以下、添付図面を参照して、本願の開示するサーマルヘッドおよびサーマルプリンタの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るサーマルヘッドの構成を概略的に示したものである。図1に示すサーマルヘッド1は、ヘッド基体3と、放熱板90と、接着部材14とを備える。
ヘッド基体3は、略直方体形状に形成されており、接着部材14を介して放熱板90上に載置されている。ヘッド基体3の基板7上には、サーマルヘッド1を構成する各部材が設けられており、ヘッド基体3は、コネクタ31を介して外部より供給された電気信号に従って電圧を印加させることで発熱部9を発熱させ、記録媒体に印画を行う。なお、サーマルヘッド1を構成する各部材については図2、図3を用いて、また、記録媒体については図6を用いて後述する。
コネクタ31は、封止部材12によってヘッド基体3と接合されており、外部とヘッド基体3とを電気的に接続している。接着部材14は、ヘッド基体3と放熱板90とを接着している。放熱板90は、直方体形状をなしており、ヘッド基体3の熱を放熱するために設けられる。放熱板90は、例えば、銅、鉄またはアルミニウム等の金属材料で構成されており、ヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱を放熱する機能を有する。
次に、図2、図3を用いて、サーマルヘッド1を構成する各部材についてさらに説明する。図2は、図1に示すサーマルヘッド1の概略構成を示す平面図であり、図3は、図2のIII−III線断面図である。
サーマルヘッド1は、基板7、蓄熱層13、厚膜電極16、電気抵抗層15、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、グランド電極4、接続端子2、IC−IC接続電極26、駆動IC11、第1絶縁層18、ハードコート29、第2絶縁層30、保護層25および被覆層27をさらに備える。なお、図2では、封止部材12、保護層25および被覆層27の図示を省略している。
基板7は、平面視で矩形状をなしており、一方の長辺7a、他方の長辺7b、一方の短辺7c、他方の短辺7d、側面7e、第1主面7f、および第2主面7gを有している。基板7は、例えば、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって構成されている。以下、説明の便宜上、第1主面7fを「上面」、第2主面7gを「下面」と称する場合がある。同様に、側面7eを基準として第1主面7f側を「上」または「上方」、第2主面7g側を「下」または「下方」と称する場合がある。
基板7の側面7eにはコネクタ31が設けられている。コネクタ31は、コネクタピン8、導電性接合材23、および封止部材12により側面7eに固定されている。導電性接合材23は、接続端子2とコネクタピン8との間に配置されており、例えば、はんだ、または異方性導電接着剤等を例示することができる。なお、導電性接合材23と接続端子2との間にNi、Au、あるいはPdによるめっき層(不図示)を設けてもよい。なお、導電性接合材23は必ずしも設けなくてもよい。
また、コネクタ31は、複数のコネクタピン8と、複数のコネクタピン8を収納するハウジング10とを有している。複数のコネクタピン8は、一方がハウジング10の外部に露出しており、他方がハウジング10の内部に収容されている。複数のコネクタピン8は、ヘッド基体3の接続端子2に電気的に接続されており、ヘッド基体3の各種電極と電気的に接続されている。
封止部材12は、第1封止部材12aと第2封止部材12bとを有している。第1封止部材12aは基板7の第1主面7f側に、第2封止部材12bは基板7の第2主面7g側にそれぞれ位置している。第1封止部材12aは、コネクタピン8と各種電極とを封止するように設けられており、第2封止部材12bは、コネクタピン8と基板7との接触部を封止するように設けられている。
封止部材12は、接続端子2およびコネクタピン8が外部に露出しないように設けられており、例えば、エポキシ系の熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、あるいは可視光硬化性樹脂により構成することができる。なお、第1封止部材12aと第2封止部材12bとが同じ材料により構成されていてもよく、別の材料により構成されていてもよい。
接着部材14は、放熱板90上に配置されており、基板7の第2主面7gと放熱板90とを接合している。接着部材14としては、両面テープまたは樹脂製の接着剤を例示することができる。
蓄熱層13は、基板7の第1主面7f上に設けられている。蓄熱層13は、主走査方向に沿って延び、断面が略半楕円形状をなして基板7の上方へ向けて突出している。蓄熱層13は、例えば基板7からの高さが15〜90μmで設けられることが実用上好ましい。
蓄熱層13は、熱伝導性の低いガラスなどの材料で構成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積する機能を有する。そのため、蓄熱層13は、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くすることができ、サーマルヘッド1の熱応答特性を高めるように機能する。蓄熱層13は、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板7の上面に塗布し、これを焼成することで形成される。
厚膜電極16は、基板7の上面側に設けられている。厚膜電極16は、基板7の一方の長辺7aに沿って、主走査方向に延びるように配置されており、上方に設けられた共通電極17の電気容量を大きくするために設けられている。
電気抵抗層15は、厚膜電極16を覆うように、基板7および蓄熱層13の上に設けられている。電気抵抗層15上には、ヘッド基体3を構成する各種電極が設けられている。電気抵抗層15は、ヘッド基体3を構成する各種電極と同形状にパターニングされている。共通電極17と個別電極19との間には、電気抵抗層15が露出した露出領域を有しており、かかる露出領域が発熱部9の各素子を構成する。発熱部9を構成する複数の素子は、基板7の長手方向に沿って蓄熱層13上に配列されている。また、発熱部9は、基板7の第1主面7fの辺のうち、短手方向に沿っている短辺7cおよび7dとは所定の間隔を設けて配置されている。
発熱部9は、外部より供給された電気信号に従って発熱し、記録媒体(不図示)にインクシート(不図示)のインクを熱転写させる機能を有する。発熱部9を構成する複数の素子は、例えば、100dpi〜2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。なお、発熱部9を構成する電気抵抗層15の配置は図示したものに限らず、例えば共通電極17と個別電極19との間のみに設けられてもよい。
発熱部9は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い電気抵抗層15と、AlやCu等の金属である共通電極17および個別電極19とで構成される。そして、共通電極17と個別電極19との間に配置された電気抵抗層15に電圧が印加されると、ジュール加熱によって電気抵抗層15が発熱する。
共通電極17は、主配線部17a,17dと、副配線部17bと、リード部17cとを備えている。共通電極17は、発熱部9を構成する複数の素子と、コネクタ31とを電気的に接続している。主配線部17aは、基板7の一方の長辺7aに沿って延びており、厚膜電極16上に設けられている。主配線部17aと厚膜電極16とは、電気抵抗層15を介して電気的に接続されている。副配線部17bは、基板7の一方の短辺7cおよび他方の短辺7dのそれぞれに沿って延びている。リード部17cは、主配線部17aから発熱部9を構成する複数の素子のそれぞれに向かって個別に延びている。また、主配線部17dは、基板7の他方の長辺7bに沿って延びている。
個別電極19は、発熱部9と駆動IC11との間を電気的に接続している。具体的には、発熱部9を構成する素子は複数の群に分けられており、個別電極19は、各群を構成する発熱部9の各素子と、各群に対応するように割り当てられた駆動IC11とをそれぞれ電気的に接続している。なお、駆動IC11については後述する。
IC−コネクタ接続電極21は、駆動IC11とコネクタ31との間を電気的に接続している。駆動IC11のそれぞれには複数のIC−コネクタ接続電極21が接続されており、これらのIC−コネクタ接続電極21はそれぞれ、異なる機能を有する1または複数の配線で構成されている。
グランド電極4は、個別電極19と、IC−コネクタ接続電極21と、共通電極17の主配線部17dとにより取り囲まれており、広い面積を有している。グランド電極4は、0〜1Vのグランド電位に保持されている。
接続端子2は、基板7の他方の長辺7b側に設けられており、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21およびグランド電極4とコネクタ31とを接続する。接続端子2はコネクタピン8に対応するように設けられており、コネクタ31を接続させる際には、それぞれ電気的に独立するように、コネクタピン8と接続端子2とが接続される。
IC−IC接続電極26は、隣り合う駆動IC11を電気的に接続している。IC−IC接続電極26は、IC−コネクタ接続電極21に対応するようにそれぞれ設けられており、各種信号を隣り合う駆動IC11に伝えている。
電気抵抗層15および各種電極は、例えば、各々を構成する材料を蓄熱層13上に、例えばスパッタリング法等の薄膜成形技術によって順次積層した後、積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより設けられる。このように、各種電極は、発熱部9および厚膜電極16に電気的に接続されており、その厚みは、例えば0.1〜2μmとすることができる。
駆動IC11は、例えば、基板7の第1主面7f側に配置されている。また、複数の駆動IC11は、駆動IC11ごとに割り当てられた、発熱部9の各素子と対応するように発熱部9の配列方向に沿って配置されている。駆動IC11は、個別電極19の他端部とIC−コネクタ接続電極21の一端部とに接続されており、外部より供給された電気信号に従い、発熱部9のそれぞれの素子を個別に発熱させるための電力を発熱部9に供給する。駆動IC11としては、例えば内部に複数のスイッチング素子を有する切替部材を用いることができる。
第1絶縁層18は、共通電極17の主配線部17a上に設けられている。第1絶縁層18は、平面視で厚膜電極16を覆うように設けられており、厚膜電極16により生じた段差をなだらかにしている。
ハードコート29は、駆動IC11と、個別電極19、IC−IC接続電極26およびIC−コネクタ接続電極21とを接続させた状態で封止させるものであり、例えばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂材料を用いることができる。
第2絶縁層30は、後述する保護層25と隣り合うように設けられており、個別電極19の一部を被覆している。より詳細には、第2絶縁層30は、保護層25よりも基板7の他方の長辺7b側に設けられている。
第2絶縁層30は、主走査方向に沿って延びるように設けられており、一方の短辺7cに沿って設けられた副配線部17bと、他方の短辺7dに沿って設けられた副配線部17bとの間に設けられている。第2絶縁層30は、例えばポリイミドまたはシリコーン樹脂等の樹脂であり、印刷、あるいはディスペンサーによる樹脂材料の塗布によって作製することができる。なお、第2絶縁層30は、樹脂に限らず、例えばガラスを印刷、焼成したものであってもよい。
保護層25は、基板7の上面に形成された蓄熱層13上に配置され、発熱部9、第2絶縁層30、共通電極17および個別電極19を被覆する部材である。より詳細には、保護層25は、基板7の縁、すなわち基板7の長辺7aおよび短辺7c,7dから個別電極19の一部を覆うように設けられており、側面7e側の端部は、第2絶縁層30の上に配置されている。
被覆層27は、基板7上において、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21および保護層25を部分的に被覆するように設けられている。被覆層27は、共通電極17、個別電極19、IC−IC接続電極26、IC−コネクタ接続電極21および保護層25の被覆した領域を、大気との接触による酸化、あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護する。
被覆層27には、駆動IC11と接続される個別電極19、およびIC−コネクタ接続電極21を露出させるための開口部(不図示)が形成されており、開口部を介してこれらの配線が駆動IC11に接続されている。また、駆動IC11は、個別電極19およびIC−コネクタ接続電極21に接続された状態で、駆動IC11の保護、および駆動IC11とこれらの電極との接続部の保護のため、例えばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂からなるハードコート29によって被覆されることで封止されている。
以下、第1の実施形態に係るサーマルヘッド1について、図4、図5を用いてさらに説明する。図4は、図2に示すサーマルヘッド1において、厚膜電極16上に配置された第1絶縁層18の近傍の概略構成を示す平面図であり、図5は、図4のV−V線断面図である。なお、図4では、第1絶縁層18上に設けられる保護層25および保護層25上に設けられる被覆層27の図示を省略した。
実施形態に係るサーマルヘッド1は、基板7と、電極としての厚膜電極16と、電気絶縁層としての第1絶縁層18と、第1蓄熱部20と、保護層25とを備える。
厚膜電極16は、基板7の一方の長辺7aに沿って、主走査方向に長く配置されている。厚膜電極16は、例えば、Agペースト、Auペーストを印刷法によって基板7上に厚膜印刷することにより構成される。厚膜電極16の厚みは、例えば、5〜30μmとすることができるが、端部では、図5に図示するようになだらかに傾斜している。
第1絶縁層18は、厚膜電極16を覆うように設けられており、厚膜電極16と同様に基板7の一方の長辺7aに沿って、主走査方向に長く配置されている。第1絶縁層18は、例えばポリイミドまたはシリコーン樹脂等の電気絶縁性の樹脂であり、印刷、あるいはディスペンサーによる樹脂材料の塗布によって作製することができる。第1絶縁層18の厚みは、例えば、8〜20μm程度とすることができる。
保護層25は、主配線部17aと、副配線部17bの一部と、リード部17cと、発熱部9と、第2絶縁層30と、個別電極19の一部を被覆する第1保護層25aと、第1保護層25a上に設けられた第2保護層25bとを含む積層構造を有する。
第1保護層25aは、発熱部9、共通電極17および個別電極19の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは印画する記録媒体との接触による摩耗から保護する。第1保護層25aは、例えば、SiN、SiO2、SiON等を材料とすることができる。また、第1保護層25aの厚みは、例えば、1〜10μmとすることができる。
また、第2保護層25bは、第1保護層25aよりも耐摩耗性の高い材料により構成されており、例えば印画する記録媒体との接触による摩耗から発熱部9を保護する。第2保護層25bは、例えば、TiN、TiCN、SiC、SiON、SiN、TaNあるいはTaSiO等を材料とすることができる。また、第2保護層25bの厚みは、例えば、2〜15μmとすることができる。
第1保護層25aおよび第2保護層25bはそれぞれ、例えばスパッタリング法や、電子銃を用いたイオンプレーティング法により作製することができる。
第1蓄熱部20は、基板7上の第1絶縁層18の端部に並んで隣り合うように設けられる。第1蓄熱部20は、第1絶縁層18よりも厚みが大きいことを除き、第1絶縁層18と同じ構成を有している。具体的には、第1蓄熱部20の厚みは、例えば10〜20μmである。
第1蓄熱部20は、第1絶縁層18の端部のうち、特に厚膜電極16よりも発熱部9に近い方に設けられている。また、第1蓄熱部20は、厚膜電極16よりも放熱性が低い基板7上に設けられており、かつ基板7と保護層25との間に挟まれて配置されている。このため、第1蓄熱部20では、放熱性よりもむしろ蓄熱性が優位に働き、蓄熱部材の一つとして機能することでサーマルヘッド1全体としての蓄熱性が高まる。そのため、実施形態に係るサーマルヘッド1によれば、熱応答性を向上させることができる。このような構成を有する第1蓄熱部20は、第1絶縁層18と同時に設けてもよく、第1絶縁層18とは異なるタイミングで設けてもよい。
また、上記したように、第1蓄熱部20の厚みは、第1絶縁層18の厚みよりも大きい。このため、第1蓄熱部20の蓄熱量を、第1絶縁層の蓄熱量よりも大きくすることができ、第1蓄熱部20から第1絶縁層18に放熱されにくくなる。そのため、第1蓄熱部20の蓄熱性を高めることができ、サーマルヘッド1の熱応答性を向上させることができる。なお、第1蓄熱部20の厚みおよび第1絶縁層18の厚みは、ヘッド基体3を厚み方向に切断し、断面を観察することにより測定することができる。ここで、第1蓄熱部20の厚みは、基板7の表面に対して垂直な方向の長さである。また、第1絶縁層18の厚みは、厚膜電極16の厚みに対して垂直な方向の長さである。
また、実施形態に係るサーマルヘッド1は、保護層25上に配置された被覆層27をさらに備える。被覆層27は、保護層25と密着するように接触して保護層25を被覆することで、保護層25が例えば発熱部9や各種電極等の保護対象から剥離する不具合の発生を抑制する。被覆層27は、例えばエポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、あるいはシリコーン系樹脂等の樹脂材料により構成される。
被覆層27は、厚みを異ならせて配置されている。具体的には、被覆層27は、基板7から被覆層27の上面32aまでの高さが、厚膜電極16側から発熱部9側に向かって低くなるように配置されている。このような被覆層27を配置することにより、発熱部9に近い箇所における基板7から被覆層27の上面までの高さが低く抑えられるため、被覆層27に記録媒体が接触して損傷してしまう不具合の発生を低減することができる。
また、サーマルヘッド1は、薄肉部33をさらに備える。薄肉部33は、保護層25上であって、平面視で第1蓄熱部20と重なる部分に設けられる。また、薄肉部33は、基板7から薄肉部33の上面32bまでの高さが、薄肉部33よりも発熱部9から遠い部分における基板7から被覆層27の上面32aまでの高さよりも低くなるように構成される。また、薄肉部33は、基板7から薄肉部33の上面32bまでの高さが、厚膜電極16側から発熱部9側に向かって低くなるように配置されている。
このように薄肉部33を構成することにより、発熱部9に近い部分における基板7から薄肉部33の上面32bまでの高さが低く抑えられるため、記録媒体が接触して損傷してしまう不具合の発生をさらに低減することができる。ここで、薄肉部33は、例えば被覆層27と同じ材料により構成され、被覆層27の一部を構成することができる。
また、サーマルヘッド1は、第2蓄熱部34をさらに備える。第2蓄熱部34は、保護層25上であって、平面視で第1蓄熱部20と重なる部分、すなわち薄肉部33よりも発熱部9に近い側に設けられる。また、第2蓄熱部34は、基板7から第2蓄熱部34の上面32cまでの高さが、基板7から薄肉部33の上面32bまでの高さよりも低くなるように構成される。また、第2蓄熱部34は、基板7から薄肉部33の上面32bまでの高さが、厚膜電極16側から発熱部9側に向かって低くなるように配置されている。
このように第2蓄熱部34を構成することにより、薄肉部33よりも発熱部9にさらに近い箇所における基板7から第2蓄熱部34の上面32cまでの高さが低く抑えられるため、記録媒体が接触して損傷してしまう不具合の発生をさらに低減することができる。
また、第2蓄熱部34は、例えば被覆層27と同じ材料により構成され、被覆層27の一部を構成することができる。それにより、新たな材料を付加することなく第2蓄熱部34を構成することができる。
上記したように、第2蓄熱部34は、薄肉部33よりも発熱部9に近い箇所に設けられており、発熱部9で発生した熱は薄肉部33よりも先に第2蓄熱部34に伝達される。また、薄肉部33は、第2蓄熱部34と向かい合う部分の面積が比較的小さく、第2蓄熱部34に蓄えられた熱は薄肉部33からは放熱されにくい。このため、第2蓄熱部34に到達した熱は第2蓄熱部34内に一時的にとどまることとなり、サーマルヘッド1全体としての蓄熱性が高まる。そのため、本実施形態に係るサーマルヘッド1によれば、熱応答性をさらに向上させることができる。
また、第1蓄熱部20は、平面視で厚膜電極16と重なり合わずに配置されている。換言すれば、第1蓄熱部20は、厚膜電極16上には形成されていない。そのため、本実施形態に係るサーマルヘッド1によれば、第1蓄熱部20に蓄積された熱が、厚膜電極16を通じて放熱されにくくなり、第1蓄熱部20の蓄熱性を保持することができる。
次に、第1の実施形態に係るサーマルプリンタについて、図6を参照しつつ説明する。図6は、第1の実施形態に係るサーマルプリンタ100を示す概略図である。
図6に示すサーマルプリンタ100は、上述のサーマルヘッド1と、搬送機構40と、プラテンローラ50と、電源装置60と、制御装置70とを備えている。サーマルヘッド1は、サーマルプリンタ100の筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッド1は、搬送方向Sに直交する主走査方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
搬送機構40は、駆動部(不図示)と、搬送ローラ43,45,47,49とを有している。搬送機構40は、感熱紙、インクが転写される受像紙等の記録媒体Pを矢印で示した搬送方向Sに沿うように、サーマルヘッド1の発熱部9上に配置された保護層25上に搬送する。駆動部は、搬送ローラ43,45,47,49を駆動させる機能を有しており、例えば、モータを用いることができる。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属で構成された円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等で構成された弾性部材43b,45b,47b,49bによって被覆したものとすることができる。なお、記録媒体Pが例えばインクを転写させる受像紙等の場合には、記録媒体Pとサーマルヘッド1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルム(不図示)を搬送するとよい。
プラテンローラ50は、記録媒体Pをサーマルヘッド1の発熱部9上に位置する保護層25上に押圧する機能を有する。プラテンローラ50は、搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持固定されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属で構成された円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等で構成された弾性部材50bによって被覆したものとすることができる。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッド1の発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11を動作させるための電流を供給する機能を有している。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッド1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給する機能を有している。
サーマルプリンタ100は、プラテンローラ50によって記録媒体Pをサーマルヘッド1の発熱部9上に押圧しつつ、搬送機構40によって記録媒体Pを発熱部9上に搬送しながら、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることにより、記録媒体Pに所定の印画を行う。なお、記録媒体Pが受像紙等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行う。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係るサーマルヘッド1Aについて、図7を用いて説明する。図7は、第2の実施形態に係るサーマルヘッド1Aの概略を示す図である。図7に示すサーマルヘッド1Aは、図5に示す第1の実施形態に係るサーマルヘッド1と同じ箇所を断面視したものに対応する。
図7に示すサーマルヘッド1Aは、第1蓄熱部20に代えて第1蓄熱部20aを備えることを除き、第1の実施形態に係るサーマルヘッド1と同じ構成を有している。
第1蓄熱部20aは、例えば蓄熱層13と同じ材料、例えば、熱伝導性の低いガラスなどで構成することができる。このため、第2の実施形態に係るサーマルヘッド1Aによれば、第1蓄熱部20aに対して第1絶縁層18が有する性能は必ずしも要求されないため、熱応答性をさらに向上させるうえで設計の自由度が向上する。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態に係るサーマルヘッド1Bについて、図8、図9を用いて説明する。図8は、第3の実施形態に係るサーマルヘッド1Bの概略構成を示す平面図であり、図9は、図8のIX−IX線断面図である。なお、図8では、保護層25および被覆層27の図示を省略した。
図8、図9に示すサーマルヘッド1Bは、第1蓄熱部20に代えて第1蓄熱部20bを備えることを除き、第1の実施形態に係るサーマルヘッド1と同じ構成を有している。
第1蓄熱部20bは、第1絶縁層18の端部のうち、発熱部9を構成する各素子と向かい合うようにそれぞれ設けられる点で、基板7の一方の長辺7aに沿うように配置された第1蓄熱部20とは相違する。第1蓄熱部20bは、発熱部9と向かい合うようにそれぞれ設けられているため、各第1蓄熱部20bに蓄えられた熱は、対応する発熱部9における熱応答性をそれぞれ向上させることができる。なお、第1蓄熱部20bは、第1絶縁層18と同じ材料で構成してもよく、異なる材料で構成してもよい。
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態に係るサーマルヘッド1Cについて、図10を用いて説明する。図10は、第4の実施形態に係るサーマルヘッド1Cの概略を示す図である。図10に示すサーマルヘッド1Cは、図5に示す第1の実施形態に係るサーマルヘッド1と同じ箇所を断面視したものに対応する。
図10に示すサーマルヘッド1Cは、第1蓄熱部20に代えて第1蓄熱部20cを備えることを除き、第1の実施形態に係るサーマルヘッド1と同じ構成を有している。
第1蓄熱部20cは、基板7上ではなく、第1絶縁層18上に配置されている。基板7と比較して第1絶縁層18の放熱性が低いと、第1蓄熱部20cからの放熱を抑えることができ、熱応答性をさらに向上させることができる。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第1の実施形態であるサーマルヘッド1を用いたサーマルプリンタ100を示したが、これに限定されるものではなく、各実施形態に係るサーマルヘッド1A〜1Cをサーマルプリンタ100に用いてもよい。また、複数の実施形態であるサーマルヘッド1〜1Cを組み合わせてもよい。
また、例えば、電気抵抗層15を薄膜形成することにより、発熱部9の薄い薄膜ヘッドを例示して示したが、これに限定されるものではない。各種電極をパターニングした後に、電気抵抗層15を厚膜形成することにより、発熱部9の厚い厚膜ヘッドを適用してもよい。
また、発熱部9が基板7の第1主面7f上に形成された平面ヘッドを例示して説明したが、発熱部9が基板7の端面に設けられた端面ヘッドを用いてもよい。
なお、封止部材12を、駆動IC11を被覆するハードコート29と同じ材料により形成してもよい。その場合、ハードコート29を印刷する際に、封止部材12が形成される領域にも印刷して、ハードコート29と封止部材12とを同時に形成してもよい。
また、上記した実施形態では、保護層25は二層構造として説明したが、これに限らず、単層または三層以上で構成されたものであってもよい。
また、上記した実施形態では、薄肉部33および第2蓄熱部34はそれぞれ被覆層27と同じ材料で構成されるとして説明したが、これに限らず、それぞれ被覆層27とは異なる材料で構成されてもよい。
また、上記した実施形態では、第1蓄熱部20〜20cは、第1絶縁層18の端部のうち、発熱部9に近いほうに設けられるとして説明したが、これに限らず、例えば第1絶縁層18の端部全体にわたって配置するようにしてもよい。
また、上記した実施形態では、第1蓄熱部20〜20cは、平面視で厚膜電極16とは重なり合わずに配置されるとして説明したが、第1蓄熱部20〜20cの一部が、平面視で厚膜電極16と重なるように配置されてもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。