JP2017153377A - 太陽光を利用する農業ハウスにおいて用いられる熱線反射フィルム構造体 - Google Patents

太陽光を利用する農業ハウスにおいて用いられる熱線反射フィルム構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、太陽光を利用する農業ハウスでの植物の栽培を経済的かつ効率的に行うことのできる、熱線反射フィルム構造体を提供することにある。【解決手段】本発明の上記課題は、屈折率の異なる少なくとも2種類の樹脂層を交互に積層して得られ、可視光(波長400〜750nmの光)の平均透過率が80%以上、熱線(波長800〜1100nmの光)の平均反射率が70%以上である多層積層フィルムの少なくとも片側表面に滑性付与層を設けた原フィルムを裁断した細帯状テープ11を経糸または緯糸とし、フィラメント糸12、13または紡績糸を緯糸または経糸として織編成した織編物からなり、フィラメント糸または紡績糸の太さが該細帯状テープの幅の0.01〜0.30倍であり、隣接する該細帯状テープの間隔が該細帯状テープの幅の0.1〜0.5倍である、熱線反射フィルム構造体を用いることにより解決される。【選択図】図2

Description

本発明は、太陽光を利用する農業ハウスにおいて用いられる熱線反射フィルム構造体に関する。
農業ハウスを利用して植物を栽培することは、囲われた空間を制御して植物の育成に最適な環境を作り出し、植物の収穫量増および高品質化を図れることから広く行われている。特に、近年は、人口増に伴う食料危機の問題から、農業ハウスを用いた植物の効率的な栽培方法についてさまざまな研究が進められている。
植物の光合成は、下記式(1)に示されるように、可視光を駆動源として、空気中から吸収した炭酸ガスと、地中等からを吸収した水から、酸素ガスと炭水化物とを生成する反応であり、植物を大量かつ経済的に栽培するためには、人工光よりも太陽光を利用することが好ましい。
6CO + 6HO → 6O + C12 (1)
太陽光を利用する農業ハウスにおいては、太陽光には、植物の光合成に利用される波長400〜750nmの光(以下、「可視光」という場合がある。)と共に、農業ハウス内の温度を上昇させる波長800〜1100nmの光(以下、「熱線」という場合がある。)が含まれており、農業ハウス内の温度上昇を防ぐためには、熱線を遮断することが必要となる。これは、農業ハウス内の温度が熱線により上昇すると、植物の生育に適した温度(以下、「適温」という。)に保つために、換気、除湿冷却等に手間、コストを要するためである。
特許文献1〜4には、農業用フィルムとして、ポリエチレン、ポリエステル等の合成樹脂フィルムに、金属蒸着層、金属箔、金属含有層等を積層し、熱線等を遮断することが記載されている。しかしながら、特許文献1〜2および4には太陽光を反射し遮光することは記載されているが、可視光を透過することは記載されておらず、また特許文献3には、積層フィルムが可視光透過性能、遠赤外線反射性能を有することが記載されているが、基本的には金属含有層により遠赤外線を反射するものであるため、「遠赤反射率(%)」は「81〜89%」と高いが、「可視光透過率(%)」は「50〜65%」と低いものとなっている(実施例1〜9)。
また、特許文献5〜7で提案されているように、農業ハウスでの植物の栽培において、農業ハウス内の二酸化炭素濃度を高く維持することにより、光合成を活発に行わせ、植物の生育を促進させることが行われている。
これらにおいて、日中に農業ハウス内を20〜30℃程度の適温に保つために、経済的な手段である換気を採用すると、換気に伴い農業ハウス内に供給した二酸化炭素が外部に放出されるため、日中において農業ハウス内の温度を適温に保ちつつ二酸化炭素濃度を高く維持することが難しくなる。また、特許文献6では、日中、植物栽培施設を事実上密閉状態として、施設内の炭酸ガス濃度を高く保つと共に、冷房設備を用いて施設内の温度を適温に保つことが提案されているが、日中に冷房設備を稼働させて、広い施設内の温度を適温に維持するためには、多大のエネルギーを要するため経済的とはいえない。
特開2001−009996号公報 特開2004−176210号公報 特開2012−206430号公報 特開2013−252107号公報 特許第2963427号公報 特許第3917311号公報 特開昭53−098246号公報
本発明の課題は、太陽光を利用する農業ハウスにおいて用いられ、植物の栽培を経済的かつ効率的に行うことのできる、熱線反射フィルムを提供することにある。
本発明の上記課題は、太陽光を利用する農業ハウスにおいて用いられる熱線反射フィルム構造体として、屈折率の異なる少なくとも2種類の樹脂層を交互に積層して得られ、可視光の平均透過率が80%以上、熱線の平均反射率が70%以上である多層積層フィルムの少なくとも片側表面に滑性付与層を設けた原フィルムを裁断した細帯状テープを経糸または緯糸とし、フィラメント糸または紡績糸を緯糸または経糸として織編成され、該フィラメント糸または紡績糸の太さが該細帯状テープの幅の0.01〜0.30倍であり、隣接する該細帯状テープの間隔が該細帯状テープの幅の0.1〜0.5倍である、織編物からなる熱線反射フィルム構造体を用いることにより解決される。
農業ハウス内の二酸化炭素濃度を高く維持できると共に、農業ハウス内を経済的に適温に保つことのできる農業ハウスとして、図4に示すような農業ハウス(以下、「先の農業ハウス」という。)が提案され、2011年3月に、農業情報学会より、「農業・食料産業イノベーション大賞」を受賞したところである。
先の農業ハウスは、図4に示すように、次のような特徴を有するものである。
a)農業ハウスの天井部101と栽培部102とを透明な樹脂板である「サニーコート103」で断熱・区画したこと
b)「サニーコート103」の上部に、「近赤外線吸収フィルム104」を張り渡し、温度を上昇させる波長800nm以上の光を吸収して遮断すると共に、植物の生育に必要な可視光を透過するようにしたこと
c)天井部101に設けた天窓105を介して空気を換気し、「近赤外線吸収フィルム104」の発熱による温度上昇を防ぐようにしたこと
d)該栽培部102に、「CO発生装置106」を設けて二酸化炭素濃度を高く維持すると共に、「ヒートポンプ107」を設けて温度を適温に保つようにしたこと
このように、本発明者等が先に提案した農業ハウスは、農業ハウスの天井部と栽培部とを透明な樹脂板である「サニーコート」で断熱・区画することにより、二酸化炭素が栽培部から漏れ出ないので、栽培部の二酸化炭素濃度を経済的に高濃度に保つことができ、また、「近赤外線吸収フィルム」の発熱を栽培部と断熱・区画された天井部から、天井部に設けた天窓を介して外部に放出するので、栽培部の温度上昇を防止できるものである。
本発明者等は、太陽光を利用する農業ハウスにおいて、先の農業ハウスの「サニーコート」および「近赤外線吸収フィルム」に代えて、特定の構造・物性を備えた熱線反射フィルム構造体を用いることにより、先の農業ハウスに比べ、植物の栽培を一層経済的かつ効率的に行えることを見出し、本発明の熱線反射フィルムの発明を成したものである。
本発明の要旨を以下に示す。
(1)太陽光を利用する農業ハウスにおいて用いられる熱線反射フィルム構造体であって、該熱線反射フィルム構造体は、屈折率の異なる少なくとも2種類の樹脂層を交互に積層して得られ、波長400〜750nmの光の平均透過率が80%以上、波長800〜1100nmの光の平均反射率が70%以上である多層積層フィルムの少なくとも片側表面に滑性付与層を設けた原フィルムを裁断した細帯状テープを経糸または緯糸とし、フィラメント糸または紡績糸を緯糸または経糸として織編成された織編物からなり、フィラメント糸または紡績糸の太さが該細帯状テープの幅の0.01〜0.30倍であり、隣接する該細帯状テープの間隔が該細帯状テープの幅の0.1〜0.5倍である、ことを特徴とする熱線反射フィルム構造体。
(2)前記多層積層フィルムが、少なくとも片側表面に紫外線吸収層を設けたものである、(1)に記載の熱線反射フィルム構造体。
(3)前記紫外線吸収層が、紫外線吸収剤を含有するバインダー樹脂からなり、該バインダー樹脂としてフッ素樹脂を用いる、(2)に記載の熱線反射フィルム構造体。
(4)前記熱線反射フィルム構造体の開孔率が10〜30%、波長350nmの光線透過率が7〜21%である、(1)〜(3)のいずれかに記載の熱線反射フィルム構造体。
(5)前記多層積層フィルムの屈折率の高い樹脂層が、縮合型芳香環を有する樹脂からなる樹脂層である、(1)〜(4)のいずれかに記載の熱線反射フィルム構造体。
(6)前記多層積層フィルムの前記2種類の樹脂層の、前記面内方向における平均屈折率の差が、少なくとも0.03である、(1)〜(5)のいずれかに記載の熱線反射フィルム構造体。
(7)前記多層積層フィルムが、光学厚みが150〜400nmの樹脂層を少なくとも101層有する、(1)〜(6)のいずれかに記載の熱線反射フィルム構造体。
本発明の熱線反射フィルム構造体は、可視光の透過率が高く、熱線の反射率が高い多層積層フィルムを用いて形成されたものであるので、植物の生育を妨げることなく、農業ハウス内の温度の上昇を抑制することができる。
また、本発明の熱線反射フィルム構造体は、この多層積層フィルムの両表面に滑性付与層を設けた原フィルムを裁断した細帯状テープを経糸または緯糸とし、フィラメント糸または紡績糸(以下、「フィラメント糸等」ともいう)を緯糸または経糸として織編成した織編物であるので、織編成を円滑かつ均質に行うことができ、多層積層フィルム単体を用いた場合に比べ、巻取り性、耐ブロッキング性、耐引裂性、耐久性等の機械的強度を良好なものとすることができ、また、細帯状テープ、フィラメント糸等の間に形成される開口により、通気性を確保することができる。
さらに、本発明の熱線反射フィルム構造体は、この織編物の細帯状テープの幅、隣接するフィラメント糸等の間隔及び隣接する細帯状テープの間隔を特定の範囲とすることにより、開孔率を適正な範囲とし、多層積層フィルム単体を用いた場合に比べ、遜色のない高い可視光の透過率及び熱線の反射率を確保しつつ、波長350nmの光線(以下、「紫外線」という場合がある。)の透過率を適正な範囲とすることができる。
本発明の熱線反射フィルム構造体を設けた農業ハウスの模式図である。 本発明の熱線反射フィルム構造体の一つの実施態様を示す一部正面図である。 本発明の熱線反射フィルム構造体の他の実施形態を示す一部正面図である。 先の農業ハウス(農業食料産業イノベーション大賞を受賞した農業ハウス)を示す模式図である。
以下に、本発明の実施の形態について、図面も用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
図4は先の農業ハウスを示す模式図であって、先に説明したように、農業ハウスの天井部101と栽培部102とを透明な樹脂板である「サニーコート103」で断熱・区画して、栽培部102の二酸化炭素濃度を経済的に高濃度に保つと共に、「近赤外線吸収フィルム104」の発熱を栽培部102と断熱・区画された天井部101から、天窓105を通して外部に放出し、栽培部102の温度上昇を防止するものである。
図1は本発明の熱線反射フィルム構造体を設けた農業ハウスの一例を示す模式図である。この太陽光を利用する農業ハウス1には、上部に本発明の熱線反射フィルム構造体3が張り渡され、下部には、農業ハウス1の内部に二酸化炭素を供給するCO供給手段2と、農業ハウス1の内部を冷却する除湿冷却手段4が備えられている。この農業ハウス1では、日中は天窓5を閉鎖して農業ハウス内の二酸化炭素濃度を経済的に高濃度に維持し、夜間は天窓5を開放して農業ハウス内の温度を低下させることができる。
この熱線反射フィルム構造体3は、次のような物性・構造を備えている。
1)屈折率の異なる少なくとも2種類の樹脂層を交互に積層して得られ、可視光の平均透過率が80%以上、熱線の平均反射率が70%以上である多層積層フィルムの少なくとも片側表面に滑性付与層を設けた原フィルムを用いて形成されたものである。
2)この原フィルムを裁断した細帯状テープを経糸または緯糸とし、フィラメント糸等を緯糸または経糸として織編成した織編物である。
3)この織編物において、該フィラメント糸等の太さを該細帯状テープの幅の0.01〜0.30倍とし、隣接する該細帯状テープの間隔を該細帯状テープの幅の0.1〜0.5倍としたものである。
本発明の熱線反射フィルム構造体を設けた、例えば日中は天窓を閉鎖し夜間は天窓を開放する、太陽光を利用する農業ハウスは、「サニーコート」のような樹脂板を設けないため、先の農業ハウスに比べて、次のような優れた点を有している。
1)植物の生育に必要な可視光の透過率を高めることができる。(「サニーコート」を設けた場合には、図4にも示されているように、可視光の透過率は高々70%程度と低い。)
2)農業ハウスの設備費を軽減できる。
3)夜間、特に朝方に、栽培部と天井部との間の温度差が大きくなり、「サニーコート」の下面に結露が生じて水滴となって植物に当たり、植物の果実、葉、花等が変色・劣化するという問題が生じない。
また、先の農業ハウスでは、熱線を遮断するために「近赤外線吸収フィルム」を用いているが、このような熱線吸収タイプのフィルムでは熱線を吸収することでフィルム自体が発熱し、農業ハウス内の温度が上昇する。一方、本発明の熱線反射フィルム構造体は「熱線(波長800〜1100nmの光)の平均反射率が70%以上である多層積層フィルム」という熱線反射タイプのフィルムを用いるため、農業ハウス内の温度が上昇しにくい。
次に、本発明の熱線反射フィルム構造体の物性・構造などについて、順次説明する。本発明の熱線反射フィルム構造体が適用される農業ハウスは、太陽光を利用するものである。LED等の人工光を用いると、光合成の駆動源である光エネルギーの量を調整・制御できるものの、照射エネルギーが必要となるため、植物の大量生産には適さない。
そして、太陽光を利用する一般の農業ハウスでは、太陽光に含まれる熱線により農業ハウス内の温度が上昇するため、自然換気、強制通気等により農業ハウス内を適温に保つ必要があるが、換気に手間・コストを要し、また、換気により病害虫が農業ハウス内に侵入しやすくなる。
また、二酸化炭素濃度を高く維持する農業ハウスでは、できるだけ二酸化炭素を外部に逃がさないために換気率を低く保つ必要があるが、そのためには、日中に冷房設備を稼働させ広い農業ハウス内の温度を適温に維持しなければならず、冷房に多量のエネルギーを要する。
本発明の熱線反射フィルム構造体が適用される、太陽光を利用する農業ハウスは、光合成が活発に行われる日中は、天井部に設けた天窓を閉鎖して農業ハウスを密閉状態とし、農業ハウス内の温度、二酸化炭素濃度および湿度を、光合成が活発に行われる範囲に維持・制御し、また、光合成が活発に行われない夜間は、天井部に設けた天窓を開放して、農業ハウス内の温度を翌日の日中の温度上昇に備えて低下させるのが好適であり、特定の構造・物性を備えた熱線反射フィルム構造体を用いることにより、植物の栽培を経済的かつ効率的に行うことができる。本発明の熱線反射フィルム構造体の第1の特徴は、熱線反射フィルム構造体の素材フィルムとして、農業ハウスにおいて一般に用いられているような、金属蒸着層、金属箔、金属含有層の金属により熱線のみならず可視光も反射するタイプのフィルムではなく、光学干渉フィルター、合わせガラスの分野で用いられる、熱線反射タイプの多層積層フィルムを用いると共に、この多層積層フィルムの少なくとも片側表面に滑性付与層を設けたことにある。具体的には、この多層積層フィルムは、太陽光に含まれる可視光の平均透過率が80%以上と高く、また、太陽光に含まれる熱線の平均反射率が70%以上と高いものである。
可視光の平均透過率が80%以上という高い多層積層フィルムを用いることにより、光合成の駆動源となる可視光を植物に十分に供給できるので、植物の生育を十分に促進することができる。
また、熱線の平均反射率が70%以上という高い多層積層フィルムを用いることにより、農業ハウス内の温度を上昇させる熱線を十分に遮断でき、さらに、熱線吸収フィルムのようにフィルム自体の発熱も少ないため、農業ハウス内の温度の上昇を抑えることができ、除湿冷房に要するコストを低減することができる。
このような可視光の高い平均透過率および熱線の高い平均反射率を有する素材フィルムとしては、
〇特表平9−506837号公報に記載されているような、光学干渉フィルターに用いられる、ポリエステル系多層光学フィルム、
〇特表平11−508380号公報に記載されているような、窓ガラスの表面に貼着される、多層ポリマーフィルムと透明導電体とを含むフィルム、
〇国際公開第2005/040868号公報に記載されているような、合わせガラスでガラスに積層して用いられる、積層ポリエステルフィルム、
〇国際公開第2013/080987号公報に記載されているような、合わせガラスでガラスに積層して用いられる、二軸延伸積層ポリエステルフィルム
〇特開2014−228837号公報に記載されているような、合わせガラスでガラスに積層して用いられる、二軸延伸積層ポリエステルフィルム、
等の多層積層フィルムを好適に用いることができる。
これらの多層積層フィルムは、屈折率が異なる少なくとも2種類の樹脂層が交互に積層された多層積層フィルムであって、太陽光のうち可視光は透過させ、熱線を選択的に反射させることができる。多層積層フィルムにより可視光の透過及び熱線の選択的反射を適正に行うためには、2種類の樹脂層の前記面内方向における平均屈折率の差は、少なくとも0.03であることが好ましい。また、多層積層フィルムは、光学厚みが150〜400nm、好ましくは200〜300nmの樹脂層を少なくとも101層有することが好ましい。
本発明における多層積層フィルムは、上記特性を有するものであれば特に制限されないが、屈折率の異なる少なくとも2種類の樹脂層が交互に積層されていることが好ましい。屈折率の異なる樹脂層の交互積層による反射は、反射波長は樹脂層の光学厚さ(屈折率×厚み)によって、反射率は樹脂層の総数と樹脂層間の屈折率差によって設計することができ、所望の反射特性となるように、樹脂の選択および樹脂層の厚さや積層数を調整することができる。
多層積層フィルムの樹脂層を形成する樹脂としては、それ自体公知のものを採用でき、ポリエステル、ポリスルホン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリケトン、ポリアクリル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリオレフィン、ポリフルオロポリマー、ポリウレタン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレン硫黄、ポリ塩化ビニール、ポリエーテルイミド、テトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトンが挙げられ、これらはホモポリマーに限られず、共重合であってもよい。また、樹脂間の屈折率差を高めやすいことから、少なくとも樹脂層の一つが、屈折率を高くしやすいナフタレン環などの縮合型芳香環を樹脂の繰り返し単位に有する樹脂が好ましく、共重合成分として存在させても良い。
これらの中でも、屈折率の高い樹脂層に用いる樹脂としては、延伸によって高度の分子配向を発現しやすいことから結晶性を有する熱可塑性樹脂が好ましく、特に融点が200℃以上の熱可塑性樹脂が好ましい。そのような観点から、具体的な熱可塑性樹脂としては、ポリエステルが好ましく、さらにポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましく、特に屈折率が高く、高度の延伸倍率で延伸できることから、縮合型芳香環を有するポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。
一方、屈折率の低い樹脂層に用いる樹脂としては、屈折率の高い樹脂層と十分な屈折率差が発現でき、かつ必要な密着性を維持できるものであれば、特に制限されない。例えば屈折率の高い樹脂層に用いた樹脂に屈折率を低くできる共重合成分を共重合した樹脂なども用いることができる。また、延伸などによって屈折率を高める必要がないことから非晶性樹脂や屈折率の高い樹脂層の樹脂よりも十分に低い融点を有する樹脂を用いることもできる。例えば、エチレンテレフタレート成分を含む非晶性ポリエステル等を好適に用いることができる。
さらに、この多層積層フィルムの両表面に滑性付与層を設けることにより、多層積層フィルムを裁断した細帯状テープを経糸または緯糸とし、フィラメント糸等を緯糸または経糸として織編成を円滑かつ均質に行うことができる。この滑性付与層を設けない場合には、織編成を行う際に、細帯状テープが貯蔵中にブロッキングを生じたり、織編機内を円滑に移送できなくなり、織編成が円滑に行えない、織編成が均質に行えないといった不都合が生じることとなる。
滑性付与層は、多層積層フィルムの両表面に平均粒径が0.05〜0.5μmの微細粒子やワックスなどの滑剤を含有する樹脂層を塗液として塗設したり、共押出によって積層することにより形成することができる。
前記微細粒子としては、例えばポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート共重合架橋体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリアクリロニトリル、ベンゾグアナミン樹脂、ポリスチレン粒子の外殻をアクリル系樹脂で覆ったコアシエル型粒子等の有機微粒子、及びシリカ、アルミナ、二酸化チタン、カオリン、タルク、グラファイト、炭酸カルシウム、長石、二硫化モリブデン、カーボンブラック、硫酸バリウム等の無機微粒子等があげられる。これらの中、有機微粒子が好ましい。
この微細粒子の平均粒径が0.05μm未満であると粒子量によってはフィルムの滑り性が不足しやすく、一方0.5μmより大きくなると塗膜からの粒子の脱落が発生するため好ましくない。
以下、塗設する場合を例として説明する。
微細粒子を固着するバインダーとしては、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル―酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、アクリル―ポリエステル樹脂等を例示することができる。これら樹脂は単一重合体でも共重合体でもよく、また混合体でもよい。
前記微細粒子と被膜形成樹脂(バインダー)との割合は被膜表面特性の設計で定めるのが好ましく、全被膜形成成分当り、微細粒子が0.1〜40重量%であり、結合剤となる被膜形成樹脂(バインダー)が60〜99.9重量%であることが好ましい。微細粒子が少なすぎると、被膜に均一かつ所定量の突起を付与することができず、他方多すぎると、分散性が悪化し、均一かつ所定量の突起を付与することが難しい。バインダーの被膜形成樹脂が少なすぎると、被膜のポリエステルフィルムへの密着性が低下し、他方多すぎると耐ブロッキング性が低下する。
多層積層フィルムに滑性付与層を設ける方法としては、微細粒子及び被膜形成樹脂を含有する塗液、好ましくは水性塗液を多層積層フィルムの製造工程中で結晶配向が完了する前のフィルム表面に塗布・乾燥固化する方法(インラインコーライング法)、又は二軸配向した多層積層フィルムに微細粒子を含有する樹脂塗液を塗布・乾燥固化する方法等を採用することができるが、前者の方が好ましい。殊に、縦延伸多層積層フィルムの表面に水性塗液を塗布し、次いで乾燥、横延伸処理するのが好ましい。
ここで、結晶配向が完了する前の多層積層フィルムとは、フィルムを溶融押出し、急冷固化した未延伸フィルム、該未延伸フィルムを縦方向又は横方向の何れか一方に配向せしめた一軸延伸フィルム、更には二軸方向に延伸されているが、少なくとも一方向は低倍率延伸であって更に該方向の延伸配向を要する二軸延伸フィルム(最終的に縦方向及び/又は横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法などを単独又は組合せて適用するとよい。また共押出についてはそれ自体公知の方法を採用できる。
本発明の熱線反射フィルム構造体の第2の特徴は、上記多層積層フィルムの少なくとも片側、好ましくは両表面に滑性付与層を設けた原フィルムを裁断した細帯状テープを経糸または緯糸として用い、フィラメント糸等を緯糸または経糸として織編成した織編物としたことである。
このように、多層積層フィルムをフィルム単体で用いるのではなく、多層積層フィルムの表面に滑性付与層を設けた原フィルムを裁断した細帯状テープを経糸または緯糸として織編成した織編物として用いることにより、熱線反射フィルム構造体の巻取り性、耐ブロッキング性、耐引裂性、耐久性等の機械的強度を良好なものとすることができる。
さらに、本発明の熱線反射フィルム構造体は織編物であるため、細帯状テープ、フィラメント糸等間に形成される開口により、通気性を確保することができる。このように、本発明の熱線反射フィルム構造体は、フィルム単体を用いた場合に比べ、通気性に優れているため、夜間、特に朝方に、栽培部と天井部との間の温度差が大きくなり、フィルムの下面に結露が生じて水滴となって植物に当たり、植物の果実、葉、花等が変色・劣化するという問題の発生を防止することができる。
さらに、多層積層フィルムを単体で用いた場合には、紫外線を過度に遮蔽しすぎ、ナスなどの果実が生育した際の色づきが悪い、農業ハウス内で蜂が花に十分に寄りつかず受粉活動が正常に行われない等の問題が生じる場合があるが、本発明の熱線反射フィルム構造体では、開口が形成されているため、このような紫外線を過度に遮蔽しすぎることに伴う弊害を避けることができる。
本発明の熱線反射フィルム構造体の第3の特徴は、この織編物において、フィラメント糸等の太さを該細帯状テープの幅の0.01〜0.30倍とし、隣接する該細帯状テープの間隔を該細帯状テープの幅の0.1〜0.5倍としたことである。なお、本発明におけるフィラメント糸等としては、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸、紡績糸のいずれを用いても良く、特に制限はされない。
図2及び図3に示すように、多層積層フィルムを細帯状に裁断(スリット加工)した細帯状テープ(経糸)11を、フィラメント糸等(緯糸)12で織ったものが一例として挙げられるが、これらの図を用いて説明すると、フィラメント糸等(緯糸)12の太さA、細帯状テープ(経糸)11の幅B、隣接するフィラメント糸等(緯糸)12の間隔C及び隣接する細帯状テープ(経糸)11の間隔Dを特定の範囲とすることにより、熱線反射フィルム構造体の開孔率を適正な範囲とし、多層積層フィルム単体を用いた場合に比べ、遜色のない高い可視光の透過率及び熱線の反射率を確保しつつ、紫外線透過率を適正な範囲とするものである。
具体的には、織編物において、フィラメント糸等(緯糸)12の太さを、細帯状テープ(経糸)11の幅の0.01〜0.30倍とし、隣接する細帯状テープ(経糸)11の間隔を、細帯状テープ(経糸)11の幅の0.1〜0.5倍とすることにより、開孔率を適正な範囲とし、多層積層フィルム単体を用いた場合に比べ、遜色のない高い可視光の透過率及び熱線の反射率を確保しつつ、紫外線透過率を適正な範囲とすることができる。なお、隣接するフィラメント糸等(緯糸)12の間隔は1.0〜10mmの範囲が本発明の効果の点から好ましい。
細帯状テープ(経糸)11の幅としては、1〜10mmが好ましく、2〜6mmがより好ましく、3〜5mmがさらに好ましい。細帯状テープ(経糸)11の間隔[隣合う細帯状テープ(経糸)11の端辺の距離]としては、0.2〜1.0mmが好ましく、0.4〜0.8mmがより好ましく、0.5〜0.7mmがさらに好ましい。フィラメント糸等(緯糸)12の太さとしては、0.05〜0.35mmが好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましく、0.15〜0.25mmがさらに好ましい。本発明の熱線反射フィルム構造体は、織編物の細帯状テープの幅、フィラメント糸等の太さ、隣接するフィラメント糸等の間隔及び隣接する細帯状テープの間隔を上記のように設定することにより、開孔率を適正な範囲とし、多層積層フィルム単体を用いた場合に比べ、遜色のない高い可視光の透過率及び熱線の反射率を確保しつつ、紫外線透過率を適正な範囲とすることができる。
熱線反射フィルム構造体の紫外線透過率は7〜21%とするのが好ましい。紫外線透過率が7%以上であると、ナスなどの果実が生育した際の色づきが悪い、農業ハウス内で蜂が花に十分に寄りつかず受粉活動が正常に行われない等の問題が生じにくくなるため好ましい。また、紫外線透過率が21%以下であると、植物の成長が妨げられる等の問題が生じにくくなるため好ましい。
本発明の熱線反射フィルム構造体のような農業フィルムは、日中は太陽光に曝されることから、紫外線による劣化を防止するために、少なくとも片面に紫外線吸収層を設けることが好ましい。
熱線反射フィルム構造体を構成する多層積層フィルムの屈折率の高い樹脂層を、ナフタレン環等の縮合型芳香環を有する樹脂で形成する場合には、この樹脂層が紫外線による劣化を受けやすくなるため、紫外線吸収層を設けることが特に効果的である。なお、本発明の熱線反射フィルム構造体は、フィルム単体ではなく前述の開口部を設けているので、このような紫外線吸収層を設けた場合でも、必要な紫外線を透過させつつ、熱線反射フィルム構造体自身の劣化を抑制することができる。
紫外線吸収層の厚さは、1〜5μmが好ましい。紫外線吸収層の厚さが1μm以上であれば樹脂層の劣化を十分に防止することができ、また、5μm以下であれば経済的・効率的に樹脂層の劣化を十分に防止することができるので好ましい。
紫外線吸収層に含有させる紫外線吸収剤として、例えばトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、サルチレート系紫外線吸収剤を挙げることができ、好ましくはトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いることができる。具体的には、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)4,6−ビス(1−エチル−1−フェニルエチル)フェノール、フェノール,2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1,1−ジメチルエチル)4−メチル、2,2’−メチレンビス(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)ロキシ]フェノール、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチロキシフェニシル)−1,3,5−トリアジン、ベンゼンプロパン酸,3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7−9分岐および鎖状アルキルエステル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール,2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが例示される。
また、紫外線吸収層のバインダー樹脂としては、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、メラミン系樹脂、セルロース樹脂、およびポリアミド樹脂を例示することができる。これらのバインダー樹脂の中で、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂が光安定性に優れるため好ましい。
紫外線吸収層を設ける手法としては、例えば、多層積層フィルムの表面に共押出法により紫外線吸収剤層を設ける手法、コーティングなどの方法で紫外線吸収剤層を設ける手法が挙げられる。また、前述の滑性付与層を紫外線吸収層としても良い。
熱線反射フィルム構造体の開孔率は、10〜30%とするのが好ましい。なお、本発明における「開孔率」は、熱線反射フィルム構造体の一方の表面における縦横それぞれ10cmの正方形の部分を、この部分を表面垂直方向から表面観察を行った場合に、裏面側が遮る物なく見える部分を開孔とし、その面積を開孔面積の総和(Scm)を求めて、式:[S(cm)/100(cm)]×100により求めたものである。開孔率が10%以上であると、熱線反射フィルム構造体の通気性を良好なものとすることができ、光合成が行われない夜間に天井部に設けた天窓を開放して、農業ハウス内の温度を翌日の日中の温度上昇に備えて低下させる場合に、農業ハウス下部の日中に加熱された空気を熱線反射フィルム構造体を通して外部に逃がすことができ、また、夜間、特に朝方に、屋根に近接する上部の空気が冷やされた場合でも、フィルム構造体下面に生じた結露が水滴となって植物に当たり、植物の果実、葉、花等が変色、劣化等の品質低下を生じたり、フィルム構造体自体に劣化が生じるのを防止できるため好ましい。また、開孔率が30%以下であると、多層積層フィルムによってもたらされる高い可視光の透過率及び熱線の反射率が確保できるため好ましい。
本発明の熱線反射フィルム構造体は、可視光の透過率が高く、熱線の反射率が高い多層積層フィルムを用いて形成されたものであるので、植物の生育を妨げることなく、農業ハウス内の温度の上昇を抑制することができる優れたものである。
また、本発明の熱線反射フィルム構造体は、この多層積層フィルムの表面に滑性付与層を設けた原フィルムを裁断した細帯状テープを経糸または緯糸とし、フィラメント糸等を緯糸または経糸として織編成した織編物であるので、織編成を円滑かつ均質に行うことができ、多層積層フィルム単体を用いた場合に比べ、巻取り性、耐ブロッキング性、耐引裂性、耐久性等の機械的強度を良好なものとすることができ、また、細帯状テープ、フィラメント糸等の間に形成される開口により、通気性を確保することができる優れたものである。
さらに、本発明の熱線反射フィルム構造体は、この織編物のフィラメント糸等の太さ、細帯状テープの幅、隣接するフィラメント糸等の間隔及び隣接する細帯状テープの間隔を特定の範囲とすることにより、開孔率を適正な範囲とし、多層積層フィルム単体を用いた場合に比べ、遜色のない高い可視光の透過率及び熱線の反射率を確保しつつ、紫外線透過率を適正な範囲とすることができる優れたものである。
以下、実施例・比較例により、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性や特性は下記の方法によって測定または評価した。
(1)可視光(波長:400−750nm)平均透過率、紫外線(波長350nm)透過率
分光光度計(島津製作所製、MPC−3100)を用い、各波長でのアルミ蒸着したミラーとの相対鏡面反射率を波長300nmから2,100nmの範囲で測定した。得られた透過率曲線から、JIS R 3106:1998に準じて、可視光平均透過率及び紫外光透過率を算出した。
(2)熱線(波長:800−1100um)平均反射率
分光光度計(島津製作所製、MPC−3100)を用い、各波長でのアルミ蒸着したミラーとの相対鏡面反射率を波長800nmから1,100nmの範囲で測定した。測定された反射率曲線から、熱線平均反射率を算出した。
1.製造例1:多層積層フィルムAの製造
特開2014−228837号公報の実施例1に示された製法と同様の製法により、多層積層フィルムAを製造した。
第1の層用でかつ保護層用であるポリエステルとして固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレート(以下「PEN」という)、第2の層用のポリエステルとしてシクロヘキサンジメタノールを30mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.77dl/gのシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート(以下「PETG」という)をそれぞれ準備した。
そして、第1の層用でかつ保護層用であるポリエステルを180℃で5時間、第2の層用ポリエステルを60℃で12時間乾燥後、押出機に供給し、PENは300℃、PETGは270℃まで加熱して溶融状態とした。第1の層のポリエステルを137層、第2の層のポリエステルを138層に分岐させた後、第1の層と第2の層におけるそれぞれの最大厚みと最小厚みの比が最大/最小で1.4倍まで連続的に変化するような積層構造部分と、該積層構造部分の両面に保護層を積層させるような多層フィードブロック装置を使用して積層し、その積層状態を保持したままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストした。そして、フィルム両面の最外層にPEN層からなる保護層を持ち、積層構造部の全層数が275層の未延伸多層積層フィルムを作成した。
このようにして得られた未延伸の多層積層フィルムを120℃にて予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より900℃のIRヒーターにて加熱して縦方向に3.5倍に延伸した。続いてテンターに供給し、145℃にて横方向に4.5倍に延伸した。得られた二軸配向多層積層フィルムを、180℃の温度で30秒間熱固定して、多層積層フィルムAを製造した。
得られた多層積層フィルムAは、全厚みが50μmであり、表面及び裏面の保護層の厚みが5μmであり、保護層を除いた積層部の第1の層と第2の層の光学厚み比が等しいものである。なお、これらの厚みは、供給量、第1の層と第2の層の吐出量を調整することにより、調整することができる。また、得られた多層積層フィルムAの可視光平均透過率は89%であり、熱線平均反射率は75%である。
2.製造例2:多層積層フィルムBの製造
製造例1において、縦方向の延伸後であって、横方向の延伸前の多層積層フィルムの両面に、次の組成の塗液(滑性付与塗液)をロールコート法で塗布厚さが3μmとなるように塗布し、次いで乾燥し、横方向の延伸を行うようにしたこと以外は、製造例1と同様にして、多層積層フィルムBを製造した。
塗液の組成は、アクリル―ポリエステル樹脂(高松油脂(株)製IN―170―6)の1.0wt%溶液 76.9部、ポリメタクリル酸メチル微粒子(平均粒径は0.06μmである)の1.0wt%溶液 3.1部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(日本油脂(株)製NS208.5)の1.0wt%溶液 2.0部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(日本油脂(株)製NS240)の1.0wt%溶液 18.0部であり、塗布量はウエットで2.7g/m2 である。
3.製造例3:多層積層フィルムCの製造
製造例2において、横方向の延伸後の延伸前の多層積層フィルムの片面に、オブリガート PW202(AGCコーテック株式会社製の紫外線吸収剤含有フッ素樹脂)をワイヤーバーを用いて多層積層フィルムの片面に塗布し、引き続き100℃で5分間の乾燥処理を行うことにより膜厚が1μmの紫外線吸収層を設けるようにしたこと以外は、製造例2と同様にして、多層積層フィルムCを製造した。
4.実施例1−1〜1−4
次のようにして、実施例1−1〜1−4の熱線反射フィルム構造体を製造した。
多層積層フィルムB(滑性付与層あり、紫外線吸収層なし)を裁断して細帯状テープを作成し、図3及び図4に示すように、この細帯状テープを細帯状テープ(経糸)11とし、ポリエチレン製のモノフィラメント糸をフィラメント糸等(緯糸)12として織編成し、熱線反射フィルム構造体とした。
この際、
〇細帯状テープ(経糸)11の幅Bを、表1の「細帯状テープの幅(B)[mm]」に示す値とし、
〇フィラメント糸等(緯糸)12の太さAを、表1の「モノフィラメント糸の太さ(A) [mm]」に示す値とし、
〇隣接するフィラメント糸等(緯糸)12の間隔Cを、表1の「モノフィラメント糸の間隔(C)[mm]」に示す値とし、
〇隣接する細帯状テープ(経糸)11の間隔Dを、表1の「細帯状テープの間隔(D)[mm]」に示す値として、
実施例1−1〜1−4の熱線反射フィルム構造体を織編成した。
これらの熱線反射フィルム構造体において、「隣接するフィラメント糸等の間隔」、「細帯状テープの幅に対するフィラメント糸等の太さの倍率」及び「細帯状テープの幅に対する隣接する細帯状テープの間隔の倍率」は、それぞれ、表1の「モノフィラメント糸の間隔(C)[mm]」、「A/B」及び「D/A」に示す値となっている。
5.比較例1
多層積層フィルムとして、多層積層フィルムA(滑性付与層及び紫外線吸収層なし)を用いた以外は、実施例1−1と同様に織編成して、熱線反射フィルム構造体を作成したが、多層積層フィルムAは表面の滑りが非常に悪いため、裁断して細帯状テープを作成する工程における張力変動が大きく、切断したり、細帯状テープの幅が不均一になったりして、均一な織り目の熱線反射フィルム構造体を得ることができなかった。
6.比較例2−1
多層積層フィルムB(滑性付与層あり、紫外線吸収層なし)を裁断・織編成することなく、そのまま比較例2−1の熱線反射フィルム構造体として用いた。
7.比較例2−2
フィラメント糸等(緯糸)12として、太さ1.5mmのポリエチレン製のモノフィラメント糸を用いた以外は、実施例1−1と同様に織編成して、比較例2−2の熱線反射フィルム構造体とした。
比較例2−2の熱線反射フィルム構造体において、「隣接するフィラメント糸等の間隔」、「細帯状テープの幅に対するフィラメント糸等の太さの倍率」及び「細帯状テープの幅に対する隣接する細帯状テープの間隔の倍率」は、それぞれ、表1の「モノフィラメント糸の間隔(C)[mm]」、「A/B」及び「D/A」に示す値となっている。
8.実施例2−1〜2−4
多層積層フィルムとして、多層積層フィルムC(滑性付与層及び紫外線吸収層あり)を用いた以外は、実施例1−1と同様に織編成して、実施例2−1の熱線反射フィルム構造体とした。
また、実施例2−1〜2−4において、
〇細帯状テープ(経糸)11の幅Bを、表2の「細帯状テープの幅(B)[mm]」に示す値とし、
〇フィラメント糸等(緯糸)12の太さAを、表2の「フィラメント糸等の太さ(A) [mm]」に示す値とし、
〇隣接するフィラメント糸等(緯糸)12の間隔Cを、表2の「フィラメント糸等の間隔(C)[mm]」に示す値とし、
〇隣接する細帯状テープ(経糸)11の間隔Dを、表2の「細帯状テープの間隔(D)[mm]」に示す値として、
実施例2−1〜2−4の熱線反射フィルム構造体とした。
これらの熱線反射フィルム構造体において、「隣接するフィラメント糸等の間隔」、「細帯状テープの幅に対するフィラメント糸等の太さの倍率」及び「細帯状テープの幅に対する隣接する細帯状テープの間隔の倍率」は、それぞれ、表2の「モノフィラメント糸の間隔(C)[mm]」、「A/B」及び「D/A」に示す値となっている。
9.比較例3−1
多層積層フィルムC(滑性付与層及び紫外線吸収層あり)を裁断・織編成することなく、そのまま比較例3−1の熱線反射フィルム構造体とした。
10.比較例3−2
隣接する細帯状テープ(経糸)11の間隔Dを2.40mmとした以外は、実施例2−1と同様に織編成して、比較例3−2の熱線反射フィルム構造体とした。
比較例3−2の熱線反射フィルム構造体において、「隣接するフィラメント糸等の間隔」、「細帯状テープの幅に対するフィラメント糸等の太さの倍率」及び「細帯状テープの幅に対する隣接する細帯状テープの間隔の倍率」は、それぞれ、表2の「モノフィラメント糸の間隔(C)[mm]」、「A/B」及び「D/A」に示す値となっている。
なお、実施例1−1〜1−4、比較例1、比較例2−2、実施例2−1〜2−4及び比較例3−2では、幅の広い細帯状テープ(経糸)11を、緯糸を用いてでしっかりと織るため、隣接する細帯状テープ(経糸)11の間に、太さE(0.2mm)のポリエチレン製のモノフィラメント糸(経糸)13を、経糸として介在させている。
上記実施例及び比較例の熱線反射フィルム構造体における、可視光(波長400〜750nmの光)の平均透過率、熱線(波長800〜1100nmの光)の平均反射率、及び紫外線(波長350nm)透過率を測定し、その結果を表1及び表2に示す。
Figure 2017153377
Figure 2017153377
〇表1に基づく考察
比較例1のように、滑性付与層を設けない多層積層フィルムAを用いた場合には、多層積層フィルムAは表面の滑りが非常に悪いため、裁断して細帯状テープを作成する工程における張力変動が大きく、切断したり、細帯状テープの幅が不均一になったりして、均一な織り目の熱線反射フィルム構造体を得ることができない。このため、熱線反射フィルム構造体の開孔率、可視光平均透過率、熱線平均反射率、紫外線透過率にもバラツキが生じてしまうこととなる。
また、滑性付与層を設けた多層積層フィルムBを用いた場合でも、比較例2−1のように、多層積層フィルムBを裁断・織編成することなく、そのまま熱線反射フィルム構造体とした場合には、表1に示すように「開孔率が0%」となり、通気性が確保できず、夜間、特に朝方に、栽培部と天井部との間の温度差が大きくなり、フィルムの下面に結露が生じて水滴となって植物に当たり、植物の果実、葉、花等が変色・劣化するという問題が発生する。さらに、表1に示すように「紫外線透過率が5%」と小さくなりすぎるため、ナスなどの果実が生育した際の色づきが悪い、農業ハウス内で蜂が花に十分に寄りつかず受粉活動が正常に行われない等の問題が生じるおそれがある。
また、滑性付与層を設けた多層積層フィルムBを用いた場合でも、比較例2−2のように、フィラメント糸等として太さ1.5mmという太いものを用いた場合には、表1に示すように、実施例1−1〜1−4に比べ、「開孔率が7%」と小さくなるため、可視光平均透過率が65%と小さくなりすぎてしまう。
多層積層フィルムBを用いた実施例1−1〜1−4の熱線反射フィルム構造体は、比較例1の熱線反射フィルム構造体に比べ、織編成を円滑かつ均質に行うことができ、また、このために熱線反射フィルム構造体の開孔率、可視光平均透過率、熱線平均反射率、紫外線透過率にもバラツキの小さい優れたものである。
また、実施例1−1〜1−4の熱線反射フィルム構造体は、比較例2−1の熱線反射フィルム構造体に比べ、通気性に優れているため、夜間、特に朝方に、栽培部と天井部との間の温度差が大きくなり、フィルムの下面に結露が生じて水滴となって植物に当たり、植物の果実、葉、花等が変色・劣化するという問題の発生を防止することができ、さらに、紫外線を過度に遮蔽しすぎないため、果実の色づき、受粉活動に悪影響を与えるおそれがない。
また、実施例1−1〜1−4の熱線反射フィルム構造体は、比較例2−2の熱線反射フィルム構造体に比べ、遜色のない高い熱線平均反射率(61〜72%)及び紫外線透過率(11〜21%)を確保しつつ、可視光透過率を「86〜89%」と高いものとすることができる。
〇表2に基づく考察
表2に示す熱線反射フィルム構造体は、滑性付与層及び紫外線吸収層を設けた多層積層フィルムCを用いて製造されたものであるが、比較例3−1のように、多層積層フィルムを裁断・織編成することなく、そのまま熱線反射フィルム構造体とした場合には、表2に示すように「開孔率が0%」となり、通気性が確保できず、夜間、特に朝方に、栽培部と天井部との間の温度差が大きくなり、フィルムの下面に結露が生じて水滴となって植物に当たり、植物の果実、葉、花等が変色・劣化するという問題が発生する。さらに、表2に示すように「紫外線透過率が1%」と小さくなりすぎるため、ナスなどの果実が生育した際の色づきが悪い、農業ハウス内で蜂が花に十分に寄りつかず受粉活動が正常に行われない等の問題が生じるおそれがある。
また、比較例3−2のように、細帯状テープの間隔を2.40mmと広くしすぎた場合には、表2に示すように、実施例2−1〜2−4に比べ、「開孔率が34%」と大きくなるため、熱線平均反射率が52%と小さくなりすぎてしまう。
多層積層フィルムCを用いた実施例2−1〜2−4の熱線反射フィルム構造体は、比較例1の熱線反射フィルム構造体に比べ、織編成を円滑かつ均質に行うことができ、また、このために熱線反射フィルム構造体の開孔率、可視光平均透過率、熱線平均反射率、紫外線透過率にもバラツキの小さい優れたものである。
また、実施例2−1〜2−4の熱線反射フィルム構造体は、比較例3−1の熱線反射フィルム構造体に比べ、通気性に優れているため、夜間、特に朝方に、栽培部と天井部との間の温度差が大きくなり、フィルムの下面に結露が生じて水滴となって植物に当たり、植物の果実、葉、花等が変色・劣化するという問題の発生を防止することができ、さらに、紫外線を過度に遮蔽しすぎないため、果実の色づき、受粉活動に悪影響を与えるおそれがない。
また、実施例2−1〜2−4の熱線反射フィルム構造体は、比較例3−2の熱線反射フィルム構造体に比べ、遜色のない可視光透過率(88〜93%)及び紫外線透過率(7〜17%)を確保しつつ、熱線反射率を「58〜71%」と高いものとすることができる。
11.参考例
1)多層積層フィルムA、及び
2)多層積層フィルムAの片面にオブリガート PW202(AGCコーテック株式会社製の紫外線吸収剤含有フッ素樹脂)をワイヤーバーを用いて塗布し、引き続き100℃で5分間の乾燥処理を行うことにより 膜厚が1μmの紫外線吸収層を設けたフィルム
を用意し、これら1)及び2)のフィルムに対して暴露試験(キセノンウェザーメータにより放射照度60W/m、ブラックパネル温度63℃、 照射時間200時間)を行ない、ヘーズ値の差[ΔHaze(%)]を評価した。結果を表3に示す。
暴露試験後のフィルムを目視観察すると、紫外線吸収層を設けない上記1)のフィルムには、表面に微小な亀裂が生じていたが、紫外線吸収層を設けた上記2)のフィルムには、外観にほとんど変化が見られなかった。
Figure 2017153377
このように、熱線反射フィルム構造体を構成する多層積層フィルムの屈折率の高い樹脂層を、ナフタレン環等の縮合型芳香環を有する樹脂で形成した場合には、この樹脂層が紫外線による劣化を受けやすくなるが、紫外線吸収層を設けることにより、フィルムの紫外線劣化を十分に防止することができ、熱線反射フィルム構造体の使用可能期間を長くすることができる。
なお、本発明の熱線反射フィルム構造体は、フィルム単体ではなく、フィルムを裁断した細帯状テープを経糸または緯糸とし、フィラメント糸等を緯糸または経糸として織編成された織編物であって、開口部が設けられるので、このような紫外線吸収層を設けた場合でも、必要な紫外線を透過させつつ、熱線反射フィルム構造体自身の劣化を抑制するよう調整することができる。
1 農業ハウス
2 CO供給手段
3 熱線反射フィルム構造体
4 除湿冷却手段
5 天窓
11 細帯状テープ(経糸)
12 フィラメント糸等(緯糸)
13 フィラメント糸等(経糸)
101 (農業ハウスの)天井部
102 (農業ハウスの)栽培部
103 サニーコート
104 近赤外線吸収フィルム
105 天窓
106 CO発生装置
107 ヒートポンプ
A 緯糸(フィラメント糸等)の太さ
B 細帯状テープの幅
C 緯糸の間隔
D 細帯状テープの間隔
E ポリエチレン製のモノフィラメントの太さ

Claims (7)

  1. 太陽光を利用する農業ハウスにおいて用いられる熱線反射フィルム構造体であって、
    該熱線反射フィルム構造体は、屈折率の異なる少なくとも2種類の樹脂層を交互に積層して得られ、波長400〜750nmの光の平均透過率が80%以上、波長800〜1100nmの光の平均反射率が70%以上である多層積層フィルムの表面に滑性付与層を設けた原フィルムを裁断した細帯状テープを経糸または緯糸とし、フィラメント糸または紡績糸を緯糸または経糸として織編成された織編物からなり、
    フィラメント糸または紡績糸の太さが該細帯状テープの幅の0.01〜0.30倍であり、隣接する該細帯状テープの間隔が該細帯状テープの幅の0.1〜0.5倍である、
    ことを特徴とする熱線反射フィルム構造体。
  2. 前記多層積層フィルムが、少なくとも片側表面に紫外線吸収層を設けたものである、請求項1に記載の熱線反射フィルム構造体。
  3. 前記紫外線吸収層が、紫外線吸収剤を含有するバインダー樹脂からなり、該バインダー樹脂としてフッ素樹脂を用いる、請求項2に記載の熱線反射フィルム構造体。
  4. 前記熱線反射フィルム構造体の開孔率が10〜30%、波長350nmの光線透過率が7〜21%である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱線反射フィルム構造体。
  5. 前記多層積層フィルムの屈折率の高い樹脂層が、縮合型芳香環を有する樹脂からなる樹脂層である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱線反射フィルム構造体。
  6. 前記多層積層フィルムの前記2種類の樹脂層の、前記面内方向における平均屈折率の差が、少なくとも0.03である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱線反射フィルム構造体。
  7. 前記多層積層フィルムが、光学厚みが150〜400nmの樹脂層を少なくとも101層有する、請求項1〜6のいずれかに記載の熱線反射フィルム構造体。
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