JP2017160194A - 免疫賦活剤及び免疫賦活用食品組成物 - Google Patents

免疫賦活剤及び免疫賦活用食品組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】免疫作用を賦活化することができ、安全性の高い免疫賦活剤の提供。【解決手段】クミン、フェンネル、及びカルダモンからなる群から選択される少なくとも1種のハーブの粉砕物又は抽出物を含む免疫賦活剤。粉砕物又は抽出物は、種子の粉砕物又は抽出物であり、免疫賦活は、抗体産生促進活性、サイトカイン産生促進活性、及びマクロファージ活性化である。【効果】免疫作用を賦活化することができ、免疫賦活作用を有し、安全性の高い飲食品の提供ができる。【選択図】図3

Description

本発明は、免疫賦活剤に関する。本発明の免疫賦活剤によれば、免疫作用を賦活化することができる。また、本発明は免疫賦活用食品組成物にも関する。
近年、食生活の偏り等の栄養上の理由から免疫力低下が問題になってきており、この免疫力低下を是正できる物質の研究開発が種々行われてきている。殊に、長期間服用しても副作用の心配のない天然物由来の物質の研究開発が種々行われてきている。しかしながら、十分に所望の免疫賦活効果を奏することができ、医薬品又は食品として実際に使用できる免疫賦活物質の開発は未だなされていない現状にある。
一方で、ハーブは我々の食生活において使用頻度の高い食品の1つである。ハーブは、種々の生理活性効果を有することが知られている。例えば特許文献1には、水、又は水及び親水性有機溶媒を溶媒とするカルダモンの抽出物が、コラーゲンの産生を促進することが記載されている。
特開2015−48338号公報
本発明者らは、種々のハーブについて、その抽出物の免疫賦活活性を比較検討したところ、フェンネル、クミン、及びカルダモンの抽出物が免疫賦活効果を示すことを新たに見出した。これらのフェンネル、クミン、及びカルダモンの抽出物が有する免疫賦活効果は全く知られておらず、本発明はこうした知見によるものである。
従って、本発明は、
[1]クミン、フェンネル、及びカルダモンからなる群から選択される少なくとも1種のハーブの粉砕物又は抽出物を含む免疫賦活剤、
[2]前記粉砕物又は抽出物が、種子の粉砕物又は抽出物である、[1]に記載の免疫賦活剤、
[3]前記免疫賦活が、抗体産生促進活性、サイトカイン産生促進活性、及びマクロファージ活性化から選択される少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載の免疫賦活剤、
[4]前記抽出物が、有機溶媒、水性溶媒、又は有機溶媒と水性溶媒との混合物による抽出物である、[1]〜[3]のいずれかに記載の免疫賦活剤、
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の免疫賦活剤と飲食品とを含む免疫賦活用食品組成物、並びに
[6][1]〜[4]のいずれかに記載の免疫賦活剤を抗体産生細胞に接触させることを特徴とする抗体産生方法
に関する。
本発明の免疫賦活剤によれば、免疫作用を賦活化することができる。さらに、本発明の免疫賦活剤によれば、免疫賦活作用を有し、かつ安全性の高い飲食品を提供することができる。
クミンアルコール抽出物をマウス脾臓Bリンパ球細胞に投与した場合のIgM及びIgA抗体産生を測定したグラフである。 カルダモンのアルコール抽出物をマウス脾臓Bリンパ球細胞に投与した場合のIgM抗体産生を測定したグラフである。 フェンネル、カルダモン、及びクミンの各々のアルコール抽出物をヒト型ハイブリドーマHB4C5細胞に投与して6時間経過後のIgM抗体産生を測定したグラフである。 フェンネル、カルダモン、及びクミンの各々のアルコール抽出物をヒト型ハイブリドーマHB4C5細胞に投与して12時間経過後のIgM抗体産生を測定したグラフである。 フェンネル、カルダモン、及びクミンの各々のアルコール抽出物をマウス脾臓CD4細胞に投与して48時間経過後のIL−4産生を測定したグラフである。 フェンネル、カルダモン、及びクミンの各々のアルコール抽出物をマウス脾臓CD4細胞に投与して48時間経過後のIL−6産生を測定したグラフである。 クミンアルコール抽出物をマウス脾臓CD4細胞に投与して48時間経過後のIFN−γ産生を測定したグラフである。 クミンアルコール抽出物のマウスへの経口投与実験の各条件を示した図である。 クミンアルコール抽出物のマウスへの経口投与実験における抗体産生量定量の結果を示すグラフである。 クミンアルコール抽出物のマウスへの経口投与実験における血清中の抗体量定量の結果を示すグラフである。 クミンアルコール抽出物のマウスへの経口投与実験における血清中のサイトカイン量定量の結果を示すグラフである。 クミン水性溶媒抽出物がヒトハイブリドーマ細胞HB4C5のIgM産生に及ぼす効果を示すグラフである。 クミン水性溶媒抽出物がマウスマクロファージ由来RAW264.7細胞のサイトカイン産生に及ぼす効果を示すグラフである。 クミン水性溶媒抽出物が初代マウス腹腔内マクロファージ(P−Mac)のサイトカイン産生に及ぼす効果を示すグラフである。 クミン水性溶媒抽出物がマウスマクロファージ由来RAW264.7細胞における一酸化窒素(NO)産生に及ぼす効果を示すグラフである。 クミン水性溶媒抽出物がマウスマクロファージ由来RAW264.7細胞の貪食活性に及ぼす効果を示す図である。 クミン水性溶媒抽出物がマウスマクロファージ由来RAW264.7細胞の遺伝子発現に及ぼす効果を示すグラフである。 クミン水性溶媒抽出物が初代マウス腹腔内マクロファージ(P−Mac)の遺伝子発現に及ぼす効果を示すグラフである。 TLR4阻害剤処理がマウスマクロファージ由来RAW264.7細胞に対するクミン水性溶媒抽出物の活性に及ぼす影響を示すグラフである。 エンドトキシン除去処理がマウスマクロファージ由来RAW264.7細胞に対するクミン水性溶媒抽出物の活性に及ぼす影響を示すグラフである。 クミン水性溶媒抽出物がマウスマクロファージ由来RAW264.7細胞のNF−κB経路に及ぼす影響を示す図である。 クミン水性溶媒抽出物がマウスマクロファージ由来RAW264.7細胞のMAPキナーゼ経路に及ぼす影響を示す図である。 クミン水性溶媒抽出物のマウスへの経口投与実験の各条件を示した図である。 クミン水性溶媒抽出物のマウスへの経口投与実験におけるサイトカイン定量の結果を示すグラフである。 加熱処理がクミン水性溶媒抽出物へ及ぼす影響を示すグラフである。 トリプシン処理がクミン水性溶媒抽出物へ及ぼす影響を示すグラフである。 クミン水性溶媒抽出物の活性成分を硫安沈殿法により分画した結果を示すグラフである。 クミン水性溶媒抽出物の活性成分をSDS−PAGEにより分画した結果を示す写真である。
[1]免疫賦活剤
本発明の免疫賦活剤は、クミン、フェンネル、及びカルダモンからなる群から選択される少なくとも1種のハーブの粉砕物又は抽出物を有効成分として含む。本発明の免疫賦活剤は、1種類のハーブの粉砕物又は抽出物のみを含むことができ、又は2種類以上のハーブの粉砕物又は抽出物を含むこともできる。粉砕物と抽出物の両方を含むこともできる。
(クミン)
クミン(Cuminum cyminum)は、地中海沿岸東部原産の一年生又は二年生のセリ科の草本である。草丈は20〜40cmであり、株全体に毛はない。葉柄は長さ1cm程度と短く、針形の鞘がある。葉は細長い針型で、2回羽状に全裂する。花は傘形花で直径2〜3cmである。花弁の色はピンク又は白色である。花弁の形は、長楕円形であり、先端がわずかに欠ける。種子は長楕円形で両端が狭く、長さ6mm、幅1.5mm程度であり、全体が白い剛毛に被われている。花期は4月ごろで、5月ごろに種子ができる。
クミンシードは、一般的には種子と認識されているが、植物学上は果実に該当する。このクミンシードが、香辛料としてよく用いられている。本明細書においては、クミンに関して「種子」とは、クミンシードを意味する。
(フェンネル)
フェンネル(Foeniculum vulgare)は、地中海沿岸が原産のセリ科の草本である。草丈は1〜2mであり、葉は糸状で、全草が鮮やかな黄緑色をしている。花期は、6〜8月であり、枝先に黄色の小花を多数つける。秋には7mm程度の長楕円形をした茶褐色の実をつける。
若い葉および種子は、甘い香りと苦みが特徴で消化促進・消臭に効果があり、香辛料としてよく用いられている。
(カルダモン)
カルダモン(Elettaria cardamomum)は、インド、スリランカ、及びマレー半島を原産とするショウガ科の多年草である。成長すると草丈2〜3mとなる。葉は長さ50cm程度、幅5cm程度であり、葉の基部は鞘状になっている。地面の近くに薄緑の白に赤紫の入った花をつけ、成熟すると8〜18cmの卵型の実をつける。
種子は香辛料として使用され、カレー及び肉料理などに利用される。
本発明の免疫賦活剤における、クミン、フェンネル、及びカルダモンの使用部位は、特に限定されるものではなく、植物全体、根、茎、葉、花、果実、又は種子、あるいは、それらの少なくとも2種以上の混合物を用いることができるが、好ましくは、種子を用いる。種子を用いる場合は、その他の部分が含まれてもよい。クミン、フェンネル、又はカルダモンは、生のまま用いてもよいが、乾燥させたものの方が好ましい。
(粉砕物)
本発明において、粉砕物とは、クミン、フェンネル、又はカルダモンが粉砕された状態のものであればよく、例えば粉末状、粒状、又はペースト状であることができる。粉砕物は、好ましくは粉末である。また、粉末状にしたものを、例えばキューブ状、ブロック状、又は顆粒状に成型又は造粒したものも好ましく使用できる。粉砕物又は粉末に加工するための処理は、特に限定されないが、例えばクラッシャー、ミル、ブレンダー、ミキサー、及び石臼などの粉砕用の機器又は器具を用いて、当業者が通常使用する任意の方法により植物体を粉砕する処理が挙げられる。粉砕前に、植物体を乾燥してもよい。
本発明の免疫賦活剤に含まれるクミン、フェンネル、又はカルダモンが粉砕物である場合、限定されるものではないが、例えばクミン、フェンネル、又はカルダモンの粉砕物の平均最長径が、0.01〜1mm、好ましくは、0.01〜0.75mm、より好ましくは0.01〜0.5mmのものを使用することができる。また、クミン、フェンネル、又はカルダモンの粉砕物の90重量%以上が、0.01〜1mm、好ましくは、0.01〜0.75mm、より好ましくは0.01〜0.5mmの最長径を有するものを使用することができる。また、クミン、フェンネル、又はカルダモンの粉砕物の90重量%以上が、JIS試験篩いメッシュ換算表において、16メッシュ(1mm)、22メッシュ(0.71mm)、又は30メッシュ(0.5mm)、を通過するものを使用することができる。クミン、フェンネル、又はカルダモンの粉砕物の最長径が1mm以下であると、本発明の免疫賦活効果が向上することから、最長径が1mm以下のものを使用することが好ましい。
クミン、フェンネル、又はカルダモンの平均最長径の計測は、粒径を計測するための公知の機器を使用して行うことができる。また、クミン、フェンネル、又はカルダモンの粉砕物の中から任意で100個を選択して、それらの最長径を実体顕微鏡を用いて測定し、それらの平均を計算することで算出することもできる。
(抽出物)
本発明の免疫賦活剤の有効成分の抽出に用いるクミン、フェンネル、又はカルダモンは、生のまま用いてもよく、又は乾燥させたものを用いてもよい。また、抽出効率が向上するように、破砕物又は粉体の状態に加工してから抽出してもよい。
有効成分の抽出には、植物に由来する成分の抽出に用いられる通常の抽出方法、限定されるものではないが、例えば溶剤抽出法、水蒸気蒸留法、圧搾法(直接、高温、若しくは低温)、又は超臨界抽出法を用いることができる。これらの抽出法の組み合わせ、例えば圧搾した後に溶剤抽出する方法を用いてもよい。本発明の免疫賦活剤に含まれるクミン、フェンネル、又はカルダモンの抽出物は、溶媒抽出により抽出したものが好ましい。
溶剤抽出法で抽出する場合に用いられる抽出溶媒は、抽出液中に有効成分が充分に抽出されることができる限りにおいては限定されないが、例えば有機溶媒、水性溶媒、又は有機溶媒及び水性溶媒の混合物を使用することができる。
本発明の免疫賦活剤に含まれるクミン、フェンネル、又はカルダモンの抽出物は、有機溶媒、例えばアルコール、アセトン、ベンゼン、エステル、酢酸エチル、ヘキサン、クロロホルム、及びジエチルエーテルなどにより抽出されることができる。アルコールとしては、抽出液中に有効成分が充分に抽出されることができる限りにおいては限定されないが、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、及びブチルアルコール等の炭素数1〜5の一価アルコールを使用することができる。1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びグリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールを使用することもできる。アルコールは、メタノール及びエタノールが好ましく、エタノールが最も好ましい。
(水性溶媒)
本発明の免疫賦活剤に含まれるハーブの抽出物は、水性溶媒により抽出されることができる。水性溶媒は、水を含んでいる限りにおいて限定されるものではなく、例えば水、生理食塩水、又は緩衝液などを挙げることができる。緩衝液としては、リン酸緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液、炭酸ナトリウム緩衝液、クエン酸緩衝液、クエン酸リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、及びトリス緩衝液などが挙げられる。好ましい水性溶媒は、リン酸ナトリウム緩衝液である。前記水性溶媒のpHは、特に制限されず、例えば3〜10、好ましくは、5〜8、より好ましくは、6.5〜7.5である。
本発明の免疫賦活剤に含まれるクミン、フェンネル、又はカルダモンの抽出物は、有機溶媒と水性溶媒との混合物により抽出されることができる。抽出溶媒中に含まれる水性溶媒の量は、抽出液中に有効成分が充分に抽出されることができる限りにおいては限定されないが、抽出溶媒の全体量に対して、例えば50重量%以上、70重量%以上、又は90重量%以上であることができる。
本発明の免疫賦活剤に含まれる有効成分は、水性溶媒であるリン酸ナトリウム緩衝液又は有機溶媒であるエタノールにより抽出することができる。すなわち、前記有効成分は、様々な溶媒で抽出可能であると考えられ、リン酸ナトリウム緩衝液以外の水性溶媒又はエタノール以外の有機溶媒によっても抽出可能である。
本発明の免疫賦活剤に含まれるクミン、フェンネル、又はカルダモンの抽出物を溶剤抽出法で抽出する場合、抽出温度は、抽出液中に有効成分が充分に抽出されることのできる温度である限り、特に限定されるものではないが、−50℃〜100℃であることが好ましく、−25℃〜50℃であることがより好ましく、−25℃〜25℃であることがさらに好ましく、−10℃〜10℃であることがさらに好ましく、0℃〜10℃であることが最も好ましい。
本発明の免疫賦活剤に含まれるクミン、フェンネル、又はカルダモンの抽出物を溶剤抽出法で抽出する場合、抽出効率が向上するように、撹拌又は振盪しながら実施することが好ましい。抽出時間は、例えば根、茎、葉、花、果実、又は種子などの使用部分に応じて適宜決定することができる。また、抽出時間は、例えばハーブの状態、すなわち、生若しくは乾燥物であるか、又は破砕物若しくは粉体の状態に加工した場合にはその加工状態に応じて適宜決定することができる。さらに、抽出時間は、例えば抽出液の温度、又は撹拌若しくは振盪の有無などの抽出条件に応じて適宜決定することができる。抽出時間は、通常、1分〜72時間であり、1時間〜48時間であることが好ましく、12時間〜36時間であることが最も好ましい。
本発明の免疫賦活剤に含まれるクミン、フェンネル、又はカルダモンの抽出物は、水蒸気蒸留法により抽出することができる。水蒸気蒸留法とは、カラムに充填した原料に水蒸気を通気し、水蒸気に伴われて留出してくる香気成分を水蒸気とともに凝縮させる方法である。蒸留手段として、加圧水蒸気蒸留、常圧水蒸気蒸留、及び減圧水蒸気蒸留のいずれかを採用することができる。
圧搾法とは、クミン、フェンネル、又はカルダモンに物理的に圧力をかけて、抽出物を抽出する方法である。常温で行う直接圧搾法、高温で行う高温圧搾法、及び低温で行う低温圧搾法がある。本発明の免疫賦活剤に含まれる抽出物は、いずれの圧搾法を用いても抽出可能である。
本発明の免疫賦活剤に含まれる抽出物は、超臨界抽出法を用いて抽出可能である。超臨界抽出法とは、超臨界状態にある物質を用いて特定の植物から抽出物を抽出する方法である。超臨界状態にある物質としては、例えば二酸化炭素は、強力な溶解力を有するため、コーヒーの脱カフェイン、又は植物などの天然原料からの香料及び医薬品成分抽出に一般に用いられている。
本発明の免疫賦活剤は、クミン、フェンネル、又はカルダモンの抽出物を含んでいてもよく、クミン、フェンネル、又はカルダモンの抽出物から分画した活性成分を含む画分、又は精製した活性成分を含むものでもよい。前記の活性成分を含む画分は、例えば陰イオン交換クロマトグラフィ、透析膜による濾過又はSDS−PAGEなどによって、抽出物を分画することにより得ることができる。本発明の免疫賦活剤には、好ましくは、SDS−PAGEにより分離される約30kDaのタンパク質を含む分画が含まれる。前記抽出物は固体、例えば前記抽出液又は前記分画液から溶媒を除去したものでもよい。固体としては、ペレット又は乾燥物等が例示できる。前記乾燥物は、例えば凍結乾燥物があげられる。溶媒の除去処理は、例えば自然乾燥処理、加熱乾燥処理、及び凍結乾燥処理等があげられる。
本発明の免疫賦活剤に含まれる有効成分は、クミン、フェンネル、又はカルダモンから抽出される抽出物に含まれている。したがって、クミン、フェンネル、又はカルダモンは免疫賦活効果を有する成分を含んでおり、クミン、フェンネル、又はカルダモンの粉砕物、例えば粉末状、粒状、又はペースト状のものも、抽出物に含まれるものと同じ有効成分を含んでいる。したがって、クミン、フェンネル、又はカルダモンの粉砕物も免疫賦活剤として使用可能であると考えられる。すなわち、本発明の免疫賦活剤の効果は、抽出物の経口投与によって得ることができる。これらの抽出物は、粉砕物から得られるものであり、粉砕物中にも免疫賦活剤の有効成分が含まれている。したがって、粉砕物の経口投与によっても、免疫賦活剤の効果を得ることができる。
本発明における有効成分である、クミン、フェンネル、及びカルダモンからなる群から選択される少なくとも1種のハーブの粉砕物又は抽出物は、それ単独で、あるいは、好ましくは薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる通常の担体又は希釈剤と共に、疾患の治療又は予防が必要な対象[動物、好ましくは哺乳動物(特にはヒト)]に有効量で投与することができる。また、ヒト以外の動物には、飼料として飲食物の形で与えることも可能である。前記疾患は、特に制限されず、例えば癌又は感染症等があげられる。前記癌は、特に制限されず、例えば肺癌、肝臓癌、胃腸の癌、腎臓癌、膵臓癌、甲状腺癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、又は骨癌等があげられる。前記感染症は、特に制限されず、例えば肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス等の各種ウイルスの感染症、MRSA、溶連菌、又はマイコプラズマ等の感染症等があげられる。
本発明の免疫賦活剤は、クミン、フェンネル、又はカルダモンの粉砕物又は抽出物から成るものでもよく、また、クミン、フェンネル、又はカルダモンの粉砕物又は抽出物を含むものでもよい。本発明の免疫賦活剤が、クミン、フェンネル、又はカルダモンの粉砕物又は抽出物を含むものである場合、他の添加剤を含むことができる。
本発明の免疫賦活剤の投与剤型としては、特には限定がなく、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤、又は非経口剤を挙げることができる。
前記経口剤は、例えばゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ぶどう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を用いて、常法に従って製造することができる。
非経口剤としては、例えば注射剤を挙げることができる。注射剤の調製においては、有効成分の他に、例えば生理食塩水若しくはリンゲル液等の水溶性溶剤、植物油若しくは脂肪酸エステル等の非水溶性溶剤、ブドウ糖若しくは塩化ナトリウム等の等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、懸濁化剤、又は乳化剤などを任意に用いることができる。
本発明の免疫賦活剤は、限定されるものではないが、クミン、フェンネル、及びカルダモンからなる群から選択される少なくとも1種のハーブの抽出物を、エタノール抽出物を濾過及び乾燥することにより得られた乾固物として、例えば0.01〜500mg/mL、好ましくは、0.1〜400mg/mL、より好ましくは0.5〜300mg/mL、さらに好ましくは1〜200mg/mL、さらに好ましくは2〜150mg/mL、最も好ましくは1〜100mg/mLで含有することができる。
本発明の免疫賦活剤の投与量は、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法などに応じて適宜決定することができるが、例えばエタノール抽出物を濾過及び乾燥することにより得られた乾固物として、1〜3000mg/kg体重/日、好ましくは、5〜2000mg/kg体重/日、より好ましくは10〜1500mg/kg体重/日、さらに好ましくは15〜1000mg/kg体重/日、さらに好ましくは20〜800mg/kg体重/日、最も好ましくは25〜400mg/kg体重/日であることができる。
また、本発明の免疫賦活剤を用いる場合の投与量は、水性溶媒により得られた抽出物の凍結乾燥粉末として、0.1〜1000mg/kg体重/日、好ましくは0.5〜500mg/kg体重/日、より好ましくは1〜250mg/kg体重/日、さらに好ましくは3〜100mg/kg体重/日、さらに好ましくは5〜50mg/kg体重/日、又は最も好ましくは8〜30mg/kg体重/日であることができる。
もちろん、上記の投与法は一例であり、他の投与法であってもよい。ヒトへの免疫賦活剤の投与方法、投与量、投与期間、及び投与間隔等は、管理された臨床治験によって決定されることが望ましい。
本発明の免疫賦活剤は、ヒトに対して投与することができるが、投与対象はヒト以外の動物であってもよく、イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、モルモット、及びリス等のペット;牛及び豚等の家畜;マウス、ラット等の実験動物;並びに、動物園等で飼育されている動物等が挙げられる。
本発明の免疫賦活剤は、免疫賦活用医薬組成物であることができる。
(免疫賦活)
本発明の免疫賦活剤が有する免疫賦活活性としては、例えば抗体産生促進活性、サイトカイン分泌促進活性及び/又はマクロファージの活性化が挙げられる。
(抗体産生促進)
抗体は、抗体産生細胞から産生される。本発明の免疫賦活剤は、抗体産生細胞からの抗体の産生を促進する。抗体産生細胞は、好ましくは哺乳動物(ヒトなどの霊長類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、又はマウス)の細胞であり、最も好ましくはヒトの細胞である。また、抗体産生細胞は、インビボ又はインビトロの細胞であることができる。産生が促進される抗体は、好ましくは、IgM、IgA、及び/又はIgG抗体であり、最も好ましくは、IgM抗体である。
(サイトカイン産生促進)
分泌が促進されるサイトカインとしては、例えばインターロイキン、インターフェロン、ケモカイン、リンフォカイン、造血因子、細胞増殖因子、細胞傷害因子、アディポカイン、及び神経栄養因子などが挙げられる。インターロイキンとしては、IL1〜35などが挙げられる。インターフェロンとしては、IFN−α、IFN−β、及びIFN−γなどが挙げられる。ケモカインとしては、MIP及びMCPなどが挙げられる。造血因子としては、SCF、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、エリスロポエチン、及びトロンボポエチンなどが挙げられる。細胞増殖因子としては、上皮成長因子、繊維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、肝細胞成長因子、及びトランスフォーミング成長因子などが挙げられる。細胞傷害因子としては、TNF−α及びTNF−βなどが挙げられる。アディポカインとしては、レプチンなどが挙げられる。神経栄養因子としては、NGFなどが挙げられる。好ましいサイトカインは、IL−4、IL−6、TNF−α及び/又はIFN−γである。分泌が促進されるサイトカインは、これらの1種であってもよく、又は2種以上であってもよい。
(マクロファージ活性化)
本発明の免疫賦活剤が奏する具体的なマクロファージ活性化の作用としては、例えば貪食活性促進、活性酸素産生促進、一酸化窒素産生促進、及び抗原提示機能の増強から選択される1つ又は2つ以上が挙げられる。
マクロファージの貪食作用とは、マクロファージが、細菌、ウイルス、又は死細胞等の異物を取り込み、これらを分解する機能であり、食作用又はファゴサイトーシスとも呼ばれる。本発明の免疫賦活剤は、このマクロファージの貪食作用を促進することができる。
マクロファージは、微生物、ウイルス、及び癌細胞などの異物に対して強い毒性を示す、活性酸素、例えばスーパーオキサイド若しくは過酸化水素、又は一酸化窒素を産生することにより、これらの異物を殺傷又は排除する。本発明の免疫賦活剤は、このマクロファージの活性酸素産生促進作用及び/又は一酸化窒素産生促進作用を促進することができる。
抗原提示とは、抗原提示細胞が細菌などの抗原を細胞内へ取り込んで分解を行った後に、細胞表面へその一部を提示する機構である。マクロファージは、貪食作用により取り込みそして分解した細菌などをいくつかの断片にして、マクロファージ内に存在するMHCクラスII分子と結合させ、細胞表面に提示する。本発明の免疫賦活剤は、このマクロファージの抗原提示機能を促進することができる。
[2]食品組成物
本明細書において、食品組成物とは、本発明の免疫賦活剤と食品又は飲料とを含むものを意味する。本発明の食品組成物は、本発明の免疫賦活剤を含み、したがって、免疫賦活用食品組成物として使用できる。
食品としては、具体的には、サラダなどの生鮮調理品;ステーキ、ピザ、ハンバーグなどの加熱調理品;野菜炒めなどの炒め調理品;トマト、ピーマン、セロリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、及びアスパラガスなどの野菜及びこれら野菜を加工した調理品;クッキー、パン、ビスケット、乾パン、ケーキ、煎餅、羊羹、プリン、ゼリー、アイスクリーム類、チューインガム、クラッカー、チップス、チョコレート及び飴等の菓子類;うどん、パスタ、及びそば等の麺類;かまぼこ、ハム、及び魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品;チーズ、クリーム、及びバターなどの乳製品;みそ、しょう油、ドレッシング、ケチャップ、マヨネーズ、スープの素、麺つゆ、カレー粉、みりん、ルウ、シーズニングスパイス等の調味料類;豆腐などの大豆食品;こんにゃく;並びにサプリメントなどを挙げることができる。食品は、好ましくは、ルウ(例えばカレー用若しくはシチュー用のもの)、シーズニングスパイス、又はサプリメントである。
飲料としては、例えばコーヒー飲料;ココア飲料;前記の野菜から得られる野菜ジュース;グレープフルーツジュース、オレンジジュース、ブドウジュース、及びレモンジュース等の果汁飲料;緑茶、紅茶、煎茶、及びウーロン茶等の茶飲料;ビール、ワイン(赤ワイン、白ワイン、又はスパークリングワインなど)、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ラム、ジン、及びリキュール類等のアルコール飲料;乳飲料;豆乳飲料;流動食;並びにスポーツ飲料などを挙げることができる。飲料は、好ましくは、スパイスティー(例えばハーブティー又はチャイ)である。
食品又は飲料には、動物に対する飼料が含まれる。対象となる動物は、例えばヒトなどの霊長類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、又はマウス等が挙げられる。
これらの食品又は飲料には、所望により、酸化防止剤、香料、酸味料、着色料、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、香辛料、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤、植物油、動物油、糖及び糖アルコール類、ビタミン、有機酸、果汁エキス類、野菜エキス類、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品添加物及び食品素材を単独で又は2種以上組み合わせて配合することができる。これらの食品素材及び食品添加物の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜決定することができる。
これらの食品又は飲料は、例えばレトルト及びオートクレーブなどの加熱加圧滅菌、バッチ式殺菌、プレート殺菌、通電加熱殺菌、マイクロ波加熱殺菌、並びに、インジェクション及びインフュージョンなどのスチーム殺菌などの一般的な殺菌処理を行うことができる。
食品及び飲料には、機能性食品(飲料)及び健康食品(飲料)が含まれる。本明細書において「健康食品(飲料)」とは、健康に何らかの効果を与えるか、あるいは、効果を期待することができる食品又は飲料を意味し、「機能性食品(飲料)」とは、前記「健康食品(飲料)」の中でも、生体調節機能(すなわち、免疫賦活機能)を充分に発現することができるように設計及び加工された食品又は飲料を意味する。機能性食品及び健康食品は、顆粒状、固形状、液状、カプセル状、ゲル状、又は錠剤状であることができる。
(作用)
本発明の免疫賦活剤の作用機序は、完全に解明されているわけではないが、以下のように推論することができる。しかしながら、本発明は以下の説明によって限定されるものではない。
リンパ球細胞膜上の受容体を介して細胞内へ取り込まれた本発明の免疫賦活剤に含まれる活性成分は、細胞内シグナル伝達を経て細胞質の様々な因子を活性化させ、核内に移行した後、転写因子として作用し、種々の遺伝子発現を示すと考えられる。最終的に抗体及びサイトカインの産生促進につながり、分泌促進に関与し、さらにマクロファージを活性化させると考えられる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
《実施例1:マウス脾臓Bリンパ球細胞におけるクミンアルコール抽出物の免疫賦活効果の検討》
本実施例では、マウス脾臓Bリンパ球細胞における、クミンアルコール抽出物による免疫賦活効果を検討した。クミンの種子の粉末6mgに10倍量の100%エタノールを加え、4℃で24時間震盪抽出した。上清を回収しエバポレーターで濃縮乾固させ重量を測定した。乾固物の濃度が100mg/mLとなるようにエタノールで調整したものをクミン粗抽出サンプルとした。BALB/cマウス(♀、8週齢)から脾臓を摘出し、脾臓Bリンパ球細胞を調製した。脾臓Bリンパ球細胞は2.5×10細胞/mLの細胞密度で培養し、クミン粗抽出サンプルを4又は8μg/mLの濃度となるように添加した。COインキュベーター内で37℃で5%CO条件下で24時間培養後、培養上清を回収し、分泌されたIgM及びIgA抗体についてELISA法(Mouse IgA ELISA kit、Bethyl社)による定量を行った。濃度別のクミン粗抽出サンプルの、コントロールに対する相対的なIgM及びIgA抗体産生量を図1に示す。
その結果、4μg/mLの濃度でクミン粗抽出サンプルをマウス脾臓Bリンパ球細胞に添加した場合、コントロールに対して2倍以上のIgM産生促進活性及び約1.7倍のIgA産生促進活性を確認することができた。8μg/mLの濃度では、IgA産生促進活性は、約1.9倍に増加した。
《実施例2:マウス脾臓Bリンパ球細胞におけるカルダモンアルコール抽出物の免疫賦活効果の検討》
本実施例では、マウス脾臓Bリンパ球細胞における、カルダモンアルコール抽出物による免疫賦活効果を検討した。カルダモンの種子の粉末6mgに10倍量の100%エタノールを加え、4℃で24時間震盪抽出した。上清を回収しエバポレーターで濃縮乾固させ重量を測定した。乾固物の濃度が50mg/mLとなるようにエタノールで調整したものをカルダモン粗抽出サンプルとした。BALB/cマウス(♀、6週齢)から脾臓を摘出し、脾臓Bリンパ球細胞を調製した。脾臓Bリンパ球細胞は2.5×10細胞/mLの細胞密度で培養し、カルダモン粗抽出サンプルを0.08μg/mLの濃度となるように添加した。COインキュベーター内で37℃で5%CO条件下で24時間培養後、培養上清を回収し、分泌されたIgM抗体についてELISA法(Mouse IgM ELISA kit、Bethyl社)による定量を行った。カルダモン粗抽出サンプルのコントロールに対する相対的なIgM抗体産生量を図2に示す。
その結果、0.08μg/mLの濃度でカルダモン粗抽出サンプルをマウス脾臓Bリンパ球細胞に添加した場合、コントロールに対して約2倍のIgM産生促進活性を確認することができた。
《実施例3:ヒト型ハイブリドーマHB4C5細胞における、フェンネル、カルダモン、及びクミンの各々のアルコール抽出物の免疫賦活効果の検討》
本実施例では、ヒト型ハイブリドーマHB4C5細胞における、フェンネル、カルダモン、及びクミンの各々のアルコール抽出物による免疫賦活効果を検討した。フェンネル、カルダモン、及びクミンの各々の種子の粉末に10倍量の100%エタノールを加え、ボルテックスで十分に撹拌し、4℃で24時間震盪抽出後、直ちに3,000rpmで20分間遠心した。上清を回収しエバポレーターで濃縮乾固させ重量を測定した。濃度を1mg/mLとなるようにエタノールを加えて溶解し、0.22μmフィルターで濾過滅菌を行ったものを粗抽出サンプルとして実験に使用した。ヒト型ハイブリドーマHB4C5細胞は5×10細胞/mLの細胞密度で培養し、様々な濃度となるように各々の粗抽出サンプルを添加した。COインキュベーター内で37℃で5%CO条件下で24時間培養後、培養上清を回収し、分泌されたIgM抗体についてELISA法による定量を以下のように行った。抗ヒトIgMを重炭酸緩衝液に溶解し96穴プレートに添加し、37℃で2時間反応させた。0.05%Tween−PBSで洗浄後、1%BSA溶液を添加し、ブロッキングを37℃で1時間行った。洗浄後、ハーブのサンプルを添加した細胞の培養上清及び検量線用ヒトIgMを加え、37℃で1時間反応させた。洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識した抗ヒトIgM溶液を加えた。0.03%H−0.05Mクエン酸緩衝液に2,2’−アジノ−ビス(エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸を溶解し、各穴に添加し発色させた。発色後、1.5%シュウ酸溶液を添加し反応を停止させた。プレートリーダー415nm吸光値を測定し、検量線をもとにヒトIgMを定量した。培養6時間後及び12時間後の、各々のハーブの粗抽出物のコントロールに対する相対的なIgM抗体産生量を図3及び4に示す。
その結果、フェンネル、カルダモン、及びクミンの全てにおいて、IgM抗体産生促進活性を確認することができた。フェンネルに関しては、125μg/mL濃度となるように添加した場合に、培養6時間後において、コントロールに対して約1.8倍のIgM抗体産生促進活性を確認することができた。カルダモンに関しては、125μg/mL濃度となるように添加した場合に、培養12時間後において、コントロールに対して約3倍のIgM抗体産生促進活性を確認することができた。クミンに関しては、250μg/mL濃度となるように添加した場合に、培養6時間後において、コントロールに対して約2.4倍のIgM抗体産生促進活性を確認することができた。
《実施例4:マウス脾臓CD4細胞における、フェンネル、カルダモン、及びクミンの各々のアルコール抽出物の免疫賦活効果の検討》
本実施例では、マウス脾臓CD4細胞における、フェンネル、カルダモン、及びクミンの各々のアルコール抽出物による免疫賦活効果を検討した。BALB/cマウス(♀、6週齢)から脾臓を摘出し、磁気による選択操作を行い、CD4細胞(ヘルパーT細胞)集団を得た。2.5×10細胞/mLの細胞密度で24穴プレートに播き込み、3種のハーブ(フェンネル、クミン、カルダモン)の種子に関して実施例3と同様の方法で得た100%エタノールによる粗抽出サンプルを様々な濃度となるように添加し、COインキュベーター内で37℃で5%CO条件下で48時間培養後、培養上清を回収し、IL−4及びIL−6の産生分泌量をELISA法[Mouse IL−4 ELISA MAX Standard(BioLegend社:431101)及びMouse IL−6 ELISA MAX Standard(BioLegend社:431301)]にて定量した。結果を図5及び6に示す。
その結果、IL−4については3種全てのハーブで産生促進が認められたことから、分泌したIL−4が活性化されたB細胞に作用し、IgGへのクラススイッチを促進することでIgG1抗体の産生促進に関わる可能性が示唆される。
IL−6についても3種全てのハーブで産生促進が認められた。IL−6はB細胞及び形質細胞の増殖及び活性化に関わっており、IgM、IgG、及びIgAの産生促進を増強する。特にクミンでは、IL−6産生能促進活性が高く、免疫賦活効果が期待できる。
《実施例5:マウス脾臓CD4細胞における、クミンアルコール抽出物の免疫賦活効果の検討》
本実施例では、クミンの種子の100%エタノールによる粗抽出サンプルを用いたこと、IFN−γの産生分泌量を定量したこと、及びMouse IFN−G ELISA MAX Standard(BioLegend社:430801)を使用してELISA法による定量を行ったことを除いては、実施例4の操作を繰り返して、クミンアルコール抽出物による免疫賦活効果を検討した。結果を図7に示す。
その結果、クミンにおいて、IFN−γの産生促進活性が認められたことから、フェンネル、カルダモン、及びクミンの香辛料成分が液性免疫の制御に関わる一方で、クミンは細胞性免疫の制御にも関わることを示している。
《実施例6:BALB/cマウスにおけるクミンエタノール抽出物の経口投与実験》
図8に記載した条件に基づき、BALB/cマウスにおいてクミン抽出物の経口投与実験を行った。
(1)サンプルの調製
50mL遠心管にクミンの種子の粉末3gと100%エタノール30mLを加えたものを10本用意し、4℃で24時間抽出した。その後3000rpmで20分間遠心分離し濾過した。濾過した液をエバポレーターで濃縮し乾固物とした。収率は23.16%であった。乾固物をコーン油で溶解し、1000mg/kgの濃度に調整した。塊になっている乾固物は薬さじでよく伸ばしてつぶした。この溶液をコーン油で溶解して各投与濃度に調整した。
(2)マウスへの経口投与
BALB/cマウス(メス、7週齢)に対して、前記(1)で調製した、コーン油で各投与濃度に調整したクミンエタノール抽出物を1日1回、100μL、18日間投与した。コントロール群(5匹)にはコーン油のみを投与し、そしてクミンエタノール抽出物の乾固物として、Low群(6匹)には、25mg/kg/日(0.5mg/匹/日)、Medium群(6匹)には、100mg/kg/日(2mg/匹/日)、そしてHigh群(6匹)には、400mg/kg/日(8mg/匹/日)の濃度で投与した。
(3)B細胞培養及び抗体産生量定量
各実験群のマウスから脾臓B細胞を回収し、12ウェル培養プレートの各ウェルに3.0×10細胞/mLとなるように5%FBS−RPMI1640培地を注入した。24時間培養後、ELISAキット(Mouse IgG ELISA kit、Bethyl社)を用いて抗体産生量を定量した。IgA及びIgM測定に関しては、それぞれ、実施例1及び2と同じキットを用いた。結果を図9に示す。
Medium群及びHigh群において、IgM、IgA、及びIgGの各抗体の産生量の有意な増加が認められた。また、Low群においてもIgMが増加傾向にあった。この実験結果により、クミンエタノール抽出物が、抗体産生促進作用を有することが示された。
(4)血清中の抗体及びサイトカイン量の定量
マウス血清中の血清中の抗体及びサイトカイン量をELISAキット(Mouse IgE ELISA kit、Bethyl社)を用いて定量した。IgM、IL−4、及びIL−6測定に関しては、それぞれ、実施例2及び4と同じキットを用いた。結果を図10及び11に示す。
Low及びMedium群において、コントロール群と比較してIgM産生量が増加傾向にあった。一方IgE濃度はコントロール群とクミン抽出物を投与した実験群とで差が認められず、クミン抽出物にアレルギーの誘発作用はないものと考えられる。
IL−4では、Medium群において、産生量の有意な増加が認められた。また、Low及びHigh群においても、産生量は増加傾向であった。IL−6では、Low群、Medium群、及びHigh群の各々において、コントロール群と比較して産生量が増加傾向にあった。この実験結果により、クミンエタノール抽出物が、抗体及びサイトカイン産生促進作用を有することが示された。
《実施例7:ヒト型ハイブリドーマHB4C5細胞におけるクミン水性溶媒抽出物の免疫賦活効果の検討》
クミン種子粉末を0.1g/mLとなるように10mM NaPB(リン酸緩衝液)で懸濁し、15回/分で24時間撹拌抽出した。4℃条件下で、遠心処理(1,2000rpm)を20分間行った後、上清を回収した。4℃条件下で、遠心処理(70,000rpm)を30分間行った後、上清を回収した。分画分子量14kDの透析膜を用いて10mM NaPBに対して一晩透析処理した。1M NaOHを用いてpHを7.4に合わせ、ポアサイズ0.45μmのフィルターで濾過滅菌したものをクミン水性溶媒抽出物(CCE)として実験に使用した。
種々のタンパク質濃度となるようにクミン水性溶媒抽出物サンプルを添加したITES−ERDF培地に、ヒトハイブリドーマHB4C5細胞を5.0×10細胞/mLで播種し、6時間培養後、抗ヒトIgM抗体(Cappel社製)、HRP標識抗ヒトIgM抗体(Abcam社製)、及び発色基質であるABTS(和光純薬社製)を用いて、ELISA法により培養液中のIgM抗体量を測定した。コントロールには10mM NaPB(リン酸緩衝液)を用いた。結果を図12に示す。また、本発明の免疫賦活剤の活性物質は、特定されておらず、タンパク質又はタンパク質以外の物質である可能性があるが、本明細書においては、便宜的に抽出物の濃度を抽出物中のタンパク質の濃度を用いて示すことがある。
HB4C5細胞の抗体産生において、コントロールに対し、クミン水性溶媒抽出物はIgM産生促進効果を示し、その効果は最も高いところで2.2倍程度であった。
《実施例8:マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞におけるクミン水性溶媒抽出物の免疫賦活効果の検討》
種々のタンパク質濃度となるようにクミン水性溶媒抽出物サンプルを添加した10% FBS−DMEM培地で、マウス由来マクロファージ細胞株RAW264.7細胞(3×10細胞/mL)を12時間培養した後、ELISA法(Mouse IL−6 ELISA MAX Standard、BioLegend社製;Mouse TNF−α ELISA Ready−set−go、eBioscience社製)を用いて培養液中のサイトカイン(IL−6、TNF−α)量を測定した。コントロールには10mM NaPBを用いた。結果を図13に示す。
その結果、クミン水性溶媒抽出物は、濃度依存的にIL−6及びTNF−αの産生を促進させることが分かった。
《実施例9:初代マウス腹腔内マクロファージ(P−Mac)のサイトカイン産生におけるクミン水性溶媒抽出物の効果》
BALB/cマウス腹腔からマクロファージ(P−Mac)を回収し、種々のタンパク質濃度となるようにクミン水性溶媒抽出物を添加した10% FBS−RPMI1640培地でP−Mac(3×10細胞/mL)を12時間培養した後、ELISA法を用いて、培養液中のサイトカイン(IL−6、TNF−α)量を測定した。ELISA法には、実施例8と同じキットを使用した。コントロールには10mM NaPBを用いた。結果を図14に示す。
その結果、クミン水溶性抽出物は、濃度依存的にIL−6及びTNF−αの産生を促進させることが分かった。最も産生が多い濃度においては、コントロールと比較して、IL−6産生は約75倍、TNF−α産生は約6倍の産生促進効果が認められた。
《実施例10:マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞による一酸化窒素(NO)産生におけるクミン水性溶媒抽出物の効果》
一酸化窒素(NO)は活性酸素の一種であり、マクロファージはバクテリアを処理するために一酸化窒素を産生する。本実施例では、RAW264.7細胞のNO産生に及ぼすクミン水性溶媒抽出物の効果を検討した。種々のタンパク質濃度となるようにクミン水性溶媒抽出物を添加した10% FBS−DMEMでRAW264.7細胞(3×10細胞/mL)を12時間培養した後、その培養液中のNO濃度をGriess法により測定した。コントロールには10mM NaPBを用いた。結果を図15に示す。
その結果、クミン水性溶媒抽出物は、RAW264.7細胞において、一酸化窒素の産生を促進することが分かった。
《実施例11:マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞の貪食活性に与えるクミン水性溶媒抽出物の効果》
タンパク質濃度1000μg/mLとなるようにクミン水性溶媒抽出物を添加した10% FBS−DMEM培地でRAW264.7細胞(3×10細胞/mL)を6時間培養した後、テキサスレッドで標識したザイモサンAを添加し、1時間培養した後、フローサイトメーターを用いてその貪食活性を測定した。コントロールには10mM NaPBを用いた。結果を図16に示す。
その結果、クミン水性溶媒抽出物はRAW264.7細胞の貪食活性を有意に促進することが明らかになった。
《実施例12:マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞の遺伝子発現に及ぼすクミン水性溶媒抽出物の効果》
クミン水性溶媒抽出物がRAW264.7細胞のサイトカイン産生及びNO産生を促進したことから、本実施例では、マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞を使用して、クミン水性溶媒抽出物がサイトカイン遺伝子及びiNOS遺伝子(NO産生に関与する誘導型一酸化窒素合成酵素)の遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。
(RNAの抽出)
タンパク質濃度1000μg/mLとなるようにクミン水性溶媒抽出物あるいは10mMNaPBを添加した10%FBS−DMEM培地(3×10細胞/mL)で12時間培養したRAW264.7細胞を回収し、1mLのSepasol−RNA I Super G(ナカライテスク社製)を加えて5分間室温静置し、その後、200μLのクロロホルム(和光純薬社製)を加えて、撹拌した。70,000rpm、15分間遠心した後、上層を回収した。回収した上層に2−プロパノール(和光純薬社製)を500μL添加し、10分間室温静置した。70,000rpm、10分間遠心した後、上層を除去し、75%エタノールを1mL加え、転倒混和した。70,000rpm、10分間遠心した後、上層を除去し、風乾した。DEPC水を適量添加し、氷上で15分以上静置することで、RNAの沈殿を完全に溶解させた。
(cDNA合成)
PCR用チューブに1μgのRNAと10μMのオリゴdTを加え、サーマルサイクラー5分間70℃処理した後、氷冷した。そこに、逆転写酵素(Promega社製)、dNTPミックス(東洋紡社製)を加え、42℃で60分間インキュベートした。
(リアルタイムRT−PCR)
Thunderbird SYBR qPCR Mix(東洋紡社製)、センスプライマー、アンチセンスプライマー及びcDNAを加え、StepOnePlus Real−time PCR System(Applied Biosystem社製)にて、95℃ 1分−(95℃ 3秒、60℃ 30秒)x40サイクルの条件で反応させ、遺伝子発現レベルを解析した。内部標準として、βアクチン遺伝子を用いた。
IL−6センスプライマー:AAGCCAGAGTCCTTCAGAGAGAT(配列番号1)
IL−6アンチセンスプライマー:TTGGATGGTCTTGGTCCTTAGC(配列番号2)
TNF−αセンスプライマー:CTACTCCCAGGTTCTCTTCAA(配列番号3)
TNF−αアンチセンスプライマー:GCAGAGAGGAGGTTGACTTTC(配列番号4)
βアクチンセンスプライマー:CATCCGTAAAGACCTCTATGCCAAC(配列番号5)
βアクチンアンチセンスプライマー:ATGGAGCCACCGATCCACA(配列番号6)
iNOSセンスプライマー:CCAAGCCCTCACCTACTTCC(配列番号7)
iNOSアンチセンスプライマー:CTCTGAGGGCTGACACAAGG(配列番号8)。
結果を図17に示す。クミン水性溶媒抽出物は、マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞において、サイトカイン遺伝子発現及びiNOS遺伝子発現を促進していた(図17)。したがって、クミン水性溶媒抽出物は、サイトカイン遺伝子発現及びiNOS遺伝子発現を活性化することで、サイトカイン産生及びNO産生を促進したと考えられる。
《実施例13:初代マウス腹腔内マクロファージ(P−Mac)の遺伝子発現に及ぼすクミン水性溶媒抽出物の効果》
本実施例では、初代マウス腹腔内マクロファージ(P−Mac)を使用して、クミン水性溶媒抽出物がサイトカイン遺伝子及びiNOS遺伝子の遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。BALB/cマウス腹腔からマクロファージ(P−Mac)を回収し、タンパク質濃度1000μg/mLとなるようにクミン水溶性抽出物を添加した10% FBS−RPMI 1640培地でP−Mac(5×10細胞/mL)を6時間培養した後に細胞からRNAを抽出して、リアルタイムRT−PCR法によってクミン水溶性抽出物がサイトカイン及びiNOS遺伝子発現に及ぼす効果を検討した。コントロールには10mM NaPBを用いた。なお、RNAの抽出、cDNA合成、及びリアルタイムRT−PCRの各操作手順は、実施例12と同様である。結果を図18に示す。
クミン水性溶媒抽出物は、初代マウス腹腔内マクロファージ(P−Mac)において、サイトカイン遺伝子発現及びiNOS遺伝子発現を促進していた(図18)。したがって、クミン水性溶媒抽出物は、サイトカイン遺伝子発現及びiNOS遺伝子発現を活性化することで、サイトカイン産生及びNO産生を促進したと考えられる。
《実施例14:TLR4阻害剤処理の影響》
本実施例では、TLR4阻害剤を用いて処理したRAW264.7細胞に対するクミン水性溶媒抽出物のサイトカイン産生促進効果を検討することにより、クミン水性溶媒抽出物のマクロファージ活性促進効果が、マクロファージ細胞表面上に存在するTLR4をターゲットにしたものかどうかを明らかにするために実験を行った。
TLR4阻害剤(TAK−242)で処理したRAW264.7細胞(3×10細胞/mL)を、クミン水性溶媒抽出物を添加した10%FBS−DMEM培地で12時間培養した後、培養液中のIL−6量をELISA法で測定した。ELISA法には、実施例8と同じキットを使用した。コントロールには10mM NaPBを用いた。結果を図19に示す。
その結果、TLR4阻害剤(TAK−242)によってLPSの活性は95%阻害され、クミン水性溶媒抽出物は80%が阻害された。このことからクミン水性溶媒抽出物の作用は、主にTLR4経路により活性化されることが明らかになった。また、TLR4阻害剤処理下においても多少活性が残存することから、その他の活性化経路の関与もあるのではないかと考えられる。
《実施例15:エンドトキシン阻害剤処理の影響》
本実施例では、エンドトキシン除去キット(EndoTrap HD:フナコシ)によりクミン水性溶媒抽出物中のエンドトキシンを除去してから、実施例14と同様の手順でIL−6産生量を測定した。結果を図20に示す。
その結果、最大活性はエンドトキシン除去前のクミン水性溶媒抽出物とほぼ同程度であり、クミン水性溶媒抽出物の活性因子は、エンドトキシンではないことが明らかになった。
《実施例16:NF−κB遺伝子発現に及ぼすクミン水性溶媒抽出物の影響》
細胞質内においてはNF−κBはIκBと結合しており、不活性化状態にある。TLR4が活性化されるとシグナルが伝達され、IκBがリン酸化を受けることで分解が誘導され、NF−κBは遊離状態となる。遊離状態のNF−κBは核内に移行し、転写因子として作用する。そこで、クミン水性溶媒抽出物の作用により、RAW264.7細胞内のNF−κBの核移行がどの様な影響を受けるかを抗マウスNF−κB抗体及び抗マウスHiston H3抗体(Cell Signalling Technology社製)を使用して、ウエスタンブロット法により解析した。タンパク質濃度1000μg/mLとなるようにクミン水性溶媒抽出物を添加した10% FBS−DMEM培地でRAW264.7細胞(4×10細胞/mL)を15分間培養した後、細胞を回収し、ウエスタンブロット法を用いてMAPK、NF−κBシグナリングを確認した。コントロールには10mM NaPBを用いた。
その結果、図21に示したように、クミン水性溶媒抽出物(CCE)の作用により、細胞質NF−κB量が減少し、核内NF−κB量が増加することが明らかになった。このことから、クミン水性溶媒抽出物は、NF−κBの核移行を促進することにより、転写活性を上昇させ、マクロファージを活性化していることが明らかになった。
《実施例17:MAPキナーゼ経路に及ぼすクミン水性溶媒抽出物の影響》
次に、MAPキナーゼ経路に及ぼすクミン水性溶媒抽出物の効果を検討した。MAPキナーゼファミリーである、ERK、JNK、及びp38のリン酸化による活性化に及ぼす影響を、タンパク質濃度1000μg/mLとなるようにクミン水性溶媒抽出物を添加したRAW264.7細胞(4×10細胞/mL)において、抗マウスERK抗体、抗マウスリン酸化ERK抗体、抗マウスJNK抗体、抗マウスリン酸化JNK抗体、抗マウスp38抗体、抗マウスリン酸化p38抗体、及び抗マウスActin抗体(Cell Signalling Technology社製)を使用してウエスタンブロット法により検討した。
その結果、クミン水性溶媒抽出物(CCE)の作用により、RAW264.7細胞のERK、JNK、及びp38のリン酸化による活性化が顕著に促進され、MAPキナーゼ経路が活性化されることが明らかになった(図22)。
《実施例18:クミン水性溶媒抽出物を経口投与したマウスから回収したP−MacのTNF−α産生活性》
(1)マウスへの経口投与
図23に示されている投与スケジュールに従い、クミン水性溶媒抽出物をマウスに経口投与した。実験には、BALB/cマウス(メス、8週齢)を用いた。コントロール群(7匹)には10mM NaPBを1日1回20μLずつ1週間経口投与し、処理群(3匹)にはクミン水溶性抽出物を1日1回、10mg抽出物/kg体重/日で1週間経口投与した。なお、マウスに経口投与した抽出物は、実施例7に記載の方法で抽出したクミン水性溶媒抽出物を凍結乾燥により粉末状にしたものである。
(2)腹腔内マクロファージの回収
Day4に、マウスの腹腔内に3%チオグリコレート培地をマウス1匹あたり2mLずつ26Gニードルと5mLシリンジを用いて投与した。Day7の最終投与の1時間後、マウスをジエチルエーテルで麻酔死させ、氷冷PBSを腹腔内に26Gニードルと5mLシリンジを用いて注入した。1分間腹腔を揉み込み、22Gニードルと1mLシリンジを用いて腹腔内の細胞を回収した。回収した細胞を750×g、4℃、5分の条件で遠心した。上清の除去後、細胞をRPMI−1640培地で洗浄し、再度750×g、4℃、5分の条件で遠心した。上清の除去後、細胞を5mLの10% FBS−RPMI−1640培地で懸濁し、6cmディッシュに撒いてインキュベートした。1時間後、細胞を氷冷PBSで3回洗浄し、マクロファージ以外の細胞を除去した。(この方法で得られた接着細胞の90%以上が腹腔内マクロファージとされている。)
(3)細胞培養
接着細胞を氷冷PBSで剥がし、遠心管に回収した。1200rpm、4℃、5分の条件で遠心した後、上清を除去し、RPMI−1640培地で細胞を再懸濁して洗浄した。再度1200rpm、4℃、5分の条件で遠心した後、上清を除去し、RPMI−1640培地で細胞数を1.0×10細胞/mLになるよう調製した。48ウェル培養プレートに20% FBS−RPMI−1640培地を250μL/wellずつ添加し、その後、調製した細胞懸濁液を250μL/wellずつ添加した(培地の終濃度:10% FBS−RPMI−1640培地、最終細胞数:2.5×10細胞/mL)。24ウェル培養プレートに20% FBS−RPMI−1640培地を500μL/wellずつ添加し、その後、調製した細胞懸濁液を500μL/wellずつ添加した(10% FBS−RPMI−1640培地、最終細胞数:5.0×10細胞/mL)。各プレートを24時間培養した後、培養上清中のTNF−α産生量をELISAキットを用いて測定した。ELISA法には、実施例8と同じキットを使用した。
(4)統計処理
有意差検定はDunnett法を用いた。*p<0.05、及び**p<0.01は統計学的に有意であると考えられる。
(5)結果
各マウス群におけるELISA法によるTNF−α量の測定結果を図24に示す。その結果、コントロール群と比べて、処理群において、TNF−α量の有意な増加(p<0.05)が認められた。したがって、クミン水性溶媒抽出物の経口投与により、腹腔内マクロファージのTNF−α産生能が活性化されることが示唆された。
《実施例19:活性成分の推定》
(1)クミン水性溶媒抽出物の熱安定性
本実施例では、クミン水性溶媒抽出物に含まれる活性成分の推定のための試験を行った。まず、熱処理によってクミン水性溶媒抽出物のマクロファージに対する免疫促進活性がどのように変化するかを検討した。クミン水性溶媒抽出物を100℃で0〜60分間加熱した後に10% FBS−DMEMに添加し、RAW264.7細胞(3×10細胞/mL)を12時間培養した後、ELISA法を用いて培養液中のサイトカイン(IL−6、TNF−α)量を測定した。ELISA法には、実施例8と同じキットを使用した。コントロールには10mM NaPBを用いた。結果を図25に示す。
その結果、クミン水性溶媒抽出物は熱処理時間依存的に活性が低下することが明らかになった。このことから、活性物質は熱による変性を受ける物質であることが明らかになった。
(2)クミン水性溶媒抽出物のトリプシン処理
本実施例では、トリプシン処理によってクミン水性溶媒抽出物のマクロファージに対する免疫促進活性がどのように変化するかを検討した。クミン水性溶媒抽出物をトリプシン処理した後に10% FBS−DMEMに添加し、RAW264.7細胞(3×10細胞/mL)を12時間培養した後、ELISA法を用いて培養液中のサイトカイン(IL−6)量を測定した。ELISA法には、実施例8と同じキットを使用した。コントロールには10mM NaPBを用いた。結果を図26に示す。
その結果、クミン水性溶媒抽出物はトリプシン処理によってわずかに活性が低下したものの、活性を保持することが分かった。
(3)硫酸アンモニウム分画
クミン水性溶媒抽出物を硫安(硫酸アンモニウム)沈殿法によって分画し、RAW264.7細胞のIL−6産生促進効果を指標として、各画分の活性を比較した。40、60、及び80%飽和濃度の硫酸アンモニウムで分画を行った後、遠心処理によって沈殿と上清に分け、沈殿は元のサンプルと等量の10mM NaPBに再溶解した。沈殿サンプルと上清サンプルは分離後、脱塩のために分画分子量14kDaの透析膜を用いて、10mM NaPBに対して一晩透析処理を行った。クミン水性溶媒抽出物を各硫安飽和濃度で分画した沈殿画分と80%硫安飽和濃度で得た上清画分とを10% FBS−DMEMに添加し、RAW264.7細胞を12時間培養した後、ELISA法を用いてその培養液中のIL−6量を測定した。ELISA法には、実施例8と同じキットを使用した。コントロールには10mM NaPBを用いた。また、上清サンプルにはほとんどタンパク質が含まれておらず、タンパク質を定量できなかったため、グラフ横軸をサンプル乾燥重量で表した。結果を図27に示す。
その結果、40%の硫安濃度で沈殿した画分の活性が最も高かった。また、80%飽和濃度を添加したときの上清部分には効果はみられなかった。硫安沈殿により沈殿画分に回収され、また、熱処理により活性が低下することからクミン水性溶媒抽出物における活性物質はタンパク質である可能性が示唆された。
(4)SDS−PAGEによる実験
硫安沈殿処理(40%硫安濃度)及び陰イオン交換クロマトグラフィにより分画したサンプル中に含まれるタンパク質をSDS−PAGEによって確認した。結果を図28に示す。
その結果、陰イオン交換画分で最も活性の高かったA6と硫安沈殿画分で最も活性の高かった40%画分には30kDa程度のタンパク質が共通して含まれていることが分かった。このタンパク質がクミン水性溶媒抽出物における活性物質の一つである可能性がある。
本発明の免疫賦活剤は、免疫作用を賦活化することができる。さらに、本発明の免疫賦活剤は、免疫賦活作用を有し、かつ安全性の高い飲食品を提供することができる。

Claims (5)

  1. クミン、フェンネル、及びカルダモンからなる群から選択される少なくとも1種のハーブの粉砕物又は抽出物を含む免疫賦活剤。
  2. 前記粉砕物又は抽出物が、種子の粉砕物又は抽出物である、請求項1に記載の免疫賦活剤。
  3. 前記免疫賦活が、抗体産生促進活性、サイトカイン産生促進活性、及びマクロファージ活性化から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の免疫賦活剤。
  4. 前記抽出物が、有機溶媒、水性溶媒、又は有機溶媒と水性溶媒との混合物による抽出物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の免疫賦活剤。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の免疫賦活剤と飲食品とを含む免疫賦活用食品組成物。
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