JP2017159673A - 液滴吐出ヘッド、および、画像形成装置 - Google Patents

液滴吐出ヘッド、および、画像形成装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2017159673A
JP2017159673A JP2017122125A JP2017122125A JP2017159673A JP 2017159673 A JP2017159673 A JP 2017159673A JP 2017122125 A JP2017122125 A JP 2017122125A JP 2017122125 A JP2017122125 A JP 2017122125A JP 2017159673 A JP2017159673 A JP 2017159673A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
waveform
droplet discharge
droplet
pressure chamber
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2017122125A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6278145B2 (ja
JP2017159673A5 (ja
Inventor
孝和 木平
Takakazu Kihira
孝和 木平
佐野 武
Takeshi Sano
武 佐野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ricoh Co Ltd filed Critical Ricoh Co Ltd
Priority to JP2017122125A priority Critical patent/JP6278145B2/ja
Publication of JP2017159673A publication Critical patent/JP2017159673A/ja
Publication of JP2017159673A5 publication Critical patent/JP2017159673A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6278145B2 publication Critical patent/JP6278145B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Ink Jet (AREA)
  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

【課題】増粘したインク等の液体の粘度を容易に下げることを可能とし、吸引によるメンテナンスの頻度や液体の消耗量を低減することが可能な液滴吐出ヘッド、および、画像形成装置を提供する。【解決手段】液滴吐出ヘッドを、ノズル2を有するノズル板1、圧力室3、アクチュエータ基板4、圧電素子6、振動板5、共通液室8、フレーム板7、供給口9、駆動用IC10、流体抵抗12、サブフレーム板13、各種配線等を備えて構成する。駆動用IC10は、ノズル2からの液滴吐出の開始前に、圧電素子6に、液滴の吐出時の駆動波形で用いる中間電位よりも高い中間電位が保持されるパルス波形を加熱波形として印加し、圧力室3内を加熱する。【選択図】図1

Description

本発明は、ノズル孔等の穴部から液滴を吐出する液滴吐出ヘッド、および、この液滴吐出ヘッドを有するプリンタ、複写装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置に関する。
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置において、記録液等の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを搭載し、被記録媒体に画像を形成する液体吐出装置を備えたものが知られている。なお、液滴吐出装置は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の被記録媒体(被着媒体、記録媒体、転写紙、用紙などとも称され、これらは材質にかかわらず、同義語として使用する。)に液滴を吐出する装置を意味する。また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を被記録媒体に付与することをも意味し、記録、印写、印字、印刷も同義語で使用する。
このような液滴吐出ヘッドとして、ノズル孔と連通する圧力室(インク流路、加圧液室、加圧室、吐出室、液室等とも称される。)に圧電素子等の圧電体で圧力変動を発生させることで、ノズル孔から液滴を吐出させる方式がある。この液滴吐出ヘッドでは、液滴吐出を行った後、所定の期間、液滴を吐出せず、その後、再度液滴吐出を行うといった間欠吐出動作を行っている。この液滴吐出していない間欠時のノズルでは、乾燥によりインク表面(以下、「メニスカス面」と言う)近傍を中心に、インクの増粘が生じることがある。この増粘により、液滴の十分な吐出を行えなくなり、画像品質に影響することがある。
このようなインクの増粘による影響を防止するため、薄膜圧電体の微駆動によって圧力室内でのインクの攪拌を行う方式や、増粘したインクを強制的に外部に排出する方式等が既に知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、薄膜圧電体の微駆動によって圧力室内を攪拌し、ノズル孔のメニスカス面近傍の増粘したインクを圧力室内へ引き込み、圧力室内のインクをノズル孔側へ押し出す動作を繰り返している。これにより、ノズル近傍と圧力室内とのインク粘度を平均化し、メニスカス面の低粘度化を行っている。さらに、所定期間ごとに、ノズル孔近傍の増粘したインクを外部に排出さて、圧力室内のインクをノズル側に移動させることで、メニスカス面のリフレッシュを行っている。
しかしながら、このような従来の攪拌によるメニスカス表面の低粘度化のみでは、圧力室全体の粘度が次第に増粘してしまい、吐出再開のため薄膜圧電体を駆動しても、吐出力が不足し、十分な吐出が行えなくなる。そのため、吸引によるメンテナンスでのメニスカス面のリフレッシュや空吐出が頻繁に必要となったり、ノズル近傍だけでなく圧力室全体のインクを排出する必要も生じたりして、インクを無駄に消耗してしまう。
一方、液滴吐出ヘッドの各圧力室に加熱手段を設け、液滴吐出ヘッド内のインクの温度を調整する提案がされている(例えば、特許文献2、3参照)。特許文献2では、ノズル孔から液滴を吐出させる際には、液滴の吐出用の駆動波形を圧電体に与えている。そして、インクの非吐出時に、ノズル孔から液滴が吐出されることのない駆動波形であって、圧力室の共振周波数の2倍以上の周波数を有する加熱用の駆動波形を圧電体に与え圧力室内のインクを加熱している。しかしながら、特許文献2では、加熱により圧力室内のインク温度を所定温度に維持することが目的であり、メニスカス面の乾燥による局部的な増粘を解消するためになされたものではない。
これに対して、特許文献3では、ノズル孔近傍の局所的な増粘を解消する目的で、非吐出時にノズルから液滴を吐出しない程度に圧電体を駆動させ、液滴吐出の直前に圧力室からノズル孔までのインクを、インクが沸騰を起こさず、かつノズル孔から吐出しない範囲で温める方法が開示されている。しかし、この場合は、圧電体の振動と加熱手段による加熱とが必要となって手数がかかるとともに、ノズルごとに加熱手段を設けているため、部品点数や配線数が多くなる等、液滴吐出ヘッドの構成も複雑となる。
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、電源ON時や長期間印字を実施していない場合等のような液滴吐出の間欠動作時に、増粘した液体の粘度を、複雑な構成や手数を必要することなく、容易に下げることを可能とすることで、印字を円滑に再開することが可能であり、吸引によるメンテナンスの頻度や液体の消耗量を低減することが可能な液滴吐出ヘッド、およびこの液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本願に係る液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するノズルと、ノズルに連通する圧力室と、圧力室上に設けられた振動板と、振動板上に設けられ、該振動板を振動させることにより、圧力室内の容積を変化させる薄膜圧電体と、薄膜圧電体に、液滴の吐出用の駆動波形を印加する駆動制御手段と、を備え、駆動制御手段は、ノズルからの液滴の吐出の開始前に、薄膜圧電体に、液滴の吐出用の駆動波形で用いる中間電位よりも高い中間電位が保持されるパルス波形を加熱波形として印加し、圧力室内を加熱することを特徴とする。
本発明によれば、電源ON時や長期間印字を実施していない場合等のような、液滴突出の間欠動作時に、増粘した液体の粘度を、複雑な構成や手数を必要することなく、容易に下げることが可能となる。そのため、印字を円滑に再開することが可能であり、吸引によるメンテナンスの頻度を低減して、液体の消耗量を低減することが可能な液滴吐出ヘッド、およびこの液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置を提供することができる。
本願の実施形態に係る液滴吐出ヘッドの構成例を示す断面図である。 図1の液滴吐出ヘッドから、フレームを省略した平面図である。 圧電体の構成例を示し、(a)は断面図であり、(b)は第1絶縁保護膜の一部と、第2絶縁保護膜を省略した状態の平面図である。 実施例1における加熱波形の電圧と印加時間とを示すグラフである。 実施例2における加熱波形の電圧と印加時間とを示すグラフである。 実施例3における加熱波形の電圧と印加時間とを示すグラフである。 実施例4における加熱波形の電圧と印加時間とを示すグラフである。 実施例1〜4におけるメニスカス表面の経時による粘度の変化を示すグラフである。 比較例におけるメニスカス表面の経時による粘度の変化を示すグラフである。 実施例5の画像形成装置における主要機構部の構成を示す概略図である。 図10の主要機構部の要部の概略平面図である。
以下、本願に係る液滴吐出ヘッドの実施形態について説明する。本願の実施形態に係る液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するノズルと、ノズルに連通する圧力室と、圧力室上に設けられた振動板と、振動板上に設けられ、該振動板を振動させることにより、圧力室内の容積を変化させる薄膜圧電体と、薄膜圧電体に、液滴の吐出用の駆動波形を印加する駆動制御手段と、を備えて構成される。駆動制御手段は、ノズルからの液滴の吐出の開始前に、薄膜圧電体に、液滴の吐出用の駆動波形で用いる中間電位よりも高い中間電位が保持されるパルス波形を加熱波形として印加し、圧力室内を加熱する。
このような加熱波形の印加により、液滴吐出の駆動時よりも、充放電電流が高くなって、薄膜圧電体の発熱が大きくなり、液滴吐出ヘッド全体が加熱される。そのため、間欠吐出時の乾燥によって液体内の水分が低下して増粘していても、液体の溶媒の温度依存性から、加熱によって液体が粘度化する。したがって、加熱波形を付与するだけで、複雑な構成や手数を必要とすることなく、メニスカス表面近傍の乾燥した部分の粘度を下げることができ、印字を円滑に再開することができる。また、吸引によるメンテナンスの頻度を低減して、液体の消耗量を低減することが可能となる。
また、加熱波形が、液滴吐出時の駆動波形の波高値以上の電圧幅で印加されるパルス波形であることが望ましい。なお、駆動波形の波高値とは、中間電位から引き込み時の最低電圧までの電圧幅をいう。これにより、充放電電流量がさらに高くなり、薄膜圧電体からの発熱がさらに大きくなり、液滴吐出ヘッド全体が良好に加熱されて、液滴吐出ヘッド内の液体を短時間で低粘度化することが可能となる。
また、加熱波形として、ノズルのメニスカス表面の反共振周波数でパルス波形を印加することが望ましい。これにより、圧力室内部の液体の攪拌を伴わずに加熱することができ、圧力室全体を加熱し易くなり、液滴吐出ヘッド内の液体の低粘度化を、より容易に行うことが可能となる。
また、加熱波形は、パルス波形の立上り時間および立下り時間が、液体吐出時の駆動波形の立上り時間および立下り時間以下であることが望ましい。これにより、充放電電流量が増大して、薄膜圧電体からの発熱量が増大し、短時間での加熱が可能になる。
また、本願の実施形態に係る画像形成装置は、上述のような液滴吐出ヘッドを備え、液滴吐出ヘッドから吐出した液滴を被着媒体上に着弾させるよう構成されている。したがって、電源ON時や長期間印字を実施していない場合等のような、液滴突出の間欠動作時にも、増粘した液体の粘度を、複雑な構成や手数を必要することなく、容易に下げることが可能となる。そのため、間欠時であっても印字を円滑に再開して、優れた画像品質を保持することが可能な画像形成装置を得ることができる。また、吸引によるメンテナンスの頻度を低減して、液体の消耗量を低減することも可能となる。
以下、本願の液滴吐出ヘッドに係る各実施例および比較例について、図面を参照して説明する。図1は、本願の実施例に係る液滴吐出ヘッドの構成例を示す断面図である。図2は、図1の液滴吐出ヘッドの平面図であって、サブフレームを省略したものである。図3(a)は実施例で使用する圧電素子の構成例を示す断面図であり、(b)は第1絶縁保護膜の一部と、第2絶縁保護膜を省略した状態の圧電素子の平面図である。
[液滴吐出ヘッドの構成]
図1に示すように、本願の実施例に係る液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するノズル2を有するノズル板1、ノズル2が連通する圧力室3、この圧力室3が設けられたアクチュエータ基板4、圧力室3内の液体を加圧する薄膜圧電体としての圧電素子6、圧電素子6と圧力室3との間に設けられた振動板5、共通液室8、共通液室8を構成するフレーム板7、インクタンク(図示せず)と連通し共通液室8に液体を供給する供給口9、圧電素子6の駆動を制御する駆動制御手段としての駆動用IC10、圧力室3にインクを供給する供給路を兼ねた流体抵抗12、圧電素子6を収納するサブフレーム板13、各種配線(図2参照)等を備えて構成されている。
(ノズル板1、ノズル2の構成)
ノズル板1は、液滴吐出用のノズル2が配列された基板であり、樹脂、金属材料等から形成されている。ノズル2は、図1に示すように、圧力室3と連通し、圧力室3内の液体を液滴として外部に吐出する。ノズル2は、駆動用IC10を介して、ノズル板1の短手方向(図1の左右方向)の両側に、それぞれ、長手方向(図1の前後方向)に向かって複数配置されている。すなわち、複数のノズル2からなるノズル列(図示せず)が、ノズル板1の長手方向に2列に配列されている。
また、ノズル板1は長手方向の寸法がアクチュエータ基板4の寸法よりも長尺に形成されている。これにより、ノズル板1の長手方向の両端部には、図2に示すように、アクチュエータ基板4の端部から突出する延設部1a(一方のみ図示、他方は図示せず)が形成されている。
この延設部1a上には、図2に示すように、配線接続用のFPC(フレキシブル配線基板)14の配線端部14aが配設されている。この配線端部14aの表面には、複数の配線端子14bが並設されている。また、配線端部14aの裏面には裏打ち板(図示せず)が固着され、FPC14の配線端部14aが延設部1a上に取り付けられている。
(アクチュエータ基板4の構成)
アクチュエータ基板4は、ガラスや薄い金属板の積層体、シリコン基板等で形成されている。このアクチュエータ基板4の材料としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常100μm〜600μmの厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されている。実施例では、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を主に使用した。また、図1に示すような圧力室3を作製していく場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していく。この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。
異方性エッチングとは、結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。例えば、水酸化カリウムKOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。したがって、面方位(100)では約54°の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、面方位(110)では深い溝を設けることができるため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができることが分かっている。そのため、実施例では、(110)の面方位を持った単結晶基板を使用することも可能である。ただし、この場合、マスク材である二酸化ケイ素SiO2もエッチングされてしまうことがあるため、この点に留意して利用している。
(圧力室3の構成)
圧力室3は、アクチュエータ基板4上に、複数形成されている。各圧力室3は、図2に示すように、アクチュエータ基板4の短手方向(図2の左右方向)に長尺な細長い形状で形成されている。また、この圧力室3は、駆動用IC10を介して、アクチュエータ基板4の短手方向(図2の左右方向)の両側であって、長手方向(図2の上下方向)に向かって、等ピッチで複数配置され、2列の圧力室3の列を形成している。
また、図1に示すように、アクチュエータ基板4の短手方向の両側には、圧力室3と連通し、この圧力室3内に液体を供給する個別流路3aが、それぞれ形成されている。この個別流路3aは、図2に示すように、アクチュエータ基板4の短手方向の両側に、長手方向に向かって複数配置され、2列の個別流路3aの列を形成している。
また、アクチュエータ基板4には、圧力室3および個別流路3aと連通し、個別流路3aから圧力室3に液体を供給する流体抵抗12が形成されている。この流体抵抗12は、小断面積に形成されていて、個別流路3aから圧力室3に流れる液体の流量を制限するように構成されている。なお、アクチュエータ基板4がシリコン単結晶基板等で形成されている場合には、前述したように、圧力室3、個別流路3a、および、流体抵抗12等は、エッチングにより形成することができる。
また、図1に示すように、アクチュエータ基板4の一面側(図1の紙面下側)には、ノズル板1が接合され、圧力室3、個別流路3a、流体抵抗12の開放端が、このノズル板1で閉じられている。また、アクチュエータ基板4の他面側(図1の紙面上側)は、薄膜状の振動板5が配置され、圧力室3の他端側が、この振動板5により閉じられている。
(振動板5の構成)
振動板(成膜振動板)5は、圧電素子6によって発生した力を受けて、変形変位して、圧力室3の容積を変化させることにより、ノズル2から液滴を吐出させる。そのため、図3に示す実施例1の振動板5としては、所定の強度を有したものであることが好ましい。振動板5の材料としては、ケイ素Si、二酸化ケイ素SiO2、窒化ケイ素Si34が挙げられ、これらを用いて振動板5をCVD法(Chemical Vapor Deposition)により作製したものが挙げられる。
振動板5は、さらに、後述する下部電極としての第1電極601、電気機械変換膜602(図3参照)の線膨張係数に近い材料を選択することが好ましい。特に、電気機械変換膜602としては、一般的に材料としてPZT(Pb(Zr,Ti)O、ジルコニウム酸−チタン酸鉛)が使用される。このことから、振動板5の材料としては、線膨張係数8×10-6(1/K)に近い線膨張係数として、5×10-6〜10×10-6の線膨張係数を有した材料が好ましく、さらには7×10-6〜9×10-6の線膨張係数を有した材料がより好ましい。
振動板5の具体的な材料としては、酸化アルミニウムAl23、酸化ジルコニウムZrO2、酸化イリジウムIrO2、酸化ルテニウムRUO2、酸化タンタルTa25、酸化ハフニウムHfO2、酸化オスミウムOsO、酸化レニウムReO2、酸化ロジウムRh23、酸化パラジウムPdO、および、これらの化合物等が挙げられる。これらをスパッタ法もしくは、Sol−gel法を用いてスピンコーターにて振動板5を作製することができる。振動板5の膜厚としては、0.1μm〜10μmが好ましく、0.5μm〜3μmがさらに好ましい。この範囲より小さいと、アクチュエータ基板4への圧力室3の加工が行いにくくなり、この範囲より大きいと、振動板5が変形変位しにくくなり、液滴の吐出が不安定になるため好ましくない。
また、この振動板5を開口することにより、図1に示すように、複数の圧力室3に対応する複数の個別流路3aと、共通液室8とが連通する。
(圧電素子6の構成)
圧電素子6は、図1に示すように、振動板5の、圧力室3を設けた側とは反対側の面に設けられている。圧電素子6は、交流電圧が印加されることで膨張・収縮して、振動板5を振動させ、この振動板5の振動により、圧力室3の容積を変化させて圧力を作用させる。この振動板5と圧電素子6とで、圧電アクチュエータを構成している。また、この圧電素子6は、図2に示すように、振動板5の短手方向の両側に、長手方向に向かって一直線上に複数配置され、2列の圧電素子6の列を形成している。
以下、圧電素子6の具体例として、電気機械変換素子の構成を、図3を参照して説明する。図3(a)に示すように、圧電素子6は、前述のアクチュエータ基板4、振動板(成膜振動体)5の上面に形成され、第1電極601、電気機械変換膜602、第2電極603、保護膜としての第1絶縁保護膜604、第3電極606と第4電極607(引き出し配線)、および、第2絶縁保護膜605等を有する素子構成からなる。この圧電素子6の駆動は、第1電極601および第2電極603が、それぞれ配線を介して接続された駆動用IC10(図1参照)によって行われる。
図3(b)に示すように、第1絶縁保護膜604はコンタクトホール部608を有しており、第1電極601と第3電極606、第2電極603と第4電極607とが、それぞれ導通した構成となっている。このとき、第1電極601および第3電極606を共通電極配線609とし、第2電極603および第4電極607を個別電極配線610とする。この共通電極配線609および個別電極配線610の上面に、これらを保護する第2絶縁保護膜605が形成されている。この第2絶縁保護膜605が一部開口されて(開口部O)、電極PADとして構成されている。共通電極配線609用に作製されたものを、共通電極PAD611、個別電極配線610用に作製されたものを、個別電極用PAD612としている。共通電極配線609と個別電極配線610との間に、電圧印加あるいはコロナ帯電により、分極処理を実施している。
<第1電極601>
第1電極601としては、金属または金属と酸化物とから成ることが好ましい。ここで、どちらも振動板5と第1電極601用の金属膜との間に、密着層(図示せず)を介在させて、双方の剥がれ等を抑制するように工夫している。以下に、密着層含めて第1電極601の金属電極膜、酸化物電極膜の詳細について記載する。
「密着層」
密着膜としてチタンTiをスパッタ成膜後、RTA(rapid thermal annealing)装置を用いて、650℃〜800℃、1分〜30分、酸素O2雰囲気でチタン膜を熱酸化して、チタン膜を酸化チタン膜(TiO2膜)にする。酸化チタン膜を作成するには、反応性スパッタでもよいが、チタン膜の高温による熱酸化法が望ましい。反応性スパッタによる作製では、シリコン基板を高温で加熱する必要があるため、特別なスパッタチャンバ構成を必要とするからである。さらに、一般の炉による酸化よりも、RTA装置による酸化の方が、酸化チタン膜の結晶性が良好になる。なぜなら、通常の加熱炉による酸化によれば、酸化しやすいチタン膜は、低温においてはいくつもの結晶構造を作るため、一旦、それを壊す必要が生じるためである。したがって、昇温速度の速いRTA装置による酸化の方が、良好な結晶を形成するために有利になる。またTi以外の材料としては、タンタルTa、イリジウムIr、ルテニウムRu等の材料も好適に挙げられる。
密着膜の膜厚としては、10nm〜50nmが好ましく、15nm〜30nmがさらに好ましい。この範囲以下の場合では、密着性に懸念があり、この範囲以上では、密着膜上で作製する電極膜の結晶の質に影響が出てくるため好ましくない。
「金属電極膜」
金属電極膜の金属材料としては、従来から高い耐熱性と低い反応性を有する白金Ptが用いられているが、鉛Pbに対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もあり、イリジウムIrや白金−ロジウム合金などの白金族元素や、これら合金膜も挙げられる。また、白金を使用する場合には下地である振動板5(特にSiO2)との密着性が悪いために、先の密着層を先に積層することが好ましい。
金属電極膜の作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。膜厚としては、80nm〜200nmが好ましく、100nm〜150nmがより好ましい。この範囲より薄い場合においては、共通電極として十分な電流を供給することが出来なくなり、液滴吐出をする際に不具合が発生するため好ましくない。さらに、この範囲より厚い場合においては、白金族元素の高価な材料を使用する場合においては、コストアップとなる点や、白金を材料とした場合においては、膜厚を厚くしていたったときに表面粗さが大きくなる。そして、その上に作製する酸化物電極膜やPZTの表面粗さや結晶配向性に影響を及ぼして、液滴吐出に十分な変位が得られないような不具合が発生するため好ましくない。
「酸化物電極膜」
酸化物電極膜の材料としては、ストロンチウム・ルテニウム酸化物SrRuO3を用いることが好ましい。左記以外にも、Srx(A)(1−x)Ruy(1−y)、A=Ba,Ca、B=Co,Ni、x,y=0〜0.5で記述されるような材料も好適に挙げられる。成膜方法についてはスパッタ法により作製される。スパッタ条件によって、SrRuO3薄膜の膜質が変化する。そのため、特に結晶配向性を重視し、第1電極601のプラチナPt(111)にならって、SrRuO3膜(SRO成膜とも呼ぶ)についても(111)配向させるためには、成膜温度については500℃以上での基板加熱を行い、成膜することが好ましい。
例えば、SRO成膜条件として、室温成膜でその後、RTA処理にて結晶化温度(650℃)で熱酸化する方法がある。この場合、SRO膜としては、十分結晶化され、電極としての比抵抗としても十分な値が得られる。しかしながら、膜の結晶配向性としては、(110)が優先配向しやすくなり、その上に成膜したPZTについても(110)配向し易くなる。
Pt(111)上に作製したSRO結晶性については、PtとSROとで格子定数が近いため、通常のθ−2θ測定では、SRO(111)とPt(111)の2θ位置が重なってしまい判別が難しい。Ptについては消滅則の関係からPsi=35°傾けた2θが約32°付近の位置には回折線が打ち消し合い、回折強度が見られない。そのため、Psi方向を約35°傾けて、2θが約32°付近のピーク強度で判断することでSROが(111)に優先配向しているかを確認することができる。2θ=32°に固定し、Psiを振ったときのデータを、以下に示す。
Psi=0°ではSRO(110)ではほとんど回折強度が見られず、Psi=35°付近において、回折強度が見られることから本成膜条件にて作製したものについては、SROが(111)配向していることが確認できた。また、上述した室温成膜+RTA処理により作製されたSROについては、Psi=0°のときに、SRO(110)の回折強度が見られる。
詳細は後述するが、圧電アクチュエータとして連続動作したときに、駆動させた後の変位量が、初期変位に比べてどのくらい劣化したかを見積もったところ、PZTの配向性が非常に影響しており、(110)では変位劣化抑制において不十分である。さらにSRO膜の表面粗さを見たときに、成膜温度に影響し、室温から300℃では表面粗さが非常に小さく2nm以下になる。粗さについては、AFMにより測定される表面粗さ(平均粗さ)を指標としている。表面粗さとしては、非常にフラットにはなっているが結晶性が十分でなく、その後成膜したPZTの圧電アクチュエータとしての初期変位や連続駆動後の変位劣化については、十分な特性が得られない。
表面粗さとしては、4nm〜15nmになっていることが好ましく、6nm〜10nmがさらに好ましい。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなるため好ましくない。したがって、上述に示すような、結晶性や表面粗さを得るためには、成膜温度としては500℃〜700℃、好ましくは520℃〜600℃の範囲で成膜を実施している。
成膜後のSrとRuの組成比については、Sr/Ruが0.82以上1.22以下であることが好ましい。この範囲から外れると比抵抗が大きくなり、電極として十分な導電性が得られなくなるため好ましくない。さらに、SRO膜の膜厚としては、40nm〜150nmが好ましく、50nm〜80nmがさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと、初期変位や連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られない点や、PZTのオーバーエッチングを抑制するためのストップエッチング層としての機能も得られにくくなるため好ましくない。また、この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が悪く、リークしやすくなるため好ましくない。また比抵抗としては、5×10-3Ω・cm以下になっていることが好ましく、さらに1×10-3Ω・cm以下になっていることがさらに好ましい。この範囲よりも大きくなると、共通電極配線609として、第5電極(図示せず)との界面で接触抵抗が十分得られず、共通電極配線609として十分な電流を供給することができなくなり、液滴吐出をする際に不具合が発生するため好ましくない。
<電気機械変換膜602>
電気機械変換膜602の材料としては、PZTを主に使用した。PZTとはジルコン酸鉛(PbTiO3)とチタン酸(PbTiO3)との固溶体であり、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成は、PbZrO3とPbTiO3との比率が53:47の割合である。化学式で示すと、Pb(Zr0.53,Ti0.47)O3、一般的にはPZT(53/47)と示される。
PZT以外の複合酸化物としては、チタン酸バリウムBaTiO3などが挙げられ、この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料とし、共通溶媒に溶解させることで、チタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。
これら材料は、一般式ABO3で記述され、A=Pb,Ba,Sr、B=Ti,Zr,Sn,Ni,Zn,Mg,Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1−x,Ba)(Zr,Ti)O3、(Pb1−x,Sr)(Zr,Ti)O3、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は、2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
電気機械変換膜602の作製方法としては、スパッタ法もしくは、Sol−gel法を用いてスピンコーターにて作製することができる。その場合は、パターニング化が必要となるので、フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。
PZTをSol−gel法により作製した場合、酢酸鉛PbO、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料とし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させ均一溶液を得ることで、PZT前駆体溶液が作製できる。金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体溶液に安定剤としてアセチルアセトンC582、酢酸C242、ジエタノールアミンC411NO2などの安定化剤を適量、添加してもよい。
下地基板全面にPZT膜を得る場合、スピンコートなどの溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことで得られる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴う。そのため、クラックフリーな膜を得るには、一度の工程で100nm以下の膜厚が得られるように前駆体濃度の調整が必要になる。
電気機械変換膜602の膜厚としては、0.5μm〜5μmが好ましく、1μm〜2μmがさらに好ましい。この範囲より小さいと、十分な変位を発生することができなくなり、この範囲より大きいと何層も積層させていくため、工程数が多くなりプロセス時間が長くなるので好ましくない。
また比誘電率としては、600以上2,000以下になっていることが好ましく、1,200以上1,600以下になっていることがさらに好ましい。この値を満たさないと、十分な変位特性が得られず、この値より大きくなると、分極処理が十分行われず、連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られないといった不具合が発生するため好ましくない。
<第2電極603>
第2電極603としては、金属または酸化物と金属とから成ることが好ましい。以下に、酸化物電極膜、金属電極膜の詳細について記載する。
「酸化物電極膜」
酸化物電極膜の材料等については、第1電極601で使用した酸化物電極膜で記載したとおりである。SRO膜の膜厚としては、20nm〜80nmが好ましく、40nm〜60nmがさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと初期変位や変位劣化特性については十分な特性が得られず、この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が悪く、リークしやすくなるため好ましくない。
「金属電極膜」
金属電極膜の材料等については、第1電極601で使用した金属電極膜で記載したとおりである。膜厚としては30nm〜200nmが好ましく、50nm〜120nmがさらに好ましい。この範囲より膜厚が薄い場合、個別電極配線610として十分な電流を供給することができなくなり、液滴吐出をする際に不具合が発生するため好ましくない。さらに、この範囲より膜厚が厚い場合、白金族元素の高価な材料を使用するとコストアップとなる。この理由や、白金を材料とし、膜厚を厚くしていたったときに表面粗さが大きくなり、絶縁保護膜を介して第6電極(図示せず)を作製する際に、膜剥がれ等のプロセス不具合が発生しやすくなるため好ましくない。
<第1絶縁保護膜604>
第1絶縁保護膜604は、成膜・エッチングの工程による圧電素子6へのダメージを防ぐとともに、大気中の水分が透過しづらい材料を選定する必要があるため、緻密な無機材料とする必要がある。有機材料では十分な保護性能を得るためには膜厚を厚くする必要があるため、好ましくない。第1絶縁保護膜604を厚い膜とした場合、振動板5の振動変位を著しく阻害してしまうため、吐出性能の低い液滴吐出ヘッドになってしまうことが要因である。
第1絶縁保護膜604を薄膜で高い保護性能を得るようにするためには、酸化物、窒化物、炭化膜を用いるのが好ましいが、絶縁膜の下地となる、電極材料、圧電体材料、振動板材料と密着性が高い材料を選定する必要がある。また、成膜法も電気機械変換素子を損傷しない成膜方法を選定する必要がある。すなわち、反応性ガスをプラズマ化して基板上に堆積するプラズマCVD法や、プラズマをターゲット材に衝突させて飛ばすことで成膜するスパッタリング法は好ましくない。第1絶縁保護膜604の好ましい成膜方法としては、蒸着法、ALD法(Chemical Vapor Deposition)等が例示できるが、使用できる材料の選択肢が広い点で、ALD法が好ましい。
第1絶縁保護膜604の好ましい材料としては、酸化アルミニウムAl23、酸化亜鉛ZrO2、酸化イットリウムY23、酸化タンタルTa23、酸化チタンTiO2などのセラミクス材料に用いられる酸化膜が例として挙げられる。特に、ALD法を用いることで、膜密度の非常に高い薄膜を作製し、プロセス中でのダメージを抑制しようとしている。
第1絶縁保護膜604の膜厚としては、圧電素子6の保護性能を確保できる十分な薄膜とする必要があると同時に、振動板5の変位を阻害しないように、可能な限り薄くする必要がある。第1絶縁保護膜604の好ましい膜厚は、20nm〜100nmの範囲である。100nmより厚い場合は、振動板の変位が低下し、吐出効率の低い液滴吐出ヘッドとなるため好ましくない。一方、20nmより薄い場合は圧電素子6の保護層としての機能が不足してしまい、圧電素子6の性能が前述の通り低下してしまうため好ましくない。
また、第1絶縁保護膜604を2層にする構成であってもよい。この場合は、2層目の絶縁保護膜を厚くするため、振動板の振動変位を著しく阻害しないように第2電極603付近において、2層目の絶縁保護膜を開口するような構成も挙げられる。このとき2層目の絶縁保護膜としては、任意の酸化物、窒化物、炭化物、またはこれらの複合化合物を用いることができる。この中でも、半導体デバイスで一般的に用いられる二酸化ケイ素SiO2を用いることができる。
第1絶縁保護膜604の成膜は、任意の手法を用いることができ、CVD法、スパッタリング法が例示できる。この中でも、電極形成部等のパターン形成部の段差被覆を考慮すると等方的に成膜できるCVD法を用いることが好ましい。2層目の絶縁保護膜の膜厚は、下部電極としての第1電極601と個別電極配線610に印加される電圧で絶縁破壊されない膜厚とする必要がある。すなわち絶縁保護膜に印加される電界強度を、絶縁破壊しない範囲に設定する必要がある。さらに、2層目の絶縁保護膜の下地の表面性やピンホール等を考慮すると、膜厚は200nm以上必要であり、500nm以上がさらに好ましい。
<第3電極606および第4電極607>
第3電極606、第4電極607の材料としては、Ag(銀)合金、銅Cu、アルミニウムAl、金Au、白金Pt、イリジウムIrのいずれかから成る金属電極材料であることが好・BR>ワしい。第3電極606、第4電極607の作製方法としては、スパッタ法、スピンコート法を用いて作製し、その後フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。
第3電極606、第4電極607の膜厚としては、0.1μm〜20μmが好ましく、0.2μm〜10μmがさらに好ましい。この範囲より小さいと抵抗が大きくなって電極に十分な電流を流すことができなくなり、ヘッド吐出が不安定になるため好ましくない。この範囲より大きいと、プロセス時間が長くなるため好ましくない。また、共通電極配線609、個別電極配線610とした場合、コンタクトホール部608(10μm×10μm)での接触抵抗として、共通電極配線609としては、10Ω以下が好ましく、個別電極配線610としては、1Ω以下が好ましい。また、共通電極配線609としては、5Ω以下がさらに好ましく、個別電極配線610としては、0.5Ω以下がさらに好ましい。この範囲を超えると、十分な電流を供給することができなくなり、液滴吐出をする際に不具合が発生するため好ましくない。
<第2絶縁保護膜605>
第2絶縁保護膜605は、個別電極配線610や共通電極配線609の保護層の機能を有するパシベーション層である。図3に示すように、個別電極配線610の引き出し部と、図示しないが共通電極配線609の引き出し部とを除き、個別電極配線610と共通電極配線609との上面を第2絶縁保護膜605で被覆する。これにより、電極材料に安価なAlまたはAlを主成分とする合金材料を用いることができる。その結果、低コストかつ信頼性の高い液滴吐出ヘッドとすることができる。
第2絶縁保護膜605の材料としては、任意の無機材料、有機材料を使用することができるが、透湿性の低い材料とする必要がある。無機材料としては、酸化物、窒化物、炭化物等が例示でき、有機材料としてはポリイミド、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が例示できる。ただし有機材料の場合には厚膜とすることが必要となるため、後述のパターニングに適さない。そのため、薄膜で配線保護機能を発揮できる無機材料とすることが好ましい。特に、Al配線上に窒化ケイ素Si34を用いることが、半導体デバイスで実績のある技術であるため好ましい。
また、第2絶縁保護膜605の膜厚としては、200nm以上とすることが好ましく、500nm以上とすることがさらに好ましい。膜厚が薄い場合は十分なパシベーション機能を発揮できず、配線材料の腐食による断線が発生し、液滴吐出ヘッドの信頼性を低下させてしまうため好ましくない。
また、第2絶縁保護膜605は、圧電素子6上とその周囲の振動板5上に開口部Oをもつ構造が好ましい(図3(a)参照)。これは、前述の第1絶縁保護膜604の圧力室領域を薄くしていることと同様の理由である。これにより、高効率かつ高信頼性の液滴吐出ヘッドとすることが可能になる。
この開口部Oの形成には、フォトリソグラフィ法とドライエッチングを用いることが、第1絶縁保護膜604および第2絶縁保護膜605で圧電素子6が保護されているため可能である。また、PAD部の面積については、50×50μm2以上が好ましく、100×300μm2以上がさらに好ましい。この値に満たない場合は、十分な分極処理ができなくなり、連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られないといった不具合が発生するため好ましくない。
(配線の構成)
配線は、振動板5の、圧力室3を設けた面とは反対側の面に形成されている。この配線として、図2に示すように、振動板5の短手方向の両側縁に沿って、長手方向に長尺に延びるCom配線15が、エッチング等により形成されている。このCom配線15に、複数の圧電素子6がそれぞれ接続されている。
また、図2に示すように、振動板5の長手方向の端部には、Com配線15から分岐する入力端子15aが形成されている。また、この振動板5の端部の中央付近には、一対のVcom配線16が形成されている。また、Vcom配線16には、当該Vcom配線16から分岐する複数の入力端子16aが形成されている。振動板5の端部には、さらに、一対のVcom配線16の入力端子16a間に位置させた複数の入力端子17が形成されている。これらの入力端子15a,16a,17は、前述のFPC14の配線端部14aに設けられた複数の配線端子14bに、ボンデイングワイヤ(図示せず)により、それぞれボンデイング接続(ワイヤボンディング)されている。
(サブフレーム板13の構成)
サブフレーム板13は、図1に示すように、振動板5上に接合または固着されている。このサブフレーム板13には、短手方向に2列形成された圧電素子6の列の、それぞれの圧電素子6を収容する振動許容凹部13aが複数形成されている。この複数の振動許容凹部13aは、短手方向に長尺な圧力室3とほぼ同一形状に形成され、各圧力室3の位置と上下方向で一致して、互いに重なるように設けられている。
サブフレーム板13には、図1に示すように、短手方向の中央に、長手方向に長尺な配設空間13bが形成されている。この配設空間13b内には、振動板5上に固定した駆動用IC(ドライバー集積回路)10が、制御装置(制御部、制御回路)として配設されている。この駆動用IC10は、アンダーフィル剤11により封止されていて、裏面側が他部品と接触することのない状態となっている。
また、駆動用IC10は、振動板5上の圧電素子6を駆動制御するように、各圧電素子6の一端に配線接続され、さらに、入力端子16a,17に配線接続されている(図2参照)。
(フレーム板7の構成)
フレーム板7は、図1に示すように、サブフレーム板13上に接合または固着されている。サブフレーム板13とフレーム板7との短手方向の両側には、2列に配列された圧電素子6の列の外側に、図1に示すように、サブフレーム板13とフレーム板7にまたがるように、一対の共通液室8が形成されている。この一対の共通液室8は、長手方向に配列された個別流路3aの列の配列方向に沿って、長手方向に長尺に形成されている。フレーム板7には、圧電素子6の各列に対応する部分に、図1に示すように、各共通液室8にそれぞれ連通する供給口9が形成されている。各供給口9は、例えば、圧電素子6の各列の延びる方向(長手方向)の略中央、または、端部側に位置するように、フレーム板7に設けている。
[液滴吐出ヘッドの作製例]
次に、各実施例および比較例で使用する、液滴吐出ヘッドの作製手順を、以下に具体的に説明する。6インチシリコンウェハに熱酸化膜(膜厚1ミクロン)を形成し、第1電極601としての密着膜として、チタン膜(膜厚30nm)をスパッタ装置にて成膜した。その後に、RTA装置を用いて750℃にて熱酸化し、引き続き金属膜として白金膜(膜厚100nm)、酸化物膜としてSrRuO膜(膜厚60nm)をスパッタ成膜した。スパッタ成膜時の基板の加熱温度は550℃とし、この条件下で成膜を実施した。
次に、電気機械変換膜602として、Pb:Zr:Ti=114:53:47に調整された溶液を準備し、スピンコート法により膜を成膜した。具体的な前駆体塗布液の合成については、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。化学両論組成に対し鉛量を過剰にしてある。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。
イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、先記の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成した。このPZT濃度は0.5モル/Lにした。このPZT前駆体溶液を用いて、スピンコートにより成膜し、成膜後、120℃乾燥、次いで、500℃熱分解を行った。3層目の熱分解処理後に、結晶化熱処理(温度750℃)をRTA(急速熱処理)にて行った。このときPZTの膜厚は240nmであった。この工程を計8回(24層)実施し、約2μmのPZT膜厚を得た。
次に、第2電極603としての酸化物膜として、SrRuO膜(膜厚40nm)、金属膜としてPt膜(膜厚125nm)をスパッタ成膜した。その後、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィでレジストパターンを形成した後、ICPエッチング装置(サムコ製)を用いてパターンを作製した。
次に、第1絶縁保護膜604として、ALD工法を用いてAL23膜を50nm成膜した。このとき原材料としてALについては、TMA(シグマアルドリッチ社)、Oについてはオゾンジェネレーターによって発生させたO3を交互に積層させることで、成膜を進めた。その後、エッチングによりコンタクトホール部608を形成する。次いで、第3電極606および第4電極607として、ALをスパッタ成膜し、エッチングによりパターニング形成した。また、第2絶縁保護膜605として、Si34をプラズマCVDにより500nm成膜し、圧電素子6を作製した。このとき、6インチウェハ内30mm×10mm四方のエリアを25個配置した。
このように形成したアクチュエータ基板4に対して、共通液室8(図1参照)の一部を形成する開口部を設けたサブフレーム板13(図1参照)を接着接合した。このサブフレーム板13はシリコンウェハを活用し、熱酸化膜を形成した。なお、実施例1ではアルミニウムをスパッタリングで形成したが、金、白金、等の電極を活用することもできる。また、アクチュエータ基板4上の個別電極に対してAuスタッドバンプ(図示せず)を形成した。
この後、コロナ帯電処理により分極処理を行った。コロナ帯電処理には直径50μmのタングステンのワイヤーを用い、コロナワイヤに7kV、サブフレーム上のガード電極に2kvの電圧を印加し、30秒間処理を行った。そして、DrICをアクチュエータ基板4上に実装した。また、シリコンウェハの圧力室3の加工を行い、ノズル接合等、ヘッド組立を行った。以上により、図1に示すような液滴吐出ヘッドを作製した。
<比較例>
比較例では、上述のように作製した液滴吐出ヘッドを用いて、吐出評価を行ない、評価を一度中断した後、再度吐出を行ったところ、液滴速度(以下「Vj」と呼ぶ)が約4%低下した。その後、吐出を繰り返すに従い、Vjが正常に戻ってくることを確認した。このときのメニスカス表面からの粘度(レーザードップラーによる残留振動測定)を観察した。その結果、連続駆動後の吐出終了時、吐出中断時、再度駆動開始した際の吐出開始時、連続吐出時度のメニスカス表面の粘度は、図9に示すようになっていることを確認した。したがって、Vjの低下は、吐出の中断中に、メニスカス表面が乾燥(メニスカス表面からの水分の揮発)することによって、液体が増粘された影響であると考えられる。
<実施例1>
次に、上述の液滴吐出ヘッド用いた実施例1の液滴吐出制御について、図4を用いて説明する。実施例1では、液滴吐出ヘッドから液滴を吐出後、1時間中断し、吐出を再開するに当たり、図4に示すような加熱波形を印加した。この加熱波形としては、駆動時の中間電位よりも中間電位を高くして、パルスの波高値を駆動時の波高値よりも高くした。
一例として、圧力室3の共振周期が5us(μsec)である液滴吐出ヘッドに対して、加熱波形の時間間隔Tを3usとした。このときの加熱波形全体のプロファイルを以下に示す。加熱波形の立下り(Tf)時間、および、立上り(Tr)時間を1usとした。加熱波形の中間電位を、駆動時の中間電位15Vよりも高い20Vとし、波高値を、駆動時が18Vであるのに対して20Vとした(図4参照)。このような加熱波形を30sec印加することで、液滴吐出ヘッド全体が加熱され、圧力室3内のインクの粘度が低下した。加熱波形後に駆動波形を印加してVjを測定したところ、Vj低下率は2%以下に低減できることを確認した。
<実施例2>
次に、液滴吐出ヘッド用いた実施例2の液滴吐出制御について、図5を用いて説明する。実施例2では、液滴吐出ヘッドからの液滴の吐出後、1時間中断し、吐出を再開するに当たり、図5に示すような加熱波形を印加した。この加熱波形として中間電位を20Vとし、波高値は駆動波形と同じ18Vとし、圧力室3の共振周期は5usのため反共振の周期として加熱波形の時間間隔T=2.5usにして、実施例1と同様の実験を行った。このとき、波形の印加時間20secにて、実施例1と同等の結果(Vj低下率が2%以下に低減、以下の実施例でも同様)を得ることができた。
<実施例3>
次に、液滴吐出ヘッド用いた実施例3の液滴吐出制御について、図6を用いて説明する。実施例3では、図6に示すように、加熱波形のTr,Tfを1usから0.8usとしたこと以外は、実施例2と同様の条件とした。この条件で、実施例1、2と同様の実験を行ったところ、他の実施例と同様の効果を得ることができた。
<実施例4>
次に、液滴吐出ヘッド用いた実施例4の液滴吐出制御について、図7を用いて説明する。実施例4では、図7に示すように、実施例3と同様の条件で、さらに加熱波形の波高値を18Vから20Vにしたこと以外は、実施例4と同様の条件とした。この条件で、実施例1、2と同様の実験を行ったところ、他の実施例と同様の効果を得ることができた。
上記実施例ごとに、実施例1と同等の結果を得るのに要した加熱波形の印加時間を、下記表1に示す。また、表1に、実施例1の充放電電流および発熱量をそれぞれ基準「1」としたときの実施例2〜実施例4の充放電電流および発熱量を併記した。充放電電流は、圧電素子6の静電容量を基に、各実施例において、上述のように印加した加熱波形から計算し、そこから発熱量を試算した。
また、確認実験として、各実施例での加熱波形でのメニスカス表面の粘度変化の測定を行った。測定方法としては、各実施例において、上述のように加熱波形を印加し、ノズル表面のメニスカス振動を、レーザードップラー干渉計を用いて計測することで、振動の挙動から粘度を算出した。測定結果を図8に示す。図8に示すように、実施例1で加熱波形を30sec印加したときの粘度を基準として、実施例2〜実施例4の加熱波形で、この基準粘度に到達する時間を測定したところ、表1に示す加熱波形の印加時間とほぼ一致がみられた。
以上のように、実施例1〜実施例4の液滴吐出ヘッドでは、間欠動作時に吐出を再開する前に、液滴吐出時の駆動波形で用いる中間電位よりも高い中間電位に保持されるパルス波形を印加し、圧力室内のインクを加熱している。このようなインクは、その溶媒の温度依存性によって、加熱することで粘度が低下する性質を有するため、充放電電流による発熱により圧力室内のインクが加熱されることで、インクの粘度は低下する。したがって、電源ON時や長期間印字を実施していない場合等に、メニスカス表面が乾燥し、インク内の水分が低下して増粘していても、各実施例のような加熱波形を付与するだけで、加圧室内のインクだけでなく、メニスカス表面近傍の乾燥し増粘した部分の粘度を、より効率的に下げることができる。その結果、印字を円滑に再開することができるとともに、吸引によるメンテナンスの頻度や液体の消耗量を低減することができる。
<実施例5>
次に、実施例5では、本願の液滴吐出ヘッドを備える画像形成装置の一例を、図10および図11を参照して説明する。図10は画像形成装置の主要機構部の構成を示す概略図であり、図11は同主要機構部の要部の概略平面図である。
[画像形成装置の構成]
図10、図11に示すように、実施例に係る画像形成装置100は、シリアル型画像形成装置であり、図11に示すように、左右の側板(図示せず)に横架したガイド部材であるガイドロッド101とガイドレール102とで、キャリッジ103を主走査方向に摺動自在に保持している。この保持状態で、主走査モータ104で駆動プーリ106Aと従動プーリ106Bとの間に架け渡したタイミングベルト105を介して、キャリッジ103を矢示方向(主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ103には、例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色の記録液の液滴を吐出する本願の実施例と同様の液滴吐出ヘッド107k,107c,107m,107yで構成した記録ヘッド107を主走査方向に沿う方向に配置し、液滴吐出方向を下方に向けて装着している。なお、ここでは独立した液滴吐出ヘッド107k,107c,107m,107yを用いているが、本願がこれに限定されるものではない。例えば、各色の記録液の液滴を吐出する複数のノズル列を有する1又は複数のヘッドを用いる構成とすることもできる。また、色の数および配列順序はこれに限るものではない。また、キャリッジ103には、記録ヘッド107に各色の液滴を供給するための各色のサブタンク108を搭載している。このサブタンク108には、図10に示すように、記録液供給チューブ109を介して、メインタンク(インクカートリッジ、図示せず)から記録液が補充供給される。
一方、画像形成装置100の本体は、図10に示すように、被着媒体(以下「用紙」と呼ぶ)112を積載した用紙積載部(圧板)111を備える給紙カセット110と、この給紙カセット110から用紙112を給紙するための給紙部とを備える。この給紙部は、用紙積載部111から用紙112を1枚ずつ分離給送する半月コロ(以下、「給紙ローラ」と呼ぶ)113と、この給紙ローラ113に対向し摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド114と、を備えている。この分離パッド114は、付勢手段(図示せず)により、給紙ローラ113側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙112を、記録ヘッド107の下方側で搬送するための搬送部を備えている。この搬送部として、搬送ベルト121と、カウンタローラ122と搬送ガイド123と、加圧コロ125Aおよび先端加圧コロ125Bと、帯電ローラ126と、を備えている。
搬送ベルト121は、給紙部から給紙された用紙112を静電吸着して搬送するためのものである。カウンタローラ122は、給紙部からガイド115を介して送られる用紙112を搬送ベルト121との間で挟んで搬送するためのものである。搬送ガイド123は、カウンタローラ122と搬送ベルト121とで略鉛直上方に送られる用紙112を、略90°方向転換させて搬送ベルト121上に倣わせるためのものである。加圧コロ125Aおよび先端加圧コロ125Bは、押さえ部材124で搬送ベルト121側に付勢されている。帯電ローラ126は、搬送ベルト121表面を帯電させるための帯電手段である。
ここで、搬送ベルト121は、無端状ベルトであり、搬送ローラ127とテンションローラ128との間に掛け渡されている。搬送ローラ127は、副走査モータ131からタイミングベルト132およびタイミングローラ133を介して回転されることで、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成されている。なお、搬送ベルト121の裏面側には、記録ヘッド107による画像形成領域に対応してガイド部材129を配置している。帯電ローラ126は、搬送ベルト121の表層に接触し、搬送ベルト121の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各2.5Nをかけている。
画像形成装置100は、さらに、記録ヘッド107で記録された用紙112を排紙するための排紙部として、搬送ベルト121から用紙112を分離するための分離部としての排紙ローラ152および排紙コロ153と、排紙される用紙112をストックする排紙トレイ154と、を備えている。また、画像形成装置100の背部には、両面給紙ユニット155が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット155は、搬送ベルト121の逆方向回転で戻される用紙112を取り込んで反転させ、再度カウンタローラ122と搬送ベルト121との間に給紙する。
画像形成装置100は、さらに、図11に示すように、キャリッジ103の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド107のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構156を配置している。この維持回復機構156は、記録ヘッド107の各ノズル面をキャッピングするための複数のキャップ157と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード158と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け159と、等を備えている。
以上のように構成した画像形成装置100においては、給紙部から用紙112が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙112はガイド115で案内される。その後、用紙112は搬送ベルト121とカウンタローラ122との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド123で案内されて先端加圧コロ125Bで搬送ベルト121に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、制御回路(図示せず)によって、ACバイアス供給部(図示せず)から帯電ローラ126に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加される。この電圧は、搬送ベルト121が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラスとマイナスとが交互に帯電した搬送ベルト121上に用紙112が給送されると、用紙112が搬送ベルト121に静電力で吸着され、搬送ベルト121の周回移動によって用紙112が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ103を往路および復路方向に移動させながら、画像信号に応じて記録ヘッド107を駆動することにより、停止している用紙112に液滴を吐出して用紙112に着弾させることで1行分を記録し、用紙112を所定量搬送後、次の行の記録を行う。そして、記録終了信号または用紙112の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙112を排紙トレイ154に排紙する。
また、両面印刷の場合には、用紙112の表面(最初に印刷する面)の記録が終了したときに、搬送ベルト121を逆回転させることで、記録済みの用紙112を両面給紙ユニット155内に送り込み、用紙112を反転させる(裏面が印刷面となる状態にする)。この反転した用紙112を、再度カウンタローラ122と搬送ベルト121との間に給紙し、タイミング制御を行って、前述したと同様に搬送ベルト121上に搬送して裏面に記録を行った後、排紙トレイ154に排紙する。
また、印字(記録)待機中には、キャリッジ103は維持回復機構156側に移動されて、キャップ157で記録ヘッド107のノズル面がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことにより、液滴の乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ157で記録ヘッド107をキャッピングした状態で、ノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という)、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。この回復動作によって、記録ヘッド107のノズル面に付着した液滴を清掃除去するためにワイパーブレード158でワイピングを行なう。また、記録開始前や、記録途中などに記録と関係しない液滴を吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド107の安定した吐出性能を維持する。また、電源ON時や長期間印字を実施していない場合等に、印字を再開する際には、上記実施例1〜実施例4で説明したような加熱波形を印加する。これにより、メニスカス表面の乾燥により増粘した記録液の粘度を下げることができ、液滴吐出ヘッド107k,107c,107m,107yから液滴吐出を円滑に行うことができる。また、ノズル吸引や空吐出等の動作を低減することができる。
以上のように、本願に係る実施例5の画像形成装置100では、本願に係る液体吐出ヘッドを備え、液滴吐出の中断後の再開時に、加熱波形を印加してインク粘度を下げている。そのため、印字を円滑に再開することが可能となり、画像品質に優れた印字を続行することができる。また、ノズル吸引によるメンテナンスの頻度や記録液の消耗量を低減して、コスト性も向上させることができる。なお、実施例5では、本願をプリンタ構成の画像形成装置に適用した例で説明したが、これに限るものではなく、例えば、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置に適用することができる。また、記録液以外の液体として、定着処理液などを用いる画像形成装置にも適用することができる。
以上説明した実施例1〜5は一例であって、本願がこれらの実施例に限定されるものではない。液滴吐出を中断し、再開する際に、液体の粘度を良好に下げることが可能な構成であれば、本願の課題を解決できるものである。また、上記各実施例では、本願に係る液滴吐出ヘッドとして、インク等の記録液を吐出する液滴吐出ヘッドを示したが、液滴吐出ヘッドとしてはこれに限定されることはない。記録液以外の液体、例えばパターニング用の液体レジストを吐出する液滴吐出ヘッド、遺伝子分析試料を吐出する液滴吐出ヘッド等に適用してもよい。
1 ノズル板
2 ノズル
3 圧力室
5 振動板
6 圧電素子(薄膜圧電体)
10 駆動用IC(駆動制御手段)
100 画像形成装置
107k,107c,107m,107y 液滴吐出ヘッド
112 用紙(被着媒体)
特開平9−29996号公報 特許第4645947号公報 特開平10−286947号公報

Claims (5)

  1. 液滴を吐出するノズルと、
    前記ノズルに連通する圧力室と、
    前記圧力室上に設けられた振動板と、
    前記振動板上に設けられ、該振動板を振動させることにより、前記圧力室内の容積を変化させる薄膜圧電体と、
    前記薄膜圧電体に、前記液滴の吐出用の駆動波形を印加する駆動制御手段と、を備え、
    前記駆動制御手段は、前記ノズルからの前記液滴の吐出の開始前に、前記薄膜圧電体に、前記液滴の吐出用の駆動波形で用いる中間電位よりも高い中間電位が保持されるパルス波形を加熱波形として印加し、前記圧力室内を加熱することを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 前記加熱波形が、前記液滴吐出時の前記駆動波形の波高値であって前記中間電位から引き込み時の最低電圧までの電圧幅以上の電圧幅で印加されるパルス波形であることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
  3. 前記加熱波形として、前記ノズルのメニスカス表面の反共振周波数でパルス波形を印加することを特徴とする請求項1または2に記載の液滴吐出ヘッド。
  4. 前記加熱波形は、前記パルス波形の立上り時間および立下り時間が、前記液滴吐出時の前記駆動波形の立上り時間および立下り時間以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載の液滴吐出ヘッドを備え、前記液滴吐出ヘッドから吐出した液滴を被着媒体上に着弾させることを特徴とする画像形成装置。
JP2017122125A 2017-06-22 2017-06-22 液体吐出装置、液体吐出ヘッド及び駆動方法 Active JP6278145B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017122125A JP6278145B2 (ja) 2017-06-22 2017-06-22 液体吐出装置、液体吐出ヘッド及び駆動方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017122125A JP6278145B2 (ja) 2017-06-22 2017-06-22 液体吐出装置、液体吐出ヘッド及び駆動方法

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013139401A Division JP6167699B2 (ja) 2013-07-03 2013-07-03 液滴吐出ヘッド、および、画像形成装置

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2017159673A true JP2017159673A (ja) 2017-09-14
JP2017159673A5 JP2017159673A5 (ja) 2017-12-28
JP6278145B2 JP6278145B2 (ja) 2018-02-14

Family

ID=59853693

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017122125A Active JP6278145B2 (ja) 2017-06-22 2017-06-22 液体吐出装置、液体吐出ヘッド及び駆動方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6278145B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10576742B2 (en) 2018-01-19 2020-03-03 Ricoh Company, Ltd. Liquid discharge head and liquid discharge apparatus

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002154212A (ja) * 2000-09-01 2002-05-28 Seiko Epson Corp インクジェット式記録ヘッドの製造方法、インクジェット式記録ヘッド、インクジェット式記録ヘッドの駆動方法、及び、インクジェット式記録装置
JP2004148784A (ja) * 2002-11-01 2004-05-27 Seiko Epson Corp 液滴吐出装置及び方法
JP2009241278A (ja) * 2008-03-28 2009-10-22 Seiko Epson Corp 液体噴射駆動装置並びにこれを具備する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
JP2011104921A (ja) * 2009-11-19 2011-06-02 Seiko Epson Corp 液滴吐出方法
JP2013052645A (ja) * 2011-09-06 2013-03-21 Ricoh Co Ltd 液体吐出ヘッドの制御方法および液体吐出装置
JP2013199069A (ja) * 2012-03-26 2013-10-03 Seiko Epson Corp 液滴吐出装置

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002154212A (ja) * 2000-09-01 2002-05-28 Seiko Epson Corp インクジェット式記録ヘッドの製造方法、インクジェット式記録ヘッド、インクジェット式記録ヘッドの駆動方法、及び、インクジェット式記録装置
JP2004148784A (ja) * 2002-11-01 2004-05-27 Seiko Epson Corp 液滴吐出装置及び方法
JP2009241278A (ja) * 2008-03-28 2009-10-22 Seiko Epson Corp 液体噴射駆動装置並びにこれを具備する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
JP2011104921A (ja) * 2009-11-19 2011-06-02 Seiko Epson Corp 液滴吐出方法
JP2013052645A (ja) * 2011-09-06 2013-03-21 Ricoh Co Ltd 液体吐出ヘッドの制御方法および液体吐出装置
JP2013199069A (ja) * 2012-03-26 2013-10-03 Seiko Epson Corp 液滴吐出装置

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10576742B2 (en) 2018-01-19 2020-03-03 Ricoh Company, Ltd. Liquid discharge head and liquid discharge apparatus

Also Published As

Publication number Publication date
JP6278145B2 (ja) 2018-02-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9186894B2 (en) Droplet discharge head, image forming apparatus, polarization processing method of electromechanical transducer, and method of manufacturing droplet discharge head
JP6399386B2 (ja) 電気機械変換部材の製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法及び画像形成装置の製造方法
JP6260858B2 (ja) 電気機械変換素子の製造方法、電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド及び画像形成装置
JP5708098B2 (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出装置および画像形成装置
US9199458B2 (en) Electromechanical transducer element, method of producing electromechanical transducer element, inkjet recording head, and inkjet recording apparatus
JP6344634B2 (ja) 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、画像形成装置、電気機械変換素子の分極処理方法、及び、液滴吐出ヘッドの製造方法
JP2015056636A (ja) 圧電体アクチュエータ、液滴吐出ヘッド、液体カートリッジ、インクジェット記録装置、及び圧電体アクチュエータの製造方法
JP6079080B2 (ja) 電気−機械変換素子の製造方法、電気−機械変換素子、該電気−機械変換素子を備えた液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置。
JP5831475B2 (ja) 液滴吐出ヘッド、電圧制御方法、および、画像形成装置
JP6531978B2 (ja) 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置
JP6278145B2 (ja) 液体吐出装置、液体吐出ヘッド及び駆動方法
JP6201461B2 (ja) 分極処理装置
JP6606933B2 (ja) 基板の作製方法、および液滴吐出ヘッドの製造方法
JP2014054802A (ja) 電気機械変換素子、液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置
JP6167699B2 (ja) 液滴吐出ヘッド、および、画像形成装置
JP2016215446A (ja) 液滴吐出装置
JP2020025082A (ja) 電気機械変換素子、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び圧電装置
JP2016155283A (ja) 電気機械変換部材、液滴吐出ヘッド、画像形成装置、インクカートリッジ、マイクロポンプおよび電気機械変換部材の作製方法
JP6531428B2 (ja) 電気機械変換部材、電気機械変換部材の製造方法、液滴吐出ヘッド、および画像形成装置
JP6132190B2 (ja) 液滴吐出ヘッド、液体吐出装置、画像形成装置、電気機械変換素子の分極処理方法、及び、液滴吐出ヘッドの製造方法
JP6221409B2 (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの分極処理方法及び液体吐出装置
JP5998537B2 (ja) 電気−機械変換素子、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置
JP2017191859A (ja) 電気機械変換部材、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
JP6566323B2 (ja) 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置
JP2013065698A (ja) 電気−機械変換素子、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170719

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171117

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20171117

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20171212

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20171219

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180101

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6278145

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151