JP2017165818A - 剥離剤組成物、剥離シート及び粘着体 - Google Patents

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Abstract

【課題】剥離力を容易に調整可能であり、両面粘着シートの剥離シートにも好適に使用可能な剥離剤組成物の提供。【解決手段】液状ポリマー(A)と、アクリルポリマー(B)とを含む剥離剤組成物であって、アクリルポリマー(B)が、以下の式(1)で表される長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)由来の構成単位と、アルキル(メタ)アクリレート(b2)由来の構成単位とを含有する剥離剤組成物。(R1はH又はメチル基;R2はC10〜30の分岐アルキル基)【選択図】なし

Description

本発明は、剥離剤組成物、並びにその剥離剤組成物を使用した剥離シート、及び粘着体に関し、例えば、電子部品用途等で使用される剥離剤組成物、剥離シート、及び粘着体に関する。
リレー、各種スイッチ、コネクタ、モータ、ハードディスク等の電子部品は、様々な製品に広く使用されている。これら電子部品には、部品間の接着、組立時の仮止め、部品の内容表示等を目的として、片面粘着シートや両面粘着シートが貼付されることがある。
片面粘着シートは、粘着シート基材と、その基材上に設けられた粘着剤層とを備えるとともに、電子部品等の被着体に貼付される前には、粘着剤層に剥離シートが貼着されて粘着剤層が保護されるのが一般的である。また、両面粘着シートとしては、基材(芯材)の両面に粘着剤層を設け、その粘着剤層それぞれに剥離シートを貼付したものや、基材を設けずに単体の粘着剤層の両面に剥離シートを貼付した基材レス両面粘着シートが知られている。
剥離シートの表面(すなわち、粘着剤層との接触面)には、粘着剤層から剥離シートを剥がす際の剥離性を向上するために、剥離剤層が設けられている。剥離剤層の構成材料としては、一般的にシリコーン樹脂が使用される。シリコーン樹脂の剥離剤は、様々なものが開発されており、比較的自由に剥離力を調整することが可能である。
しかし、シリコーン樹脂を用いた剥離シートは、剥離剤層中のシリコーン化合物が、電子部品に移行して電子部品に悪影響を及ぼすことがある。従来、このようなシリコーン汚染の問題を解決するために、シリコーン化合物を含まないいわゆる非シリコーン系剥離剤の開発が進められている。
例えば特許文献1、2には、非シリコーン系剥離剤組成物として、長鎖アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位を有するアクリルポリマーと、ポリブタジエン、ポリエステル樹脂等の液状ポリマーと、架橋剤とを含有する剥離剤組成物が開示されている。これら剥離剤組成物では、長鎖アルキル(メタ)アクリレートとして、ラウリルアクリレート、ミリスチルアクリレート、ステアリルアクリレート等の長鎖アルキル基が直鎖状のものが使用される。特許文献1、2に記載される剥離剤組成物は、これら特定の長鎖アルキル(メタ)アクリレートを使用することで、ある程度の剥離性能を実現している。
特許第5000126号公報 WO2012/020673号
ところで、非シリコーン系剥離剤も、シリコーン系のものと同様に、剥離力を自由に調整できることが要求されることがある。例えば、両面粘着テープでは、粘着剤層から2枚の剥離シートを順に剥がすために、一方の剥離シートの剥離力が相対的に低く、他方の剥離シートの剥離力が相対的に高くなるように各剥離シートの剥離力を調整することが要求される。特に、基材レス両面粘着シートでは、軽及び重剥離シートが貼付される粘着剤層が同じであるため、剥離剤層の配合を互いに異なるものとして剥離力を調整する必要がある。
しかし、特許文献1,2に記載の非シリコーン系剥離剤の配合は、剥離力が比較的高くなりやすいため、適切な剥離力に調整することが難しいことがある。
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、剥離力を容易に調整可能であり、例えば、両面粘着シートの剥離シートにも好適に使用可能な剥離剤組成物を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討の結果、剥離剤組成物に、液状ポリマーと、アクリルポリマーとを含有させ、アクリルポリマーを、分岐の長鎖アルキル(メタ)アクリレートと、長鎖アルキルより少ない炭素数を有するアルキル(メタ)アクリレートとを少なくとも共重合させたものとすることで、上記課題が解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。本発明は、以下の[1]〜[13]を提供する。
[1]液状ポリマー(A)と、アクリルポリマー(B)とを含む剥離剤組成物であって、
アクリルポリマー(B)が、以下の式(1)で表される長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)由来の構成単位と、以下の式(2)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(b2)由来の構成単位とを含有する剥離剤組成物。

(式(1)において、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数10〜30の分岐アルキル基である。)

(式(2)において、R11は水素原子又はメチル基、R12は炭素数4〜9の直鎖又は分岐のアルキル基である。)
[2]長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)が、以下の式(1-1)で表される上記[1]に記載の剥離剤組成物。

(式(1-1)において、R1は上記と同じ、R3、R4はそれぞれ独立に直鎖又は分岐の炭素数2〜20のアルキル基である。)
[3]式(1-1)におけるR3、R4が、いずれも直鎖のアルキル基である上記[2]に記載の剥離剤組成物。
[4]アクリルポリマー(B)が、長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)由来の構成単位を10〜99質量%、及びアルキル(メタ)アクリレート(b2)由来の構成単位を0.9〜75質量%の割合で含有する上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の剥離剤組成物。
[5]アクリルポリマー(B)が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を含有する官能基含有モノマー(b3)由来の構成単位をさらに含有する上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の剥離剤組成物。
[6]アクリルポリマー(B)が、官能基含有モノマー(b3)由来の構成単位を0.1〜15質量%の割合で含有する上記[5]に記載の剥離剤組成物。
[7]液状ポリマー(A)が、ゴム系エラストマー及びポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の剥離剤組成物。
[8]液状ポリマー(A)が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基及び酸無水物基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の剥離剤組成物。
[9]液状ポリマー(A)の含有量とアクリルポリマー(B)の含有量の比率が、質量比で、(A)/(B)=1/99〜99/1の範囲である上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の剥離剤組成物。
[10]さらに架橋剤(C)を含む上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の剥離剤組成物。
[11]基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に設けられ、上記[1]〜[10]のいずれか1項に記載の剥離剤組成物の硬化物からなる剥離剤層とを備える剥離シート。
[12]上記[11]に記載の剥離シートと、前記剥離シートの剥離剤層上に設けられた粘着剤層とを備える粘着体。
[13]両面が粘着面である粘着部と、前記粘着部の両面それぞれに貼着される第1及び第2の剥離シートを備え、
前記第1の剥離シートが、第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面上に設けられ、上記[1]〜[10]のいずれか1項に記載の剥離剤組成物の硬化物からなる第1の剥離剤層とを備えるとともに、前記第1の剥離剤層が前記粘着面に接触するように貼着される、両面粘着シート。
本発明によれば、剥離力を容易に調整可能であり、例えば、両面粘着シートの剥離シートにも好適に使用可能な剥離剤組成物を提供する。
粘着シートの一例を示す模式的な断面図である。 両面粘着シートの一例を示す模式的な断面図である。 両面粘着シートの別の一例を示す模式的な断面図である。
以下、本発明について実施形態を用いて詳細に説明する。
なお、以下の記載において、「質量平均分子量(Mw)」及び「数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されるポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
また、本明細書中の記載において、例えば「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
<剥離剤組成物>
本発明の剥離剤組成物は、液状ポリマー(A)と、アクリルポリマー(B)とを含む。剥離剤組成物は、硬化されて剥離剤として使用されるものであるが、通常、基材上に設けられた薄膜状の剥離剤層として使用される。以下、これら(A)、(B)成分について詳細に説明する。
[液状ポリマー(A)]
剥離剤組成物に含有される液状ポリマー(A)は、室温(23℃)で液体となるポリマーである。液状ポリマー(A)としては、ゴム系エラストマー、ポリエステル樹脂から選択される1種又は2種以上を使用することが好ましく、ゴム系エラストマーがより好ましい。剥離剤組成物は、液状ポリマー(A)を含有することで、基材との密着性が高くなり、適切な皮膜を形成することが可能になる。
液状ポリマー(A)は、その数平均分子量(Mn)が500〜30,000であることが好ましい。液状ポリマー(A)は、このように比較的分子量を低くすることで、アクリルポリマー(B)が剥離剤層の表面に偏在しやすくなり、アクリルポリマー(B)により剥離性能を付与しやすくなる。
ここで、液状ポリマー(A)としてゴム系エラストマーを使用する場合、ゴム系エラストマーの数平均分子量(Mn)は、より好ましくは800〜20,000、さらに好ましくは1,000〜12,000である。一方、ポリエステル樹脂を使用する場合、その数平均分子量(Mn)は、より好ましくは500〜10000、さらに好ましくは1000〜5000である。
また、液状ポリマー(A)は、官能基を有することが好ましい。液状ポリマー(A)は、官能基を有することで容易に架橋され、剥離剤組成物を硬化しやすくなる。官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、及び酸無水物基等が挙げられる。これら官能基は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(ゴム系エラストマー)
ゴム系エラストマーとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、ポリクロロプレン、及びこれらの水素添加物、オレフィン系共重合体、並びにポリイソブチレンなどが挙げられる。
ゴム系エラストマーは、上記した中では、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、及びこれらの水素添加物、並びにオレフィン系共重合体から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
また、弾性率が低い硬化物を形成することができることから、ポリブタジエン、ポリイソプレン、及びこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ポリイソプレンの水素添加物、及びポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種がさらに好ましく、ポリブタジエンがよりさらに好ましい。
ポリブタジエンは、1,4−付加によりブタジエンを重合することで直鎖状ポリマーとなるものであるとともに、1,2−付加によりブタジエンを重合することで分岐鎖を有するポリマーとなる。ポリブタジエンは、直鎖状のポリマーであってもよいし、少量の分岐鎖を有するものであってもよい。すなわち、ポリブタジエンは、1,4−付加によりブタジエンを重合した単位からなるものでもよいが、1,4−付加によりブタジエンを重合した単位と、1,2−付加によりブタジエンを重合した単位のいずれも有するものでもよい。
本発明で使用されるポリブタジエンは、全構成単位のうち、1,4−付加によりブタジエンを重合した単位の割合が50%以上であることが好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。
また、スチレン−ブタジエン共重合体、及びスチレン−イソプレン共重合体それぞれは、スチレンと、ブタジエン又はイソプレンの共重合体であるが、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。また、ブロック共重合体である場合には、スチレン−ブタジエン(又は−イソプレン)のジブロック体に限定されず、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体で例示されるトリブロック体等の3つ以上のブロックからなるものであってもよい。
また、オレフィン系共重合体は、少なくとも2種のオレフィンを共重合することでゴム状の性質を有するものであり、具体的には、エチレン・α−オレフィン共重合体が挙げられる。α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の炭素数3〜10のα−オレフィンが好ましく、中でもプロピレンが好ましい。これらα−オレフィンは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、オレフィン系共重合体は、オレフィン以外の単量体からなる繰り返し単位を含有していてもよく、その単量体としては、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン等の非共役ジエン化合物が挙げられる。
オレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が挙げられる。
ゴム系エラストマーは、上記した各種の官能基を有することが好ましいが、上記した官能基の中でも、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも1種の官能基がより好ましく、ヒドロキシ基、カルボキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基がさらに好ましく、ヒドロキシ基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基がよりさらに好ましく、最も好ましくは、ヒドロキシ基である。ゴム系エラストマーがヒドロキシ基を有する場合、その水酸基価は、5〜500mgKOH/gであることが好ましく、10〜300mgKOH/gであることがより好ましい。なお、水酸基価は、JIS K 1557により測定されたものである。
また、ゴム系エラストマーは、より好ましくは末端に官能基を有し、さらに好ましくは両末端に官能基を有する。
すなわち、ゴム系エラストマーとしては、両末端にヒドロキシ基を有する、ポリブタジエン、ポリイソプレン、及びこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましく、両末端にヒドロキシ基を有する、ポリイソプレンの水素添加物、及びポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種がよりさらに好ましく、両末端にヒドロキシ基を有するポリブタジエンが特に好ましい。
ゴム系エラストマーは、以上説明したものを1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(ポリエステル樹脂)
液状ポリマー(A)として使用されるポリエステル樹脂は、特に限定されず、ポリエステル樹脂として知られている公知のものの中から適宜選択して用いることができる。具体的なポリエステル樹脂としては、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応によって得られる樹脂であって、二塩基酸と二価アルコールとの縮合物若しくは不乾性油脂肪酸等の変性剤で変性したものである不転化性ポリエステル樹脂、及び二塩基酸と三価以上のアルコールとの縮合物である転化性ポリエステル樹脂等が挙げられ、本発明においては、これらのうちいずれも使用することができる。
ポリエステル樹脂の原料として用いられる多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニット、ソルビット等の四価以上の多価アルコールが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、多塩基酸としては、例えば無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメット酸等の芳香族多塩基酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族飽和多塩基酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸等の脂肪族不飽和多塩基酸、シクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物、テルペン−無水マレイン酸付加物、ロジン−無水マレイン酸付加物等のディールズ・アルダー反応による多塩基酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、変性剤である不乾性油脂肪酸等としては、例えばオクチル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、リシノレイン酸、脱水リシノレイン酸、あるいはヤシ油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、大豆油、サフラワー油、およびこれらの脂肪酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ポリエステル樹脂としても、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステル樹脂(A)は、上記した官能基を有することが好ましいが、その官能基は水酸基であることがより好ましい。ポリエステル樹脂(A)は水酸基を有する場合、その水酸基価は、5〜500mgKOH/gであることが好ましく、10〜300mgKOH/gであることがより好ましい。
[アクリルポリマー(B)]
アクリルポリマー(B)は、以下の式(1)で表される長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)由来の構成単位と、以下の式(2)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(b2)由来の構成単位とを含有する。

(式(1)において、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数10〜30の分岐アルキル基である。)

(式(2)において、R11は水素原子又はメチル基、R12は炭素数4〜9の直鎖又は分岐のアルキル基である。)
上記した液状ポリマー(A)及びアクリルポリマー(B)を含有する剥離剤組成物を硬化して得られる剥離剤層においては、アクリルポリマー(B)が、剥離剤層表面(例えば、剥離剤層の基材側とは反対側の面)に偏在する。その結果、アクリルポリマー(B)、特に(b1)成分により、剥離剤表面の炭素鎖密度が高くなり、剥離性能が付与される。また、(b1)成分は長鎖でありながらも分岐であるため、結晶化を抑制し、剥離剤層の剥離力を軽くしやすくなる。一方で、(b2)成分は剥離力を高くしやすいため、(b1)及び(b2)成分の割合により容易に剥離剤層の剥離力を制御することが可能になる。
なお、液状ポリマー(A)は、(B)成分と併用されることで、基材側に比較的偏在しやすくなり基材との密着性をより高めやすい。
ここで、式(1)におけるR2が直鎖となったり炭素数が10未満になったりすると、剥離剤層に剥離性を付与しにくくなる。一方で、R2の炭素数が30を超えると、結晶化が抑制されにくくなり剥離力が重くなり過ぎることもある。さらには、アクリルポリマーの有機溶媒への溶解性が低下して、剥離剤組成物塗布時の加工性が低下することもある。
剥離性能をより確保しやすくするためには、R2の炭素数は、14〜24が好ましく、16〜24がより好ましい。
長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)は、より具体的には、以下の式(1-1)で表される化合物であることが好ましい。

(式(1-1)において、R1は上記と同じ、R3、R4はそれぞれ独立に直鎖又は分岐の炭素数2〜20のアルキル基である。)
(b1)成分は、式(1-1)のように、比較的炭素数の大きい2本の炭素鎖(R3、R4)を有することで、剥離力をより軽くしやすくなり剥離力の調整がより容易になる。
また、式(1-1)において、R3、R4それぞれは、直鎖のアルキル基、又は直鎖に近い構造を有するアルキル基であることが好ましく、中でも、いずれもが直鎖のアルキル基であることがより好ましい。なお、直鎖に近い構造を有するアルキル基とは、例えば、直鎖の炭化水素鎖に1つの分岐メチル基を設けた構造が挙げられる。
さらに、式(1-1)の化合物においてR3、R4は、いずれもある程度の長さを有していたほうがよく、その炭素数は、3〜18が好ましく、4〜16がより好ましく、6〜12が特に好ましい。なお、式(1-1)において、R3、R4の炭素数合計は8〜28である。
また、剥離性能を確保するためには、R3、R4のいずれもが炭素数6〜12であることが好ましく、剥離力を軽くする効果を大きくして剥離力を調整しやすくするためには、R3、R4のいずれもが炭素数10〜12であることがより好ましい。
長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)の好適な化合物としては、2−デシルテトラデカニル(メタ)アクリレート、2−ヘキシルデシル(メタ)アクリレートが挙げられ、中でも2−デシルテトラデカニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
アクリルポリマー(B)における(b2)成分は、上記式(2)で示される化合物であるが、R12が炭素数3未満となったり、9より大きくなったりすると、剥離剤層に剥離性能を付与するのが難しくなったり、(b2)成分により剥離力を調整することが難しくなったりする。剥離性能をより良好にする観点からは、R12の炭素数は6〜9が好ましく、8がより好ましい。
(b2)成分の具体例としては、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらの中では、入手容易性等の観点からは、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、剥離性能をより優れたものとするためには2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。
アクリルポリマー(B)は、官能基を有することが好ましい。アクリルポリマー(B)は、官能基を有することで容易に架橋され、剥離剤組成物を硬化させやすくする。また、アクリルポリマー(B)が架橋されると、剥離剤の皮膜性、耐久性等が向上し、剥離力を軽くしやすくなる。さらに、本発明では、(A)及び(B)成分のいずれもが官能基を有することで、剥離剤において高密度な架橋構造を形成することが可能になる。
アクリルポリマー(B)が有する官能基としては、後述する架橋剤(C)と反応することが可能な官能基が使用される。具体的な官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、及びアミノ基が挙げられ、これらの中ではヒドロキシ基が好ましい。これら官能基は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アクリルポリマー(B)は、官能基含有モノマー(b3)由来の構成単位を有することで、官能基をアクリルポリマー(B)の分子中に導入する。
官能基含有モノマー(b3)は、上記(b1)成分及び(b2)成分と共重合できるように、官能基に加え、(メタ)アクリロイル基等によりエチレン性二重結合を有する。
具体的な官能基含有モノマー(b3)としては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート;1,4−ジ(メタ)アクリロキシエチルピロメリット酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸等のカルボキシ基含有(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸;アミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中では、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
アクリルポリマー(B)は、長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)由来の構成単位を10〜99質量%、及びアルキル(メタ)アクリレート(b2)由来の構成単位を0.9〜75質量%の割合で含有することが好ましい。アクリルポリマー(B)は、(b1)成分及び(b2)成分由来の構成単位を上記の割合で含有することで、剥離性能を良好にしつつ、剥離力をより簡単に制御しやすくなる。
また、アクリルポリマー(B)は、官能基含有モノマー(b3)由来の構成単位を0.1〜15質量%の割合で含有することが好ましい。(b3)成分の含有量を0.1質量%以上とすると、後述する架橋剤(C)等によって適切に架橋され、剥離剤層の皮膜性等を良好にし、剥離性能を良好にしやすくなる。また、15質量%以下とすることで、適切な量の(b1)及び(b2)成分由来の構成単位をアクリルポリマー(B)に含有させることが可能になる。
上記観点から、アクリルポリマー(B)は、(b1)成分由来の構成単位を25〜85質量%、及び(b2)成分由来の構成単位を5〜74.5質量%の割合で含有することがより好ましく、この場合、アクリルポリマー(B)は、さらに(b3)成分由来の構成単位も0.5〜10質量%の割合で含有することが好ましい。
さらにアクリルポリマー(B)は、(b1)成分由来の構成単位を40〜70質量%、及び(b2)成分由来の構成単位を25〜59質量%の割合で含有することがさらに好ましく、この場合、アクリルポリマー(B)は、(b3)由来の構成単位も1〜5質量%の割合で含有することが好ましい。
本発明においては、アクリルポリマー(B)は、上記(b1)及び(b2)、又は(b1)〜(b3)を共重合してなるものでもよいが、これら(b1)及び(b2)又は(b1)〜(b3)に加えて、その他モノマー成分を含むモノマーを共重合体したものであってもよい。
そのようなモノマー成分としては、上記(b1)〜(b3)成分以外のビニル基含有モノマーが挙げられ、具体的には、アルキル(メタ)アクリレート(例えば、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート等)が例示される。
その他モノマー成分由来の構成単位は、本発明の目的を逸脱しない範囲内で、アクリルポリマー(B)に含有されればよいが、通常、アクリルポリマー(B)中の15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
アクリルポリマー(B)は、質量平均分子量(Mw)が50,000〜500,000であることが好ましい。質量平均分子量をこの範囲内とすることで、アクリルポリマー(B)を剥離剤層の表面へ偏在させやすくなり、剥離剤層の剥離性能を良好にしやすくなる。また、アクリルポリマー(B)の質量平均分子量は、70,000〜300,000であることがより好ましく、100,000〜250,000がさらに好ましい。
アクリルポリマー(B)は、以上説明したものを1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、(b1)〜(b3)成分それぞれも1種単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
剥離剤組成物において、液状ポリマー(A)とアクリルポリマー(B)の含有量の比率は、質量比で、(A)/(B)=1/99〜99/1の範囲にあることが好ましい。この範囲内とすることで、剥離剤組成物に(A)成分及び(B)成分の2成分を配合した効果を得やすくなる。
また、上記(A)/(B)は、30/70〜95/5であることがより好ましく、50/50〜90/10であることがさらに好ましい。質量比をこれら下限値以上とすることで剥離剤組成物中に(A)成分が適度な量で含有され、剥離剤と基材等との密着性が高めやすくなる。さらに、これら上限値以下とすることで(B)成分が適度な量で剥離剤組成物中に含有され、剥離力が必要以上に重くなったりすることを防止する。
[架橋剤(C)]
本発明の剥離剤組成物は、架橋剤(C)を含有することが好ましい。剥離剤組成物は、架橋剤(C)を含有することで容易に架橋構造を形成し、剥離剤組成物を硬化させやくなる。架橋剤(C)としては、液状ポリマー(A)及びアクリルポリマー(B)が有する官能基に反応可能な化合物を使用する。
具体的な架橋剤(C)は、液状ポリマー(A)及びアクリルポリマー(B)が有する官能基の種類によって異なるが、例えば、メラミン系化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、ヒドラジド系化合物、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物、尿素系化合物、ジアルデヒド系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド化合物、金属塩が挙げられる。
また、架橋剤(C)としては、(A)成分及び(B)成分の一方又は両方が官能基としてヒドロキシ基を有する場合、メラミン系化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、ヒドラジド系化合物、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物、尿素系化合物、ジアルデヒド系化合物、及び金属キレートから選ばれる少なくとも1種が好ましく、より好ましくはメラミン系化合物、イソシアネート系化合物及びエポキシ系化合物より選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましくはメラミン系化合物及びイソシアネート系化合物より選ばれる少なくとも1種であり、特に好ましくはメラミン系化合物である。メラミン系化合物は、架橋速度が速く、さらには、高い架橋密度で架橋構造を形成できる。
架橋剤(C)として使用されるメラミン系化合物としては、メチロール化メラミン樹脂、イミノメチロール化メラミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、エチル化メラミン樹脂、プロピル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、ヘキシル化メラミン樹脂、オクチル化メラミン樹脂等が挙げられ、アルキル基の炭素数が3以下のアルキル化メラミン樹脂が好ましく、メチル化メラミン樹脂が特に好ましい。
また、イソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリメチロールプロパンアダクトTDI、トリメチロールプロパンアダクトHDI、トリメチロールプロパンアダクトIPDI、トリメチロールプロパンアダクトXDIなどが挙げられる。
剥離剤組成物における架橋剤(C)の含有量は、液状ポリマー(A)とアクリルポリマー(B)の含有量の合計を100質量部としたとき、1〜30質量部であることが好ましく、2〜15質量部であることがより好ましい。架橋剤(C)の含有量をこれら範囲内とすることで、剥離剤組成物を効率よく硬化させることが可能になる。
架橋剤(C)は、以上説明したものを1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
[光開始剤(D)]
剥離剤組成物は、液状ポリマー(A)及びアクリルポリマー(B)が有する官能基の少なくともいずれかが、活性エネルギー線を照射することで反応可能である場合には、光開始剤(D)を含有することが好ましい。例えば、液状ポリマー(A)が官能基として(メタ)アクリロイル基を有する場合には、剥離剤組成物は光開始剤(D)を含有することが好ましい。
光開始剤(D)は、液状ポリマー(A)及びアクリルポリマー(B)の種類によっては、架橋剤(C)と併用してもよいし、単独で使用してもよい。
光開始剤(D)としては、ベンゾフェノン系光開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。光開始剤(D)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の剥離剤組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記(A)〜(D)成分以外の成分(E)、例えば、帯電防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、滑剤、難燃剤、着色剤、耐光安定剤、耐熱安定剤などの添加剤を含有していてもよい。また、塩酸、p−トルエンスルホン酸などの公知の酸性触媒を含有してもよい。
剥離剤組成物は、上記(A)〜(C)以外の成分を含有する場合、上記(A)〜(C)成分以外の成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の含有量の合計を100質量部としたとき、通常30質量部以下、好ましくは0.1〜15質量部である。
また、本発明の剥離剤組成物は、電子部品に対して悪影響を及ぼさないために、シリコーン系化合物を含有しないか、または含有しても少量であることが好ましい。そして、剥離剤組成物を剥離剤層としたとき、剥離剤層におけるSi元素の割合が後述する範囲内になることが好ましい。
<剥離シート>
本発明の剥離シートは、基材と、基材の一方の面上に設けられ、上記剥離剤組成物の硬化物からなる剥離剤層とを備える。剥離シートは、基材の一方の面のみに剥離剤層を設けてもよいが、両面に剥離剤層を設けてもよい。両面に剥離剤層を設ける場合、いずれの剥離剤層も上記剥離剤組成物の硬化物からなるものでもよいが、一方の剥離剤層が上記剥離剤組成物の硬化物からなるとともに、他方の剥離剤層が上記剥離剤組成物以外の剥離剤から形成されてもよい。
また、剥離剤層は、基材の表面に直接形成してもよいが、プライマー層等の他の層を介して形成してもよい。
なお、以下の説明では、上記剥離剤組成物を、“本発明の剥離剤組成物”、上記剥離剤組成物の硬化物からなる剥離剤層を“本発明の剥離剤層”、その剥離剤層を有する剥離シートを“本発明の剥離シート”ということがある。
[基材]
本発明の剥離シートの基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリノルボルネン等の樹脂からなる樹脂フィルム;アルミニウム、ステンレス等の金属ならなる金属箔;グラシン紙、上質紙、コート紙、含浸紙、合成紙、これら紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等の紙基材;不織布等の布基材が挙げられる。これらの中では、樹脂フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムが、耐熱性や強度、剥離剤層との密着性等の観点から特に好ましい。
また、剥離シートにおける基材の厚さは、各種用途や基材の種類などに応じて異なるが、5〜300μmであることが好ましく、10〜200μmがより好ましい。
[剥離剤層]
本発明の剥離剤層は、上記したように、(A)及び(B)成分を剥離剤組成物の主剤として構成することで、シリコーン化合物の含有量が少なくなり、又はシリコーン化合物を含有しないものである。
剥離剤層表面のSi元素の比率は、0.5原子%未満であることが好ましく、0.1原子%未満であることがより好ましい。
Si元素の比率をこのように低くすることで、電子部品用途に使用しても、電子部品にシリコーン化合物が移行せず、シリコーン化合物による悪影響を防止することができる。
なお、Si元素の比率は、XPS表面元素分析によって測定されるものである。
本発明の剥離剤層の厚さは、50〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは70〜500nm、さらに好ましくは100〜300nmである。剥離剤層の厚さをこれら下限値以上とすることで、剥離シートから粘着シート等を剥がす際に、十分な剥離性能が得られやすくなる。また、剥離剤層の厚さをこれら上限値以下とすることで、剥離シートをロール状に巻き取ったとき、剥離剤層が、剥離シート背面とブロッキングすることが防止され、ブロッキングによる剥離性能の低下が防止される。
本発明の剥離剤層は、例えば、本発明の剥離剤組成物を基材上に塗布し、その塗布膜を硬化して基材上に形成する。ここで、剥離剤層の硬化は、加熱により行ってもよいし、(A)成分又は(B)成分が有する官能基が活性エネルギー線で反応する場合には、活性エネルギー線の照射により硬化してもよいし、加熱と活性エネルギー線照射とを併用してもよい。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が使用されるが、紫外線が好ましい。
また、剥離剤組成物は、有機溶剤等により希釈し、その剥離剤組成物の希釈液を基材上に塗布することが好ましい。剥離剤組成物を希釈するために使用される有機溶剤は、特に制限されず、例えば、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソブタノール、n−ブタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。また、剥離剤組成物は、有機溶剤により希釈して塗布される場合には、塗布された後、加熱されることで乾燥されることが好ましい。剥離剤組成物は、乾燥時の加熱により硬化されてもよいし、乾燥時の加熱とは別の手段により硬化されてもよい。
剥離剤組成物の塗布は、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ロールナイフコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等により行われる。
<粘着体>
本発明の粘着体は、上記した本発明の剥離シートと、その剥離シートの剥離剤層の上に設けられた粘着剤層とを備える。粘着体における粘着剤層は、剥離剤層に接触するように設けられる。粘着体は、剥離シートを粘着剤層から剥がして、粘着剤層を被着体に接着して使用するものである。
粘着剤層は、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤等の非シリコーン系粘着剤により構成されることが好ましいが、これらの中ではアクリル系粘着剤がより好ましい。
非シリコーン系粘着剤により構成される粘着剤層は、シリコーン化合物を含有せず、又は含有していても少量であり、具体的には、粘着剤層においてシリコーン化合物の量が好ましくは500μg/m2以下、より好ましくは100μg/m2以下となる。
本発明では、非シリコーン系粘着剤を使用することで、剥離剤層が非シリコーン系剥離剤からなることと相俟って、電子部品へのシリコーン化合物の付着を防止する。
粘着剤層の厚さは、その用途によっても異なるが、通常2〜250μm、好ましくは10〜100μmである。
本発明の剥離シートは、粘着体において、粘着剤層に対する剥離力が、低くなるが、具体的には、500mN/20mm以下が好ましく、350mN/20mm以下がより好ましい。
また、上記剥離力は、その下限値が特に限定されないが、剥離シートが粘着剤層から不意に剥がれたりすることを防止して保護性能を高めるために、30mN/20mm以上が好ましく、50mN/20mm以上がより好ましい。
なお、本発明の剥離シートの剥離力は、JIS Z0237に準拠して、剥離角度180°、剥離速度0.3m/minにて測定したものである。
[粘着シート]
粘着体としては、特に限定されないが、図1に示すように、粘着シート基材11と、この粘着シート基材11の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層12とを備え、その粘着剤層12に上記本発明の剥離シート13が貼着された粘着シート10が挙げられる。剥離シート13は、上記したように、基材13Aと、基材13Aの少なくとも一方の面に設けられる剥離剤層13Bとを備え、剥離剤層13Bが設けられた側の面が粘着剤層12に貼着される。
粘着シート10は、粘着シート基材11の一方の面のみに粘着剤層12が設けられた片面粘着シートである。粘着シート10は、剥離シート13を粘着剤層12から剥がした後、粘着剤層12と粘着シート基材11の積層体を、粘着剤層12によって被着体に貼付して使用する。
粘着シート基材11は、樹脂フィルム、金属箔、紙基材、布基材等が挙げられる。これら樹脂フィルム等の材料は、特に限定されないが、上記した剥離シートの基材で列挙したものから適宜選択して使用できる。
粘着シート基材11の厚さは、特に制限はないが、通常、5〜500μmの範囲であるが、取り扱い易さの面から、好ましくは10〜300μmである。
粘着剤層12は、粘着シート基材の表面に直接形成してもよいが、プライマー層等の他の層を介して形成してもよい。
(粘着シートの製造方法)
粘着シートの製造方法としては、特に制限はないが、例えば、粘着剤組成物に有機溶媒を加えて粘着剤組成物の溶液を調製する。そして、剥離シートの剥離剤層が設けられた面上に、粘着剤組成物の溶液を公知の方法で塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を加熱、乾燥して、粘着剤層を形成し、その粘着剤層を粘着シート基材に貼り合わせることで製造することができる。
また、粘着剤組成物の溶液を、粘着シート基材の一方の面に直接塗布した後、加熱、乾燥して粘着剤層を形成し、次いで、粘着剤層の上にさらに剥離シートを貼り合わせて製造してもよい。
ここで使用される有機溶媒としては、特に限定されないが、剥離剤組成物の希釈液として列挙した上記各有機溶媒を使用可能である。
[両面粘着シート]
また、粘着体の具体例として、両面粘着シートが挙げられる。図2に示すように、両面粘着シート20は、両面21A、21Bが粘着面である粘着部21と、粘着部21の両面(粘着面)21A、21Bそれぞれに貼着される第1及び第2の剥離シート22、23を備える。第1の剥離シート22は、第1の基材22Aと、第1の基材22Aの少なくとも一方の面上に設けられる第1の剥離剤層22Bとを備えるとともに、第1の剥離剤層22Bが粘着面21Aに接触するように貼着される。
また、第2の剥離シート23は、第2の基材23Aと、第2の基材23Aの少なくとも一方の面上に設けられる第2の剥離剤層23Bとを備えるとともに、第1の剥離剤層23Bが粘着面21Bに接触するように貼着される。
両面粘着シート20では、第1の剥離剤層22Bが上記した本発明の剥離剤組成物(以下、“第1の剥離剤組成物”ということもある)の硬化物からなる。一方で、第2の剥離剤層23Bは、上記した本発明の剥離剤組成物の硬化物からなるものでもよいし、その他の剥離剤層組成物からなるものでもよい。
すなわち、第1の剥離剤組成物は、上記(A)成分及び(B)成分とを含み、(B)成分が、上記式(1)で表される(b1)成分由来の構成単位と、上記式(2)で表される(b2)成分由来の構成単位とを含有するものである。このような第1の剥離剤組成物は、上記のように剥離力の制御が容易であるため、第2の剥離シート23との剥離力差を一定の大きさ以上とすることが容易になる。したがって、粘着部21から軽剥離シートを剥がすときに、粘着部21(粘着剤層)が破壊されるいわゆる泣き別れが生じにくくなる。
図2に示す両面粘着シート20は、基材レス粘着シートと呼ばれるものであり、粘着部21が基材を有さずに、粘着剤層単体からなるものである。両面粘着シート20が基材レス粘着シートである場合には、第1及び第2の剥離シート22,23は、同一の粘着剤層に貼着される。したがって、第1及び第2の剥離シート22,23は、剥離剤層により剥離力を制御する必要があるが、本発明では、上記したように、剥離剤層の剥離力の制御が容易であるため、基材レス粘着シートであっても、上記した泣き別れ等の不具合が生じにくくなる。
ただし、両面粘着シートは、基材レス両面粘着シートではなくてもよく、図3に示すように粘着部21が基材21Cを有する両面粘着シート30であってもよい。すなわち、粘着部21が基材21Cとその両面それぞれに設けられた粘着剤層21D,21Eとを備え、第1及び第2の剥離シート22、23それぞれが、粘着剤層21D,21Eにより構成される粘着面21A,21Bに貼着されていてもよい。
なお、両面粘着シート20、30の各粘着剤層の構成は、上記した粘着体の粘着剤層で説明したとおりであるので、その説明は省略する。また、両面粘着シート20、30において、第1及び第2の剥離シート22、23の構成は、剥離剤層22B,23Bを構成する剥離剤組成物が本発明の剥離剤組成物である場合には、上記で述べた本発明の剥離シートと同様である。また、第2の剥離シート23は、第2の剥離剤層23Bが、本発明の剥離剤組成物以外の剥離剤層組成物の硬化物からなる場合も、その剥離剤の組成以外は、上記した本発明の剥離シートと同様である。
また、両面粘着シート30の基材21Cは、樹脂フィルム、金属箔、紙基材、布基材等が使用できる。これら樹脂フィルム等の材料は、特に限定されないが、上記した剥離シートの基材で列挙したものから適宜選択して使用できる。
両面粘着シート20、30においては、第1及び第2の剥離シート22、23は、一方の剥離シートが他方の剥離シートより剥離力が高い重剥離シートとなり、他方の剥離シートが軽剥離シートとなる。
第1の剥離剤組成物は、アクリルポリマー(B)のモノマー成分として、(b1)成分に加えて、(b2)成分を含有するため、比較的剥離力を高くしやすい。そのため、第1の剥離剤組成物で形成された第1の剥離剤層22Bを有する第1の剥離シート22が、重剥離シートであることが好ましい。
両面粘着シート20、30において、好ましい実施形態としては、第1の剥離シート22の第1の剥離剤層22Bが上記第1の剥離剤組成物(すなわち、本発明の剥離剤組成物)の硬化物からなるとともに、第2の剥離シート23の第2の剥離剤層23Bが、以下の第2の剥離剤組成物の硬化物からなるものが挙げられる。なお、この場合にも、上記のように、第1の剥離シート22が重剥離シートとなり、第2の剥離シート23が軽剥離シートとなることが好ましい。
第2の剥離剤組成物は、上述の本発明の剥離剤組成物と同様に、液状ポリマーと、アクリルポリマーとを含有するものであり、液状ポリマーは、上記した液状ポリマー(A)と同様である。
一方で、第2の剥離剤組成物におけるアクリルポリマーは、上記式(1)で表される長鎖アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位を含有するものであるが、上記したアクリルポリマー(B)と同様の構成を有してもよいし、同様の構成を有さなくてもよい。すなわち、第2の剥離剤組成物のアクリルポリマーは、上記式(1)で表される長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)由来の構成単位に加えて、上記式(2)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(b2)由来の構成単位を有していてもよいし、有さなくてもよい。
アクリルポリマー(B)が長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)由来の構成単位を有することで、上記したように剥離剤層の剥離性能を良好にできるが、上記式(2)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(b2)由来の構成単位を有しない場合には、剥離剤層の剥離力が低くなりやすい。そのため、第2の剥離シート23の剥離力を、第1の剥離シート22よりも低くしやすくなる。
第2の剥離剤組成物が、上記式(2)で表されるアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位を有しない場合、長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)由来の構成単位は、アクリルポリマーにおいて、60〜99.9質量%以上の割合で含有することが好ましく、その含有割合は、80〜99.5質量%がより好ましく、95〜99質量%がさらに好ましい。このような含有割合とすることで、剥離力をより低くしやすくなる。
また、アクリルポリマーは、官能基モノマー(b3)由来の構成単位を0.1〜20質量%の割合で含有することが好ましく、この含有割合は、0.5〜8質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。第2の剥離剤組成物のその他の構成は、上記した本発明の剥離剤組成物の各構成と同じであるから、その他の構成の説明は省略する。
一方で、第2の剥離剤組成物のアクリルポリマー(B)が、上記の長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)由来の構成単位に加えて、上記式(2)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(b2)由来の構成単位を有する場合(すなわち、第1及び第2の剥離剤組成物がいずれも本発明の剥離剤組成物である場合)、第2の剥離剤組成物の構成の詳細は、上記で説明したとおりであるので、その説明は省略する。
ここで、両面粘着シートにおいて、第1及び第2の剥離剤組成物の組成それぞれは、上記で説明した構成から適宜選択して、第1及び第2の剥離剤組成物の組成を互いに異なるものとすることで、第2の剥離シートの剥離力を、第1の剥離シートの剥離力よりも低くするものである。その具体的な方法としては、例えば、以下の(I)〜(III)が挙げられる。これら(I)〜(III)は、1つを選択してもよいし、2つ以上を選択してもよい。
(I)第1の剥離剤組成物における長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)のアルキル基(すなわち、式(1)のR2)の炭素数を、第2の剥離剤組成物における長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)のアルキル基の炭素数よりも小さくする。例えば、第1の剥離剤組成物の(b1)成分として2−ヘキシルデシル(メタ)アクリレートを使用し、第2の剥離剤組成物の(b1)成分として2−デシルテトラデカニル(メタ)アクリレートを使用する。
(II)第1の剥離剤組成物における(b2)成分のアルキル基(すなわち、式(2)のR12)の炭素数を、第2の剥離剤組成物における(b2)成分のアルキル基の炭素数よりも小さくする。例えば、第1の剥離剤組成物の(b2)成分としてn−ブチル(メタ)アクリレートを使用し、第2の剥離剤組成物の(b2)成分として2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートを使用する。
(III)第1の剥離剤組成物のアクリルポリマー(B)における(b1)成分由来の構成単位の質量%を、第2の剥離剤組成物のアクリルポリマー(B)における(b1)成分由来の構成単位の質量%よりも少なくする。
一方で、第1の剥離剤組成物のアクリルポリマー(B)における(b2)成分由来の構成単位の質量%を、第2の剥離剤組成物のアクリルポリマー(B)における(b2)成分由来の構成単位の質量%よりも多くする。或いは、第1の剥離剤組成物のアクリルポリマーに(b2)成分由来の構成単位を含有させる一方で、第2の剥離剤組成物のアクリルポリマーに(b2)成分由来の構成単位を含有させない。
本発明では、以上で説明するように、アクリルポリマーの一部を互いに変更するのみで、第1及び第2の剥離シート22、23の剥離力を調整可能である。すなわち、第1及び第2の剥離剤層22B,23Bは、アクリルポリマー以外を同じにして組成を類似にしつつ、互いの剥離力を異なるものにすることができる。
両面粘着シート20、30においては、第1及び第2の剥離シート22、23の剥離力が互いに異なるものであればよいが、その剥離力差は、50mN/20mm以上であることが好ましく、80mN/20mm以上であることがより好ましく、100mN/20mm以上であることがさらに好ましい。両面粘着シート20では、このように剥離力差を大きくすることで軽剥離シートを粘着部から剥がすときに生じる泣き別れ等が発生しにくくなる。
また、剥離力差は、重剥離シートの剥離力が必要以上に大きくなることを防止するために、400mN/20mm以下が好ましく、300mN/20mm以下がより好ましく、250mN/20mm以下がさらに好ましい。
また、両面粘着シート20、30において、軽剥離シート(例えば、第2の剥離シート23)の剥離力は、30〜350mN/20mmが好ましい。このような剥離力の範囲とすることで、軽剥離シートが不意に剥がれたりすることを防止しつつ、重剥離シートとの剥離力差を十分に大きくすることが可能になる。軽剥離シートの剥離力は、より好ましくは40〜300mN/20mm、さらに好ましくは50〜250mN/20mmである。
また、重剥離シート(例えば、第1の剥離シート22)の剥離力は、80〜500mN/20mmが好ましい。このような剥離力の範囲とすることで、重剥離シートを剥がすときに剥離不良が生じることが防止できる。また、軽剥離シートとの剥離力差を十分に大きくすることが可能になる。重剥離シートの剥離力は、より好ましくは100〜450mN/20mm、さらに好ましくは150〜400mN/20mmである。
なお、両面粘着シートにおける剥離力は、JIS Z0237に準拠して、剥離角度180°、剥離速度0.3m/minにて測定したものである。
両面粘着シートの製造方法は、特に限定されないが、基材レス粘着シートの場合、例えば、2つの剥離シートのうち、いずれかの剥離シートの剥離剤層面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層に残りの剥離シートを貼り合わせることで形成可能である。
また、粘着部が基材を有する両面粘着シートの場合、第1及び第2の剥離シートの第1及び第2の剥離剤層それぞれの上に粘着剤層を形成し、これら粘着剤層を粘着シート基材(芯材)の両面それぞれに貼り合わせることで製造可能である。
両面粘着シートの製造方法においても剥離シートの上に粘着剤層を形成する方法は、上記したとおりである。
本発明の剥離剤組成物、剥離シート、及び粘着体(両面粘着シート、粘着シート等)は、特に限定されないが、例えば、リレー、各種スイッチ、コネクタ、モータ、ハードディスク、電子回路、実装パッド等の電子部品用途で使用される。
例えばこれら電子部品の製造工程において、電子部品の組立て時の仮止めや部品の内容表示等の粘着体用の剥離シートとして好適に用いることができる。また、電子回路、実装パッド等の一部を形成するための粘着体用の剥離シートとして好適に使用することができる
本発明では、剥離剤組成物の主剤である(A)及び(B)成分が非シリコーン系の化合物であるため、剥離剤組成物を非シリコーン系とすることが可能である。そのため、シリコーン化合物が電子部品に移行することが防止され、シリコーン化合物に起因して電子部品に不具合が生じることが防止できる。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。
本発明における具体的な測定方法、評価方法は以下のとおりである。
[質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名:HLC−8020)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL−H」「TSK gel GMHXL(×2)」「TSK gel G2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
[XPS表面元素分析]
表面のXPS測定は、PHI Quantera SXM(アルバック・ファイ社製)を使用した。X線源に単色化Al Kαを用い光電子取り出し角度45°にて測定を行い、表面に存在するケイ素元素(Si)の元素比率を算出した。
[剥離力の測定]
粘着シートを幅20mm、長さ200mmに裁断し、基材(PETフィルム)側を両面テープで固定して、引張試験機(エーアンドデイ株式会社製、製品名「テンシロン万能材料試験機」)を用いて、JIS Z0237に準拠し、粘着剤層から剥離シートを剥離角度180°、剥離速度0.3m/minにて剥離した際の剥離力を測定した。
(剥離性の評価)
粘着シート(片面粘着シート)については、剥離シートを粘着剤層から剥離したときの剥離性を評価した。剥離シートを問題なく剥離できたものを“A”とした。また、剥離シートを剥離するときに剥離力が高すぎて剥がれなかったり、剥離力が低すぎて剥離シートを剥離する前に剥離シートにめくれや剥がれが生じたものを“F”とした。
両面粘着シートについては、軽剥離シート、及び重剥離シートを粘着剤層から順に剥離したときの剥離性を評価した。軽剥離シート及び重剥離シートがともに問題なく剥離できたものを“A”と評価した。また、軽剥離シート又は重剥離シートを剥離するときに剥離不良が生じたもの、具体的には、軽剥離シートを剥離する前に剥離シートにめくれや剥がれが生じたり、重剥離シートを剥離するときに剥離力が高すぎて剥がれなかったり、また軽剥離シートを剥離するときにいわゆる泣き別れが生じたりしたものを“F”とした。
[実施例1]
ヒドロキシ基両末端液状ポリブタジエン(商品名「POLY BD R−45HT」、出光興産株式会社製、数平均分子量(Mn):4,400、水酸基価:46.6mgKOH/g、1,4付加単位重合割合80.8%)のトルエン溶液(固形分濃度:35質量%)100質量部(固形分換算:35質量部)と、2−デシルテトラデカニルアクリレート(DTDA)と2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)と2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)とを質量比(DTDA/2EHA/HEA)60/39/1で共重合したアクリル酸エステル共重合体(アクリルポリマー(B))のトルエン溶液(固形分30質量%)50質量部(固形分換算:15質量部)と、メラミン系化合物(商品名「TF200」、寿化工株式会社製、メチル化メラミン樹脂、固形分濃度:80質量%)5質量部(固形分換算:4質量部)を混合溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=70:30(質量比))中に溶解させた後、触媒としてp−トルエンスルホン酸のメタノール溶液(p−トルエンスルホン酸50質量%含有)を2質量部添加し攪拌して、固形分2.5質量%の剥離剤組成物Aの溶液を得た。
得られた剥離剤組成物Aの溶液を、基材としてのPETフィルム(商品名「ダイアホイルT100」、三菱樹脂株式会社、厚さ:50μm)上に、マイヤーバーを用いて乾燥後の厚さが150nmとなるように塗布した後、150℃で60秒間乾燥させ硬化させることにより剥離剤層を形成し、23℃、50%RHの環境下で1週間、エージングして、基材及び剥離剤層からなる剥離シートを得た。
(粘着シートの作製)
アクリル系粘着剤(トーヨーケム株式会社製、製品名「オリバイン BPS−5127」)100質量部に、イソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製、製品名「コロネートL」)0.4質量部を添加し、トルエンで希釈して固形分30質量%のアクリル系粘着剤溶液を作成した。
そのアクリル系粘着剤の溶液を上記剥離シートの剥離剤層が設けられた面上に、アプリケーターを用いて塗工し、100℃で120秒間加熱して乾燥させ、厚さ25μmの粘着剤層を形成した。これに厚さ50μmのPETフィルム(商品名「ダイアホイルT100」、三菱樹脂株式会社)を貼り合わせ、23℃、50%RHの環境下で1週間シーズニングを行って粘着シート(片面粘着シート)とした。
得られた剥離シート、及び粘着シートについて、上記評価方法に従って評価した。その結果を表1に示す。
[実施例2〜6、比較例1〜3]
剥離剤組成物Aの代わりに、表1に記載の剥離剤組成物B〜Jを使用した以外は、実施例1と同様に実施した。
なお、表1に示す各成分は以下のとおりである。
(液状ポリマー(A))
R−45HT:ヒドロキシ基両末端液状ポリブタジエン(商品名「POLY BD R−45HT」、出光興産株式会社製)
(アクリルポリマー(B))
DTDA:2−デシルテトラデカニルアクリレート(側鎖炭素数:24、分岐)
2HDA:2−ヘキシルデシルアクリレート(側鎖炭素数:16、分岐)
StA:ステアリルアクリレート(側鎖炭素数:18、直鎖)
LA:ラウリルアクリレート(側鎖炭素数:12、直鎖)
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
(架橋剤(C))
TF200:メチル化メラミン樹脂(商品名「TF200」、寿化工株式会社製)
以上の実施例1〜6から明らかなように、アクリルポリマー(B)が、(b1)及び(b2)成分由来の構成単位を有すると、(b1)及び(b2)成分の質量%を適宜変更することで、剥離シートの剥離力を適切な範囲内で調整することができた。さらに、実施例1〜6の剥離シートは、剥離剤の主剤に非シリコーン系の化合物を使用したため、剥離剤層に実質的にSi元素が含有されず、電子部品用途に好適に使用できる。
それに対して、比較例1〜3では、(b1)成分の代わりに、アルキル基が直鎖の長鎖アルキル(メタ)アクリレートを使用したため、剥離力が高くなりすぎ、剥離力を適切な範囲内に調整することが難しかった。
[実施例7]
(両面粘着シートの作製)
上記実施例4で作製した剥離シートを重剥離シート(第1の剥離シート)、実施例1で作成した剥離シートを軽剥離シートとして基材レス両面粘着シートを作成した。
具体的には、実施例1と同様のアクリル系粘着剤溶液を重剥離シートの剥離剤層が設けられた面上にアプリケーターを用いて塗布し、100℃、120秒間加熱して乾燥させ、厚さ25μmの粘着剤層を形成した。これに軽剥離シートの剥離剤層が設けられた面側を貼り合わせて、23℃、50%RHの環境下で1週間シーズニングを行って基材レス両面粘着シートとした。
なお、基材レス両面粘着シートの各軽剥離シート、及び重剥離シートの剥離力は、それぞれの剥離シート及び粘着剤を使用して両面粘着シートと同様の粘着剤層厚みとなるように、上記実施例1の方法に倣って粘着シート(剥離力測定用片面粘着シート)を作製して、その粘着シートにおいて測定したものである。
[実施例8〜10、参考例1,2]
軽剥離シート、重剥離シートに使用する剥離剤組成物を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に実施した。なお、以下の実施例、比較例で使用した各剥離剤組成物A〜F、H、Iは、上記実施例1〜6、比較例2、3で使用した剥離剤組成物と同様のものである。
以上の実施例7〜10では、重剥離シート及び軽剥離シートの両方に、(b1)及び(b2)成分由来の構成単位を有するアクリルポリマー(B)を使用することで、重剥離シート及び軽剥離シートの剥離力を剥離力差が大きくなるように適切に調整できた。そのため、剥離性が良好な両面粘着シートを得ることができた。また、剥離剤層が実質的にSi元素が含有しないため、実施例7〜10で得られた両面粘着シートは電子部品用途に好適に使用できる。
それに対して、参考1、2では、重剥離シートに、(b1)成分の代わりにアルキル基が直鎖の長鎖アルキル(メタ)アクリレートを使用したため、重剥離シートの剥離力が高くなりすぎて、剥離性を良好にすることができなかった。
10 粘着シート(片面粘着シート)
11 粘着シート基材
12 粘着剤層
13 剥離シート
13A 基材
13B 剥離剤層
20、30 両面粘着シート
21 粘着部
21A,21B 粘着面
21C 基材
21D,21E 粘着剤層
22 第1の剥離シート
22A 第1の基材
22B 第1の剥離剤層
23 第2の剥離シート
23A 第2の基材
23B 第2の剥離剤層

Claims (13)

  1. 液状ポリマー(A)と、アクリルポリマー(B)とを含む剥離剤組成物であって、
    アクリルポリマー(B)が、以下の式(1)で表される長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)由来の構成単位と、以下の式(2)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(b2)由来の構成単位とを含有する剥離剤組成物。

    (式(1)において、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数10〜30の分岐アルキル基である。)

    (式(2)において、R11は水素原子又はメチル基、R12は炭素数4〜9の直鎖又は分岐のアルキル基である。)
  2. 長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)が、以下の式(1-1)で表される請求項1に記載の剥離剤組成物。

    (式(1-1)において、R1は上記と同じ、R3、R4はそれぞれ独立に直鎖又は分岐の炭素数2〜20のアルキル基である。)
  3. 式(1-1)におけるR3、R4が、いずれも直鎖のアルキル基である請求項2に記載の剥離剤組成物。
  4. アクリルポリマー(B)が、長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)由来の構成単位を10〜99質量%、及びアルキル(メタ)アクリレート(b2)由来の構成単位を0.9〜75質量%の割合で含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の剥離剤組成物。
  5. アクリルポリマー(B)が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を含有する官能基含有モノマー(b3)由来の構成単位をさらに含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の剥離剤組成物。
  6. アクリルポリマー(B)が、官能基含有モノマー(b3)由来の構成単位を0.1〜15質量%の割合で含有する請求項5に記載の剥離剤組成物。
  7. 液状ポリマー(A)が、ゴム系エラストマー及びポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載の剥離剤組成物。
  8. 液状ポリマー(A)が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基及び酸無水物基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の剥離剤組成物。
  9. 液状ポリマー(A)の含有量とアクリルポリマー(B)の含有量の比率が、質量比で、(A)/(B)=1/99〜99/1の範囲である請求項1〜8のいずれか1項に記載の剥離剤組成物。
  10. さらに架橋剤(C)を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の剥離剤組成物。
  11. 基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に設けられ、請求項1〜10のいずれか1項に記載の剥離剤組成物の硬化物からなる剥離剤層とを備える剥離シート。
  12. 請求項11に記載の剥離シートと、前記剥離シートの剥離剤層上に設けられた粘着剤層とを備える粘着体。
  13. 両面が粘着面である粘着部と、前記粘着部の両面それぞれに貼着される第1及び第2の剥離シートを備え、
    前記第1の剥離シートが、第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面上に設けられ、請求項1〜10のいずれか1項に記載の剥離剤組成物の硬化物からなる第1の剥離剤層とを備えるとともに、前記第1の剥離剤層が前記粘着面に接触するように貼着される、両面粘着シート。
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