JP2017145026A - チューブ状共押出フィルムおよび飲料用包装体 - Google Patents
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Abstract
Description
チューブ状のフィルムとは、チューブラー法またはインフレーション法と呼称される樹脂溶融押出法にて筒状に成形されるフィルムを云う。
本発明のフィルムの外層とは、チューブ状フィルムの外側の層であり、飲料用包装体においても外気に触れる側の層である。同様に、フィルムの内層とは、チューブ状フィルムの内側の層であり、包装体において液体飲料に接する側の層である。中間層とは、外層と内層の間に配する層である。
以下、各層について説明する。
本発明のフィルムの外層は、密度930kg/m3以上950kg/m3以下のポリエチレン樹脂によって構成される。
外層に用いるポリエチレン樹脂は、エチレンホモポリマー、またはエチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体のエチレン−α−オレフィンコポリマーである。また、炭素原子数3〜20のα−オレフィンは1種あるいは2種以上を組み合わせることができる。中でも、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが特に好ましい。
外層のポリエチレン樹脂の密度の下限値は930kg/m3以上が好ましく、935kg/m3以上がより好ましく、940kg/m3より大が更に好ましい。上限値は、950kg/m3以下が好ましく、945kg/m3以下がより好ましい。
分子量分散度(重量平均分子量/数平均分子量、Mw/Mn)は、好ましくは3.0より大きく、より好ましくは3.5以上、更に好ましくは4.0以上であり、上限は好ましくは6.0以下、より好ましくは5.5以下である。代表的なシングルサイト触媒であるメタロセン触媒で製造される場合の分子量分散度は一般的に2〜3であり、チーグラー・ナッタ系触媒で製造される場合の分子量分散度は一般的に6以上であるので、本発明のフィルムに用いるポリエチレンの好ましい分子量分散度は、その両者間に位置する。
Mw/Mnが3.0より大きいことにより、ポリエチレン密度が高くなり剛性が得られ、Mw/Mnが6.0以下で小さいほど、耐衝撃性が良好となるので、製袋、梱包、輸送時などに液体内容物による包装体の圧迫や揺れが強く起こって袋同士が擦れ合っても、袋表面に傷が生じない。
それらの最外層における添加濃度は、1.0%以上3.0%以下が好ましい。
また、天然シリカ、合成ゼオライトの粒子径は、2μm以上であることが好ましい。2μm未満では、耐ブロッキング効果を発現することが難しい。
一般的に、包装フィルムには脂肪酸アミド等が多用されるが、臭気性やブリードアウトによるフィルム加工機のロール汚染の点から、本発明のフィルムの外層には有機化合物滑材を添加しない。
本発明のフィルムの中間層には、フィルムに強度、特に耐ピンホール性を付与する目的で、ポリアミド樹脂層を少なくとも1層配する。
ポリアミド樹脂層を2層以上設ける場合は、各層が異なる種類のポリアミド樹脂で構成されてもよい。
下限を10%以上とすることにより、フィルムに十分な耐ピンホール性を付与することができ、また上限を50%以下とすることにより、製造コストを抑制できる。
本発明のフィルムは、酸素ガスバリア性を向上させる目的で、中間層にエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物樹脂(EVOH)層を備えることができる。
また、ケン化度は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
下限を3%以上とすることにより、フィルムに十分な酸素バリア性を付与することができ、また、上限を20%以下とすることにより、フィルムの耐ピンホール性の低下や製造コストを抑制することができる。
本発明のフィルムは、内層の中間層側に隣接して、ポリエチレン樹脂層を配することができる。
そのポリエチレン樹脂としては、種類は特に限定されないが、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)であることが好ましい。LLDPEは、引張強度、伸び、耐ピンホール強度、剛性等の物性強度が強いという特徴がある。
また、中でも、より臭気の少ない利点から、メタロセン系触媒を使用して製造した分子量分散度が3以下のLLDPEが好ましい。
下限を20%以上とすることにより、フィルムに適度な柔軟性をもたせることができ、上限を70%以下とすることにより、製膜適性が向上する。
本発明のフィルムの内層には、ヒートシール性を有するポリエチレン系樹脂層を配する。
内層のポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、アイオノマー樹脂等が挙げられるが、樹脂の臭気の少なさを考慮するとLDPEやLLDPEが好ましく、さらに、シール強度、シール部の耐熱性を考慮するとLLDPEが好ましい。
密度930kg/m3以下により、適度な結晶化度となってフィルムに柔軟性が付与でき、チューブ状フィルムの内層同士が液体充填前までは密着した状態となりやすい。また、屈曲疲労によるフィルムのピンホール発生を抑制しやすい。
密度900kg/m3以上により、内層表面に適度な滑り性を付与でき、チューブ状フィルムの内層同士が剥がれ液体流入する際に摩擦が生じにくい。また、液体充填時にフィルムが伸び過ぎないため収容液体量の計量が行いやすい。
非球形状粒子の添加により、液体充填までのフィルム内層同士の密着が軽い状態となり、また、液体充填の流入圧力によって内層同士の間が開きやすくなる。他方、球形状の場合はフィルム内層同士の密着が重めとなり、液体流入工程で内層同士が開きづらくなる。非球形状の場合、粒子の輪郭に角が存在することにより、上述の効果が得られるものと推察される。
非球形状粒子としては、不定形状のシリカ粒子などが挙げられ、内層における濃度は0.5%以上5%以下が好ましく、1.0%以上3.0%以下がより好ましく、1.5%以上2.5%以下が更に好ましい。添加濃度が小さいと内層同士が剥離しづらく、添加濃度が大きいと剥離しやすい傾向となる。添加濃度が多過ぎるとチューブ状フィルムを作製した際や、液体充填前から、内層同士が離れてしまう。
粒子径は、2μm以上20μm以下が好ましく、5μm以上10μm以下がより好ましく、電子顕微鏡観察などの手法で計測できる。
また、一般的には、包装フィルムには脂肪酸アミド等が多用されるが、チューブ状フィルムを作製した際や液体充填前から内層同士が滑りやすく離れ易かったり、フィルム加工機のロール汚染、臭気性、内容物の液体中へ移行する点からも、本発明のフィルムの内層には有機化合物滑材は添加しない。
本発明のフィルムは、各層の層間剥離強度を高める目的で、上記の各層間に接着樹脂層を設けることができる。接着層は1層であってもよいし、複数であってもよい。
接着樹脂層がポリエチレン樹脂を含む層に隣接する場合は、ポリエチレン系接着樹脂を用いると好適である。
下限が3μm以上であれば、層間剥離強度を向上させることができる。また接着層が厚過ぎると、透明性の悪化やフィルムの総厚みが厚くなってしまう他、製造コストもかさむため上限は30μm以下が望ましい。
本発明の共押出多層フィルムは、公知の共押出インフレーション法を用いて作製することができる。
本発明のフィルムの総厚は、50〜250μmであり、包装袋に収容する液体の重量やその衝撃性とコストとの案配を鑑みて、総厚を加減選定して好適に使用できる。
フィルム総厚の下限は、50μm以上が好ましく、80μm以上がより好ましく、100μm以上が更に好ましい。上限は、250μm以下が好ましく、240μm以下がより好ましく、200μm以下が更に好ましい。
フィルム総厚が50μm以上により、フィルムの耐衝撃性が向上する。フィルム総厚250μm以下により柔軟性がよく経済性もよい。
本発明のフィルムの内層同士の剥離強度(N/15mm幅)は、0.01以上0.30以下である。下限は0.05以上がより好ましく、0.08以上が更に好ましい。上限は0.25以下がより好ましく、0.20以下が更に好ましい。
原料樹脂の物性は、次の方法で測定した。
<密度>
JIS K 7112に準拠して測定した。
<メルトフローレート>
JIS K 7210に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定した。
<分子量、分子量分散度Mw/Mn>
ゲルパーミエーションクロマトグラフ分析装置を用い、カラムにShodex製AT−807Sと東ソー製TSK−gelGMH−H6を直列にして用い、溶媒にイルガノックス10ppm添加のトリクロロベンゼンを用い、単分散ポリスチレンによる検量線を作成し、140℃で分析した。
共押出インフレーション法により、下記層構成および層組成の無延伸多層フィルムを作製した。
外層(15μm)/接着樹脂層(10μm)/中間層(20μm)/接着樹脂層(10μm)/内層隣接層(50μm)/内層(15μm)、総厚120μm
・外層: メタロセン触媒、スラリー重合法で製造された高密度ポリエチレン樹脂(密度941kg/m3、重量平均分子量7.7万、分子量分散度5.0)に、添加剤として合成ゼオライト(粒径5μm)を2.0重量%混合した。
・接着樹脂層: 酸変性ポリエチレン樹脂
・中間層: ナイロン6樹脂
・内層隣接層: 直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度920kg/m3)
・内層: 直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度920kg/m3)に、添加剤として不定形シリカ粒子(粒径5〜10μm)を2.0重量%混合した。
実施例1において、外層をチーグラー・ナッタ触媒、溶液重合法で製造された直鎖状低密度ポリエチレン(密度931kg/m3、分子量分散度2.1)を代えた他は同様にして作製した。
実施例1において、外層の添加剤をオレイン酸アミドに代えた他は同様にして作製した。
実施例1において、中間層を6−66ナイロン共重合樹脂に代えた他は同様にして作製した。
実施例1において、中間層をナイロン6樹脂(10μm)/EVOH(10μm)に代え、また内層の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を密度913kg/m3のものに代えた他は同様にして作製した。
EVOHは、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(エチレン含有率32mol%)である。
実施例5において、中間層をEVOH(20μm)に代えた他は同様にして作製した。
実施例1において、内層の添加剤濃度を1.0重量%に代えた他は同様にして作製した。
実施例1において、内層の添加剤濃度を3.0重量5に代えた他は同様にして作製した。
実施例1において、内層の不定形シリカの粒径を7μmに代えた他は同様にして作製した。
実施例1において、各層厚を次のように代えた他は同様にして作製した。
外層(5μm)/接着樹脂層(5μm)/中間層(10μm)/接着樹脂層(5μm)/内層隣接層(20μm)/内層(15μm)
実施例1において、各層厚を次のように代えた他は同様にして作製した。
外層(30μm)/接着樹脂層(10μm)/中間層(50μm)/接着樹脂層(10μm)/内層隣接層(70μm)/内層(30μm)
実施例1において、内層に添加剤を用いない他は同様にして作製した。
実施例2において、内層の添加剤を合成ゼオライト(球形状、粒径5μm)に代えた他は同様にして作製した。
比較例2において、外層の添加剤をオレイン酸アミドに代えた他は同様にして作製した。
尚、表1,2のフィルム層構成は、外層、中間層、内層のみを記し、接着樹脂層、内層隣接層は省略した。
フィルム製膜後のチューブ状フィルムを、内層同士間を開けることなく、フィルム流れ方向に沿って15mm幅に切り出して、内層表面同士が接し合った2枚の短冊片とし、INSTRON社製引張試験機3342型機を用い、引張速度200mm/分、180度剥離、室温下の条件で、2枚の内層間を剥がして剥離強度(gf/15mm幅)を測定した。
大栄科学精器製作所製染色物摩擦堅牢度試験機を用い、ステンレス製試験台にフィルム(幅3cm、長さ15cm)外層を摩擦子側へ向けて固定し、また、摩擦子にもフィルム外層を試験台側へ向けて取り付け、試験台上のフィルムと摩擦子のフィルムとの外層同士を、摩擦子面積20mm角、荷重2.5N、移動距離60mm、30往復/分、往復回数100回、室温下の条件で擦り合わせ、摩擦堅牢度試験を行った。
試験台側に取り付けたフィルムの摩擦箇所(幅20mm長さ60mm)について、傷または圧着痕の数を計測した。
各例で得られた幅370mmのフィルムロールを縦ピロー包装機に設置してフィルム長さ500mを走行させ、包装機のニップロールに異物が付着するかどうかを目視観察した。
異物付着がない場合を「〇」、異物付着があった場合を「×」と評価した。
得られたチューブ状フィルムに市販のペットボトル入りミネラルウォーター400mLを注入し、ヒートシールして縦15cm横15cmの袋を作製し、50℃で96時間保存した。その後、23℃に冷却した袋を開封し、中身のミネラルウォーターをコップに注いで口に含み、味覚、臭気を評価した。
試験者は非喫煙の健康な成人男女5名とし、下記基準の評価値の平均値2.0未満を「○」、2.0以上を「×」とした。ブランク品には、23℃に冷却したペットボトル入りミネラルウォーターをコップに注いで用いた。
0; ブランク品の味および臭気と差異なし。
1; ブランク品の味および/または臭気と、僅かに差異を感じる(検知閾値)。
2; 袋由来の味および/または臭気の影響があると判別できる(認知閾値)。
3; ブランク品の味および/または臭気と、容易に差異を感じる。
4; 強い味覚変化および/または強い臭気を感じる。
比較例1は内層に無機粒子を添加せず、比較例2〜3は内層の添加粒子が球形状であり、内層同士の密着が強く、剥離強度が大きかった。比較例2は、外層のポリエチレン樹脂密度が小さめであり外層表面の摩擦により傷や痕がつきやすかった。比較例3は、外層のポリエチレン樹脂密度は比較例2と同じであっても、有機系滑材のオレイン酸アミドを添加したことから傷や痕はつき難かったが、包装機汚染と、飲料水の味・臭気変化が生じた。
2 共押出フィルムの中間層
3 共押出フィルムの内層
10 共押出多層フィルム1枚
100 チューブ状フィルム
Claims (4)
- 外層にポリエチレン樹脂層、中間層にポリアミド樹脂層及び/又はエチレン−酢酸ビニルけん化物層、内層にポリエチレン系樹脂層の順に配する飲料包装用フィルムであって、外層と内層に配合する添加剤は無機系のみであり、且つ内層に配合する添加剤は非球形状粒子であり、チューブ内層同士の剥離強度が0.01N/15mm幅以上0.30N/15mm幅以下であることを特徴とするチューブ状共押出フィルム。
- 外層を構成するポリエチレン樹脂が、密度930kg/m3以上950kg/m3以下、且つ分子量分散度(Mw/Mn)3.0以上6.0以下である請求項1または2に記載のチューブ状共押出フィルム。
- 摩擦堅牢度試験による外層表面の擦傷痕数が、幅20mm長さ60mm当たり45箇所以下である請求項1〜2の何れかに記載のチューブ状共押出フィルム。
- 請求項1〜3の何れかに記載のチューブ状共押出フィルムを用い、ピロー包装してなる飲料用包装袋。
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