JP7212329B2 - 免疫賦活剤及び免疫賦活用食品組成物 - Google Patents
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Description
[1]クミン、フェンネル、及びカルダモンからなる群から選択される少なくとも1種のハーブの粉砕物又は抽出物を含む免疫賦活剤、
[2]前記粉砕物又は抽出物が、種子の粉砕物又は抽出物である、[1]に記載の免疫賦活剤、
[3]前記免疫賦活が、抗体産生促進活性、サイトカイン産生促進活性、及びマクロファージ活性化から選択される少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載の免疫賦活剤、
[4]前記抽出物が、有機溶媒、水性溶媒、又は有機溶媒と水性溶媒との混合物による抽出物である、[1]~[3]のいずれかに記載の免疫賦活剤、
[5][1]~[4]のいずれかに記載の免疫賦活剤と飲食品とを含む免疫賦活用食品組成物、並びに
[6][1]~[4]のいずれかに記載の免疫賦活剤を抗体産生細胞に接触させることを特徴とする抗体産生方法
に関する。
本発明の免疫賦活剤は、クミン、フェンネル、及びカルダモンからなる群から選択される少なくとも1種のハーブの粉砕物又は抽出物を有効成分として含む。本発明の免疫賦活剤は、1種類のハーブの粉砕物又は抽出物のみを含むことができ、又は2種類以上のハーブの粉砕物又は抽出物を含むこともできる。粉砕物と抽出物の両方を含むこともできる。
クミン(Cuminum cyminum)は、地中海沿岸東部原産の一年生又は二年生のセリ科の草本である。草丈は20~40cmであり、株全体に毛はない。葉柄は長さ1cm程度と短く、針形の鞘がある。葉は細長い針型で、2回羽状に全裂する。花は傘形花で直径2~3cmである。花弁の色はピンク又は白色である。花弁の形は、長楕円形であり、先端がわずかに欠ける。種子は長楕円形で両端が狭く、長さ6mm、幅1.5mm程度であり、全体が白い剛毛に被われている。花期は4月ごろで、5月ごろに種子ができる。
クミンシードは、一般的には種子と認識されているが、植物学上は果実に該当する。このクミンシードが、香辛料としてよく用いられている。本明細書においては、クミンに関して「種子」とは、クミンシードを意味する。
フェンネル(Foeniculum vulgare)は、地中海沿岸が原産のセリ科の草本である。草丈は1~2mであり、葉は糸状で、全草が鮮やかな黄緑色をしている。花期は、6~8月であり、枝先に黄色の小花を多数つける。秋には7mm程度の長楕円形をした茶褐色の実をつける。
若い葉および種子は、甘い香りと苦みが特徴で消化促進・消臭に効果があり、香辛料としてよく用いられている。
カルダモン(Elettaria cardamomum)は、インド、スリランカ、及びマレー半島を原産とするショウガ科の多年草である。成長すると草丈2~3mとなる。葉は長さ50cm程度、幅5cm程度であり、葉の基部は鞘状になっている。地面の近くに薄緑の白に赤紫の入った花をつけ、成熟すると8~18cmの卵型の実をつける。
種子は香辛料として使用され、カレー及び肉料理などに利用される。
本発明において、粉砕物とは、クミン、フェンネル、又はカルダモンが粉砕された状態のものであればよく、例えば粉末状、粒状、又はペースト状であることができる。粉砕物は、好ましくは粉末である。また、粉末状にしたものを、例えばキューブ状、ブロック状、又は顆粒状に成型又は造粒したものも好ましく使用できる。粉砕物又は粉末に加工するための処理は、特に限定されないが、例えばクラッシャー、ミル、ブレンダー、ミキサー、及び石臼などの粉砕用の機器又は器具を用いて、当業者が通常使用する任意の方法により植物体を粉砕する処理が挙げられる。粉砕前に、植物体を乾燥してもよい。
本発明の免疫賦活剤の有効成分の抽出に用いるクミン、フェンネル、又はカルダモンは、生のまま用いてもよく、又は乾燥させたものを用いてもよい。また、抽出効率が向上するように、破砕物又は粉体の状態に加工してから抽出してもよい。
本発明の免疫賦活剤に含まれるハーブの抽出物は、水性溶媒により抽出されることができる。水性溶媒は、水を含んでいる限りにおいて限定されるものではなく、例えば水、生理食塩水、又は緩衝液などを挙げることができる。緩衝液としては、リン酸緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液、炭酸ナトリウム緩衝液、クエン酸緩衝液、クエン酸リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、及びトリス緩衝液などが挙げられる。好ましい水性溶媒は、リン酸ナトリウム緩衝液である。前記水性溶媒のpHは、特に制限されず、例えば3~10、好ましくは、5~8、より好ましくは、6.5~7.5である。
本発明の免疫賦活剤が有する免疫賦活活性としては、例えば抗体産生促進活性、サイトカイン分泌促進活性及び/又はマクロファージの活性化が挙げられる。
抗体は、抗体産生細胞から産生される。本発明の免疫賦活剤は、抗体産生細胞からの抗体の産生を促進する。抗体産生細胞は、好ましくは哺乳動物(ヒトなどの霊長類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、又はマウス)の細胞であり、最も好ましくはヒトの細胞である。また、抗体産生細胞は、インビボ又はインビトロの細胞であることができる。産生が促進される抗体は、好ましくは、IgM、IgA、及び/又はIgG抗体であり、最も好ましくは、IgM抗体である。
分泌が促進されるサイトカインとしては、例えばインターロイキン、インターフェロン、ケモカイン、リンフォカイン、造血因子、細胞増殖因子、細胞傷害因子、アディポカイン、及び神経栄養因子などが挙げられる。インターロイキンとしては、IL1~35などが挙げられる。インターフェロンとしては、IFN-α、IFN-β、及びIFN-γなどが挙げられる。ケモカインとしては、MIP及びMCPなどが挙げられる。造血因子としては、SCF、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、エリスロポエチン、及びトロンボポエチンなどが挙げられる。細胞増殖因子としては、上皮成長因子、繊維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、肝細胞成長因子、及びトランスフォーミング成長因子などが挙げられる。細胞傷害因子としては、TNF-α及びTNF-βなどが挙げられる。アディポカインとしては、レプチンなどが挙げられる。神経栄養因子としては、NGFなどが挙げられる。好ましいサイトカインは、IL-4、IL-6、TNF-α及び/又はIFN-γである。分泌が促進されるサイトカインは、これらの1種であってもよく、又は2種以上であってもよい。
本発明の免疫賦活剤が奏する具体的なマクロファージ活性化の作用としては、例えば貪食活性促進、活性酸素産生促進、一酸化窒素産生促進、及び抗原提示機能の増強から選択される1つ又は2つ以上が挙げられる。
本明細書において、食品組成物とは、本発明の免疫賦活剤と食品又は飲料とを含むものを意味する。本発明の食品組成物は、本発明の免疫賦活剤を含み、したがって、免疫賦活用食品組成物として使用できる。
本発明の免疫賦活剤の作用機序は、完全に解明されているわけではないが、以下のように推論することができる。しかしながら、本発明は以下の説明によって限定されるものではない。
リンパ球細胞膜上の受容体を介して細胞内へ取り込まれた本発明の免疫賦活剤に含まれる活性成分は、細胞内シグナル伝達を経て細胞質の様々な因子を活性化させ、核内に移行した後、転写因子として作用し、種々の遺伝子発現を示すと考えられる。最終的に抗体及びサイトカインの産生促進につながり、分泌促進に関与し、さらにマクロファージを活性化させると考えられる。
本実施例では、マウス脾臓Bリンパ球細胞における、クミンアルコール抽出物による免疫賦活効果を検討した。クミンの種子の粉末6mgに10倍量の100%エタノールを加え、4℃で24時間震盪抽出した。上清を回収しエバポレーターで濃縮乾固させ重量を測定した。乾固物の濃度が100mg/mLとなるようにエタノールで調整したものをクミン粗抽出サンプルとした。BALB/cマウス(♀、8週齢)から脾臓を摘出し、脾臓Bリンパ球細胞を調製した。脾臓Bリンパ球細胞は2.5×105細胞/mLの細胞密度で培養し、クミン粗抽出サンプルを4又は8μg/mLの濃度となるように添加した。CO2インキュベーター内で37℃で5%CO2条件下で24時間培養後、培養上清を回収し、分泌されたIgM及びIgA抗体についてELISA法(Mouse IgA ELISA kit、Bethyl社)による定量を行った。濃度別のクミン粗抽出サンプルの、コントロールに対する相対的なIgM及びIgA抗体産生量を図1に示す。
本実施例では、マウス脾臓Bリンパ球細胞における、カルダモンアルコール抽出物による免疫賦活効果を検討した。カルダモンの種子の粉末6mgに10倍量の100%エタノールを加え、4℃で24時間震盪抽出した。上清を回収しエバポレーターで濃縮乾固させ重量を測定した。乾固物の濃度が50mg/mLとなるようにエタノールで調整したものをカルダモン粗抽出サンプルとした。BALB/cマウス(♀、6週齢)から脾臓を摘出し、脾臓Bリンパ球細胞を調製した。脾臓Bリンパ球細胞は2.5×105細胞/mLの細胞密度で培養し、カルダモン粗抽出サンプルを0.08μg/mLの濃度となるように添加した。CO2インキュベーター内で37℃で5%CO2条件下で24時間培養後、培養上清を回収し、分泌されたIgM抗体についてELISA法(Mouse IgM ELISA kit、Bethyl社)による定量を行った。カルダモン粗抽出サンプルのコントロールに対する相対的なIgM抗体産生量を図2に示す。
本実施例では、ヒト型ハイブリドーマHB4C5細胞における、フェンネル、カルダモン、及びクミンの各々のアルコール抽出物による免疫賦活効果を検討した。フェンネル、カルダモン、及びクミンの各々の種子の粉末に10倍量の100%エタノールを加え、ボルテックスで十分に撹拌し、4℃で24時間震盪抽出後、直ちに3,000rpmで20分間遠心した。上清を回収しエバポレーターで濃縮乾固させ重量を測定した。濃度を1mg/mLとなるようにエタノールを加えて溶解し、0.22μmフィルターで濾過滅菌を行ったものを粗抽出サンプルとして実験に使用した。ヒト型ハイブリドーマHB4C5細胞は5×104細胞/mLの細胞密度で培養し、様々な濃度となるように各々の粗抽出サンプルを添加した。CO2インキュベーター内で37℃で5%CO2条件下で24時間培養後、培養上清を回収し、分泌されたIgM抗体についてELISA法による定量を以下のように行った。抗ヒトIgMを重炭酸緩衝液に溶解し96穴プレートに添加し、37℃で2時間反応させた。0.05%Tween-PBSで洗浄後、1%BSA溶液を添加し、ブロッキングを37℃で1時間行った。洗浄後、ハーブのサンプルを添加した細胞の培養上清及び検量線用ヒトIgMを加え、37℃で1時間反応させた。洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識した抗ヒトIgM溶液を加えた。0.03%H2O2-0.05Mクエン酸緩衝液に2,2’-アジノ-ビス(エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸を溶解し、各穴に添加し発色させた。発色後、1.5%シュウ酸溶液を添加し反応を停止させた。プレートリーダー415nm吸光値を測定し、検量線をもとにヒトIgMを定量した。培養6時間後及び12時間後の、各々のハーブの粗抽出物のコントロールに対する相対的なIgM抗体産生量を図3及び4に示す。
本実施例では、マウス脾臓CD4+細胞における、フェンネル、カルダモン、及びクミンの各々のアルコール抽出物による免疫賦活効果を検討した。BALB/cマウス(♀、6週齢)から脾臓を摘出し、磁気による選択操作を行い、CD4+細胞(ヘルパーT細胞)集団を得た。2.5×105細胞/mLの細胞密度で24穴プレートに播き込み、3種のハーブ(フェンネル、クミン、カルダモン)の種子に関して実施例3と同様の方法で得た100%エタノールによる粗抽出サンプルを様々な濃度となるように添加し、CO2インキュベーター内で37℃で5%CO2条件下で48時間培養後、培養上清を回収し、IL-4及びIL-6の産生分泌量をELISA法[Mouse IL-4 ELISA MAX Standard(BioLegend社:431101)及びMouse IL-6 ELISA MAX Standard(BioLegend社:431301)]にて定量した。結果を図5及び6に示す。
IL-6についても3種全てのハーブで産生促進が認められた。IL-6はB細胞及び形質細胞の増殖及び活性化に関わっており、IgM、IgG、及びIgAの産生促進を増強する。特にクミンでは、IL-6産生能促進活性が高く、免疫賦活効果が期待できる。
本実施例では、クミンの種子の100%エタノールによる粗抽出サンプルを用いたこと、IFN-γの産生分泌量を定量したこと、及びMouse IFN-G ELISA MAX Standard(BioLegend社:430801)を使用してELISA法による定量を行ったことを除いては、実施例4の操作を繰り返して、クミンアルコール抽出物による免疫賦活効果を検討した。結果を図7に示す。
図8に記載した条件に基づき、BALB/cマウスにおいてクミン抽出物の経口投与実験を行った。
(1)サンプルの調製
50mL遠心管にクミンの種子の粉末3gと100%エタノール30mLを加えたものを10本用意し、4℃で24時間抽出した。その後3000rpmで20分間遠心分離し濾過した。濾過した液をエバポレーターで濃縮し乾固物とした。収率は23.16%であった。乾固物をコーン油で溶解し、1000mg/kgの濃度に調整した。塊になっている乾固物は薬さじでよく伸ばしてつぶした。この溶液をコーン油で溶解して各投与濃度に調整した。
BALB/cマウス(メス、7週齢)に対して、前記(1)で調製した、コーン油で各投与濃度に調整したクミンエタノール抽出物を1日1回、100μL、18日間投与した。コントロール群(5匹)にはコーン油のみを投与し、そしてクミンエタノール抽出物の乾固物として、Low群(6匹)には、25mg/kg/日(0.5mg/匹/日)、Medium群(6匹)には、100mg/kg/日(2mg/匹/日)、そしてHigh群(6匹)には、400mg/kg/日(8mg/匹/日)の濃度で投与した。
各実験群のマウスから脾臓B細胞を回収し、12ウェル培養プレートの各ウェルに3.0×106細胞/mLとなるように5%FBS-RPMI1640培地を注入した。24時間培養後、ELISAキット(Mouse IgG ELISA kit、Bethyl社)を用いて抗体産生量を定量した。IgA及びIgM測定に関しては、それぞれ、実施例1及び2と同じキットを用いた。結果を図9に示す。
マウス血清中の血清中の抗体及びサイトカイン量をELISAキット(Mouse IgE ELISA kit、Bethyl社)を用いて定量した。IgM、IL-4、及びIL-6測定に関しては、それぞれ、実施例2及び4と同じキットを用いた。結果を図10及び11に示す。
クミン種子粉末を0.1g/mLとなるように10mM NaPB(リン酸緩衝液)で懸濁し、15回/分で24時間撹拌抽出した。4℃条件下で、遠心処理(1,2000rpm)を20分間行った後、上清を回収した。4℃条件下で、遠心処理(70,000rpm)を30分間行った後、上清を回収した。分画分子量14kDの透析膜を用いて10mM NaPBに対して一晩透析処理した。1M NaOHを用いてpHを7.4に合わせ、ポアサイズ0.45μmのフィルターで濾過滅菌したものをクミン水性溶媒抽出物(CCE)として実験に使用した。
種々のタンパク質濃度となるようにクミン水性溶媒抽出物サンプルを添加したITES-ERDF培地に、ヒトハイブリドーマHB4C5細胞を5.0×104細胞/mLで播種し、6時間培養後、抗ヒトIgM抗体(Cappel社製)、HRP標識抗ヒトIgM抗体(Abcam社製)、及び発色基質であるABTS(和光純薬社製)を用いて、ELISA法により培養液中のIgM抗体量を測定した。コントロールには10mM NaPB(リン酸緩衝液)を用いた。結果を図12に示す。また、本発明の免疫賦活剤の活性物質は、特定されておらず、タンパク質又はタンパク質以外の物質である可能性があるが、本明細書においては、便宜的に抽出物の濃度を抽出物中のタンパク質の濃度を用いて示すことがある。
《実施例8:マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞におけるクミン水性溶媒抽出物の免疫賦活効果の検討》
種々のタンパク質濃度となるようにクミン水性溶媒抽出物サンプルを添加した10% FBS-DMEM培地で、マウス由来マクロファージ細胞株RAW264.7細胞(3×105細胞/mL)を12時間培養した後、ELISA法(Mouse IL-6 ELISA MAX Standard、BioLegend社製;Mouse TNF-α ELISA Ready-set-go、eBioscience社製)を用いて培養液中のサイトカイン(IL-6、TNF-α)量を測定した。コントロールには10mM NaPBを用いた。結果を図13に示す。
その結果、クミン水性溶媒抽出物は、濃度依存的にIL-6及びTNF-αの産生を促進させることが分かった。
BALB/cマウス腹腔からマクロファージ(P-Mac)を回収し、種々のタンパク質濃度となるようにクミン水性溶媒抽出物を添加した10% FBS-RPMI1640培地でP-Mac(3×106細胞/mL)を12時間培養した後、ELISA法を用いて、培養液中のサイトカイン(IL-6、TNF-α)量を測定した。ELISA法には、実施例8と同じキットを使用した。コントロールには10mM NaPBを用いた。結果を図14に示す。
一酸化窒素(NO)は活性酸素の一種であり、マクロファージはバクテリアを処理するために一酸化窒素を産生する。本実施例では、RAW264.7細胞のNO産生に及ぼすクミン水性溶媒抽出物の効果を検討した。種々のタンパク質濃度となるようにクミン水性溶媒抽出物を添加した10% FBS-DMEMでRAW264.7細胞(3×105細胞/mL)を12時間培養した後、その培養液中のNO濃度をGriess法により測定した。コントロールには10mM NaPBを用いた。結果を図15に示す。
タンパク質濃度1000μg/mLとなるようにクミン水性溶媒抽出物を添加した10% FBS-DMEM培地でRAW264.7細胞(3×105細胞/mL)を6時間培養した後、テキサスレッドで標識したザイモサンAを添加し、1時間培養した後、フローサイトメーターを用いてその貪食活性を測定した。コントロールには10mM NaPBを用いた。結果を図16に示す。
クミン水性溶媒抽出物がRAW264.7細胞のサイトカイン産生及びNO産生を促進したことから、本実施例では、マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞を使用して、クミン水性溶媒抽出物がサイトカイン遺伝子及びiNOS遺伝子(NO産生に関与する誘導型一酸化窒素合成酵素)の遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。
タンパク質濃度1000μg/mLとなるようにクミン水性溶媒抽出物あるいは10mMNaPBを添加した10%FBS-DMEM培地(3×105細胞/mL)で12時間培養したRAW264.7細胞を回収し、1mLのSepasol-RNA I Super G(ナカライテスク社製)を加えて5分間室温静置し、その後、200μLのクロロホルム(和光純薬社製)を加えて、撹拌した。70,000rpm、15分間遠心した後、上層を回収した。回収した上層に2-プロパノール(和光純薬社製)を500μL添加し、10分間室温静置した。70,000rpm、10分間遠心した後、上層を除去し、75%エタノールを1mL加え、転倒混和した。70,000rpm、10分間遠心した後、上層を除去し、風乾した。DEPC水を適量添加し、氷上で15分以上静置することで、RNAの沈殿を完全に溶解させた。
PCR用チューブに1μgのRNAと10μMのオリゴdTを加え、サーマルサイクラー5分間70℃処理した後、氷冷した。そこに、逆転写酵素(Promega社製)、dNTPミックス(東洋紡社製)を加え、42℃で60分間インキュベートした。
Thunderbird SYBR qPCR Mix(東洋紡社製)、センスプライマー、アンチセンスプライマー及びcDNAを加え、StepOnePlus Real-time PCR System(Applied Biosystem社製)にて、95℃ 1分-(95℃ 3秒、60℃ 30秒)x40サイクルの条件で反応させ、遺伝子発現レベルを解析した。内部標準として、βアクチン遺伝子を用いた。
IL-6センスプライマー:AAGCCAGAGTCCTTCAGAGAGAT(配列番号1)
IL-6アンチセンスプライマー:TTGGATGGTCTTGGTCCTTAGC(配列番号2)
TNF-αセンスプライマー:CTACTCCCAGGTTCTCTTCAA(配列番号3)
TNF-αアンチセンスプライマー:GCAGAGAGGAGGTTGACTTTC(配列番号4)
βアクチンセンスプライマー:CATCCGTAAAGACCTCTATGCCAAC(配列番号5)
βアクチンアンチセンスプライマー:ATGGAGCCACCGATCCACA(配列番号6)
iNOSセンスプライマー:CCAAGCCCTCACCTACTTCC(配列番号7)
iNOSアンチセンスプライマー:CTCTGAGGGCTGACACAAGG(配列番号8)。
本実施例では、初代マウス腹腔内マクロファージ(P-Mac)を使用して、クミン水性溶媒抽出物がサイトカイン遺伝子及びiNOS遺伝子の遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。BALB/cマウス腹腔からマクロファージ(P-Mac)を回収し、タンパク質濃度1000μg/mLとなるようにクミン水溶性抽出物を添加した10% FBS-RPMI 1640培地でP-Mac(5×105細胞/mL)を6時間培養した後に細胞からRNAを抽出して、リアルタイムRT-PCR法によってクミン水溶性抽出物がサイトカイン及びiNOS遺伝子発現に及ぼす効果を検討した。コントロールには10mM NaPBを用いた。なお、RNAの抽出、cDNA合成、及びリアルタイムRT-PCRの各操作手順は、実施例12と同様である。結果を図18に示す。
本実施例では、TLR4阻害剤を用いて処理したRAW264.7細胞に対するクミン水性溶媒抽出物のサイトカイン産生促進効果を検討することにより、クミン水性溶媒抽出物のマクロファージ活性促進効果が、マクロファージ細胞表面上に存在するTLR4をターゲットにしたものかどうかを明らかにするために実験を行った。
本実施例では、エンドトキシン除去キット(EndoTrap HD:フナコシ)によりクミン水性溶媒抽出物中のエンドトキシンを除去してから、実施例14と同様の手順でIL-6産生量を測定した。結果を図20に示す。
細胞質内においてはNF-κBはIκBと結合しており、不活性化状態にある。TLR4が活性化されるとシグナルが伝達され、IκBがリン酸化を受けることで分解が誘導され、NF-κBは遊離状態となる。遊離状態のNF-κBは核内に移行し、転写因子として作用する。そこで、クミン水性溶媒抽出物の作用により、RAW264.7細胞内のNF-κBの核移行がどの様な影響を受けるかを抗マウスNF-κB抗体及び抗マウスHiston H3抗体(Cell Signalling Technology社製)を使用して、ウエスタンブロット法により解析した。タンパク質濃度1000μg/mLとなるようにクミン水性溶媒抽出物を添加した10% FBS-DMEM培地でRAW264.7細胞(4×105細胞/mL)を15分間培養した後、細胞を回収し、ウエスタンブロット法を用いてMAPK、NF-κBシグナリングを確認した。コントロールには10mM NaPBを用いた。
その結果、図21に示したように、クミン水性溶媒抽出物(CCE)の作用により、細胞質NF-κB量が減少し、核内NF-κB量が増加することが明らかになった。このことから、クミン水性溶媒抽出物は、NF-κBの核移行を促進することにより、転写活性を上昇させ、マクロファージを活性化していることが明らかになった。
次に、MAPキナーゼ経路に及ぼすクミン水性溶媒抽出物の効果を検討した。MAPキナーゼファミリーである、ERK、JNK、及びp38のリン酸化による活性化に及ぼす影響を、タンパク質濃度1000μg/mLとなるようにクミン水性溶媒抽出物を添加したRAW264.7細胞(4×105細胞/mL)において、抗マウスERK抗体、抗マウスリン酸化ERK抗体、抗マウスJNK抗体、抗マウスリン酸化JNK抗体、抗マウスp38抗体、抗マウスリン酸化p38抗体、及び抗マウスActin抗体(Cell Signalling Technology社製)を使用してウエスタンブロット法により検討した。
その結果、クミン水性溶媒抽出物(CCE)の作用により、RAW264.7細胞のERK、JNK、及びp38のリン酸化による活性化が顕著に促進され、MAPキナーゼ経路が活性化されることが明らかになった(図22)。
(1)マウスへの経口投与
図23に示されている投与スケジュールに従い、クミン水性溶媒抽出物をマウスに経口投与した。実験には、BALB/cマウス(メス、8週齢)を用いた。コントロール群(7匹)には10mM NaPBを1日1回20μLずつ1週間経口投与し、処理群(3匹)にはクミン水溶性抽出物を1日1回、10mg抽出物/kg体重/日で1週間経口投与した。なお、マウスに経口投与した抽出物は、実施例7に記載の方法で抽出したクミン水性溶媒抽出物を凍結乾燥により粉末状にしたものである。
Day4に、マウスの腹腔内に3%チオグリコレート培地をマウス1匹あたり2mLずつ26Gニードルと5mLシリンジを用いて投与した。Day7の最終投与の1時間後、マウスをジエチルエーテルで麻酔死させ、氷冷PBSを腹腔内に26Gニードルと5mLシリンジを用いて注入した。1分間腹腔を揉み込み、22Gニードルと1mLシリンジを用いて腹腔内の細胞を回収した。回収した細胞を750×g、4℃、5分の条件で遠心した。上清の除去後、細胞をRPMI-1640培地で洗浄し、再度750×g、4℃、5分の条件で遠心した。上清の除去後、細胞を5mLの10% FBS-RPMI-1640培地で懸濁し、6cmディッシュに撒いてインキュベートした。1時間後、細胞を氷冷PBSで3回洗浄し、マクロファージ以外の細胞を除去した。(この方法で得られた接着細胞の90%以上が腹腔内マクロファージとされている。)
接着細胞を氷冷PBSで剥がし、遠心管に回収した。1200rpm、4℃、5分の条件で遠心した後、上清を除去し、RPMI-1640培地で細胞を再懸濁して洗浄した。再度1200rpm、4℃、5分の条件で遠心した後、上清を除去し、RPMI-1640培地で細胞数を1.0×106細胞/mLになるよう調製した。48ウェル培養プレートに20% FBS-RPMI-1640培地を250μL/wellずつ添加し、その後、調製した細胞懸濁液を250μL/wellずつ添加した(培地の終濃度:10% FBS-RPMI-1640培地、最終細胞数:2.5×105細胞/mL)。24ウェル培養プレートに20% FBS-RPMI-1640培地を500μL/wellずつ添加し、その後、調製した細胞懸濁液を500μL/wellずつ添加した(10% FBS-RPMI-1640培地、最終細胞数:5.0×105細胞/mL)。各プレートを24時間培養した後、培養上清中のTNF-α産生量をELISAキットを用いて測定した。ELISA法には、実施例8と同じキットを使用した。
有意差検定はDunnett法を用いた。*p<0.05、及び**p<0.01は統計学的に有意であると考えられる。
各マウス群におけるELISA法によるTNF-α量の測定結果を図24に示す。その結果、コントロール群と比べて、処理群において、TNF-α量の有意な増加(p<0.05)が認められた。したがって、クミン水性溶媒抽出物の経口投与により、腹腔内マクロファージのTNF-α産生能が活性化されることが示唆された。
(1)クミン水性溶媒抽出物の熱安定性
本実施例では、クミン水性溶媒抽出物に含まれる活性成分の推定のための試験を行った。まず、熱処理によってクミン水性溶媒抽出物のマクロファージに対する免疫促進活性がどのように変化するかを検討した。クミン水性溶媒抽出物を100℃で0~60分間加熱した後に10% FBS-DMEMに添加し、RAW264.7細胞(3×105細胞/mL)を12時間培養した後、ELISA法を用いて培養液中のサイトカイン(IL-6、TNF-α)量を測定した。ELISA法には、実施例8と同じキットを使用した。コントロールには10mM NaPBを用いた。結果を図25に示す。
本実施例では、トリプシン処理によってクミン水性溶媒抽出物のマクロファージに対する免疫促進活性がどのように変化するかを検討した。クミン水性溶媒抽出物をトリプシン処理した後に10% FBS-DMEMに添加し、RAW264.7細胞(3×105細胞/mL)を12時間培養した後、ELISA法を用いて培養液中のサイトカイン(IL-6)量を測定した。ELISA法には、実施例8と同じキットを使用した。コントロールには10mM NaPBを用いた。結果を図26に示す。
クミン水性溶媒抽出物を硫安(硫酸アンモニウム)沈殿法によって分画し、RAW264.7細胞のIL-6産生促進効果を指標として、各画分の活性を比較した。40、60、及び80%飽和濃度の硫酸アンモニウムで分画を行った後、遠心処理によって沈殿と上清に分け、沈殿は元のサンプルと等量の10mM NaPBに再溶解した。沈殿サンプルと上清サンプルは分離後、脱塩のために分画分子量14kDaの透析膜を用いて、10mM NaPBに対して一晩透析処理を行った。クミン水性溶媒抽出物を各硫安飽和濃度で分画した沈殿画分と80%硫安飽和濃度で得た上清画分とを10% FBS-DMEMに添加し、RAW264.7細胞を12時間培養した後、ELISA法を用いてその培養液中のIL-6量を測定した。ELISA法には、実施例8と同じキットを使用した。コントロールには10mM NaPBを用いた。また、上清サンプルにはほとんどタンパク質が含まれておらず、タンパク質を定量できなかったため、グラフ横軸をサンプル乾燥重量で表した。結果を図27に示す。
硫安沈殿処理(40%硫安濃度)及び陰イオン交換クロマトグラフィにより分画したサンプル中に含まれるタンパク質をSDS-PAGEによって確認した。結果を図28に示す。
Claims (8)
- クミン、又はカルダモンの粉砕物又は抽出物を含む抗体産生促進剤。
- 前記粉砕物又は抽出物が、種子の粉砕物又は抽出物である、請求項1に記載の抗体産生促進剤。
- 前記抽出物が、有機溶媒、水性溶媒、又は有機溶媒と水性溶媒との混合物による抽出物である、請求項1又は2に記載の抗体産生促進剤。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体産生促進剤と飲食品とを含む抗体産生促進用食品組成物。
- クミンの粉砕物又は抽出物を含むマクロファージ活性化剤。
- 前記粉砕物又は抽出物が、種子の粉砕物又は抽出物である、請求項5に記載のマクロファージ活性化剤。
- 前記抽出物が、有機溶媒、水性溶媒、又は有機溶媒と水性溶媒との混合物による抽出物である、請求項5又は6に記載のマクロファージ活性化剤。
- 請求項5~7のいずれか一項に記載のマクロファージ活性化剤と飲食品とを含むマクロファージ活性化用食品組成物。
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