(画像形成装置)
以下、本発明の給紙装置を備える画像形成装置として、複数の感光体が並行配設されたタンデム型のカラーレーザープリンタ(以下、単に「プリンタ500」という)の一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。その後、図4A〜図7Dに基づいて当該プリンタ500に使用する給紙装置の詳細について説明する。
なお、本発明はカラーレーザープリンタ以外の複写機、ファクシミリ、あるいは複写機、ファクシミリ、プリンタのいずれか2つ又は3つの機能を備えた複合機等の画像形成装置にも適用可能である。さらには画像形成装置を有しない画像読取装置にも適用可能である。
図1は、本実施形態に係るプリンタ500の概略構成図である。プリンタ500は画像形成部200、及び、これを載せる給紙部300などを備えている。
プリンタ500の装置の内部には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色の画像を形成するための画像形成部として、4つの作像部1(Y,M,C,Bk)を備えている。作像部1(Y,M,C,Bk)はそれぞれドラム状の感光体2(Y,M,C,Bk)を備え、4個の感光体2(Y,M,C,Bk)は、画像形成部200内の図中左右方向に等間隔で離間させて並列に配設されている。各感光体2(Y,M,C,Bk)はプリンタ500の動作時に、不図示の駆動源から駆動が伝達されることにより、矢印方向に回転する。
各感光体2(Y,M,C,Bk)の周囲には、現像装置など、電子写真方式の作像に必要な部材、装置が配備され、4つの作像部1(Y,M,C,Bk)を構成されている。本実施形態の説明では、作像する画像のトナー色に対応させるよう、便宜上各作像部1の構成部材を示す番号の後ろに、その色を表わすY(イエロー)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Bk(ブラック)を添え字として附すことにする。特に一般的説明では、これらの添え字を省略する場合もある。
プリンタ500では、用いるトナーの色が異なる点以外は、4つの作像部1(Y,M,C,Bk)は、いずれもほぼ同じ構成となっている。
図2は、4つの作像部1(Y,M,C,Bk)のうちのイエロー用の作像部1Yの概略説明図である。
図2に示すように、作像部1Yには、感光体2Yの周囲に静電写真プロセスに従い帯電装置4Y、現像装置5Y、クリーニング装置3Yなど作像部材が順に配設されている。帯電装置4Yは感光体2Yと対向する帯電ローラ4aYを備え、現像装置5Yは、現像ローラ5aY、現像ブレード5bY、スクリュー5cY等を有する。また、クリーニング装置3Yは、クリーニングブラシ3aY、クリーニングブレード3bY、回収スクリュー3cY等を備える。
感光体2Yとして、例えば直径30〜120[mm]程度のアルミニウム円筒表面に光導電性物質である有機半導体層を設けた層構造よりなるものを用いることができる。なお、感光体としてはベルト状のものを用いることも可能である。
図1に示すように、感光体2(Y,C,M,Bk)の下方には各色毎の画像データ対応のレーザ光8を、各帯電装置4で一様に帯電済みの各感光体2の表面に走査し、静電潜像を形成するための潜像形成手段としての露光装置80が設けられている。各帯電装置4と各現像装置5との間には、この露光装置80により照射するレーザ光8が感光体2に向けて入り込むように、細長いスペースが感光体2の回転軸の方向に確保されている。
図1に示す露光装置80は、レーザ光源、ポリゴンミラー等を用いたレーザスキャン方式の露光装置で、不図示の4個の半導体レーザから、形成すべき画像データに応じて変調したレーザ光8(Y,C,M,Bk)を発する。露光装置80は金属あるいは樹脂製の筐体により、光学部品、制御用部品を収納し、上面の出射口には、透光性の防塵部材を備えている。図1に示すプリンタ500では1個の筐体で構成されているが、複数の露光装置を、各作像部に個別に設けることもできる。また、レーザ光を採用する露光装置のほかに、公知のLEDアレイと結像手段とを組合せた露光装置も採用できる。
イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色トナーは、各色を扱う現像装置5(Y,C,M,Bk)で消費されると、不図示のトナー検知手段により検知される。そして、プリンタ500の上部に備える各色のトナーを収納している4つのトナーカートリッジ40(Y,C,M,Bk)から、不図示のトナー補給手段により、各現像装置5に供給される。
各トナーカートリッジ40の外殻は、樹脂や紙等からなる容器で、一部に排出口を備え、プリンタ500の装着部400に容易に着脱できる。装着したとき、この排出口がプリンタ500本体に設けた個別のトナー補給手段と結合する。また、プリンタ500では、各色のトナーカートリッジ40が誤って装着されて別の色を扱う現像装置にトナーが補給されないよう、装着部400とトナーカートリッジ40の形状が対をなすようにするなど、誤装着防止手段が設けてある。
現像装置5には、図2のイエロー用の作像部1Yで代表的に示すように、トナーとキャリヤの攪拌、搬送用のスクリュー5cYが2本備えてある。現像装置5Yがプリンタ500に装着されているとき、上述のトナー補給手段の一端が、図2で左側のスクリュー5cYの上部に接続される。スクリュー5cYによりトナーは、矢印方向に回転する現像ローラ5aYに供給されるが、現像ブレード5bYにより、現像ローラ5aY表面のトナー層の厚みが所定の厚みになるよう規制される。
現像ローラ5aYは、ステンレスやアルミニュウム製の円筒で、回転可能にかつ感光体2Yとの距離が正規に確保されるように現像装置5Yのフレームに支持され、内部には所定の磁力線が構成されるようにマグネットが備えてある。レーザ光8により各感光体2の表面に形成された色毎の静電潜像は、所定の色のトナーを扱う現像装置5により現像され、顕像となる。
感光体2(Y,C,M,Bk)の上部には、中間転写ユニット6が配備されている。複数のローラ6b,6c,6d、6eに掛け渡された像担持体としての中間転写ベルト6aを備え、不図示の駆動源によって駆動が伝達されるローラ6bが回転することにより中間転写ベルト6aが矢印方向に走行する。この中間転写ベルト6aは無端状で、現像装置5との対向部を通過したあとの各感光体2の表面が接触するように掛け渡されている。ベルト内周部には各感光体2に対向させて4つの一次転写ローラ7(Y,C,M,K)が設けられている。
中間転写ベルト6aの外周部には、クリーニング対向ローラ6eに対向する位置にベルトクリーニング装置6hが設けられている。このベルトクリーニング装置6hは中間転写ベルト6aの表面に残留する不要なトナーや、紙粉などの異物を拭い去る。このベルトクリーニング装置6hに対向するクリーニング対向ローラ6eは、中間転写ベルト6aにテンションを与える機構を備える。常に適切なベルトテンションを確保するため移動するが、クリーニング対向ローラ6eの中間転写ベルト6aを挟んで対向するベルトクリーニング装置6hも連動して移動が可能となっている。
この中間転写ベルト6aとしては、例えば、基体の厚さが50〜600[μm]の樹脂フィルム或いはゴムを基体とするベルトが好適である。当該ベルトは、各感光体2が担持するトナー像を、各一次転写ローラ7に印加するバイアスにより静電的にベルト表面に転写を可能とする抵抗値を有する。なおプリンタ500が備える中間転写ベルト6aに関連する各部材は、中間転写ベルト6aと一体的に支持され中間転写ユニット6として構成してあり、プリンタ500に対して着脱が可能となっている。
中間転写ベルト一例として、中間転写ベルト6aは、ポリアミドにカーボンを分散し、その体積抵抗値は、106〜1012[Ωcm]程度に抵抗が調整されたものである。また、中間転写ベルト6aはベルトの走行を安定させるための不図示のベルト寄り止めリブを、ベルト片側あるいは両側端部に設けてある。
一次転写ローラの一例として、プリンタ500の一次転写ローラ7は芯金たる金属ローラの表面に、導電性ゴム材料を被覆したもので、芯金部に、不図示の電源からバイアスが印加される。導電性ゴム材料はウレタンゴムにカーボンが分散され、体積抵抗105[Ωcm]程度に抵抗が調整されている。なお、一次転写ローラとしては、ゴム層を有さない金属ローラも採用が可能である。
中間転写ベルト6aの外周で、支持ローラとしての二次転写対向ローラ6bと中間転写ベルト6aを挟んで対向する位置には、二次転写ローラ14aが設けてある。二次転写ローラ14aは芯金たる金属ローラの表面に、導電性ゴムを被覆したもので、芯金部に、電源14bからバイアスが印加される。上記導電性ゴムにはカーボンが分散されており、体積抵抗は107[Ωcm]程度に抵抗が調整されたものである。
二次転写ローラ14aは二次転写対向ローラ6bと対向する位置で中間転写ベルト6aに当接し、二次転写部としての二次転写ニップを形成している。二次転写ニップでは、中間転写ベルト6aと二次転写ローラ14aの間に記録媒体である転写紙S(用紙)を通過させながら、バイアスを印加することで中間転写ベルト6aが担持するトナー画像が転写紙Sに静電的に転写される。
露光装置80の下方の給紙部300には複数段、例えば2段の給紙カセット9A,9Bが引き出し可能に配設されている。これらの給紙カセット内に収納された転写紙Sは、対応する呼び出しローラ5410A,10Bの回転により選択的に送り出され、分離ローラ11A,11Bと、搬送ローラ対12A,12Bにより給紙路P1に送られる。
給紙路P1には、二次転写部へ転写紙Sを送り出す給送タイミングをとるため、一対ローラからなるタイミングローラ対13が設けてある。転写紙Sは、タイミングローラ対13から、中間転写ベルト6aと二次転写ローラ14aで構成される二次転写ニップに向けて搬送される。
プリンタ500は図1中の右側に手差し給紙部としての手差しトレイ25を備えており、この手差しトレイ25は、使用しないときに回動させてプリンタ500本体の一部であるの側方フレームFに収納が可能である。
手差しトレイ25に収納された最上位の転写紙Sは、手差し呼び出しローラ26により給紙される。そして確実に一枚だけ搬送されるように分離手段としてのリバースローラ27で分離され、搬送ローラ対である22、24により給紙路P1を経てタイミングローラ対13に送られる。
二次転写ニップの上方には加熱手段を有する定着装置15が設けられている。プリンタ500が備える定着装置15ではヒータを内蔵した定着ローラ15aと、この定着ローラ15aに対し加圧しながら当接する加圧ローラ15bとから構成されている。定着装置としては、このような構成に限らず、ベルトを採用したタイプ、また加熱の方式もIHを採用したものなど、適宜採用できる。
切換ガイド63は回動可能で、図示の状態とすることで、定着の終了した転写紙Sが排紙路を形成するガイド部材61aに案内される。ガイド部材61aに案内された転写紙Sは、排紙ローラ62の回転によって図1中矢印Dで示すように排紙され、画像プリンタ500の上部の排紙トレイ60上にスタックさせる。
図1のプリンタ500は、転写紙Sの両面に自動的に画像を形成することができるよう、転写紙Sの反転、再給紙のための再給紙路やローラを備えた両面ユニットを有している。具体的には、側方フレームFの内部にスイッチバック路P5と再給紙路P6とを備え、給紙路P1へ片面に画像形成を終えた転写紙Sを搬送させるよう、切換ガイド63、第二切換ガイドG2及び第三切換ガイドG3を備えている。
また、不図示の駆動源に接続されて駆動源を制御することにより反転可能な反転ローラ18a及び反転ローラ22等を備えている。反転ローラ22には、ローラ23と24が当接している。この反転ローラ22が時計方向に回転するとき、ローラ24と協働して手差しトレイ25からの用紙搬送を行う。また反時計方向に回転するとき、ローラ23と協働して再給紙路P6内の転写紙Sをタイミングローラ対13の方向に再給紙させる。
切換ガイド63が図示の状態から時計方向に回動すると、定着の終了した転写紙Sは、ローラ対17により反転搬送路P4に案内され、第二切換ガイドG2を経て反転ローラ対18へと搬送され、一旦スイッチバック路P5に送られる。転写紙Sがスイッチバック路P5に送られた後、反転ローラ対18の反転ローラ18aが反時計方向に回転し、かつ第二切換ガイドG2が反時計方向に回動することで、転写紙Sはスイッチバック路P5から再給紙路P6へ送られる。再給紙路P6で、ローラ対15c、20及び14c、21により搬送される転写紙Sはさらにローラ対22、23に搬送され、タイミングローラ対13に到達する。
図1に示すプリンタ500では、給紙部300の下部に追加の給紙部である給紙装置50を備えている。図1に示す給紙装置50では2個の給紙カセット9C、9Dを備えているが、さらに個数を増やしたタイプのものも採用でき、用紙収納数を多くした給紙カセットを内蔵したタイプでもよい。
プリンタ500は、定着装置15の上方で、ローラ対17の搬送方向下流にある第三切換ガイドG3が、図1の状態から反時計方向に回動し、定着後の転写紙Sを案内し、排紙路P8に搬送させ、図示していない別の排紙装置に排出させることができる。この別の排紙装置としては、例えば数段の排紙トレイを有するビントレイである。
次に、プリンタ500で、転写紙Sの片面に画像を形成する片面印刷時の動作について説明する。
まず、露光装置80の作動により半導体レーザから出射されたイエロー用の画像データ対応のレーザ光8Yが、帯電ローラ4aYにより一様帯電された感光体2Yの表面に照射されることにより静電潜像が形成される。
この静電潜像は現像ローラ5aYによる現像処理を受けてイエロートナーで現像され、可視像となり、感光体2Yと同期して移動する中間転写ベルト6a表面に一次転写ローラ7Yによる転写作用を受けて一次転写される。このような潜像形成、現像、一次転写動作は他の感光体2(C,M,Bk)でもタイミングをとって順次同様に行われる。
この結果、中間転写ベルト6aの表面上には、イエローY、シアンC、マゼンタM、及びブラックBkの各色トナー画像が、順次重なり合った4色トナー画像として担持され、矢印の方向に表面移動する中間転写ベルト6aとともに搬送される。一方、中間転写ベルト6aを挟んで一次転写ローラ7と対向する位置を通過した感光体2の表面は、クリーニング装置3により、残存するトナーや異物がクリーニングされる。
中間転写ベルト6a上に形成された4色トナー画像は、中間転写ベルト6aと同期して搬送される転写紙S上に、二次転写ローラ14aによる転写作用を受けて転写される。そして、中間転写ベルト6a側ではその表面が、ベルトクリーニング装置6hによりクリーニングされ、次の作像・転写工程に備える。画像が転写された転写紙Sは、定着装置15による定着作用を受け、排紙ローラ62により排紙トレイ60に、画像面が下向き(フェースダウン)で排紙される。
次に、プリンタ500で、転写紙Sの両面に画像を形成する両面印刷時の動作について説明する。
上述した片面印刷時と同様の作用により、その片面に中間転写ベルト6aから画像を転写され、定着装置15を通過した転写紙Sを、切換ガイド63によりローラ対17へ向けて案内する。ローラ対17の搬送方向下流側に設けてある第三切換ガイドG3と反転搬送路P4を経て、図1の回動位置にある第二切換ガイドG2の上方に進む転写紙Sは、反転ローラ対18によってスイッチバック路P5へ搬送される。
このとき、反転ローラ18aは時計方向に回転駆動する。スイッチバック路P5内のローラ対19も正逆転が可能なローラ対であり、転写紙Sを一旦スイッチバック路P5に受け入れた後逆転させ、転写紙Sを逆送させる。ローラ対19及び反転ローラ対18の回転方向を逆転するときには、第二切換ガイドG2は、図1に示す姿勢から反時計方向に回動する。
そして、転写紙Sのスイッチバック路P5に入るまで後端であったほうを前端としてローラ対15c、20と14c、21により再給紙路P6内を搬送し、給紙路P1に向けて搬送し、タイミングローラ対13に到達させる。その後、タイミングローラ対13でタイミングをとって、片面に画像を有している転写紙Sを再度、二次転写ローラ14aと中間転写ベルト6aとが対向する二次転写ニップに向けて搬送し、中間転写ベルト6a上のトナー画像が転写紙Sの他面側に転写される。
転写紙Sの第二面に形成すべき画像は、転写紙Sが所定のところまで搬送されたとき、開始される作像工程により順次形成される。この場合の作像工程もまた前述の片面印刷時のフルカラートナー画像形成と同様であり、このフルカラートナー画像を中間転写ベルト6a上に担持させる。ただし、転写紙Sは搬送路で前後が反転されているため、最初に作像されたときに対し、用紙搬送方向で逆から作像されるよう、露光装置80から出射される画像データの作成が制御、実行される。
このようにして両面にフルカラートナー像が転写された転写紙Sは再度、定着装置15による定着処理を経て排紙ローラ62により排紙トレイ60上に排紙される。なお、プリンタ500では、両面作像の効率を上げるため、搬送路には同時に数枚の転写紙Sを搬送させることができる。また、転写紙Sの表、裏に形成すべき画像の形成タイミングは制御手段(不図示)により実行される。
また、プリンタ500では、感光体2上に形成されるトナー像の極性はマイナスであり、一次転写ローラ7にプラスの電荷を与えることで感光体2上のトナー像は中間転写ベルト6a表面に転写される。また、二次転写ローラ14aにプラスの電荷を与えることで中間転写ベルト6a表面のトナー像が、転写紙Sに転写される。
なお、これらの片面印刷、両面印刷動作に関して、フルカラー印刷を実行させる例で説明したが、ブラックによるモノクロ印刷時にあっては、使用されない感光体が存在する。使用されない感光体2(Y,M,C)及び現像装置5(Y,M,C)を稼動させないだけでなく、これらの使用されない感光体2(Y,M,C)と中間転写ベルト6aとを非接触に保つための機構を備えている。プリンタ500では、ローラ6dと一次転写ローラ7Y、7Cおよび7Mを支持する内部フレーム6fを、フレーム軸6gを中心に回動可能に支持している。
モノクロ印刷時には、内部フレーム6fを感光体2(Y,M,C)から遠ざかる方向(図1で時計方向)に回動させることにより、感光体2Kだけが中間転写ベルト6aと接触して、作像工程を実行することにより、ブラックトナーによるモノクロ画像を作成する。このように、モノクロ印刷時には使用しない作像部1(Y,M,C)の感光体2(Y,M,C)を中間転写ベルト6aから離間し、感光体2(Y,M,C)及び現像装置5(Y,M,C)を停止させることは、作像部1(Y,M,C)の寿命向上の点で有利である。
プリンタ500では、メンテナンスや部品交換等の必要性が生じた場合には、不図示の外装カバー等を開放し、メンテナンスをおこなう。このメンテナンスのときには、図1に示した作像部1を構成する各部材を一体的に支持してユニット化したプロセスカートリッジとして交換すると操作性がよい。
また、図1に示す作像部1をプロセスカートリッジとして構成したとき、プリンタ500への装着用のガイド部や把手を設けて着脱を容易なものとする。その他プロセスカートリッジの特性や稼動の状況を記憶する記憶装置(例えばICタグ)などを備えておくと、保守の指針となり、プロセスカートリッジの保守管理上の利便性が高まる。
さらに、中間転写ユニット6に関してメンテナンスや交換等をする場合、中間転写ベルト6aと各感光体2とを離間させ、プリンタ500本体に対して中間転写ユニット6を引出すように構成しても良い。
図3は、図1の状態のプリンタ500から側方フレームFを開放した状態の側方フレームF近傍の説明図である。側方フレームFは、両面ユニット30と2次転写ユニット14とを備えており、下方の回動軸Faを回動中心としてプリンタ500に対して回動可能であり、図1の状態から側方フレームFを回動させると、図3に示すように上方を開放可能な構造にしてある。
また、側方フレームFの上面には、被係合部材たる係合突起71が設けられている。この係合突起71は、2次転写ユニット14および両面ユニット30をプリンタ500に装着するべく、側方フレームFを閉じる方向に移動させる際、プリンタ500の上部に設けた引き込み装置70の係合部と係合する。側方フレームFの被係合部材たる係合突起71が引き込み装置70の係合部と係合すると、引き込み装置70が側方フレームFをプリンタ500側に引き込む。
引き込み装置70でフレームを引き込んでいくと、ストッパ部材31のガイド部31aが阻止部材32と当接する。そして、引き込み装置70の引き込み力でストッパ部材31が回動して阻止部材32を乗り越えて、側方フレームFが閉じ、2次転写ユニット14および両面ユニット30が装着位置に装着される。
側方フレームFの開放に先立ち、図示しないロックレバーの操作により、側方フレームFに設けられたストッパ部材31を回動させて、ストッパ部材31をプリンタ500側に設けられた阻止部材32から外し、ストッパ機能を解除して開放させる。図3に示すように、側方フレームFを開放することにより、複数の搬送路(P1,P2,P6)が開放できるため、これらの搬送路で発生したジャムの転写紙Sの処置が容易にできる。
転写後搬送路P2とスイッチバック路P5とを筺体の両面に形成した二次転写ユニット14は、ローラ23の中心を回動中心としており、側方フレームFを図3のように開放したとき、二次転写ローラ14aが中間転写ベルト6aから離れる。さらに、ローラ14cがローラ21と離れるように、二次転写ユニット14に回動習性を与えてある。この二次転写ユニット14は、内部に電源14bを備え、ケース外部は転写紙Sの搬送機能を有したユニットである。
定着装置15も搬送用ローラ15cと搬送用のガイド面を有しており、一部が再給紙路P6を構成している。この定着装置15は、図3の状態で、図の右方に引き出し可能に支持されている。従って定着装置15内部で発生した用紙ジャムの処理も容易にできる。
搬送用ローラ15cは、不図示のスプリングによりローラ20側に付勢されており、搬送用ローラ14cは、不図示のスプリングによりローラ21側に付勢されている。また、搬送ローラ対12A,12Bのプリンタ500側のローラは、不図示のスプリングにより搬送ローラ対12A,12Bの側方フレームF側のローラ12Aa、12Ba側に付勢されている。
その結果、側方フレームFが、図1の閉位置にあるとき、側方フレームFは、搬送用ローラ15c、搬送用ローラ14c、搬送ローラ対12A,12Bのプリンタ500側のローラにより開く方向に付勢される。その結果、ストッパ部材31のストッパ面31bと阻止部材32とが当接し、側方フレームFが位置決めされる。
(給紙装置−タイプ1)
以上、画像形成装置としてのプリンタ500について説明したが、次にこのプリンタ500に使用する給紙装置(タイプ1及びタイプ2)を図4A〜図7Dに基づいてさらに詳しく説明する。図4Aの給紙装置(タイプ1)と図4Bの給紙装置(タイプ2)は、図1の追加の給紙装置50として示しているが、その上に設けた給紙部300にも同様に適用可能である。
給紙装置50は、前述したようにFRR方式とRF方式の位置精度許容度等の設計的利点を崩すことなく、高寿命かつ低騒音で安定した給紙動作が得られるようにしてある。また、紙間摩擦バラツキの大きい紙種に対しても用紙に負担をかけることなく、給紙スタート時の紙間を最小限の距離に保つことによって紙間摩擦バラツキを低減し、高プリント生産性を達成可能にしてある。
また、給紙装置50は紙厚大の用紙で生じる搬送不具合を回避して高プリント生産性を安定した給紙搬送で実現可能にしてある。給紙装置50は以上の作用効果が得られるように、前述した従来の図9や図10の給紙装置の用紙積載部(用紙束P)の前端位置とフィードローラ55のフィードニップとの間(フィードニップの位置を含む)に、図4Aのように重送検知手段K4を配設している。重送検知手段K4の配設位置によって、図5A〜図5Cのように3つの給紙装置50の例を示す。
また、フィードローラ55とグリップローラ58の搬送速度に差をつけた給紙装置50の例を図5Dに示す。この図5Dの給紙装置50は搬送速度V1、V2の差(V2<V1)を除いて図5Aと同じである。なお、この搬送速度V1、V2の差を図5Bと図5Cの給紙装置50に適用することも可能である。以下、給紙装置50の詳細を説明する。
(給紙装置の構成−タイプ1)
給紙装置50は図4Aに示すように、上部が開放された箱状の給紙トレイ51を有し、この給紙トレイ51の内部に平らな底板53が配設されている。底板53はその一端部の支軸53aを中心として上下方向に揺動可能とされ、図示しない付勢手段によって上方に回動付勢されている。この給紙トレイ51の上方の前記支軸53aとは反対側に呼び出しローラ54が配設され、この呼び出しローラ54が底板53上に積層された用紙束Pの最上部の1枚の用紙に当接して回転することで用紙を1枚ずつ繰り出すようにしている。
呼び出しローラ54は図5Aのように、用紙束Pの前端位置から距離γだけ上流側に配置されている。これにより、呼び出しローラ54を連続的に駆動すると、先行紙P1の後端と次紙P2の前端を距離γで重なり合わせた状態で繰り出すことができるようになっている。呼び出しローラ54は独自の駆動源で駆動することも可能であるが、この実施形態では次に述べるフィードローラ55の駆動源でクラッチを介して駆動されるようにしている。
呼び出しローラ54の前方に分離給送部としてのフィードローラ55とセパレートローラ56が上下に対向した状態で配設されている。フィードローラ55の回転軸の位置は固定であるが、分離部材であるセパレートローラ56の回転軸はフィードローラ55側に移動可能に支持され、バネ56aによってフィードローラ55側に付勢されている。そしてフィードローラ55とセパレートローラ56の当接部分でいわゆる「フィードニップ」が形成され、このフィードニップに用紙が挟み込まれることによって用紙が一枚ずつ矢印方向に給送されるようになっている。
フィードローラ55は一方向クラッチを介して用紙の給送方向に回転駆動されるが、セパレートローラ56はトルクリミッタを介して給送方向とは逆方向に駆動可能とされている。このセパレートローラ56はフィードニップでの1枚挟持時はトルクリミッタが滑ることによってフィードローラ55に当接して従動回転するが、2枚以上挟持されると逆方向駆動により用紙の重送が防止されるようになっている。すなわち、フィードニップに2枚以上の用紙が挟持されると、最上紙一枚のみがフィードローラ55によって給送され、残りの用紙は用紙前端をセパレートローラ56に当接した状態で停止されるようになっている。
用紙積載部(用紙束P)の前端位置とフィードローラ55のフィードニップとの間には、図5Aに示すように重送検知手段K4が配設されている。この重送検知手段K4は光学式や超音波式が知られている。光学式は例えば特開2006−321215号公報に記載のように発光素子と受光素子を有し、両者の間に用紙が2枚以上侵入すると受光素子により検知される受光量に基づいて重送の有無を検知する。
超音波式は例えば特開2004−284806号公報に記載のように超音波を発振する発振器と超音波を受振する受振器を有し、受振器により受信される超音波の波形に基づいて重送の有無を検知する。この実施形態では光学式の重送検知手段K4として上側に発光素子K4aを配設し、下側に受光素子K4bを配設している。そして両者の間に用紙が2枚以上進入してきた場合に受光素子K4bにより検知される受光量に基づいて重送の有無を検知するようにしている。
重送検知手段K4は、図5Aのようにその光軸がフィードニップから距離βだけ上流側に離れて配設されている。この距離βは、呼び出しローラ54による繰り出し時の紙間を最小(先行紙P1の後端と次紙P2の前端との重なり長さを最大のγ)に設定しても、フィードニップに2枚以上の用紙が挟み込まれない距離に設定されている。すなわち次紙P2の前端が先行紙P1の後端と重合した状態ではフィードニップに到達しない距離に設定されている。
また、図5Bでは重送検知手段K4の光軸がフィードニップから距離ηだけ上流側に離して配設され、図5Cでは重送検知手段K4の光軸がフィードニップの位置に一致して配設されている。このように、重送検知手段K4の光軸の位置は、フィードニップの上流側に離間させる距離を変えて配設することが可能である。
そしてこのように上流側に離間させる距離が異なることに対応して、各給紙装置の制御フローチャートを図6A〜図6Cのように異ならせている。図5Aの給紙装置は図6Aのフローチャートで制御され、図5Bと図5Cの給紙装置はそれぞれ図6Bと図6Cのフローチャートで制御されるようになっている。これらフローチャートについては後述する。
フィードローラ55の下流側には、フィードローラ55のフィードニップから距離Lだけ離間して、グリップローラ58が配設されている。このグリップローラ58はフィードローラ55で送られてきた用紙の前端をグリップしてさらに下流側へと搬送するものである。グリップローラ58の下流側には用紙検知手段K2が配設されている。この用紙検知手段K2によって先行紙P1の前端が検知されると、この用紙検知をトリガーとして次紙P2を繰り出すべく呼び出しローラ54を給紙トレイ51の用紙束Pの最上部の用紙(次紙P2)の紙面に当接させる(又は再駆動する)ようにしている。
(給紙装置の作動−タイプ1)
(図5Aの給紙装置の作動)
給紙装置50は以上のように構成されており、用紙束Pの最上部に呼び出しローラ54が当接した状態で、グリップローラ58、呼び出しローラ54及びフィードローラ55が駆動されることで給紙が開始される。呼び出しローラ54が図4Aの矢印方向に回転すると用紙束Pの最上部の用紙が繰り出され、この繰り出された用紙の前端がフィードローラ55のフィードニップに挟まれる。その後、用紙はフィードローラ55によって搬送下流側に搬送され、グリップローラ58に用紙前端がグリップされて用紙検知手段K2で用紙の前端が検知されると、フィードローラ55の駆動が停止されてフィードローラ55が従動回転になる。
呼び出しローラ54は重送検知手段K4が用紙の重なり「無し」を検知している限り連続的に繰り出し作動し、先行紙P1に続いて次紙P2が図5Aのように距離γで重なり合った状態で連続して繰り出される。呼び出しローラ54の繰り出し作動は給紙スタート時から重送検知手段K4の用紙の重なり「有り」検知を除いて途切れずに継続して行って良い。また、フィードローラ55だけで繰り出し用に十分な搬送力が得られる場合は呼び出しローラ54による繰り出し作動を適宜中断してもよい。
先行紙P1に図5Aのように重なり合った状態で繰り出された次紙P2は、重送検知手段K4によって距離γの前端が重なり「有り」として検知される。このように重送検知手段K4が重なり「あり」を検知すると、当該検知時点から「所定のタイミング」で呼び出しローラ54の駆動を停止する。「所定のタイミング」とは、次紙P2の前端が重送検知手段K4の光軸とフィードニップとの間で停止することができるタイミングである。例えば図5Aのように「所定のタイミング」で搬送される用紙の距離をαとすると、この距離αはフィードニップまでの距離βを超えない範囲で任意の距離に設定する。
呼び出しローラ54の駆動を停止するにはフィードローラ55の駆動源に接続するクラッチを遮断するが、重なり「あり」の検知と同時にクラッチを遮断しても、クラッチの応答性でいくらかの駆動停止距離が出る。この駆動停止距離は給紙装置によって異なるが、予め計測し確認しておくことが可能であり、「所定のタイミング」にはこの駆動停止距離が含まれる。このように呼び出しローラ54を所定のタイミングで停止することにより、次紙P2のスタート位置をフィードニップ直近上流側の所定位置に安定的に定めることができる。
次紙P2のスタートタイミングは従来同様であり、用紙の挙動が安定(スリップ率が低下)するグリップローラ58の下流に設けられた用紙検知手段K2による先行紙P1前端検知をトリガーとする。そして次紙P2前端が先行紙P1後端に追突せず、かつ所定のプリント生産性を満足する所定のタイミングで呼び出しローラ54、フィードローラ55の駆動が繰り返される。この「所定のタイミング」については、後述の図5Bの給紙装置の作動説明で距離ηと関連して説明する。
本発明の実施形態に係る給紙装置50では、前述のように呼び出しローラ54とフィードローラ55との間で用紙有無を検知するための紙間を作る必要がない。この点、図8や図9の従来の給紙装置のように用紙前端検知のための紙間形成が必要なものと比べると、給紙装置50のプリント生産性を高めることができる。また図9の従来機種のような給紙の増速が不要のためフィードローラ55の駆動源の電力消費を押さえることができ、さらに紙間短縮により給紙装置全体の搬送速度も低減できるから装置全体の省エネ化を図ることができる。
また、重送がない場合は先行紙P1後端が呼び出しローラ54の接地点を越える前に呼び出しローラ54の繰り出し作動を一旦止める必要がない。従って、呼び出しローラ54とフィードローラ55で共通の駆動源を使用している場合でも、呼び出しローラ54を紙面から離間する動作が不要となる。また、重送発生により呼び出しローラ54による繰り出しを停止する場合はフィードローラ55も含めた繰り出し駆動を止めて良いなど制御負荷を低減できる上、クラッチなどの断続回数低減による長寿命化や静音化が可能となる。
また、次紙P2検知を従来の図10のように先行紙P1後端がフィードニップを抜ける瞬間を捉えて用紙検知手段K3で検知するのに比べると、重送検知手段K4による重送有無の検知には時間的余裕がある。このため、先行紙P1後端がフィードニップを抜ける瞬間を高精度な制御タイマーでカウントする必要がなく、制御手段を司るCPUにかかる制御負荷を低減できる。このCPUの負荷低減により制御遅延などによるジャムの発生を抑え、安定した給紙搬送を実現することができる。
(図5Bの給紙装置の作動)
図5Bの給紙装置では、重送検知手段K4の光軸がフィードニップから距離ηだけ上流側に離して配設されている。距離ηは前述した呼び出しローラ54の駆動停止距離である。この図5Bの給紙装置は、呼び出しローラ54の繰り出し動作を停止するタイミングが図5Aの給紙装置と異なるが、その他は同じである。図5Bの給紙装置において、先行紙P1と次紙P2の重なり距離γの前端が重送検知手段K4で検知されると、当該検知時点と同時に呼び出しローラ54の駆動が停止される。これにより、次紙P2のスタート位置はフィードニップ位置となる。
次紙P2のスタートタイミングは従来同様であり、用紙の挙動が安定(スリップ率が低下)するグリップローラ58の下流に設けられた用紙検知手段K2による先行紙P1前端検知をトリガーとする。そして次紙P2前端が先行紙P1後端に追突せず、かつ所定のプリント生産性を満足する所定のタイミングで呼び出しローラ54、フィードローラ55の駆動が繰り返される。
ここで、先行紙P1後端に追突しない前記「所定のタイミング」について以下説明する。「追突」するか否かは先行紙P1と次紙P2の間隔次第であり、この間隔(紙間)を用紙検知手段K2が検知可能であることが前提となる。反射型センサで検知可能な最小紙間はδ=8mm程度である。
またタイミングローラでは用紙を撓ませながら用紙前端をローラに付き当てその斜行を補正するようにしている。このため、タイミングローラ直前の搬送ローラから用紙後端が抜け出ると、そのたるみ量分で用紙後端が後方に延び、次紙前端との間の紙間が短縮することになる。たるみ量は通常2〜6mm程度である。また給紙スタート時の用紙前端はフィードニップを越えることはないので、フィードニップが給紙スタートの最下流位置となる。
従って先行紙P1後端に追突しないタイミングは、先行紙P1後端がフィードニップを通過してから用紙検知のための紙間δ及びたるみ量分を搬送した時点となる。実際はこれらの他に先行紙P1と次紙のスリップの差を考慮する必要があるので、若干の余裕分(例えば1mm)を加える。以上より先行紙P1後端がフィードニップを通過してから、δ=15mm(=8mm+6mm+1mm)搬送後に次紙P2をフィードローラ55で送給開始することが前記「所定のタイミング」の基本となる。
さらに、前記タイミングで次紙P2のスタートを行った場合、紙間短縮タイプでない従来機種では用紙スタート位置が0〜30mmまでばらつく(前記[0009]段参照)。このため、プリント生産性としては前記用紙スタート位置の最大バラツキ30mmに前記δ=15mmを加えた45mmが用紙間隔に対応するものとなっていた。
また、図9のような紙間短縮タイプの従来機種(特許文献1:特開2005−213039号公報)では、一般に反射型センサで用紙有無を検知している。しかし、反射型センサの位置は用紙検知のための紙間8mmと、フィードローラ55の駆動停止距離κ(仮に
4mm搬送分とする)を満足するためにフィードニップの12mm手前に配設する必要がある。このため、用紙スタート位置のバラツキは0〜12mmとなるので、最大で27mm(15mm+12mm)の用紙間隔に対応するプリント生産性になる。
これに対し本発明の実施形態では、重送検知手段K4の検知位置を呼び出しローラ54の駆動停止時の駆動停止距離η分だけフィードニップより上流側に配置し、用紙検知のための紙間を不要化している。このため、次紙P2のスタート位置バラツキは0〜η(≒κ=4mm)となり、同じ搬送速度でも最大で19mm(15mm+4mm)の用紙間隔に対応するプリント生産性にアップすることができる。
重送検知手段K4が重なり「有り」を検知すると呼び出しローラ54の予備繰り出し搬送を直ちに停止するので、次紙P2の前端が検知位置から駆動停止距離分だけ離れたフィードニップまでの距離η以上に搬送されることはない。従って、呼び出しローラ54とフィードローラ55間で用紙の撓みが生じることはなく用紙に負担が掛からない。また、重送検知手段K4は検知タイミングを特に設定する必要がないので、図9、図10のような従来機種で先行紙P1がフィードニップを抜ける瞬間を捉えるための制御タイマーが不要であり、制御手段を司るCPUの制御負荷を低減することができる。
また、次紙P2は用紙積載部(用紙束P)の前端位置から呼び出しローラ54の接地位置間の距離γだけ先行紙P1と重なって搬送される。このため、次紙P2前端検知から先行紙P1後端がフィードニップを抜けるまでの搬送距離(η+γ)前には用紙重なりを検知して、呼び出しローラ54の予備繰り出し搬送を止めることができる。従って、呼び出しローラ54とフィードローラ55の駆動を兼用している場合でも、遅くとも先行紙P1後端がフィードニップを抜けるころには確実にフィードローラ55の駆動は停止している。従って、次紙P2前端のフィードニップからの突き出し懸念もなく、安定した紙間制御が可能となる。
また、特に紙間摩擦バラツキの大きい用紙では先行紙P1の搬送によって次紙P2が連れ出される場合が多い。そのような場合、重送検知手段K4が検知開始した時点で次紙P2の前端が重なり検知位置を越えていても、重送検知手段K4をフィードニップに十分近い位置に配設することで紙間を最小限のバラツキ内に保つことができる。従って、従来機種より更に高プリント生産性を達成することができる。また、呼び出しローラ54やフィードローラ55の駆動停止にブレーキ制御を組み込むなどすることで駆動停止距離を極小化すれば、重送検知手段K4の検知位置を更にフィードニップ寄りに配設することができる。従って、プリント生産性をよりアップすることができる。
(図5Cの給紙装置の作動)
図5Cの給紙装置は、重送検知手段K4の光軸がフィードニップの位置に一致して配設され、呼び出しローラ54は重送検知手段K4の重なり「有り」の検知と同時に繰り出し動作を停止できるように、用紙束Pの最上部から離間可能に配設されている。
呼び出しローラ54とフィードローラ55がギヤ連結されている場合などでは、呼び出しローラ54の駆動停止距離は、セパレートローラ56と圧接して負荷の大きいフィードローラ55の駆動停止距離に比べて、ギヤのバックラッシュ分だけ長くなる。このため、重送検知手段K4の重なり「有り」の検知に基づいて呼び出しローラ54とフィードローラ55を駆動停止した時、図5Cの破線で示すように用紙の撓みが発生する場合がある。すなわち、前記駆動停止距離の違いによって呼び出しローラ54とフィードローラ55との間で用紙の撓みが発生する場合がある。また、厚紙用紙の場合は前記駆動停止距離の違いによってスリップ痕が発生する場合がある。
そこで、呼び出しローラ54を前記のように紙面から離間可能に配設することとした。これにより、用紙撓みやスリップ痕の発生の問題を解消することができ、剛性の弱い用紙でも座屈することなく安定した搬送が得られ、用紙対応性を充足することができる。
(図5Dの給紙装置の作動)
図5Dの給紙装置50は、前述したようにフィードローラ55とグリップローラ58の搬送速度に差をつけたものである。すなわち、グリップローラ58の搬送速度をV1とし、フィードローラ55の搬送速度をV2とすると、V2<V1の大小関係に設定している。その他は図5Aの給紙装置50と同じである。
このように搬送速度に差を付けることにより、フィードローラ55とグリップローラ58の間で、先行紙後端と次紙前端の間の紙間が拡大する。図5Dの給紙装置50ではこのように紙間が拡大するが、目標とする最終の紙間は、前述したように用紙検知センサK2で検知可能な最小紙間δ=8mm程度である(前記[0099]段参照)。前記速度差(V2<V1)による紙間の拡大の詳細については、前述の図5A〜図5Cの給紙装置50の作動を説明した後に説明する。
次に、図5A〜図5Cの給紙装置50の作動を図6A〜図6Cのフローチャートを参照して説明する。図6Aのフローチャートが基本形であるため、以下の説明では図6Aを中心に説明し、図6Bと図6Cは異なる部分のみ参照して説明する。
図6Aにおいて、まずステップS1でグリップローラ58の駆動が開始される。次にステップS2で(先行紙P1の)給紙駆動が開始される。この給紙駆動は呼び出しローラ54とフィードローラ55を駆動することで行われる。呼び出しローラ54とフィードローラ55を駆動源共通にした場合、フィードローラ55を連続駆動している間に呼び出しローラ54をクラッチの接続と離間により間欠的に駆動する。従って、クラッチ接続により呼び出しローラ54が駆動されて「給紙駆動開始」となり、クラッチ離間により呼び出しローラ54が駆動停止されて「給紙駆動停止」となる。呼び出しローラ54で呼び出された用紙はフィードローラ55とセパレートローラ56による分離給送部に送られ、最上紙一枚のみが搬送される。
分離給送部より下流側に給送された用紙は、下流に設けられたグリップローラ58を通り、ステップS3で用紙検知手段K2による先行紙P1の(前端)検知が行われたかどうかが判定される。先行紙P1の(前端)検知がまだであれば検知するまでグリップローラ58、呼び出しローラ54及びフィードローラ55が駆動される。そして用紙検知手段K2を通過した用紙は、その後図示しないタイミングローラで位置整合され、作像・定着部を経て機外へ排紙される。
用紙検知手段K2による用紙前端検知情報は、図示しない制御手段に送られ、当該情報に基づいてフィードローラ55の駆動が前記制御手段により停止される。この停止のタイミングは、前記用紙前端検知情報と予め設定された用紙サイズ情報から、用紙後端がフィードニップを越えるタイミングよりも前にフィードローラ55の駆動を停止する。
フィードローラ55の回転軸には一方向クラッチが接続されており、フィードローラ55の駆動を停止しても、フィードローラ55自体はグリップローラ58で搬送される用紙の搬送方向に連れ回り(従動回転)する。このようなフィードローラ55の駆動停止により、先行紙P1後端に続く形で次紙P2前端がフィードニップに到達していても、セパレートローラ56が給送方向とは逆方向に回転駆動されているので、先行紙P1との分離が確実に行われる。この際、次紙P2はその前端部分だけがこれらローラ55、56で擦られるだけであるから、摩擦に弱く傷つき易い用紙でも損傷が殆どない。
用紙検知手段K2が先行紙P1(の前端)を検知すると、ステップS4で所定時間Taが経過したかどうかが判定される。所定時間Taは、先行紙P1の後端が呼び出しローラ54の位置を抜けるまでの時間であり、このタイミングから呼び繰り出しの要否を判定する。
ステップS4で所定時間Taが経過したと判定されると、ステップS5でx=0とされる。次に、ステップS6で重送の有無が判定され、重送「無し」であれば、重送「有り」が検知されるまで、ステップS7でパラメータ「x」を1ずつ増加する演算を繰り返す。
前記「x」は、後のステップS8において、次紙スタートタイミングで重送検知手段が重送を検知したか否かを判定するために必要なパラメータである。図5Aの装置は重送検知手段K4の光軸位置を起点として次紙P2前端がステップS9のTcの間に進む距離αを制御するので、ステップS8の「x>1」でTcのタイマーの起点を確定する。
ステップS6で重送「あり」と判定されると、ステップS8でパラメータxが「0」であるかそれ以上であるかが判定される。そして、x=0であれば次紙スタートタイミングで既に次紙P2前端が重送検知手段K4を越えていたことになるので、ステップS10で呼び出しローラ54の駆動を停止する。
ステップS8でパラメータxが1以上(x>1)であると判定されると、重送検知手段K4で次紙P2の前端が検知されたことになるから、ステップS9で所定時間Tcが経過したか否かが判定される。そして所定時間Tcが経過していなければ、経過するまでこの判定が繰り返され、所定時間Tcを経過すると、ステップS10で呼び出しローラ54の駆動を停止する。
この所定時間Tcは、図5Aのように次紙P2前端が重送検知手段K4を越えた後にフィードニップに向けて進む距離αを決定するもので、α<βとして次紙P2の前端がフィ
ードニップに進入しないようにする。
そしてステップS11でジョブ枚数を終了しているか否かが判定され、終了している場合はステップS13でグリップローラ58の駆動を停止して終了する。
ジョブ枚数が終了していなければステップS12で所定時間Teが経過したか否かが判定され、経過していなければ所定時間Teが経過するまで循環判定ループを繰り返す。この所定時間Teは次紙P2のスタートタイミングを決めるもので、所定時間Teが経過するとステップS2に戻って呼び出しローラ54の駆動が再開される。
図6Bのフローチャートは、図6AのフローチャートでステップS5、ステップS7〜ステップ9を省略し、重送検知の場合は直ちにステップS10で呼び出しローラ54の駆動を停止するようにしている。その他は図6Aのフローチャートと同じである。
図6Cのフローチャートは、図6AのフローチャートでステップS5、ステップS7〜ステップ9を省略し、ステップS10aを追加したもので、重送検知の場合はステップS10aで直ちに呼び出しローラ54を用紙から離間させるようにしている。その他は図6Aのフローチャートと同じである。
図7Aは、図4A、図5Aの給紙装置50の呼び出しローラ54、フィードローラ55、セパレートローラ56の作動を、先行紙P1と次紙P2の重なりと関連して示したタイムチャートである。各ローラの回転方向を示す矢印は、実線矢印が駆動回転、破線矢印が従動回転を表す。また矢印無しは回転停止を表す。呼び出しローラ54は便宜的に駆動のON・OFFと用紙に対する当接・離間を併記しているが、ON・OFF又は当接・離間のいずれか一方で、用紙の繰り出し及び繰り出し停止に対応することができる。但し、必要に応じてON・OFFと当接・離間の両方が可能な構成としてもよい。
タイムチャートの1〜6までの番号は、タイムチャートの下の6つの図に対応している。以下の(1)〜(6)の説明がタイムチャートの1〜6までの番号に対応している。
(1)フィードローラ55が駆動されて先行紙P1が繰り出されている状態である。この状態に至ると、フィードローラ55だけで十分な繰り出し搬送力が得られるので、呼び出しローラ54は従動回転されている。
これにより、用紙束Pの最上部から先行紙P1が繰り出され、フィードローラ55によって給送される。なお、先行紙P1の後端が呼び出しローラ54に所定距離まで近付いているので、この(1)の直後に呼び出しローラ54が駆動開始される。
(2)呼び出しローラ54が駆動開始された状態で先行紙P1の後端が呼び出しローラ54の接地点を通過すると、呼び出しローラ54が先行紙P1と一部重なり合った状態で次紙P2が呼び出しローラ54に接して繰り出される。この時、重送検知手段K4は重なり「なし」を検知しているので、呼び出しローラ54は停止することなく、先行紙P1の繰り出しに続いて、次紙P2の繰り出しがそのまま続行される。
(3)(4)先行紙P1の後端と次紙P2の前端の重なりが重送検知手段K4に検知されると、呼び出しローラ54が駆動停止又は離間される。呼び出しローラ54の駆動停止は瞬時に行うことは困難であるが、離間はそれほど時間を要しないし、用紙の撓みも瞬時に解消する。(3)〜(4)間は図6AのステップS9(Tc)に対応する。
これにより、次紙P2の前端は図5Aのように重送検知手段K4を距離αだけ通り越したフィードニップの直前所定位置で止まる。また、セパレートローラ56はトルクリミッタの作用によって次紙P2の前端がフィードニップに進入するのを防止する。
(4)のように(図6AのステップS12の所定時間Teの間に)先行紙P1の後端が重送検知手段K4を抜けると、次紙P2のスタート(図6AのステップS2)が可能になる。
(5)(6)フィードローラ55が駆動されて先行紙P1が繰り出されている状態である。この状態に至ると、フィードローラ55だけで十分な繰り出し搬送力が得られるので、呼び出しローラ54は従動回転されている。これにより、用紙束Pの最上部から先行紙P1が繰り出され、フィードローラ55によって給送される。
この状態で次紙P2(及びその下側の第2次紙)が先行紙P1との摩擦で連れ出されている。そして先行紙P1の後端が呼び出しローラ54を越える前に次紙P2前端が重送検知手段K4を越えているので、先行紙P1との重なりが重送検知手段K4で検知され、直ちに呼び出しローラ54が離間される。
この作動は図6Aのフローチャートのx=0のときのステップS8→ステップS10に対応する。これにより、次紙P2に対する繰り出し方向の摩擦力が解消され、次紙P2前端がフィードニップに進入するのが防止されるから、重送ないしジャムを防止することができる。
図7Aの(6)の図は、図6CフローチャートのS10a(呼び出しローラ離間)に対応するように呼び出しローラ54を離間させた状態を図示する。しかし、呼び出しローラ54〜フィードローラ55間で用紙撓みが許容される場合は、呼び出しローラ54を離間させないで呼び出しローラ54を停止しておくだけでもよい。これにより次紙P2に対する繰り出し方向の摩擦力で次紙P2が進んでも、座屈しないだけの撓みができるだけで、次紙P2はフィードニップを越えず、重送ないしジャムを防止することができる。図5A〜図5Cの給紙装置50は以上のように作動する。
次に、図5Dの給紙装置50について作動を含めて説明する。図5Dの給紙装置50はフィードローラ55とグリップローラ58の搬送速度V1、V2に差(V2<V1)をつけているが、これはフィードローラ55の駆動制御を簡略化して制御系の負荷を軽減するのが目的である。
すなわち、前述したようにグリップローラ58の下流側で先行紙P1の前端が用紙検知手段K2で検知される。この用紙検知をトリガーとして次紙P2を繰り出すべく呼び出しローラ54を給紙トレイ51の最上部の用紙(次紙P2)の紙面に当接させ(又は再駆動する)ている。先行紙P1の前端を用紙検知手段K2で検出するためには、当該先行紙の前の用紙の後端との間に最低限の隙間δが必要である。この最低限の間隙δは、図9、図10のような従来の装置では、フィードローラ55から繰り出される先行紙後端と次紙前端との間で設定され、フィードローラ55とグリップローラ58を同一速度で駆動することによって前記紙間を一定に維持するようにしている。
しかし、このように上流側と下流側のローラ間で紙間を一定に維持するためには、下流側のグリップローラ58で搬送される先行紙の搬送状態によって、上流側のフィードローラ55の搬送状態を常に制御する必要がある。すなわち、グリップローラ58で搬送される先行紙の搬送が遅れると、その都度フィードローラ55による次紙の搬送もそれに対応させて遅らせないといけない。このようにフィードローラ55の駆動を細かくON・OFF制御すると制御系に負荷がかかり過ぎ、安定した用紙搬送が困難になる。
そこで、従来のように下流側の先行紙の搬送状態によって上流側のフィードローラ55の駆動をON・OFF制御するのを止め、フィードローラ55と下流側のグリップローラ58の搬送速度の差によって必要最低限の紙間が確実に得られるようにした。すなわち、前記速度差によって紙間が拡大して次紙前端が用紙検知手段K2に到達するまでに必要最低限の紙間が確実に得られるようにした。
図5Dの給紙装置50では、重送検知手段K4で重送検知がなければ、先行紙後端がフィードローラ55を抜ける時、呼び出しローラ54とフィードローラ55は今まで通り駆動され続ける。また、重送検知手段K4で重送検知があれば呼び出しローラ54が一旦駆動停止(又は用紙束Pから離間)し、先行紙後端がフィードローラ55を抜けると同時に呼び出しローラ54が駆動再開(又は用紙束Pに接地)する。
先行紙の前端がグリップローラ58に到達すると、当該先行紙が速度V1でさらに下流側に搬送される。この速度V1は分離給送部のフィードローラ55より相対的に速いため、フィードローラ55は、グリップローラ58によって速度V1で搬送される用紙に連れ回りする。フィードローラ55の一方向クラッチと、セパレートローラ56のトルクリミッタが、この連れ回りを可能にする。
なお、フィードローラ55の駆動源によってクラッチを介して駆動される呼び出しローラ54は、一方向クラッチを付けない場合、用紙前端がグリップローラ58に到達した時点で呼び出しローラ54を用紙束Pの最上部から離間させる離間機構を設けるとよい。この離間機構によって呼び出しローラ54を用紙束Pから浮かせた状態で、グリップローラ58で搬送される用紙の後端が呼び出しローラ54の下を通過する。この用紙後端が分離給送部(フィードローラ55)を抜ける瞬間には、呼び出しローラ54とフィードローラ55は共に駆動されている。そして、グリップローラ58によって速度V1で搬送される先行紙P1の後端抜けと同時に、次紙P2がフィードローラ55から速度V2で繰り出される。
ここで用紙検知手段K2で検知可能な最低限の紙間をδとし、分離給送部(フィードローラ55)からグリップローラ58までの距離をLとすると、次の関係式が成り立つように速度V1、V2を設定してある。
V2=V1×{L−(δ−β+α)}/L …(式1)
V1:グリップローラ58の搬送速度
V2:フィードローラ55の搬送速度
α:用紙前端が重送検知手段K4を越えた後にフィードニップに向けて進む距離
β:重送検知手段K4の光軸とフィードニップとの間の距離
前記(式1)は、次のように時間T1と時間T2を規定し、T1=T2とすることで求めることができる。
T1:先行紙P1後端がフィードローラ55を通過してから速度V1でグリップローラ58に到達するまでの時間
T2:呼び出しローラ54の駆動再開(又は用紙束Pに接地)で次紙P2前端が速度V2でグリップローラ58の直近δの位置に到達するまでの時間
なお、グリップローラ58とその下流のローラ間で用紙がたるみ量(たるみ長さ)εを持つ場合は、当該用紙後端がグリップローラ58を抜けた後も、当該たるみ量ε分だけ下流ローラにより搬送されるまで、グリップローラ58の出口に留まる。この結果、先行紙P1後端と次紙P2前端との紙間が詰まる(短縮される)。そこで、当該たるみ量εにより紙間の詰まりが生じても、必要な紙間δが確保されるように予め当該たるみ量ε分だけ余分に紙間を確保してもよい。
すなわち、当該たるみ量εを考慮する場合は、前記関係式は以下のように表される。
V2=V1×{L−(δ−β+α+ε)}/L …(式2)
ε:グリップローラ58とその下流のローラ間の用紙たるみ量
速度V1は下流の作像線速に合わせたタイミングローラ対の搬送速度で決まるとすると、分離給送部の速度V2は上式より当該速度V1よりも低速となる。このような分離給送部の低速化により、セパレートローラ56による分離時間を稼いだり、フィードローラ55のスリップを抑制したりすることが可能になり、用紙分離作用の安定性を高めることができる。
また、以上のように速度V1、V2を設定することにより、フィードローラ55は例えば速度V2での単純な連続駆動制御とすることができる。これにより制御系の負荷が軽減され、当該負荷低減によって制御遅延などによるジャムの発生を抑え、安定した給紙搬送を実現することができる。
また、グリップローラ58で搬送中の用紙にフィードローラ55が当接している間は、フィードローラ55を非駆動・従動回転とすることもできるので、その間のフィードローラ55の制御が不要になり、同様に制御系の負荷が軽減される。
また、図5Dの給紙装置50は図5A〜図5Cの給紙装置と同様に必要最低限の紙間を確保するので高プリント生産性を実現することができる。フィードローラ55の搬送速度V2は従来よりも低速化するが、これは従来の紙間停止時間(駆動のON・OFF制御のOFFの時間)と通常速度(ONの時の速度V1)を平均化するものである。従って、フィードローラ55の搬送速度V2の低速化によるプリント生産性への影響はほとんどない。
図7Bは、図4B、図5Fの給紙装置50の呼び出しローラ54、フィードローラ55、セパレートローラ56、グリップローラ58の作動を、先行紙P1と次紙P2の重なりと関連して示したタイムチャートである。図7Aと比べてグリップローラ58の駆動を追加してあることと、フィードローラ55の駆動がやや異なる以外は、図7Aと同様である。
すなわち図7Bのフィードローラ55の駆動は、グリップローラ58による先行紙P1の搬送開始から、当該先行紙P1の後端が分離給送部を抜ける直前まで、フィードローラ55の駆動は任意で良い。例えばタイムチャートの破線で示す駆動部分Aが水平方向に連続するようにフィードローラ55を速度V2で連続駆動しても良いし、電力消費を抑えるためにフィードローラ55の駆動を適宜間引いても良い(例えば駆動部分Aの下側の実線部分)。
また、タイムチャートの破線で示す駆動部分Bで示すように、次紙スタートタイミングよりも所定時間早めてフィードローラ55を余裕を持って緩やかに立ち上げる駆動も可能になる。このようにフィードローラ55を緩やかに立ち上げることで駆動系の負荷軽減が可能となり、またタイマーの高精度化などの制御負荷増大も軽減することができる。この点、従来の給紙装置はフィードローラの位置で所定の紙間を形成するため、次給紙スタートタイミングでフィードローラを急峻に立ち上げざるを得ず、駆動系と制御系に負荷がかかっていた。
前述した図5Dの給紙装置50の速度差(V2<V1)による紙間形成は、前述したように、図5Bの給紙装置50にも適用することができる。図5Bの給紙装置50は、図5Aのβを短縮してαに一致させたものである(β=α)。このようにすると図5Bの先行紙P1後端がフィードローラ55から抜け出た瞬間に、当該先行紙P1の後端を隙間なく追いかける形で次紙P2前端をフィードローラ55で搬送開始することができる。
また、フィードローラ55は当該次紙P2の搬送開始まで任意の駆動状態でよいので、図7Bの駆動部部分Bを利用して次紙P2の搬送開始時点では既にフィードローラ55が速度V2で十分に立ち上がっている状態にすることができる。これにより、次紙スタートの時間的遅れを最短化することができる。このような実施形態では、フィードローラ55とグリップローラ58の間で、紙間が実質的にゼロから始まり、その後徐々に増大して、グリップローラ58の位置で最小紙間δが形成される。従って、プリント生産性を最大化し、同時に給紙装置全体の搬送速度の低減化による装置全体の省エネ化を図ることができる。
(給紙装置−タイプ2)
図4Bの給紙装置50は、図4Aの重送検知手段K4に代えてフォトインタラプタ151を配設したものである。このフォトインタラプタ151は、後述するように分離部材としてのセパレートローラ56の分離動作、すなわちセパレートローラ56が回転しているか否かの動作状態を検知する分離動作検知手段である。その他は、図4Aの給紙装置50と同様に構成されている。当該給紙装置50も図1の追加の給紙装置50として示しているが、その上に設けた給紙部300にも同様に適用可能である。
本実施形態での給紙方式は、分離部材であるセパレートローラ56に逆転駆動を掛けないRF(Roller Friction)給紙方式としている。この方式もFRR方式同様の位置精度許容度等の設計的利点を有する。なお、前述したFRR給紙方式を採用する場合、セパレートローラ56又はそのトルクリミッタの動作状態(回転方向、すなわちフィード回転であるかリバース回転であるか)を検知手段で検知する。
給紙装置50は、当該RF方式の位置精度許容度等の設計的利点を崩すことなく、高寿命かつ低騒音で安定した給紙動作が安価な構成で得られるようにしてある。また、紙間摩擦バラツキの大きい紙種に対しても用紙に負担をかけることなく、給紙スタート時の紙間を最小限の距離に保つことによって紙間摩擦バラツキを低減し、高プリント生産性を達成可能にしてある。
また、給紙装置50は紙厚大の用紙で生じる搬送不具合を回避して高プリント生産性を安定した給紙搬送で実現可能にしてある。給紙装置50は以上の作用効果が得られるように、前述した従来の図9や図10の給紙装置に図5Eのような分離部材の動作状態を検知する分離動作検知手段を配設している。
(給紙装置の構成−タイプ2)
フィードローラ55は、図4Aの給紙装置と同様に、一方向クラッチを介して用紙の給送方向に回転駆動される。これに対して、セパレートローラ56は、図5E(A)(B)のようにトルクリミッタ152を介して回転不能なセパレートローラ軸154に軸支されている。このセパレートローラ56は、フィードニップでの1枚挟持時は、トルクリミッタ152がセパレートローラ軸154との間でスリップすることによってフィードローラ55に当接して従動回転する。しかし、フィードニップで2枚以上の挟持状態では、セパレートローラ56がトルクリミッタ152を介して回転停止した状態でセパレートローラ軸154に支持されることで、用紙の重送が防止されるようになっている。すなわち、フィードニップに2枚以上の用紙が挟持されると、最上紙一枚のみがフィードローラ55によって給送され、残りの用紙は、その用紙前端を回転停止状態のセパレートローラ56に当接させた状態で停止されるようになっている。
つまり、セパレートローラ56が搬送方向に回っている場合は、用紙なしであるか、又はフィードニップに挟まれている用紙が1枚だけであるから分離動作は行われない。これに対してセパレートローラ56が止まっている場合、フィードニップに用紙が2枚以上挟まれているので、分離動作が行われるか、或いは駆動停止となる。図5Eの給紙装置は、図6Dのフローチャートで制御されるようになっている。フローチャートについては後述する。
セパレートローラ56と一体回転するトルクリミッタ152の外郭153には、分離動作検知手段としてのエンコーダ150が設けられている。トルクリミッタ152を使用しない場合は、セパレートローラ56の軸部にエンコーダ150を取り付けることができる。
エンコーダ150の外周部を挟むようにして、分離動作検知手段としてのフォトインタラプタ151が配設されている。そして、当該フォトインタラプタ151によってセパレートローラ56が回転しているか否かが検知されるようになっている。
フォトインタラプタ151はそれ自体が安価であり、また用紙の片側一箇所に配設すればよいので省スペースである。また、その取り付け位置に関して反射型センサK4のように高精度を要求されないという利点がある。
セパレートローラ軸154はフィードローラ55側に移動可能に支持され、バネ56aによってフィードローラ55側に付勢されている。そしてフィードローラ55とセパレートローラ56の当接部分でいわゆる「フィードニップ」が形成され、このフィードニップに用紙が挟み込まれることによって用紙が一枚ずつ矢印方向に給送されるようになっている。フォトインタラプタ151は当該セパレートローラ軸154のフィードローラ55側への移動に追従するように配設されている。そして、フォトインタラプタ151とエンコーダ150との間の位置関係がセパレートローラ軸154の移動に関わらず常に維持されるよう構成されている。
フィードローラ55の下流側には、図5Fのようにグリップローラ58が配設されている。当該グリップローラ58の回りの構成は図4Aと同様である。
(給紙装置の作動−タイプ2)
(図5Eの給紙装置の作動)
給紙装置50は以上のように構成されており、用紙束Pの最上部に呼び出しローラ54が当接した状態で、グリップローラ58、呼び出しローラ54及びフィードローラ55が駆動されることで給紙が開始される。呼び出しローラ54が図4Bの矢印方向に回転すると用紙束Pの最上部の用紙が繰り出され、この繰り出された用紙の前端がフィードローラ55のフィードニップに挟まれる。その後、用紙はフィードローラ55によって搬送下流側に搬送され、グリップローラ58に用紙前端がグリップされて用紙検知手段K2で用紙の前端が検知されると、フィードローラ55の駆動が停止されてフィードローラ55が従動回転になる。
呼び出しローラ54は、先行紙P1後端が呼び出しローラ54当接位置を越える前に分離動作検知手段が「分離動作無し」を検知していると、当該先行紙P1の繰り出しを継続又は作動させる。そして、先行紙P1に続いて次紙P2が図5E(A)(B)のように距離γで重なり合った状態で連続して繰り出される。呼び出しローラ54の繰り出し作動は、分離動作検知手段による「分離動作有り」の検知時を除いて、給紙スタート時から途切れずに継続して行っても良い。しかし、フィードローラ55だけで繰り出し用に十分な搬送力が得られる場合は、呼び出しローラ54による繰り出し作動を適宜中断してもよい。
先行紙P1に対し、図5E(A)のように重なり合った状態で繰り出された次紙P2は、その先端がフィードニップに達すると、分離動作検知手段としてのフォトインタラプタ151によって「分離動作有り」として検知される。このようにフォトインタラプタ151が「分離動作有り」を検知すると、呼び出しローラ54の駆動が停止されるように構成されている。
一旦「分離動作有り」が検知されると、次給紙タイミングまでは呼び出しローラ54の駆動は行われない。なお、「分離動作有り」が検出されない場合でも、先行紙P1後端がフィードニップ近傍を抜けるタイミングで、予備繰り出しを一旦停止する安全制御を入れ、次給紙タイミングを待つような制御を行っても良い。
呼び出しローラ54の駆動を停止するには、フィードローラ55を駆動源に接続するクラッチを遮断する。しかし、「分離動作有り」の検知と同時にクラッチを遮断しても、クラッチの応答性でいくらかの駆動停止距離が出る。これによって、図5E(A)の破線で示すように、呼び出しローラ54とフィードローラ55との間で用紙の撓みが発生したり、厚紙用紙の場合はスリップ痕が発生したりする場合がある。
そこで、呼び出しローラ54を前記のように紙面から離間可能に配設することとした。これにより、用紙撓みやスリップ痕の発生の問題を解消することができ、剛性の弱い用紙でも座屈することなく安定した搬送が得られ、用紙対応性を充足することができる。
次紙P2のスタートタイミングは従来同様であり、用紙の挙動が安定(スリップ率が低下)するグリップローラ58の下流に設けられた用紙検知手段K2による先行紙P1前端検知をトリガーとする。そして次紙P2前端が先行紙P1後端に追突せず、かつ所定のプリント生産性を満足する所定のタイミングで呼び出しローラ54、フィードローラ55の駆動が繰り返される。
このタイプ2の給紙装置50でも、前述のように呼び出しローラ54とフィードローラ55との間で用紙有無を検知するための紙間を作る必要がない。従って、図9や図10の従来の給紙装置のように用紙前端検知のための紙間形成が必要なものと比べると、給紙装置50のプリント生産性を高めることができる。また図9の従来機種のような給紙の増速が不要のためフィードローラ55の駆動源の電力消費を押さえることができ、さらに紙間短縮により給紙装置全体の搬送速度も低減できるから装置全体の省エネ化を図ることができる。
また、分離動作がない場合は、先行紙P1後端が呼び出しローラ54の接地点を越える前に呼び出しローラ54の繰り出し作動を一旦止める必要がない。従って、呼び出しローラ54とフィードローラ55で共通の駆動源を使用している場合でも、呼び出しローラ54を紙面から離間する動作が不要となる。また、分離動作発生により呼び出しローラ54による繰り出しを停止する場合はフィードローラ55も含めた繰り出し駆動を止めて良いなど制御負荷を低減できる上、クラッチなどの断続回数低減による長寿命化や静音化が可能となる。
また、次紙P2検知を従来の図10のように先行紙P1後端がフィードニップを抜ける瞬間を捉えて用紙検知手段K3で検知するのに比べると、分離動作検知手段による分離動作有無の検知には時間的余裕がある。このため、先行紙P1後端がフィードニップを抜ける瞬間を高精度な制御タイマーでカウントする必要がなく、制御手段を司るCPUにかかる制御負荷を低減できる。このCPUの負荷低減により制御遅延などによるジャムの発生を抑え、安定した給紙搬送を実現することができる。分離動作検知手段はセパレートローラ56の回転を検知するものなので、低精度のエンコーダ150とフォトインタラプタ151で構成できる。従って、超音波センサなどの高価なセンサを用いることなく、従来並の安価な構成で上記性能を獲得できる。
次に、図5Eの給紙装置(タイプ2)50の作動を図6Dのフローチャートを参照して説明する。図6Cのフローチャートと異なるステップは、ステップ6で「重送検知」ではなく「分離動作」の有無を判定している点である。その他は図6Cのフローチャートと同じである。
図6Dにおいて、まずステップS1でグリップローラ58の駆動が開始される。次にステップS2で(先行紙P1の)給紙駆動が開始される。この給紙駆動は呼び出しローラ54とフィードローラ55を駆動することで行われる。呼び出しローラ54とフィードローラ55を駆動源共通にした場合、フィードローラ55を連続駆動している間に呼び出しローラ54をクラッチの接続と離間により間欠的に駆動する。従って、クラッチ接続により呼び出しローラ54が駆動されて「給紙駆動開始」となり、クラッチ離間により呼び出しローラ54が駆動停止されて「給紙駆動停止」となる。呼び出しローラ54で呼び出された用紙はフィードローラ55とセパレートローラ56による分離給送部に送られ、最上紙一枚のみが搬送される。
分離給送部より下流側に給送された用紙は、下流に設けられたグリップローラ58を通り、ステップS3で用紙検知手段K2による先行紙P1の(前端)検知が行われたかどうかが判定される。先行紙P1の(前端)検知がまだであれば検知するまでグリップローラ58、呼び出しローラ54及びフィードローラ55が駆動される。そして用紙検知手段K2を通過した用紙は、その後図示しないタイミングローラで位置整合され、作像・定着部を経て機外へ排紙される。
用紙検知手段K2による用紙前端検知情報は、図示しない制御手段に送られ、当該情報に基づいてフィードローラ55の駆動が前記制御手段により停止される。この停止のタイミングは、前記用紙前端検知情報と予め設定された用紙サイズ情報から、用紙後端がフィードニップを越えるタイミングよりも前にフィードローラ55の駆動を停止する。
フィードローラ55の回転軸には一方向クラッチが接続されており、フィードローラ55の駆動を停止しても、フィードローラ55自体はグリップローラ58で搬送される用紙の搬送方向に連れ回り(従動回転)する。このようなフィードローラ55の駆動停止により、先行紙P1後端に続く形で次紙P2前端がフィードニップ直前に到達していても、セパレートローラ56はトルクリミッタを介して回転不能な軸に支持されているので、先行紙P1との分離が確実に行われる。この際、次紙P2はその前端部分だけがこれらローラ55、56で擦られるだけであるから、摩擦に弱く傷つき易い用紙でも損傷が殆どない。
用紙検知手段K2が先行紙P1(の前端)を検知すると、ステップS4で所定時間Taが経過したかどうかが判定される。所定時間Taは、先行紙P1の後端が呼び出しローラ54の位置を抜けるまでの時間であり、このタイミングから予備繰り出しの要否を判定する。
ステップS4で所定時間Taが経過したと判定されると、ステップS6でフォトインタラプタ151による分離動作の有無が判定される。「分離動作無し」であれば、「分離動作有り」が検知されるまで、呼び出しローラ54の駆動が継続される。
ステップS6で「分離動作有り」と判定されると、次紙P2前端がフィードニップ直前に到達したことになる。この場合はステップS10aで直ちに呼び出しローラ54が用紙から離間され、ステップS10で呼び出しローラ54の駆動が停止される。
次に、ステップS11でジョブ枚数を終了しているか否かが判定される。ジョブ枚数を終了している場合はステップS13でグリップローラ58の駆動を停止して終了する。
ジョブ枚数が終了していない場合、ステップS12で所定時間Teが経過したか否かが判定される。所定時間Teが経過していない場合、所定時間Teが経過するまで循環判定ループが繰り返される。この所定時間Teは次紙P2のスタートタイミングを決めるもので、所定時間Teが経過するとステップS2に戻って呼び出しローラ54の駆動が再開される。
図7Cは、図4B、図5Eの給紙装置(タイプ2)50の呼び出しローラ54、フィードローラ55、セパレートローラ56の作動を、先行紙P1と次紙P2の重なりと関連して示したタイムチャートである。各ローラの回転方向を示す矢印は、実線矢印が駆動回転、破線矢印が従動回転を表す。また矢印無しは回転停止を表す。呼び出しローラ54は便宜的に駆動のON・OFFと用紙に対する当接・離間を併記しているが、ON・OFF又は当接・離間のいずれか一方で、用紙の繰り出し及び繰り出し停止に対応することができる。但し、必要に応じてON・OFFと当接・離間の両方が可能な構成としてもよい。
タイムチャートの1〜6までの番号は、タイムチャートの下の6つの図に対応している。以下の(1)〜(6)の説明がタイムチャートの1〜6までの番号に対応している。(1)フィードローラ55が駆動されて先行紙P1が繰り出されている状態である。この状態に至ると、フィードローラ55だけで十分な繰り出し搬送力が得られるので、呼び出しローラ54は従動回転されている。
これにより、用紙束Pの最上部から先行紙P1が繰り出され、フィードローラ55によって給送される。但し、次紙P2は用紙積載位置に留まった状態である。なお、先行紙P1の後端が呼び出しローラ54の後方所定距離まで近付いているので、この(1)の直後に呼び出しローラ54が駆動開始される。
(2)呼び出しローラ54が駆動開始された状態で先行紙P1の後端が呼び出しローラ54の接地点を通過すると、呼び出しローラ54が先行紙P1と一部重なり合った状態で次紙P2が呼び出しローラ54に接して繰り出される。この時、分離動作検知手段は「分離動作なし」を検知しているので、呼び出しローラ54は停止することなく、先行紙P1の繰り出しに続いて、次紙P2の繰り出しがそのまま続行される。
(3)先行紙P1に重なって繰り出された次紙P2の前端がフィードニップ直前に到達し、「分離動作有り」が検知されるので、呼び出しローラ54が駆動停止又は次紙P2から離間される。呼び出しローラ54の駆動停止を瞬時に完了することは困難であるが、離間はそれほど時間を要しないし、用紙の撓みも瞬時に解消する。セパレートローラ56は、トルクリミッタ152の作用によって次紙P2の前端がフィードニップに進入するのを防止する。
(4)先行紙P1の後端が後行紙P2の先端を抜けると、用紙の重なりがなくなってセパレートローラ56が連れ回りを始め、分離動作検知手段は「分離動作なし」を検知する。この従動回転は先行紙P1がフィードニップを抜けるまで行われ、フィードニップ直前まで来ていた後行紙P2の前端は、フィードニップに侵入して停止する。このように(図6DのステップS12の所定時間Teの間に)先行紙P1の後端がフィードニップを抜けると、次紙P2のスタート(図6DのステップS2)が可能な状態になる。
(5)(6)フィードローラ55が駆動されて先行紙P1が繰り出されている状態である。この状態に至ると、フィードローラ55だけで十分な搬送力が得られるので、呼び出しローラ54は従動回転されている。これにより、用紙束Pの最上部から先行紙P1が給送される。
また、先行紙P1との摩擦により、次紙P2及びその下側の第2次紙が連れ出され、先行紙P1の後端が呼び出しローラ54を越える前に次紙P2前端がフィードニップ直前に到達している。この状態では分離動作検知手段によって「分離動作有り」が検出され、直ちに呼び出しローラ54が離間される。
当該呼び出しローラ54の離間作動は、図6DのフローチャートのステップS10aに対応する。これにより、次紙P2に対する繰り出し方向の摩擦力が解消され、次紙P2前端がフィードニップに進入するのが防止される。従って、重送ないしジャムを防止することができる。
図7Cの(6)の図は、図6DフローチャートのS10a(呼び出しローラ離間)に対応するように呼び出しローラ54を離間させた状態を図示する。しかし、呼び出しローラ54とフィードローラ55との間で用紙撓みが許容される場合は、呼び出しローラ54を離間させないで呼び出しローラ54を停止しておくだけでもよい。これにより次紙P2に対する繰り出し方向の摩擦力で次紙P2が進んでも、当該次紙P2に座屈しないだけの撓みができるだけで、次紙P2前端はフィードニップを越えず、重送ないしジャムを防止することができる。
図5Eの給紙装置50は以上のように作動する。 以上、セパレートローラ56に逆転駆動をかけないRF給紙方式を例に説明したが、セパレートローラ56の回転方向を判別できる分離動作検知手段を用いることで、セパレートローラ56に逆転駆動を掛けるFRR給紙方式としてもよい。
次に、図5Fの給紙装置50について作動を含めて説明する。図5Fの給紙装置50はフィードローラ55とグリップローラ58の搬送速度V1、V2に差(V2<V1)をつけているが、これはフィードローラ55の駆動制御を簡略化して制御系の負荷を軽減するのが目的である。
すなわち、前述したようにグリップローラ58の下流側で先行紙P1の前端が用紙検知手段K2で検知されると、この用紙検知をトリガーとして次紙P2を繰り出すべく呼び出しローラ54が給紙トレイ51の最上部の用紙(次紙P2)の紙面に当接される。呼び出しローラ54は当該当接状態で待機している。先行紙P1の前端を用紙検知手段K2で検出するためには、当該先行紙P1の前の用紙の後端との間に最低限の隙間(紙間)δが必要である。この最低限の隙間δは、図9、図10のような従来の装置では、フィードローラ55から繰り出される先行紙後端と次紙前端との間で設定されていた。そして、フィードローラ55とグリップローラ58を同一速度で駆動することによって、前記紙間を一定に維持するようにしていた。
しかし、このように上流側と下流側のローラ間で紙間を一定に維持するためには、下流側のグリップローラ58で搬送される先行紙の搬送状態によって、上流側のフィードローラ55の搬送状態を常に制御する必要がある。すなわち、グリップローラ58で搬送される先行紙の搬送が遅れると、その都度フィードローラ55による次紙の搬送もそれに対応させて遅らせないといけない。このようにフィードローラ55の駆動を細かくON・OFF制御すると制御系に負荷がかかり過ぎ、安定した用紙搬送が困難になる。
そこで、従来のように下流側の先行紙の搬送状態によって上流側のフィードローラ55の駆動をON・OFF制御するのを止め、フィードローラ55と下流側のグリップローラ58の搬送速度の差によって必要最低限の紙間が確実に得られるようにした。すなわち、前記速度差によって紙間が拡大して次紙前端が用紙検知手段K2に到達するまでに必要最低限の紙間が確実に得られるようにした。
図5Fの給紙装置50で前述の安全制御を行わない場合、分離動作検知手段で「分離動作無し」が検知されると、先行紙後端がフィードローラ55を抜ける時、呼び出しローラ54とフィードローラ55は今まで通り駆動され続ける。また、分離動作検知手段で「分離動作有り」が検知されると、呼び出しローラ54が一旦駆動を停止(又は用紙束Pから離間)する。この時、後行紙P2先端は既にフィードニップに進入しているので、先行紙後端がフィードローラ55を抜ける少し前からフィードローラ55を駆動するようにすると、先行紙後端がフィードローラ55を抜けると同時に後行紙P2の給紙を開始することができる。呼び出しローラ54は先行紙後端がフィードローラ55を抜けるあたりから、補助的に駆動を再開(又は用紙束Pに接地)させると良い。
先行紙の前端がグリップローラ58に到達すると、当該先行紙が速度V1でさらに下流側に搬送される。この速度V1は分離給送部のフィードローラ55より相対的に速いため、フィードローラ55は、グリップローラ58によって速度V1で搬送される用紙に連れ回りする。フィードローラ55の一方向クラッチと、セパレートローラ56のトルクリミッタ152が、この連れ回りを可能にする。
なお、フィードローラ55の駆動源によってクラッチを介して駆動される呼び出しローラ54は、一方向クラッチを付けない場合、用紙前端がグリップローラ58に到達した時点で呼び出しローラ54を用紙束Pの最上部から離間させる離間機構を設けるとよい。この離間機構によって呼び出しローラ54を用紙束Pから浮かせた状態で、グリップローラ58で搬送される用紙後端が呼び出しローラ54の下を通過する。この用紙後端が分離給送部(フィードローラ55)を抜ける瞬間には、呼び出しローラ54とフィードローラ55は共に駆動されている。従って、グリップローラ58によって速度V1で搬送される先行紙P1の分離給送部における後端抜けと同時に、次紙P2がフィードローラ55から速度V2で繰り出される。
速度V1、V2は次の関係式が成り立つように設定してある。
V2=V1×{L−(δ+ε)}/L …(式3)
V1:グリップローラ58の搬送速度
V2:フィードローラ55の搬送速度
δ:用紙検知手段K2で検知可能な最低限の紙間
L:分離給送部(フィードローラ55)からグリップローラ58までの距離
ε:グリップローラ58とその下流のローラ間の用紙たるみ量
グリップローラ58とその下流のローラ間で用紙がたるみ量(たるみ長さ)εを持つ場合は、当該用紙後端がグリップローラ58を抜けた後も、当該たるみ量ε分だけ下流ローラにより搬送されるまで、グリップローラ58の出口に留まる。この結果、先行紙P1後端と次紙P2前端との紙間が詰まる(短縮される)。そこで、当該たるみ量εにより紙間の詰まりが生じても、必要な紙間δが確保されるように予め当該たるみ量ε分だけ余分に紙間を確保することにした。前記(式2)と比較すると、呼び出しローラ54の駆動再開(又は用紙束P接地)による次紙P2のスタート位置が、β−αだけ下流側に移動していることが分かる。
速度V1は下流の作像線速に合わせたタイミングローラ対の搬送速度で決まるとすると、分離給送部(フィードローラ55)の速度V2は上式より当該速度V1よりも低速となる。このような分離給送部の低速化により、セパレートローラ56による分離時間を稼いだり、フィードローラ55のスリップを抑制したりすることが可能になり、用紙分離作用の安定性を高めることができる。
また、以上のように速度V1、V2を設定することにより、フィードローラ55は例えば速度V2での単純な連続駆動制御とすることができる。これにより制御系の負荷が軽減され、当該負荷低減によって制御遅延などによるジャムの発生を抑え、安定した給紙搬送を実現することができる。
また、グリップローラ58で搬送中の用紙にフィードローラ55が当接している間は、フィードローラ55を非駆動・従動回転とすることもできるので、その間のフィードローラ55の制御が不要になり、同様に制御系の負荷が軽減される。
また、図5Fの給紙装置50は図5Eの給紙装置と同様に必要最低限の紙間を確保することができるので、高プリント生産性を実現することができる。フィードローラ55の搬送速度V2は従来よりも低速化するが、これは従来の紙間停止時間(駆動のON・OFF制御のOFFの時間)と通常速度(ONの時の速度V1)を平均化するだけである。従って、フィードローラ55の搬送速度V2の低速化によるプリント生産性への影響はほとんどない。
図7Dは、図4B、図5Fの給紙装置50の呼び出しローラ54、フィードローラ55、セパレートローラ56、グリップローラ58の作動を、先行紙P1と次紙P2の重なりと関連して示したタイムチャートである。図7Cと比べてグリップローラ58の駆動を追加してあることと、フィードローラ55の駆動がやや異なる以外は、図7Cと同様である。
すなわち、図7Dのフィードローラ55の駆動は、グリップローラ58による先行紙P1の搬送開始から、当該先行紙P1の後端が分離給送部(フィードローラ55)を抜ける直前まで、フィードローラ55の駆動は任意で良い。例えばタイムチャートの破線で示す駆動部分Aが水平方向に連続するように、フィードローラ55を速度V2で連続駆動しても良いし、電力消費を抑えるためにフィードローラ55の駆動を適宜間引いても良い(例えば駆動部分Aの下側の実線部分)。
また、タイムチャートの破線で示す駆動部分Bのように、次紙スタートタイミングよりも所定時間早めてフィードローラ55を余裕を持って緩やかに立ち上げる駆動も可能になる。このようにフィードローラ55を緩やかに立ち上げることで駆動系の負荷軽減が可能となり、またタイマーの高精度化などの制御負荷増大も軽減することができる。この点、従来の給紙装置はフィードローラ55の位置で所定の紙間を形成する必要性があったため、次給紙スタートタイミングでフィードローラ55を急峻に立ち上げざるを得ず、駆動系と制御系に負荷がかかっていた。
前述した図5Fの給紙装置50の速度差(V2<V1)による紙間形成は、前述したように、図5Eの給紙装置50(タイプ2)にも適用することができる。図5Eの給紙装置50は先行紙P1後端がフィードローラ55から抜け出た瞬間に、当該先行紙P1の後端を隙間なく追いかける形で次紙P2前端をフィードローラ55で搬送開始することができる。
また、フィードローラ55は当該次紙P2の搬送開始まで任意の駆動状態でよいので、図7Dの駆動部部分Bを利用して次紙P2の搬送開始時点では既にフィードローラ55が速度V2で十分に立ち上がっている状態にすることができる。これにより次紙スタートの時間的遅れを最短化することができる。
このような実施形態では、フィードローラ55とグリップローラ58の間で、紙間が実質的にゼロから始まり、その後徐々に増大して、グリップローラ58の位置で最小紙間δが形成される。従って、プリント生産性を最大化し、同時に給紙装置全体の搬送速度の低減化による装置全体の省エネ化を図ることができる。
(画像読取装置の給紙装置)
本発明の給紙装置は画像形成装置の給紙装置に適用する他、画像読取装置の給紙装置に適用することでも前述した画像形成装置と同様に省エネ化を図ることができる。図8は自動画像読取装置の自動給紙装置(ADF)90に本発明を適用した実施形態である。
図8に示すように、ADF90は、給紙トレイ91を備えており、この給紙トレイ91には原稿面が上向きになるように用紙束Pが載置されるようになっている。
また、給紙トレイ91の給紙方向前端部近傍には、図示しないが、用紙の載置により回動するセットフィラーが設けられている。さらに、このセットフィラーの先端部の移動軌跡上の最下部には、給紙トレイ91に用紙が載置されたことを検知する用紙セットセンサ92が設けられている。すなわち、この用紙セットセンサ92は、給紙トレイ91に用紙がセットされると、セットフィラーが回動して、セットフィラーの先端部が用紙セットセンサから外れて用紙の載置を検知するようになっている。
また、給紙トレイ91に対して用紙の搬送方向下流側には、ストッパ爪93が設けられている。このストッパ爪93は、図示しない給紙ソレノイドによって用紙束Pの前端が突き当てられる突き当て位置(実線位置)と、当該位置から下方へ退避する退避位置(破線位置)の間で移動されるようになっている。
したがって、ストッパ爪93が突き当て位置にあるときに用紙束Pの前端が突き当てられることにより、用紙束Pの前端を揃えるようになっている。また、用紙束Pの幅方向は給紙トレイ91上に設けられた図示しないサイドフェンスに突き当てられることにより、用紙搬送方向と直交する方向の位置決めが行われるようになっている。
ADF90の搬送部97は、呼び出しローラ94と、分離給送部95と、プルアウト部98と、ターン部99と、読取搬送部100と、排紙部101と、スイッチバック部102とにより構成されている。
呼び出しローラ94は、図示しない給紙ソレノイドによって用紙束Pから退避する位置と用紙束Pの上面に当接する位置との間で昇降するようになっている。分離給送部95は、左右一対のフィードローラ95a、95bと、この一対のフィードローラ95a、95b間に掛け渡された給紙ベルト95cと、搬送路を挟んで給紙ベルト95cと対向したセパレートローラ96で構成されている。
給紙ベルト95cにセパレートローラ96が圧接したフィードニップの手前側には、拡大示するように重送検知手段K4が配設されている。この重送検知手段K4は前記実施形態と同様に光学式や超音波式等で構成することができ、この実施形態では光学式の重送検知手段K4を使用し、上側に発光素子K4aを配設し、下側に受光素子K4bを配設している。そして両者の間に用紙が2枚以上進入してきた場合に受光素子K4bにより検知される受光量に基づいて重送の有無を検知するようにしている。
前記重送検知手段K4の配設位置、すなわちフィードニップまでの距離は、図5A〜図5Cと同様に少なくとも3つの実施形態が可能である。図8は、拡大示するように、フィードニップから距離βだけ搬送上流側に離間させて重送検知手段K4を配設している(図5Aに対応した配設位置)。そして、呼び出しローラ94による繰り出し時の紙間を最小に設定しても、フィードニップに2枚以上の用紙が挟み込まれないようにしている。この際の重送検知手段K4の作動は、前記画像形成装置の給紙装置で説明した作動と同様である。
給紙ベルト95cは、給紙方向(時計回転方向)に回転し、セパレートローラ96は、給紙方向と逆方向に回転するようになっている。また、セパレートローラ96は、用紙が重送された場合に、給紙ベルト95cに対して逆方向に回転する。しかし、セパレートローラ96が給紙ベルト95cに接している場合、または用紙を1枚のみ搬送している場合には、図示しないトルクリミッタの働きにより、給紙ベルト95cに連れ回りするようになっている。
分離給送部95は、ストッパ爪93が破線位置に退避した状態で、呼び出しローラ94が給紙トレイ91に載置された用紙束Pの最上位の用紙(先行紙P1)に転接する。これにより、繰り出した用紙を下流側に送り出し、当該用紙が重送された場合に2枚目以降の用紙を給紙ベルト95cとセパレートローラ96とにより分離して下流側に送り出すようになっている。
プルアウト部98は、搬送経路を挟むように配置された一対のローラからなるグリップローラ対98aと、当該グリップローラ対98aの下流側に配設された用紙検知手段K2とを有している。プルアウト部98は、グリップローラ対98aと分離給送部95の駆動タイミングにより、送り出された用紙を一次突当整合し、整合後の用紙を搬送方向下流側に搬送するようになっている。また、用紙検知手段K2は、分離給送部95から搬送される用紙の前端を検知するようになっている。
ターン部99は、搬送経路の上から下に向けてカーブした搬送経路からなり、本発明に係る検知手段としてのレジストセンサ104と、読取入口ローラ対105とを有している。ターン部99は、プルアウト部98から搬送された用紙をカーブした搬送経路を搬送することによりターンさせて、読取入口ローラ対105により用紙の表面を下方に向けてスリットガラス106の近傍まで搬送するようになっている。また、レジストセンサ104は、プルアウト部98から読取搬送部100に搬送される用紙の前端および後端を検知するようになっている。
読取搬送部100は、スリットガラス106に搬送経路を挟んで対向する位置に配置された読取ガイドと、読取終了後の搬送経路を挟むように配置された一対のローラからなる読取出口ローラ対108とを有している。読取搬送部100は、スリットガラス106の近傍まで搬送された用紙を読取ガイドによりガイドしながら原稿表面をスリットガラス106に接触させながら搬送する。そして画像読取位置109において搬送される原稿画像を図示しないスキャナ部の光学系により読み取らせ、読取終了後の用紙を読取出口ローラ対108により搬送方向下流側にさらに搬送するようになっている。
排紙部101は、排紙口の近傍に一対のローラからなる排紙ローラ対110と、排紙センサ111とを備えている。排紙ローラ対110は、読取出口ローラ対108により搬送された用紙を排紙トレイ112に排紙するようになっている。また、排紙センサ111は、読取出口ローラ対108により搬送され、排紙口から排紙トレイ112に排紙される用紙の後端を検知するようになっている。
スイッチバック部102は、排紙口の近傍に設けられた切換爪113と、反転ローラ対114とを有している。切換爪113は、図示しない反転切換ソレノイドの駆動によって、上下動するようになっている。当該上下動の下側位置が、排紙ローラ対110より搬送される用紙を反転ローラ対114へ搬送する搬送経路に切り換える位置(破線で示す位置)である。また上側位置が、反転ローラ対114によりスイッチバックされた用紙をグリップローラ対98aへ搬送するスイッチバック通路102aに切り換える位置(実線で示す位置)である。また、反転ローラ対114は用紙の両面読み取りを行うためにスイッチバックされる用紙をスイッチバック通路102aに反転搬送するようになっている。
したがって、スイッチバック部102は、切換爪113、反転ローラ対114およびスイッチバック通路102aを介して両面読み取りを行う用紙をグリップローラ対98aにスイッチバックして搬送するようになっている。
以上、本発明の実施形態について述べたが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば前記実施形態では分離給送部としてFRR給紙方式やRF給紙方式を例に取ったが、他方式の分離給送部を使用することも可能である。