JP7268812B2 - 抗肥満剤及び肥満の予防又は治療用食品組成物 - Google Patents
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Description
現在、肥満の治療法としては、基本的には食事療法及び運動療法を組み合わせて行うのが一般的である。一方、薬物による治療の研究もおこなわれており、抗肥満薬として、リダクティル(Reductil:塩酸シブトラミン)又はゼニカル(Xenical)などが開発されているが、副作用も報告されており、日本では製造承認されていない。また、薬草のヒハツモドキの抽出成分、ウリ科植物の抽出物(特許文献1)、又は零陵香草の抽出成分(特許文献2)などに抗肥満作用があることが報告されているが、その効果は十分ではなかった。従って、安全で有効な抗肥満剤の開発が望まれている。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]バジル又はコリアンダーの粉砕物又は抽出物を含む抗肥満剤、
[2]前記粉砕物が葉の粉砕物であり、前記抽出物が葉の抽出物である、[1]に記載の抗肥満剤、
[3]前記抽出物がアルコール抽出物である、[1]又は[2]に記載の抗肥満剤、及び
[4][1]~[3]のいずれかに記載の抗肥満剤と飲食品とを含む肥満の予防又は治療用食品組成物、
に関する。
本発明の抗肥満剤は、バジル又はコリアンダーの粉砕物又は抽出物を含む。
本発明に用いるバジル(Ocimum basilicum)の使用部位は、特に特に限定されるものではなく、植物全体、根、茎、葉、花、果実、若しくは種子、又はそれらの少なくとも2種以上の混合物を挙げられるが、好ましくは葉又は茎である。バジルはシソ科メボウキ属の多年草であり、和名はメボウキと呼ばれている。本発明に用いるバジルの品種は、特に限定されるものではなく、スイートバジル、ジェノベーゼバジル、レモンバジル、ホーリーバジル、シナモンバジル、タイバジル、マンモスバジル、タイレモンバジル、ライムバジル、リコリスバジル、又はアフリカンブルーバジルが挙げられる。
バジルは、粉砕操作又は抽出操作を行う際に、生のまま用いてもよく、乾燥(例えば、凍結乾燥)させたものを用いてもよい。抽出する場合は、抽出効率が向上するように、破砕物又は粉体の状態に加工することが好ましい。
本発明に用いるコリアンダー(Coriandrum sativum L)の使用部位は、特に限定されるものではなく、植物全体、根、茎、葉、花、果実、若しくは種子、又はそれらの少なくとも2種以上の混合物を挙げられるが、好ましくは葉、茎、又は根である。コリアンダーは、粉砕操作又は抽出操作を行う際に、生のまま用いてもよく、乾燥(例えば、凍結乾燥)させたものを用いてもよい。抽出する場合は、抽出効率が向上するように、破砕物又は粉体の状態に加工することが好ましい。コリアンダーは、タイ語でパクチーとも呼ばれ、特に生食する葉をパクチーと称することがある。
本発明におけるバジル又はコリアンダーの粉砕物は、バジル又はコリアンダーが粉砕された状態のものであれば特に限定されるものではないが、例えば、粉末状、粒状、又はペースト状の粉砕物が挙げられるが、好ましくは粉末である。また、粉末を、例えば、キューブ状、ブロック状、又は顆粒状に成型又は造粒したものも好ましく使用できる。粉砕物に加工するための処理は、特に限定されないが、例えば、クラッシャー、ミル、ブレンダー、ミキサー、及び石臼などの粉砕用の機器又は器具を用いて、当業者が通常使用する任意の方法により植物体を粉砕する処理が挙げられる。粉砕前に、植物体を乾燥してもよい。乾燥の処理法としては、凍結乾燥、減圧乾燥、送風乾燥又は加熱乾燥が挙げられる。
有効成分を含む抽出物は、植物に由来する成分の抽出に用いられる通常の抽出方法によって抽出することができる。抽出法としては、限定されるものではないが、溶剤抽出法、水蒸気蒸留法、圧搾法(直接、高温、若しくは低温)、又は超臨界抽出法が挙げられる。また、これらの抽出法の組み合わせ、例えば圧搾した後に溶剤抽出する方法を用いてもよいが、好ましくは溶媒抽出である。抽出に用いるバジル又はコリアンダーは、生のまま用いてもよく、又は乾燥させたものを用いてもよい。また、抽出効率が向上するように、破砕物又は粉体の状態に加工してから抽出してもよい。
(溶剤抽出法)
溶剤抽出法で用いられる抽出溶媒は、抽出液中に有効成分が充分に抽出されることができる限りにおいては限定されるものではない。例えば、有機溶媒、水性溶媒、又は有機溶媒及び水性溶媒の混合物を使用することができるが、好ましくは水性溶媒、又は有機溶媒及び水性溶媒の混合物であり、より好ましくは水性溶媒である。
本発明の抗肥満剤に含まれるバジル又はコリアンダーの抽出物は、水蒸気蒸留法により抽出することができる。水蒸気蒸留法とは、カラムに充填した原料に水蒸気を通気し、水蒸気に伴われて留出してくる香気成分を水蒸気とともに凝縮させる方法である。蒸留手段として、加圧水蒸気蒸留、常圧水蒸気蒸留、及び減圧水蒸気蒸留のいずれかを採用することができる。
圧搾法とは、バジル又はコリアンダーに物理的に圧力をかけて、抽出物を抽出する方法である。常温で行う直接圧搾法、高温で行う高温圧搾法、及び低温で行う低温圧搾法がある。本発明の抗肥満剤に含まれる抽出物は、いずれの圧搾法を用いても抽出可能である。
本発明の抗肥満剤に含まれる抽出物は、超臨界抽出法を用いて抽出可能である。超臨界抽出法とは、超臨界状態にある物質を用いて特定の植物から抽出物を抽出する方法である。超臨界状態にある物質としては、例えば二酸化炭素を用いることができる。超臨界状態にある二酸化炭素は、強力な溶解力を有するため、コーヒーの脱カフェイン、又は植物などの天然原料からの香料及び医薬品成分抽出にも一般に用いられている。
本発明の抗肥満剤に含まれる有効成分は、バジル又はコリアンダーから抽出される抽出物に含まれている。したがって、バジル又はコリアンダーは抗肥満効果を有する有効成分を含んでおり、バジル又はコリアンダーの粉砕物も、抽出物に含まれる有効成分を含んでいる。実際に実施例に示すように、バジル又はコリアンダーの粉砕物は、抗肥満剤としての効果を示している。バジル又はコリアンダー抽出物に含まれる有効成分としては、バジル又はコリアンダー抽出物から分画した活性成分を含む画分、又は精製した活性成分でもよい。
肥満の判定基準としては、BMI(Body Mass Index)が使用されることが多く、WHOは、BMIが30以上の人を肥満と判定しており、一方、日本ではBMIが25以上の人を肥満と判定している。また、肥満症とは、肥満に関連する健康障害を有する状態、又はそのような健康障害が予測される程度に内臓脂肪が過剰に蓄積した状態を意味し、肥満症の場合は、減量治療が必要である。
本発明の抗肥満剤は肥満の予防又は抑制にも有効であり、そして肥満症の予防又は治療にも有効である。
本発明の抗肥満剤の抗肥満作用としては、肥満又は肥満症が抑制される限りにおいて、特に限定されるものではないが、体重の低下、肝臓重量の低下、脂肪分解酵素(例えば、CPT1)の増加、脂肪合成酵素(例えば、SREBP1c)の低下、又は褐色細胞の増加若しくは分化誘導が挙げられる。
本発明の抗肥満剤に含まれるバジル又はコリアンダーの粉砕物又は抽出物に抗肥満作用を示す有効成分が含まれている。この抗肥満作用を示す有効成分は、肝臓重量の低下によって、脂肪肝を抑制することができると推定される。また、脂肪分解酵素の産生の促進、及び/又は脂肪合成酵素の産生の抑制によって、肥満(肥満症)を予防又は治療できると考えられる。
本発明の肥満の予防又は治療用食品組成物は、前記抗肥満剤と飲食品とを含む。
本実施例では、コリアンダー及びスイートバジルの抗肥満作用を、肥満から重度の糖尿病を発症するKKAyマウスを用いて検討した。
7週齢のKKAy雄マウス25匹を、対照群(C群)、高脂肪・高ショ糖食群(H群)、高脂肪・高ショ糖食+コリアンダー(パクチー)粉末摂取群(HP群)、及び高脂肪・高ショ糖食+バジル粉末添加群(HB群)の4群に分け、4週間飼育した。コリアンダー(パクチー)及びバジルの葉を凍結乾燥後すぐにミキサー用いて粉末化し、高脂肪・高ショ糖食に1%(w/w)添加した。添加分はコーンスターチで置換した。飼育期間終了後、採血及び解剖を行い、分析を行った。
HP群においては、図1aに示すように、肝臓重量は、C群に比べて、高脂肪・高ショ糖食負荷のH群で有意な増加が見られた。一方、コリアンダー(パクチー)を摂取させたHP群では、H群と比較して肝臓重量の有意な低下が見られた。また、肝臓中のβ酸化系酵素の1つであるCPT1αのmRNAの発現量をリアルタイムPCR法で定量した。CPT1αのmRNAは、H群に比べてHP群で高い傾向が見られた(図1b)。従って、コリアンダー(パクチー)には、脂肪酸分解を活発にする成分が含まれており、肥満の抑制に有効であると考えられた。
本実施例では、細胞を用いて、コリアンダー(パクチー)の抽出物のCPT1αの活性化を検討した。
パクチーの凍結乾燥物にエタノールを9倍量添加して、エタノール抽出を行った。抽出物はエバポレーターにて溶媒を除去後、DMSOにて溶解し、細胞添加用のサンプルを作成した。マウス肝臓細胞Hepa-1細胞の培地に、抽出物を5μg/mL又は25μg/mL添加し、6時間培養し、更に無血清培地に交換し8時間培養した。細胞を回収し、CPT1αのmRNAをリアルタイムPCR法で定量した。CPT1αのmRNA発現量は、コントロールに比べてコリアンダー(パクチー)のエタノール抽出物を25μg/mL添加することによって、有意に上昇した(図3)。従って、コリアンダー(パクチー)には肝臓の脂肪酸分解を有意に促進する成分が含まれると考えられた。
本実施例では、コリアンダー(パクチー)及びバジルの抽出物のマウス脂肪前駆細胞(3T3-L1細胞)に対する作用を検討した。具体的には、3T3-L1細胞とマウスマクロファージ細胞(RAW264.7細胞)を共培養し、3T3-L1細胞がRAW264.7細胞に作用して惹起される炎症状態に対するコリアンダー(パクチー)及びバジルの抽出物の作用を検討した。
パクチー及びバジルを、それぞれ凍結乾燥後、粉末状にし、80%メタノールを用いて抽出した。抽出後、エバポレーターにて溶媒を除去し、DMSOで5mg/mLまたは25mg/mLになるようにそれぞれ再溶解した。マウスの脂肪前駆細胞である3T3-L1細胞を、DMEM+10%FBS培地にて培養した。コンフルエントに達した時点で継代を行い、薬剤(1μg/mLインスリン、0.5mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、0.25μM デキサメタゾン(DEX))による10日間の分化誘導を行った。その後、パクチー又はバジル抽出物(終濃度5μg/mL、25μg/mL)を添加し、24時間培養を行った。24時間後に、RAW264.7細胞を添加し、12時間共培養を行った。細胞回収後、リアルタイムPCRを用いて、IL-6又はIL-1β遺伝子の発現量を測定した。結果を図4に示す。
3T3-L1細胞に、パクチー又はバジル抽出物を予め添加して培養することにより、パクチー25μg/mLで、IL-6のmRNAが有意に低下した。また、バジルの5及び25μg/mLで、IL-1βのmRNAの発現が有意に低下した。
以上の結果より、パクチー及びバジル抽出物は、脂肪細胞に対する抗炎症効果を有することが示された。
脂肪細胞はTNFレセプターファミリーの一種である4-1BBを有しており、マクロファージの膜結合型リガンドである4-1BBLと結合することにより、炎症誘導が惹起されると報告されている。本実施例では、マウス脂肪前駆細胞(3T3-L1細胞)の4-1BBのmRNA発現量に対するパクチー抽出物及びバジル抽出物の作用を検討した。実施例3で得られたパクチー抽出物及びバジル抽出物を、同様に、終濃度が5μg/mL、又は25μg/mLになるように添加し、24時間培養を行った。その後、RAW264.7細胞を培養し、12時間共培養を行った。細胞回収後、リアルタイムPCRを用いて、4-1BB遺伝子の発現量を測定した。結果を図5に示す。
バジル抽出物によって、4-1BBのmRNAの発現量が有意に低下した。以上の結果より、バジル抽出物の中にはTNFレセプターファミリーの一種である4-1BBの転写を抑制できる物質が含有されていると考えられた。
Claims (4)
- バジルの粉砕物又は抽出物を含む脂肪合成抑制剤。
- 前記粉砕物が葉の粉砕物であり、前記抽出物が葉の抽出物である、請求項1に記載の脂肪合成抑制剤。
- 前記抽出物がアルコール抽出物である、請求項1又は2に記載の脂肪合成抑制剤。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載の脂肪合成抑制剤と飲食品とを含む脂肪合成抑制用食品組成物。
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