した熱可塑性樹脂スターバッチを使用してもよい。
なお、カーボンブラックによる導電性発現機構は、パーコレーション理論により説明されており、カーボンブラックの充填率が少ない場合には電気伝導度は変化しないが、ある臨界充填率を超えたところでカーボンブラックが一定の間隔以下に配列した導電回路を形成し急激な電気伝導度の上昇(抵抗の下降)が生じ、その後一定値に達する。
カーボン系のフィラーの一次粒子径は、1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、300nm以下がさらに好ましく、200nm以下が特に好ましく、100nm以下が最も好ましい。下限値としては特に制限はないが、0.4nm以上が好ましく、0.5nm以上がより好ましい。
カーボン系のフィラーのBET比表面積は、200〜1270m/gが好ましく、800〜1270m/gがより好ましい。
なお、BET比表面積とは、ガス吸着法による比表面積で、BETの式により計算された、カーボンブラックの固体表面に吸着する窒素ガスの単分子層吸着量である。
カーボン系のフィラーのDBP吸油量は、50〜495cm/100gが好ましく、365〜495cm/100gがより好ましい。
なお、DBP吸油量とは、カーボンブラック粒子間の空隙を満たすのに要するDBP(ジブチルフタレート)の量により、粒子の繋がり、凝集の程度を示すものである。
無機フィラーとしては、金属フィラー、金属酸化物もしくは金属水酸化物などの金属化合物のフィラーが挙げられる。このような無機フィラーを構成する金属としては特に制限はないが、例えば、銀、銅、金、黄銅、アルミニウム、鉄、白金、スズ、マグネシウム、モリブデン、ロジウム、亜鉛、パラジウム、タングステン、クロム、コバルト、ニッケル、チタン、金属ケイ素、およびこれらの合金などが好ましい。
これらの金属のうち、成形加工性の向上の観点からは、低融点金属(例えば、Sn)、低融点金属化合物(例えば、SnO)、スズ系合金(例えば、Sn/Ag、Sn/Cu、Sn/Zn、Sn/Bi、Pb/Sn、Pb/Sn/Bi、Pb/Sn/Ag)およびPb/Agといった低融点合金などが好ましい。
無機フィラーの形状としては特に制限はなく、例えば、粒状、平板状、ロッド状、繊維状、チューブ状などが挙げられる。
また、金属や導電性高分子などで被覆されたフィラーとしては特に制限はなく、例えば、銀、銅、金などの金属により被覆されたガラスビーズ、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリ(パラフェニレン)、ポリチオフェンまたはポリフェニレンビニレンなどの導電性高分子により被覆されたガラスビーズなどが挙げられる。
導電性フィラーは、カーボン系のフィラーなどの有機フィラーや無機フィラーなどの導電性フィラーの構造中にカルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、有機シリル基などの置換基、ポリ(メタ)アクリル酸エステルなどの高分子、導電性高分子などが化学結合により導入されたものや、導電性フィラーを他の導電性材料で被覆したものを用いることができる。
導電性フィラーの含有量は、導電性樹脂組成物もしくは導電性樹脂成形体において、導電性樹脂組成物もしくは導電性樹脂成形体全体に対して、0.1容量%以上が好ましく、0.3容量%以上がより好ましく、0.5容量%以上がさらに好ましく、0.7容量%以上が特に好ましく、1.0容量%以上が最も好ましい。導電性フィラーの含有量の上限は、50容量%以下が好ましく、25容量%以下がより好ましく、20容量%以下がさらに好ましく、10容量%以下が特に好ましく、5容量%以下が最も好ましい。
<熱可塑性樹脂>
本発明では、導電性フィラーとともに、互いが非相溶性である2種類の熱可塑性樹脂(A)、(B)を含有する。
ここで、非相溶性(非相溶)とは、2つの樹脂(ポリマー)が基本的に溶け合わないことであり、互いに独立して存在し、海(連続相)−島(分散相)または海−島−湖構造となる。
例えば、ポリアミド(PA)にゴムを存在させたポリフェンレンエーテル(PPE)/ポリアミド(PA)混合系では、海(PA)−島(PPE)−湖(ゴム)構造となる。
異なった特徴を持つ種々の樹脂(ポリマー)の組み合わせは、非相溶となる場合が多いい。
非相溶の場合、2つの樹脂(ポリマー)が上記のように互いに溶け合わず独立して存在するため、お互いの特性を併せ持つことが期待できる。しかしながら、このような組み合わせのものは物理的に混ぜ合わせても微分散化できず、期待した性能を発揮できないどころか、成形時に層状剥離を生じたり、著しい力学強度の低下を生じたりすることが多い。
2つの樹脂(ポリマー)が相溶性であるか非相溶性であるかを判断するには、以下の方法がある。
1)ブレンド試料がフィルム形成能力を有しているか否かによる判定
例えば、solvent−cast法やホットプレス法でブレンド試料が、薄膜を形成できなかったり、見かけ上薄膜を形成できても手で引っ張ると薄膜が簡単に壊れてしまう場合、そのブレンド試料は非相溶性であると判定できる。
2)DSC(示差走査熱量計)法
DSCによるガラス転移温度(Tg)の2つの樹脂(ポリマー)の組成依存性で評価するもので、各々単独の樹脂(ポリマー)のTgが混合比率により、ブレンド試料のTgが各々の樹脂(ポリマー)のTgの間で変化する場合、そのブレンド試料は非相溶性であると判定できる。
3)誘電緩和測定法
基本原理は、DSC(示差走査熱量計)法と同じであるが、DSC(示差走査熱量計)法が静的測定法であるのに対し、動的測定法であって、周波数を連続的に変えることで、無限の相関時間での相溶性に関する情報が得られる。
4)走査型電子顕微鏡(SEM)法
樹脂フィルム断面写真で、組成、密度の差に基づくコントラスト差から、海(連続相)−島(分散相)構造の有無を確認し、判定する。
相溶性は溶解度パラメータ(SP値)から予測できる。
溶解度パラメータ(Solubility Parameter:SP値、δ)は、例えば、山本秀樹著「SP値基礎・応用と計算方法」第66頁〜第67頁(2005年、株式会社情報機構発行)に記載の、「2.Fedorの推算法」に基づき算出できる。Fedorの推算法におけるSP値は、(凝集エネルギー[J/mol])/(分子容[cm/mol])の1/2乗で定義される値であり、主として、ポリマーの各種溶媒への溶解性を予測するのに用いられる物性値である。
2種類の熱可塑性樹脂の溶解度パラメータが近いほど相溶性が高く、逆に、この差が大きいと非相溶性(非相溶)となる。
溶解度パラメータを求めるには、各種の方法があるが、代表的には、Fedors法とHansen法であり、本発明では、Hildebrand法に基づくもので、D.W. Van Krevelen and K. Te Nijenhuis,「Properties of Polymers 3rd completely revised edition」,1990年(Elsevier出版)に記載の値を採用する。
本発明では、2種類の熱可塑性樹脂の溶解度パラメータの差が4〜11(J/cm1/2であることが好ましい。
本発明では、溶解度パラメータの値が小さい方を熱可塑性樹脂(A)、大きい方を熱可塑性樹脂(B)とすると、熱可塑性樹脂(A)の溶解度パラメータは、11.7〜240(J/cm1/2が好ましく、16.0〜21.0(J/cm1/2がより好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルアミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル(変性ポリフェニレンエーテルを含む)樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(変性ポリエーテルエーテルケトンを含む)樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、フッ素系樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリ乳酸、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ケイ素樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂は、上記の酸変性樹脂でもよく、また結晶性でも非晶性でも構わない。
溶解度パラメータは、例えば、ポリエチレン(PE)が、16.0(J/cm1/2、ポリプロピレン(PP)が、17.0(J/cm1/2、ポリスチレン(PS)が、19.1(J/cm1/2、ポリエチレンテレフタレート(PET)が、20.5(J/cm1/2である。
本発明では、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂を使用するが、好ましくは、溶解度パラメータが異なる熱可塑性樹脂を使用する。
溶解度パラメータが異なるのであれば、どのような組み合わせでも構わない。同じ樹脂分類に属する熱可塑性樹脂(例えば、ポリオレフィン樹脂として分類されるポリエチレンとポリプロピレン)であっても、樹脂分類が異なる熱可塑性樹脂(例えば、ポリオレフィン樹脂とポリアミド樹脂)であっても構わない。
本発明では、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂は、樹脂分類が異なる熱可塑性樹脂から選択するのが好ましい。
このような組み合わせとしては、少なくとも1種が、ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂は、溶解度パラメータが小さく、他の熱可塑性樹脂との溶解度パラメータの差を大きくすることができる。
また、導電性フィラーとしてカーボンブラックを使用する場合、カーボンブラックの骨格を形成するのが炭素原子であることから、カーボンブラック粒子の表面は疎水的であり、炭素原子と水素原子が主体の熱可塑性樹脂と、疎水性−疎水性相互作用などにより、互いに親和力があり、熱可塑性樹脂中に、導電性フィラーをより均一に分散できる。
これによって、後述するαの値が大きくなり、α/αの比を容易に大きくすることが可能となる。
本発明では、このなかでも、一方がポリオレフィン樹脂で、他方が、主鎖にアミド結合を有する樹脂が好ましく、一方がポリオレフィン樹脂で、他方が、ポリアミド樹脂がより好ましい。
(ポリオレフィン樹脂)
ポリオレフィン樹脂は、少なくとも1種のオレフィンを重合してなるポリオレフィン樹脂であり、単独重合体であっても共重合体であっても構わない。
このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、イソブテン(1−ブテン)を含む炭素原子数4〜12のα−オレフィン、ブタジエン、イソプレン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。
なお、炭素原子数4〜12のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどが挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、ポリイソブテン樹脂、ポリイソプレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、(メタ)アクリル樹脂(いわゆるアリル樹脂)、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル樹脂、ポリ(メタ)アクリルアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
これらの樹脂のうち、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)が好ましく、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂がなかでも好ましい。
ポリエチレン樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられる。α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体などが挙げられる。
なお、密度もしくは形状で分類した場合、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)のいずれでも構わない。
ポリプロピレン樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレンブロック共重合体(プロピレン単独重合体成分または主にプロピレンからなる共重合体成分と、エチレンおよびα−オレフィンから選択されるモノマーの少なくとも1種とプロピレンとを共重合して得られる共重合体とからなる)などが挙げられる。これらのポリプロピレン樹脂は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
なお、市販されているブロックポリプロピレンは、本発明では、1種類の樹脂と見なして取り扱う。このように取り扱っても、本発明の効果に対して影響を受けるものではない。
ポリプロピレン樹脂に用いられるα−オレフィンは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンが好ましく、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンがより好ましい。
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム共重合体などが挙げられる。
プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体などが挙げられる。
プロピレンブロック共重合体としては、例えば、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体などが挙げられる。
これらのポリプロピレン樹脂のうち、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレンブロック共重合体が好ましい。
ポリプロピレン樹脂の結晶性は、融解温度(融点)や立体規則性で求められ、本発明のポリオレフィン樹脂組成物に求められる品質や、それを成形して得られる成形品に求められる品質に応じて、調整する。
なお、立体規則性はアイソタクチックインデックス、シンジオタクチックインデックスと称される。
アイソタクチックインデックスは、Macromolecules,第8巻,687頁(1975年)に記載の13C−NMR法で求められる。具体的には13C−NMRスペクトルのメチル基の炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率として、ポリプロピレン樹脂のアイソタクチックインデックスを求める。
アイソタクチックインデックスが高いものは、結晶性が高く、0.96以上が好ましく、0.97以上がより好ましく、0.98以上がさらに好ましい。
一方、シンジオタクチックインデックスは、J.Am.Chem.Soc.,110,6255(1988)やAngew.Chem.Int.Ed.Engl.,1955,34,1143−1170に記載の方法で求められ、シンジオタクチックインデックスが高いものが、結晶性が高い。
ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂[塩化ビニルモノマーの単独重合体(ポリ塩化ビニル樹脂など)、塩化ビニル単量体と他の単量体との共重合体(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)など]、ビニルアルコール樹脂(ポリビニルアルコールなどの単独重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの共重合体など)、ポリビニルホルマールなどのポリビニルアセタール樹脂などが挙げられる。これらのビニル系樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。
ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、通常、0.01〜40g/10分であり、機械的強度や生産安定性を高めるという観点から、より好ましくは5〜30g/10分である。
なお、本発明では、不飽和カルボン酸もしくはその無水物のグラフト変性ポリオレフィン樹脂も含め、JIS K7210に準拠し、190℃、2.16kg荷重下で10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)である。
(主鎖にアミド結合を有する樹脂)
主鎖にアミド結合を有する樹脂とは、ポリマーの主鎖に少なくとも、−C(=O)N(Ra)−結合を有するものである。ここで、Raは水素原子または置換基を示し、該置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルもしくはアリールのスルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基が挙げられる。
主鎖にアミド結合を有する樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエーテルアミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂がより好ましい。
ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸化合物とジアミン化合物の共縮合反応、またはラクタム化合物の重縮合反応により得られる。本発明では、これらの原料化合物が全て脂肪族であるか、共縮合反応の場合、いずれか一方が芳香族化合物である場合が好ましく、これらの原料化合物が全て脂肪族である場合がより好ましい。
なお、本発明では、ジカルボン酸化合物とジアミン化合物の共縮合反応では、ジカルボン酸化合物やジアミン化合物は各々1種でも2種以上であっても構わない。また、ラクタム化合物の重縮合反応においても1種であっても2種以上を反応させて得られたものでも構わない。
重縮合反応型のポリアミド樹脂は、ポリアミドnと称し、nは炭素数を示す。
この場合のnは3〜20が好ましく、3〜12がより好ましい。
例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12が挙げられる。
共縮合反応型のポリアミド樹脂は、ポリアミドxyと称し、xはジアミン化合物の炭素数、yはジカルボン酸化合物の炭素数である。
xおよびyは、2〜20が好ましく、3〜16がより好ましく、4〜12がより好ましい。
例えば、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド56、ポリアミド59ポリアミド510が挙げられる。
共縮合反応型のポリアミド樹脂は、テレフタル酸やイソフタル酸とアルキレンジアミン化合物との反応により得られるものも挙げられる。アルキレンジアミン化合物の炭素数は2〜20が好ましく、3〜16がより好ましく、4〜12がより好ましい。
アルキレンジアミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、ナノンジアミン、メチルペンタジアミンが挙げられる。
(その他の熱可塑性樹脂)
上記以外では、ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートが挙げられる。
本発明では、熱可塑性樹脂(A)と(B)の全体に対する熱可塑性樹脂(A)の含有量は30〜70容量%である。
熱可塑性樹脂(A)の含有量は30〜70容量%が好ましく、40〜60容量%がより好ましい。
本発明では、上記の熱可塑性樹脂(A)と(B)以外に、さらに別の樹脂を使用することで、3種以上の熱可塑性樹脂を使用してもよいが、熱可塑性樹脂(A)と(B)の2種のみが好ましい。
<導電性フィラーの各熱可塑性樹脂領域における分布>
本発明では、互いに非相溶な熱可塑性樹脂を使用することで、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の領域において、導電性フィラーの存在量が異なる。
本発明では、導電性フィラーが熱可塑性樹脂(A)内に占める面積の割合をα、導電性フィラーが熱可塑性樹脂(B)内に占める面積の割合をαとしたとき、α/αが2以上である。
α/αの上限値としては特に制限はないが、現実的には99(99%のフィラーが偏在)と考えられる。
ここで、同じ樹脂領域において、αやαの値が小さいことは、導電性フィラーが狭い面積に集中して存在していることを意味する。
このため、α/αの値が1を超えると熱可塑性樹脂(B)側に偏在していることになり、α/αの値が1より大きくなるほど熱可塑性樹脂(B)側で大きく偏在することを意味する。
α/αを2以上にするには、熱可塑性樹脂(A)と導電性フィラーの親和性に対し、熱可塑性樹脂(B)と導電性フィラーの親和性がより高くなる材料系を配合することで調整できる。
導電性フィラーの各樹脂領域における面積の割合α、αは、導電性樹脂成形体の断面を走査型電子顕微鏡で写真(SEM写真)を撮影し、画像寸法計測ソフト〔例えば、(株)イノテック製 Pixs2000pro〕を用いて断面SEM写真における各熱可塑性樹脂の領域の面積を抽出し、続いて各樹脂の領域上に存在する導電性フィラーの面積を抽出して求めることができる。
なお、断面のSEM写真では、熱可塑性樹脂(A)の領域、熱可塑性樹脂(B)の領域および導電性フィラーは、組成や密度の違いがコントラスト差として確認でき、各領域の組成を元素分析することで同定できる。
得られた樹脂の領域の面積とこの樹脂上に存在する導電性フィラーの面積を下記式(1)により、導電性フィラーの各樹脂領域における面積の割合α、αが算出される。
樹脂上に存在する導電性フィラーの面積/樹脂の面積 (1)
図1は、従来の導電性フィラーの多量添加による導電ネットワーク形成を示す模式図であり、図2は、本発明による導電ネットワーク形成を示す模式図である。
図1の(a)に示すSEM写真のように、熱可塑性樹脂1が1種であると連続相のみであって、海(連続相)−島(分散相)は存在しないが、互いに非相溶な熱可塑性樹脂1、4を併用すると、図2の(a)のように、海(連続相)−島(分散相)が存在し、断面のSEM写真で確認できる。
導電性フィラー2が含有した状態では、連続相のみの場合、図1の(c)のように、導電性フィラーは、樹脂に均一に分布して存在するため、導電ネットワーク3の形成は弱い。これに対して、熱可塑性樹脂1に非相溶な熱可塑性樹脂4の場合、図2の(c)のように、海(連続相)−島(分散相)を形成している熱可塑性樹脂(B)領域に、導電性フィラー偏在し、少量の導電性フィラーで導電ネットワーク3が形成される。
このように、本発明では、少量の導電性フィラーで、効率よく導電ネットワークが形成されることから、従来のように、多量の導電性フィラーを使用した場合に問題となる樹脂の流動性の低下が起こらない。
<導電性樹脂組成物の成形および成形品の用途>
導電性樹脂成形体(成形品)は、導電性樹脂組成物を用いて成形される。
成形品の用途、目的に応じて、押出成形、射出成形など従来の成形方法が適用される。
(射出成形品)
本発明の導電性樹脂組成物から得られる射出成形品の具体例としては、自動車用部品を例に取れば、フロントエンドモジュール、ラジエーターマウント、ボディー・バンパーリテーナー、インテークマニホールド、ヒンジ付きクリップ(ヒンジ付き成形品)、結束バンド、レゾネータ、エアークリーナ、エンジンカバー、ロッカーカバー、シリンダーヘッドカバー、タイミングベルトカバー、ガソリンタンク、ガソリンサブタンク、ラジエータータンク、インタークーラータンク、オイルリザーバータンク、オイルパン、電動パワステギヤ、オイルストレーナ、キャニスタ、エンジンマウント、ジャンクションブロック、リレーブロック、ECUケース、コネクタ、コルゲートチューブおよびプロテクター等のアンダーフード部品;ドアハンドル、フェンダー、フードバルジ、ルーフレールレグ、ドアミラーステー、バンパ、スポイラおよびホイールカバー等の外装部品;カップホルダ、コンソールボックス、アクセルペダル、クラッチペダル、シフトレバー台座、シフトレバーノブおよび電磁波シールド部品等の内装部品等が挙げられる。
ただし、本発明の導電性樹脂組成物から得られる射出成形品が自動車用部品に限定されるものでない。
これらの中でも、本発明の導電性樹脂組成物から得られるフロントエンドモジュール、ラジエーターマウントおよびボディー・バンパーリテーナー等は、安定した導電性と耐熱性を達成でき好ましい用途である。
なお、フロントエンドモジュールおよびラジエーターマウント等は、従来、鋼材にて製造されていた部品であるが、車両の軽量化を目的として樹脂製へと置き替わりつつある。しかしながら、これらの部品を、汎用樹脂を用いて樹脂化すると導電性が無くなり、アース用のワイヤーハーネスを別途設置する必要がある。本発明の導電性樹脂組成物を用いて成形された樹脂部品においては、アースを設ける必要がなくなり、樹脂化による車両軽量化を促進することが可能となる。
(押出成形品)
本発明の導電性樹脂組成物から得られる押出成形品の具体例としては、例えば、釣り糸、漁網等の漁業関連資材、スイッチ類、超小型スライドスイッチ、ディップスイッチ、スイッチのハウジング、ランプソケット、結束バンド、電解コンデンサー、コンデンサーケース、モータの内部フィルム状部品、耐熱容器、電子レンジ部品、炊飯器部品、工業用養生シート、プリンタリボンガイド等に代表される電気・電子関連部品、家庭・事務電気製品部品、コンピューター関連部品、ファクシミリ・複写機関連部品および機械関連部品等各種用途等が挙げられる。
本発明の導電性樹脂組成物を用いて得られる押出成形品は、導電性や帯電防止性が必要な部品や部材に好適であり、特に、半導体製造現場の床、壁および天井を覆うシートに本発明の導電性樹脂組成物から得られるシート類を用いると発塵を著しく低減することができる。
また、静電塗装を行う車両、航空機の塗装現場においては、静電気のスパークによる火災の危険があるが、本発明の導電性樹脂組成物より得られる養生シートを用いることで静電気のスパークによる火災の危険性を大幅に低減できる等、その価値は高いものである。
なお、本発明の導電性樹脂組成物から得られるシート類は、電磁波シールド特性にも優れるため、電磁波シールド用材料としても好適である。
以下に、本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下に、使用した素材を示す。
<使用素材>
(1)導電性フィラー
・カーボンブラック〔商品名:ケッチェンブラックEC600JD、(株)ライオン製、一次粒子径34.0nm、BET比表面積1,270m/g、DBP吸油量495cm/100g(15g法)〕
(2)熱可塑性樹脂
・ポリプロピレン樹脂〔商品名:プライムポリプロJ−783HV、(株)プライムポリマー製、ブロックポリプロピレン〕
・ポリアミド66樹脂〔商品名:LeonaTM 1402S、旭化成ケミカルズ(株)製〕
・ポリエチレンテレフタレート〔商品名:NKR−AJ、協栄産業(株)製〕
(3)導電性フィラー充填熱可塑性樹脂
・カーボンブラックを高充填したポリプロピレンマスターバッチ〔商品名:レオパウンドM1090、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕
(溶解度パラメータ)
D.W. Van Krevelen and K. Te Nijenhuis,「Properties of Polymers 3rd completely revised edition」,1990年(Elsevier出版)に記載の下記値を用いた。
Figure 2017179315
実施例1
前記カーボンブラック、熱可塑性樹脂(A)として前記ポリプロピレン、熱可塑性樹脂(B)として前記ポリアミド66を下記表2の容量で配合し、成形温度270℃、金型温度40℃の条件で射出成形することで導電性樹脂成形品を得た。
比較例1
熱可塑性樹脂が前記ポリプロピレンのみで、ポリプレンの配合量を下記表2に変更した以外は実施例1と同様にして、導電性樹脂成形品を得た。
比較例2
熱可塑性樹脂が前記ポリアミド66のみで、ポリアミド66の配合量を下記表2に変更した以外は実施例1と同様にして、導電性樹脂成形品を得た。
比較例3
前記カーボンブラックを高充填したポリプロピレンマスターバッチと、希釈のための熱可塑性樹脂として前記ポリプロピレンおよび前記ポリエチレンテレフタレートを使用し、下記表2の含有量に変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性樹脂成形品を得た。
比較例4
前記カーボンブラックを高充填したポリプロピレンマスターバッチと、希釈のための熱可塑性樹脂として前記ポリプロピレンを配合し、下記表2の含有量に変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性樹脂成形品を得た。
上記のようにして製造した各成形品を12.7×12.7×63mmに切り出し、試験試料を作製した。
上記各試験試料に対して、導電性フィラーが樹脂中に占める面積の割合α、αを下記のようにして求め、導電性フィラー樹脂間の分布比(α/α)を算出した。
なお、下記表2では、導電性フィラー分布比として記載した。
(導電性フィラーが樹脂中に占める面積の割合α、α
導電性樹脂成形体の断面を走査型電子顕微鏡で写真(SEM写真)を撮影した。
なお、撮影面は凹凸によるエッジ効果の影響を抑制するため、ミクロトーム等による平滑な切削面を選んだ。
ここで、断面のSEM写真では、熱可塑性樹脂(A)の領域、熱可塑性樹脂(B)の領域および導電性フィラーは、組成や密度の違いがコントラスト差として確認でき、各領域の組成を元素分析することで同定できる。
画像寸法計測ソフト〔(株)イノテック製 Pixs2000pro〕を用いて断面SEM写真における各熱可塑性樹脂の領域の面積を抽出し、続いて各樹脂の領域上に存在する導電性フィラーの面積を抽出した。
これらの面積をもとに、下記式(1)により、抽出した熱可塑性樹脂(A)の領域、熱可塑性樹脂(B)の領域の各々に対して、導電性フィラーが熱可塑性樹脂内に占める面積の割合を算出した。
ここで、導電性フィラーが熱可塑性樹脂(A)内に占める面積の割合がαであり、導電性フィラーが熱可塑性樹脂(B)内に占める面積の割合がαである。
樹脂上に存在する導電性フィラーの面積/樹脂の面積 (1)
(体積固有抵抗)
前記試験試料を、抵抗計〔日置電子(株)製 3541抵抗計〕を用い、φ10mmの電極で挟み、1分後の体積固有抵抗を測定した。
(樹脂の流動性)
樹脂の流動性は、前記試験試料の成形性(成形加工性)として評価した。すなわち、射出成型によって得られた試験試料について目視で気泡(ボイド)の発生を確認し、気泡が確認されなかった場合は「○」、気泡が確認された場合は「×」と評価した。
得られた結果を、下記表2にまとめて示す。
Figure 2017179315
上記表2から、実施例1の樹脂成型体では良好な抵抗値及び流動性を得ることができた。一方、比較例1、2から、非相溶性である2種類の樹脂を含有しない場合、抵抗値(体積固有抵抗)が悪化した。また、比較例3、4から、導電性フィラーの分布比が低い、または、非相溶性である2種類の樹脂を含有しない場合、導電性フィラーの含有量を増やすことで抵抗値を下げることができるが、成形加工性が悪化した。
1 熱可塑性樹脂(A)
2 導電性フィラー
3 導電ネットワーク
4 熱可塑性樹脂(B)

Claims (6)

  1. 導電性フィラーおよび互いが非相溶性である2種類の熱可塑性樹脂(A)、(B)を含有する導電性樹脂成形体であって、
    該熱可塑性樹脂(A)と(B)の全体に対する前記熱可塑性樹脂(A)の含有量が30〜70容量%であり、
    前記熱可塑性樹脂(A)と前記熱可塑性樹脂(B)の領域において、
    前記導電性フィラーが前記熱可塑性樹脂(A)内に占める面積の割合αと前記導電性フィラーが前記熱可塑性樹脂(B)内に占める面積の割合αが、α/αが2以上であることを特徴とする導電性樹脂成形体。
  2. 前記熱可塑性樹脂(A)と前記熱可塑性樹脂(B)の溶解度パラメータの差が4〜11(J/cm1/2であることを特徴とする請求項1に記載の導電性樹脂成形体。
  3. 前記熱可塑性樹脂(A)の溶解度パラメータが、前記熱可塑性樹脂(B)の溶解度パラメータより低いことを特徴とする請求項1または2に記載の導電性樹脂成形体。
  4. 前記熱可塑性樹脂(A)がポリオレフィン樹脂であり、前記熱可塑性樹脂(B)がポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性樹脂成形体。
  5. 前記導電性フィラーが、カーボンブラックであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性樹脂成形体。
  6. 前記導電性樹脂成形体中、前記導電性フィラーの含有量が、0.1〜35容量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性樹脂成形体。
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