本発明の一つの実施形態は、集電体上に活物質層が配置された電極をセパレータを介して積層してなる発電要素と、前記発電要素の外周部の少なくとも一部を封止するための、シール材からなるシール部と、を有する電池本体部を有し、
前記シール材の線熱膨張率α1と前記集電体の線熱膨張率α2との差|α1−α2|、電極の最大長さL(mm)、および電極間距離D(mm)が下記式を満たすことを特徴とする、リチウムイオン二次電池である。
本発明によれば、集電体の外周部の少なくとも一部を固定するシール材と集電体との線熱膨張率の差と、電極の最大長さおよび電極間距離との関係を制御することで、シール部を熱プレスするときに生じる電極部の歪みを軽減でき、電池の容量劣化を緩和できる。
リチウムイオン二次電池に用いられる電極は、集電体の両面に活物質層(正極活物質層または負極活物質層)を形成した電極が用いられている。集電体には、通常、電池内で隣り合う集電体どうしが接触したり、発電要素における単電池層のわずかな不揃いや振動などによる集電体どうしのズレなどに起因する短絡を防止する目的でシール部が配置される。また双極型電池においては、シール部は、活物質層に浸透させた電解質の漏れや揮発などを防止する。シール部は、樹脂材料からなるホットメルトタイプのシール材を集電体に重ねて、熱プレスすることによって形成される。
リチウムイオン二次電池の製造工程において、活物質層が形成された集電体の外周部(活物質層が形成されていない部分)にシール材を配置した電極と、セパレータとを交互に積層して積層体を得た後、熱プレスによってシール材を熱融着させてシール部を形成する。このときの加熱、その後の冷却による熱収縮によってシール材が変形し、電極の活物質層を形成した部分にしわが発生してしまう。その結果、電池の電極間距離の不均一が生じ、電極反応が不均一になってしまうため、電池の耐久性が低下してしまう。
本実施形態のリチウムイオン二次電池においては、電極の最大長さに対する電極間距離の比に対して、集電体とシール材との線熱膨張率差を所定の範囲に制御する。線熱膨張率差の小さい組み合わせの材料を使用することで、電池を製造する際の熱プレスする工程での熱による集電体とシール材の変形がほぼ一致するため、電極部の歪みが生じにくくなる。その結果、電池全体の変形が抑えられる。また、上記線熱膨張率差が電極の最大長さおよび電極間距離と所定の関係を有することで、電極部の変形が電池全体の抵抗に与える影響を低減でき、電極間距離の変動の影響が相対的に小さくなる。したがって、本発明によれば、熱プレスによる電池の変形が抑制でき、電極間距離を均一に保つことができ、電極部の歪みが電池の抵抗におよぼす影響を最小限にできる。そのため、電極反応が均一化し、電池の耐久性が向上しうる。
ここで、シール材の線熱膨張率α1、および集電体の線熱膨張率α2は、25℃における線熱膨張率であり、熱機械分析(TMA:JIS K7197 1991年)を用いて測定した値を用いる。なお、双極型ではないリチウムイオン二次電池では、集電体の線熱膨張率α2は負極集電体の線熱膨張率である。
電極の最大長さL(mm)は、負極活物質層の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味するものとする。例えば負極活物質層が長方形状である場合、電極の最大長さL(mm)は対角線の長さである。
本実施形態のリチウムイオン二次電池における電極の最大長さL(mm)は、シール材と集電体との熱膨張率差および電極間距離と所定の関係を満たすものであれば特に制限されないが、350mm以上であることが好ましく、500mm以上であることがより好ましく、700mm以上であることがさらに好ましい。かような電池は高容量、高出力を達成することができ、車両用途に用いることができる。一方で、電池の最大長さLが大きくなるほど、熱プレスおよびその後の冷却に伴う電極の変形が大きくなる。したがって、電極の最大長さLは、2000mm以下であることが好ましく、1800mm以下であることがより好ましい。
また、負極活物質層が長方形状であり、当該長方形の短辺の長さが100mm以上であることが好ましい。ここで、負極活物質層の短辺の長さとは、各電極の中で最も長さが短い辺を指す。短辺の長さの上限は特に限定されるものではないが、通常250mm以下である。また、それぞれの負極活物質層の長辺と短辺との長さの比(長辺/短辺)が、好ましくは1〜1.25であり、より好ましくは1〜1.1であり、さらに好ましくは1〜1.05である。
電極間距離D(mm)は、負極活物質層の表面とこれに対向する正極活物質層の表面との間の最短距離を意味する。
本実施形態のリチウムイオン二次電池における電極間距離D(mm)は、シール材と集電体との熱膨張率差および電極の最大長さと所定の関係を満たすものであれば特に制限されないが、0.005mm以上であることが好ましく、0.008mm以上であることがより好ましく、0.010mm以上であることがさらに好ましい。電極間距離Dを0.005mm以上とすることで、熱プレスによる電極(電極活物質層)の変形が電池の抵抗に与える影響が相対的に小さくなるため、耐久性に優れた電池が得られうる。また、電極間距離Dを0.05mm以下とすることで容量に優れた電池が得られうる。電極間距離D(mm)は、例えばセパレータの厚さを調節することで調整できる。
好ましくは、|α1−α2|×(L/D)の値は、15以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは5以下であり、さらに好ましくは1以下である。|α1−α2|×(L/D)の値は小さいほど好ましく、下限値は特に限定されないが、例えば、0.1以上である。
なお、本実施形態のリチウムイオン二次電池においては、少なくとも1つの単電池層において、|α1−α2|×(L/D)≦15の関係を満たせばよいが、電池を構成するすべての単電池層で上記関係を満たすことが好ましい。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池に用いられるシール材の剛性は、集電体の剛性よりも小さいことが好ましい。集電体の剛性およびシール材の剛性は、剛性E(MPa・mm)=ヤング率E(MPa)×厚みt(mm)の式で表される。シール材の剛性が集電体の剛性よりも小さいと、シール材の熱変形の影響による集電体の変形が小さくなり、電池の歪みが緩和されるため好ましい。好ましくは、シール材の剛性は、0.005〜20MPa・mmであり、集電体の剛性は、0.005〜500MPa・mmである。
本発明のリチウムイオン二次電池は、電極間距離D(mm)に対する電極の最大長さL(mm)の比(L/D)が、5×103〜7×104であることが好ましい。電極間距離D(mm)に対する電極の最大長さL(mm)の比(L/D)の値が5×103以上であれば、高容量、高出力を達成する観点から好適である。また、7×104以下であれば、熱プレスおよびその後の冷却に伴う電極の変形が大きくなるので好適である。したがって、電極間距離に対する電極の最大長さの比が上記範囲であるとき、より効果的に電池歪みを軽減することができる。より好ましくは、電極間距離に対する電極の最大長さの比は7000〜70000であり、さらに好ましくは10000〜65000である。なお、本実施形態のリチウムイオン二次電池においては、少なくとも1つの単電池層において、L/Dの値が上記範囲であることが好ましく、電池を構成するすべての単電池層で上記範囲であることがより好ましい。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明の実施の形態に係る二次電池を説明するための斜視図、図2は、図1に示される二次電池の断面図、図3は、図2に示される集電体を説明するための断面図である。
本発明の実施の形態に係る二次電池10は、積層型のリチウムイオン二次電池であり、図1に示されるように、正極集電タブ12、負極集電タブ14および外装体16を有する。
正極集電タブ12および負極集電タブ14は、高導電性部材からなる強電端子であり、外装体16の内部から外部に向かって延長しており、電流を引き出すために使用される。高導電性部材は、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス、これらの合金である。正極集電タブ12および負極集電タブ14は、例えば、耐熱絶縁性の熱収縮チューブにより被覆することで、周辺機器や配線などへの電気的接触を、確実に防止することが好ましい。
外装体16は、図2に示されるように、内部に電池本体部18が配置されており、外部からの衝撃や環境劣化を防止するために使用されており、シート材の外周部の一部または全部を、熱融着により接合することで形成される。
シート材は、軽量化および熱伝導性の観点から、高分子−金属複合ラミネートフィルムから構成されることが好ましい。高分子は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂材料である。金属は、例えば、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅などの金属(合金を含む)である。
外装体16は、一対のラミネートフィルム(シート材)によって構成される形態に限定されず、例えば、予め袋状に形成されているラミネートフィルムを適用することも可能である。
電池本体部18は、集電体22、負極活物質層26、正極活物質層28、セパレータ40、シール部32、34を有する。
集電体22は、軽量化を図るため、図3に示されるように、導電性樹脂層23および金属層24を有する樹脂集電体から構成されることが好ましい。
負極活物質層26および正極活物質層28は、集電体22とともに双極型電極20(図3)を構成しており、負極活物質層26は、集電体22の一方の面に配置され、正極活物質層28は、集電体22の他方の面に配置される。
セパレータ40は、負極活物質層26と正極活物質層28との間に配置される。なお、集電体22、隣接する負極活物質層26、セパレータ40および正極活物質層28は、発電要素(単電池)19を構成する(図3)。つまり、電池本体部18は、複数の積層された発電要素19が電気的に直列接続された構造を有する。
シール部32およびシール部34は、正極活物質層28および負極活物質層26の周囲をそれぞれ取り囲むように配置されており、発電要素19の外周部19Aの少なくとも一部を封止するために設けられている。シール部32、34は、シール材を加熱して熱融着することによって形成されている。
正極集電タブ12および負極集電タブ14は、電池本体部18の最外側に配置され、電極投影面の全てを、少なくとも覆うように構成されている。したがって、電流取り出し部(面方向の電流取り出し)は、低抵抗化され、電池の高出力化が可能になる。
双極型電極20の積層方向Sに関し、最外側に位置する集電体22は、双極型電極構造を有していない。具体的には、図2中最上層に位置する集電体22は、正極活物質層28を有しておらず、図2中最下層に位置する集電体22は、負極活物質層26を有していない。これは、最上層および最下層に位置する集電体22の外側に位置する正極活物質層28および負極活物質層26は、電池反応に関与しないためである。しかし、必要に応じ、双極型電極構造を有するように構成することも可能である。
図4は、扁平型(積層型)の双極型ではない(非双極型)非水電解質リチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の基本構成を模式的に表した断面概略図である。
本発明のリチウムイオン二次電池は、双極型に限定されず、例えば、図4に示される非双極型のリチウムイオン二次電池60であってもよい。なお、リチウムイオン二次電池10の部材と同様の機能を有する部材については、重複を避けるため、その説明を省略する。
リチウムイオン二次電池60は、図4に示されるように、正極集電タブ62、負極集電タブ64および外装体66を有する。正極集電タブ62および負極集電タブ64は、高導電性部材からなる強電端子である。外装体66は、内部に電池本体部68が配置されている。
電池本体部68は、負極集電体72B、負極活物質層76、正極集電体72A、正極活物質層78、セパレータ90、負極リード54、正極リード52、シール部82、84を有する。
負極活物質層76および正極活物質層78は、集電体とともにリチウムイオン二次電池60の電極を構成しており、負極活物質層76は、負極集電体72Bの両面に配置され、正極活物質層78は、正極集電体72Aの両面に配置される。セパレータ90は、負極活物質層76と正極活物質層78との間に配置される。なお、集電体上の負極活物質層76および正極活物質層78は、セパレータ90を介して積層されて発電要素(単電池)を構成する。
正極リード52は、高導電性部材からなり、正極集電体72Aと連続的に一体化している一端部と、外部に導出される正極集電タブ62に固定される他端部とを有し、正極集電体72Aと正極集電タブ62とを電気的に接続するために使用される。負極リード54は、高導電性部材からなり、負極集電体72Bと連続的に一体化している一端部と、外部に導出される負極集電タブ64に固定される他端部とを有し、負極集電体72Bと負極集電タブ64とを電気的に接続するために使用される。固定方法は、例えば、超音波溶接や抵抗溶接が適用される。
シール部82およびシール部84は、正極集電体72Aに配置される正極活物質層78の周囲および負極集電体72Bに配置される負極活物質層76の周囲をそれぞれ取り囲むように配置される。
シール部82およびシール部84は、双極型のリチウムイオン二次電池10の場合と同様に形成される。
非双極型のリチウムイオン二次電池60は、シール部82およびシール部84の両者を有する形態に限定されず、例えば、必要に応じ、正極活物質層78の周囲に配置されるシール部82のみを有することも可能である。
次に、集電体、負極活物質層、正極活物質層および電解質層(セパレータ)の材質等を説明する。
[集電体]
集電体を構成する材料に特に制限はないが、金属箔または導電性を有する樹脂層を含むことが好ましい。
集電体が金属箔の場合、用いられる金属は集電体として従来用いられている公知の金属材料から選択されうる。具体的には、金属としては、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、チタン、ステンレス鋼、これらの合金などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの他、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位などの観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。
集電体は、電池の軽量化の観点から好ましくは導電性を有する樹脂層を含む。当該導電性を有する樹脂層を構成する材料としては、導電性高分子または導電性を有しない高分子に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。また、導電性を有する樹脂層上に金属層を有していてもよい。
導電性高分子は、導電性を有し、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有しない材料から選択される。これらの導電性高分子は、共役したポリエン系がエネルギー帯を形成し伝導性を示すと考えられている。代表的な例としては電解コンデンサなどで実用化が進んでいるポリエン系導電性高分子を用いることができる。具体的には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサジアゾール、またはこれらの混合物などが挙げられる。導電性および電池内で安定に使用できるという観点から、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンがより好ましい。
導電性を有しない高分子材料の例としては、例えば、ポリエチレン(PE)(高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、またはこれらの混合物が挙げられる。これらの材料は電位窓が非常に広く正極電位、負極電位のいずれに対しても安定であり、また軽量であるため、電池の高出力密度化が可能となる。なかでも、使用する電解液に対する耐久性の観点から、ポリプロピレン、ポリエチレン等の種々のポリオレフィンやそれらの共重合体ならびに混合物が好ましい。また、耐正極電位性の観点から、ポリイミドが好ましく用いられうる。ポリイミドはリチウムイオンを吸蔵しやすく、リチウムイオンに接することでイミド環が開環することによる劣化が生じやすい。したがって高分子材料の劣化に伴う電池容量の低下および電池の耐久性の低下が大きく、発明の効果がより顕著に得られうる。
導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択される。好ましくは、導電性を有する樹脂層内のイオン透過を抑制する観点から、イオンに関して伝導性を有しない材料を用いるのが好ましい。また、導電性フィラーは、印加される正極電位および負極電位に耐えうる材料から選択されることが好ましい。具体的には、アルミニウム、鉄、ニッケル、SUS、カーボン、銀、金、銅、チタンなどの粒子などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。合金粒子が用いられてもよい。導電性フィラーは、金属に限られず、カーボン粒子、カーボンナノチューブなどのカーボン材料を用いることもできる。また、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されているものを用いることができる。このうち、特に電池において通常導電助剤として用いられる材料が好ましく、カーボン材料が好ましい。
上記カーボン材料としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、バルカン、ブラックパール、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、ハードカーボン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。これらのカーボン材料は電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、さらに導電性に優れている。また、カーボン材料は非常に軽量なため、質量の増加が最小限になる。さらに、カーボン材料は、電極の導電助剤として用いられることが多いため、これらの導電助剤と接触しても、同材料であるがゆえに接触抵抗が非常に低くなる。なお、カーボン材料を導電性フィラーとして用いる場合には、カーボン材料の表面に疎水性処理を施すことにより電解質のなじみ性を下げ、集電体の空孔に電解質が染み込みにくい状況を作ることも可能である。
なお、負極活物質の充放電電位がLiの析出電位に近い場合には、カーボン材料等の導電性フィラーは、充放電でLiイオンの挿入が起こり膨張するために集電体を痛める(集電体に損傷を与える)危険性がある。そのため、負極に対面する集電体の導電性フィラーはLi化が起こらないNi、Cu、Fe、SUSなどの材料が好ましい。また、カーボン材料等がこれらの材料で表面を被覆された導電性フィラーも好ましく使用できる。
導電性フィラーの形状は、特に制限はなく、粒子状、粉末状、繊維状、板状、塊状、布状、またはメッシュ状などの公知の形状を適宜選択することができる。例えば、広範囲に亘って導電性を付与したい場合は、粒子状の導電性フィラーを使用することが好ましい。一方、特定方向への導電性をより向上させたい場合は、繊維状等の、形状に一定の方向性を有するような導電性フィラーを使用することが好ましい。
導電性フィラーの平均粒子径(一次粒子の平均粒子径)は、特に限定されるものではないが、0.01〜10μm、より好ましくは0.01〜1μm程度であることが好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電性フィラーの輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
導電性フィラーが繊維状である場合、その平均繊維長は特に制限されるものではないが、0.1〜100μmであることが好ましい。なお、本明細書中において、平均繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される繊維の繊維長の平均値として算出される値を採用するものとする。また、導電性フィラーが繊維状である場合の、その平均直径もまた特に制限されるものではないが、0.01〜1μmであることが好ましい。
導電性を有する樹脂層中の高分子材料の含有量は特に制限されないが、導電性を有する樹脂層中の高分子材料と導電性フィラーとの合計量を100質量部として、好ましくは10〜95質量部であり、より好ましくは12〜90質量部である。
また、導電性を有する樹脂層中の導電性フィラーの含有量も特に制限はない。しかしながら、導電性フィラーの含有量は、導電性樹脂層中の高分子材料と導電性フィラーとの合計量を100質量部として、好ましくは5〜90質量部であり、より好ましくは10〜88質量部である。かような量の導電性フィラーを高分子材料に添加することにより、集電体の質量増加を抑制しつつ、集電体に十分な導電性を付与することができる。
上記導電性を有する樹脂層には、高分子材料および導電性フィラー以外の、他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤の例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等のカルボン酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。他の添加剤の添加量としては、特に制限されないが、高分子材料と導電性フィラーとの合計100質量部に対して、1〜25質量部が好ましい。
導電性を有する樹脂層の厚さは、好ましくは1〜200μm、より好ましくは3〜150μm、さらに好ましくは5〜100μmである。なお、導電性を有する樹脂層は、単層構造であってもよいしあるいはこれらの材料からなる層を適宜組み合わせた積層構造であっても構わない。
導電性を有する樹脂層の製造方法は、特に制限されず、例えば、押し出し機等により、高分子材料、および必要に応じて導電性フィラー、添加剤の各成分を溶融混練した後、溶融混練済材料を熱プレス機により圧延する方法が挙げられる。
導電性樹脂層の上に金属層を設ける場合、金属層は、例えば、アルミニウム、銅、鉄、クロム、ニッケル、チタン、バナジウム、モリブデン、ニオブ、金、銀、白金、およびこれら金属の合金、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物から構成される。金属層は、例えば、メッキ、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングによって形成することが可能である。
導電性樹脂層の上に金属層を設ける場合、金属層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.01〜3μmであり、より好ましくは0.1〜1μmである。0.01μm以上であれば、リチウムイオンの遮断性に優れる。また、3μm以下であれば、電池重量を抑えつつも、電池の内部抵抗を十分に低くすることが可能である。さらに、3μm以下であれば、もし内部短絡が生じた場合でも集電体の面方向に沿って短絡部位に電流が集中することを防止できる。なお、金属層が2層以上から構成される場合は、合計の厚みが上記範囲であることが好ましい。
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。集電体の厚さについても特に制限はない。集電体の厚さは、通常は1〜100μm程度である。
集電体の線熱膨張率α2はシール材の線熱膨張率α1、電極の最大長さL、および電極間距離Dとの間に所定の関係を満たすものであれば特に制限されないが、1×10−4以下であることが好ましく、0.8×10−4以下であることがより好ましい。集電体の線熱膨張率が上記範囲であれば、シール材との線熱膨張率差を小さくすることができるため、熱プレスする工程におけるセルの変形を抑制する効果が高く、耐久性に優れた電池が得られうる。
集電体のヤング率は特に制限されないが、5〜5000MPaであることが好ましく、20〜3000MPaであることがより好ましい。上記範囲であれば、集電体の剛性をシール材の剛性よりも大きくなるように設計することが容易であり、シール材の熱変形の影響が小さく、歪みの小さい電池がより効果的に得られうる。集電体のヤング率は、JIS K7161 1994年(引張弾性率)で測定することができる。なお、双極型ではないリチウムイオン二次電池では、集電体のヤング率は負極集電体のヤング率である。
[シール材]
シール材は、電池内で隣り合う集電体どうしが接触したり、発電要素における単電池層の端部の僅かな不揃い、振動などにより集電箔同士のズレなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。また、双極型電池においては、電解質層からの電解液の漏れと電解液漏れによる液絡を防止する。
シール材としては、集電体との線熱膨張率差が電極の最大長さおよび電極間距離との所定の関係を満たすものであれば特に制限されない。シール材としては、集電体の固定、絶縁性、電解質の流失に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものが好ましく用いられうる。
具体的には、例えば、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル樹脂、ポリエーテルニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)およびその水素添加物、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点から、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が、シール材として好ましく用いられる。なお、シール材は1種のみを用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
シール材の厚みは、5〜200μmであることが好ましく、10〜150μmであることがより好ましい。なお、該シール材は単層構造でもよいし、2層以上の多層構造であってもよい。
シール材の線熱膨張率は特に制限されないが、5.0×10−4以下であることが好ましく、4.5×10−4以下であることがより好ましく、4.0×10−4以下であることがさらに好ましい。シール材の線熱膨張率が上記範囲であれば、集電体との線熱膨張率差を小さくすることができるため、熱プレスする工程におけるセルの変形を抑制する効果が高く、耐久性に優れた電池が得られうる。
シール材のヤング率は特に制限されないが、1〜100MPaであることが好ましく、10〜50MPaであることがより好ましい。上記範囲であれば、シール材の剛性が集電体の剛性よりも小さくなるように設計することが容易であり、シール材の熱変形の影響が小さく、歪みの小さい電池がより効果的に得られうる。シール材のヤング率は、JIS K7161 1994年(引張弾性率)で測定することができる。
また、前記シール材は、集電体の外周部に配置されればよく、その大きさは特に制限されない。
シール部を形成するシール材は、シート状であることが好ましい。シート状のシール材を用いることで、良好なシール性を確保することが容易になる。また、シート状のシール材を集電体間に挟むことで正極(正極活物質層)と負極(負極活物質層)とを一定の位置に固定することができる。
[活物質層]
集電体上には、電極となる活物質層が形成される。活物質層は、充放電反応の中心を担う活物質を含む層である。ここで、活物質は、充放電時にイオンを吸蔵・放出し、電気エネルギーを生み出す。活物質には、放電時にイオンを吸蔵し充電時にイオンを放出する組成を有する正極活物質と、放電時にイオンを放出し充電時にイオンを吸蔵できる組成を有する負極活物質とがある。本形態の活物質層は、活物質として正極活物質を使用する場合は正極活物質層として機能し、負極活物質を使用する場合は負極活物質層として機能する。本明細書では、正極活物質および負極活物質に共通する事項については、単に「活物質」として説明する。
正極活物質としては、容量および出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物を適用することが好ましい。リチウム−遷移金属複合酸化物は、例えば、LiCoO2などのLi・Co系複合酸化物、LiNiO2などのLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMn2O4などのLi・Mn系複合酸化物、LiFeO2などのLi・Fe系複合酸化物などが挙げられる。この他、LiFePO4などの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V2O5、MnO2、TiS2、MoS2、MoO3などの遷移金属酸化物や硫化物;PbO2、AgO、NiOOHなどが挙げられる。2種以上の正極活物質が併用されてもよい。
負極活物質としては、容量および出力特性の観点から、炭素材料を適用することが好ましい。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛系炭素材料(黒鉛)、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン等が挙げられる。より好ましくは、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛である。天然黒鉛は、例えば鱗片状黒鉛、塊状黒鉛などが使用できる。人造黒鉛としては塊状黒鉛、気相成長黒鉛、鱗片状黒鉛、繊維状黒鉛が使用できる。これらのなかで、特に好ましい材料は、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛である。鱗片状黒鉛、塊状黒鉛を用いた場合、充填密度が高い等の理由で、特に有利である。上記炭素材料以外の負極活物質としては、SiやSnなどの金属、あるいはTiO、Ti2O3、TiO2、もしくはSiO2、SiO、SnO2などの金属酸化物、Li4/3Ti5/3O4もしくはLi7MnNなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物、Li−Pb系合金、Li−Al系合金、Liなどが挙げられる。これらの負極活物質は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。
上記活物質の平均粒子径は、特に制限されないが、電池の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。このような範囲であれば、二次電池は、高出力条件下での充放電時における電池の内部抵抗の増大が抑制され、充分な電流を取り出しうる。なお、活物質が2次粒子である場合には該2次粒子を構成する1次粒子の平均粒子径が10nm〜1μmの範囲であるのが望ましいといえるが、本形態では、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。ただし、製造方法にもよるが、活物質が凝集、塊状などにより2次粒子化したものでなくてもよいことはいうまでもない。かかる活物質の粒径および1次粒子の粒径は、レーザー回折法を用いて得られたメディアン径を使用できる。なお、活物質の形状は、その種類や製造方法等によって取り得る形状が異なり、例えば、球状(粉末状)、板状、針状、柱状、角状などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、いずれの形状であれ問題なく使用できる。好ましくは、充放電特性などの電池特性を向上し得る最適の形状を適宜選択するのが望ましい。
活物質層(正極活物質層または負極活物質層)は、必要に応じて、バインダ、導電助剤、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含む。ただし、活物質層中、活物質として機能しうる材料の含有量は、85〜99.5質量%であることが好ましい。
バインダは、活物質、導電助剤などを相互に結着させ、活物質層の構造や導電ネットワークを保持する機能を有する。活物質層に含まれるバインダとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアミック酸、またはこれらの混合物が挙げられる。
バインダの含有量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは活物質層全量(固形分換算)に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
導電助剤とは、活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては炭素材料が好ましく、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックなどの炭素粉末、および気相成長炭素繊維(VGCF)などの炭素繊維などが挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における導電ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。ここで、導電助剤の含有量は、活物質層の導電性を所望の程度にまで向上できれば特に制限されないが、活物質層全量(固形分換算)に対して、好ましくは0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
(電解質層)
本形態の電解質層に使用される電解質は、特に制限はないが、上述の非水電解質二次電池用活物質層のイオン伝導性を確保する観点から、液体電解質、ゲルポリマー電解質、またはイオン液体電解質が用いられる。
液体電解質は、リチウムイオンのキャリヤーとしての機能を有する。電解液層を構成する液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。用いられる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類が例示される。また、リチウム塩としては、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiCF3SO3等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。液体電解質は、上述した成分以外の添加剤をさらに含んでもよい。かような化合物の具体例としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2−ジビニルエチレンカーボネート、1−メチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−メチル−2−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−2−ビニルエチレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、ビニルオキシメチルエチレンカーボネート、アリルオキシメチルエチレンカーボネート、アクリルオキシメチルエチレンカーボネート、メタクリルオキシメチルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート、エチニルオキシメチルエチレンカーボネート、プロパルギルオキシエチレンカーボネート、メチレンエチレンカーボネート、1,1−ジメチル−2−メチレンエチレンカーボネートなどが挙げられる。なかでも、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートが好ましく、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートがより好ましい。これらの環式炭酸エステルは、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導性を遮断することで容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HEP)、ポリ(メチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等が挙げられる。
ゲルポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
イオン液体電解質は、イオン液体にリチウム塩が溶解したものである。なお、イオン液体とは、をカチオンおよびアニオンのみから構成される塩であり、常温で液体である一連の化合物をいう。
イオン液体を構成するカチオン成分は、置換されているかまたは非置換のイミダゾリウムイオン、置換されているかまたは非置換のピリジニウムイオン、置換されているかまたは非置換のピロリウムイオン、置換されているかまたは非置換のピラゾリウムイオン、置換されているかまたは非置換のピロリニウムイオン、置換されているかまたは非置換のピロリジニウムイオン、置換されているかまたは非置換のピペリジニウムイオン、置換されているかまたは非置換のトリアジニウムイオン、および置換されているかまたは非置換のアンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
イオン液体を構成するアニオン成分の具体例としては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン、硝酸イオン(NO3 −)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4 −)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6 −)、(FSO2)2N−、AlCl3 −、乳酸イオン、酢酸イオン(CH3COO−)、トリフルオロ酢酸イオン(CF3COO−)、メタンスルホン酸イオン(CH3SO3 −)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3 −)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン((CF3SO2)2N−)、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドイオン((C2F5SO2)2N−)、BF3C2F5 −、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)炭素酸イオン((CF3SO2)3C−)、過塩素酸イオン(ClO4 −)、ジシアンアミドイオン((CN)2N−)、有機硫酸イオン、有機スルホン酸イオン、R1COO−、HOOCR1COO−、−OOCR1COO−、NH2CHR1COO−(この際、R1は置換基であり、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、エーテル基、エステル基、またはアシル基であり、前記の置換基はフッ素原子を含んでいてもよい。)などが挙げられる。
好ましいイオン液体の例としては、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−プロピルピロリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが挙げられる。これらのイオン液体は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
イオン液体電解質に用いられるリチウム塩は、上述の液体電解質に使用されるリチウム塩と同様である。なお、当該リチウム塩の濃度は、0.1〜2.0Mであることが好ましく、0.8〜1.2Mであることがより好ましい。
また、イオン液体に以下のような添加剤を加えてもよい。添加剤を含むことにより、高レートでの充放電特性およびサイクル特性がより向上しうる。添加剤の具体的な例としては、例えば、ビニレンカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトン、メチルジグライム、スルホラン、トリメチルホスフェイト、トリエチルホスフェイト、メトキシメチルエチルカーボネート、フッ素化エチレンカーボネートなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。添加剤を使用する場合の使用量は、イオン液体に対して、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
また、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータは、電解質を保持して正極と負極との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極と負極との間の隔壁としての機能を有する。特に電解質として液体電解質、イオン液体電解質を使用する場合には、セパレータを用いることが好ましい。
セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
ポリマーないし繊維からなる多孔性シートのセパレータとしては、例えば、微多孔質(微多孔膜)を用いることができる。該ポリマーないし繊維からなる多孔性シートの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;これらを複数積層した積層体(例えば、PP/PE/PPの3層構造をした積層体など)、ポリイミド、アラミド、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素系樹脂、ガラス繊維などからなる微多孔質(微多孔膜)セパレータが挙げられる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池においては、セパレータの材料は、アラミド系樹脂であることが特に好ましい。アラミド系樹脂の熱収縮開始温度は200℃以上の高温であるため、セパレータの熱収縮による内部短絡を発生させることなく、シール材加熱温度を上昇させて、シール材の熱融着の生産性を向上させることが可能である。
微多孔質(微多孔膜)セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできない。1例を示せば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車(FCV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4〜60μmであることが望ましい。前記微多孔質(微多孔膜)セパレータの微細孔径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。
不織布セパレータとしては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性が得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。
[リチウムイオン二次電池の製造方法]
本発明の一実施形態は、集電体上に活物質層が配置された電極をセパレータを介して積層してなる発電要素と、前記発電要素の外周部の少なくとも一部を封止するためのシール部と、を有する電池本体部を有するリチウムイオン二次電池の製造方法であって、前記シール部を、前記発電要素の外周部に配置されるシール材を熱融着することによって形成するシール部形成工程を有し、
前記シール材の線熱膨張率α1と前記集電体の線熱膨張率α2との差|α1−α2|、電極の最大長さL(mm)、および電極間距離D(mm)が下記式を満たすことを特徴とする、リチウムイオン二次電池の製造方法である。
図5は、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造方法を説明するためのフローチャートである。
リチウムイオン二次電池10の製造方法は、例えば、図5に示されるように、電極形成工程、シール材配置工程、積層工程、シール部形成工程、組立工程、第1封止工程、液注工程および第2封止工程を有する。
電極形成工程においては、集電体22の一方および他方の面に、正極活物質スラリーおよび負極活物質スラリーが、それぞれ塗布され、乾燥される。これにより、負極活物質層26および正極活物質層28が形成され、双極型電極20が得られる。正極活物質スラリーは、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダを有し、粘度調整溶媒を添加することで、所定の粘度に調整されている。負極活物質スラリーは、例えば、負極活物質およびバインダを有し、粘度調整溶媒を添加することで、所定の粘度に調整されている。正極活物質スラリーの塗膜および負極活物質スラリーの塗膜は、例えば、真空オーブンを利用して、乾燥させられる。
シール材配置工程においては、シール部32およびシール部34に対応する、好ましくはシート状のシール材が、発電要素19の外周部(正極活物質層28および負極活物質層26の周囲)を取り囲むように配置される。
積層工程においては、好ましくはシート状のシール材が配置された双極型電極20がセパレータ40を介して順次積層され、電池本体部18が形成される。なお、電極の積層方向Sに関し、最下層に位置する集電体22は、負極活物質層26を有していないものが適用され、最上層に位置する集電体22は、正極活物質層28を有していないものが適用されている。
シール部形成工程においては、シール材を熱融着することによって、シール部32、34が形成される。熱融着は、電極の積層方向Sに関し電池本体部18の両方の外側を介して、シール材を加熱することによって実施される。
組立工程においては、電池本体部18に、正極集電タブ12および負極集電タブ14が取付けられ、一対の矩形状ラミネートフィルム(シート材)の間に配置される。
第1封止工程においては、ラミネートフィルムの外周部の3辺が熱融着により接合される。
液注工程においては、ラミネートフィルムにおける未接合の1辺を利用し、電解液が注液される。
第2封止工程においては、未接合の1辺が熱融着されることにより、内部に電池本体部18が密閉状態で収容されている外装体16が形成される。
次に、シール部形成工程を詳述する。
図6は、図5に示されるシール部形成工程を説明するための断面図である。
シール部形成工程においては、例えば、図6に示されるように、ヒートバー110、120および駆動装置114、124を有するホットプレス装置が適用される。
ヒートバー110、120は、内部にヒーター112、122を有し、その温度を変更可能に構成されている。ヒートバー110、120は、電池本体部18の一方および他方の外側に、それぞれ相対して配置され、正極活物質層28および負極活物質層26の周囲を取り囲んでいるシート状のシール材31、33と位置合せされている。
駆動装置114、124は、例えば、往復動手段を有し、ヒートバー110、120が連結されている。したがって、ヒートバー110、120は、電池本体部18の外側に対して当接自在である。
本熱融着装置が適用されるシール部形成工程においては、積層工程から電池本体部18が投入されると、ヒートバー110、120が駆動装置114、124によって駆動され、電池本体部18の両方の外側に当接する。この際、ヒートバー110、120は、ヒーター112、122によって予め温度が上昇しており、電池本体部18の両方の外側を介して、シール材31、33が加熱されることになる。
電極20の積層方向Sに関し最外側に位置するシール材31、33は、ヒートバー110、120に隣接するため、その温度は、ヒーター112、122の温度(電池本体部の外側の加熱温度)と略一致する。つまり、電池本体部18の外側におけるシール材加熱温度は、ヒーター112、122の温度に対応している。
シール部形成工程において、シール材を熱融着するときの加熱温度(ヒートバー110、120の加熱温度)は、例えば、100〜180℃であり、好ましくは120〜160℃である。上記範囲であれば良好な接着性が得られうる。さらに、前記加熱温度は、シール材の融点以上の温度であることが好ましい。加熱温度がシール材の融点以上の温度であると、良好な高温シール性をシール部を確実に形成することが可能である。また、シール部形成工程において、シール材加熱温度は、セパレータの熱収縮開始温度より低いことが好ましい。このようにすることでセパレータの熱収縮による内部短絡の発生が確実に抑制される。
ヒートバー110、120の加圧力は、例えば、0.1〜1.0MPaであり、好ましくは0.2〜0.5MPaである。また、加圧時間は、例えば、10〜60秒であり、好ましくは20〜40秒である。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車、燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの高質量エネルギー密度、高質量出力密度等が求められる車両駆動用電源や補助電源として好適に用いることができる。
本発明を以下の実施例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、以下の操作は、室温(25℃)で行った。
[実施例1]
下記手順で双極型リチウムイオン二次電池を作製し、評価を行った。
<双極型電極の作製>
負極活物質としてグラファイト90質量%およびバインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)10質量%を準備し、これにスラリー粘度調整溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)適量を混合し、負極活物質スラリーを調製した。正極活物質としてLiNiO2 85質量%、導電助剤としてアセチレンブラック5質量%、およびバインダとしてPVdF 10質量%を準備し、これにスラリー粘度調整溶媒としてNMP適量を混合し、正極活物質スラリーを調製した。上記で調製した負極活物質スラリーを、集電体(190mm×125mm、厚さ30μm)の一方の表面に170mm×105mmの大きさになるように塗布し、乾燥させて負極活物質層(厚さ:100μm)を形成した。このとき、負極活物質層の最大長さLは、200mmであった。
なお、集電体としては、以下のような導電性を有する樹脂層を用いた。樹脂層であるポリイミド箔として、高分子材料であるポリイミド100質量%に対して、導電性フィラーであるカーボン粒子(粒子径10nm)15質量%を分散させた、厚さ29.5μmのフィルム状の樹脂層を準備した。具体的には、ポリアミック酸を含むポリイミドを溶媒であるN−メチルピロリドン(NMP)に溶解させ、これにカーボン粒子を分散させて溶融キャスト法によりフィルムを作製し、樹脂層を得た。得られた樹脂層の一方の面に、銅めっき層(0.5μm)を形成し、集電体を得た。負極活物質層は、上記で作製した集電体の銅めっき層の側に形成された。
同様に、上記で調製した正極活物質スラリーを、上記の集電体のもう一方の表面に162mm×97mmの大きさになるように塗布し、乾燥させて正極活物質層(厚さ:100μm)を形成した。この際、負極活物質層の面積と、正極活物質層の面積とをほぼ同じとし、負極活物質層と正極活物質層との集電体への投影図において、正極活物質層の投影図が負極活物質層の投影図の内側になるように調整して、負極活物質層および正極活物質層を形成した。またシール部分として、各辺幅10mmの余白を集電体の両面に残した状態とした。なお、集電体の線熱膨張率は3×10−5であり、ヤング率は133MPaであった。
<双極型リチウムイオン二次電池の作製>
まず電解液としてプロピレンカーボネート・エチレンカーボネートの等体積混合液にリチウム塩であるLiPF6を1mol/Lの濃度で溶解させたものを準備した。次に双極型電極の集電体の両面の表面露出部(余白部)にそれぞれ、幅10mmのシール材(熱可塑性、ポリプロピレン系オレフィン、NOK株式会社製、線熱膨張率:4.0×10−4)を配置した。この双極型電極とセパレータ(活物質層を覆う大きさ)(アラミド製、厚さ30μm、空孔率60%)とを交互に重ね、2層(正極/負極の組み合わせが2組)の積層体とした。得られた積層体に対して積層方向にホットプレス処理(0.2MPa、140℃、30秒間)を施し、シール部を融着させることで隣接する双極型電極間をシールした。その後、上記で準備した電解液を注液し封をして、発電要素を完成させた。さらに得られた発電要素の投影面全体を覆うことができるアルミニウム板の一部が発電要素の投影面外部まで伸びている強電端子を用いて発電要素を挟持し、双極型リチウムイオン二次電池を完成させた。ここで、ホットプレス処理する前のシール材のヤング率は50MPaであり、シール材の塗布厚さは120μmであった。
[実施例2]
実施例1において、集電体(銅めっき層を有するポリイミド箔)の大きさを448mm×273mmとしたこと、正極活物質層を422mm×247mmの大きさになるように作製し、負極活物質層を430mm×255mmの大きさになるように作製したことを除いては、実施例1と同様にして双極型リチウムイオン二次電池を作製した。負極活物質層の最大長さLは500mmであった。
[実施例3]
実施例2において、セパレータの厚さを15μmとしたことを除いては、実施例2と同様にして双極型リチウムイオン二次電池を作製した。
[実施例4]
実施例3において、シール材を熱可塑性ポリプロピレン系オレフィン(線熱膨張率:4.0×10−4、ヤング率:10MPa、NOK株式会社製)に変更し、シール材の塗布厚さを100μmとしたことを除いては、実施例3と同様にして双極型リチウムイオン二次電池を作製した。
[比較例1]
実施例2において、セパレータの厚さを10μmとした。さらに、シール材の塗布厚さを160μmとし、集電体の厚さを52μmに変更した。その他の条件は実施例2と同様にして双極型リチウムイオン二次電池を作製した。
[比較例2]
比較例1において、集電体(銅めっき層を有するポリイミド箔)の大きさを685mm×465mmとしたこと、正極活物質層を657mm×437mmの大きさになるように作製し、負極活物質層を665mm×445mmの大きさになるように作製したことを除いては、比較例1と同様にして双極型リチウムイオン二次電池を作製した。負極活物質層の最大長さLは800mmであった。
[比較例3]
比較例2において、シール材の材質をポリプロピレン系オレフィン(線熱膨張率:6×10−4、ヤング率:100MPa、NOK株式会社製)に変更し、シール材の塗布厚さを80μmとしたことを除いては、比較例2と同様にして双極型リチウムイオン二次電池を作製した。
[実施例5]
下記手順で双極型ではないリチウムイオン二次電池を作製し、評価を行った。
<正極および負極の作製>
正極活物質スラリーおよび負極活物質スラリーは、上記の双極型リチウムイオン二次電池の作製における正極活物質スラリーおよび負極活物質スラリーと同様の手順で作製した。
負極集電体は、上記の双極型電極の作製と同様の手法で、ただし、樹脂層の厚さを30μmとし、この樹脂層の両方の面に銅めっき層をそれぞれ0.5μmの厚さで形成したものを用いた。
作製した負極活物質スラリーを上記で作製した負極集電体(厚さ:10μm)の両面に塗布し、乾燥させて負極活物質層(430mm×255mm、厚さ:100μm)を形成した。このとき、負極活物質層の最大長さLは、500mmであった。同様に、上記で作製した正極活物質スラリーを、正極集電体であるアルミニウム箔(厚さ:20μm)の両面に塗布し、乾燥させて正極活物質層(462mm×277mm、厚さ:100μm)を形成した。この際、負極活物質層の面積と、正極活物質層の面積とをほぼ同じにし、負極活物質層と正極活物質層との集電体への投影図において、正極活物質層の投影図が負極活物質層の投影図の内側になるように調整して、負極活物質層および正極活物質層を形成した。シール部分として、各辺幅10mmの余白を正極集電体および負極集電体の両面に残した状態とした。また各集電体には、長さ50mm、幅10mmのタブを付帯させた。
<双極型ではないリチウムイオン二次電池の作製>
電解液の調製は、上記の双極型リチウムイオン二次電池の作製と同様の手順で行った。次に上記で作製した正極および負極の双方の集電体の両面の表面露出部(余白部)にそれぞれ、幅10mmのシール材(熱可塑性、ポリプロピレン系オレフィン、NOK株式会社製、線熱膨張率:4×10−4)を配置した。セパレータ(活物質層を覆う大きさ、アラミド製、厚み15μm、空孔率60%)を準備し、負極→セパレータ→正極→セパレータ→負極の順に重ね、2層(正極/負極の組み合わせが2組)の積層体とした。得られた積層体に対して積層方向にホットプレス処理(0.2MPa、140℃、30秒間)を施し、シール部を融着させることで隣接する電極間をシールした。得られた積層体をアルミラミネート袋に入れ、タブが外部に出るように3辺封止した。本構成では負極が2組あるので、これらの負極集電体のタブを合わせて、負極タブとした。次いで、上記で調製した電解液をアルミラミネート袋に注液し封をして、発電要素を完成させた。最後に、負極タブ、正極タブにそれぞれ強電端子を接続し、双極型ではないリチウムイオン二次電池を完成させた。ここで、ホットプレス処理する前のシール材のヤング率は100MPaであり、シール材の塗布厚さは80μmであった。
[比較例4]
実施例5において、セパレータの厚さを10μmとしたことを除いては、実施例5と同様にして双極型ではないリチウムイオン二次電池を作製した。
<サイクル試験>
実施例1〜5および比較例1〜4で作製したリチウムイオン二次電池を、50℃の雰囲気下、レート1Cの電流で各電池の満充電まで定電流(CC)充電し、その後定電圧(CV)で充電し、合計で3時間充電した。その後定電流放電し、これを1サイクルとして100サイクルの充放電サイクル試験を行った。100サイクル後の放電容量維持率(100サイクル後の放電容量/初期放電容量×100[%])を求め、表1に示す。
表1の結果から、実施例1〜4の双極型リチウムイオン二次電池は、比較例1〜3の電池と比較して、容量の低下が少なく、性能が維持できていることが示された。同様に、双極型ではないリチウムイオン二次電池についても、実施例5の電池は、比較例4の電池よりも容量の低下が少なく、性能が維持された。これは、シール材の線熱膨張率α1と集電体の線熱膨張率α2との差|α1−α2|、電極の最大長さL(mm)、および電極間距離D(mm)が所定の関係を満たす各実施例の電池では、電池を製造する際の熱プレスする工程において電池の歪みが生じにくいため、電極間距離を均一化できるためと考えられる。電極間距離を均一化することによって、電極間距離が不均一な部分で生じうるLi析出等が抑えられて反応が均一化し、耐久性が向上したものと考えられる。
なかでも、シール材の剛性が、前記集電体の剛性よりも小さい実施例4の電池は、熱膨張率差、電極最大長さ、電極間距離が同等の実施例3の電池よりも優れた容量維持率を示した。これは、シール材の剛性を集電体の剛性よりも小さくすることで、集電体の形状がシール材の熱変形の影響を受けて変形することを抑制できるため、電池のひずみを緩和する効果がより高いためと考えられる。