JP2017155118A - ポリオキシメチレン樹脂組成物 - Google Patents
ポリオキシメチレン樹脂組成物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2017155118A JP2017155118A JP2016038980A JP2016038980A JP2017155118A JP 2017155118 A JP2017155118 A JP 2017155118A JP 2016038980 A JP2016038980 A JP 2016038980A JP 2016038980 A JP2016038980 A JP 2016038980A JP 2017155118 A JP2017155118 A JP 2017155118A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- polyoxymethylene resin
- resin composition
- acid
- polyoxymethylene
- mass
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Landscapes
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
Abstract
Description
さらに、摺動性には言及していないが、特許文献3には、収縮異方性の抑制のために、変性型ポリオレフィンワックスを使用する技術が記載されている。
また、押出や成形などの溶融加工時の臭気低減や、摺動時の摩擦係数への影響を少なくするために、成形体の表面平滑性の向上が求められている。
このランプと呼ばれる部品は、ハードディスクへの読込/書込が非稼働である際に、読込/書込部分であるスライダーヘッドがハードディスク上から退避する為の部品である。具体的には、スライダーヘッドがランプに出入りする際に、ヘッドの先端にあるタブがランプの傾斜部を擦過する。この擦過時の荷重は非常に低く(概ね、0.05N以下の荷重)、上述した比較的高い荷重(1〜20N程度の荷重)下で高摺動性を有する材料を、そのまま非常に低い荷重(0.05N以下の荷重)下の材料には適用できないことが多い。同様に、非常に低い荷重(0.05N以下の荷重)下で用いられる材料は、上述の高い荷重(1〜20N程度の荷重)下で高摺動性を有する材料として適用できないことが多い。
例えば、上述の比較的高い荷重(1〜20N程度の荷重)下で駆動するギアのような摺動性に優れた材料をランプ部品などの非常に低い荷重(0.05N以下の荷重)下に適用した場合、良好な性能を有する部品を与えるとは限らない。このような観点より、これまでの高い荷重下で用いられる摺動剤とは全く別に、非常に低い荷重(0.05N以下の荷重)下のハードディスクランプ部品等向けの材料が要求されている。
そのため、データ保管量の増大、ハードディスクへのアクセス回数の増加、及び振動や衝撃による誤動作の防止といった高い信頼性の確保という観点での新たな特性が要求されてきている。
具体的には、ランプ部品を構成する樹脂に対して、耐摩耗性を従来技術の2倍以上に向上させるという、更なる耐摩耗性、例えば100万回を超える擦過に耐えうる摺動性が要求されてきている。
また、潤滑剤として、無水マレイン酸変性ポリオレフィンなどの変性ポリオレフィンが開示されている。
この特許文献4には、非常に低い荷重下での耐摩耗性の効果も示されている。
すなわち、本発明は下記の通りである。
(A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部と、
(B)酸価が1〜75mg−KOH/gであり、180℃の溶融粘度が100〜2900mPa・sの酸変性ポリオレフィンを0.1〜5質量部と、
を、含有する、
ポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔2〕
(C)着色剤を0.01〜3質量部、さらに含有する、前記〔1〕に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔3〕
前記(B)酸変性ポリオレフィンが、
酸変性ポリエチレン及び/又は酸変性ポリプロピレンを含有する変性ワックスである、前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔4〕
前記(B)酸変性ポリオレフィンの重量平均分子量が100000以下である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔5〕
前記(B)酸変性ポリオレフィンの重量平均分子量が50000以下である、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔6〕
前記(B)酸変性ポリオレフィンの180℃の溶融粘度が2000mPa・s以下である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔7〕
前記(B)酸変性ポリオレフィンの180℃の溶融粘度が1600mPa・s以下である、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔8〕
前記(C)着色剤が、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化鉄、亜鉛黄1種、亜鉛黄2種、ジンクホワイト、チタニウムホワイト、アルミナホワイト、タルク、ホワイトカーボン、シルバーホワイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ファーナスブラック、炭酸カルシウムからなる群より選ばれる無機系顔料、及び有機系染顔料からなる群より選ばれる、少なくとも一つ以上を含む着色剤である、前記〔2〕乃至〔7〕のいずれか一に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔9〕
(A)ポリオキシメチレン樹脂がブロックコポリマーを含む、前記〔1〕乃至〔8〕のいずれか一に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔10〕
前記ブロックコポリマーが、ABA型ブロックコポリマーである、前記〔9〕に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔11〕
前記〔1〕乃至〔10〕のいずれか一に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物の成形体であって、当該成形体の表面における炭素と酸素との相対元素濃度比[C/O](atomic%)が1.01〜2.50である、成形体。
〔12〕
前記〔1〕乃至〔10〕のいずれか一に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物の成形体であって、当該成形体の表面が、赤外分光法により得られるC−O伸縮振動ピークとC=O伸縮振動ピークとのピーク強度比(C−O/C=O)が10〜200である、成形体。
〔13〕
前記〔1〕乃至〔10〕のいずれか一に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物を含む押し出しシート。
〔14〕
前記〔1〕乃至〔10〕のいずれか一に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物を含むペレット。
〔15〕
前記〔1〕乃至〔10〕のいずれか一に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物を含むハードディスク用ランプ成形体。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、
(A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部と、
(B)酸価が1〜75mg−KOH/gであり、180℃の溶融粘度が100〜2900mPa・s以下の酸変性ポリオレフィンを0.1〜5質量部と、
を、含有する。
上述したように、高い荷重(例えば、1〜20N程度の荷重)下での摺動性と、非常に低い荷重(例えば、0.05N以下の荷重)下での摺動性との両立が困難であるのは、摺動により与えられる荷重の違い、摺動速度の違いが要因と考えられる。
非常に低い荷重下での摺動では、比較的速い摺動速度で行われることが多く、ポリオキシメチレン樹脂組成物よりなる成形体のごく表層(例えば数μmの深さ程度)までしか、摩耗破損が起こらない。これは従来の高い荷重下での摺動とは全く異なる摩耗である。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、従来公知の樹脂組成物とは異なり、非常に低い荷重下において、極表層の耐摩耗性改良に特異的に効果を発現する。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、上述のような極表層のみの摩耗破損を抑制する効果を奏し、当該効果を100万回擦過後まで維持させることも可能となる。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物を構成する各成分について詳述する。
ここで、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物が含有する(A)ポリオキシメチレン樹脂(本明細書において、(A)成分、(A)と記載する場合がある。)について、詳細に説明する。
本実施形態において使用可能な(A)ポリオキシメチレン樹脂としては、ポリオキシメチレンホモポリマー及びポリオキシメチレンコポリマーが挙げられる。
具体的には、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる実質上オキシメチレン単位のみから成るポリオキシメチレンホモポリマーや、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソランや1,4−ブタンジオールホルマールなどのグリコールやジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル若しくは環状ホルマールを、共重合させて得られるポリオキシメチレンコポリマーが挙げられる。
また、ポリオキシメチレンコポリマーとして、ホルムアルデヒドの単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルとを、共重合させて得られる分岐を有するポリオキシメチレンコポリマー、並びに、ホルムアルデヒドの単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと多官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる架橋構造を有するポリオキシメチレンコポリマーを用いることもできる。
さらには、(A)ポリオキシメチレン樹脂は、ポリオキシメチレンの繰り返し構造単位とは異なる異種のブロックを有するブロックコポリマーを含んでいてもよい。
(A)ポリオキシメチレン樹脂がブロックコポリマーを含む場合には、その異種ブロック部分に、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物を構成する、(B)酸変性ポリオレフィンを選択的及び安定的に存在させることができる。これにより、100万回を超える摺動において一層安定した耐摩耗性を発現させることが可能となる。
またR3は、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、及び置換アリール基からなる群より選ばれる1種の化学種を示す。
mは2〜6の整数を示し、2〜4の整数が好ましい。
nは1〜1000の整数を示し、10〜250の整数が好ましい。
前記ブロック成分を有するポリオキシメチレンポリマーは、例えば、特開昭57−31918号公報や特開昭60−170652号公報などに記載の方法を参考に調製できる。
また、pは2〜6の整数を示し、2つのpは各々同一であっても異なっていてもよい。
q、rはそれぞれ正の数を示し、qとrとの合計100モル%に対してqは2〜100モル%、rは0〜98モル%であり、−(CH(CH2CH3)CH2)−単位及び−(CH2CH2CH2CH2)−単位はそれぞれランダム又はブロックで存在する。
当該ブロック成分の挿入量のより好ましい上限は15質量%であり、さらに好ましくは10質量%であり、さらにより好ましくは8質量%である。
また、当該ブロック成分の挿入量のより好ましい下限は、0.01質量%であり、さらに好ましくは0.1質量%であり、さらにより好ましくは1質量%である。
当該ブロック成分の分子量の下限は特にないが、100以上であることが、安定した摺動性を維持し続ける観点から好ましい。
ここで、ABA型ブロックコポリマーは、例えば、ポリオキシメチレンセグメントAと、両末端に水酸基(ヒドロキシル基)などの官能基を有するブロックを構成する化合物(セグメントB(以下「B」とも記す))を、ポリオキシメチレン樹脂の重合過程で末端部分と反応させることにより得られる。
両末端に水酸基(ヒドロキシル基)などの官能基を有するブロックを構成する化合物として、例えば、両末端がヒドロキシル基であるポリエチレングリコールなどのポリアルキレンオキシド、両末端ヒドロキシ基である水素添加ポリブタジエンを用いることで、Bとして前記式(3)や(4)で表されるブロックを有するABA型ブロックコポリマーが得られる。
不飽和結合としては、特に限定されないが、例えば炭素−炭素二重結合が挙げられる。
前記ブロック成分を有するポリオキシメチレンコポリマーとしては、例えば、特開昭60−170652号公報や国際公開第01/09213号に開示されたポリオキシメチレンブロックコポリマーが挙げられ、その公報に記載の方法を参考に調製できる。
(A)ポリオキシメチレン樹脂としてブロックコポリマーを含むことにより、樹脂成形体としての剛性と、100万回を超える摺動での安定した耐摩耗性を両立させることがより一層可能となる傾向にある。
当該ブロックコポリマーの比率のより好ましい上限は、90質量%であり、さらに好ましくは75質量%であり、さらにより好ましくは65質量%であり、よりさらに好ましくは60質量%である。
また、当該ブロックコポリマーの比率のより好ましい下限は10質量%であり、さらに好ましくは25質量%であり、さらにより好ましくは35質量%であり、よりさらに好ましくは40質量%である。
なお、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物を含む成形体における、当該ブロックコポリマーの比率は、1H−NMRや13C−NMR等により測定することができる。
次に本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物が含有する、(B)酸価が1〜75mg−KOH/gであり、180℃溶融粘度が100〜2900mPa・sの酸変性ポリオレフィン(本明細書において、(B)成分、(B)と記載する場合がある。)について詳細に説明する。
これらは、酸化変性型或いは酸変性型ポリオレフィンワックスなどの名称で市販されており、容易に入手することができる。
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、ポリプロピレン−ブテン共重合体、ポリブテン、ポリブタジエンの水添物、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等などが挙げられる。
(B)成分としては摺動性改良効果の観点からパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスの酸変性物、ポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体の酸変性物が好ましい。
(B)成分は、特に、酸変性ポリエチレン及び/又は酸変性ポリプロピレンを含む変性ワックスであることが好ましい。
(B)成分の酸価を上述の範囲とすることで、乾燥時の変色性を抑制し、臭気性を抑制し、微小荷重摺動時の耐摩耗性と高荷重摺動時の耐摩耗性が良好となる傾向にある。
酸価の好ましい下限量は、2mg−KOH/gであり、より好ましくは3mg−KOH/gであり、さらに好ましくは4mg−KOH/gである。
また酸価の好ましい上限量は、74mg−KOH/gであり、より好ましくは73mg−KOH/gであり、さらに好ましくは70mg−KOH/gであり、さらにより好ましくは50mg−KOH/gである。
(B)成分の酸価は、JIS K0070に準拠した方法により測定できる。
(B)成分の酸価は、上述した酸性基の導入量、極性基の導入量を調整することにより、制御することができる。
(B)成分の180℃溶融粘度の下限は、好ましくは110mPa・sであり、より好ましくは140mPa・sであり、さらに好ましくは160mPa・sであり、さらにより好ましくは300mPa・sである。
また(B)成分の180℃溶融粘度の好ましい上限は、2850mPa・sであり、より好ましくは2800mPa・sであり、さらに好ましくは2700mPa・sであり、さらにより好ましくは2650mPa・sであり、よりさらに好ましくは2000mPa・sであり、特に好ましくは1600mPa・sである。
上記範囲内とすることで、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物の溶融混練時に、ポリオキシメチレン樹脂ペレットが完全溶融となり、混練が十分に行われる傾向にある。
(B)成分の180℃の溶融粘度はブルックフィールド粘度計により測定できる。
(B)成分の180℃の溶融粘度は、公知の重合方法により、分子量、分岐量、分子量分布等を制御したり、酸化処理を施したりすることにより上記範囲に制御することができる。
(B)成分の量を(A)成分100質量部に対して0.1質量部以上とすることで、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物の成形体の摺動性が向上する傾向にある。
また5質量部以下とすることで、ポリオキシメチレン樹脂組成物の成形体における表面平滑性が良好となる傾向にある。
(B)成分の含有量の好ましい下限量は、(A)成分100質量部に対して、0.2質量部であり、より好ましくは0.3質量部であり、さらに好ましくは、0.8質量部である。
また、(B)成分の含有量の好ましい上限量は、(A)成分100質量部に対し、4.5質量部であり、より好ましくは4質量部であり、さらに好ましくは3.5質量部である。
本実施形態においては、表層近傍における酸変性ポリオレフィンの存在状態が摺動特性に大きな影響を与えるため、(B)成分の重量平均分子量は重要である。すなわち、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、(B)成分として重量平均分子量10万以下の酸変性ポリオレフィンを用いることで、100万回を超える摺動回数における耐摩耗性の維持を達成可能となる。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に用いる(B)成分の重量平均分子量の下限は特にないが、取扱いの容易さから、100以上であることが好ましい。より好ましくは、1000であり、さらに好ましくは5000であり、さらにより好ましくは10000である。上記範囲とすることで(B)成分の分子間の凝集を抑え、良分散が可能となる。このことにより、成形体の剥離性が良好となる傾向にある。
また(B)成分の重量平均分子量の好ましい上限は、90000であり、より好ましくは80000であり、さらに好ましくは70000であり、さらに好ましくは50000である。
また(B)成分の分子量分布の好ましい上限は5.0であり、より好ましくは4.5であり、さらに好ましくは4.0であり、さらにより好ましくは3.5である。
なお、本実施形態に用いる(B)成分の重量平均分子量及び分子量分布は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィにより測定された標準ポリスチレン換算で算出される。
なお、(B)成分の融点は、JIS K 7121に準拠した方法(DSC法)により測定できる。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、付加的成分(任意成分)として、(C)着色剤を含有してもよい。
(C)着色剤について詳細に説明する。
(C)着色剤とは、可視光の吸収、散乱、反射等の作用により外観に変化をもたらす物質をいう。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、(C)着色剤(本明細書において、(C)成分、(C)と記載する場合がある。)を(A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対して、0.01〜3質量部、含有することが好ましい。
優れた耐摩耗性を得る観点から、上述の範囲内の量で、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物中に着色剤を含有させることが重要である。
(C)着色剤の存在による耐摩耗性の改善の理由は明らかではないが、(C)着色剤により成形体の表面硬度を向上させて耐摩耗性を向上させていること、(C)着色剤が(B)所定の酸変性ポリオレフィンを保持し、表層付近に偏在させていることなどが考えられる。
無機系顔料としては、樹脂の着色用として一般的に使用されている無機系顔料が挙げられる。
無機系顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、鉄、亜鉛及びチタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物;鉄、亜鉛及びチタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の炭酸塩;硫化亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、含水酸化クロム、酸化クロム、アルミ酸コバルト、バライト粉、亜鉛黄1種、亜鉛黄2種、フェロシアン化鉄カリ、カオリン、チタンイエロー、コバルトブルー、ウルトラマリン青、カドミウム、ニッケルチタン、リトポン、ストロンチウム、アンバー、シェンナ、アズライト、マラカイト、アズロマラカイト、オーピメント、リアルガー、辰砂、トルコ石、菱マンガン鉱、イエローオーカー、テールベルト、ローシェンナ、ローアンバー、カッセルアース、白亜、石膏、バーントシェンナ、バーントアンバー、ラピスラズリ、アズライト、マラカイト、サンゴ粉、白色雲母、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトバイオレット、コバルトグリーン、ジンクホワイト、チタニウムホワイト、ライトレッド、クロムオキサイドグリーン、マルスブラック、ビリジャン、イエローオーカー、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、バーミリオン、タルク、ホワイトカーボン、クレー、ミネラルバイオレッド、ローズコバルトバイオレット、シルバーホワイト、金粉、ブロンズ粉、アルミニウム粉、プルシアンブルー、オーレオリン、タルク、ウォラストナイト、雲母チタン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ファーナスブラック、植物性黒、骨炭、炭酸カルシウム、紺青等が挙げられる。
なお、前記「金属の酸化物」は、鉄、亜鉛若しくはチタンから選ばれる2種以上の金属からなる「複合金属酸化物」も包含する。
(C)着色剤としては、鉄、亜鉛及びチタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物、鉄、亜鉛及びチタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の炭酸塩、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化鉄、亜鉛黄1種、亜鉛黄2種、ジンクホワイト、チタニウムホワイト、アルミナホワイト、タルク、ホワイトカーボン、シルバーホワイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ファーナスブラック、炭酸カルシウムが、好ましいものとして挙げられる。
これらの中でも、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物の耐摩耗性の観点から、モース硬度が8以下である着色剤が好ましい。より好ましくはモース硬度が7以下であり、さらに好ましくはモース硬度が6以下である。
なお、前記(C)着色剤のモース硬度は、モース硬度計により測定することができる。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物の熱安定性の観点から、有機系染顔料としては、縮合アゾ系、キノン系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、又はフタロシアニン系の有機系染顔料が好ましい。より好ましくは、縮合アゾ系、キノン系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、ベリレン系、又はフタロシアニン系の有機系染顔料である。さらに好ましくは、キノン系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、複素環系、キナクリドン系、ベリレン系、又はフタロシアニン系の有機系染顔料である。
また(C)着色剤のより好ましい下限量は、(A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対して0.03質量部であり、さらに好ましくは0.05質量部であり、さらにより好ましくは0.1質量部である。
一方、(C)着色剤の含有量を0.01質量部以上とすることにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、十分な着色性を確保することができる。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、従来公知の、ポリオキシメチレン樹脂組成物に使用されている各種安定剤を含有することができる。
安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記の酸化防止剤、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤が挙げられる。
これらは1種のみを単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記酸化防止剤としては、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものが、適宜使用可能である。
ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メラミンやポリアミド系樹脂といったホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及びその重合体、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩が挙げられる。具体例としては、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、硼酸カルシウム、及び脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)が挙げられる。前記脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。
上述したそれぞれの安定剤の添加量は、(A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対して、酸化防止剤、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.1〜2質量部、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤、例えばホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体が0.1〜3質量部、アルカリ土類金属の脂肪酸塩が0.1〜1質量部の範囲であると好ましい。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、例えば、(A)ポリオキシメチレン樹脂と(B)酸変性ポリオレフィン、必要に応じて(C)着色剤、その他の添加剤を、溶融混練することにより得ることができる。
ここで、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、(A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対して、(B)酸価が1〜75mg−KOH/gであり、180℃溶融粘度が100〜2900mPa・s以下の酸変性ポリオレフィンを0.1〜5質量部含む。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物を得る方法としては公知の方法が用いられる。
例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等が挙げられるが、中でも、減圧装置やサイドフィーダー設備等を装備した2軸押出機が特に好ましく使用できる。
原料成分を混合及び溶融混練する方法としては、特に限定されず、当業者が周知の方法を利用可能である。
例えば、(A)成分、(B)成分を、すべて、予めスーパーミキサー、タンブラー、V字型ブレンダーなどで混合し、二軸押出機で一括溶融混練する方法、(A)成分を二軸押出機等に供給し、溶融混練しつつ、押出機途中から(B)成分を溶融し液体状態で添加する方法等が挙げられるが、これらはいずれも問題なく利用可能である。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、上記押出機により製造した場合、ペレット形状として得られる。
本実施形態の成形体は、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物を含む。
成形体を得るための方法については特に制限されるものではなく、公知の成形方法を適用できる。
例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法のいずれも適用することができる。
成形体の形状は、特に限定されるものではないが、例えば、ギヤ、カム、ローラー、ハードディスク内部部品(ランプ、ラッチ材)やシート、具体的には押し出しシート等が挙げられる。
当該ピーク強度比(C−O/C=O)は、10〜200であることが好ましい。この値が200を超えるということは、表層近傍には、後述する本実施形態の樹脂成形体を構成する(B)酸変性ポリオレフィンがほとんど存在していないことを示しており、10を下回るということは、極めて多量の(B)酸変性ポリオレフィンが表層付近に偏在していることを示す。100万回を超える擦過回数での高い摺動性を維持し、かつ表層での表層剥離による摩耗性悪化を抑制する観点から、樹脂成形体表面のピーク強度比(C−O/C=O)を10〜200の間にすることが好ましい。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物及び当該樹脂組成物を含む成形体は、微小荷重下での繰り返し摺動が要求される用途に好適に使用可能である。
具体的には、ハードディスク内部部品(ハードディスク用ランプ成形体、ラッチ材)、時計内部部品(ギヤ、テンプ、アンクル、ガンギ車等)等が挙げられる。
これら以外に、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物を含む成形体が高い摺動性を有することから、ポリオキシメチレンとして公知の用途に適用可能である。
また、自動車部品としては、例えば、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品;ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品;シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品;コンビスイッチ部品、スイッチ類、クリップ類等の部品に適用可能である。
さらには、その他用品として、筆記具のペン先、芯を出し入れする機構部品;洗面台、排水口、及び排水栓開閉機構部品;衣料用のコードストッパー、アジャスター、ボタン;散水用のノズル、散水ホース接続ジョイント;階段手すり部、及び床材の支持具である建築用品;玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機(開閉部ロック機構、商品排出機構部品)、家具、楽器、住宅設備機器部品としても好適に使用できる。
実施例及び比較例のポリオキシメチレン樹脂組成物及びその成形体に対する製造条件、及び特性評価項目を以下に示す。
(1)ポリオキシメチレン樹脂組成物の押出加工
二軸押出機(東芝機械(株)製TEM−26SS押出機(L(スクリュー有効長さ)/D(スクリュー直径)=48、ベント付き)を用いて、シリンダー温度をすべて200℃に設定し、後述する(A)成分、(B)成分、必要に応じて(C)成分、並びに付加的成分を一括混合し、押出機メインスロート部より定量フィーダーより供給して、押出量15kg/時間、スクリュー回転数150rpmの条件で樹脂混練物をストランド状に押出し、ストランドバスにて急冷し、ストランドカッターで切断し、ペレット形状のポリオキシメチレン樹脂組成物を得た。
射出成形機(EC−75NII、東芝機械(株)製)を用いて、シリンダー温度を205℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で成形することにより、ISO294−1に準拠した多目的試験片形状の成形体を得た。
この際の金型温度は、80℃とした。
前記(2)で得られた成形体の表層の付着物を除去する為、市販の精密機器用洗浄剤(VALTRON DP97031(登録商標))の1.5%水溶液を用いて、50℃の条件で3分間超音波洗浄を行い表面の有機物を除去したのち、高速液体クロマトグラフィー用蒸留水を用いて、室温条件下で15分超音波処理を行い、洗浄を実施した。
次いで洗浄後の試料を、乾燥オーブンで80℃、1時間乾燥処理を行い、測定用のポリオキシメチレン樹脂組成物の成形体(多目的試験片形状成形体)を得た。
(1)微小荷重時の摺動試験(耐摩耗特性)
ボールオンディスク型摩擦摩耗試験機(Nano tribometer2(登録商標)、TTX−NTR2型、CSM Instruments(株)製)を用いて、23℃、湿度50%の環境下で、荷重0.1N、摺動速度200mm/sec、往復距離10000μm、往復回数120万回の条件で、上記〔ポリオキシメチレン樹脂組成物、及び成形体の製造〕の(3)で得た多目的試験片形状成形体の摺動試験を実施した(摺動試験−1)。
ボール材料としてはSUJ2ボール(直径1.5mmの球)を用いた。
ボールオンディスク型往復動摩擦摩耗試験機(AFT−15MS型、東洋精密(株)製)を用いて、23℃、湿度50%の環境下で、荷重19.6N、線速度30mm/sec、往復距離20mm、往復回数1万回の条件で、上記〔ポリオキシメチレン樹脂組成物、及び成形体の製造〕の(3)で得た多目的試験片形状成形体の摺動試験を実施した(摺動試験−2)。
ボール材料としては、SUS304ボール(直径5mmの球)を用いた。
上記(1)、(2)の摺動試験後のサンプルの摩耗量(摩耗断面積)を、共焦点顕微鏡(OPTELICS(登録商標) H1200、レーザーテック(株)社製)を用いて測定した。
前記(1)は、測定箇所は摩耗痕の端より2000μmの等しい間隔をあけて実施した。
摩耗断面積はn=4で測定した数値の平均値とし、小数点第一位で四捨五入した。
前記(2)は、測定箇所は摩耗痕の端より4000μmの等しい間隔をあけて実施した。
摩耗深さはn=4で測定した数値の平均値とし、小数点第一位で四捨五入した。
また摩耗断面積は数値が低い方が摩耗特性に優れると評価した。
上記〔ポリオキシメチレン樹脂組成物、及び成形体の製造〕中の(1)を実施しているときの、ストランドカッター直後のペレットを、縦50cm、横25cmの紙袋に1kg捕集し、この臭気を5人が嗅いで判定した。
判定値は5人の平均値とし、小数点第一位で四捨五入した。
判定基準は以下のとおりとした。
1:臭いを感じなかった。
2:臭いを少し感じた。
3:臭いを感じた。
4:臭いを強く感じた。
5:臭いをかなり強く感じた。
上記〔ポリオキシメチレン樹脂組成物、及び成形体の製造〕中の(1)ポリオキシメチレン樹脂組成物の押出加工を実施して得られたペレット形状のポリオキシメチレン樹脂組成物を、145℃に設定したオーブンに入れ、48時間のエージング処理を行った。
得られたペレットの色調を乾燥前のペレットの色調と比較して色差を判定した。
判定は5人が目視で判定を行った。
エージング処理前後の色の違いにより、変色の有無を確認するとともに、変色のあるペレットについては、変色度合いを以下の基準で評価した。
数字が小さい方がよりエージング前後の色差に優れると判断した。
1:変色は認められない。
2:わずかに黄色に変色した。
3:濃い黄色がかった変色をした。
4:明らかな茶変色をした。
5:濃い茶色へ変色した。
上記〔ポリオキシメチレン樹脂組成物、及び成形体の製造〕中の(2)成形加工(射出成形機による多目的試験片形状成形体の製造)を実施して得られた成形体3本を5人が目視で確認し判定した。
判定値は5人の平均値とし、小数点第一位で四捨五入した。判定基準は以下のとおりである。数字が小さい方がより表面平滑性に優れると判断した。
1:凹凸を確認できなかった。
2:凹凸を少し確認できた。
3:凹凸を確認できた。
4:凹凸を強く確認できた。
5:凹凸をかなり強く確認できた。
上記〔ポリオキシメチレン樹脂組成物、及び成形体の製造〕中の(2)成形加工(射出成形機による多目的試験片形状成形体の製造)、上記〔ポリオキシメチレン樹脂組成物、及び成形体の製造〕中の(3)成形体の洗浄で得られた多目的試験片の表面における炭素と酸素の相対元素濃度比[C/O](atomic%)を、以下のとおり測定した。
測定機器はフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のESCALAB250を用い、励起源としてmonoAlKα(15kV×10mA)を用いた。測定時の試料は、サイズを約1mm(形状は楕円)に切り出した後、成形体の表層の付着物を除去する為、市販の精密機器用洗浄剤(VALTRON DP97031)の1.5%水溶液を用いて、50℃の条件で3分間超音波洗浄を行い表面の有機物を除去したのち、高速液体クロマトグラフィー用蒸留水で室温条件下で15分超音波処理を行い、洗浄を実施した。次いで洗浄後の試料を、乾燥オーブンで80℃、1時間乾燥処理を行い、測定に供した。当該測定において、光電子取込み角は0°(分光器の軸と試料面が垂直)とし、取込領域はSurvey scanが0〜1100eV、Narrow scanがC 1s、O 1s、N 1sの領域とした。また、Pass EnergyはSurvey scanが100eV、Narrow scanが20eVで実施した。このときのC濃度は、各ピークトップが284eVから288eVの範囲のピーク面積比とした。またO濃度は各ピークトップが530eVから536eVの範囲のピーク面積比とした。各ピークの面積比から相対元素濃度を算出し、四捨五入して1atomic%以上のものは有効数字2桁で、1atomic%未満のものは有効数字1桁で算出した。これらの各元素濃度の比を「表面における炭素と酸素との相対元素濃度比」とした。
上記〔ポリオキシメチレン樹脂組成物、及び成形体の製造〕中の(2)成形加工(射出成形機による多目的試験片形状成形体の製造)、上記〔ポリオキシメチレン樹脂組成物、及び成形体の製造〕中の(3)成形体の洗浄で得られた多目的試験片形状の成形体表面におけるC−O伸縮振動ピークとC=O伸縮振動ピークとのピーク強度比(C−O/C=O)は、以下のとおり赤外分光法で解析することにより得た。
測定機器はPerkin−Elmer社製のSpectrum Oneを用い、ATR法(結晶:ダイヤモンド/ZnSe)により行った。測定範囲を500cm-1から4000cm-1、波数分解能を4cm-1とし、積算回数を16回とした。測定時のC−O(ポリアセタールの繰り返し構造由来)の信号として1090cm-1のピーク強度(ピーク高さ)、C=Oの信号として1600cm-1から1750cm-1のピーク強度をそれぞれ算出し、「成形体表面におけるC−O伸縮振動ピークとC=O伸縮振動ピークとのピーク強度比(C−O/C=O)」を求めた。なお、ピーク強度を求める際に、直線のベースラインを、それぞれ1040cm-1から1160cm-1、1590cm-1から1760cm-1に引いた上で、ベースラインより正の高さをピーク強度として読み取った。
後述する実施例及び比較例に用いたポリオキシメチレン樹脂組成物の原料成分を以下に説明する。
((A)ポリオキシメチレン樹脂の製造例)
<(A1)ポリオキシメチレンコポリマー>
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8(L:重合機の原料供給口から排出口までの距離(m)、D:重合機の内径(m))を80℃に調整した。
前記重合機に、トリオキサンを4kg/時間、コモノマーとして1,3−ジオキソランを128.3g/時間、連鎖移動剤としてメチラールをトリオキサン1モルに対して0.25×10-3モルを連続的に添加した。
さらに前記重合機に、重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1モルに対して1.5×10-5モルで連続的に添加し重合を行った。
重合機より排出されたポリオキシメチレンコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行った。
失活されたポリオキシメチレンコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリオキシメチレンコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合し、ベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリオキシメチレンコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で、ポリオキシメチレンコポリマーの不安定末端部分の分解除去を行った。
この時、第4級アンモニウム化合物の添加量は、窒素量に換算して20質量ppmとした。
不安定末端部分の分解されたポリオキシメチレンコポリマーに、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部を添加し、ベント付き押出機で真空度20Torrの条件下で脱揮しながら、押出機ダイス部よりストランドとして押出し、ペレタイズした。
このようにして得られたポリオキシメチレンコポリマーを、ポリオキシメチレン樹脂(A1)とした。
ポリオキシメチレン樹脂(A1)のメルトフローレートは9g/10分(ISO−1133条件D)であった。
熱媒を通すことのできるジャケット付きの2軸パドル型連続重合機を80℃に調整した。
トリオキサンを40モル/時間、環状ホルマールとして1,3−ジオキソランを2モル/時間、重合触媒としてシクロヘキサンに溶解させた三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1モルに対し5×10-5モルとなる量、連鎖移動剤として下記式(5)で表される両末端ヒドロキシル基水素添加ポリブタジエン(数平均分子量Mn=2330)をトリオキサン1モルに対し1×10-3モルになる量で、前記重合機に連続的に供給し重合を行った。
粗ポリオキシメチレンブロックコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合し、ベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリオキシメチレンブロックコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で、ポリオキシメチレンブロックコポリマーの不安定末端部分の分解除去を行った。
この時、第4級アンモニウム化合物の添加量は、窒素量に換算して20質量ppmとした。
不安定末端部分の分解されたポリオキシメチレンブロックコポリマーに、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部を添加し、ベント付き押出機で真空度20Torrの条件下で脱揮しながら、押出機ダイス部よりストランドとして押出し、ペレタイズした。
このようにして得られたポリオキシメチレンブロックコポリマーを、(A2)ポリオキシメチレンブロックコポリマーとした。
このブロックコポリマーは、ABA型ブロックコポリマーであり、メルトフローレートが10.0g/10分(ISO−1133 条件D)であった。
下記〔表1〕のB1、B2、B8、B10、B11の酸変性ポリオレフィンは特開2004−75749号公報に記載の「実施例1又は2」に記載の方法により得た。
下記〔表1〕のB3〜B7は、市販の高密度ポリエチレン又はポリプロピレンを酸素雰囲気下で熱分解を行い得た。
下記〔表1〕のB12は、特開昭62−167308号公報に記載の「実施例1」に記載の方法で得た。
下記〔表1〕のB9、B13は市販のものを購入し用いた。
また、(B)成分の酸価は、JIS K 0070に準拠した方法により測定した。
また、(B)成分の融点は、JIS K 7121に準拠した方法(DSC法)により測定した。
さらに(B)成分の180℃溶融粘度はブルックフィールド粘度計により測定した。
<(C1)>
亜鉛/鉄複合酸化物:モース硬度5
<(C2)>
酸化亜鉛:モース硬度5
<(C3)>
酸化鉄:モース硬度6
<(C4)>
酸化チタン:モース硬度7
なお、本実施形態において、モース硬度は、モース硬度計により測定した。
各成分を下記〔表2〕に記載の割合で混合し、前記〔ポリオキシメチレン樹脂組成物、及び成形体の製造〕の「(1)ポリオキシメチレン樹脂組成物の押出加工」に記載の要領で溶融混練し、「(2)成形加工(射出成形機による多目的試験片形状成形体の製造)」の要領で成形体を製造し、各種性能の評価を実施した。
摺動試験においては、さらに「(3)成形体の洗浄」を行い、各種性能の評価を実施した。
これらの結果から、酸価が所定の数値範囲内である酸変性ポリオレフィンのポリオキシメチレン樹脂組成物は、摺動試験−1及び摺動試験−2による耐摩耗特性、さらには臭気性、エージング前後の色差、及び表面平滑性のいずれにも優れていることが分かった。
各成分を下記〔表3〕の割合で混合した以外は、前記〔実施例1〕と同様にポリオキシメチレン樹脂組成物及び成形体を製造し、各種性能の評価を実施した。
上記のように、ポリオキシメチレン樹脂に特定の酸変性ポリオレフィンを5質量部(phr)以下に添加した組成のポリオキシメチレン樹脂組成物は、摺動試験−1、2による耐摩耗特性、臭気性、エージング前後の色差、及び表面平滑性に優れることが分かった。
各成分を下記〔表4〕の割合で混合した以外は、前記〔実施例1〕と同様にポリオキシメチレン樹脂組成物及び成形体を製造し、各種性能の評価を実施した。
これらの結果から、(A)ポリオキシメチレン樹脂を変えても、各評価項目において良好な結果が得られることが分かった。
一方、比較例7の結果から、特定の酸変性ポリオレフィンを用いることが、耐摩耗特性、臭気性、エージング前後の色差、表面平滑性などに有効であることが分かった。
各成分を下記〔表5〕の割合で混合した以外は、前記〔実施例1〕と同様にポリオキシメチレン樹脂組成物及び成形体を製造し、各種性能の評価を実施した。
これらの結果から、顔料を追加した場合においても、摺動試験−1、2による耐摩耗特性、臭気性、エージング前後の色差、表面平滑性のいずれにも優れていることが分かった。
Claims (15)
- (A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部と、
(B)酸価が1〜75mg−KOH/gであり、180℃の溶融粘度が100〜2900mPa・sの酸変性ポリオレフィンを0.1〜5質量部と、
を、含有する、
ポリオキシメチレン樹脂組成物。 - (C)着色剤を0.01〜3質量部、さらに含有する、請求項1に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
- 前記(B)酸変性ポリオレフィンが、
酸変性ポリエチレン及び/又は酸変性ポリプロピレンを含有する変性ワックスである、請求項1又は2に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。 - 前記(B)酸変性ポリオレフィンの重量平均分子量が100000以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
- 前記(B)酸変性ポリオレフィンの重量平均分子量が50000以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
- 前記(B)酸変性ポリオレフィンの180℃の溶融粘度が2000mPa・s以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
- 前記(B)酸変性ポリオレフィンの180℃の溶融粘度が1600mPa・s以下である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
- 前記(C)着色剤が、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化鉄、亜鉛黄1種、亜鉛黄2種、ジンクホワイト、チタニウムホワイト、アルミナホワイト、タルク、ホワイトカーボン、シルバーホワイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ファーナスブラック、炭酸カルシウムからなる群より選ばれる無機系顔料、及び有機系染顔料からなる群より選ばれる、少なくとも一つ以上を含む着色剤である、請求項2乃至7のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
- (A)ポリオキシメチレン樹脂がブロックコポリマーを含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
- 前記ブロックコポリマーが、ABA型ブロックコポリマーである、請求項9に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
- 請求項1乃至10のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物の成形体であって、当該成形体の表面における炭素と酸素との相対元素濃度比[C/O](atomic%)が1.01〜2.50である、成形体。
- 請求項1乃至10のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物の成形体であって、当該成形体の表面が、赤外分光法により得られるC−O伸縮振動ピークとC=O伸縮振動ピークとのピーク強度比(C−O/C=O)が10〜200である、成形体。
- 請求項1乃至10のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物を含む押し出しシート。
- 請求項1乃至10のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物を含むペレット。
- 請求項1乃至10のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物を含むハードディスク用ランプ成形体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016038980A JP6745607B2 (ja) | 2016-03-01 | 2016-03-01 | ポリオキシメチレン樹脂組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016038980A JP6745607B2 (ja) | 2016-03-01 | 2016-03-01 | ポリオキシメチレン樹脂組成物 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017155118A true JP2017155118A (ja) | 2017-09-07 |
JP6745607B2 JP6745607B2 (ja) | 2020-08-26 |
Family
ID=59808201
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016038980A Active JP6745607B2 (ja) | 2016-03-01 | 2016-03-01 | ポリオキシメチレン樹脂組成物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6745607B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019038948A (ja) * | 2017-08-25 | 2019-03-14 | 旭化成株式会社 | ポリオキシメチレン樹脂成形体、摺動部材、及びハードディスク用ランプ |
Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015040301A (ja) * | 2013-08-23 | 2015-03-02 | 旭化成ケミカルズ株式会社 | ポリアセタール樹脂成形体 |
KR20150078284A (ko) * | 2013-12-30 | 2015-07-08 | 코오롱플라스틱 주식회사 | 폴리옥시메틸렌 수지 조성물 및 그 제조방법 |
-
2016
- 2016-03-01 JP JP2016038980A patent/JP6745607B2/ja active Active
Patent Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015040301A (ja) * | 2013-08-23 | 2015-03-02 | 旭化成ケミカルズ株式会社 | ポリアセタール樹脂成形体 |
KR20150078284A (ko) * | 2013-12-30 | 2015-07-08 | 코오롱플라스틱 주식회사 | 폴리옥시메틸렌 수지 조성물 및 그 제조방법 |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019038948A (ja) * | 2017-08-25 | 2019-03-14 | 旭化成株式会社 | ポリオキシメチレン樹脂成形体、摺動部材、及びハードディスク用ランプ |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP6745607B2 (ja) | 2020-08-26 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6189139B2 (ja) | ポリアセタール樹脂成形体 | |
TWI506079B (zh) | A polyacetal resin composition and a molded body thereof | |
JP6505735B2 (ja) | ポリアセタール樹脂成形体 | |
JP2017155117A (ja) | ポリオキシメチレン樹脂組成物 | |
JP6615642B2 (ja) | ポリオキシメチレン樹脂組成物 | |
JP6661408B2 (ja) | ポリオキシメチレン樹脂組成物 | |
JP2017155118A (ja) | ポリオキシメチレン樹脂組成物 | |
DE10162903B4 (de) | Polyoxymethylenharzzusammensetzung und daraus hergestellte Formkörper | |
JP6373727B2 (ja) | 樹脂成形体 | |
JP6474156B2 (ja) | ポリアセタール樹脂成形体 | |
WO2018180736A1 (ja) | 耐ダスト摺動性部材用樹脂組成物、耐ダスト摺動性部材及びその製造方法、ウィンドウレギュレータ用キャリアプレート、及び耐ダスト摺動性の発現方法 | |
TWI675061B (zh) | 聚甲醛樹脂成形體、滑動構件、及硬碟用燈 | |
JP6101579B2 (ja) | ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体 | |
JP7057113B2 (ja) | 樹脂組成物及び樹脂成形体 | |
JP2013224376A (ja) | 着色された樹脂組成物及び成形体 | |
JP7053199B2 (ja) | 樹脂組成物及び樹脂成形体 | |
JP2020045405A (ja) | ポリアセタール系樹脂組成物及びその成形品 | |
JP5143153B2 (ja) | ポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法 | |
TW201615679A (zh) | 聚縮醛樹脂成形體 | |
JP2020105281A (ja) | 樹脂組成物及びその成形体 | |
JP2020105494A (ja) | 樹脂組成物及びその成形体 | |
JP2014234464A (ja) | 導電性ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体 | |
JP4878925B2 (ja) | 樹脂ヒンジ | |
JP2022019652A (ja) | ポリアセタール樹脂組成物 | |
JP2012021095A (ja) | ポリオキシメチレン樹脂組成物及び成形体 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20160401 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20160523 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20190205 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20191108 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20191113 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20200107 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20200709 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20200804 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6745607 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |