JP2017147173A - 固体電解質組成物、全固体二次電池用シート及び全固体二次電池、並びに、全固体二次電池用シート及び全固体二次電池の製造方法 - Google Patents

固体電解質組成物、全固体二次電池用シート及び全固体二次電池、並びに、全固体二次電池用シート及び全固体二次電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】全固体二次電池において、低温で一定期間使用される場合にも、良好なサイクル特性を実現できる固体電解質組成物等を提供する。【解決手段】周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する硫化物系無機固体電解質を含有する固体電解質組成物であって、電気化学作用により硫化物系無機固体電解質表面において被膜を形成する、C=O結合を有する化合物またはS=O結合を有する化合物を含有する固体電解質組成物、これを用いた、全固体二次電池用シート及び全固体二次電池、並びに、全固体二次電池用シート及び全固体二次電池の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、固体電解質組成物、全固体二次電池用シート及び全固体二次電池、並びに、全固体二次電池用シート及び全固体二次電池の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、負極と、正極と、負極及び正極の間に挟まれた電解質とを有し、両極間にリチウムイオンを往復移動させることにより充放電を可能とした蓄電池である。リチウムイオン二次電池には、従来、電解質として有機電解液が用いられてきた。しかし、有機電解液は液漏れを生じやすく、また、過充電または過放電により電池内部で短絡が生じ発火するおそれもあり、信頼性と安全性のさらなる向上が求められている。
かかる状況下、有機電解液に代えて、無機固体電解質を用いた全固体二次電池が注目されている。全固体二次電池は負極、電解質および正極のすべてが固体からなり、有機電解液を用いた電池の課題とされる安全性ないし信頼性を大きく改善することができ、また長寿命化も可能になるとされる。さらに、全固体二次電池は、電極と電解質を直接並べて直列に配した構造とすることができる。そのため、有機電解液を用いた二次電池に比べて高エネルギー密度化が可能となり、電気自動車や大型蓄電池等への応用が期待されている。
このような全固体二次電池において、結着剤を用いることが、提案されている。例えば、特許文献1には、環状で環内にC=C不飽和結合を有するエステルもしくはその誘導体の重合体を含有するリチウム電池が記載されている。
特開2002−042876号公報
近年、全固体二次電池の開発が急速に進行しており、全固体二次電池に求められる性能も高くなっている。特に、全固体二次電池が適用される製品の種類が増えるのに伴い、過酷な条件下での使用に耐えうる全固体二次電池の開発が望まれている。
全固体二次電池に用いる無機固体電解質として、硫化物系無機固体電解質はイオン伝導性が高いことが知られている。しかし、上記特許文献1に記載のリチウム電池では、硫化物系無機固体電解質である硫化物ガラスは、水分および酸素に対する安定性が乏しいとして、酸化物系無機固体電解質を採用している。
本発明は、全固体二次電池において、低温(例えば10℃)で一定期間使用される場合にも、良好なサイクル特性を実現できる固体電解質組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、上記固体電解質組成物を用いた、全固体二次電池用シートおよび全固体二次電池を提供することを課題とする。さらに、本発明は、上記全固体二次電池用シートおよび全固体二次電池それぞれの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の二重結合を有する化合物および硫化物系無機固体電解質を含有する全固体二次電池は、電気化学作用時に、硫化物系無機固体電解質由来の硫黄原子を含む被膜が、硫化物系無機固体電解質表面に形成され、活物質と硫化物系無機固体電解質間の親和性が向上し、サイクル特性を向上できること、を見出した。本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
<1>周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する硫化物系無機固体電解質を含有する固体電解質組成物であって、
電気化学作用により硫化物系無機固体電解質表面において被膜を形成するC=O結合を有する化合物または電気化学作用により硫化物系無機固体電解質表面において被膜を形成するS=O結合を有する化合物を含有する固体電解質組成物。
<2>C=O結合を有する化合物が下記(A)に記載の化合物であり、S=O結合を有する化合物が下記(B)に記載の化合物である<1>に記載の固体電解質組成物。
(A)分子内にカーボネート基およびハロゲン原子を有するカーボネート化合物
(B)サルファイト化合物、スルホン酸エステル化合物またはスルホン化合物
<3>カーボネート化合物が下記一般式(A1)で表され、サルファイト化合物、スルホン酸エステル化合物およびスルホン化合物が、それぞれ下記一般式(B1)、(B2)および(B3)の各式で表される<2>に記載の固体電解質組成物。
Figure 2017147173
一般式中、RA1、RB1、RB21およびRB22は、互いに独立して1価の置換基を表す。RB3は、炭素原子で硫黄原子に結合する1価の置換基を表す。複数のRA1、複数のRB1および複数のRB3は、それぞれ互いに同じであっても異なっていても良く、複数のRA1同士、複数のRB1同士、RB21とRB22、および複数のRB3同士は、それぞれ環を形成していてもよい。RA1の少なくとも1つは、少なくとも1つのハロゲン原子を有する。
<4>(A)に記載された化合物および(B)に記載された化合物がそれぞれ分子内に環状構造を有する<2>または<3>に記載の固体電解質組成物。
<5>一般式(A1)、(B1)、(B2)および(B3)の各式で表される化合物が、それぞれ下記一般式(A1−2)、(B1−2)、(B2−2)および(B3−2)の各式で表される化合物である<3>または<4>に記載の固体電解質組成物。
Figure 2017147173
一般式(A1−2)において、αは5員以上の環を形成するのに必要な原子群を表し、一般式(A1−2)で表される化合物は、ハロゲン原子を少なくとも1つ有する。
一般式(B1−2)において、βは5員以上の環を形成するのに必要な原子群を表す。
一般式(B2−2)において、Lは−O−またはアルキレン基を表す。χは5員以上の環を形成するのに必要な原子群を表す。
一般式(B3−2)において、複数のLは各々独立してアルキレン基を表す。δは4員以上の環を形成するのに必要な原子群を表す。
<6>電極活物質を含有する<1>〜<5>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<7>電極活物質が、負極活物質である<6>に記載の固体電解質組成物。
<8> <1>〜<7>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物の層を基材上に有する全固体二次電池用シート。
<9>正極活物質層と負極活物質層と固体電解質層とを具備する全固体二次電池であって、正極活物質層、負極活物質層、および固体電解質層の少なくともいずれか1層が、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物からなる層である全固体二次電池。
<10> <1>〜<7>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物を基材上に配置し、これを製膜する全固体二次電池用シートの製造方法。
<11> <10>に記載の製造方法を介して、全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
本明細書において、電気化学作用により硫化物系無機固体電解質表面において被膜を形成するC=O結合を有する化合物とは、還元または酸化反応により生じた、ラジカルアニオンまたはラジカルカチオン成分が硫化物系無機固体電解質の表面成分(例えばP−S結合)と相互作用して被膜を形成しうる化合物のことをいう。この際、ハロゲン化物等を放出し、硫化物系無機固体電解質の表面の活性点をキャッピングすることで、抵抗上昇を抑制する化合物がより好ましい。一方、電気化学作用により硫化物系無機固体電解質表面において被膜を形成するS=O結合を有する化合物も同様に定義される。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、単に「アクリル」又は「(メタ)アクリル」と記載するときは、メタアクリル及び/又はアクリルを意味する。
本発明の固体電解質組成物は、全固体二次電池の固体電解質層および/または活物質層の材料として用いたときに、低温で一定期間使用される場合にも、良好なサイクル特性を実現できるという優れた効果を奏する。また、本発明の全固体二次電池用シートおよび全固体二次電池は、上記の優れた効果を奏する固体電解質組成物を利用し、優れた性能を発揮する。
また、本発明の製造方法によれば、本発明の、全固体二次電池用シートおよび全固体二次電池それぞれを好適に製造することができる。
本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池を模式化して示す縦断面図である。 実施例で作製した全固体二次電池(コイン電池)を模式的に示す縦断面図である。
本発明の固体電解質組成物は、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する硫化物系無機固体電解質と、電気化学作用により硫化物系無機固体電解質表面において被膜を形成するC=O結合を有する化合物または電気化学作用により硫化物系無機固体電解質表面において被膜を形成するS=O結合を有する化合物とを含む。
以下、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する硫化物系無機固体電解質を「硫化物系無機固体電解質」または「無機固体電解質」と称することもある。また、電気化学作用により硫化物系無機固体電解質表面において被膜を形成するC=O結合を有する化合物、および、電気化学作用により硫化物系無機固体電解質表面において被膜を形成するS=O結合を有する化合物のいずれか、又は、両方を合わせて、「特定の添加剤」と称することもある。
以下、その好ましい実施形態について説明するが、まず、本発明の固体電解質組成物を用いた全固体二次電池について説明する。
[全固体二次電池]
本発明の全固体二次電池は、正極と、この正極に対向する負極と、正極及び負極の間の固体電解質層とを有する。正極は、正極集電体上に正極活物質層を有する。負極は、負極集電体上に負極活物質層を有する。
負極活物質層、正極活物質層及び固体電解質層の少なくとも1つの層は、後述する本発明の固体電解質組成物で形成されることが好ましく、中でも、負極活物質層が本発明の固体電解質組成物で形成されることがより好ましい。
固体電解質組成物で形成された活物質層又は固体電解質層は、好ましくは、含有する成分種及びその含有量比について、固体電解質組成物の固形分におけるものと同じである。
以下に、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池(リチウムイオン二次電池)を模式化して示す断面図である。本実施形態の全固体二次電池10は、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、固体電解質層3、正極活物質層4、正極集電体5を、この順に積層してなる構造を有しており、隣接する層同士は直に接触している。このような構造を採用することで、充電時には、負極側に電子(e)が供給され、そこにリチウムイオン(Li)が蓄積される。一方、放電時には、負極に蓄積されたリチウムイオン(Li)が正極側に戻され、作動部位6に電子を供給することができる。図示した全固体二次電池の例では、作動部位6に電球をモデル的に採用しており、放電によりこれが点灯するようにされている。
〔正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層〕
全固体二次電池10においては、負極活物質層が本発明の固体電解質組成物で形成されている。
すなわち、固体電解質層3は、硫化物系無機固体電解質を含む。固体電解質層は、通常、正極活物質及び/又は負極活物質を含まない。
正極活物質層4及び負極活物質層2は、それぞれ、正極活物質又は負極活物質を含み、さらに、硫化物系無機固体電解質を含む。負極活物質層2は、さらに特定の添加剤を含む。活物質層が硫化物系無機固体電解質を含有するとイオン伝導度を向上させることができる。
正極活物質層4、固体電解質層3及び負極活物質層2が含有する硫化物系無機固体電解質は、それぞれ、互いに同種であっても異種であってもよい。
本発明において、正極活物質層及び負極活物質層のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、活物質層又は電極活物質層と称することがある。また、正極活物質及び負極活物質のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、活物質又は電極活物質と称することがある。
本発明において、上記特定の添加剤を硫化物系無機固体電解質および活物質等の固体粒子と組み合わせて用いる(含有する)と、全固体二次電池において、良好なサイクル特性を実現できる。
その理由は定かではないが、次のように、考えられる。特に、負極表面で、電気化学作用により、特定の添加剤が、硫化物系無機固体電解質と反応し、硫化物系無機固体電解質表面に生成する被膜が、充放電の過程で生成するリチウムデンドライトの発生を抑制すると推定される。また、硫化物系無機固体電解質および/または特定の添加剤由来のO原子およびS原子により余剰のLiイオンがトラップされると考えられる。さらに、上記被膜の活物質に対する親和性が高いことによりイオン伝導性が向上すると考えられる。これらの作用により、本発明の全固体二次電池は、良好なサイクル特性を示すと考えられる。
なお、上記被膜は、特定の添加剤が結合することにより形成されると考えられ、結合するための反応起因は、主に活物質の電気化学作用にともなう、ラジカルアニオン/カチオンから生じると推定される。
正極活物質層4、固体電解質層3、負極活物質層2の厚さは特に限定されない。一般的な電池の寸法を考慮すると、上記各層の厚さは10〜1,000μmが好ましく、20μm以上500μm未満がより好ましい。本発明の全固体二次電池においては、正極活物質層4、固体電解質層3及び負極活物質層2の少なくとも1層の厚さが、50μm以上500μm未満であることがさらに好ましい。
〔集電体(金属箔)〕
正極集電体5及び負極集電体1は、電子伝導体が好ましい。
本発明において、正極集電体及び負極集電体のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、集電体と称することがある。
正極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタンなどの他に、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの(薄膜を形成したもの)が好ましく、その中でも、アルミニウム、アルミニウム合金がより好ましい。
負極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタンなどの他に、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼がより好ましい。
集電体の形状は、通常フィルムシート状のものが使用されるが、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体なども用いることができる。
集電体の厚みは、特に限定されないが、1〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
本発明において、負極集電体、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層及び正極集電体の各層の間又はその外側には、機能性の層や部材等を適宜介在ないし配設してもよい。また、各層は単層で構成されていても、複層で構成されていてもよい。
〔筐体〕
上記の各層を配置して全固体二次電池の基本構造を作製することができる。用途によってはこのまま全固体二次電池として使用してもよいが、乾電池の形態とするためにはさらに適当な筐体に封入して用いる。筐体は、金属性のものであっても、樹脂(プラスチック)製のものであってもよい。金属性のものを用いる場合には、例えば、アルミニウム合金製のものおよびステンレス鋼製のものを挙げることができる。金属性の筐体は、正極側の筐体と負極側の筐体に分けて、それぞれ正極集電体及び負極集電体と電気的に接続させることが好ましい。正極側の筐体と負極側の筐体とは、短絡防止用のガスケットを介して接合され、一体化されることが好ましい。
[固体電解質組成物]
本発明の固体電解質組成物は、上記の通りであり、以下に具体的に説明する。
(無機固体電解質)
本発明の固体電解質組成物は、硫化物系無機固体電解質を含有する。
無機固体電解質の固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導度材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(ポリエチレンオキシド(PEO)などに代表される高分子電解質、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)などに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、カチオン及びアニオンに解離又は遊離していない。この点で、電解液やポリマー中でカチオン及びアニオンが解離又は遊離している無機電解質塩(LiPF、LiBF、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族又は第2族に属する金属元素のイオンの伝導性を有するものであれば、特に限定されず、電子伝導性を有さないものが一般的である。本発明の全固体二次電池がリチウムイオン電池の場合、硫化物系無機固体電解質は、リチウムイオンのイオン伝導度を有することが好ましい。
本発明において、活物質と無機固体電解質との間により良好な界面を形成することができる観点から、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する硫化物系無機固体電解質が用いられる。
−硫化物系無機固体電解質−
硫化物系無機固体電解質は、硫黄原子(S)を含有し、かつ、周期律表第1族又は第2族に属する金属元素のイオン伝導度を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導度を有しているものが好ましいが、目的又は場合に応じて、Li、S及びP以外の他の元素を含んでもよい。
例えば下記式(1)で示される組成を満たすリチウムイオン伝導度無機固体電解質が挙げられ、好ましい。
a1b1c1d1e1 (1)
式中、LはLi、Na及びKから選択される元素を示し、Liが好ましい。
Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。中でも、B、Sn、Si、Al又はGeが好ましく、Sn、Al又はGeがより好ましい。
Aは、I、Br、Cl又はFを示し、I又はBrが好ましく、Iが特に好ましい。
L、M及びAは、それぞれ、上記元素の1種又は2種以上とすることができる。
a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜1:1:2〜12:0〜5を満たす。a1はさらに、1〜9が好ましく、1.5〜4がより好ましい。b1は0〜0.5が好ましい。d1はさらに、3〜7が好ましく、3.25〜4.5がより好ましい。e1はさらに、0〜3が好ましく、0〜1がより好ましい。
式(1)において、L、M、P、S及びAの組成比は、好ましくはb1、e1が0であり、より好ましくはb1=0、e1=0で且つa1、c1及びd1の比がa1:c1:d1=1〜9:1:3〜7であり、さらに好ましくはb1=0、e1=0で且つa1:c1:d1=1.5〜4:1:3.25〜4.5である。各元素の組成比は、後述するように、硫化物系無機固体電解質を製造する際の原料化合物の配合量を調整することにより制御できる。
硫化物系無機固体電解質は、非結晶(ガラス)であっても結晶化(ガラスセラミックス化)していてもよく、一部のみが結晶化していてもよい。例えば、Li、P及びSを含有するLi−P−S系ガラス、又はLi、P及びSを含有するLi−P−S系ガラスセラミックスを用いることができる。
硫化物系無機固体電解質は、[1]硫化リチウム(LiS)と硫化リン(例えば五硫化二燐(P))、[2]硫化リチウムと単体燐及び単体硫黄の少なくとも一方、又は[3]硫化リチウムと硫化リン(例えば五硫化二燐(P))と単体燐及び単体硫黄の少なくとも一方、の反応により製造することができる。
Li−P−S系ガラス及びLi−P−S系ガラスセラミックスにおける、LiSとPとの比率は、LiS:Pのモル比で、好ましくは65:35〜85:15、より好ましくは68:32〜77:23である。LiSとPとの比率をこの範囲にすることにより、リチウムイオン伝導度をより高めることができる。具体的には、リチウムイオン伝導度を好ましくは1×10−4S/cm以上、より好ましくは1×10−3S/cm以上とすることができる。上限は特にないが、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
硫化物系無機固体電解質の具体的な化合物例としては、例えば、LiSと、第13族〜第15族の元素の硫化物とを含有する原料組成物を用いてなるものを挙げることができる。より具体的には、LiS−P、LiS−LiI−P、LiS−LiI−LiO−P、LiS−LiBr−P、LiS−LiO−P、LiS−LiPO−P、LiS−P−P、LiS−P−SiS、LiS−P−SnS、LiS−P−Al、LiS−GeS、LiS−GeS−ZnS、LiS−Ga、LiS−GeS−Ga、LiS−GeS−P、LiS−GeS−Sb、LiS−GeS−Al、LiS−SiS、LiS−Al、LiS−SiS−Al、LiS−SiS−P、LiS−SiS−P−LiI、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−LiSiO、LiS−SiS−LiPO、Li10GeP12などが挙げられる。その中でも、LiS−P、LiS−GeS−Ga、LiS−SiS−P、LiS−SiS−LiSiO、LiS−SiS−LiPO4、LiS−LiI−LiO−P、LiS−LiO−P、LiS−LiPO−P、LiS−GeS−P、Li10GeP12からなる結晶質、非晶質若しくは結晶質と非晶質混合の原料組成物が、高いリチウムイオン伝導度を有するので好ましい。このような原料組成物を用いて硫化物系無機固体電解質材料を合成する方法としては、例えば非晶質化法を挙げることができる。非晶質化法としては、例えば、メカニカルミリング法及び溶融急冷法を挙げることができ、中でもメカニカルミリング法が好ましい。常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。
中でも、LiS−P、LGPS(Li10GeP12)、LiS−P−SiS等が好ましい。
無機固体電解質は粒子であることが好ましい。粒子状の無機固体電解質の体積平均粒子径は特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。上限としては、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。なお、無機固体電解質の体積平均粒子径の測定は、以下の手順で行う。無機固体電解質粒子を、水(水に不安定な物質の場合はヘプタン)を用いて20mLサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調製する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、体積平均粒子径を得る。その他の詳細な条件等は必要によりJISZ8828:2013「粒子径解析−動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製しその平均値を採用する。
無機固体電解質の固体電解質組成物中における含有量は、界面抵抗の低減及び電池特性維持効果(サイクル特性の向上)の両立を考慮したとき、固形分100質量%において、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。上限としては、同様の観点から、99質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが特に好ましい。
ただし、正極活物質又は負極活物質を含有する場合、固体電解質組成物中の無機固体電解質の含有量は、正極活物質又は負極活物質と無機固体電解質との合計含有量が上記範囲であることが好ましい。
なお、本明細書において固形分とは、窒素雰囲気下170℃で6時間乾燥処理を行ったときに、揮発ないし蒸発して消失しない成分をいう。典型的には、後述の分散媒体以外の成分を指す。
無機固体電解質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(特定の添加剤)
本発明の固体電解質組成物は、電気化学作用(例えば、電気化学反応)により硫化物系無機固体電解質表面において被膜を形成するC=O結合を有する化合物または電気化学作用により硫化物系無機固体電解質表面において被膜を形成するS=O結合を有する化合物を含有する。
以下、電気化学作用により硫化物系無機固体電解質表面において被膜を形成するC=O結合を有する化合物をC=O化合物と称することもある。一方、電気化学作用により硫化物系無機固体電解質表面において被膜を形成するS=O結合を有する化合物をS=O化合物と称することもある。
本発明において、全固体二次電池稼動範囲である電位で酸化もしくは還元し、反応活性点を効果的に被覆することが可能であるため、上記C=O化合物が下記(A)に記載の化合物であり、上記S=O化合物が下記(B)に記載の化合物であることが好ましい。
(A)分子内にカーボネート基(−OC(=O)O−)およびハロゲン原子を有するカーボネート化合物
(B)サルファイト化合物、スルホン酸エステル化合物またはスルホン化合物
本発明において、酸素原子および硫黄原子が硫化物系無機固体電解質と親和性の高い被膜を形成するため、上記カーボネート化合物が下記一般式(A1)で表され、上記サルファイト化合物、スルホン酸エステル化合物およびスルホン化合物が、それぞれ下記一般式(B1)、(B2)および(B3)各式で表されることが好ましい。
Figure 2017147173
一般式中、RA1、RB1、RB21およびRB22は、互いに独立して1価の置換基を表す。RB3は、炭素原子で硫黄原子に結合する1価の置換基を表す。複数のRA1、複数のRB1および複数のRB3は、それぞれ互いに同じであっても異なっていても良く、複数のRA1同士、複数のRB1同士、RB21とRB22、および複数のRB3同士は、各一般式で表される化合物において、それぞれ環を形成していてもよい。RA1の少なくとも1つは、少なくとも1つのハロゲン原子を有する。
A1、RB1、RB21およびRB22で表される1価の置換基ならびにRB3で表される炭素原子で硫黄原子に結合する1価の置換基の具体例として、後述の置換基Zから選択される置換基が挙げられる。
一般式(A1)において、RA1で表される1価の置換基のうち少なくとも1つは、少なくとも1つのハロゲン原子を有する。ハロゲン原子の具体例として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が中でも好ましい。
一般式(A1)において、RA1で表される1価の置換基として、後述の置換基Zにおける、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルシリル基またはアリールシリル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜10がより好ましく、1〜5がさらに好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。アルキル基は、末端の炭素原子にハロゲン原子を有することが好ましく、末端の炭素原子全ての水素原子がハロゲン原子で置換されていることがより好ましく、パーフルオロアルキル基が特に好ましい。
一般式(B1)において、RB1で表される1価の置換基として、後述の置換基Zにおける、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルシリル基またはアリールシリル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜10がより好ましく、1〜5がさらに好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
一般式(B2)において、RB21で表される1価の置換基として、後述の置換基Zにおける、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロ環基、アミノ基アルキルシリル基またはアリールシリル基が好ましく、アルキル基、アリール基またはアルケニル基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜10がより好ましく、1〜5がさらに好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。アリール基の炭素原子数は、6〜12がより好ましく、6〜8がさらに好ましく、フェニル基が特に好ましい。
一般式(B2)において、RB22で表される1価の置換基として、後述の置換基Zにおける、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ環基、アルキルシリル基またはアリールシリル基が好ましく、アルキル基またはアリール基がより好ましく、アルキル基が特に好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜10がより好ましく、1〜5がさらに好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。アルキル基はRA1が有するハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を有していてもよい。アリール基の炭素原子数は、6〜12がより好ましく、6〜8がさらに好ましく、フェニル基が特に好ましい。
一般式(B3)において、RB3で表される1価の置換基として、後述の置換基Zにおける、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ環基、アルキルシリル基またはアリールシリル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜10がより好ましく、1〜5がさらに好ましく、1〜3が特に好ましい。アリール基の炭素原子数は、6〜12がより好ましく、6〜8がさらに好ましく、6が特に好ましい。
本発明において、電気化学作用にともない、開環し形成される被膜がより強固であり、全固体二次電池が長期間使用されてもその間維持されることが可能なことから、(A)または(B)に記載された化合物は、それぞれ分子内に環状構造を有することが好ましい。
一般式(A1)、(B1)、(B2)および(B3)の各式で表される化合物が、それぞれ下記一般式(A1−2)、(B1−2)、(B2−2)および(B3−2)の各式で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2017147173
一般式(A1−2)において、αは5員以上の環を形成するのに必要な原子群を表し、一般式(A1−2)で表される化合物は、ハロゲン原子を少なくとも1つ有する。
一般式(B1−2)において、βは5員以上の環を形成するのに必要な原子群を表す。
一般式(B2−2)において、Lは−O−またはアルキレン基を表す。χは5員以上の環を形成するのに必要な原子群を表す。
一般式(B3−2)において、複数のLは各々独立してアルキレン基を表す。δは4員以上の環を形成するのに必要な原子群を表す。
一般式(A1−2)における5員以上の環を形成するのに必要な原子群の環構成原子は、炭素原子および酸素原子から選択される原子であることが好ましい。なお、一般式(A1−2)における環は、非芳香族性の環が好ましい。
一般式(A1−2)における環は、5〜8員環であることが好ましく、5または6員環であることがより好ましく、5員環であることが特に好ましい。一般式(A1−2)における環は、少なくとも1つのハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を有し、1〜3つのハロゲン原子を有することが好ましく、1または2つのハロゲン原子を有することがより好ましく、1つのハロゲン原子を有することがより好ましい。一般式(A1−2)における環が置換基を有する場合、この置換基がハロゲン原子を有していてもよい。
一般式(A1−2)における環が有する置換基としては、後述の置換基Zにおける、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、アルケニル基またはアルキニル基が好ましく、フッ化アルキル基またはフッ素原子がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜10がより好ましく、1〜5がさらに好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
一般式(B1−2)における5員以上の環を形成するのに必要な原子群の環構成原子は、硫黄原子、炭素原子および酸素原子から選択される原子であることが好ましい。なお、一般式(B1−2)における環は、非芳香族性の環が好ましい。
一般式(B1−2)における環は、5〜8員環であることが好ましく、5または6員環であることがより好ましく、5員環であることが特に好ましい。
一般式(B1−2)における環は置換基を有してもよい。一般式(B1−2)における環が有する置換基としては、後述の置換基Zにおける、アルキル基、アリール基、アルケニル基またはアルキニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜10がより好ましく、1〜5がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
一般式(B2−2)における5員以上の環を形成するのに必要な原子群の環構成原子は、硫黄原子、炭素原子および酸素原子から選択される原子であることが好ましい。なお、一般式(B2−2)における環は、非芳香族性の環が好ましい。
で表されるアルキレン基は、炭素原子数1〜5のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜3のアルキレン基がより好ましい。アルキレン基の具体例として、メチレン、エチレン、プロピレンが挙げられる。なお、Lで表されるアルキレン基は置換基を有していてもよく、置換基の具体例として、後述の置換基Zから選択される置換基が挙げられる。
一般式(B2−2)における環は、5〜8員環であることが好ましく、5または6員環であることがより好ましく、5員環であることが特に好ましい。
一般式(B2−2)における環は置換基を有してもよい。一般式(B2−2)における環が有する置換基としては、後述の置換基Zにおけるアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜10がより好ましく、1〜5がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
一般式(B3−2)における4員以上の環を形成するのに必要な原子群の環構成原子は、硫黄原子および炭素原子から選択される原子であることが好ましい。なお、一般式(B3−2)における環は、非芳香族性の環が好ましい。
で表されるアルキレン基は、炭素原子数1〜5のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜3のアルキレン基がより好ましい。アルキレン基の具体例として、メチレン、エチレン、プロピレンが挙げられる。なお、Lで表されるアルキレン基は置換基を有していてもよく、置換基の具体例として、後述の置換基Zから選択される置換基が挙げられる。
一般式(B3−2)における環は、4〜8員環であることが好ましく、5または6員環であることがより好ましく、5員環であることが特に好ましい。
一般式(B3−2)における環は置換基を有してもよい。一般式(B3−2)における環が有する置換基としては、後述の置換基Zにおける、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基または=Oが好ましく、アルキル基および=Oが好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜10がより好ましく、1〜5がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
本明細書において化合物の表示(例えば、化合物と末尾に付して呼ぶとき)については、この化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、置換基を導入するなど一部を変化させた誘導体を含む意味である。
本明細書において置換または無置換を明記していない置換基(連結基についても同様)については、その基に適宜の置換基を有していてもよい意味である。これは置換または無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Zが挙げられる。
また、本明細書において、単に、YYY基(例えば、アルキル基)と記載されている場合、YYY基は、この基に対応する下記置換基Zの中から選択される。
置換基Zとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等、ただし本明細書においてアルキル基というときには通常シクロアルキル基を含む意味である。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜23のアラルキル基、例えば、ベンジル、フェネチル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、好ましくは、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有する5又は6員環のヘテロ環基が好ましく、例えば、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル、ピロリドン基等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等、ただし本明細書においてアルコキシ基というときには通常アリーロイル基を含む意味である。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、1−ナフチルオキシカルボニル、3−メチルフェノキシカルボニル、4−メトキシフェノキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルファモイル基、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシル基、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル等)、アリーロイル基(好ましくは炭素原子数7〜23のアリーロイル基、例えば、ベンゾイル等、ただし本明細書においてアシル基というときには通常アリーロイル基を含む意味である。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ等)、アリーロイルオキシ基(好ましくは炭素原子数7〜23のアリーロイルオキシ基、例えば、ベンゾイルオキシ等、ただし本明細書においてアシルオキシ基というときには通常アリーロイルオキシ基を含む意味である。)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素原子数6〜22のアリールスルホニル基、例えば、ベンゼンスルホニル等)、アルキルシリル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルシリル基、例えば、モノメチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル等)、アリールシリル基(好ましくは炭素原子数6〜42のアリールシリル基、例えば、トリフェニルシリル等)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシシリル基、例えば、モノメトキシシリル、ジメトキシシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アリールオキシシリル基(好ましくは炭素原子数6〜42のアリールオキシシリル基、例えば、トリフェニルオキシシリル等)、ホスホリル基(好ましくは炭素原子数0〜20のホスホリル基、例えば、−OP(=O)(R)、ホスホニル基(好ましくは炭素原子数0〜20のホスホニル基、例えば、−P(=O)(R)、ホスフィニル基(好ましくは炭素原子数0〜20のホスフィニル基、例えば、−P(R)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルイミノ基((メタ)アクリルアミド基)、ヒドロキシ基、チオール基、カルボキシ基、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)および=Oが挙げられる。
また、これらの置換基Zで挙げた各基は、上記の置換基Zがさらに置換していてもよい。
化合物、置換基または連結基等がアルキル基、アルキレン基、アルケニル基、アルケニレン基、アルキニル基および/またはアルキニレン基等を含むとき、これらは環状でも鎖状でもよく、また直鎖でも分岐していてもよく、上記のように置換されていても無置換でもよい。
以下、特定の添加剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2017147173
上記特定の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記特定の添加剤は、常法により合成することができる。
固体電解質組成物中における、硫化物系無機固体電解質表面において被膜を形成し得る特定の添加剤の含有量は、特に限定されず、固形分100質量%において、0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。
(活物質)
本発明の固体電解質組成物は、周期律表第1族又は第2族に属する金属元素のイオンの挿入放出が可能な活物質を含有してもよい。活物質としては、以下に説明するが、正極活物質及び負極活物質が挙げられ、正極活物質である遷移金属酸化物、又は、負極活物質である炭素質材料が好ましい。本発明の固体電解質組成物は、特に還元反応により形成される被膜が強固であり、硫化物系無機固体電解質との親和性が高い被膜を形成することが可能であるため、負極活物質を含有することが好ましい。
本発明において、活物質(正極活物質、負極活物質)を含有する固体電解質組成物を、電極層用組成物(正極層用組成物、負極層用組成物)ということがある。
−正極活物質−
本発明の固体電解質組成物が含有してもよい正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入および放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物や、硫黄などのLiと複合化できる元素などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素M(Co、Ni、Fe、Mn、CuおよびVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素M(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、PまたはBなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Mの量(100mol%)に対して0〜30mol%が好ましい。Li/Mのモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物および(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoO(コバルト酸リチウム[LCO])、LiNi(ニッケル酸リチウム)LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム[NCA])、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム[NMC])およびLiNi0.5Mn0.5(マンガンニッケル酸リチウム)が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoMnO4、LiFeMn、LiCuMn、LiCrMnおよびLiNiMnが挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO、LiFe(PO等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP等のピロリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類およびLi(PO(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、LiFePOF等のフッ化リン酸鉄塩、LiMnPOF等のフッ化リン酸マンガン塩およびLiCoPOF等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、LiFeSiO、LiMnSiOおよびLiCoSiOが挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO、NCA又はNMCがより好ましい。
正極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。正極活物質の体積平均粒子径(球換算平均粒子径)は特に限定されない。例えば、0.1〜50μmとすることができる。正極活物質を所定の粒子径にするには、通常の粉砕機や分級機を用いればよい。焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。正極活物質粒子の体積平均粒子径(球換算平均粒子径)は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて測定することができる。
上記正極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
正極活物質の、固体電解質組成物中における含有量は、特に限定されず、固形分100質量%において、10〜99質量%が好ましく、30〜95質量%がより好ましく、50〜90質量%がさらに好ましく、60〜90質量%が特に好ましい。
−負極活物質−
本発明の固体電解質組成物が含有してもよい負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入および放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫等の金属酸化物、酸化ケイ素、金属複合酸化物、リチウム単体およびリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、並びに、Sn、SiおよびIn等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。中でも、炭素質材料又はリチウム複合酸化物が信頼性の点から好ましく用いられる。また、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵および放出可能であることが好ましい。その材料は、特には制限されないが、構成成分としてチタン及び/又はリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
負極活物質として用いられる炭素質材料とは、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ、アセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック、黒鉛(天然黒鉛、気相成長黒鉛等の人造黒鉛等)、及びPAN(ポリアクリロニトリル)系の樹脂やフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。さらに、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA(ポリビニルアルコール)系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維、活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカーおよび平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
これらの炭素質材料は、黒鉛化の程度により難黒鉛化炭素質材料と黒鉛系炭素質材料に分けることもできる。また炭素質材料は、特開昭62−22066号公報、特開平2−6856号公報および/または同3−45473号公報に記載される面間隔や密度、結晶子の大きさを有することが好ましい。炭素質材料は、単一の材料である必要はなく、特開平5−90844号公報記載の天然黒鉛と人造黒鉛の混合物および特開平6−4516号公報記載の被覆層を有する黒鉛等を用いることもできる。
負極活物質として適用される金属酸化物及び金属複合酸化物としては、特に非晶質酸化物が好ましく、さらに金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイトも好ましく用いられる。ここでいう非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法で、2θ値で20°〜40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。2θ値で40°以上70°以下に見られる結晶性の回折線の内最も強い強度が、2θ値で20°以上40°以下に見られるブロードな散乱帯の頂点の回折線強度の100倍以下であるのが好ましく、5倍以下であるのがより好ましく、結晶性の回折線を有さないことが特に好ましい。
上記非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群の中でも、半金属元素の非晶質酸化物、及びカルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13(IIIB)族〜15(VB)族の元素、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、SbおよびBiの1種単独あるいはそれらの2種以上の組み合わせからなる酸化物、及びカルコゲナイドが特に好ましい。好ましい非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、例えば、Ga、SiO、GeO、SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、Bi、SnSiO、GeS、SnS、SnS、PbS、PbS、Sb、SbおよびSnSiSが好ましく挙げられる。また、これらは、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、LiSnOであってもよい。
負極活物質はチタン原子を含有することも好ましい。より具体的にはLiTi12(チタン酸リチウム[LTO])がリチウムイオンの吸蔵放出時の体積変動が小さいことから急速充放電特性に優れ、電極の劣化が抑制されリチウムイオン二次電池の寿命向上が可能となる点で好ましい。
本発明においては、ハードカーボン又は黒鉛が好ましく用いられる。なお、本発明において、上記炭素質材料は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
負極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。負極活物質の平均粒子径は、0.1〜60μmが好ましい。所定の粒子径にするには、通常の粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミルおよび旋回気流型ジェットミルや篩などが好適に用いられる。粉砕時には水、あるいはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も必要に応じて行うことができる。所望の粒子径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては特に限定はなく、篩、風力分級機などを必要に応じて用いることができる。分級は乾式および湿式ともに用いることができる。負極活物質粒子の平均粒子径は、前述の正極活物質の体積平均粒子径の測定方法と同様の方法により測定することができる。
上記焼成法により得られた化合物の化学式は、測定方法として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、簡便法として、焼成前後の粉体の質量差から算出できる。
Sn、Si、Geを中心とする非晶質酸化物負極活物質に併せて用いることができる負極活物質としては、リチウムイオン又はリチウム金属を吸蔵および放出できる炭素材料や、リチウム、リチウム合金、リチウムと合金可能な金属が好適に挙げられる。
本発明においては、Si系の負極を適用することも好ましい。一般的にSi負極は、炭素負極(黒鉛およびアセチレンブラックなど)に比べて、より多くのLiイオンを吸蔵できる。すなわち、単位重量あたりのLiイオンの吸蔵量が増加する。そのため、電池容量を大きくすることができる。その結果、バッテリー駆動時間を長くすることができるという利点がある。
上記負極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
負極活物質の、固体電解質組成物中における含有量は、特に限定されず、固形分100質量%において、10〜99質量%であることが好ましく、20〜90質量%がより好ましく、30〜80質量%であることがより好ましく、40〜70質量%であることがさらに好ましい。
(バインダー)
本発明の固体電解質組成物はバインダーを含有してもよい。
本発明で使用するバインダーは、有機ポリマーであれば特に限定されない。
本発明に用いることができるバインダーは、通常、電池材料の正極または負極用結着剤として用いられるバインダーが好ましく、特に制限はなく、例えば、以下に述べる樹脂からなるバインダーが好ましい。特に粒状バインダーが好ましい。
含フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニレンジフルオリド(PVdF)、ポリビニレンジフルオリドとヘキサフルオロプロピレンの共重合物(PVdF−HFP)が挙げられる。本発明において、PVdF−HFPが好ましく用いられる。
炭化水素系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレンブタジエンゴム(HSBR)、ブチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレンが挙げられる。
アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸イソプロピル、ポリ(メタ)アクリル酸イソブチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸ヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル、ポリ(メタ)アクリル酸ドデシル、ポリ(メタ)アクリル酸ステアリル、ポリ(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ベンジル、ポリ(メタ)アクリル酸グリシジル、ポリ(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、およびこれら樹脂を構成するモノマーの共重合体が挙げられる。
またそのほかのビニル系モノマーとの共重合体も好適に用いられる。例えばポリ(メタ)アクリル酸メチルーポリスチレン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチルーアクリロニトリル共重合体およびポリ(メタ)アクリル酸ブチルーアクリロニトリル-スチレン共重合体が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられるバインダーを構成するポリマーの水分濃度は、100ppm(質量基準)以下が好ましい。
また、本発明に用いられるバインダーを構成するポリマーは、晶析させて乾燥させてもよく、ポリマー溶液をそのまま用いてもよい。金属系触媒(ウレタン化、ポリエステル化触媒=スズ、チタン、ビスマス)は少ない方が好ましい。共重合体中の金属濃度は、100ppm(質量基準)以下が好ましい。
本発明に用いられるバインダーを構成するポリマーの質量平均分子量は10,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましく、50,000以上がさらに好ましい。上限としては、1,000,000以下が好ましく、200,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。
バインダーの固体電解質組成物中での含有量は、全固体二次電池に用いたときの良好な界面抵抗の低減性とその維持性を考慮すると、固形成分100質量%において、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。上限としては、電池特性の観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
本発明では、バインダーの質量に対する、無機固体電解質と活物質の合計質量(総量)の質量比[(無機固体電解質の質量+活物質の質量)/バインダーの質量]は、1,000〜1の範囲が好ましい。この比率はさらに500〜2がより好ましく、100〜10がさらに好ましい。
(分散媒体)
本発明の固体電解質組成物は、分散媒体を含有することが好ましい。
分散媒体は、上記の各成分を分散させるものであればよく、例えば、各種の有機溶媒が挙げられる。分散媒体の具体例としては下記のものが挙げられる。
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ソルビトール、キシリトール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールが挙げられる。
エーテル化合物溶媒としては、アルキレングリコールアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)、ジアルキルエーテル(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等)、環状エーテル(テトラヒドロフラン、ジオキサン(1,2−、1,3−及び1,4−の各異性体を含む)等)が挙げられる。
アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
アミノ化合物溶媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられる。
ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。
芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどが挙げられる。
ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピロニトリル、イソブチロニトリルなどが挙げられる。
エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸ブチル、ペンタン酸ブチルなどが挙げられる。
非水系分散媒体としては、上記芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒等が挙げられる。
本発明においては、中でも、アミノ化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒が好ましく、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒及び脂肪族化合物溶媒がさらに好ましく、ジブチルエーテル、トルエン及びヘプタンが特に好ましい。この組み合わせを選定することにより、硫化物系無機固体電解質に対して活性な官能基が含まれないため硫化物系無機固体電解質を安定に取り扱え、好ましい。
上記分散媒体は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、固体電解質組成物中の、分散媒体の含有量は、固体電解質組成物の粘度と乾燥負荷とのバランスを考慮して適宜に設定することができる。一般的には、固体電解質組成物中、20〜99質量%が好ましく、25〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
(導電助剤)
本発明の固体電解質組成物は、活物質の電子導電性を向上させる等のために用いられる導電助剤を適宜必要に応じて含有してもよい。導電助剤としては、一般的な導電助剤を用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよびファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維およびカーボンナノチューブなどの炭素繊維類、グラフェンやフラーレンなどの炭素質材料であってもよいし、銅およびニッケルなどの金属粉、金属繊維でも良く、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンおよびポリフェニレン誘導体などの導電性高分子を用いてもよい。またこれらの内1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
本発明の固体電解質組成物が導電助剤を含む場合、固体電解質組成物中の導電助剤の含有量は、0〜10質量%が好ましい。
(リチウム塩)
本発明の固体電解質組成物は、リチウム塩を含有することも好ましい。
リチウム塩としては、通常この種の製品に用いられるリチウム塩が好ましく、特に制限はない。例えば、LiTFSIおよび特開2015−088486号公報の段落0082〜0085記載のリチウム塩が挙げられる。
リチウム塩の含有量は、固体電解質100質量部に対して0質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限としては、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
(分散剤)
本発明の固体電解質組成物は、分散剤を含有してもよい。分散剤を添加することで電極活物質及び無機固体電解質のいずれかの含有量が高い場合においてもその凝集を抑制し、均一な活物質層及び固体電解質層を形成することができる。
分散剤としては、全固体二次電池に通常使用されるものを適宜選定して用いることができる。例えば、分子量200以上3000未満の低分子又はオリゴマーからなり、官能基群(I)で示される官能基と、炭素数8以上のアルキル基又は炭素数10以上のアリール基を同一分子内に含有するものが好ましい。
官能基群(I):酸性基、塩基性窒素原子を有する基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、シアノ基、メルカプト基及びヒドロキシ基(酸性基、塩基性窒素原子を有する基、アルコキシシリル基、シアノ基、メルカプト基及びヒドロキシ基が好ましく、カルボキシ基、スルホン酸基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基がより好ましい。)
本発明の全固体二次電池において、分散剤を含む層がある場合、層中の分散剤の含有量は、0.2〜10質量%が好ましい。
(固体電解質組成物の調製)
本発明の固体電解質組成物は、無機固体電解質及び特定の添加剤と、必要により他の成分とを、混合又は添加することにより、製造できる。例えば、各種の混合機を用いて上記成分を混合することにより、製造できる。混合条件としては、特に限定されないが、例えば、ボールミル、ビーズミル、プラネタリミキサ―、ブレードミキサ―、ロールミル、ニーダーおよびディスクミルが挙げられる。
固体電解質組成物の製造方法においては、負極活物質、特定の添加剤および分散媒体を10〜50℃、1〜10時間混合(攪拌)した後、分散媒体を留去し、真空乾燥させることで負極活物質に、特定の添加剤を被覆させる工程を含むことが好ましい。この工程を含む製造方法においては、特定の添加剤で被覆された負極活物質および無機固体電解質と、必要により他の成分とを、混合又は添加することにより、固体電解質組成物を製造できる。
[全固体二次電池用シート]
本発明の全固体二次電池用シートとは、全固体二次電池に用いられるシートであり、その用途に応じて種々の態様を含む。例えば、固体電解質層に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用固体電解質シートともいう)、電極又は電極と固体電解質層との積層体に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用電極シート)等が挙げられる。本発明において、これら各種のシートをまとめて全固体二次電池用シートということがある。
本発明に用いられる全固体二次電池用シートは、基材上に固体電解質層又は活物質層(電極層)を有するシートである。この全固体二次電池用シートは、基材と固体電解質層又は活物質層を有していれば、他の層を有してもよいが、活物質層を有するものは後述する全固体二次電池用電極シートに分類する。他の層としては、例えば、保護層、集電体、コート層(集電体、固体電解質層、活物質層)等が挙げられる。
本発明に用いられる全固体二次電池用固体電解質シートとして、例えば、固体電解質層と保護層とを基材上に、この順で有するシートが挙げられる。
基材としては、固体電解質層を支持できるものであれば特に限定されず、上記集電体で説明した材料、有機材料、無機材料等のシート体(板状体)等が挙げられる。有機材料としては、各種ポリマー等が挙げられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース等が挙げられる。無機材料としては、例えば、ガラス、セラミック等が挙げられる。
全固体二次電池用シートの固体電解質層の構成および層厚は、本発明の全固体二次電池において説明した固体電解質層の構成および層厚と同じである。
このシートは、固体電解質組成物を基材上(他の層を介していてもよい)に製膜(塗布乾燥)して、基材上に固体電解質層を形成することにより、得られる。
本発明の全固体二次電池用電極シート(単に「本発明の電極シート」ともいう。)は、本発明の全固体二次電池の活物質層を形成するための、集電体としての金属箔上に活物質層を有する電極シートである。この電極シートは、通常、集電体及び活物質層を有するシートであるが、集電体、活物質層及び固体電解質層をこの順に有する態様、並びに、集電体、活物質層、固体電解質層及び活物質層をこの順に有する態様も含まれる。
電極シートを構成する各層の構成、層厚は、本発明の全固体二次電池において説明した各層の構成、層厚と同じである。
電極シートは、本発明の、活物質を含有する固体電解質組成物を金属箔上に製膜(塗布乾燥)して、金属箔上に活物質層を形成することにより、得られる。
[全固体二次電池及び全固体二次電池用電極シートの製造]
全固体二次電池及び全固体二次電池用電極シートの製造は、常法によって行うことができる。具体的には、全固体二次電池及び全固体二次電池用電極シートは、本発明の固体電解質組成物等を用いて、上記の各層を形成することにより、製造できる。以下詳述する。
本発明の全固体二次電池は、本発明の固体電解質組成物を、集電体となる金属箔上に塗布し、塗膜を形成(製膜)する工程を含む(介する)方法により、製造できる。
例えば、正極集電体である金属箔上に、正極用材料(正極層用組成物)として、正極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極シートを作製する。次いで、この正極活物質層の上に、固体電解質層を形成するための固体電解質組成物を塗布して、固体電解質層を形成する。さらに、固体電解質層の上に、負極用材料(負極層用組成物)として、負極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して、負極活物質層を形成する。負極活物質層の上に、負極集電体(金属箔)を重ねることにより、正極活物質層と負極活物質層の間に固体電解質層が挟まれた構造の全固体二次電池を得ることができる。必要によりこれを筐体に封入して所望の全固体二次電池とすることができる。
また、各層の形成方法を逆にして、負極集電体上に、負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層を形成し、正極集電体を重ねて、全固体二次電池を製造することもできる。
別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シートを作製する。また、負極集電体である金属箔上に、負極用材料(負極層用組成物)として、負極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して負極活物質層を形成し、全固体二次電池用負極シートを作製する。次いで、これらシートのいずれか一方の活物質層の上に、上記のようにして、固体電解質層を形成する。さらに、固体電解質層の上に、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートの他方を、固体電解質層と活物質層とが接するように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
また別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートを作製する。また、これとは別に、固体電解質組成物を基材上に塗布して、固体電解質層からなる全固体二次電池用固体電解質シートを作製する。さらに、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートで、基材から剥がした固体電解質層を挟むように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
上記の形成法の組み合わせによっても全固体二次電池を製造することができる。例えば、上記のようにして、全固体二次電池用正極シート、全固体二次電池用負極シート及び全固体二次電池用固体電解質シートをそれぞれ作製する。次いで、全固体二次電池用負極シート上に、基材から剥がした固体電解質層を積層した後に、上記全固体二次電池用正極シートと張り合わせることで全固体二次電池を製造することができる。この方法において、固体電解質層を全固体二次電池用正極シートに積層し、全固体二次電池用負極シートと張り合わせることもできる。
(各層の形成(成膜))
固体電解質組成物の塗布方法は、特に限定されず、適宜に選択できる。例えば、塗布(好ましくは湿式塗布)、スプレー塗布、スピンコート塗布、ディップコート、スリット塗布、ストライプ塗布、バーコート塗布が挙げられる。
このとき、固体電解質組成物は、それぞれ塗布した後に乾燥処理を施してもよいし、重層塗布した後に乾燥処理をしてもよい。乾燥温度は特に限定されない。下限は30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒体を除去し、固体状態にすることができる。また、温度を高くしすぎず、全固体二次電池の各部材を損傷せずに済むため好ましい。これにより、全固体二次電池において、優れた総合性能を示し、かつ良好な結着性と、非加圧でも良好なイオン伝導度を得ることができる。
塗布した固体電解質組成物、又は、全固体二次電池を作製した後に、各層又は全固体二次電池を加圧することが好ましい。また、各層を積層した状態で加圧することも好ましい。加圧方法としては油圧シリンダープレス機等が挙げられる。加圧力としては、特に限定されず、一般的には50〜1500MPaの範囲であることが好ましい。
また、塗布した固体電解質組成物は、加圧と同時に加熱してもよい。加熱温度としては、特に限定されず、一般的には30〜300℃の範囲である。無機固体電解質のガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。一方、無機固体電解質とバインダーが共存する場合、バインダーを形成する上記ポリマーのガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。ただし、一般的には上記ポリマーの融点を越えない温度である。
加圧は塗布溶媒又は分散媒体をあらかじめ乾燥させた状態で行ってもよいし、溶媒又は分散媒体が残存している状態で行ってもよい。
加圧中の雰囲気としては、特に限定されず、大気下、乾燥空気下(露点−20℃以下)、不活性ガス中(例えばアルゴンガス中、ヘリウムガス中、窒素ガス中)などいずれでもよい。
プレス時間は短時間(例えば数時間以内)で高い圧力をかけてもよいし、長時間(1日以上)かけて中程度の圧力をかけてもよい。全固体二次電池用シート以外、例えば全固体二次電池の場合には、中程度の圧力をかけ続けるために、全固体二次電池の拘束具(ネジ締め圧等)を用いることもできる。
プレス圧はシート面等の被圧部に対して均一であっても異なる圧であってもよい。
プレス圧は被圧部の面積や膜厚に応じて変化させることができる。また同一部位を段階的に異なる圧力で変えることもできる。
プレス面は平滑であっても粗面化されていてもよい。
(初期化)
上記のようにして製造した全固体二次電池は、製造後又は使用前に初期化を行うことが好ましい。初期化は、特に限定されず、例えば、プレス圧を高めた状態で初充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を開放することにより、行うことができる。
〔全固体二次電池の用途〕
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に限定はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源およびメモリーカードが挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラおよび医療機器(ペースメーカー、補聴器および肩もみ機など)などが挙げられる。さらに、各種軍需用および宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
中でも、高容量かつ高レート放電特性が要求されるアプリケーションに適用されることが好ましい。例えば、今後大容量化が予想される蓄電設備等においては高い安全性が必須となりさらに電池性能の両立が要求される。また、電気自動車などは高容量の二次電池を搭載し、家庭で日々充電が行われる用途が想定され、過充電時に対して一層の安全性が求められる。本発明によれば、このような使用形態に好適に対応してその優れた効果を発揮することができる。
全固体二次電池とは、正極、負極および電解質がともに固体で構成された二次電池をいう。換言すれば、電解質としてカーボネート系の溶媒を用いるような電解液型の二次電池とは区別される。このなかで、本発明は無機全固体二次電池を前提とする。全固体二次電池には、電解質としてポリエチレンオキサイド等の高分子化合物を用いる有機(高分子)全固体二次電池と、上記のLi−P−S系ガラス等を用いる無機全固体二次電池とに区分される。なお、無機全固体二次電池に高分子化合物を適用することは妨げられず、正極活物質、負極活物質、無機固体電解質粒子のバインダー粒子として高分子化合物を適用することができる。
無機固体電解質は、上述した、ポリエチレンオキサイド等の高分子化合物をイオン伝導媒体とする電解質(高分子電解質)とは区別されるものであり、無機化合物がイオン伝導媒体となるものである。具体例としては、上記のLi−P−S系ガラスが挙げられる。無機固体電解質は、それ自体が陽イオン(Liイオン)を放出するものではなく、イオンの輸送機能を示すものである。これに対して、電解液ないし固体電解質層に添加して陽イオン(Liイオン)を放出するイオンの供給源となる材料を電解質と呼ぶことがあるが、上記のイオン輸送材料としての電解質と区別するときにはこれを「電解質塩」又は「支持電解質」と呼ぶ。電解質塩としては例えばLiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)が挙げられる。
本発明において「組成物」というときには、2種以上の成分が均一に混合された混合物を意味する。ただし、実質的に均一性が維持されていればよく、所望の効果を奏する範囲で、一部において凝集や偏在が生じていてもよい。また、特に固体電解質組成物というときには、基本的に固体電解質層等を形成するための材料となる組成物(典型的にはペースト状)を指し、上記組成物を硬化して形成した電解質層等はこれに含まれないものとする。
以下に、実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。以下の実施例において組成を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、表中において使用する「−」は、その列の組成を有しないこと等を意味する。
(例示化合物)
−合成−
下記表1〜3に示す添加剤の列に記載の上記例示化合物のうち合成により調製したものの合成例を以下に示す。
AA1−2
ジクロロエチレンカーボネートにフッ化カリウムを反応させることにより合成した。
AA1−5
米国特許第6,180,800号明細書を参照して、3,3,3−トリフルオロプロパン−1,2−ジオールとジメチルカーボネートを塩基性条件で反応させることで合成した。
AA1−6
クロロメチルエチレンカーボネート(CAS No.2463−45−8)にフッ化カリウムを反応させることにより合成した。
AA1−13
クロロエチレンカーボネートにヨウ化カリウムを反応させることにより合成した。
BB1−2
1,3−プロパンジオールとチオニルクロライドを反応させることで合成した。
BB1−3
1,2−プロパンジオールとチオニルクロライドを反応させることで合成した。
BB3−1
チエタンと過酸化水素水を酢酸中で反応させることで合成した。
BB3−5
ペンタメチレンサフファイドと過マンガン酸カリウムを水/メチレンクロライド中で反応させることにより合成した。
−市販品−
下記表1〜3に示す添加剤の列に記載の上記例示化合物のうちの市販品を以下に示す。
AA1−1
東京化成工業社製 4−fluoro−1,3,−dioxolan−2−one
AA1−8
東京化成工業社製 Bis(2,2,2−trifluoroethyl) carbonate
BB1−1
キシダ化学社製 Ethylene sulfite
BB1−4
キシダ化学社製 Dimethyl sulfone
BB1−5
東京化成工業社製 Din−propyl sulfite
BB2−1
アルドリッチ社製 1,3,2−Dioxathiolane 2,2−dioxide
BB2−3
キシダ化学社製 Propane Sultone
BB2−4
和光純薬社製 2,4−Butanesultone
BB2−6
キシダ化学社製 Methanesulfonic acid methyl ester
BB2−7
キシダ化学社製 Benzensulfonic acid methyl ester
BB3−2
キシダ化学社製 Sulfolane
BB3−3
キシダ化学社製 3−Methyl sulfolane
BB3−7
キシダ化学社製 Dimethyl sulfone
BB3−8
キシダ化学社製 Ethylehtyl sulfone
BB3−9
キシダ化学社製 Diphenyl sulfone
(例示化合物以外の添加剤)
下記表1〜3に示す添加剤の列に記載のeX−1は、特開2002−42876号公報を参照してトルエン溶液中にビニレンカーボネート及びベンゾイルパーオキサイドを添加し、60℃で20時間攪拌し、溶剤を留去することで合成したビニレンカーボネートの重合体である。
また、eX−2はエチレンカーボネートである。
(負極活物質の修飾)
300mL三口フラスコに、負極活物質として黒鉛10g、例示化合物(AA1−1)(下記表3の添加剤)0.1g、分散溶媒としてテトラヒドロフラン90mLを投入し、スターラーを用いて25 ℃で、2時間攪拌を行った。その後、分散溶媒を留去し、真空乾燥を行うことで、例示化合物(AA1−1)で修飾された負極活物質(NA1)を得た。
負極活物質(NA1)と同様にして、例示化合物(BB1−1)で修飾された負極活物質(NB1)および例示化合物(BB2−3)で修飾された負極活物質(NB2)を調製した。
(硫化物系無機固体電解質の合成)
アルゴン雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、硫化リチウム(LiS、Aldrich社製、純度>99.98%)2.42g及び五硫化二リン(P、Aldrich社製、純度>99%)3.90gをそれぞれ秤量し、メノウ製乳鉢に投入し、メノウ製乳棒を用いて、5分間混合した。LiS及びPの混合比は、モル比でLiS:P=75:25とした。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66g投入し、上記の硫化リチウムと五硫化二リンの混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を完全に密閉した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名、フリッチュ社製)に容器をセットし、温度25℃で、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行うことで、黄色粉体の硫化物系無機固体電解質(Li−P−Sガラス、L−P−Sと表記することがある。)6.20gを得た。
<固体電解質組成物の調製>
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成した硫化物系無機固体電解質Li−P−S系ガラス9.3g、バインダーとしてPVdF−HFP(ポリフッ化ビニリデンヘキサフルオロプロピレン共重合体(アルケマ社製)0.7g、分散媒体としてジブチルエーテル15g、例示化合物(AA1−1)(下記表1の添加剤)0.1gを投入した。その後、この容器を遊星ボールミルP−7(商品名、フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間攪拌を続けた。このようにして、固体電解質組成物(SS−1)を調製した。
組成を下記表1のようにした以外は、固体電解質組成物(SS−1)と同様にして、固体電解質組成物(SS−1)以外の下記表1に示す固体電解質組成物を調製した。
Figure 2017147173
<表の注>
添加量はすべて「グラム(g)」である。
<正極層用組成物(SA−1)の調製>
ジルコニア製45mL容器(フリッチェ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記合成したLi−P−S系ガラス1.9g、例示化合物(AA1−1)(下記表2の添加剤)0.1g、バインダーとしてPVdF−HFPを0.15g、分散媒体としてトルエン20gを投入した。その後、この容器を遊星ボールミルP−7(フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間攪拌を続けた後、活物質としてNMC(日本化学工業社製)7.9gを容器に投入し、再びこの容器を遊星ボールミルP−7にセットし、温度25℃、回転数200rpmで15分間攪拌を続け、正極層組成物(SA−1)を得た。
組成を下記表2のようにした以外は、正極層用組成物(SA−1)と同様にして、正極層用組成物(SA−1)以外の下記表2に示す正極層用組成物を調製した。
Figure 2017147173
<表の注>
添加量はすべて「グラム(g)」である。
NMC:Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O ニッケル、マンガン、コバルト酸リチウム(日本化学工業)
LCO:LiCoO(コバルト酸リチウム)
NCA:LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム)
<負極層用組成物の調製>
ジルコニア製45mL容器(フリッチェ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス4g、バインダーとしてPVdF−HFP 0.2g、例示化合物(AA1−1)(下記表3の添加剤)0.01g、分散媒体としてトルエン20gを投入した。その後、この容器を遊星ボールミルP−7(フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間攪拌した。その後、活物質として黒鉛6gを容器に投入し、再びこの容器を遊星ボールミルP−7にセットし、温度25℃、回転数200rpmで15分間攪拌を続け、負極層用組成物(SB−1)を得た。
組成を下記表3のようにした以外は、正極層用組成物(SB−1)と同様にして、正極層用組成物(SB−1)以外の下記表3に示す正極層用組成物を調製した。
Figure 2017147173
<表の注>
・添加量はすべて「グラム(g)」である。
・NA1、NB1およびNB2:上記調製した、例示化合物(AA1−1)で修飾された負極活物質(NA1)、例示化合物(BB1−1)で修飾された負極活物質(NB1)および例示化合物(BB2−3)で修飾された負極活物質(NB2)を調製した。
・負極層用組成物(SB’−1)〜(SB’−3)において、負極活物質の添加量は、黒鉛と黒鉛を被覆している添加剤との合計量である。
<全固体二次電池用電極シートの作製>
上記で調製した正極層用組成物(SA−1)を厚み20μmのアルミ箔(集電体)上に、アプリケーター(商品名 SA−201ベーカー式アプリケータ、テスター産業社製)により塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間加熱し、正極層用組成物を乾燥させた。その後、ヒートプレス機を用いて、加熱(120℃)しながら加圧し(180MPa、1分)、正極活物質層/アルミ箔の積層構造を有する全固体二次電池用正極シートを作製した。正極活物質層の厚みは90μmであった。
次いで、得られた正極活物質層上に、上記で調製した固体電解質組成物(eS−1)を、上記ベーカー式アプリケーターにより塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに100℃で1時間加熱し、厚み50μmの固体電解質層を形成した。
次いで、得られた固体電解質質層上に、上記で調製した負極用組成物(eB−1)を、上記ベーカー式アプリケーターにより塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間加熱し、厚み100μmの負極活物質層を形成した。負極活物質層上に厚み20μmの銅箔を合わせ、ヒートプレス機を用いて、120℃加熱しながら加圧し(600MPa、1分)、全固体二次電池用電極シートを作製した。
<全固体二次電池の作製>
上記で得られた全固体二次電池用電極シートを直径14.5mmの円板状に切り出した。直径14.5mmに切り出した直径14.5mmの全固体二次電池用電極シートをスペーサーとワッシャーを組み込んだステンレス製の2032型コインケース11に入れ、コインケース11をかしめることで、図2に示す、実施例1−1の全固体二次電池を作製した。
このようにして製造した全固体二次電池は、図1に示す層構成を有する。
層構成を下記表4のようにした以外は、実施例1−1の全固体二次電池と同様にして、実施例1−1以外の下記表4に示す全固体二次電池を作製した。
<電池特性試験>
上記作製した全固体二次電池(以下、単に「電池」とも称する。について、下記電池特性試験を行った。
−試験例1. 4.2Vサイクル試験 −
上記で作製した電池を用い、30℃で充電電流値0.35mA、放電電流値0.7mAで4.2V〜3.0Vの充放電を4回繰り返した。
その後、サイクル試験として、30℃環境下、充放電電流値0.7mAの条件で4.2V〜3.0Vの充放電を繰り返す試験を実施した。
このサイクル試験において、1サイクル目の放電容量を100%としたときの、放電容量が80%となるサイクル数を評価した。下記表4には、サイクル数を記載した。
この試験により、4.2Vで電池を稼動した際の固体電解質副反応に起因する電池劣化を観察することができる。
−試験例2. 10℃−4.2Vサイクル試験−
上記で作製した電池を用い、30℃で充電電流値0.35mA、放電電流値0.7mAで4.2V〜3.0Vの充放電を4回繰り返した。この電池を用い、充電電流値0.35mA、放電電流値7mAで充放電を行い、放電容量を測定した。
その後、サイクル試験として10℃環境下、充放電電流値0.7mAの条件で、4.2V〜3.0Vの充放電を50回繰り返す試験を実施した。その後、充電電流値0.35mA、放電電流値7mAで充放電を行い、サイクル試験後の放電容量を測定した。
以下の計算式により、10℃サイクル試験前後での放電時容量維持率を評価した。下記表4には、放電容量維持率(%)を単位「%」を省略して記載した。
放電容量維持率(%)=50サイクル終了後の2C電流値における放電容量
/サイクル試験前の2C電流値における放電容量×100
この試験により、10℃(低温)で電池を稼働した際の固体電解質副反応に起因する電池劣化を観察することができる。
<被膜の形成の確認>
硫化物系無機固体電解質と活物質接触面の断面を集束イオンビーム走査電子顕微鏡(FIB−SEM)(Carl Zdeiss社製商品名:Auriga)で調整した。この断面に対し、エネルギー分散型X線分光法(TEM−EDX)により、組成分析を行い、硫化物系無機固体電解質−活物質界面の元素分布(C、O、ハロゲンおよびSの分布)を確認した。
下記表4の実施例1−1〜1−44では硫化物系無機固体電解質−活物質界面の表面にC、Oおよびハロゲン、または、C、SおよびOが観察され、硫化物系無機固体電解質表面において被膜が形成されたことを確認した。
一方、下記表4の比較例1−1〜1−9では硫化物系無機固体電解質−活物質界面にCおよびO等の特定の添加剤に由来する元素が観察されず、硫化物系無機固体電解質表面において被膜が形成されなかったことを確認した。
Figure 2017147173
表4から、本発明の固体電解質組成物を用いて、全固体二次電池における正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層のいずれかの層を形成した全固体二次電池は、上記試験例1.および2.のいずれにおいても良好な結果を示した。本発明の全固体二次電池は、低温(10℃)稼働においても優れたサイクル特性を示すことがわかる。
これに対して、全固体二次電池におけるいずれの層も、特定の添加剤を含有していない比較例の全固体二次電池は、4.2V電池稼働における電池劣化の抑制および低温稼働のサイクル特性のいずれも十分ではなかった。
1 負極集電体
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
10 全固体二次電池
11 コインケース
12 全固体二次電池用シート
13 サイクル特性評価用セル(コイン電池)

Claims (11)

  1. 周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する硫化物系無機固体電解質を含有する固体電解質組成物であって、
    電気化学作用により前記硫化物系無機固体電解質表面において被膜を形成するC=O結合を有する化合物または電気化学作用により前記硫化物系無機固体電解質表面において被膜を形成するS=O結合を有する化合物を含有する固体電解質組成物。
  2. 前記C=O結合を有する化合物が下記(A)に記載の化合物であり、前記S=O結合を有する化合物が下記(B)に記載の化合物である請求項1に記載の固体電解質組成物。
    (A)分子内にカーボネート基およびハロゲン原子を有するカーボネート化合物
    (B)サルファイト化合物、スルホン酸エステル化合物またはスルホン化合物
  3. 前記カーボネート化合物が下記一般式(A1)で表され、前記サルファイト化合物、スルホン酸エステル化合物およびスルホン化合物が、それぞれ下記一般式(B1)、(B2)および(B3)の各式で表される請求項2に記載の固体電解質組成物。
    Figure 2017147173
    一般式中、RA1、RB21およびRB22は、互いに独立して1価の置換基を表す。RB3は、炭素原子で硫黄原子に結合する1価の置換基を表す。複数のRA1、複数のRB1および複数のRB3は、それぞれ互いに同じであっても異なっていても良く、複数のRA1同士、複数のRB1同士、RB21とRB22、および複数のRB3同士は、それぞれ環を形成していてもよい。RA1の少なくとも1つは、少なくとも1つのハロゲン原子を有する。
  4. 前記(A)に記載された化合物および前記(B)に記載された化合物がそれぞれ分子内に環状構造を有する請求項2または3に記載の固体電解質組成物。
  5. 前記一般式(A1)、(B1)、(B2)および(B3)の各式で表される化合物が、それぞれ下記一般式(A1−2)、(B1−2)、(B2−2)および(B3−2)の各式で表される化合物である請求項3または4に記載の固体電解質組成物。
    Figure 2017147173
    一般式(A1−2)において、αは5員以上の環を形成するのに必要な原子群を表し、一般式(A1−2)で表される化合物は、ハロゲン原子を少なくとも1つ有する。
    一般式(B1−2)において、βは5員以上の環を形成するのに必要な原子群を表す。
    一般式(B2−2)において、Lは−O−またはアルキレン基を表す。χは5員以上の環を形成するのに必要な原子群を表す。
    一般式(B3−2)において、複数のLは各々独立してアルキレン基を表す。δは4員以上の環を形成するのに必要な原子群を表す。
  6. 電極活物質を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
  7. 前記電極活物質が、負極活物質である請求項6に記載の固体電解質組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体電解質組成物の層を基材上に有する全固体二次電池用シート。
  9. 正極活物質層と負極活物質層と固体電解質層とを具備する全固体二次電池であって、前記正極活物質層、負極活物質層、および固体電解質層の少なくともいずれか1層が、請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体電解質組成物からなる層である全固体二次電池。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体電解質組成物を基材上に配置し、これを製膜する全固体二次電池用シートの製造方法。
  11. 請求項10に記載の製造方法を介して、全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
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