以下、添付図面を参照して、この発明の一実施形態について説明する。
図1は、この発明に係る録音システムを構成する管理装置10と端末装置20の概念的構成例を説明するブロック図である。ここで、管理装置10と端末装置20とは、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)、ZigBee、WiMax、Ethernet(登録商標)等、何らかのネットワークで接続されている必要がある。録音システムの一例は、1つの管理装置10と複数の端末装置20とからなる。
管理装置10は、プログラムを実行するコンピュータ機能を持つ任意の装置又は機器に、この発明に係る録音システムの管理装置として動作させるためのアプリケーションプログラム(以下、「管理装置用の録音システムアプリ」という)をインストールして実行させることで構成される。その機器は、例えばラップトップ型パーソナルコンピュータやタブレット端末などである。
管理装置10は、複数の端末装置20のそれぞれに対応付けられた複数のトラックを有するマルチトラック録音部101(「MTR」)と、ネットワークを介して複数の端末装置20それぞれに対して音データの録音を行うように命令する録音命令部102と、ネットワークを介して複数の端末装置20のそれぞれから音データを取得する取得部104と、前記命令に応じて、MTR101の各トラックに、該命令に応じて行われる録音の時間区間を示す仮区間を作成する仮区間作成部103と、各端末装置20から取得した音データを、対応するトラックに作成された仮区間に対応付けて記録することで、該仮区間を音データに対応付けられた実区間に変換する変換部105を備える。
より具体的には、録音命令部102の行う前記命令は、録音開始命令と録音停止命令とからなる。一例として、録音命令部102は、前記命令に応じた録音を識別するための識別情報を各端末装置20に通知するように構成されてよい。仮区間作成部103は、録音開始命令と録音停止命令に応じて、録音開始時刻から録音停止時刻までの前記仮区間を作成するように構成され、また、作成された仮区間に前記識別情報を対応付けるように構成され得る。前記識別情報は、1つの仮区間を特定する情報として、例えば、管理装置10のトラックの時間軸上において録音開始要求を行った時刻を示す時刻情報を含む。なお、仮区間作成部103は、録音開始時刻から録音停止時刻までの前記仮区間を作成するのであれば、必ずしも録音開始に応じて仮区間の作成を開始しなくてもよい。
端末装置20は、プログラムを実行するコンピュータ機能を持つ任意の装置又は機器に、この発明に係る録音システムの端末装置として動作させるためのアプリケーションプログラム(以下、「端末装置用の録音システムアプリ」という)をインストールして実行させることで構成される。その機器は、例えばスマートフォンやタブレット端末などである。
端末装置20は、管理装置10からの命令に応じて音データを録音する録音部201と、前記命令に応じて録音された音データを管理装置10に転送する転送部202を備える。より具体的には、録音部201は、録音開始命令に応じて音データの録音を開始し、録音停止命令に応じて音データの録音を終了する。また、転送部202は、管理装置10から録音の命令とともに通知された識別情報を、該命令に応じて録音された音データに付加し、識別情報の付加された音データを転送するように構成されてよい。
図2は、図1に示す録音システムの使用例を説明する図であって、該録音システムを吹奏楽団の演奏の録音に使用している。図2の例では、吹奏楽団の指揮者110が、管理装置10を操作し、吹奏楽団の各演奏者120が端末装置20を用意する。端末装置20は、それぞれ対応する演奏者120による演奏音を録音できるよう、例えば各演奏者120の譜面台の上などに置かれる。なお、以下の説明では、管理装置10を操作する指揮者110を「オペレータ」、端末装置20を操作する演奏者120を「ユーザ」とも言う。
図2に示す録音システムによる録音例の概要を説明する。まず、(1)指揮者110からの録音開始の指示に応じて、管理装置10は、ネットワークを介して、各端末装置20に録音開始を命令する(録音命令部102)。各端末装置20は、前記命令に応じて一斉に音データの録音を開始する(録音部201)。このとき、管理装置10では、前記指示に応じて、各端末装置20に対応付けられたトラックに仮区間の作成を開始する(仮区間作成部103)。例えば、指揮者110は、管理装置10にて録音開始指示の操作を行った後に各演奏者120に演奏開始を指示する。各演奏者120が演奏を開始すると、各端末装置20には、それぞれ対応する演奏者120による楽器演奏を示す音データが録音される。
(2)指揮者110は、各演奏者120に対して演奏停止を指示してから、管理装置10にて録音停止指示の操作を行う。管理装置10は、その指示に応じて、ネットワークを介して、各端末装置20に録音停止を命令する(録音命令部102)。その命令に応じて、各端末装置20は録音を停止する(録音部201)。このとき、管理装置10は、各トラックにおける仮区間の作成を終了する(仮区間作成部103)。各端末装置20での録音の開始及び停止と同じタイミングで、各トラックの仮区間の作成開始及び停止を行うので、各トラックの仮区間は、いずれも、対応する端末装置20で録音された音データと同じ時間区間を持つもの、すなわち該録音の時間区間を特定するものとなる。
(3)各端末装置20は、ネットワークを介して、録音された音データを管理装置10に転送する(転送部202)管理装置10は、各端末装置20から音データを取得し(取得部104)、該取得した音データを、対応するトラックに作成された前記仮区間に対応付けて記録することで、該仮区間を音データに対応付けられた実区間に変換する(変換部105)。
前記の通り、各トラックはそれぞれ端末装置20に対応付けられているので、各演奏者120(又は端末)とトラックの対応付けを自動的に行なうことできる。そして、各トラックの仮区間は、端末装置20で該録音された音データと同じ時間軸を持つものであるから、各端末装置20から取得した音データに基づいて、仮区間を実区間に変換するだけで簡単に、マルチトラック録音部101の個々のトラックに、対応する端末装置20で録音された音データ(すなわち、演奏者120毎の演奏音)を、時間軸を合わせて記録することができる。したがって、演奏者120毎の演奏音を合わせた吹奏楽団の全体演奏を、マルチトラック録音部101の時間軸を共有する複数のトラックに演奏者120又は端末別にトラックに分けて録音することができる。
図3(a)は、管理装置10の電気的ハードウェア構成例を示すブロック図である。管理装置10は、CPU(中央処理ユニット)11、ROM(リードオンリメモリ)及びRAM(ランダムアクセスメモリ)、ハードディスクを含むメモリ12、操作部13、表示部14、オーディオインタフェース(I/F)15、通信インタフェース(I/F)16、及び、外部機器等を接続する汎用インタフェースなどを含むその他インタフェース(I/F)17を含み、各部が通信バス18により接続される。CPU11は、メモリ12に記憶された各種プログラムを実行して管理装置10の動作を制御する。メモリ12には、管理装置用の録音システムアプリ及びその他のアプリケーションプログラム並びに制御プログラムが不揮発的に記憶されるとともに、録音システムの動作に必要な各種パラメータの値を含む各種データが記憶される。
表示部14は、CPU11の制御に基づき、各種画面を表示する。操作部13は、キーボード等の入力機構を含み、各種操作入力を受け付ける。オーディオI/F15は、A/D変換器、D/A変換器、マイク、スピーカ等を備えており、管理装置10は、オーディオI/F15を介して、外部から音やアナログ音信号を受け取って対応する音データを供給したり、供給された音データを音やアナログ音信号に変換して外部に出力したりできる。また、管理装置10は、通信I/F16で接続される有線又は無線ネットワークを介して複数の端末装置20と接続され、それら端末装置20との間で音データや命令を送信したり受信したりできる。通信I/F16が、図1の第1録音命令部102及び取得部104に相当する。管理装置10は、該通信I/F16を介してインターネット34に接続し、該インターネット上のクラウドサーバ36と通信することも可能である。管理装置10は、また、その他I/F17を介して、例えばビデオカメラ38等、何らかの外部機器と接続され得る。
図3(b)は、端末装置20の電気的ハードウェア構成例を示すブロック図である。端末装置20は、CPU21、ROM、RAM及びハードディスクを含むメモリ22、文字及び記号等を入力するための操作部23、表示部24、オーディオI/F25及び通信I/F26を含み、各部が通信バス27により接続される。CPU21は、メモリ22に記憶された各種プログラムを実行して管理装置の動作を制御する。メモリ22には、端末装置用の録音システムアプリ及びその他のアプリケーションプログラム並びに制御プログラムが不揮発的に記憶されるとともに、録音システムの動作に必要な各種パラメータの値を含む各種データが記憶される。
表示部24は、例えばタッチパネル式ディスプレイからなり、CPU21の制御に基づき、各種画面を表示する。操作部23は、該タッチパネル式ディスプレイの操作入力機構を含み、表示部24に表示された各種画面に対する操作入力を受け付ける。端末装置20は、通信I/F26で接続される有線又は無線ネットワークを介して管理装置10と接続される。また、端末装置20は、該通信I/F26を介してインターネットに接続し、該インターネット上のクラウドサーバ36と通信可能である。端末装置20は、オーディオI/F25を介して、外部から音やアナログ音信号を受け取ったり、音やアナログ音信号を外部に出力したりできる。通信I/F26が、図1の転送部202に相当する。
図4は、管理装置10の表示部14に表示されるメイン画面40の一例を示す。管理装置10のCPU11は、録音システムアプリの起動に応じて、表示部14にメイン画面40を表示する。メイン画面40は、音データの録音、再生、或いは、編集等の各種音楽制作に関する概要を表示と、該音楽制作に関する各種操作を行う画面である。管理装置10のトラックの録音や再生に関わる各種情報は、通常のDAW(後述)と同様に、1つのプロジェクトファイルに記憶されており、その情報に基づいて、メイン画面40の表示が行われる。管理装置10のメモリ12には、複数のプロジェクトファイルが記憶され得る。オペレータは、ファイルオープンボタン42を用いて、管理装置10に、所望のプロジェクトファイルを読み込ませる。管理装置10が読み込んだプロジェクトファイルを、「現プロジェクト」と呼ぶことにする。保存ボタン43は、オペレータが、端末装置10に、現プロジェクトの各種情報を、その読み込み元のプロジェクトファイルに上書き保存させるために用いる。録音ボタン45及び再生ボタン46は、音データの録音及び再生の開始及び停止指示するために用いる。オペレータが、オフ中の録音ボタン45を操作すると、それが現プロジェクトの録音開始の指示であり、オン中の録音ボタン45を操作すると、それが録音停止指示である。オペレータが、オフ中の再生ボタン46を操作すると、それが再生開始指示であり、オン中の再生ボタン46を操作すると、それが再生停止指示である。なお、録音中は再生開始を指示できず、再生中は録音開始を指示できないものとする。
メイン画面40には、演奏者p(後述する)のトラックの横方向に帯状の画像41が縦方向に複数表示され、各トラック41右部のイベント欄には、録音された音データ(実区間)を示す波形イベント415や、仮区間を示す仮イベント410の画像が表示される。トラック41は横軸が時間軸に対応付けられており、トラック41における波形イベント415(実区間)や仮イベント410(仮区間)の配置位置やサイズは、それらトラック41における波形イベント415(実区間)の時間的位置や長さを示す。なお、イベント欄には、現プロジェクトの録音や再生に係る現在時刻を示すための時刻カーソル(図示せず)が、全部のトラックを貫く縦棒として表示される。かかる複数トラックを有する録音画面の構成は、コンピュータを用いた音楽制作システム(DAW:デジタル・オーディオ・ワークステーション、Digital Audio Workstation)において周知技術を適用できる。メイン画面40の各トラック41がマルチトラック録音部101に相当する。
各トラック41左部のリスト欄には、それぞれ、対応付けられた演奏者pを特定する情報として、例えば「Trumpet」等の演奏パート名と、例えば「Hary」等の演奏者名(又はユーザ名)が表示される。また、トラック41のリスト欄には、ミュートオンオフ401、ソロオンオフボタン402、録音有効/無効を切り替えるRec Enableボタン(以下、REボタン)403、モニタオンオフボタン404が設けられており、オペレータは、これらボタンを用いて対応するパラメータの値をトラック毎に制御できる。また、トラック41には、対応付けられた端末装置20を確認するための確認ボタン405がある。オペレータがあるトラックの確認ボタン405を操作すると、そのトラックに対応する端末装置20があれば、その端末装置の画面を例えばフラッシュすること等により、何れの端末装置20かを確認できる。また、オンライン状態表示406は、そのトラック41に端末装置20が管理装置10にオンライン中かどうかを表示する。なお、端末装置20が管理装置10のトラックにオンライン中とは、端末装置20が、管理装置10のそのトラックに対応付けられ、かつ、そのトラックを介して管理装置10からリモート制御を受け得る状態を言う。
一実施形態において、管理装置10は、複数の端末装置20を、「録音グループ」という名称のグループにグループ化して、録音への参加を管理する。一例として、管理装置10のメモリ12には、複数の各プロジェクトファイル毎に録音グループに関するグループ情報が記憶され得る。その録音グループのキーが設定されている端末装置20のみが、現プロジェクトにおける録音に参加できる。言い換えると、CPU11は、プロジェクトファイルで特定された録音グループの情報に基づいて、各端末装置20の参加を許可する(後述のステップS2参照)。
現プロジェクトの録音グループは、「Group」ボタン44を用いて設定できる。管理装置10のCPU11は、「Group」ボタン44の操作に応じて、図5に示すセットアップ画面50を、表示部14に表示する。セットアップ画面50は、オペレータが設定を行うためのグループ名表示欄51と認証キー表示欄52を有する。グループ名表示欄51は、オペレータが、公開情報である録音グループ名を設定する欄であり、現在設定されているグループ名が表示される。オペレータは、グループ名表示欄51において、グループ名のテキストを入力する。認証キー表示欄52は、オペレータが、グループへの参加に必要な未公開情報である認証キーのテキストを入力する欄である。オペレータがOKボタン53を操作すると、セットアップ画面50上で行われたグループ名と認証キーの変更が現プロジェクトのグループ情報として確定され、セットアップ画面50の表示が消去される。また、オペレータがキャンセルボタン54を操作すると、セットアップ画面50上で行われた変更がキャンセルされ、セットアップ画面50の表示が消去される。なお、グループ名表示欄51に関しては、グループ名が公開情報であるため、ユーザが、グループ名のテキストを入力する代わりに、ネットワーク上の複数の各制御装置10から通知されたグループ名や、過去に入力したグループ名の履歴から、所望のグループ名を選択して入力できるようにしても良い。
図6は、端末装置20の表示部24に表示されるメイン画面60の一例を示す。端末装置20のCPU21は、録音システムアプリの起動に応じて、表示部24にメイン画面60を表示する。端末装置20のメイン画面60には、現在選択中の録音グループのグループ名(「Group」)と、演奏者情報(「Player」)として演奏パート名(「Part:Flute」)及びユーザ名(「Name:Franz」)が表示される。
また、メイン画面60は、録音ボタン601、再生ボタン602、再生又は録音中の音データの区間内時間位置を示す時間バー603、録音または再生中の音データの識別情報(波形ID)表示部604、再生音のミュートボタン605、音量制御バー606を含み、これら画像部品601〜606を用いて当該端末装置20における録音、再生等の動作に関する各種制御を行うことも可能である。区間ID表示部604に表示される区間IDは、例えば当該音データの録音を開始した時刻情報である。
セットアップ(「Setup」)ボタン61は、録音グループ及び演奏者情報に関するセットアップ画面を表示させるために、ユーザが用いる。接続ボタン(「Connect」)62は、管理装置10への接続/切断を指示するために用いる。また、「Rec Enable」チェックボックス63は、当該端末装置20における録音有効/無効を確認/指示するために用いる。「Conrol Master」チェックボックス64は、該端末装置20を録音システムにおける録音開始/録音停止を指示するリモート制御マスターとして用いるか否かを確認/設定するために用いる。ユーザがこのチェックボックス64にチェックを入れると、当該端末装置20がリモート制御マスターとなり、管理装置10およびその他の端末装置20の録音開始/録音停止をリモート制御する。なお、この実施例では、説明を簡単にするため、何れの端末装置20のチェックボックス64にもチェックが入っておらず、管理装置10がリモート制御のマスターである場合を想定して説明を行う。
端末装置20のCPU21は、ユーザによるセットアップボタン61の操作に応じて、図7のセットアップ画面70を表示部24に表示する。セットアップ画面70は、ユーザが設定を行うためのグループ名表示欄71、認証キー表示欄72、演奏パート名表示欄73及びユーザ名表示欄74を含む。グループ名表示欄71は、ユーザが、録音グループのグループ名を設定する欄であり、現在設定されているグループ名が表示される。各表示欄71〜74に設定される表示される情報は、現在の録音グループのグループ名、現在の録音グループの認証キー、現在の演奏者情報に関する(すなわち演奏パート名及びユーザ名)である。端末装置20のユーザは、各表示欄71〜74を用いて、録音グループの選択、認証キーの入力、演奏パート名及びユーザ名の各テキストを入力及び変更を行うことができる。また、セットアップ画面70には、例えばMACアドレスなど、当該端末装置20を特定する情報(装置ID)も表示される。なお、装置IDは、端末装置20を特定できる情報であれば何でも良く、必ずしもMACアドレスである必要はない。
一例として、セットアップ画面70は、複数のプリセット選択ボタン75(図7において「A」〜「D」)を有している。各端末装置20は、複数の録音グループに関する情報(「グループ名」、「認証キー」、「演奏パート名」及び「ユーザ名」を含む)をプリセットとしてメモリ22に保持しており、各プリセット選択ボタン75に1つのプリセットが対応付けられている。ユーザが、1つのプリセット選択ボタン75を操作すると、各表示欄71〜74には、操作されたボタン75に対応するプリセットの各種情報が、自動的に設定される。録音グループに関する各種情報をプリセットとして複数持つことで、例えば、ユーザが複数の団体に所属している場合に、現在参加している団体に応じて録音グループを切り替える際の入力手間が省ける。
次に、端末装置20が、或る録音グループに新たに参加しようとした場合の手順例を説明する。端末装置20のユーザは、管理装置10の現プロジェクトの録音グループと同じ録音グループを、セットアップ画面70にて設定し、それから、(消灯中の)接続ボタン62を操作することにより、現プロジェクトに参加する要求、すなわち、現プロジェクトのトラックへの接続要求(トラックへの対応付け要求)を、端末装置20に行わせる。この接続ボタン62は、当該端末装置20が管理装置10のトラックに未接続の場合は、管理装置10に接続要求の指示を行うために用いられ、当該端末装置20が管理装置10に接続中の場合は、管理装置10から切断する指示を行うために用いられる。一例として、接続ボタン62が、接続中は点灯し、未接続で消灯する等、その表示態様(例えば表示色)が、端末装置20が管理装置10に未接続の場合と接続中の場合とで異なるように構成してよい。
図8は、端末装置20において消灯中の接続ボタン62をユーザが操作して、「接続要求」を指示した際の処理例を示すフローチャートであって、(a)は管理装置10側の処理例、(b)は端末装置20側の処理例を示す。ここで、端末装置20は、ネットワークに接続されている管理装置10を予め確認済みであり、接続ボタン62は、管理装置10が存在する場合のみユーザが操作できるものとする。その接続要求指示に応じて、端末装置20のCPU21は、図8(b)のステップS1において、確認されている管理装置10に対して、接続要求を送信する。送信される接続要求は、グループ名を示すグループ名情報gと、認証キー情報kと、ユーザ名及び演奏パートにより当該ユーザがどの演奏者であるか特定する演奏者情報pを含む。ここで、複数の管理装置10が確認されている場合には、何れかの管理装置10に接続できるまで、それら複数の管理装置10に順番に接続要求を送るが、その詳細については後述する。
管理装置10のCPU11は、端末装置20から前記接続要求を受信したとき、図8(a)の処理を起動する。ステップS2において、CPU11は、前記受信した接続要求に含まれるグループ名g及び認証キーkと、現プロジェクトの録音グループのグループ名及び該録音グループの認証キーとを照合する。
前記接続要求に含まれるg及びkの両方が、現プロジェクトのグループ名及び認証キーと一致する場合(ステップS2のyes)、CPU11は、ステップS3において、該接続要求に含まれる演奏者pに対応付けられたトラック(p)が存在し、且つ、そのトラック(p)が未接続かを確認する。
トラック(p)が存在しないか、又は、存在するトラック(p)が既に接続されている場合(ステップS3のno)、CPU11は、ステップS4において、該接続要求を受理するか又は拒否するか判断する。ここで、存在するトラック(p)が既に接続されている場合、ただちに「拒否」の判断をしてステップS8に進み、トラック(p)が存在しない場合、受理するか拒否するかの指示をオペレータから受け付ける。図9は、前記ステップS4にてオペレータからその指示を受けるために表示するダイアログ画面90の一例を示す。ダイアログ画面90のグループ名表示欄91、演奏パート名表示欄92及びユーザ名表示欄93には、接続要求に含まれるg、k及びpに基づく名前等が表示される。オペレータが、認証(「Accept」)ボタン94を操作すると、「受理」の判断をしてステップS5に進み、拒否(「Refuse」)ボタン95を操作すると、「拒否」の判断をしてステップS8に進む。接続要求が「受理」された場合(ステップS4のyes)、ステップS5において、CPU11は、前記接続要求に含まれる演奏者pに対応付けられたトラック(p)を新規作成する。トラック(p)は、該演奏者pの示す演奏パート及びユーザ名により特定される演奏者トラックである。演奏者pの設定された端末装置20が現プロジェクトに初めて接続する場合、前記ステップS4及びS5により、現プロジェクトに新規にトラック(p)が作成される。このとき、新規作成されたトラック(p)が、メイン画面40に追加される。
ステップS3でトラック(p)が存在し且つ未接続であった場合(yes)、および、ステップS5でトラック(p)を新規作成した場合には、CPU11は、ステップS6において、前記接続要求の送信元の端末装置20に対して、該接続要求に対する受理通知を送信するとともに、前記トラック(p)に関するオンラインフラグOF(p)を1(オンライン)に設定する。このオンラインフラグOF(p)が1に設定された時点で接続が確定し、該管理装置10の該トラック(p)に、該端末装置20が対応付けられる。そして、CPU11は、ステップS7において、該トラック(p)の各種設定(例えば録音有効/無効の設定やミュートオンオフ設定など)に、該接続要求の送信元の端末装置20の各種設定を一致させる同期化処理(「同期化(マスター)」)を行うとともに、メイン画面40の前記トラック(p)のオンライン状態表示406に「オンライン中」の表示を行う。
一方、前記接続要求に含まれるグループ名g又は認証キーkの何れかが、現プロジェクトのグループ名及び認証キーと不一致である場合(ステップS2のno)、又は、ステップS4で「拒否」が判断された場合(no)、CPU11は、ステップS8において、前記接続要求を送信した端末装置20に拒否通知を、例えば「グループ名又は認証キーが一致しない」、「トラック(p)はオンライン済み」、「オペレータが拒否した」等の拒否理由とともに送信する。なお、オンラインフラグOF(p)は、当該端末装置20のユーザが、点灯中の接続ボタン62を操作したとき、その端末装置20から管理装置10へ送信される切断要求により0(オンラインでない、つまり、オフライン)に設定される。また、管理装置10が別のプロジェクトファイルを読み込むときや、管理装置用の録音システムアプリを停止して管理装置10としての動作を停止するときには、現プロジェクトの全ての演奏者pのオンラインフラグOF(p)が0(オフライン)に自動設定される。
図8(b)に戻ると、ステップS1の終了後、端末装置20のCPU21は、ステップS9において、管理装置10から送信された前記受理通知(前記ステップS6)又は前記拒否通知(前記ステップS8)を受信する。管理装置10から受理通知を受信した場合(ステップS10のYes)、CPU21は、ステップS11において、端末装置20の現在の録音グループgに対するオンラインフラグOF(g)を1(オンライン)に設定する。このオンラインフラグOF(g)が1に設定された時点で接続が確定し、該端末装置20が、該管理装置10の該トラック(p)に対応付けられる。そして、CPU21は、当該端末装置20の各種設定を管理装置10の当該トラック(p)の各種設定に一致させるように同期化処理(「同期化(スレーブ)」)を行い、それら各種設定変更結果に応じてメイン画面60の接続ボタン62を点灯表示し、チェックボックス63のチェック表示を更新して、処理を終了する。なお、予め複数の管理装置10が確認されている場合には、端末装置20が、何れかの管理装置10から「受理通知」の応答を受け取るまで、各管理装置10について順番に図8(b)の処理を繰り返す。つまり、まず、1つの管理装置について図8(b)の処理を行い、「受理通知」を受け取ったらそこで接続を確定し、「拒否通知」を受け取ったら、次の管理装置10について図8(b)の処理を行うという具合である。この場合、全ての管理装置10から「拒否通知」を受け取ったら、接続が失敗したということになる。接続が確定したとき、端末装置20のCPU21は、音データの転送先として、対応付けされた管理装置10のトラック(p)を設定する。
管理装置10から拒否通知を受信した場合(ステップS10のNo)、CPU21は、ステップS12において、現在の録音グループgに対するオンラインフラグOF(g)を0(オフライン)に設定し、接続ボタン62を消灯表示するとともに、表示部24に拒否理由を表示して、処理を終了する。
「受理通知」を受け取った端末装置20は、前記図8(a)のステップS6,および(b)のステップS11の処理により管理装置10に対してオンライン中となり、該管理装置10から各種命令(録音命令、再生命令等を含む)による各種リモート制御を受ける。なお、端末装置20の何れかをリモート制御マスターにして、管理装置10ではなくその端末装置20が、録音システムにおける録音命令、再生命令等を行うようにしてもよい。
例えば、オペレータ110が、図4のメイン画面40において、各トラック41のREボタン43を操作すると、管理装置10のCPU11は、そのトラックにおけるRec Enableパラメータ(以下「RE」と略す)の値を反転し、対応する端末装置20にREの値の変更を命令する。端末装置20のCPU21は、該命令に応じて、REの値を管理装置10と同じ値に変更する。REは、録音の有効/無効を切り替えるパラメータであり、例えば、「1」の場合、録音有効、すなわち、録音指示に応じてそのトラックに関する録音を行い、「0」の場合、録音無効、すなわち、録音指示があってもそのトラックに関する録音を行わない。なお、オペレータは、複数トラックのREボタンのうち、端末装置20がオンライン中のトラックのREボタンのみが操作可能であり、オフライン中のトラックのREを1(録音有効)にできない。
一例として、REの値は、端末装置20のユーザによるローカル指示に応じて、端末装置20側から変更することも可能である。端末装置20のユーザ120は、メイン画面60の「Rec Enable」チェックボックス63を用いて、当該端末装置20のREの値を切り替えることができる。図10は、チェックボックス63へのユーザ操作が検出されたときに行われる処理例を示すフローチャートであり、(a)は管理装置10側の処理例を示し、(b)は端末装置20側の処理例を示す。
ユーザによるチェックボックス63の操作に応じて、端末装置20のCPU21は、まず、ステップS13においてオンラインフラグがOF(g)=1(オンライン)かどうか確認する。OF(g)=1である場合(ステップS13のyes)、端末装置20のCPU21は、ステップS14において、オンライン中の管理装置10にRE変更命令を送信する。RE変更命令は、現在選択中の録音グループのグループ名(g)と演奏者情報(p)を含む。
オンライン中の端末装置20からの前記RE変更命令に応じて、管理装置10は、図10(a)の処理を起動する。ステップS15において、管理装置10のCPU11は、前記RE変更命令に含まれるグループ名g及び演奏者pに基づき、前記指示の送信元の端末装置20に対応するトラック(p)を特定し、該特定されたトラック(p)のRE(p)の値を反転するとともに、Rメイン画面40の表示更新を行う。ステップS16において、CPU11は、前記指示の送信元の端末装置20にRE(p)の値の変更結果を送信して、処理を終了する。
オンライン中の管理装置10からRE(p)の値の変更結果を受信した端末装置20のCPU21は、図10(b)のステップS17において、当該端末装置20のREの値を、前記受信したRE(p)の値と同じ値に設定する。そして、CPU21は、ステップS18において、変更結果に応じて「Rec Enable」チェックボックス63の表示を更新して、処理を終了する。以上により、端末装置20のRE(g)は、管理装置10のRE(p)の変更後の値と同じ値になる。
また、「Rec Enable」チェックボックス63のユーザ操作があったときに、オンラインフラグOF(g)=0(オフライン)の場合(ステップS13のno)、端末装置20のCPU21は、ステップS19において、当該端末装置20のREの値を反転して、前記ステップS18において、変更後のREの値に応じて「Rec Enable」チェックボックス63の表示を更新し、処理を終了する。この場合、REの設定値は、トラックには無関係に、端末装置20における音データの録音有効/録音無効をローカル制御する。
なお、録音システムにて録音を行っている最中には、管理装置10及び端末装置20のいずれも、REの値を変更できないものとする。すなわち、録音中は、管理装置10のメイン画面40の各トラック41におけるRec Enableボタン43、及び、各端末装置20のメイン画面60の「Rec Enable」チェックボックス63に対する操作は無効となる。また、端末装置20がオンライン中でないトラックのRE(p)は、常時0で1には設定できないものとする。これにより、管理装置10において、RE(p)が1であれば、対応するトラック(p)は必ずオンライン中ということになる。
次に、録音システムにおいて録音を行う際に、管理装置10及び端末装置20それぞれで行われる処理例を説明する。図11は、管理装置10の現プロジェクトの所望のトラックに音データを順次マルチトラック録音していく場合の、メイン画面40のイベント欄に表示される各トラックのイベントの様子を模擬的に示す図である。図11では、トラック番号「1」〜「6」の6つのトラックが存在する例を示す。トラック数は、オペレータが自由に増減可能であり、6には限らない。
ここでは、オペレータ110(図2参照)が、管理装置10のメイン画面40で、まず、時刻カーソルを時点tc1に配置し、オフ中の録音ボタン45を操作して、録音開始を指示した後、時間が経過して時刻カーソルが時点tc2まで進んだとき、オン中の録音ボタン45を操作して録音停止を指示したものとする。図12(a),(b)は、その様な録音開始指示に応じた処理例を示すフローチャートであって、(a)は管理装置10側の処理例、(b)は端末装置20側の処理例を示す。
図12(a)のステップS20において、管理装置10のCPU11は、メモリ12を参照して全てのトラック41のREの値を確認し、RE=1(録音有効、かつ、オンライン中)に設定されている全てのトラック41を抽出する。例えば、図11上段の例では、トラック番号「1」〜「6」のうち、「2」、「3」、「4」及び「6」がRE=1に設定されているものとする。その場合、前記ステップS20にて、トラック「2」、「3」、「4」及び「6」が、録音対象として抽出される。
ステップS21において、管理装置10のCPU11は、前記抽出された各トラックに対応する端末装置20に、録音開始を命令する。例えば、録音開始の命令は、各端末装置20に個別に送信される。録音開始指示は、録音グループ名gと、時刻情報tcとを含む。時刻情報tcは、録音開始指示時の時刻カーソルが示す時刻であり、例えば、「時、分、秒」で示す。この実施例では、時刻情報tcが、該録音開始指示に応じて録音された音データの区間を識別する区間ID、すなわち、該指示に応じた録音の時間区間を識別するための識別情報となる。区間IDは、必ずしもこの時刻情報tcに限らない。例えば、録音指示をする毎に更新される通し番号や、録音指示毎に発生する乱数や、管理装置10のシステム時計の示す時刻情報などを区間IDとして用いることができる。
ステップS22において、管理装置10のCPU11は、前記抽出された各トラックに、前記録音開始命令の時点tcから、時刻情報tcで特定される仮区間(tc)の作成を開始する。「仮区間」とは、実体的な音データを持たない録音イベントデータ、すなわち「空の」録音イベントデータである。仮区間(tc)の作成開始に伴い、管理装置10のCPU11は、メイン画面40において、前記抽出された各トラック41に、仮区間(tc)を示す仮イベント410(図4、図11)を表示する。一例として、録音を開始した後、管理装置10のCPU11は、仮イベント410のサイズを、録音中リアルタイムで表示更新してよい。これにより、仮イベント410は、録音の時間経過に伴い、時間軸方向に徐々に延びる。
前記図11上段の例では、前記ステップS20〜S22により、トラック「2」、「3」、「4」及び「6」の各々に、録音開始時点tc1から、仮区間(tc)が作成され始める。メイン画面40上では、トラック「2」、「3」、「4」及び「6」の各々に、録音開始時点tc1から始まる仮イベント410a〜410dが表示される。
他方、各端末装置20のCPU21は、管理装置10からの録音開始命令に応じて、図12(b)のステップS23において、OF(g)=1、且つ、RE=1であるかどうかを確認し、OF(g)=1、且つ、RE=1の場合(ステップS23のyes)、ステップS24において、オーディオI/F25を介して入力される音データの録音を開始する。音データは、前記命令に含まれる時刻情報tcに対応付けてメモリ22に蓄積される。前記ステップS23及びS24により、管理装置10に接続中の全ての端末装置20は、同時に、音データの録音を開始する。音データは、例えば、マイクにより取得したアナログ波形信号をデジタル信号に変換したデジタルオーディオ波形データである。録音開始に伴い、端末装置20のCPU21は、録音ボタン601の表示態様を、録音中を示す態様に変更する。表示態様の変更は、例えば表示色の変更や図柄の変更などを含む。
なお、OF(g)又はREの少なくとも一方の値が「0」(オフライン又は録音無効)の場合(ステップS23のno)、端末装置20のCPU21は、ステップS25において、管理装置10にエラー報告を送信して、処理を終える。この場合、端末装置20のCPU21は、エラー報告は、録音グループ名gと当該端末装置20の演奏者情報p、時刻情報tcを含む。
図13は、前記エラー報告を受信したときに、管理装置10のCPU11が実行する処理例のフローチャートである。管理装置10のCPU11は、該エラー報告に含まれる演奏者pに対応付けられたトラック(p)において、仮区間(tc)を作成中の場合(ステップS26のyes)、ステップS27において、該トラック(p)の仮区間(tc)に対応する仮イベント410の表示態様(例えば色)を他と異ならせるように(例えば赤)、メイン画面40の表示を更新し、ステップS28において、録音エラーが生じた旨を表示部14に表示して、処理を終了する。仮区間(tc)の作成中でない場合(ステップS26のno)、管理装置10のCPU11は、録音エラーが生じた旨を表示部14に表示して、処理を終了する。これにより、オペレータ110は、端末装置20にて音データの録音エラーが生じたことを識別できる。
前記図12(a),(b)による録音の開始後、録音中は、録音開始ボタン45は、録音停止を指示するボタンに切り替わる。録音開始後、管理装置10のCPU11は、録音開始ボタン45の表示形態を、録音中を示す形態、言い換えれば、録音停止指示を示す形態に変更する。以下、録音中のボタン45を「録音停止ボタン」と称する。オペレータ110は、録音停止ボタン45を操作して、録音の停止を指示する。図14(a),(b)は、録音停止指示に応じて行われる処理例を示すフローチャートであって、(a)は管理装置10側の処理例、(b)は端末装置20側の処理例を示す。
図14(a)のステップS29において、管理装置10のCPU11は、メモリ12を参照して、RE=1(録音有効、かつ、オンライン中)に設定されている全てのトラックを抽出する。ステップS30において、管理装置10のCPU11は、前記抽出された各トラックに対応する端末装置20に対して、録音停止を命令する。一例として、録音停止命令は、各端末装置20に個別に送信される。録音停止命令は、録音グループ名gと、当該録音の開始時刻を示す時刻情報tcを含む。ステップS31において、管理装置10のCPU11は、前記抽出された各トラックにおける仮区間の作成を終了する。管理装置10のCPU11は、各トラックに作成された仮区間の区間IDとして、当該録音の開始時刻を示す時刻情報tcを記憶する。録音の停止により、各トラックに作成された仮区間の時間長(サイズ)が確定する。仮区間(tc)は、端末装置20への録音開始命令及び録音停止命令に応じて作成され、該指示に応じて録音される音データと同じ時間軸の位置にあり、かつ、同じ時間長を持つものとなる。また、各トラックの演奏者情報pと仮区間の区間IDとにより、そのトラックの仮区間が、オンライン中の何れの端末装置で録音された何れの音データ(何時行われた録音)に対応するかを識別できる。前記ステップS21及びS30の処理が、録音命令部102の動作に相当する。また、前記ステップS22及びS31の処理が、仮区間作成部103の動作に相当する。
前記図11上段の例では、録音終了時点tc2に、トラック「2」、「3」、「4」及び「6」のそれぞれにおいて、時点tc1から時点tc2までの仮区間(仮イベント410a、410b、410c、410d)が作成される。図11に示すように、各トラック「2」、「3」、「4」及び「6」の仮区間(仮イベント410a、410b、410c、410d)は、何れも時点tc1から時点tc2までの、互いに等しい時間位置および時間長を持つ。
他方、各端末装置20のCPU21は、管理装置10からの録音停止命令に応じて、図14(b)のステップS32において、該命令に含まれる時刻情報tcを区間IDとする音データ(tc)を録音中かどうか調べる。音データ(tc)を録音中の場合(ステップS32のyes)、各端末装置20のCPU21は、ステップS33において、該音データ(tc)の録音を停止する。これにより、各端末装置20では、それぞれ対応する演奏者pの音データ(tc)が確定する。録音された音データ(tc)には、時刻情報tcが、当該音データの区間を識別する区間IDとして付与されている。時刻情報tcにより、当該音データが何れの録音区間の音データ(どの区間に行われた録音)かを識別できる。前記ステップS23、S24、S32、S33が、録音部201の動作に相当する。
端末装置20のCPU21は、ステップS34において、前記録音された音データ(tc)を、録音グループ名g、演奏者情報p及び時刻情報tcを付加して、管理装置10に転送し、処理を終える。ステップS34が転送部202の動作に相当する。
なお、音データ(tc)の録音中で無い場合(ステップS32のno)、何らかのエラー等により、音データ(tc)が録音されていないことになる。この場合、端末装置20のCPU21は、ステップS35において、録音グループ名g、演奏者情報p、時刻情報tcを含むエラー報告を、管理装置10に送信し、処理を終える。管理装置10のCPU11は、前記エラー報告に応じて、例えば、エラー報告に対応する仮イベント410の色をエラー色(赤)に変更する等して、その仮イベントに関して録音エラーが生じた旨をオペレータに通知する(図13の前記ステップS26〜S28)。
管理装置10は、通信I/F16を介して、各端末装置20から転送された音データ(tc)を受信する。図15は、録音グループ名g、演奏者情報p、時刻情報tcが付加された音データ(tc)を受信したとき、管理装置10のCPU11が実行する処理例を示すフローチャートである。管理装置10のCPU11は、ステップS36において、その演奏者情報pに対応するトラック(p)に、その時刻情報pを区間IDとする仮区間(tc)が作成されているかどうか確認する。トラック(p)に仮区間(tc)が作成されている場合(ステップS36のyes)、管理装置10のCPU11は、ステップS37において、トラック(p)の仮区間(tc)を、前記受信した音データ(tc)に基づいて実区間(tc)に変換して、処理を終了する。実区間(tc)は、対応する音データ(tc)が管理装置10に記憶されている、実体的な録音イベントである。仮区間(tc)を実区間(tc)に変換することは、前記取得した音データ(tc)を、現プロジェクトにおけるトラック(p)に対応付けて、メモリ12に記録することである。また、管理装置10のCPU11は、前記ステップS36において、メイン画面40のトラック(p)の仮イベント410を、実区間(tc)を示す波形イベント415に変更する。前記ステップS36が取得部104、前記ステップS37が変換部105の動作に相当する。
一例として、前記ステップS37において、管理装置10のCPU11は、仮区間(tc)を実区間(tc)に変換する際、必要に応じて、音データ(tc)をタイムストレッチして、音データ(tc)の時間長を調整したり、音データ(tc)の時間的位置を前後に微調整したりしてもよい。この時間的な調整は、例えば、複数トラック41のうちの所望の複数トラックの実区間(tc)の音データの振幅の立ち上がりを相互に同期する、すなわち各トラック41の音データに時間的ずれがある場合にそのずれを一致させるように行う。かかる時間的な調整は周知技術を用いて行うことができる。
管理装置10のCPU11は、オンライン中の各演奏者pの端末装置20から音データ(tc)を受信したとき、図15の処理を行う。この処理で、管理装置10のCPU11は、各トラック(p)の仮区間(tc)を実区間(tc)に変換する。管理装置10の現プロジェクトの各トラック(p)には、録音停止時に、複数の端末装置10から受信すべき音データ(tc)に対応する複数の仮区間(tc)が作成されている。そして、各端末装置20から音データ(tc)を順次受信することで、その音データ(tc)に基づいて、現プロジェクトの対応する仮区間(tc)を実区間(tc)へ順次変換し、複数のトラック(p)の複数の実区間(tc)とすることを、オペレータを煩わせることなく、容易に行うことができる。
なお、何らかの事故により、前記演奏者情報(p)に対応するトラック(p)に仮区間(tc)ない場合(図15のステップS36のno)、管理装置10のCPU11は、ステップS38において、表示部14に、オペレータが録音指示していない音データ(tc)が演奏者pから送られてきた旨のエラー表示を行って、処理を終了する。
例えば、前記図11中段は、録音停止後のある時点に、管理装置10が、トラック2及び4に対応付けられた2端末装置からは未だ音データ(tc1)を受信しておらず、トラック3及び6に対応付けられた2端末装置20から音データ(tc1)を受信済みの状況を示している。この場合、トラック3及び6のtc1の仮区間(仮イベント410b,410d)が実区間(波形イベント415b,415d)に変換される。トラック2及び4のtc1の仮区間(仮イベント410a,410c)は仮区間のままである。このように、管理装置10のメイン画面40では、各トラックの各録音区間(tc)について、端末装置20から対応する音データが届いているか否かを容易に判別できる。
なお、トラック2及び4のtc1の仮区間(仮イベント410a,410c)は、まだ音データが届いていないだけであり、トラック2及び4に対応付けされた端末装置20から音データ(tc1)が送られてくるはずである。しかしながら、オペレータが、管理装置10から、任意のタイミングで、対応する音データの取得を試みられるようにしてもよい。例えば、管理装置10のメイン画面40において、オペレータ110は、何れかのトラック(p)の音データの未取得の何れかの仮イベント(tc)410を指定して、音データの取得を指示する。該指示に応じて、管理装置10のCPU11は、その演奏者pに対応する端末装置20を特定し、特定された端末装置20に、当該仮区間の時刻情報tcを含む音データの転送命令を送信する。転送命令を受信した端末装置20は、もし、その転送命令に含まれる時刻情報tcで特定される区間の音データ(tc)がメモリ22に有れば、その音データ(tc)を、読み出して、管理装置10に送信する。また、音データ(tc)が存在しない場合は、端末装置20は、その旨を示すエラー報告を返信する。管理装置10のCPU11は、端末装置20から受信した音データ(tc)に基づき、トラック(p)の仮区間(tc)を実区間(tc)に変換できる。エラー報告が返信された場合、あるいは、所定時間内に端末装置20から返信が無い場合、管理装置10のCPU11は、エラー表示等を表示部14に行う。
前記図11下段の例は、オペレータ110が、前記中段の時点に、トラック1、4、5及び6をRE=1(録音有効)に、トラック2及び3をRE=0(録音無効)にそれぞれ変更し、時刻カーソルを前回の録音停止時点tc2に置いたまま録音開始を指示し、その後、時刻カーソルが時点tc2まで進行したとき録音停止を指示した状況である。このとき、トラック1、4、5及び6には時点tc2から時点tc3までの仮区間(仮イベント410e、410f、410g、410h)が作成される。
オペレータからの再生開始指示に応じて、管理装置10は、複数のトラック41に録音された音データを、時刻カーソルの示す時点から、それぞれ再生し、例えばモノラルやステレオの音データにミックスダウンして出力する。その出力された音データは、例えば、管理装置10に接続されたパワードスピーカ30(図2参照)に供給され、そのスピーカから放音される。現プロジェクトの複数のトラック41は、時刻情報tcで指定される共通の時間軸を有し、複数トラック41で再生される音データは、複数パートのアンサンブル演奏(合奏、重奏、重奏、合唱、重唱)を構成する。例えば、吹奏楽団の複数の演奏者120にそれぞれ端末装置20を持たせ、指揮者110が管理装置10を操作して演奏の録音を行うと、管理装置では複数の演奏者別のトラックを有する現プロジェクトが得られる。そして、指揮者110が、管理装置10でその現プロジェクトを再生しスピーカ30から放音すると、指揮者および演奏者は、当該吹奏楽団の全体演奏を聴取できる。また、指揮者110が、メイン画面40において所望のトラック41のミュートやソロを設定することにより、所望のトラックだけを除外して音データを再生したり、所望のトラックの音データのみを再生したりすることができる。つまり、一般のDAWと同様に、特定の演奏パートのみ、あるいは、特定の演奏パート以外の、演奏を再生したりできる。
また、管理装置10がインターネット34(図2参照)に接続されていれば、オペレータは、該インターネット34上のクラウドサーバ36(図2参照)に、録音された個別の音データやプロジェクトファイルをアップロードできる。各端末装置20は、クラウドサーバ36にアクセスし、該クラウドサーバ36にアップロードされた音データやプロジェクトファイルを再生できる。その再生は、例えば、ユーザが、メイン画面60(図6)の再生ボタン602を用いて指示する。プロジェクトファイルの再生は、吹奏楽団の全体演奏を再生すること、特定の演奏パートのみ(あるいは、特定の演奏パート以外)の演奏を再生することを含む。再生中は、再生ボタン602の表示態様が再生中を示す態様に変更され、且つ、再生ボタン602は音データの再生の停止を指示するボタンとして機能する。また、端末装置20において音データを再生する際、端末装置20のユーザは、区間ID表示部604にて任意の区間IDを選択することにより、再生対象となる音データの区間を選択したり、音量制御バー606を用いて再生音量を調整したりできる。また、ミュートボタン605を用いて、当該端末装置20に対応する音データ(ユーザ自身の演奏パート)をミュートする、すなわち自身の演奏パートを除いた演奏音を再生することができる。
また、管理装置10に接続されたビデオカメラ38が、管理装置10における録音に略同期して、映像を撮影してもよい。例えば、管理装置10は、オペレータからの録音開始指示に応じて、ビデオカメラ38に対して撮影始命令と、該録音開始命令の時刻を示す時刻情報tcを区間IDとして送信する。ビデオカメラ38は撮影開始命令に応じて撮影を開始する。また、管理装置10は、オペレータからの録音停止指示に応じてビデオカメラ38に撮影停止を命令する。ビデオカメラ38は撮影停止命令に応じて撮影を終了する。ビデオカメラ38は、撮影された映像を、時刻情報tc(区間ID)に対応付けて管理装置10に送信する。管理装置10は、送信された映像を時刻情報tc(区間ID)に対応付けてメモリ12に保存したり、クラウドサーバ36にアップロードしたりする。これにより、時刻情報tc(区間ID)に基づいて、映像の区間と音データの区間とを対応付けることができ、例えば音データと映像とを略同期して再生することができるようなる。
例えば、ビデオカメラ38は、指揮者110の姿を撮影するために用いる。ユーザ120が、クラウドサーバ36のプロジェクトファイルと映像とを、端末装置20で自分の演奏したトラックをミュートしつつ同期再生すれば、指揮者110の動きを映像で見ながら、自身以外の演奏者の演奏音に合わせて、自身の演奏パートを演奏練習することができる。
別の実施形態として、通常のDAWに機能を追加して、本発明の管理装置10として動作させるように構成してよい。図16は、該別の実施形態に係る録音システムを構成する管理装置10と複数の端末装置20の構成例であって、図1と共通する構成要素には図1と同じ符号を付け、その説明を省略する。管理装置10において、マルチトラック録音部101には、DAWの通常のトラック(ネイティブトラック)に加え、本発明の各演奏者pに対応するトラック(演奏者トラック)を有する。管理装置10の録音制御部106は、オペレータからの録音開始/停止指示に応じて、MTR101に、自身のオーディオI/F15からの音データをネイティブトラックに録音開始/終了させるとともに、仮区間作成部103の動作(前記図12(a)のステップS22)を行わせる。メイン画面40には、トラック41として、ネイティブトラックと演奏者トラック(p)とが対等に並べて表示される。演奏者トラックには仮区間、実区間のイベント410、415が表示されるが、ネイティブトラックには実区間のイベント415のみが表示される。管理装置10の現プロジェクトでは、管理装置10で録音した音データのトラックと、各端末装置20で録音した音データのトラックとが、共通に時間軸上に配置され、同期再生できる。
管理装置10側で録音システムの操作画面は、図4のメイン画面40に限らない。図17は、管理装置10の別の操作画面400の例を示す。画面400には、指揮者(すなわち管理装置10)を示す画像450と、複数の演奏者の端末(すなわちオンライン中の端末装置20)を示す画像460とが表示される。指揮者が各端末装置画像460をクリックすると、その端末装置20に関するREの値が1と0の間(録音有効/無効)でトグルに切り替わる。また、指揮者は、録音ボタン470、再生ボタン480を用いて録音/再生の開始/停止を指示できる。図17の例では、管理装置画像450と各端末装置画像460の配置は、例えば、オーケストラ、吹奏楽団などにおける演奏者配置を模擬して、指揮者が自由に変更できる。
以上説明したとおり、この実施例に係る録音システムによれば、管理装置10にてオペレータが録音ボタン45を用いて、複数の端末装置20に一斉に録音を行わせ、その後、各端末装置20で録音された音データを、管理装置10に用意された各端末装置20に対応するトラックに配置して記録できる。例えば吹奏楽や合唱などの集団的音楽演奏の録音では、演奏者毎に端末装置20を用意すれば、簡単に、演奏者毎あるいはパート毎の演奏音を録音し、複数トラックに分けて配置できる。
また、この実施例に係る録音システムは、端末装置20として、スマートフォン等の個人用デバイスをそのまま使用できるので、大がかりな設備等を用いることなく、手軽に、録音システムを構築できる。また、各演奏者120は、端末装置20を管理装置10のトラックにオンラインして自らの近傍に置くこと以外に、煩雑な設定作業を行わなくてよい。煩雑な機器設定や配線等をすることなく、吹奏楽団や合唱団などアコースティックな音楽演奏環境に、この発明に係る録音システムを導入できる。
なお、管理装置10及び端末装置20として適用する機器は、例示したコンピュータ機器に限らず、管理装置10及び端末装置20それぞれに専用の機器でもよい。
また、前記の実施形態では、録音グループを有する録音システムであったが、録音グループを設けず、管理装置10が周囲の端末装置20を検出し自動的に録音対象にしてもよい。
以上、この発明の一実施形態を説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。