JP2017166574A - クラッチ装置 - Google Patents

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新 深澤
隆雄 上野
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Abstract

【課題】簡易な構成により潤滑油を効率よく供給可能なクラッチ装置を提供する。【解決手段】クラッチ装置100は、軸方向に並べて配置された湿式多板の第1クラッチ1と第2クラッチ2とを備え、各クラッチ1,2のクラッチアウタ20のガイド部23は、その内径側から外径側へと潤滑油が通過する第1油孔233および第2油孔231,232をそれぞれ有し、第1クラッチ1のピストン30は、第2クラッチ2のクラッチアウタ20のガイド部23の内周面に対向して軸方向に延設されたアーム部32を有し、アーム部32は、第1クラッチ1のピストン30の軸方向の移動に伴い、第2油孔231,232の入口の油路面積を変更する開口部35,36を有する。【選択図】図2

Description

本発明は、軸方向に並設された一対の湿式多板クラッチを有するクラッチ装置に関する。
従来より、湿式多板の第1クラッチと第2クラッチとを径方向内側および外側に配設してなるクラッチ装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載の装置では、第1クラッチのピストンにシャッターが設けられ、ピストンの移動に伴いシャッターを軸方向に移動させることにより、第1クラッチのクラッチドラムに開口された油排出孔を開閉し、これにより第1クラッチから第2クラッチへの潤滑油の流れを調整する。
特開2011−52746号公報
しかしながら、上記特許文献1記載の装置では、第1クラッチのピストンにシャッターが設けられるため、部品点数が増加し、コストの増加および重量の増大を招く。
本発明の一態様は、軸方向に並べて配置された湿式多板の第1クラッチと第2クラッチとを備えるクラッチ装置であり、第1クラッチおよび第2クラッチはそれぞれ、互いに相対回転可能に軸方向交互に配置された複数の第1プレートおよび第2プレートと、第1プレートの内径側端部を軸方向移動可能に支持する内径側ガイド部を有するクラッチインナと、第2プレートの外径側端部を軸方向移動可能に支持する外径側ガイド部を有するクラッチアウタと、油圧力により軸方向に押動されて第1プレートと第2プレートとを互いに圧接または離間するピストンと、を有し、第1クラッチの外径側ガイド部および第2クラッチの外径側ガイド部は、潤滑油が通過する第1油孔および第2油孔をそれぞれ有し、第1クラッチのピストンは、第2クラッチの外径側ガイド部の内周面に対向して軸方向に延設されたアーム部を有し、アーム部は、第2油路に連なり、第1クラッチのピストンの軸方向の移動に伴い、第2油孔の入口側の油路面積を変更する開口部を有することを特徴とする。
本発明によれば、第1クラッチのピストンが、第2クラッチのクラッチアウタの外径側ガイド部の内周面に対向して軸方向に延設されたアーム部を有し、第1クラッチのピストンの軸方向の移動に伴い、アーム部に設けられた開口部により、第2クラッチのクラッチアウタの外径側円筒部に設けられた第2油孔の入口側の油路面積を変更する。したがって、第2油路を開閉するためのシャッター等の部品を別途設ける必要がなく、部品点数の増加が抑えられ、コストの増加および重量の増大を防ぐことができる。
本発明の実施形態に係るクラッチ装置の要部構成を示す断面図。 本発明の実施形態に係るクラッチ装置の一動作を示す断面図。 本発明の実施形態に係るクラッチ装置を構成するピストンのアーム部の要部構成を示す斜視図。 本発明の実施形態に係るクラッチ装置の他の動作を示す断面図。
以下、図1〜図4を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るクラッチ装置100の要部構成を示す断面図である。このクラッチ装置100は、動力源の動力をトルク被伝達部に伝達するトルク伝達経路、例えば車両に搭載されたエンジンの動力を変速機に伝達するトルク伝達経路に設けられる。なお、以下では、便宜上、図示のようにクラッチ装置100の中心を通る軸線L0に沿って左右方向を定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。この左右方向は、例えば車両の車幅方向または車幅方向に垂直な長さ方向に相当する。
クラッチ装置100は、軸方向に並べて配置された左右一対の湿式多板クラッチ(右クラッチ1、左クラッチ2)を有する。右クラッチ1は、奇数(1速、3速、5速等)の変速段を確立するときに接続される奇数変速段用クラッチであり、左クラッチ2は、偶数(2速、4速、6速等)の変速段を確立するときに接続される偶数変速段用クラッチである。なお、右クラッチ1は、偶数変速段を確立するときには切断され、左クラッチ2は、奇数変速段を確立するときには切断される。
右クラッチ1は、軸線L0を中心に回転可能に設けられたクラッチインナ10およびクラッチアウタ20と、油圧力により作動し、右クラッチ1を接続または切断するピストン30とを有する。左クラッチ2も同様に、軸線L0を中心に回転可能に設けられたクラッチインナ40およびクラッチアウタ20と、油圧力により作動し、左クラッチ2を接続または切断するピストン50とを有する。左右のクラッチ1,2のクラッチアウタ20は一体に構成され、クラッチ装置100は共通のクラッチアウタ20を備える。
右クラッチ1のクラッチインナ10は、略円筒形状の軸部11と、軸部11から径方向外側に延在する側壁部12と、側壁部12の外径側端部から左方に延在し、複数枚のプレート15を左右方向に移動可能に支持する略円筒形状のガイド部13とを有する。軸部11の内周面は、軸線L0を中心とした円筒形状のインナシャフト3にスプライン結合され、クラッチインナ10とインナシャフト3とは一体に回転する。なお、図示は省略するが、インナシャフト3には、奇数変速段のギヤにトルクを伝達するためのギヤが設けられる。
左クラッチ2のクラッチインナ40は、略円筒形状の軸部41と、軸部41から径方向外側に延在する側壁部42と、側壁部42の外径側端部から左方に延在し、複数枚のプレート45を左右方向に移動可能に支持する略円筒形状のガイド部43とを有する。インナシャフト3の周囲には、軸線L0を中心とした円筒形状のアウタシャフト4が配置される。軸部41の内周面は、アウタシャフト4にスプライン結合され、クラッチインナ40とアウタシャフト4とは一体に回転する。なお、図示は省略するが、アウタシャフト4には、偶数変速段のギヤにトルクを伝達するためのギヤが設けられる。
クラッチアウタ20は、略円筒形状の軸部21と、軸部21から径方向外側に延在する右側壁部22と、右側壁部22の外径側端部から左方に延在し、複数枚のプレート26,27を左右方向に移動可能に支持する略円筒形状のガイド部23と、ガイド部23の左端部から径方向内側に延在する左側壁部24と、左側壁部24の内径側端部に設けられた軸受部25とを有する。軸受部25の内側には変速機ケース5の端部が配置され、クラッチアウタ20はベアリング6を介して変速機ケース5から回転可能に支持される。軸部21の端部には、エンジンからのトルクが入力される。
右クラッチ1のクラッチインナ10のガイド部13の外周面には、軸方向(左右方向)に沿って周方向複数の溝部13aが形成される。溝部13aには、軸方向に並設されたリング状の複数枚の第1プレート15、より詳しくは、第1プレート15の内周面から突設された周方向複数の凸部15aが軸方向に移動可能に係合される。すなわち、クラッチインナ10のガイド部13には、第1プレート15がスプライン結合される。
左クラッチ2のクラッチインナ40のガイド部43の外周面には、軸方向に沿って周方向複数の溝部43aが形成される。溝部43aには、軸方向に並設されたリング状の複数枚の第1プレート45、より詳しくは、第1プレート45の内周面から突設された周方向複数の凸部45aが軸方向に移動可能に係合される。すなわち、クラッチインナ40のガイド部43には、第1プレート45がスプライン結合される。
クラッチアウタ20のガイド部23の内周面には、軸方向に沿って周方向複数の溝部23aが形成される。溝部23aには、右クラッチ1の第1プレート15と軸方向交互に並設されたリング状の複数枚の第2プレート26、より詳しくは、第2プレート26の外周面から突設された周方向複数の凸部26aが軸方向に移動可能に係合される。
さらに溝部23aには、左クラッチ2の第1プレート45と軸方向交互に並設されたリング状の複数枚の第2プレート27、より詳しくは、第2プレート27の外周面から突設された周方向複数の凸部27aが軸方向に移動可能に係合される(図2参照)。すなわち、クラッチアウタ20のガイド部23には、右クラッチ1の第2プレート26と左クラッチ2の第2プレート27とがそれぞれスプライン結合される。
以下では、右クラッチ1の第1プレート15と第2プレート26の全体、および左クラッチ2の第1プレート45と第2プレート27の全体を、それぞれプレート群1A,2Aと呼ぶことがある。クラッチアウタ20の右側壁部22には、右クラッチ1のプレート群1Aに作用するピストン30からの荷重を受ける荷重受け部28が突設され、荷重受け部28によりプレート群1Aの右方への移動が制限される。クラッチアウタ20のガイド部23の内周面からは、左クラッチ2のプレート群2Aに作用するピストン50からの荷重を受ける荷重受け部29が延設され、荷重受け部29によりプレート群2Aの右方への移動が制限される。
左クラッチ2のプレート群2Aとクラッチアウタ20の左側壁部24との間には、右クラッチ用および左クラッチ用の一対のピストン30,50が配置される。左クラッチ用のピストン50は、径方向に延在するリング状板部51と、板部51の外径側端部から右方に突設された押圧部52とを有する。押圧部52の右端面(押圧面)は、左クラッチ2のプレート群2Aの径方向中央部に面して配置される。
右クラッチ用のピストン30は、径方向に延在するリング状板部31と、押圧部52の径方向外側を通り、板部31の外径側端部から右方に延設された周方向複数のアーム部32と、各アーム部32の先端部から右方に突設された押圧部33とを有する。アーム部32は、図1とは周方向異なる位相、すなわち周方向に互いに隣り合うクラッチアウタ20の一対の溝部23a,23aの間に配置される。
図2は、アーム部32を含む位相で切断したクラッチ装置100の要部断面図であり、図3は、アーム部32の要部構成を示す斜視図である。図2,3に示すように、アーム部32は、断面略矩形状を呈し、クラッチアウタ20のガイド部23の内周面に沿って左右方向に延在する。
より具体的には、図3に示すように、クラッチアウタ20のガイド部23の内周面には、周方向に隣り合う一対の溝部23a,23aの間に、軸方向に溝部23bが延設される。溝部23bは、アーム部32の外形形状に対応して略コ字状に形成され、溝部23bには、溝部23bに対し軸方向に相対移動可能に、かつ、第2プレート27の外周面27bに対し軸方向に相対移動可能にアーム部32が挿入される。
図2に示すように、押圧部33は、アーム部32の先端部から径方向内側に延設された後、右方に突設される。押圧部33の右端面(押圧面)は、右クラッチ1のプレート群1Aの径方向中央部に面して配置される。
図1において詳細な図示は省略するが、右クラッチ1のピストン30の板部31の右側には、リターンスプリングが配置され、ピストン30はリターンスプリングにより左方に付勢される。一方、ピストン30には、油圧源(油圧ポンプ)から供給される作動油の圧力により右方への押圧力を及ぼすことができ、これによりピストン30はリターンスプリングの付勢力に抗して右方に押動される。なお、板部31の右側にキャンセル油室を形成し、油圧力によりピストン30を左方に押圧することもできる。
左クラッチ2のピストン50の板部51の右側にはリターンスプリングが配置され、ピストン50はリターンスプリングにより左方に付勢される。一方、ピストン50には、油圧源から供給される作動油の圧力により右方への押圧力を及ぼすことができ、これによりピストン50はリターンスプリングの付勢力に抗して右方に押動される。なお、板部51の右側にキャンセル油室を形成し、油圧力によりピストン50を左方に押圧することもできる。
油圧源から供給される作動油の流れは、図示しない制御弁により制御される。制御弁の切換によりピストン30駆動用の作動油が供給されると、ピストン30が右方に押動され、右クラッチ1のプレート群1Aが押圧される。これにより第1プレート15と第2プレート26とが互いに圧接され、右クラッチ1が接続される。その結果、クラッチアウタ20の軸部21に入力されたエンジンからのトルクが、右クラッチ1のプレート群1Aおよびクラッチインナ10を介してインナシャフト3に伝達される。
制御弁の切換によりピストン30駆動用の作動油の供給が停止されると、リターンスプリングのばね力によりピストン30が左方に押動される。これによりプレート群1Aが押圧力から解放され、右クラッチ1が切断される。その結果、軸部21からインナシャフト3へのトルクの伝達が阻止される。
一方、制御弁の切換によりピストン50駆動用の作動油が供給されると、ピストン50が右方に押動され、左クラッチ2のプレート群2Aが押圧される。これにより第1プレート45と第2プレート27とが互いに圧接され、左クラッチ2が接続される。その結果、クラッチアウタ20の軸部21に入力されたエンジンからのトルクが、左クラッチ2のプレート群2Aおよびクラッチインナ40を介してアウタシャフト4に伝達される。
制御弁の切換によりピストン50駆動用の作動油の供給が停止されると、リターンスプリングのばね力によりピストン50が左方に押動される。これによりプレート群2Aが押圧力から解放され、左クラッチ2が切断される。その結果、軸部21からアウタシャフト4へのトルクの伝達が阻止される。
図2に示すように、クラッチアウタ20のガイド部23には、溝部23aを径方向に貫通する複数の貫通孔231〜233が左右方向に異なる位置に穿設される。このうち、左側の一対の貫通孔231,232は、アーム部32に面して左クラッチ2のプレート群2Aの径方向外側に設けられ、右側の貫通孔233は、右クラッチ1のプレート群1Aの径方向外側に設けられる。一対の貫通孔231,232の開口面積は例えば互いに等しく、貫通孔233の開口面積は例えば貫通孔231,232の開口面積よりも大きい。アーム部32には、貫通孔231,232に対応してアーム部32を径方向に貫通する左右一対の貫通孔35,36が穿設される。
右クラッチ1のクラッチインナ10のガイド部13には、ガイド部13を径方向に貫通する貫通孔16が穿設される。左クラッチ2のクラッチインナ40のガイド部43には、ガイド部43を径方向に貫通する左右一対の貫通孔46,47が穿設される。貫通孔16は、周方向に隣り合う一対の溝部13a,13a(図1)の間に、貫通孔46,47は、周方向に隣り合う一対の溝部43a,43a(図1)の間に、それぞれ開口される。
図2は、右クラッチ1が切断され、かつ、左クラッチ2が接続された状態におけるクラッチ装置100の断面図であり、図4は、右クラッチ1が接続され、かつ、左クラッチ2が切断された状態におけるクラッチ装置100の断面図である。図2に示すように、右クラッチ1が切断された状態では、ピストン30は矢印A方向に押動され、アーム部32は、図2の第1位置に位置する。一方、図4に示すように、右クラッチ1が接続された状態では、ピストン30は矢印B方向に押動され、ピストン30と一体のアーム部32は、図4の第2位置に位置する。
図2に示すように、アーム部32が第1位置にあるときは、アーム部32の貫通孔35,36の位置がクラッチアウタ20の貫通孔231,232の位置に一致する。これにより貫通孔231,232の入口が開放(全開)され、貫通孔35,231および貫通孔36,232を介してアーム部32の内側空間とクラッチアウタ20の外側空間とが連通する。
一方、図4に示すように、アーム部32が第2位置にあるときは、アーム部32の貫通孔35,36の位置がクラッチアウタ20の貫通孔231,232の位置から軸方向にずれる。これによりアーム部32によって貫通孔231,232の入口が閉鎖される。なお、クラッチアウタ20の貫通孔233は、アーム部32の位置に拘らず、常に開放される。
クラッチインナ10の貫通孔16およびクラッチインナ40の貫通孔46,47には、それぞれ油路61,62の一端部が接続される。油路61,62の他端部は油路63に接続され、油路63は制御弁64を介して油圧源65(油圧ポンプ)に接続される。制御弁64の切換により、油圧源65からの潤滑油が各貫通孔16,46,47に同時に供給される。
本実施形態に係るクラッチ装置100の主要な動作について説明する。まず、図2に示すように、アーム部32が第1位置にあるとき、すなわち右クラッチ1が切断され、かつ、左クラッチ2が切断された状態の動作について説明する。この状態で、油路61,62を介して貫通孔16,46,47に潤滑油が供給されると、潤滑油は貫通孔16,46,47をそれぞれ通過し、さらにクラッチアウタ20の回転による遠心力により径方向外側に流れる。
このとき、左クラッチ側の貫通孔231,232の入口は開放されているため、貫通孔46,47を通過した潤滑油は主に貫通孔35,231および貫通孔36,232を通過してクラッチアウタ20の外部に流出する。これにより左クラッチ2のプレート群2Aの周囲を潤滑油が流れ、圧接状態のプレート群2Aを冷却することができる。一方、貫通孔16を通過した潤滑油は主に貫通孔233を通過してクラッチアウタ20の外部に流出する。これにより右クラッチ1のプレート群1Aも冷却することができる。
この場合、左クラッチ2のプレート群2Aの周囲を流れる潤滑油と右クラッチ1のプレート群1Aの周囲を流れる潤滑油との潤滑油量の割合は、左クラッチ側の貫通孔35,36,46,47,231,232と右クラッチ側の貫通孔16,233との開口面積の割合で決定される。本実施形態では、アーム部32が第1位置にあるときに、プレート群2Aの周囲を流れる潤滑油量がプレート群1Aの周囲を流れる潤滑油量よりも多くなるように開口面積が設定される。このため、発熱量が大きい左クラッチのプレート群2Aに、より多くの潤滑油が流れ、プレート群2Aを良好に冷却することができる。
次に、図4に示すように、アーム部32が第2位置にあるとき、すなわち右クラッチ1が接続され、かつ、左クラッチ2が切断された状態の動作について説明する。この状態で、油路61,62を介して貫通孔16,46,47に潤滑油が供給されると、潤滑油は貫通孔16,46,47をそれぞれ通過し、さらにクラッチアウタ20の回転による遠心力により径方向外側に流れる。
このとき、左クラッチ側の貫通孔231,232の入口は閉鎖されているため、貫通孔46,47を通過した潤滑油は、右クラッチ1のプレート群1Aに向けて流れ、右クラッチ側の貫通孔233を通過してクラッチアウタ20の外部に流出する。これに加え、貫通孔16を通過した潤滑油も貫通孔233を通過してクラッチアウタ20の外部に流出する。このため、右クラッチ1のプレート群1Aの周囲を流れる潤滑油量が増大し、圧接状態のプレート群1Aを効率よく冷却することができる。
特に本実施形態では、右クラッチ1の接続時にプレート群1Aの周囲を流れる潤滑油量が、左クラッチ2の接続時にプレート群2Aの周囲を流れる潤滑油量よりも多い。右クラッチ1は奇数変速段用のクラッチであるため、左クラッチ2に比べて、特に発進時におけるクラッチ接続時のプレート群1Aの圧接面に作用するトルクが大きく、発熱量が大きいが、プレート群1Aの周囲を流れる潤滑油量を増大させることで、発熱量の大きい右クラッチ1のプレート群1Aを十分に冷却することができる。
本実施形態では、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)クラッチ装置100は、軸方向に並べて配置された湿式多板の右クラッチ1と左クラッチ2とを備える。右クラッチ1および左クラッチ2はそれぞれ、互いに相対回転可能に軸方向交互に配置された複数の第1プレート15,45および第2プレート26,27と、第1プレート15,45の凸部15a,45aを軸方向移動可能に支持するガイド部13,43を有するクラッチインナ10,40と、第2プレート26,27の凸部26a,27aを軸方向移動可能に支持するガイド部23を有するクラッチアウタ20と、油圧力により軸方向に押動されて第1プレート15,45と第2プレート26,27とを互いに圧接するピストン30,50とを有する(図1)。右クラッチ1のクラッチアウタ20のガイド部23および左クラッチ2のクラッチアウタ20のガイド部23は、潤滑油が通過する貫通孔233および貫通孔231,232をそれぞれ有する(図2)。右クラッチ1のピストン30は、左クラッチ2のクラッチアウタ20のガイド部23の内周面(溝部23b)に対向して軸方向に延設されたアーム部32を有し、アーム部32は、貫通孔231,232に連なり、右クラッチ1のピストン30の軸方向の移動に伴い、貫通孔231,232の入口側の油路面積を変更する貫通孔35,36を有する(図2,3)。
このようにクラッチアウタ20のガイド部23の貫通孔231,232に面して左クラッチ2のピストン30のアーム部32を配置するとともに、貫通孔231,232に対応してアーム部32に貫通孔35,36を設けることで、左クラッチ2のピストン30の移動に応じて右クラッチ側の貫通孔231,232の入口側の油路面積を変更することができる。このため、貫通孔231,232を開閉するためのシャッター部品等を別途追加する必要がなく、部品点数の増加が抑えられ、コストの増加および重量の増大を防ぐことができる。
(2)右クラッチ1のクラッチインナ10のガイド部13および左クラッチ2のクラッチインナ40のガイド部43は、潤滑油が通過する貫通孔16および貫通孔46,47をそれぞれ有する(図2)。クラッチ装置100は、油圧源65から吐出された潤滑油の流れを制御する制御弁64に接続された油路63と、油路63から分岐して貫通孔16と貫通孔46,47とにそれぞれ至る油路61,62とをさらに備える(図2)。
これにより油路61,62のそれぞれに別々の制御弁を接続して流量調整する必要がないため、クラッチ装置100の構成を簡素化できる。すなわち、油路61,62のそれぞれに別々の制御弁を接続する場合、油路全体の設置スペースが増大するとともに、制御弁(ソレノイドバルブ等)の個数が増加し、回路構成が複雑化する。さらに、部品点数の増加によるコストの増加および重量の増大を招く。この点、本実施形態では、単一(共通)の制御弁64を用い、ピストン30の移動に応じて右クラッチ側および左クラッチ側への潤滑油の供給量を調整するので、潤滑油の供給油路を簡易に構成できる。
(3)左クラッチ2の第2プレート27は、その外周面に径方向外側に突出した周方向複数の凸部27aを有し、左クラッチ2のクラッチアウタ20のガイド部23は、その内周面に周方向複数の溝部23aと溝部23bとを有し、凸部27aは、溝部23aに配置され、アーム部32は、溝部23bに配置される(図3)。
これにより、右クラッチ1のピストン30のアーム部32を、左クラッチ2のプレート群2Aを越えて軸方向に延設することができる。このため、左クラッチ2の左側方に一対のピストン30,50を併設することができ、クラッチピストン30,50の効率的な配置が可能である。
(4)右クラッチ1のクラッチアウタ20のガイド部23と左クラッチ2のクラッチアウタ20のガイド部23とは一体に構成される(図1)。したがって、部品点数を低減することができ、コストを削減することができる。また、クラッチアウタ20のガイド部23全体を、軸方向に段差なく滑らかに構成することができ、クラッチアウタ20の大型化を防ぐことができる。
(5)一対のクラッチ1,2を左右に配置し、右クラッチ1のガイド部13の径と左クラッチ2のガイド部43の径とは、同一またはほぼ同一である(図1)。したがって、例えば一対のクラッチを径方向に位置をずらして配置した場合の内径側のクラッチよりもクラッチ1,2の径を大径化できる。よって、クラッチ1,2の伝達トルクを容易に増大させることができ、車重が重い車両に用いて好適である。
(変形例)
上記実施形態は種々の形態に変形することができる。例えば、上記実施形態では、左クラッチ2のピストン30を構成するアーム部32に、クラッチアウタ20のガイド部23の貫通孔231,232に対応して左右一対の貫通孔35,36を設け、貫通孔231,232に対する貫通孔35,36の位置を移動させることで、貫通孔231,232の入口の開口面積を変更するようにした。しかしながら、右クラッチ1のピストン30の軸方向の移動に伴い貫通孔231,232に至る油路の面積を変更するのであれば、開口部の構成は上述したものに限らない。例えば貫通孔35,36の代わりに、アーム部32の側端面(図3のアーム部32の周方向端面)に、貫通孔231,232に対応して切り欠き部を設け、切り欠き部を介して貫通孔231,232に潤滑油を供給するようにしてもよい。
上記実施形態では、アーム部32が第1位置に移動したときに、アーム部32の貫通孔35,36を介してクラッチアウタ20の貫通孔231,232の入口を全開にしたが、全開ではなく、貫通孔231,232の入口の一部を開放するようにしてもよい。また、上記実施形態では、アーム部32が第2位置に移動したときに、アーム部32により貫通孔231,232の入口を全閉するようにしたが、全開ではなく、貫通孔231,232の入口の一部を閉塞するようにしてもよい。すなわち、アーム部32が第1位置に移動したときの貫通孔231,232の入口の油路面積を、第2位置に移動したときの油路面積よりも大きくするのであれば、第1位置および第2位置に移動したときの開口面積を、全開および全閉以外に設定してもよい。
第1プレート15,45の凸部15a,45a(内径側端部)を軸方向移動可能に支持するガイド部13,43(内径側ガイド部)を有するクラッチインナ10,40の構成、および第2プレート26,27の凸部26a,27a(外径側端部)を軸方向移動可能に支持するガイド部23(外径側ガイド部)を有するクラッチアウタ20の構成は、上述したものに限らない。例えば上記実施形態では、各クラッチ1,2のクラッチアウタ20のガイド部23を一体に構成するようにしたが、一対のクラッチの外径側ガイド部を別々に設けてもよい。上記実施形態では、油圧力によりピストン30,50を押動して第1プレート15,45と第2プレート26,27とを圧接するようにしたが、油圧力によりピストンを押動して第1プレート15,45と第2プレート26,27とを離間させるようにしてもよい。
上記実施形態では、一対のクラッチ1,2のクラッチアウタ20のガイド部23に、その内径側から外径側へと潤滑油が通過する貫通孔233(第1油孔)および貫通孔231,232(第2油孔)をそれぞれ設けたが、第1油孔と第2油孔の個数は上述したものに限らない。上記実施形態では、左クラッチ2のクラッチアウタ20のガイド部23の内周面に、周方向複数の溝部23aと溝部23bとを設け、溝部23aに、第2プレート27の外周面27bから径方向外側に突出した凸部27aを配置するとともに、溝部23bに、アーム部32を配置するようにした。しかしながら、クラッチアウタのガイド部の内周面に対向して軸方向にアーム部が延設されるのであれば、アーム部をいかに配置してもよい。例えば第2プレート27の外周面27bに周方向複数の凹部を設け、凹部にアーム部32を配置してもよい。
上記実施形態では、右クラッチ1のクラッチインナ10のガイド部13に貫通孔16(第3油孔)を設けるとともに、左クラッチ2のクラッチインナ40のガイド部43に貫通孔46,47(第4油孔)を設け、クラッチ装置100が、油圧源65から吐出された潤滑油の流れを制御する制御弁64に接続された油路63(第1油路)と、油路63から分岐して貫通孔16および貫通孔46,47にそれぞれ至る油路61(第2油路)および油路62(第3油路)とを有するようにした。しかしながら、一対のクラッチに潤滑油を供給するための油圧回路の構成はこれに限らない。例えば各油路61,62に、それぞれ別々の制御弁を接続するようにしてもよい。油路61と油路62とを他の空間から区別するために、例えば図4の点線に示すように、クラッチ装置100に潤滑油の隔壁66を設けるようにしてもよい。
上記実施形態では、右クラッチ1を、奇数変速段を確立するための第1クラッチとして用い、左クラッチ2を、偶数変速段を確立するための第2クラッチとして用いたが、右クラッチ1を第2クラッチとして用い、左クラッチ2を第1クラッチとして用いてもよい。クラッチアウタ20の内側におけるクラッチ装置100の構成を左右反転させ、右クラッチの右側方に左右のクラッチのピストンを配置するとともに、右クラッチにアーム部を設けるようにしてもよい。
上記実施形態では、奇数変速段を確立するためのクラッチおよび偶数変速段を確立するためのクラッチにクラッチ装置100を適用したが、これに限らず、本発明のクラッチ装置は、軸方向に並べて配置された湿式多板の第1クラッチと第2クラッチとを有する他のクラッチ装置にも同様に適用することもできる。
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態および変形例の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。すなわち、本発明の技術的思想の範囲内で考えられる他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能である。変形例同士を組み合わせることもできる。
1 右クラッチ、2 左クラッチ、10 クラッチインナ、13 ガイド部、15 第1プレート、16 貫通孔、20 クラッチアウタ、23 ガイド部、26,27 第2プレート、30 ピストン、32 アーム部、35,36 貫通孔、40 クラッチインナ、43 ガイド部、45 第1プレート、50 ピストン、100 クラッチ装置、231〜233 貫通孔

Claims (4)

  1. 軸方向に並べて配置された湿式多板の第1クラッチと第2クラッチとを備えるクラッチ装置であって、
    前記第1クラッチおよび前記第2クラッチはそれぞれ、互いに相対回転可能に軸方向交互に配置された複数の第1プレートおよび第2プレートと、前記第1プレートの内径側端部を軸方向移動可能に支持する内径側ガイド部を有するクラッチインナと、前記第2プレートの外径側端部を軸方向移動可能に支持する外径側ガイド部を有するクラッチアウタと、油圧力により軸方向に押動されて前記第1プレートと前記第2プレートとを互いに圧接または離間するピストンと、を有し、
    前記第1クラッチの前記外径側ガイド部および前記第2クラッチの前記外径側ガイド部は、潤滑油が通過する第1油孔および第2油孔をそれぞれ有し、
    前記第1クラッチの前記ピストンは、前記第2クラッチの前記外径側ガイド部の内周面に対向して軸方向に延設されたアーム部を有し、
    前記アーム部は、前記第2油路に連なり、前記第1クラッチの前記ピストンの軸方向の移動に伴い、前記第2油孔の入口側の油路面積を変更する開口部を有することを特徴とするクラッチ装置。
  2. 請求項1に記載のクラッチ装置において、
    前記第1クラッチの前記内径側ガイド部および前記第2クラッチの前記内径側ガイド部は、潤滑油が通過する第3油孔および第4油孔をそれぞれ有し、
    前記クラッチ装置は、油圧源から吐出された潤滑油の流れを制御する制御弁に接続された第1油路と、前記第1油路から分岐して前記第3油孔と前記第4油孔とにそれぞれ至る第2油路と第3油路と、をさらに備えることを特徴とするクラッチ装置。
  3. 請求項1または2に記載のクラッチ装置において、
    前記第2クラッチの前記第2プレートは、その外周面に径方向外側に突出した周方向複数の凸部を有し、
    前記第2クラッチの前記外径側ガイド部は、その内周面に周方向複数の第1凹部と第2凹部とを有し、
    前記凸部は、前記第1凹部に配置され、前記アーム部は、前記第2凹部に配置されることを特徴とするクラッチ装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のクラッチ装置において、
    前記第1クラッチの前記外径側ガイド部と前記第2クラッチの前記外径側ガイド部とは、一体に構成されることを特徴とするクラッチ装置。
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