JP2017154993A - フェナセン化合物、フェナセン化合物の製造方法及び有機発光素子 - Google Patents
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Abstract
Description
また、高効率、高輝度かつ高耐久性である有機電子発光(以下、有機ELという)素子に用いられる化合物としては、蛍光発光基を有するフェナントレン誘導体が報告されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、フェナントレンについては、1,2−ジアリルエテンを光縮環反応させることによって、効率的に合成できることが報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
一方、ベンゼン環がジグザグに縮環した構造を有するフェナセンは、アセンに比べて、外部因子に対する堅牢性が高く、蛍光発光性を有することが知られているので、有機EL素子として、フェナセンの利用が期待できる。
しかし、フェナセン化合物が有する蛍光に関する物性においては、蛍光収率は高くないことが知られている。従って、アルキニル化したフェナセン化合物は、上記課題を解決しうる化合物として期待でき、同時に、どのようにアルキニル化したフェナセン化合物が蛍光収率を向上させるかの検討、及びそれらの効率的な合成方法が必要になるものと考えられる。
<1> 下記一般式(1)で表されるフェナセン化合物である。
数値範囲を表す「〜」はその上限及び下限の数値を含む範囲を表す。
本明細書中、フェナセン化合物のうち、1つのアルキニル基(エチニル基とも称する)を有するフェナセン化合物を、モノアルキニルフェナセン化合物、2つのアルキニル基を有するフェナセン化合物を、ジアルキニルフェナセン化合物、と称することがある。また、例えば、1つのアルキニル基を有するフェナントレンを、モノアルキニルフェナントレン、と称することがある。
本明細書中、「蛍光収率」は、蛍光量子収率と同じ意味である。
本発明のアルキニル基を有するフェナセン化合物は、一般式(1)、及び後述する一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)及び一般式(7)でそれぞれ表されるフェナセン化合物である。本発明のフェナセン化合物は、フェナセン骨格であることの優位性、すなわち、高電圧、酸素、光及び水分等の外部因子に対する分子の堅牢性を有し、かつ、アルキル基を有することで優れた光物理特性(蛍光収率、蛍光寿命及び速度定数)を有し、中でも、発光素子や電子材料等の使用時に重要な物性である蛍光収率を高い値で確保することができる。このため、本発明のフェナセン化合物は、従来より知られていたアセン骨格を有する化合物よりも高い実用性を有する電子デバイスとして期待できる。
また、本発明のフェナセン化合物は、いずれも、410nm付近に高い強度の蛍光発光を示すという特徴を有することから、発光素子としての有用性も高い。
また、蛍光収率としての値は、例えば、出光興産株式会社の2014年公募で提示された蛍光型有機EL素子の青色蛍光発光材料の要求物性によれば、0.2以上であることが好ましい。
蛍光寿命及び速度定数は、単一光子相関測定装置(TAU System、ホトニクス株式会社製)を用いて、各溶媒中における上記化合物の蛍光寿命(τf)を測定し、上記で得られた蛍光量子収率(Φf)と蛍光寿命(τf)との関係から、放射過程における速度定数(kf)を算出することができる。
非極性溶媒としては、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、ヘキサン及びトルエン等を挙げることができ、極性溶媒としては、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、炭素数1〜4のアルコール、ジメチルホルムアミド(DMF)及びジメチルスルホオキシド(DMSO)が挙げられる。
以下に、それぞれの化合物について述べる。
本発明のモノアルキニルフェナセン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
さらに、アルキル基の一般式(1)中における数は特に限定されないが、フェナセン化合物の製造の容易さの観点から、一般式(1)中のZ1とZ2におけるベンゼン環の総数が0であるフェナセン化合物(以下、フェナントレン化合物と称する場合がある)としては0個〜4個が好ましく、総数が1であるフェナセン化合物(以下、クリセン化合物と称する場合がある)としては0個〜4個が好ましく、総数が2であるフェナセン化合物(以下、ピセン化合物と称する場合がある)としては0個〜4個が好ましく、総数が3であるフェナセン化合物(以下、フルミネン化合物と称する場合がある)としては0個〜4個が好ましい。
Xにおけるアリール基の炭素数は、4〜10であれば構造は限定されない。アリール基としては、例えば、シクロブタジエン基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基等が挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
Y1〜Y3におけるアリール基は炭素数4〜10であり、さらにはアリール基の炭素数としては6〜10であることが好ましい。アリール基としては、例えば、シクロブタジエン基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基等が挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
フェナセン化合物の蛍光収率の観点から、一般式(3)中、Y1〜Y3の少なくとも2つが炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であることが好ましく、Y1〜Y3のすべてが炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましい。中でも、Y1、Y2及びY3のすべてが炭素数1〜8のアルキル基であることが特に好ましい。
本発明のジアルキニルフェナセン化合物は、下記一般式(4)〜(7)で表される化合物である。以下、それぞれの化合物について述べる。
本発明のフェナセン化合物であるジアルキニルフェナントレン化合物は、下記一般式(4)で表される化合物である。
また、R2、R4、R5、R7、R9及びR10におけるアルキル基における炭素数は4〜12であれば、直鎖構造であっても分岐した構造であってもよい。前記アルキル基としては、さらに炭素数は1〜6がより好ましく、1〜4が特に好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基及びn−ヘキシル基等が挙げられ、中でも、メチル基及びエチル基が特に好ましい。
さらに、一般式(4)中、R1〜R10のいずれがアルキル基であってもよいが、フェナセン化合物の製造の容易さの観点から、R1〜R10のうちの0〜8つがアルキル基であること好ましい。
Xにおけるアリール基の炭素数は、4〜12であれば構造は限定されない。アリール基としては、例えば、シクロブタジエン基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基等が挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
アリール基の炭素数としては4〜10であればよく、さらに、6〜10であることが好ましい。アリール基としては、例えば、シクロブタジエン基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基等が挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
フェナセン化合物の蛍光収率の観点から、一般式(3)中、Y1〜Y3の少なくとも2つが炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基であることが好ましく、Y1〜Y3のすべてが炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましい。中でも、Y1〜Y3のすべてが炭素数1〜8のアルキル基であることが特に好ましい。
また、一般式(4)中、2つの一般式(2)で表される基のそれぞれは、同じ基であっても異なる基であってもよいが、フェナセン化合物の製造の容易さの観点からは、同じであることが好ましい。
本発明のフェナセン化合物であるジアルキニルクリセン化合物は、下記一般式(5)で表される化合物である。
さらに、一般式(5)中、R11〜R22のうちのいずれがアルキル基であってもよいが、フェナセン化合物の製造の容易さの観点から、R11〜R22のうちの1〜8つがアルキル基であること好ましい。
Xにおけるアリール基の炭素数は、4〜10であれば構造は限定されない。アリール基としては、例えば、シクロブタジエン基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基等が挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
アリール基の炭素数としては4〜10であればよく、さらに、6〜10であることが好ましい。アリール基としては、例えば、シクロブタジエン基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基等が挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
フェナセン化合物の蛍光収率の観点から、一般式(3)中、Y1〜Y3の少なくとも2つが炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であることが好ましく、Y1〜Y3のすべてが炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましく、中でも、Y1〜Y3のすべてが1〜8のアルキル基であることが特に好ましい。
また、一般式(5)中、2つの一般式(2)で表される基のそれぞれは、同じ基であっても異なる基であってもよいが、フェナセン化合物の製造の容易さの観点からは、同じであることが好ましい。
本発明のフェナセン化合物であるジアルキニルピセン化合物は、下記一般式(6)で表される化合物である。
Xにおけるアリール基の炭素数は、4〜10であれば構造は限定されない。アリール基としては、例えば、シクロブタジエン基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基等が挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
アリール基の炭素数としては4〜10であればよく、さらに、6〜10であることが好ましい。アリール基としては、例えば、シクロブタジエン基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基等が挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
フェナセン化合物の蛍光収率の観点から、一般式(3)中、Y1〜Y3の少なくとも2つが炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であることが好ましく、Y1〜Y3のすべてが炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であることが特に好ましく、中でも、Y1〜Y3のすべてが1〜8のアルキル基であることが特に好ましい。
また、一般式(6)中、2つの一般式(2)で表される基のそれぞれは、同じ基であっても異なる基であってもよいが、フェナセン化合物の製造の容易さの観点からは、同じであることが好ましい。
本発明のフェナセン化合物であるジアルキニルフルミネン化合物は、下記一般式(7)で表される化合物である。
Xにおけるアリール基の炭素数は、4〜10であれば構造は限定されない。アリール基としては、例えば、シクロブタジエン基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基等が挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
また、Xにおける一般式(3)で表される基は、下記の一般式(3)で表される基であればよい。
アリール基の炭素数としては4〜10であればよく、さらに、6〜10であることが好ましい。アリール基としては、例えば、シクロブタジエン基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基等が挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
フェナセン化合物の蛍光収率の観点から、一般式(3)中、Y1〜Y3の少なくとも2つが炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数4〜10のアリール基であることが好ましく、Y1〜Y3のすべてが炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数4〜10のアリール基であることが特に好ましく、中でも、Y1〜Y3のすべてが1〜8のアルキル基であることが特に好ましい。
また、一般式(7)中、2つの一般式(2)で表される基のそれぞれは、同じ基であっても異なる基であってもよいが、フェナセン化合物の製造の容易さの観点からは、同じであることが好ましい。
本発明のフェナセン化合物の製造方法は、光縮環反応によって下記一般式(8)で表される化合物に、縮環したベンゼン環を形成し、下記一般式(1)で表される化合物を生成する工程を含む。なお、前記工程を、「光縮環工程」と称することがある。
また、一般式(8)で表される化合物を、1,2−ジアリールエテン化合物と称することがある。
光縮環反応とは、酸化剤存在下、1,2−ジアリールエテン化合物に光を照射することで、1,2−ジアリールエテン化合物の2つのベンゼン環の間に新たな縮環したベンゼン環を形成する反応をいう。
紫外線を発生させる光源の種類は特に限定されないが、例えば、水銀ランプやメタルハライドランプなどが挙げられる。
酸化剤としては、ヨウ素、酸素及び塩化鉄が挙げられ、中でも合成操作の容易さの観点さからヨウ素が好ましい。
光縮環工程に用いる光縮環反応としては特に限定されないが、合成操作の容易さの観点から、「マロリー光環化反応」が好ましく挙げられる。また、前記マロリー光環化反応を行う場合には、本発明者らの文献[Chem.Lett.(2014),43,994−996]に記載されたフローリアクターを用いることで、効率よく前記フェナセン前駆体化合物を合成することができる。
さらに、アルキル基の一般式(1)中における数は特に限定されないが、フェナセン化合物の製造の容易さの観点から、一般式(1)中のZ1とZ2におけるベンゼン環の総数が0であるフェナセン化合物としては0個〜8個が好ましく、総数が1であるフェナセン化合物としては0個〜8個が好ましく、総数が2であるフェナセン化合物としては0個〜8個が好ましく、総数が3であるフェナセン化合物としては0個〜8個が好ましい。
Xにおけるアリール基の炭素数は、4〜10であれば構造は限定されない。アリール基としては、例えば、シクロブタジエン基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基等が挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
アリール基の炭素数としては4〜10であればよく、さらに、6〜10であることが好ましい。アリール基としては、例えば、シクロブタジエン基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基等が挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
フェナセン化合物の蛍光収率の観点から、前記一般式(3)中、Y1〜Y3の少なくとも2つが炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基であることが好ましく、Y1〜Y3のすべてが炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましい。中でも、Y1〜Y3のすべてが1〜8のアルキル基であることが特に好ましい。
また、前記一般式(1)中における一般式(2)で表される基の数は特に限定されないが、フェナセン化合物の製造の容易さの観点から、一般式(1)中のZ1とZ2の総数が0であるフェナセン化合物としては1個〜8個が好ましく、総数が1であるフェナセン化合物としては1個〜8個が好ましく、総数が2であるフェナセン化合物としては1個〜8個が好ましく、総数が3であるフェナセン化合物としては1個〜8個が好ましい。
また、前記置換反応における溶媒の種類、反応温度、反応時間及び前記置換反応に用いる化合物や触媒の前記溶媒中での濃度は、一般式(9)で表される化合物の種類によって適宜調整されることが好ましい。
また、前記一般式(9)中の脱離基Lの数は特に限定されず、前記一般式(8)で表される化合物に導入したい前記一般式(2)の数に応じて適宜調整される。
本発明のフェナセン化合物及び本発明のフェナセン化合物の製造方法によって得られたフェナセン化合物は、外部環境に影響されにくいために堅牢性を有し、かつ高い発光収率を有することから、広い分野への応用が期待できる。具体的には、例えば、二光子吸収材料、共役ポリマー材料、半導体材料、フォトクロミック材料、近赤外検出デバイス、酸素センサー及び有機発光素子等への応用が期待できる。有機発光素子としては、有機発光素子の電荷輸送層及び発光層の構成材料が挙げられ、好ましくは発光層の構成材料として用いることができる。これにより、高い発光効率を有し、かつ高電圧、酸素、光及び水分等の外部環境に対して堅牢なデバイスとして期待できる。
≪フェナセン化合物の調製≫
(試薬及び化合物の同定方法)
フェナセン化合物の調製に試薬は、すべて市販のものを用いた。また、合成した生成物については、薄層クロマトグラフィー(以下、TLCと称する)及びNMR測定によって確認した。薄層クロマトグラフィーはミリポア社製のTLCシリカゲル60F254(製品番号:1.05715.0001)を用いUV検出器にて確認した。NMR測定においては日本電子社製のECS400及びECS600を用いた。
光縮環工程に用いる光反応装置は、上記非特許文献2に記載の反応装置(マイクロリアクター)を用いた。条件を以下に示す。
<条件>
光源:中圧水銀(Hg)燈
波長:314nm
流速:1ml/min〜3ml/min
温度:20℃
溶媒:シクロヘキサン
本発明のフェナセン化合物である化合物A−1〜化合物A−3は、まず、脱離基を有する芳香族化合物同士のウィッティッヒ反応によってエテン誘導体(スティルベン誘導体)を得た後、フェニルエチニル基を導入し、さらに光縮環反応させることによって合成した。詳細を以下に示す。
パラ−ヨウ化ベンズブロミド2.12g(7.15mmol)と、トリフェニルホスフィン1.87g(7.15mmol)と、をキシレン70mlに加え、5分間撹拌した後、12時間還流した。室温まで放冷後に吸引ろ過をし、乾燥後に化合物1a(3.5g)を収率75%で得た。
オルト−ヨウ化ベンズブロミド2.1g(7.15mmol)と、トリフェニルホスフィン1.9g(7.15mmol)と、をキシレン70mlに加え、5分間撹拌した後、12時間還流した。室温まで放冷後に吸引ろ過をし、乾燥後に化合物1b(3.6g)を収率88%で得た。
化合物1a0.643g(1.2mmol)と、オルト−ヨウ化ベンズアルデヒド269mg(1.2mmol)と、をクロロホルム(以下、CFと称することがある)30mlに加え、撹拌しながら50%KOH水溶液を10ml滴下した。滴下終了後、室温で0.5時間撹拌し、さらに2時間還流した。反応終了後、CFで抽出して飽和食塩水で洗浄し、溶媒を減圧留去した。ヘキサンを展開溶媒として用いたTLCにより、Rf値が0.67及び0.53に新たなスポットを確認した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製することで、化合物2a(428mg)を収率86%で得た。
化合物1b1.29g(2.3mmol)と、オルト−ヨウ化ベンズアルデヒド0.53g(2.3mmol)と、を60mlのCFに加え、撹拌しながら50%KOH水溶液を20ml滴下した。滴下終了後、室温で0.5時間撹拌し、さらに2時間還流した。反応終了後、CFで抽出して塩水で洗浄し、溶媒を減圧留去した。ヘキサンを展開溶媒として用いたTLCにより、Rf値が0.57に新たなスポットを確認した。シリカカラムクロマトグラフィーにより分離精製することで、化合物2b(649mg)を収率92%で得た。
化合物1a1.29g(2.3mmol)と、パラ−ヨウ化ベンズアルデヒド0.54g(2.3mmol)と、を60mlのCFに加え、撹拌しながら50%KOH水溶液を20ml滴下した。滴下終了後、室温で0.5時間撹拌し、さらに2時間還流した。反応終了後、CFで抽出して塩水で洗浄し、溶媒を減圧留去した。ヘキサンを展開溶媒として用いたTLCにより、Rf値が0.75及び0.61に新たなスポットを確認した。シリカカラムクロマトグラフィーにより分離精製することで、化合物2c(0.63g)を収率63%で得た。
化合物2a500mg(1.15mmol)と、エチニルベンゼン354mg(3.45mmol)と、を20mlのトリエチルアミン(以下、TEAと称することがある)に加えた。ヨウ化銅(I)40mg(0.103mmol)と、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム59mg(0.05mmol)と、を加え、5分間撹拌した後、24時間還流した。ヘキサンを展開溶媒として用いたTLCにより、Rf値が0.20付近に新たなスポットを確認した。室温まで放冷後、純水及び飽和食塩水で洗浄した。ヘキサン:CF(10:1,v/v)の展開溶媒を用いてシリカゲルカラムグラフィーにより分離精製することで、化合物3a(387mg)を収率88%で得た。
化合物3a300mgを500mlのベンゼンに溶解させ、ヨウ素(I2)約50mgを加え、マイクロ光リアクターで反応させた。チオ硫酸ナトリウム水溶液で1回、純水で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。ヘキサン:CF(3:1,v/v)を展開溶媒として用いたTLCにより、Rf値が0.4に新たなスポットを確認した。エタノールを用いて再結晶させることにより精製し、112mgの生成物を得た。生成物について、NMR測定を行い下記の結果を得た。
1H−NMR δ(ppm):7.36−7.42(7H,m),7.61−7.63(2H,m),7.65−7.68(2H,m),7.75(1H, dd,J=8.13,1.5Hz),7.83(1H,d,J=9.2Hz),7.87−7.90(2H,m),8.42(1H,d,J=8.9Hz),8.70(1H,d,J=8.5Hz),8.88(1H,s).
以上の測定結果によって、フェナントレンの1位と6位にフェニルエチニル基を有するフェナセン化合物である化合物A−1を収率37%で得た。
化合物2b0.92g(2.1mmol)と、エチニルベンゼン460mg(1.5mmol)と、をTEA20mlに加えた。ヨウ化銅(I)の40mg(0.2mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム100mg(0.1mmol)を加え、5分間撹拌した後、24時間還流した。ヘキサンを展開溶媒として用いたTLCにより、Rf値が0.314に新たなスポットを確認した。室温まで放冷後、純水及び飽和食塩水で洗浄した。ヘキサン:CF(10:1,v/v)の展開溶媒を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製することで、化合物3b(700mg)を収率86%で得た。
化合物3b300mgを500mlのベンゼンに溶解させ、ヨウ素(I2)約50mgを加え、マイクロ光リアクターで反応させた。チオ硫酸ナトリウム水溶液で1回、純水で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。ヘキサン:CF(5:1,v/v)を展開溶媒として用いたTLC上により、Rf値が0.5に新たなスポットを確認した。溶媒留去後、ヘキサンを用いて再結晶させることにより精製し、38mgの生成物を得た。生成物について、NMR測定を行い下記の結果を得た。
1H−NMR δ(ppm):7.36−7.43(6H,m),7.63−7.69(6H,m),7.89(2H,d,J=7.10Hz),8.53(2H,s),8.70(2H,d,J=8.47Hz).
以上の測定結果によって、フェナントレンの1位と8位にアルキニル基を有するフェナセン化合物である化合物A−2を収率13%で得た。
化合物2c649mg(1.5mmol)と、エチニルベンゼン460mg(1.5mmol)と、をTEA20mlに加えた。ヨウ化銅(I)の20mg(0.1mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム59mg(0.05mmol)と、を加え、5分間撹拌した後、24時間還流した。ヘキサンを展開溶媒として用いたTLCにより、Rf値が0.20に新たなスポットを確認した。室温まで放冷後、純水及び飽和食塩水で洗浄した。ヘキサン:CF(10:1,v/v)の展開溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製することで、化合物3c(530mg)を収率93%で得た。
化合物3c300mgを500mlのベンゼンに溶解させ、ヨウ素(I2)約50mgを加え、マイクロ光リアクターで反応させた。チオ硫酸ナトリウム水溶液で1回、純水で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。ヘキサン:CF(10:1,v/v)を展開溶媒として用いたTLCにより、Rf値が0.35に新たなスポットを確認した。エタノールを用いて再結晶させることにより精製し、179mgの生成物を得た。生成物について、NMR測定を行い下記の結果を得た。
1H−NMR δ(ppm):7.42(2H,m),7.53(4H,m),7.79(6H,m),7.85(1H,d,J=1.83Hz),7.87(1H,d,J=1.8Hz),7.98(2H,d,J=8.0Hz),8.94(2H,d,J=1.6Hz).
以上の測定結果によって、フェナントレンの3位と6位にアルキニル基を有するフェナセン化合物である化合物A−3を収率26%で得た。
本発明のフェナセン化合物である化合物A−4及び化合物A−5は、まず、脱離基を有する芳香族化合物同士のウィッティッヒ反応によって、一つのハロゲン基を有するエテン誘導体(スティルベン誘導体)を得た後、フェニルエチニル基を導入し、さらに光縮環反応させることによって合成した。詳細を以下に示す。
ベンズアルデヒド(57mg、0.5mmol)と、化合物1b(0.30g、0.5mmol)と、を20mlのCFに加え、撹拌しながら50%KOH水溶液を10ml滴下した。滴下終了後、室温で0.5時間撹拌し、さらに2時間還流した。反応終了後、CFで抽出して飽和食塩水で洗浄し、溶媒を減圧留去した。ヘキサンの展開溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製することで、化合物2d(160mg)を収率96%で得た。
化合物2d(160mg、0.5mmol)と、エチニルベンゼン(100mg、1.5mmol)と、をTEA20mlに加えた。ヨウ化銅(I)9mgと、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムの28mgと、を加え、5分間撹拌した後、12時間還流した。室温まで放冷後、チオ硫酸ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄した。ヘキサン:酢酸エチル(10:1,v/v)の展開溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製することで、化合物3d(124mg)を収率90%で得た。
化合物3d124mgを200mlのベンゼンに溶解させ、ヨウ素(I2)約10mgを加え、マイクロ光リアクターで反応させた。チオ硫酸ナトリウム水溶液で1回、純水で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。ヘキサン:CF(10:1,v/v)の展開溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離後、ヘキサンを用いて再結晶させることにより精製し、10mgの生成物を得た。生成物について、NMR測定を行い下記の結果を得た。
1H−NMR δ(ppm):7.38−7.41(3H,m),7.63−7.68(5H,m),7.85(2H,d,J=6.3Hz),7.93(1H,d,J=7.79Hz),8.41(1H,d,J=9.16Hz),8.70(2H,d,J=8.70Hz).
以上の測定結果によって、フェナントレンの1位にフェニルエチニル基を有するフェナセン化合物である化合物A−4を収率8%で得た。
ベンズアルデヒド(235mg、2.1mmol)と、化合物1a(1.2g、2.1mmol)と、を40mlのCFに加え、撹拌しながら50%KOH水溶液を20ml滴下した。滴下終了後、室温で0.5時間撹拌し、さらに2時間還流した。反応終了後、CFで抽出して飽和食塩水で洗浄し、溶媒を減圧留去した。ヘキサンの展開溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製することで、化合物2e(546mg)を収率84%で得た。
化合物2e(546mg,1.8mmol)と、エチニルベンゼン(273mg,2.7mmol)と、をTEA20mlに加えた。ヨウ化銅(I)30mgと、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム100mgと、を加え、5分間撹拌した後、12時間還流した。室温まで放冷後、チオ硫酸ナトリウム水溶液、純水及び飽和食塩水で洗浄した。ヘキサン:CF(10:1,v/v)の展開溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製することで、化合物3e(444mg)を収率89%で得た。
化合物3e444mgを500mlのベンゼンに溶解させ、ヨウ素(I2)約50mgを加え、マイクロ光リアクターで反応させた。チオ硫酸ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。溶媒留去後、ヘキサンを用いて再結晶させることにより精製し、20mgの生成物を得た。生成物について、NMR測定を行い下記の結果を得た。
1H−NMR δ(ppm):7.50−7.54(4H,m),7.69(1H,dd,J=8.36,1.5Hz),8.15−8.20(4H,m),8.49(1H,d,J=8.47Hz),8.83(1H,d,J=7.3Hz),8.95(1H,d,J=7.8Hz),9.30(1H,d,J=8.7Hz),9.43(1H,s).
以上の測定結果によって、フェナントレンの3位にフェニルエチニル基を有するフェナセン化合物である化合物A−5を収率5%で得た。
本発明のフェナセン化合物である化合物B−1及び化合物B−2は、まず、上記で得られたハロゲン化したエテン誘導体(スティルベン誘導体)に、トリメチルシリルエチニル基を導入し、さらに光縮環反応させることによって合成した。詳細を以下に示す。なお、トリメチルシリルをTMSと称することがある。
<化合物4aの合成>
化合物2a440mg(1.0mmol)と、トリメチルシリルアセチレン300mg(3.1mmol)と、をTEA20mlに加えた。ヨウ化銅(I)20mg(0.103mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム59mg(0.05mmol)を加え、5分間撹拌した後、24時間還流した。ヘキサンを展開溶媒として用いたTLCにより、Rf値が0.27付近に新たなスポットを確認した。室温まで放冷後、純水及び飽和食塩水で洗浄した。ヘキサン:CF(10:1,v/v)の展開溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製することで、化合物4a(283mg)を収率72%で得た。
化合物4a283mgを、500mlのシクロヘキサンに溶解させ、ヨウ素(I2)約50mgを加え、マイクロ光リアクターで反応させた。チオ硫酸ナトリウム水溶液で1回、純水で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。ヘキサン:CF(10:1,v/v)を展開溶媒として用いたTLCにより、Rf値が0.35付近に新たなスポットを確認した。エタノールを用いて再結晶させることにより精製し、97mgの生成物を得た。生成物について、NMR測定を行い下記の結果を得た。
1H−NMR δ(ppm):0.317(18H,d,J=7.4Hz),7.58(1H,t,J=7.45Hz),7.66(1H,dd,J=8.13,1.5Hz),7.77−7.83(3H,m),8.30(1H,d,J=8.93Hz),8.65(1H,d,J=8.24Hz),8.79(1H,s).
以上の測定結果によって、フェナントレンの1位と6位にトリメチルシリルエチニル基を有するフェナセン化合物である化合物B−1を収率34%で得た。
化合物2b220mg(0.65mmol)と、トリメチルシリルアセチレン150mg(1.5mmol)と、をTEA20mlに加えた。ヨウ化銅(I)10mg(0.15mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム30mg(0.026mmol)を加え、5分間撹拌した後、12時間、90℃で還流した。ヘキサンを展開溶媒として用いたTLCにより、Rf値が0.33付近に新たなスポットを確認した。室温まで放冷後、チオ硫酸ナトリウム水溶液、純水及び飽和食塩水で洗浄した。ヘキサン:CF(10:1,v/v)の展開溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製することで、化合物4b(135mg)を収率71%で得た。
化合物4b283mgを、500mlのシクロヘキサンに溶解させ、ヨウ素(I2)約50mgを加え、マイクロ光リアクターで反応させた。チオ硫酸ナトリウム水溶液で1回、純水で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。ヘキサン:CF(10:1,v/v)を展開溶媒として用いたTLCにより、Rf値が0.35付近に新たなスポットを確認した。エタノールを用いて再結晶させることにより精製し、97mgの生成物を得た。生成物について、NMR測定を行い下記の結果を得た。
1H−NMR δ(ppm):0.317(18H,d,J=7.4Hz),7.58(1H,t,J=7.45Hz),7.66(1H,dd,J=8.13,1.5Hz),7.77−7.83(3H,m),8.30(1H,d,J=8.93Hz)8.65(1H,d,J=8.24Hz),8.79(1H,s).
以上の測定結果によって、フェナントレンの1位と8位にトリメチルシリルエチニル基を有するフェナセン化合物である化合物B−2を収率34%で得た。
本発明のフェナセン化合物である化合物B−3は、上記で得られた一つハロゲン基を有するエテン誘導体(スティルベン誘導体)に、トリメチルシリルエチニル基を導入し、さらに光縮環反応させることによって合成した。詳細を以下に示す。
化合物2d(745mg、2.4mmol)と、エチニルトリメチルシラン(300mg,3mmol)と、をTEA20mlに加えた。ヨウ化銅(I)9mg、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム28mgを加え、5分間撹拌した後、12時間還流した。ヘキサンを展開溶媒として用いたTLCにより、Rf値が0.25付近に新たなスポットを確認した。室温まで放冷後、チオ硫酸ナトリウム水溶液、純水及び飽和食塩水で洗浄した。ヘキサン:CF(10:1、v/v)の展開溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製することで、化合物5a(550mg)を収率87%で得た。
化合物5a400mgを、500mlのベンゼンに溶解させ、ヨウ素(I2)約10mgを加え、マイクロ光リアクターで反応させた。チオ硫酸ナトリウム水溶液で1回、純水で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。ヘキサン:CF(10:1、v/v)の展開溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製後、ヘキサンを用いて再結晶させることにより精製し、90mgの生成物を得た。生成物について、NMR測定を行い下記の結果を得た。
1H−NMR δ:0.45(9H,t),7.57−7.69(3H,m), 7.86−7.89(2H,m),7.94(1H,d,J=8.24Hz),8.40(1H,d,J=8.93Hz),8.67(2H,dd,J=8.70,2.98Hz).
以上の測定結果によって、フェナントレンの1位にトリメチルシリルエチニル基を有するフェナセン化合物である化合物B−3を収率23%で得た。
比較化合物として、置換基が導入されていないフェナセンであるフェナントレン(コダック社製)をそのまま用いた。
上記にて調製した化合物のそれぞれを含む各溶液(シクロヘキサン及びアセトニトリル)に対する蛍光の光物理特性(蛍光収率、蛍光寿命及び速度定数)を測定した。なお、表1にあるように、上記のそれぞれの化合物を含む溶液を、実施例1〜8、比較例1とした。
(蛍光収率の測定)
絶対PL光量子収率測定装置(C9920−02、浜松ホトニクス株式会社製)を用いて、シクロヘキサン、クロロホルム及びアセトニトリルの各溶媒中における化合物A−1〜A−5、化合物B−1〜B−3及び比較化合物、の300nmより長波長にある吸光度が最大の吸収極大波長で励起を行った際の最大励起波長(λabs/nm)、モル吸光定数、最大蛍光波長及び蛍光収率(Φf)を測定した。
また、図1に、シクロヘキサン中における化合物A−1〜A−3の励起スペクトル及び蛍光スペクトルを示し、図2に化合物B−1及び化合物B−2の励起スペクトル及び蛍光スペクトルを示す。また、図3及び図4に、シクロヘキサン(CH)、クロロホルム(CF)及びアセトニトリル(ACN)の各溶媒中における化合物A−4及び化合物A−5における励起スペクトル及び蛍光スペクトルをそれぞれ示す。図1〜図4中、励起スペクトルを実線で示し、蛍光スペクトルを破線でそれぞれ示す。
単一光子相関測定装置(TAU System、浜松ホトニクス株式会社製)を用いて、シクロヘキサン、クロロホルム中及びアセトニトリルの各溶媒中における上記化合物の蛍光寿命(τf)を測定し、上記で得られた蛍光収率(Φf)と蛍光寿命(τf)との関係から、放射過程における速度定数(kf)を算出した。蛍光収率、すなわち蛍光量子収率(Φf)とは、物質が吸収した光子のうち、蛍光として放出される光子の割合を表す。このため、蛍光収率が高いほど発光効率が良く、発光強度が強いことを示す。
また、蛍光寿命(τf)の値は分子固有の値を有し、放射過程における速度定数(kf)の値は蛍光収率(Φf)を蛍光寿命(τf)で除した値である。
また、化合物A−1〜A−5、化合物B−1〜B−3及び比較化合物1のシクロヘキサン(CH)、クロロホルム(CF)及びアセトニトリル(ACN)の各溶媒中における蛍光収率(Φf)、蛍光寿命(τf)及び速度定数(kf)の値を、図5に示す。図5(1)は化合物A−1〜A−5及び比較化合物1(Phe)の上記溶媒中での蛍光物性を示し、図5(2)は化合物B−1〜B−3及び比較化合物1(Phe)の上記溶媒中での蛍光の光物理特性を示す。図5中の括弧内の数字は、各フェナントレン化合物におけるフェニルエチニル基又はTMSエチニル基のフェナントレンへの結合位置を示すし、Pheは比較化合物であるフェナントレンを示す。なお、表1中のCHはシクロヘキサンを表し、CFはクロロホルムを表し、ACNはアセトニトリルを表す。
また、実施例1〜4及び7は、シクロヘキサン、アセトニトリル及びクロロホルムの各溶媒中のいずれでも同じように高い蛍光収率を有することから、化合物A−1〜化合物A−4及び化合物B−2は、外部環境に影響されにくく、かつ高い蛍光収率を有することが示された。
また、図示しないが、化合物B−3は380nm付近に強い蛍光を示すことがわかった。従って、図1〜4の結果を参照すると、表1中の実施例に用いられているいずれの化合物も、380nm付近に強い蛍光が得られたことから、これらの化合物は、青色蛍光を有する有機発光素子として応用可能であることが示された。
このように、本発明のフェナセン化合物は、高い蛍光収率を有し、有機発光素子として応用可能であることが示された。
Claims (10)
- 下記一般式(1)で表されるフェナセン化合物。
(一般式(1)中、Aは、下記一般式(2)で表される基を表し、ベンゼン環に結合する水素原子のうちの一つは、一般式(2)で表される基で置換されている。下記一般式(2)で表される基で置換されていない水素原子は炭素数1〜18のアルキル基で置換されていてもよい。Z1及びZ2は、それぞれ独立に、縮環した0個〜2個のベンゼン環であることを示し、Z1及びZ2におけるベンゼン環の総数は0個〜3個である。)
(一般式(2)中、*は、前記一般式(1)中のベンゼン環との結合位置を示す。Xは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数4〜10のアリール基又は下記一般式(3)で表される基を示す。nは、1〜2の整数を示す。)
(一般式(3)中、**は、前記一般式(2)中の三重結合との結合位置を示す。Y1、Y2及びY3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数4〜10のアリール基を表し、Y1、Y2及びY3から選ばれる少なくとも1つは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数4〜10のアリール基である。) - 下記一般式(4)で表されるフェナセン化合物。
(一般式(4)中、R1、R3、R6及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は下記一般式(2)で表される基を表し、R1、R3、R6及びR8から選ばれる2つは一般式(2)で表される基である。R2、R4、R5、R7、R9及びR10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数4〜12のアルキル基を表す。)
(一般式(2)中、*は、前記一般式(4)中のベンゼン環との結合位置を示す。Xは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜12のアリール基又は下記一般式(3)で表される基を示す。nは、1〜2の整数を示す。)
(一般式(3)中、**は、前記一般式(2)中の三重結合との結合位置を示す。Y1、Y2及びY3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数4〜10のアリール基を表し、Y1、Y2及びY3から選ばれる少なくとも1つは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数4〜10のアリール基である。) - 下記一般式(5)で表されるフェナセン化合物。
(一般式(5)中、R11、R13、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は下記一般式(2)で表される基を表し、R11、R13、R16、R17、R18及びR19から選ばれる2つは一般式(2)で表される基である。R12、R14、R15、R20、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
(一般式(2)中、*は、前記一般式(5)中のベンゼン環との結合位置を示す。Xは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜10のアリール基又は下記一般式(3)で表される基を示す。nは、1〜2の整数を示す。)
(一般式(3)中、**は、前記一般式(2)中の三重結合との結合位置を示す。Y1、Y2及びY3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数4〜10のアリール基を表し、Y1、Y2及びY3から選ばれる少なくとも1つは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数4〜10のアリール基である。) - 下記一般式(6)で表されるフェナセン化合物。
(一般式(6)中、R24、R25、R26、R27、R30、R31、R32及びR33は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は下記一般式(2)で表される基を表し、R24、R25、R26、R27、R30、R31、R32及びR33から選ばれる2つは一般式(2)で表される基である。R23、R28、R29、R34、R35及びR36は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。)
(一般式(2)中、*は、前記一般式(6)中のベンゼン環との結合位置を示す。Xは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数4〜10のアリール基又は下記一般式(3)で表される基を示す。nは、1〜2の整数を示す。)
(一般式(3)中、**は、前記一般式(2)中の三重結合との結合位置を示す。Y1、Y2及びY3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数4〜10のアリール基を表し、Y1、Y2及びY3から選ばれる少なくとも1つは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数4〜10のアリール基である。) - 下記一般式(7)で表されるフェナセン化合物。
(一般式(7)中、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50、R51及びR52は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は下記一般式(2)で表される基を表し、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50、R51及びR52から選ばれる2つは一般式(2)で表される基である。)
(一般式(2)中、*は、前記一般式(7)中のベンゼン環との結合位置を示す。Xは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数4〜10のアリール基又は下記一般式(3)で表される基を示す。nは、1〜2の整数を示す。)
(一般式(3)中、**は、前記一般式(2)中の三重結合との結合位置を示す。Y1、Y2及びY3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数4〜10のアリール基を表し、Y1、Y2及びY3から選ばれる少なくとも1つは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数4〜10のアリール基である。) - 前記一般式(2)中、nは1である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のフェナセン化合物。
- 光縮環反応によって下記一般式(8)で表される化合物に、縮環したベンゼン環を形成し、下記一般式(1)で表される化合物を生成する工程を含むフェナセン化合物の製造方法。
(一般式(8)中、Aは、下記一般式(2)で表される基を表し、Ha及びHbで示される水素原子以外であって、ベンゼン環及びエテン基に結合する水素原子のうちの少なくとも1つは一般式(2)で表される基で置換され、一般式(2)で表される基で置換されていない水素原子は炭素数1〜18のアルキル基で置換されていてもよい。Z3及びZ4は、それぞれ独立に、縮環した0個〜2個のベンゼン環であることを示し、Z3及びZ4におけるベンゼン環の総数は0個〜3個である。)
(一般式(2)中、*は、前記一般式(8)中のベンゼン環との結合位置を示す。Xは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜10のアリール基又は下記一般式(3)で表される基を示す。nは、1〜2の整数を示す。)
(一般式(3)中、**は、前記一般式(2)中の三重結合との結合位置を示す。Y1、Y2及びY3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数4〜10のアリール基を表し、Y1、Y2及びY3から選ばれる少なくとも1つは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数4〜10のアリール基である。)
(一般式(1)中、Aは、前記一般式(2)で表される基を表し、ベンゼン環に結合する水素原子のうちの少なくとも一つは、一般式(2)で表される基で置換されている。前記一般式(2)で表される基で置換されていない水素原子は炭素数1〜18のアルキル基で置換されていてもよい。Z1及びZ2は、それぞれ独立に、縮環した0個〜2個のベンゼン環であることを示し、Z1及びZ2におけるベンゼン環の総数は0個〜3個である。) - 前記工程の前に、下記一般式(9)で表される化合物をアルキニル化することにより、前記一般式(8)で表される化合物を合成するアルキニル化工程をさらに含む請求項7に記載のフェナセン化合物の製造方法。
(一般式(9)中、Lは、脱離基を表し、Ha及びHbで示される水素原子以外であって、ベンゼン環及びエテン基に結合する水素原子のうちの少なくとも1つは、脱離基で置換されている。脱離基で置換されていない水素原子は炭素数1〜18のアルキル基で置換されていてもよい。Z5及びZ6は、それぞれ独立して、縮環した0個〜2個のベンゼン環であることを示し、Z5及びZ6におけるベンゼン環の総数は0個〜3個である。) - 前記脱離基はハロゲン基である請求項8に記載のフェナセン化合物の製造方法。
- 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のフェナセン化合物を含む有機発光素子。
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