JP2017163892A - 製パン用油脂組成物とそれを用いた可塑性油脂およびパンの製造方法 - Google Patents

製パン用油脂組成物とそれを用いた可塑性油脂およびパンの製造方法 Download PDF

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【課題】可塑性油脂として生地に練り込み、あるいは折り込むことで、ソフトさ、しとり、歯切れがいずれも良好な食感のパンを得ることができる製パン用油脂組成物とそれを用いた可塑性油脂およびパンの製造方法を提供する。【解決手段】本発明の製パン用油脂組成物は、飽和脂肪酸の含有量が油脂の構成脂肪酸全体の質量に対して35〜62質量%、トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量が油脂の2位構成脂肪酸全体の質量に対して35〜55質量%である油脂と、脂肪酸の炭素数が12〜18であるプロピレングリコール脂肪酸エステルとを含有することを特徴としている。【選択図】なし

Description

本発明は、パン生地への練り込みや折り込みに使用される製パン用油脂組成物とそれを用いた可塑性油脂およびパンの製造方法に関する。
近年、パンにおいては、ソフトでしとりがあり、かつ歯切れの良い食感が求められている。
従来、ソフトさなどの食感において消費者の嗜好に対応するため、食品素材や酵素を用いる方法が提案されている(特許文献1、2)。
特許文献1には、油中水型乳化物の水相中にトレハロースを配合することが提案され、ソフトで団子にならず、喉ごしの良いパンを得ることができるとされている。しかし、トレハロースはイーストによって分解されないため、特有の甘みがパンに付加され、特に食パンに使用した場合には風味を損なうおそれがある。
特許文献2には、グルコースオキシダーゼとαアミラーゼを含有する製パン改良剤が提案され、製品のソフト化、老化防止に加えて食感面でのくちゃつきを改善することができるとされている。しかし、くちゃつきは軽減できるが、歯切れについては十分な改善効果がみられていない。
従来、生地に練り込んで使用される油脂組成物にプロピレングリコール脂肪酸エステルを配合するものとして、特許文献3〜6の技術が提案されている。
特許文献3には、油脂中にプロピレングリコールのモノ脂肪酸エステルを配合することが提案され、ケーキ、ビスケットなどの菓子原料に使用することで吸卵性が向上するとされている。しかし、油脂種には着目しておらず、また実際に使用している乳化剤はプロピレングリコールモノべへン酸エステルであるため、製パンに用いた場合、ソフトさ、口溶けに問題がある。
特許文献4には、液状油にプロピレングリコール脂肪酸エステルを配合することが提案され、製パン性が改良され、ソフトで口溶けの良い製品が得られるとされている。しかし、油脂が液状油のみからなるため、可塑性が悪く、パン生地への練り込み時に十分に分散しない問題があり、また、油脂中の飽和脂肪酸量が不足しているため、良好な歯切れを得ることができない。
特許文献5には、特定の油脂組成の油脂にプロピレングリコール脂肪酸エステルを配合することが提案され、ソフトさと歯切れが良好なパンを得ることができるとされている。しかし、トリグリセリドの2位に結合したオレイン酸に着目しておらず、また飽和脂肪酸量が少ないため、可塑性と歯切れには更なる改良の余地があった。
特許文献6には、油脂中に、モノグリセリンモノ脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、および構成脂肪酸がパルミチン酸であるジグリセリンモノ脂肪酸エステルを配合し、かつ油脂中の3飽和トリグリセリド、2飽和および2不飽和トリグリセリド、3不飽和トリグリセリドの含有量を特定範囲とすることが提案され、ベーカリー製品の風味を損なうことなく、歯切れ感とソフト感を改善し、トーストした際にもその食感が保持できるとされている。しかし、実際に使用している乳化剤はプロピレングリコールモノべへン酸エステルであるため、ソフトさ、しとり、歯切れの点に問題がある。また、脂肪酸の炭素数が12〜18であるプロピレングリコール脂肪酸エステルと、トリグリセリドの2位に結合したオレイン酸などに着目した油脂組成との組み合わせについては記載されていない。
従来、生地に折り込んで使用される油脂組成物にプロピレングリコール脂肪酸エステルを配合するものとして、特許文献7の技術が提案されている。
特許文献7には、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルとポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを特定の比率にて配合することが提案され、組成物の保存性や焼成品のサクい食感が改良できるとされている。更にプロピレングリコール脂肪酸エステルを配合することで、乳化組成物中におけるグリセリンコハク酸脂肪酸エステルの分散性が向上し、それによりサクい食感が得られやすくなるとされている。しかし、油脂組成そのものに着目しておらず、またトリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量が少ないため、焼成品のソフトさが得られない。
特開2002−153208号公報 特開平9−135656号公報 特開昭59−48048号公報 特開平6−217693号公報 特開2007−267654号公報 特開2016−5446号公報 特開2013−13374号公報
特許文献3〜7に記載の技術は、ソフトさと歯切れを同時に満足させるパンを得るには更なる改良の余地があった。更に、近年ではソフトさと歯切れに加えて、しとりがある食感が求められているが、このような食感のものは得られていなかった。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、可塑性油脂として生地に練り込み、あるいは折り込むことで、ソフトさ、しとり、歯切れがいずれも良好な食感のパンを得ることができる製パン用油脂組成物とそれを用いた可塑性油脂およびパンの製造方法を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明の製パン用油脂組成物は、飽和脂肪酸の含有量が油脂の構成脂肪酸全体の質量に対して35〜62質量%、トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量が油脂の2位構成脂肪酸全体の質量に対して35〜55質量%である油脂と、脂肪酸の炭素数が12〜18であるプロピレングリコール脂肪酸エステルとを含有することを特徴としている。
本発明の可塑性油脂は、上記製パン用油脂組成物を含有することを特徴としている。
本発明の焼成品の製造方法は、上記可塑性油脂を生地に練り込み、この生地を焼成することを特徴としている。また、上記可塑性油脂を生地に折り込み、この生地を焼成することを特徴としている。
本発明によれば、可塑性油脂として生地に練り込み、あるいは折り込むことで、ソフトさ、しとり、歯切れがいずれも良好な食感のパンを得ることができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の製パン用油脂組成物(A)は、脂肪酸の炭素数が12〜18であるプロピレングリコール脂肪酸エステルを配合し、かつ油脂における飽和脂肪酸の含有量とトリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量を特定範囲としたことを特徴としている。
これにより、可塑性油脂(B)として生地に練り込み、あるいは折り込むことで、ソフトさ、しとり、歯切れがいずれも良好な食感のパンを得ることができる。
本発明において「ソフトさ」とは、焼成品であるパンの食感のふんわり感を言い、特に、10℃程度の低温におけるパンのふんわり感を言う。
本発明において「しとり」とは、焼成品であるパンの食感のうるおい感を言い、特に、10℃程度の低温におけるパンのうるおい感を言う。
本発明において「歯切れ」とは、焼成品であるパンの咀嚼時における噛み切りやすさを言い、特に、10℃程度の低温におけるパンの噛み切りやすさを言う。
更に、本発明の製パン用油脂組成物(A)は、パンのソフトさ、しとり、歯切れをいずれも経時的に維持することができるため、パンを製造後、流通、保管した後にも、パンのソフトさ、しとり、歯切れがいずれも良好である。
更に、本発明の製パン用油脂組成物(A)は、製パン時において生地に練り込む際の分散性が良く、作業性に優れている。特に、本発明の製パン用油脂組成物(A)を用いた可塑性油脂(B)は、10℃程度の低温における生地への分散性に優れている。
1.製パン用油脂組成物(A)
(油脂)
本発明において、飽和脂肪酸(以下、Sとも表記する。)は、油脂中に含まれるすべての飽和脂肪酸である。飽和脂肪酸Sとしては、特に限定されないが、例えば、酪酸(4)、カプロン酸(6)、カプリル酸(8)、カプリン酸(10)、ラウリン酸(12)、ミリスチン酸(14)、パルミチン酸(16)、ステアリン酸(18)、アラキジン酸(20)、ベヘン酸(22)、リグノセリン酸(24)などが挙げられる。なお、上記の数値表記は、脂肪酸の炭素数である。
本発明において、不飽和脂肪酸(以下、Uとも表記する。)は、油脂中に含まれるすべての不飽和脂肪酸である。また、各トリグリセリド分子に結合している2つまたは3つの不飽和脂肪酸Uは、同一の不飽和脂肪酸であってもよいし、異なる不飽和脂肪酸であってもよい。不飽和脂肪酸Uとしては、特に限定されないが、例えば、ミリストレイン酸(14:1)、パルミトレイン酸(16:1)、ヒラゴン酸(16:3)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、エイコセン酸(20:1)、エルカ酸(22:1)、セラコレイン酸(24:1)などが挙げられる。なお、上記不飽和脂肪酸についての括弧内の数値表記は、左側が脂肪酸の炭素数であり、右側が二重結合数を意味する。
本発明において、油脂中のトリグリセリドとは、1分子のグリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合した構造を有するものである。トリグリセリドの1位、2位、3位とは、脂肪酸が結合した位置を表す。
本発明の製パン用油脂組成物(A)に使用される油脂は、飽和脂肪酸Sを含む。
本発明の製パン用油脂組成物(A)に使用される油脂は、2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドを含み、2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの1、3位の構成脂肪酸は、飽和脂肪酸Sまたは不飽和脂肪酸Uのいずれであってもよい。2位がオレイン酸であるトリグリセリドとしては、例えば、SOS型トリグリセリド、SOU型トリグリセリド(位置異性体も含む)、UOU型トリグリセリドなどが挙げられるが、特に限定されない。なお、「O」とは、トリグリセリドの構成脂肪酸であるオレイン酸を意味する。本発明の効果を得る点から、2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの1位または3位の構成脂肪酸が飽和脂肪酸Sである場合、炭素数4〜24の飽和脂肪酸であることが好ましい。2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの1位または3位の構成脂肪酸が不飽和脂肪酸Uである場合、炭素数14〜18の不飽和脂肪酸(ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等)であることが好ましい。2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの1位または3位の構成脂肪酸が飽和脂肪酸Sと不飽和脂肪酸Uである場合、上述の飽和脂肪酸(炭素数4〜24の飽和脂肪酸)と不飽和脂肪酸(炭素数14〜18の不飽和脂肪酸)であることが好ましい。
本発明の製パン用油脂組成物(A)に使用される油脂は、2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドを含んでいてもよく、2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの1、3位の構成脂肪酸は、飽和脂肪酸Sまたは不飽和脂肪酸Uのいずれであってもよい。2位がラウリン酸であるトリグリセリドとしては、例えば、SLS型トリグリセリド、SLU型トリグリセリド(位置異性体も含む)、ULU型トリグリセリドなどが挙げられるが、特に限定されない。なお、「L」とは、トリグリセリドの構成脂肪酸であるラウリン酸を意味する。本発明の効果を得る点から、2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの1位または3位の構成脂肪酸が飽和脂肪酸Sである場合、炭素数4〜24の飽和脂肪酸であることが好ましい。2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの1位または3位の構成脂肪酸が不飽和脂肪酸Uである場合、炭素数14〜18の不飽和脂肪酸(ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等)であることが好ましい。2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの1位または3位の構成脂肪酸が飽和脂肪酸Sと不飽和脂肪酸Uである場合、上述の飽和脂肪酸(炭素数4〜24の飽和脂肪酸)と不飽和脂肪酸(炭素数14〜18の不飽和脂肪酸)であることが好ましい。
本発明の製パン用油脂組成物(A)に使用される油脂は、1位、2位、3位のすべてに飽和脂肪酸Sが結合した3飽和トリグリセリド(SSS)を含んでいてもよく、1分子のグリセロールに2分子の飽和脂肪酸Sと1分子の不飽和脂肪酸Uが結合した2飽和トリグリセリドとして、1位および3位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ2位に不飽和脂肪酸Uが結合した対称型トリグリセリド(SUS)を含んでいてもよく、1位と2位、または2位と3位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ3位または1位に不飽和脂肪酸Uが結合した非対称型トリグリセリド(SSU)を含んでいてもよい。また、1分子のグリセロールに2分子の不飽和脂肪酸Uと1分子の飽和脂肪酸Sが結合した2不飽和トリグリセリド(SSU、USS、USU))を含んでいてもよく、1位、2位、3位のすべてに不飽和脂肪酸Uが結合した3不飽和トリグリセリド(UUU)を含んでいてもよい。
本発明の製パン用油脂組成物(A)において、飽和脂肪酸の含有量は、油脂の構成脂肪酸全体の質量に対して35〜62質量%である。飽和脂肪酸の含有量がこの範囲内であると、可塑性油脂(B)として生地に練り込み、あるいは折り込むことで、ソフトさ、しとり、歯切れがいずれも良好な食感のパンを得ることができる。また、製パン時において生地に練り込む際の分散性が良く、作業性に優れている。パンのソフトさ、しとり、歯切れ、製パン時における作業性がいずれも特に良好となる点を考慮すると、飽和脂肪酸の含有量は、油脂の構成脂肪酸全体の質量に対して40〜55質量%が好ましい。
本発明の製パン用油脂組成物(A)において、トリグリセリドの2位に結合したオレイン酸の含有量は、油脂の2位構成脂肪酸全体の質量に対して35〜55質量%である。トリグリセリドの2位に結合したオレイン酸の含有量がこの範囲内であると、可塑性油脂(B)として生地に練り込み、あるいは折り込むことで、ソフトさ、しとり、歯切れがいずれも良好な食感のパンを得ることができる。また、製パン時において生地に練り込む際の分散性が良く、作業性に優れている。パンのソフトさ、しとり、歯切れ、製パン時における作業性がいずれも特に良好となる点を考慮すると、トリグリセリドの2位に結合したオレイン酸の含有量は、油脂の2位構成脂肪酸全体の質量に対して40〜50質量%が好ましい。
本発明の製パン用油脂組成物(A)において、トリグリセリドの2位に結合したラウリン酸の含有量は、油脂の2位構成脂肪酸全体の質量に対して0.9〜16質量%が好ましく、1.5〜10質量%がより好ましい。トリグリセリドの2位に結合したオレイン酸の含有量がこの範囲内であると、パンのソフトさ、しとり、歯切れ、製パン時における作業性がいずれも特に良好となる。
本発明の製パン用油脂組成物(A)において、P2Oの含有量は、油脂のトリグリセリド全体の質量に対して10〜23質量%が好ましい。ここでP2Oは、PPOおよびPOPを示す。PPOは、1位と2位または2位と3位にパルミチン酸、3位または1位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドを示し、POPは、1位と3位にパルミチン酸、2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドを示し、Pはパルミチン酸、Oはオレイン酸を示す。P2Oの含有量がこの範囲内であると、パンのソフトさ、しとり、歯切れ、製パン時における作業性がいずれも特に良好となる。
本発明の製パン用油脂組成物(A)は、油脂の構成脂肪酸としてトランス酸を含んでもよく、含まなくてもよいが、トランス酸の摂取量が多くなると、血液中におけるLDLコレステロール量が増加しうる。よって、これを抑制しやすい点から、本発明においては、油脂の構成脂肪酸中のトランス酸の含有量は、油脂の構成脂肪酸全体の質量に対して10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましく、3質量%未満であることが最も好ましい。
本発明の製パン用油脂組成物(A)に使用される油脂としては、特に限定されるものではないが、パーム油、パーム核油、ヤシ油、菜種油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、米油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、シア脂、サル脂、マンゴー油、イリッペ脂、カカオ脂、豚脂(ラード)、牛脂、乳脂、それらの分別油またはそれらの脱臭油、加工油(硬化およびエステル交換反応のうち1つ以上の処理がなされたもの)などが挙げられる。油脂全体における飽和脂肪酸の含有量およびトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸の含有量などを適宜調整するために、これらの油脂は、2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。
本発明の製パン用油脂組成物(A)は、油脂としてエステル交換油脂を含有することが好ましい。エステル交換油脂の中でも、パーム系油脂単独のエステル交換油脂や、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂が好ましい。なお、上記エステル交換油脂の原料であるラウリン系油脂は、全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30質量%以上の油脂であり、例えば、パーム核油、ヤシ油、これらの分別油、硬化油などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記エステル交換油脂の原料であるパーム系油脂は、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35質量%以上の油脂であり、例えば、パーム油、パーム分別油、これらの硬化油などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。パーム分別油としては、硬質部、軟質部、中融点部などを用いることができる。
(プロピレングリコール脂肪酸エステル)
プロピレングリコール脂肪酸エステルはプロピレングリコールと脂肪酸のエステルであり、本発明の製パン用油脂組成物(A)は、脂肪酸の炭素数が12〜18であるプロピレングリコール脂肪酸エステルを含有する。このようなプロピレングリコール脂肪酸エステルを用いることで、上記のような油脂組成と相俟って、可塑性油脂(B)として生地に練り込み、あるいは折り込むことで、ソフトさ、しとり、歯切れがいずれも良好な食感のパンを得ることができる。また、製パン時において生地に練り込む際の分散性が良く、作業性に優れている。
上記プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、プロピレングリコールジ脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルは好ましい。
上記プロピレングリコール脂肪酸エステルの脂肪酸は、炭素数が12〜18であれば、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれであってもよく、1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ヒラゴン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸が挙げられる。これらの中でも、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸は好ましい。
本発明においては、上記プロピレングリコール脂肪酸エステルとして、市販のものを用いることができる。例えば、理研ビタミン株式会社製 リケマールPP−100(HLB:3.8)、PO−100V(HLB:3.6)、PS−100(HLB:3.7)や花王株式会社製 カオーホモテックスPS−200V(HLB:3)などが挙げられる。
上記プロピレングリコール脂肪酸エステルの含有量は、特に限定されるものではないが、油脂全体の質量に対して0.05〜5.0質量%が好ましく、0.1〜5.0質量%がより好ましい。上記プロピレングリコール脂肪酸エステルの含有量がこの範囲内であると、パンのソフトさ、しとり、歯切れがいずれも良好で、製パン時において生地に練り込む際の分散性が良く作業性に優れているとともに、乳化剤による雑味を感じることなく風味の良好なパンを得ることができる。
(その他の成分)
本発明の製パン用油脂組成物(A)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上記の油脂およびプロピレングリコール脂肪酸エステル以外に、その他の成分を含んでいてもよい。このようなその他の成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の「2.可塑性油脂(B)」の欄における「公知の成分」として例示したもののうち、油溶性の成分などが挙げられる。例えば、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステルや、レシチンを含んでいてもよく、特にレシチンを併用することで、パンのソフトさが向上する。
2.可塑性油脂(B)
本発明の製パン用油脂組成物(A)は、油相中に本発明の製パン用油脂組成物(A)を含有する可塑性油脂(B)を調製し、これを含んだ生地を用いて焼成品のパンを得ることができる。
この可塑性油脂(B)は、油相中に本発明の製パン用油脂組成物(A)を含有するものである。
可塑性油脂(B)における本発明の製パン用油脂組成物(A)の含有量としては、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%である。
この可塑性油脂(B)は、水相を実質的に含有しない形態と、水相を含有する形態をとることができる。水相を含有する形態としては油中水型、水中油型、油中水中油型、水中油中水型が挙げられ、油相の含有量は、好ましくは60〜99.4質量%、より好ましくは65〜98質量%であり、水相の含有量は、好ましくは0.6〜40質量%、より好ましくは2〜35質量%である。水相を含有する形態としては油中水型が好ましく、例えばマーガリンが挙げられる。
また水相を実質的に含有しない形態としてはショートニングが挙げられる。ここで「実質的に含有しない」とは日本農林規格のショートニングに該当する、水分(揮発分を含む。)の含有量が0.5質量%以下のことである。
この可塑性油脂(B)には、水以外に、従来の公知の成分を含んでもよい。公知の成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、乳、乳製品、蛋白質、糖質、塩類、酸味料、pH調整剤、抗酸化剤、香辛料、増粘剤、着色成分、フレーバー、乳化剤、酒類、酵素、粉末油脂などが挙げられる。乳としては、牛乳などが挙げられる。乳製品としては、脱脂乳、生クリーム、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズなど)、発酵乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖脱脂れん乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白濃縮ホエイパウダー、ホエイチーズ(WC)、ホエイ蛋白コンセントレート(WPC)、ホエイ蛋白アイソレート(WPI)、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウムなどが挙げられる。蛋白質としては、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白、小麦蛋白などの植物蛋白などが挙げられる。糖質としては、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースなど)、二糖類(ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロースなど)、オリゴ糖、糖アルコール、ステビア、アスパルテームなどの甘味料、デンプン、デンプン分解物、多糖類などが挙げられる、抗酸化剤としては、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸誘導体、トコフェロール、トコトリエノール、リグナン、ユビキノン類、キサンチン類、オリザノール、植物ステロール、カテキン類、ポリフェノール類、茶抽出物などが挙げられる。香辛料としては、カプサイシン、アネトール、オイゲノール、シネオール、ジンゲロンなどが挙げられる。増粘剤としては、カラギナン、キサンタンガム、グァガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などが挙げられる。着色成分としては、カロテン、アナトー、アスタキサンチンなどが挙げられる。フレーバーとしては、バターフレーバー、ミルクフレーバーなどが挙げられる。乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
この可塑性油脂(B)は、公知の方法により製造することができる。例えば水相を含有する形態のものは、本発明の製パン用油脂組成物(A)を含む油相と水相とを適宜に加熱し混合して乳化した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサスなどの冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。水相を含有しない形態のものは、本発明の製パン用油脂組成物(A)を含む油相を加熱した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサスなどの冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。冷却混合機において、必要に応じて窒素ガスなどの不活性ガスを吹き込むこともできる。また急冷捏和後に熟成(テンパリング)してもよい。
3.生地および焼成品
本発明の製パン用油脂組成物(A)は、これを含有する可塑性油脂(B)をパン生地に練り込み、あるいはパン生地に折り込んで使用することができる。
例えば、本発明の製パン用油脂組成物(A)は、製パン練り込み用油脂組成物(A1)として、これを含有する可塑性油脂(B1)をパン生地に練り込んで使用することができる。可塑性油脂(B1)を含有する生地を焼成することによって、焼成品のパンが得られる。
あるいは、本発明の製パン用油脂組成物(A)は、製パン折り込み用油脂組成物(A2)として、これを含有する可塑性油脂(B2)をパン生地に折り込んで使用することができる。例えば、生地の間に製パン折り込み用油脂組成物(A2)を用いたシート状の可塑性油脂(B2)を包み込み、その後、折り畳みと圧延を繰り返すことによって生地中に可塑性油脂(B2)を層状に折り込んで、生地と可塑性油脂(B2)の薄い層を何層にも作り上げる。そして、この可塑性油脂(B2)を含有する生地を焼成することによって、層状焼成品のパンが得られる。この可塑性油脂(B2)は、シート状、ブロック状、円柱状、直方体状、ペンシル状などの様々な形状とすることができる。その中でも、加工が容易である点等から、シート状とすることが好ましい。可塑性油脂(B2)をシート状とした場合のサイズは、特に限定されるものではないが、例えば、幅50〜1000mm、長さ50〜1000mm、厚さ1〜50mmとすることができる。
生地への可塑性油脂(B1)の練り込み、可塑性油脂(B2)の折り込みや、生地の焼成は、例えば公知の条件および方法に従って行うことができる。
可塑性油脂(B)を用いた生地は、穀粉を主成分とし、穀粉としては、通常、焼成品の生地に配合されるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉等)、大麦粉、米粉、とうもろこし粉、ライ麦粉、そば粉、大豆粉などが挙げられる。
生地には、穀粉と可塑性油脂(B)以外にも、通常、焼成品の生地に使用されるものであれば、特に制限なく配合することができる。また、これらの配合量も、通常、焼成品の生地に配合される範囲を考慮して特に制限なく適宜の量とすることができる。具体的には、例えば、水、乳、乳製品、蛋白質、糖質、卵、卵加工品、澱粉、塩類、乳化剤、乳化起泡剤(乳化油脂)、粉末油脂、イースト、イーストフード、カカオマス、ココアパウダー、チョコレート、コーヒー、紅茶、抹茶、野菜類、果物類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、肉類、魚介類、豆類、きな粉、豆腐、豆乳、大豆蛋白、膨張剤、甘味料、調味料、香辛料、着色料、フレーバーなどが挙げられる。
可塑性油脂(B1)を練り込んだ生地を用いた焼成品のパンとしては、例えば、食パン、テーブルロール、菓子パン、調理パン、フランスパン、ライブレッドなどが挙げられる。
可塑性油脂(B2)を折り込んだ生地を用いた焼成品のパンとしては、例えば、イーストなどを使用して生地を発酵させるデニッシュやクロワッサン、発酵過程のないパイ等のペストリーなどが挙げられる。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(1)測定方法
油脂における飽和脂肪酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」)で測定した。なお、飽和脂肪酸の含有量は、上記試験法のとおりガスクロマトグラフィーで測定した全ピーク面積である油脂全量(油脂の構成脂肪酸全体の質量)を基準としている。
油脂におけるトリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量、トリグリセリドの2位に結合されたラウリン酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「奨2−2013 2位脂肪酸組成」)で測定した。なお、トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量とトリグリセリドの2位に結合されたラウリン酸の含有量は、上記試験法のとおり、リパーゼ溶液で処理後のモノアシルグリセリン画分をガスクロマトグラフィーで測定した全ピーク面積である油脂全量(油脂の2位構成脂肪酸全体の質量)を基準としている。
油脂におけるP2Oの含有量(PPOおよびPOPの合計量)は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「奨2−2013 2位脂肪酸組成」)で測定し、脂肪酸量を用いて計算にて求めた。
(2)評価
表1〜表4においてエステル交換油脂1〜5、プロピレングリコール脂肪酸エステル1〜4、その他乳化剤は次のものを用いた。
(エステル交換油脂1)
パーム核油15質量%、パーム核極度硬化油7.5質量%、パーム油70質量%、パーム極度硬化油7.5質量%を混合して110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、さらに脱臭を行ってエステル交換油脂1を得た。
(エステル交換油脂2)
パーム分別軟質部(ヨウ素価56)を原料として、エステル交換油脂1の製法に準じてエステル交換反応等を行い、エステル交換油脂2を得た。
(エステル交換油脂3)
パーム油(ヨウ素価53)を原料として、エステル交換油脂1の製法に準じてエステル交換反応等を行い、エステル交換油脂3を得た。
(エステル交換油脂4)
パーム核油24質量%、パーム油70質量%、ハイエルシン菜種極度硬化油6質量%の混合物を原料として、エステル交換油脂1の製法に準じてエステル交換反応等を行い、エステル交換油脂4を得た。
(エステル交換油脂5)
パーム核油40質量%、パーム油60質量%の混合物を原料として、エステル交換油脂1の製法に準じてエステル交換反応等を行い、エステル交換油脂5を得た。
(プロピレングリコール脂肪酸エステル1)
理研ビタミン株式会社製 リケマールPP−100 プロピレングリコールモノパルミテート 炭素数16
(プロピレングリコール脂肪酸エステル2)
理研ビタミン株式会社製 リケマールPO−100V プロピレングリコールモノオレート 炭素数18
(プロピレングリコール脂肪酸エステル3)
理研ビタミン株式会社製 リケマールPS−100 プロピレングリコール モノステアレート 炭素数18
(プロピレングリコール脂肪酸エステル4)
理研ビタミン株式会社製 リケマールPB−100 プロピレングリコール モノベヘネート 炭素数22
(モノグリセリンモノ脂肪酸エステル)
理研ビタミン株式会社製 エマルジーMH
(ジグリセリンモノ脂肪酸エステル)
理研ビタミン株式会社製 ポエムDP−95RF
(レシチン)
昭和産業株式会社製 昭和Mレシチン
<製パン練り込み用油脂組成物(A1)および可塑性油脂(B1)の作製>
表1および表2に示す配合比の油脂を80℃で溶解、混合し、乳化剤を表1および表2に示す配合比で添加後、溶解させ、75℃に調温して83.5質量部の油相とした(製パン練り込み用油脂組成物(A1))。
一方、水に対し脱脂粉乳および食塩を添加し、80℃で加熱殺菌して水相を得た。次に、該油相に該水相を16.5質量部添加し、プロペラ攪拌機で撹拌して、油中水型に乳化した後、パーフェクターによって急冷捏和して、下記の配合割合の練り込み用マーガリンを可塑性油脂(B1)として得た。得られた練り込み用マーガリンは、5℃で保管した。なお、下記練り込み用マーガリンの配合は全体で100質量部である。
〈練り込み用マーガリンの配合〉
油脂 73.5〜83質量部
乳化剤 0.5〜10質量部
水 15質量部
脱脂粉乳 1質量部
食塩 0.5質量部
<練り込み用マーガリンを使用した焼成品の作製>
上記練り込み用マーガリンを用いて、下記の配合と工程により食パンを製造した。
〈食パンの配合および工程〉
・中種配合
強力粉 70質量部
イースト 2.5質量部
イーストフード 0.1質量部
水 40質量部
・中種工程
ミキシング 低速3分 中低速1分(フック使用)
捏上温度 24℃
発 酵 発酵室温27℃ 湿度75% 4時間
・本捏配合
強力粉 30質量部
上白糖 6質量部
食塩 1.8質量部
脱脂粉乳 2質量部
練り込み用マーガリン 5質量部
水 25質量部
・本捏工程(本捏配合の全素材および中種生地全量を添加)
ミキシング 低速3分 中低速3分
(練り込み用マーガリンを投入)、低速3分 中低速4分
捏上温度 28℃
フロアータイム 28℃ 20分
生地分割 230g
ベンチタイム 28℃ 20分
成 型 モルダーで延ばしロール型に成型
U型にしてプルマン型に6本詰め
ホイロ 室温38℃ 湿度80% 40分
焼 成 200℃ 40分
<評価>
以下の各評価において、パネルは、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判断された20〜40代の男性8名、女性12名を選抜した。
[焼成品の10℃におけるソフトさ]
食パンを焼成後2時間室温で放冷し、放冷後10℃にて1日保管したもの(D+1)について、食パンのソフトさ(ふんわり感)をパネル20名により以下の基準で評価した。
評価基準
◎+:20名中17名以上が良好であると評価した。
◎: 20名中13〜16名が良好であると評価した。
○: 20名中9〜12名が良好であると評価した。
△: 20名中5〜8名が良好であると評価した。
×: 20名中良好であると評価したのは4名以下であった。
[焼成品の10℃におけるしとり]
食パンを焼成後2時間室温で放冷し、放冷後10℃で1日保管したもの(D+1)について、食パンのしとり(うるおい感)をパネル20名により以下の基準で評価した。
評価基準
◎:20名中16名以上が良好であると評価した。
○:20名中11〜15名が良好であると評価した。
△:20名中6〜10名が良好であると評価した。
×:20名中良好であると評価したのは5名以下であった。
[焼成品の10℃における歯切れ]
食パンを焼成後2時間室温で放冷し、放冷後10℃で1日保管したもの(D+1)と、放冷後10℃で3日保管したもの(D+3)のそれぞれについて、食パンの歯切れをパネル20名により以下の基準で評価した。
評価基準
◎:20名中16名以上が良好であると評価した。
○:20名中11〜15名が良好であると評価した。
△:20名中6〜10名が良好であると評価した。
×:20名中良好であると評価したのは5名以下であった。
[作業性(生地への分散性)]
食パン作製時に10℃で練り込み用マーガリンを生地に添加したときのマーガリンの塊がなくなる時間を目視により評価した。
評価基準
◎:1分超〜1分45秒以内で分散した。
○:1分45秒超〜2分30秒以内で分散した。
△:2分30秒超〜3分15秒以内で分散した。
×:3分15秒超で分散した。
上記の評価結果を表1および表2に示す。また製パン練り込み用油脂組成物(A1)の配合と油脂組成も併せてこれらの表に示した。
Figure 2017163892
Figure 2017163892
<製パン折り込み用油脂組成物(A2)および可塑性油脂(B2)の作製>
表3および表4に示す配合比の油脂を80℃で溶解、混合し、乳化剤を表3および表4に示す配合比で添加後、溶解させ、75℃に調温して85.5質量部の油相とした(製パン折り込み用油脂組成物(A2))。
一方、水に対し脱脂粉乳および食塩を添加し、80℃で加熱殺菌して水相を得た。次に、該油相に該水相を14.5質量部添加し、プロペラ攪拌機で撹拌して、油中水型に乳化した後、パーフェクターによって急冷捏和し、25cm×21cm×1cmのシート状に成型し、下記の配合割合のロールイン用マーガリンを可塑性油脂(B2)として得た。得られたロールイン用マーガリンは、5℃で保管した。なお、下記ロールイン用マーガリンの配合は全体で100質量部である。
〈ロールイン用マーガリンの配合〉
油脂 75.5〜85質量部
乳化剤 0.5〜10質量部
水 12質量部
脱脂粉乳 1.5質量部
食塩 1質量部
<ロールイン用マーガリンを使用した焼成品の作製>
下記の配合および製造条件でデニッシュを作製した。具体的には実施例および比較例のロールイン用マーガリンおよびショートニングZ(ミヨシ油脂株式会社製)以外の材料をミキサーに投入し、低速3分、中低速5分ミキシングを行った後、ショートニングZを入れ低速2分、中低速4分ミキシングを行い、生地を得た。この生地を、フロアータイムをとった後、0℃で一晩リタードさせた。この生地にロールイン用マーガリンを折り込み、3つ折り2回を加え−10℃にて30分リタードし、3つ折り1回を加え−10℃にて60分リタードさせた。その後シーターゲージ厚3mmまで延ばし、10cm角(10cm×10cm)にカットし、ホイロ後、焼成してデニッシュを得た。
〈デニッシュの配合〉
強力粉 90質量部
薄力粉 10質量部
上白糖 10質量部
食塩 1.8質量部
脱脂粉乳 3質量部
全卵 6質量部
ショートニングZ 8質量部
イースト 5質量部
イーストフード 0.1質量部
水 53質量部
ロールイン用マーガリン 生地100質量部に対して21質量部
〈デニッシュ生地の作製条件〉
ミキシング: 低速3分、中低速5分、(ショートニングを投入)、低速2分、
中低速4分
捏上温度: 25℃
フロアータイム:27℃ 75% 30分
リタード: 0℃ 一晩
ロールイン: 3つ折り×2回 −10℃にてリタード30分
3つ折り×1回 −10℃にてリタード60分
成型: シーターゲージ厚3mm 10cm角(10cm×10cm)にカット
ホイロ: 35℃ 75% 60分
焼成: 200℃ 14分
<評価>
以下の各評価において、パネルは、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判断された20〜40代の男性8名、女性12名を選抜した。
[焼成品の10℃における口溶け]
デニッシュを焼成後2時間室温で放冷し、放冷後10℃にて1日保管したもの(D+1)について、デニッシュの口溶けをパネル20名により以下の基準で評価した。
評価基準
◎+:20名中17名以上が良好であると評価した。
◎: 20名中13〜16名が良好であると評価した。
○: 20名中9〜12名が良好であると評価した。
△: 20名中5〜8名が良好であると評価した。
×: 20名中良好であると評価したのは4名以下であった。
[焼成品の10℃におけるしとり]
デニッシュを焼成後2時間室温で放冷し、放冷後10℃で1日保管したもの(D+1)について、デニッシュのしとり(うるおい感)をパネル20名により以下の基準で評価した。
評価基準
◎:20名中16名以上が良好であると評価した。
○:20名中11〜15名が良好であると評価した。
△:20名中6〜10名が良好であると評価した。
×:20名中良好であると評価したのは5名以下であった。
[焼成品の10℃におけるサクさ]
デニッシュを焼成後2時間室温で放冷し、放冷後10℃で1日保管したもの(D+1)について、デニッシュのサクさをパネル20名により以下の基準で評価した。
評価基準
◎:20名中16名以上が良好であると評価した。
○:20名中11〜15名が良好であると評価した。
△:20名中6〜10名が良好であると評価した。
×:20名中良好であると評価したのは5名以下であった。
[焼成品の10℃における歯切れ]
デニッシュを焼成後2時間室温で放冷し、放冷後10℃で1日保管したもの(D+1)と、放冷後10℃で3日保管したもの(D+3)のそれぞれについて、デニッシュの歯切れをパネル20名により以下の基準で評価した。
評価基準
◎:20名中16名以上が良好であると評価した。
○:20名中11〜15名が良好であると評価した。
△:20名中6〜10名が良好であると評価した。
×:20名中良好であると評価したのは5名以下であった。
上記の評価結果を表3および表4に示す。また製パン折り込み用油脂組成物(A2)の配合と油脂組成も併せてこれらの表に示した。
Figure 2017163892
Figure 2017163892
本発明の製パン用油脂組成物(A)に使用される油脂は、1位、2位、3位のすべてに飽和脂肪酸Sが結合した3飽和トリグリセリド(SSS)を含んでいてもよく、1分子のグリセロールに2分子の飽和脂肪酸Sと1分子の不飽和脂肪酸Uが結合した2飽和トリグリセリドとして、1位および3位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ2位に不飽和脂肪酸Uが結合した対称型トリグリセリド(SUS)を含んでいてもよく、1位と2位、または2位と3位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ3位または1位に不飽和脂肪酸Uが結合した非対称型トリグリセリド(SSU)を含んでいてもよい。また、1分子のグリセロールに2分子の不飽和脂肪酸Uと1分子の飽和脂肪酸Sが結合した2不飽和トリグリセリド(UUS、SUU、USU))を含んでいてもよく、1位、2位、3位のすべてに不飽和脂肪酸Uが結合した3不飽和トリグリセリド(UUU)を含んでいてもよい。

Claims (5)

  1. 飽和脂肪酸の含有量が油脂の構成脂肪酸全体の質量に対して35〜62質量%、トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量が油脂の2位構成脂肪酸全体の質量に対して35〜55質量%である油脂と、脂肪酸の炭素数が12〜18であるプロピレングリコール脂肪酸エステルとを含有する製パン用油脂組成物。
  2. トリグリセリドの2位に結合されたラウリン酸の含有量が油脂の2位構成脂肪酸全体の質量に対して0.9〜16質量%である請求項1に記載の製パン用油脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載の製パン用油脂組成物を含有する可塑性油脂。
  4. 請求項3に記載の可塑性油脂を生地に練り込み、この生地を焼成するパンの製造方法。
  5. 請求項3に記載の可塑性油脂を生地に折り込み、この生地を焼成するパンの製造方法。
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