JP5822956B2 - 低吸着性ラミネート用多層フィルム、これを用いた複合フィルム及び包装材 - Google Patents

低吸着性ラミネート用多層フィルム、これを用いた複合フィルム及び包装材 Download PDF

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Description

本発明は、食品、薬品、工業部品等を包装する包装材として好適に用いることができるフィルムに関するものであって、外観、易引裂き性、ヒートシール性、耐カール性に優れると共に、内容物からの揮発成分の非吸着等も良好な、ラミネート用多層フィルム及び該フィルムを用いた包装材に関する。
近年のユニバーサルデザイン化傾向の中で、社会的弱者(高齢者、幼児、障害者等)に対しての配慮として、消費者が開封しやすい方式、例えば易開封性、易引き裂き性が重要視されつつある。しかしながら、易開封性、易引き裂き性を向上しようとすると、包装材本来の機能であるヒートシール強度が低下することによる輸送時や店頭での陳列時における破袋、内容物のこぼれ等の問題があった。
易引き裂き性を付与したフィルムとしては、脂環式構造含有重合体からなる層にその他の熱可塑性樹脂からなる層を積層した包装フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この包装フィルムは、50μmと薄いため引き裂き性は良好であり、また防湿性にも優れるものではあるが、主にラッピングフィルムやストレッチフィルムとして使用されるものであって、容器や袋として成形した際の強度等を保証するものではなかった。また、このフィルムは、単体での使用を目的としており、ラミネート用フィルムとしての使用は想定されていない。
同じく、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層の両隣接層にポリオレフィン系樹脂層を積層してなる、ラミネート用フィルムも提供されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2で提供されたフィルムは、他の基材と貼りあわせて使用し、且つシール強度を維持させるために、両面をオレフィン系樹脂とし、内容物からの揮発成分の吸着を抑制するために、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層を中間層とするものである。このような多層構成を有することにより、内容物の吸着は中間層によってある程度制御することができるものの、シール層部分を揮発成分が透過することを防ぎきれず、長期保存した場合には中間層(環状オレフィン系樹脂組成物層)に到達し、シール層と中間層とのデラミが発生することがある。またこの文献2の実施例で使用されている環状ポリオレフィン系樹脂はガラス転移温度が低いグレードであり、非吸着性のレベルが実用レベルには到達しておらず、更にシール層の厚み比率が高いことにより、実質的にはラミネート用フィルムへの揮発分吸着を防止できていない蓋然性が高い。
食品安全性等の観点から、近年、内容物視認性も重要視されるようになってきている。即ち、貼りあわせる基材が透明性を有する場合は、ラミネート用フィルムも透明であることが必要であるし、また、表面光沢性を有している方が、透明基材と貼りあわせた際の見栄えもよくなるという効果も期待できる。
又、ラミネート用フィルムは製造されてから実際に基材と貼りあわせるまで、静置保管されることになる。通常、接着剤等との濡れ性を挙げるために、ラミネート用フィルム表面はコロナ処理等の表面処理がなされることが一般的であるが、通常のオレフィン系樹脂を表面層とする場合には、多層フィルム製造後に行った表面処理度の経時劣化があることが知られている。即ち、保管されたラミネート用フィルムを基材と貼りあわせる際に、保管期間によって接着強度(ラミネート強度)の不均一が生じることがあり、製品性能のばらつきの原因となる。接着強度の低下は、ラミネート用フィルムと基材間でのデラミを生じさせることになるため、ラミネート用フィルムの易引き裂き性の効果を十分に発揮させることができないことにもつながる。
特開2000−334890号公報 特開2012−111182号公報
本発明の課題は、上記のような問題に鑑みなされたものであり、食品、薬品、化粧品、サニタリー用品、工業部品等を包装する包装材に関するものであって、易引裂き性、高ヒートシール強度、耐カール性、表面層外観、揮発成分の吸着抑制やラミネート適正が良好なラミネート用多層フィルム及び該フィルムを用いた包装材を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、少なくとも4層の多層構成を有する多層フィルムであって、特にシール層と、これに隣接する層の厚さや使用する樹脂種を選択して組み合わせ、且つ表面層(ラミネート層)に環状ポリオレフィン系樹脂を使用することにより、これらの課題を全て解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、環状ポリオレフィン系樹脂(a)を主成分とする表面層(A)、環状構造を有さないオレフィン系樹脂(b)を主成分とする中間層(B)、環状ポリオレフィン系樹脂(c)を主成分とする中間層(C)、環状構造を有さないオレフィン系樹脂(d)を主成分とするシール層(D)とが、(A)/(B)/(C)/(D)の順で積層してなる多層フィルムであって、前記中間層(C)の環状ポリオレフィン系樹脂(c)の40質量%以上が、ガラス転移点が100℃以上の環状ポリオレフィン系樹脂からなり、且つ中間層(C)の全厚に対する厚み比率が15〜30%であり、前記シール層(D)のオレフィン系樹脂(d)の80質量%以上が、密度が0.90g/cm以上のオレフィン系樹脂からなり、且つシール層(D)の全厚に対する厚み比率が10〜25%であることを特徴とする低吸着性ラミネート用多層フィルム及び該フィルムを用いた複合フィルム、当該複合フィルムからなる包装材を提供するものである。
本発明の低吸着性ラミネート用多層フィルムは、易引裂き性、高ヒートシール強度、ラミネート特性等の性能バランスに優れ、且つ内容物からの揮発成分の吸着を有効に抑制できるものである。特にシール層と隣接する中間層に高ガラス転移点を有する環状ポリオレフィン系樹脂を含有させたことにより、シール層を透過した、内容物からの揮発成分のフィルムへの吸着を効果的に抑制できる。また表面層(ラミネート層)を環状ポリオレフィン系樹脂としたことにより、表面光沢性に優れると共にコロナ処理等の表面処理度の経時劣化がなく、また多層構成を非対称としたことによりカール性も抑えられ、ラミネート特性が優れ、かつ外観も良好な包装材を提供することができる。また基材として易引き裂き性を有する物を選択して使用することにより、ノッチ等の引裂き開始部を設けなくても、縦方向及び横方向ともに易引き裂き性を有する包装材とすることができるため、余分な力を掛けることなく、社会的弱者にも簡単に裂ける易開封性を有する。さらにシール層にオレフィン系樹脂を用いたことで、シール部の収縮やシワが入りくいなどの優れたシール性、汎用の容器等への易シール性を確保できる。更に中間層にもオレフィン系樹脂を使用したことから、重量物の包装にも耐えられる強度、フィルムの屈曲疲労等による耐ピンホール性等も有する物である。これらのことから、本発明で提供するラミネート用多層フィルムを用いた複合フィルムは、食品・菓子・化粧品・サニタリー用品・医薬品・たばこ・工業薬品・雑貨用等の包装材として好適に用いることができる。
本発明の多層フィルムは、少なくとも4層の樹脂層を有し、その表面層(A)側に接着層等を介して基材フィルムと貼りあわせて使用されるものである。
表面層(A)は、環状ポリオレフィン系樹脂(a)を主成分とする。本発明において主成分とするとは、当該樹脂層を形成する樹脂成分の全質量に対して、当該主成分として規定する特定樹脂を65質量%以上で含有することをいうものであり、好ましくは、90質量%以上含有することをいう。
前記環状ポリオレフィン系樹脂(a)としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」という。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」という。)等が挙げられる。さらに、COP及びCOCの水素添加物は、特に好ましい。また、環状オレフィン系樹脂の重量平均分子量は、5,000〜500,000が好ましく、より好ましくは7,000〜300,000である。
前記ノルボルネン系重合体と原料となるノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体である。このようなノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデテトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、ジメタノテトラヒドロフルオレン、フェニルノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、メトキシカルボニルテトラシクロドデセン等が挙げられる。これらのノルボルネン系単量体は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
前記ノルボルネン系共重合体は、前記ノルボルネン系単量体と共重合可能なオレフィンとを共重合したものであり、このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20個を有するオレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエンなどが挙げられる。これらのオレフィンは、それぞれ単独でも、2種類以上を併用することもできる。
本発明においては、このような環状ポリオレフィン系樹脂(a)を表面層(A)の主成分とすることにより、多層フィルムの表面光沢性が良好であると共に、当該表面をコロナ処理等で処理した時のその処理度の経時による低下の度合いが低く、多層フィルムを長期保管した場合であっても、製品性状を一定にすることが可能となる。
表面層(A)の主成分として用いる環状ポリオレフィン系樹脂(a)のガラス転移点(Tg)としては特に限定されるものではないが、上述のような表面光沢性、表面処理度の維持、並びに内容物からの揮発成分が仮に表面層まで到達してしまった際のさらなる吸着抑制や、接着層からの低分子量化合物、揮発成分等が内容物への移行を抑えられる観点等から、100℃以上の環状ポリオレフィン系樹脂を樹脂成分として40質量%以上含有していることが好ましい。尚、本発明におけるガラス転移点、融点等は示差走査熱量測定(DSC)にて測定したものである。
前記のように、Tgが100℃以上の環状ポリオレフィン系樹脂の、表面層(A)を形成する樹脂成分に対する含有率は、40質量%以上であることが好ましいが、更に50質量%以上であることが、得られる多層フィルムの易引裂き性、フィルム剛性、吸着抑制がより優れた多層フィルムとなり、好ましいものである。
また、前記環状ポリオレフィン系樹脂(a)のTgは、他の樹脂層との共押出積層法による製造が可能である点と、工業的原料入手容易性の観点から、200℃以下であることが好ましい。この様なTgを有する環状ポリオレフィン系樹脂(a)としては、ノルボルネン系単量体の含有比率が40〜90質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜90質量%、更に好ましくは60〜85質量%である。含有比率がこの範囲にあれば、フィルムの剛性、易引き裂き性、ラミネート特性が向上する。
一方、高ガラス転移点(Tg)のノルボルネン系共重合体は引っ張り強度が低く、極端に切れやすく、裂けやすい場合もあるため、成膜性時・スリット時の引き取りや巻き取り適性やラミネート強度とのバランスを考慮し、高Tg品と100℃未満のガラス転移点を有する低Tg品とをブレンドすることも好ましいものである。
特に剛性が高すぎて、輸送時の落下により簡単に裂ける・破袋する等の問題がある場合は、Tg100℃未満のCOCを配合することにより、強度を向上できる。またCOCと相溶性の良い、環状構造を含有しないポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂等の、ポリオレフィン系樹脂を配合することも有効である。
前記環状ポリオレフィン系樹脂(a)として用いることができる市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体(COC)としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス社製「トパス(TOPAS)」等が挙げられる。
前記表面層(A)の厚み、並びに全厚に占める厚み比率としては、特に限定されるものではない。後述する他の樹脂層との兼ね合いで選択することになるが、共押出積層法での製造が容易である観点から、厚みとしては3μm以上であることが好ましく、厚み比率としては5〜25%の範囲であることが好ましい。
前記表面層(A)に隣接する中間層(B)は環状構造を有さないオレフィン系樹脂(b)を主成分とする。この中間層(B)を設けることによって、多層フィルムの剛性、耐寒性、耐衝撃性、耐ピンホール性、並びに耐カール性を発現させることができる。即ち、この中間層(B)に用いるオレフィン系樹脂(b)は、用途に応じて選択することが好ましい。
前記オレフィン系樹脂(b)としては、前述の表面層(A)及び後述する中間層(C)と積層した際の層間接着性に優れる点、及び工業的入手容易性の観点より、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
前記ポリエチレン系樹脂としては、易引裂き性、耐ピンホール性、表面層(A)と中間層(C)との層間強度の維持のために、密度0.900〜0.950g/cmであるものが好ましく、より好ましくは、密度0.905〜0.945g/cmのものである。
前記ポリエチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状中密度ポリエチレン(LMDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)のポリエチレン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー等が挙げられ、単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。これらの中でも環状ポリオレフィン系樹脂の有する易引裂き性の効果を阻害しない引き裂き性を有する観点と、多層フィルムとしての耐ピンホール性等の観点よりLLDPE、LMDPEを用いることが好ましい。
LDPEとしては高圧ラジカル重合法で得られる分岐状低密度ポリエチレンであれば良く、好ましくは高圧ラジカル重合法によりエチレンを単独重合した分岐状低密度ポリエチレンである。
LLDPE、LMDPEとしては、シングルサイト触媒を用いた低圧ラジカル重合法により、エチレン単量体を主成分として、これにコモノマーとしてブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン等のα−オレフィンを共重合したものである。コモノマー含有率としては、0.5〜20モル%の範囲であることが好ましく、1〜18モル%の範囲であることがより好ましい。
前記シングルサイト触媒としては、周期律表第IV又はV族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物及び/又はイオン性化合物の組合せ等のメタロセン触媒系などの種々のシングルサイト触媒が挙げられる。また、シングルサイト触媒は活性点が均一であるため、活性点が不均一なマルチサイト触媒と比較して、得られる樹脂の分子量分布がシャープになるため、フィルムに成膜した際に低分子量成分の析出が少なく、樹脂層間の接着強度の安定性に優れた物性の樹脂が得られるので好ましい。
前述のようにポリエチレン系樹脂の密度は0.900〜0.950g/cmであることが好ましいが、0.905〜0.940g/cmの範囲であることがより好ましい。密度がこの範囲であれば、適度な剛性を有し、耐ピンホール性等の機械強度も優れ、フィルム成膜性、押出適性が向上する。また、融点は、一般的には60〜130℃の範囲であることが好ましく、70〜125℃がより好ましい。融点がこの範囲であれば、加工安定性や前記環状ポリオレフィン系樹脂(a)との共押出加工性が向上する。また、前記ポリエチレン系樹脂のMFR(190℃、21.18N)は2〜20g/10分であることが好ましく、3〜10g/10分であることがより好ましい。MFRがこの範囲であれば、フィルムの押出成形性が向上する。
このようなポリエチレン系樹脂は環状オレフィン系樹脂との相溶性も良いため、積層した際の透明性も維持することができる。また接着性樹脂等を使用することなく、表面層(A)と中間層(C)との層間接着強度も保持でき、柔軟性も有しているため、耐ピンホール性も良好となる。
前記ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、たとえばプロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。望ましくはプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であり、特にメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン・α−オレフィンランダム重合体が好ましい。これらのポリプロピレン系樹脂を中間層(B)として用いた場合には、フィルムの耐熱性が向上し、軟化温度を高くすることができるため、100℃以下のボイル、あるいはホット充填、または100℃以上のレトルト殺菌等の蒸気・高圧加熱殺菌特性に優れた包装材用のラミネート用フィルムとして好適に用いることが出来る。
また、これらのポリプロピレン系樹脂は、MFR(230℃)が0.5〜30.0g/10分で、融点が110〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0〜15.0g/10分で、融点が115〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、フィルムの成膜性が向上する。
本発明の多層フィルムにおいて、中間層(B)はオレフィン系樹脂を主成分とするものであるが、その他の樹脂を本発明の効果を損なわない範囲で混合してもよく、また、その他の樹脂を含む樹脂層を積層してなる2層以上の構成を有するものであってもよい。このとき混合して使用できるその他の樹脂としては、前記表面層(A)で用いた環状ポリオレフィン系樹脂等、共押出積層法が適用できるものであることが好ましい。また、その他の樹脂層を積層する場合においても、共押出積層法を適用できる樹脂を選択することが好ましい。
本発明の多層フィルムにおいて、中間層(C)で使用する樹脂は、前記表面層(A)に用いる環状ポリオレフィン系樹脂と同様であるが、内容物からの揮発成分のフィルムへの吸着を実用レベルにするために、中間層(C)の環状ポリオレフィン系樹脂(c)の40質量%以上が、ガラス転移点が100℃以上の環状ポリオレフィン系樹脂からなり、且つ低吸着性と易引裂き性の観点から、当該中間層(C)の全厚に対する厚み比率を15〜30%にすることが必要である。
Tgが100℃未満の環状ポリオレフィン系樹脂は、100℃以上の環状ポリオレフィン系樹脂よりも、吸着性の観点で劣ることにより、本発明では、中間層(C)に高Tgの環状ポリオレフィン系樹脂を十分な割合で含有させることが必須となり、また、低吸着性と易引き裂き性との両立のために、厚み比率を限定するものである。即ち、これらの規定を満たさない場合は、本発明で目的とする性能の一部が発現できない。Tgが100℃以上の環状ポリオレフィン系樹脂も、前記のような商品名で市販されているので、Tgを確認して選択することになる。
特に性能バランスに優れた多層フィルムが得られる点から、中間層(C)に用いる樹脂の90質量%以上を環状ポリオレフィン系樹脂からなるものとし、Tgが100℃以上の環状ポリオレフィン系樹脂と、Tgが100℃未満の環状ポリオレフィン系樹脂との混合物とすることが最も好ましい。
本発明の多層フィルムのシール層(D)は、環状構造を有さないオレフィン系樹脂(d)を主成分とするものであって、且つ、その80質量%以上が、密度が0.90g/cm以上のオレフィン系樹脂からなり、シール層(D)の全厚に対する厚み比率が10〜25%であることを必須とする。特に好ましい厚み比率は10〜20%である。このような比較的薄いシール層とすることと、高い密度の樹脂を用いることによって、一般的に吸着しやすいとされるオレフィン系樹脂をシール層としていながら、その吸着を抑制するものである。
内容物からの揮発成分の吸着の防止という観点からは、シール層にも環状ポリオレフィン系樹脂を用いることが提案されてはいるが、この場合は、シールする際の温度を高める必要があったり、シールされる側(例えば、容器)の表面樹脂種の選択の幅が狭くなったりする。即ち、汎用の容器への蓋材として使用する際に、十分なシール強度が得られなくなることがあり、ラミネート用フィルムとしての汎用性に欠けたものなる。
前記オレフィン系樹脂(d)としては、ポリエチレン系樹脂であっても、ポリプロピレン系樹脂であっても、また、これらのコポリマーであっても、本発明で規定する密度範囲を満たすものであれば、好適に用いることができる、特に好ましいのは、低吸着性とシール強度のバランスに優れる観点より、LLDPEである。
シール強度を高めにする場合には、シール層(D)の厚み比率を高めることが有効である。一方で、厚み比率が高くなると、低吸着性能が低くなるため、用途・使用方法に応じた設計をすることが好ましい。特に好ましいシール層(D)の厚さは、3〜15μmの範囲であり、より好ましくは、5〜10μmの範囲である。
本発明の多層フィルムは、他の基材と貼りあわせて使用することを目的としている観点より、使用しやすさ(ラミネートしやすさ)の観点、耐ピンホール性、剛性の観点からフィルムの全厚としては、通常10〜100μmの範囲であり、好ましくは、20〜60μmの範囲である。
また、本発明の多層フィルムを基材にラミネートしてなる複合フィルムにおいて、易引裂き性を発現させる観点からは、環状ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂層である、表面層(A)と中間層(C)の合計の厚みの全厚に対する比率が40%以上であることが好ましい。
本発明の多層フィルムは、他の基材と貼りあわせて使用するものであるが、この時使用することができる他の基材としては、特に限定されるものではないが、本発明の効果を容易に発現させる観点から、高剛性、高光沢を有するプラスチック基材、特には二軸延伸された樹脂フィルムを用いることが好ましい。また透明性を必要としない用途の場合はアルミ箔を単独あるいは組み合わせて使用することもできる。
延伸された樹脂フィルムとしては、易引裂き性等の観点から、例えば、二軸延伸ポリエステル(PET)、易裂け性二軸延伸ポリエステル(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリアミド(PA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を中心層とした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)をコートした共押出二軸延伸ポリプロピレン等が挙げられる。これらは、単独あるいは複合化して使用しても良い。
前記の各樹脂層には、必要に応じて、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤等の成分を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。特に、フィルム成形時の加工適性、充填機の包装適性を付与するため、層(A)及び(D)のフィルム表面における摩擦係数は1.5以下、中でも1.0以下であることが好ましいので、樹脂層(A)には、滑剤やアンチブロッキング剤を適宜添加することが好ましい。
本発明の多層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、表面層(A)、中間層(B)、中間層(C)、シール層(D)に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で(A)/(B)/(C)/(D)を積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出法の後、表面層(A)に基材をラミネートする方法が挙げられる。共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた多層フィルムが得られるので好ましい。さらに、本発明で用いる環状ポリオレフィン系樹脂(a)と、中間層(B)として低密度ポリエチレン系樹脂を用いた場合には、両者間で融点とTgとの差が大きいため、共押出加工時にフィルム外観が劣化したり、均一な層構成形成が困難になったりする場合がある。このような劣化を抑制するためには、比較的高温で溶融押出を行うことができるTダイ・チルロール法が好ましい。
本発明の複合フィルムは、上記の製造方法によって得られた多層フィルムに前記基材を積層してなるフィルムであり、積層方法としては、例えば、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーション等の方法が挙げられる。
前記ドライラミネーションで用いる接着剤としては、例えば、ポリエーテル−ポリウレタン系接着剤、ポリエステル−ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。また各種の粘着剤を使用することもできるが、感圧性粘着剤を用いることが好ましい。感圧性粘着剤としては、例えば、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、これらの混合物をベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンのような有機溶剤に溶解したゴム系粘着剤、或いは、これらゴム系粘着剤にアビエチレン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体などの粘着付与剤を配合したもの、或いは、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n−ブチル共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体などのガラス転移点が−20℃以下のアクリル系共重合体を有機溶剤で溶解したアクリル系粘着剤などを挙げることができる。
表面層(A)の最表面は、前述の接着剤や粘着剤の塗布性を向上させるために、あるいは、最表面に印刷等を施したうえで、基材とラミネートする場合などの際には、接着剤、粘着剤、印刷インキとの密着性等を向上させるため、前記層(A)に表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。本発明の表面層(A)は、環状ポリオレフィン系樹脂を主成分とすることにより、このような処理を行った後、長期保存しても、その処理度の経時劣化がないことから、最終製品を安定的に提供することができる。
本発明の複合フィルムからなる包装材としては、食品、薬品、化粧品、サニタリー用品、工業部品、雑貨、雑誌等の用途に用いる包装袋、容器、容器の蓋材等が挙げられる。特に、内容物に含まれる揮発成分のフィルムへの収着・吸着が少なく、シール強度の経時低下も少ないため、揮発性成分を含む医薬品や工業薬品用等に好適に用いることができる。
前記包装袋は、本発明の複合フィルムのシール層(D)同士を重ねてヒートシール、あるいはシール層(D)と基材とを重ね合わせてヒートシールすることにより、シール層(D)を内側として形成した包装袋であることが好ましい。例えば当該複合フィルム2枚を所望とする包装袋の大きさに切り出して、それらを重ねて3辺をヒートシールして袋状にした後、ヒートシールをしていない1辺から内容物を充填しヒートシールして密封することで包装袋として用いることができる。さらには自動包装機によりロール状のフィルムを円筒(ピロー)形に端部をシールした後、上下をシールすることにより包装袋を形成することも可能である。
また、シール層(D)とヒートシール可能な別のフィルム、シート、容器とヒートシールすることにより包装袋・容器・容器の蓋を形成することも可能である。その際、使用する別のフィルムとしては、比較的機械強度の弱いLDPE、EVA、ポリプロピレン等のフィルムやシートを用いることができる。
本発明の複合フィルムを用いた包装材には、フィルム自体に易引裂き性を有するため、引裂き開始部を設ける必要はないが、より初期の引き裂き強度を弱め、開封性を向上するために、シール部にVノッチ、Iノッチ、ミシン目、微多孔などの任意の引き裂き開始部を形成してもよい。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳しく説明する。
実施例1
表面層(A)用樹脂として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル APL8008T」、MFR:15g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移点:70℃;以下、「COC(3)」という。〕を用いた。中間層(B)用樹脂として、直鎖状中密度ポリエチレン〔密度:0.930g/cm、融点125℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N);以下、「LMDPE」という。〕を用いた。中間層(C)用樹脂として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル APL6015T」、MFR:10g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移点:145℃;以下、「COC(1)」という。〕60質量部と、COC(3)40質量部との樹脂混合物を用いた。更に、シール層(D)用樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン〔密度:0.920g/cm、融点110℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N)、;以下、「LLDPE」という。〕を用いた。これらの樹脂をそれぞれ、表面層(A)用押出機(口径50mm)、中間層(B)用押出機(口径50mm)、中間層(C)用押出機(口径50mm)、シール層(D)用押出機(口径40mm)に供給して200〜250℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)/(B)/(C)/(D)の4層構成で、各層の厚さが6μm/15μm/6μm/3μm(合計30μm)である共押出多層フィルム(1)を得た後、表面層(A)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は40dyne/cmであった。処理面側にウレタン系接着剤を3.5g/mになるよう塗工後、二軸延伸ポリエステル(厚さ12μm)(融点260℃、東洋紡製)をドライラミネートし、複合フィルム(1)を得た。
実施例2
表面層(A)用樹脂及び中間層(C)用樹脂として、COC(1)を用いる以外は、実施例1と同様にしてフィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(C)/(D)=12μm/30μm/12μm/6μm(合計60μm)となるように実施例1と同様にして共押出多層フィルム(2)を作製し、表面層(A)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は40dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルをドライラミネートし、複合フィルム(2)を得た。
実施例3
表面層(A)用樹脂としてCOC(1)60質量部と、COC(3)40質量部との樹脂混合物を用いた。中間層(B)用樹脂としてLLDPE,中間層(C)用樹脂としてノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル AP6013T」、MFR:15g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移点:125℃;以下、「COC(2)」という。〕60質量部と、COC(3)40質量部との樹脂混合物を用いた。シール層(D)用樹脂としてメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体〔密度:0.900g/cm、融点135℃、MFR:4g/10分(230℃、21.18N)、;以下、「MRCP」という。)を用いた。フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(C)/(D)=6μm/12μm/6μm/6μm(合計30μm)となるように実施例1と同様にして共押出多層フィルム(3)を作製し、表面層(A)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は40dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルをドライラミネートし、複合フィルム(3)を得た。
実施例4
表面層(A)用樹脂及び中間層(C)用樹脂として、COC(1)50質量部及びCOC(3)50質量部の樹脂混合物を用いた。また中間層(B)用樹脂として、LMDPEを用いた。シール層(D)用樹脂として、低密度ポリエチレン〔密度:0.920g/cm、融点115℃、MFR:8g/10分(190℃、21.18N)、;以下、「LDPE」という。〕を用い、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(C)/(D)=6μm/12μm/6μm/6μm(合計30μm)となるように実施例1と同様にして共押出多層フィルム(4)を作製し、表面層(A)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は40dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして二軸延伸ポリエステルをドライラミネートし、複合フィルム(4)を得た。
実施例5
表面層(A)用樹脂として、COC(1)70質量部、COC(3)30質量部の樹脂混合物を用いた。また中間層(B)用樹脂として、MRCPを用いた。中間層(C)用樹脂としてCOC(1)60質量部、COC(3)40質量部の樹脂混合物を用いた。シール層(D)用樹脂として、高密度ポリエチレン〔密度:0.966g/cm、融点128℃、MFR:10g/10分(190℃、21.18N);以下、「HDPE」という。〕85質量部と、エチレンブテンラバー〔密度:0.890g/cm、融点66℃、MFR: 3g/10分(190℃、21.18N);以下、「EBR」という。〕15質量部の樹脂混合物を用いた。フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(C)/(D)=15μm/15μm/15μm/5μm(合計50μm)となるように実施例1と同様にして共押出多層フィルム(5)を作製し、表面層(A)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は40dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして二軸延伸ポリエステルをドライラミネートし、複合フィルム(5)を得た。
実施例6
表面層(A)用樹脂、及び中間層(C)用樹脂として、COC(1)50質量部及びノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル AP6013T」、MFR:15g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移点:125℃;以下、「COC(2)」という。〕50質量部の樹脂混合物を用いた。中間層(B)用樹脂としてLLDPE90質量部と、COC(2)10質量部の樹脂混合物を用いた。シール層(D)用樹脂として、LLDPE80質量部と、EBR20質量部の樹脂混合物を用いた。フィルムの層の厚さが(A)/(B)/(C)/(D)=6μm/12μm/6μm/6μm(合計30μm)となるように実施例1と同様にして、共押出多層フィルム(6)を得た後、表面層(A)の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は40dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして二軸延伸ポリエステルをドライラミネートし、複合フィルム(6)を得た。
実施例7
表面層(A)用樹脂として、COC(1)50質量部と、COC(3)50質量部の樹脂混合物を用いた。また中間層(B)用樹脂として、MRCP90質量部とCOC(2)10質量部の樹脂混合物を用いた。中間層(C)用樹脂として、COC(1)60質量部とCOC(3)40質量部の樹脂混合物を用いた。シール層(D)用樹脂として、LLDPEを用い、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(C)/(D)=6μm/12μm/6μm/6μm(合計30μm)となるように実施例1と同様にして共押出多層フィルム(7)を作製し、表面層(A)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は40dyne/cmであった。処理面側にウレタン系接着剤を2g/mになるよう塗工後、二軸延伸ポリプロピレン(厚さ20μm)(融点162℃、東洋紡製)をドライラミネートし、複合フィルム(7)を得た。
比較例1
表面層(A)を設けず、中間層(B)用樹脂として、LMDPEを用いた。中間層(C)用樹脂として、COC(3)50質量部と、超低密度ポリエチレン〔密度:0.880g/cm、融点85℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N)、;以下、「VLLDPE」という。〕50質量部との樹脂混合物を用いた。シール層(D)用樹脂として、VLLDPEを用いた。フィルムの各層の厚さが(B)/(C)/(D)=21μm/3μm/6μm(合計30μm)となるように実施例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、表面層(B)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は40dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルをドライラミネートし、複合フィルムを得た。
比較例2
表面層(A)用樹脂として、COC(1)を用いた。中間層(B)用樹脂として、LMDPEを用いた。中間層(C)用樹脂としてCOC(1)70質量部とCOC(2)30質量部との樹脂混合物を用いた。シール層(D)用樹脂としてLLDPEを用いた。フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(C)/(D)=10μm/10μm/10μm/30μm(合計60μm)となるように実施例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、表面層(A)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は40dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルをドライラミネートし、複合フィルムを得た。
比較例3
表面層(A)用樹脂、及び中間層(C)用樹脂としてCOC(3)を用いた。中間層(B)用樹脂としてLMDPEを用いた。シール層(D)用樹脂としてMRCPを用いた。フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(C)/(D)=6μm/16μm/6μm/2μm(合計30μm)となるように、実施例1と同様にして共押出多層フィルムを作成し、表面層(A)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は40dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルをドライラミネートし、複合フィルムを得た。
比較例4
表面層(A)用樹脂としてCOC(1)70質量部とCOC(3)30質量部との樹脂混合物を用いた。中間層(B)用樹脂としてMRCPを用いた。中間層(C)用樹脂としてCOC(1)60質量部とCOC(3)40質量部との樹脂混合物を用いた。シール層(D)用樹脂としてVLLDPE80質量部とEBR20質量部の樹脂混合物を用いた。フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(C)/(D)=30μm/30μm/10μm/30μm(合計100μm)となるように、実施例1と同様にして共押出多層フィルムを作成し、表面層(A)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は40dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルをドライラミネートし、複合フィルムを得た。
比較例5
表面層(A)用樹脂として、COC(1)50質量部とCOC(2)50質量部との樹脂混合物を用いた。中間層(B)用樹脂としてLLDPEを用いた。中間層(C)用樹脂としてCOC(1)20質量部とCOC(3)80質量部との樹脂混合物を用いた。シール層(D)用樹脂としてLLDPE80質量部とEBR20質量部との樹脂混合物を用いた。フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(C)/(D)=6μm/15μm/3μm/6μm(合計30μm)となるように、実施例1と同様にして共押出多層フィルムを作成し、表面層(A)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は40dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルをドライラミネートし、複合フィルムを得た。
比較例6
COC(1)50質量部とCOC(2)50質量部との樹脂混合物を用いた表面層と、MRCPを用いたシール層とを積層させてなる2層フィルムを実施例1と同様の方法で作製した。フィルムの各層の厚さは表面層/シール層=20μm/20μm(合計40μm)となるようにし、表面層の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は40dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルをドライラミネートし、複合フィルムを得た。
比較例7
VLLDPEを用いた表面層と、LLDPEを用いたシール層とを積層させた2層フィルムを実施例1と同様の方法で作製した。フィルムの各層の厚さは表面層/シール層=15μm/15μm(合計30μm)でとなるようにし、表面層の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は38dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルをドライラミネートし、複合フィルムを得た。
比較例8
表面層(A)に相当する樹脂層を積層せずに、中間層(B)用樹脂としてLLDPE、中間層(C)用樹脂としてCOC(3)、シール層(D)用樹脂としてLLDPEを用い、3層の多層フィルムを作製した。フィルムの各層の厚さは、(B)/(C)/(D)=9μm/12μm/9μm(合計30μm)となるようにし、中間層(B)の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は38dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルをドライラミネートし、複合フィルムを得た。
手切れ性試験
得られた複合フィルムを、JIS K7128に準拠して、それぞれ63mm×76mmの大きさの試験片に切り出し、エルメンドルフ引裂試験機(テスター産業株式会社製)を用いて、引裂強さを測定した。得られた引裂強さから、下記の基準によって手切れ性を評価した。
○:引裂強さが110未満。
×:引裂強さが110以上。
吸着性試験
各複合フィルムを縦100mm×横100mmの三方シールパウチを作成後、質量を測定後、サリチル酸メチル(吸着試験1)及び二酸化塩素〔クレペリンゲル:大幸薬品〕(吸着試験2)を2g入れ、開口部をヒートシールにより密閉した。密閉容器中に25℃恒温条件で2週間放置後、開封し内容物を除去しパウチの質量を測定し、変化率から吸着率を求めた。
○:数値1%未満
△:数値1%以上2%未満
×:数値2%以上
ラミネート強度
上記吸着試験で使用した複合フィルムの前後のラミネート強度を測定し、強度の低下率を求めた。
○:10%未満
×:10%以上
外観
各複合フィルムを縦100mm×横100mmの三方シールパウチを作成後、サリチル酸メチル、二酸化塩素を2g入れ、開口部をヒートシールにより密閉した。密閉容器中に25℃恒温条件で2週間放置後、接着剤部のラミネートの浮きやデラミネーションによる外観変化を観察した。
○:外観変化無し
×:ラミネーションの浮き等の外観変化あり
シール強度試験
各複合フィルムを縦100mm×横100mmの三方シールパウチを作成後、質量を測定後、サリチル酸メチルを2g入れ、開口部をヒートシールにより密閉した。密閉容器中に45℃恒温条件で2週間放置後、シール強度を測定し強度低下率を求めた。
○:5%未満
×:5%以上
カール性
各多層フィルムを、縦横10cm四方に切り出し、40℃湿度90%下に24時間保存した。平面にフィルムを広げ両端面が捲り上がった高さを測定し下記の基準によって評価した。
○:高さ3cm未満
△:高さ3cm以上
×:フィルム両端が重なり完全に丸まってしまう
上記で得られた結果を表1〜2に示す。
Figure 0005822956
Figure 0005822956
本発明の低吸着性ラミネート用多層フィルムは、易引裂き性、高ヒートシール強度、揮発性成分の吸着抑制等を有する。また、優れたラミネート強度、屈曲による耐ピンホール性、耐カール性、外観をも有する。したがって、本発明の多層フィルムは、食品、菓子、医薬品、たばこ、工業薬品、工業部品、雑貨等を包装する包装材に好適である。

Claims (11)

  1. 環状ポリオレフィン系樹脂(a)を主成分とする表面層(A)、
    環状構造を有さないオレフィン系樹脂(b)を主成分とする中間層(B)、
    環状ポリオレフィン系樹脂(c)を主成分とする中間層(C)、
    環状構造を有さないオレフィン系樹脂(d)を主成分とするシール層(D)とが、
    (A)/(B)/(C)/(D)の順で積層してなる多層フィルムであって、
    前記中間層(C)の環状ポリオレフィン系樹脂(c)の40質量%以上が、ガラス転移点が100℃以上の環状ポリオレフィン系樹脂からなり、且つ中間層(C)の全厚に対する厚み比率が15〜30%であり、
    前記シール層(D)のオレフィン系樹脂(d)の80質量%以上が、密度が0.90g/cm以上のオレフィン系樹脂からなり、シール層(D)の全厚に対する厚み比率が10〜25%であって、且つ厚さが5〜10μmの範囲であることを特徴とする低吸着性ラミネート用多層フィルム。
  2. 前記環状ポリオレフィン系樹脂(a)及び(c)が、ノルボルネン系重合体である請求項1記載の低吸着性ラミネート用多層フィルム。
  3. 前記オレフィン系樹脂(b)及び(d)が、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂である請求項1又は2記載の低吸着性ラミネート用多層フィルム。
  4. 前記オレフィン系樹脂(d)が直鎖状ポリエチレン系樹脂である請求項1〜3の何れか1項記載の低吸着性ラミネート用多層フィルム。
  5. 全厚が20〜60μmである請求項1〜4の何れか1項記載の低吸着性ラミネート用多層フィルム。
  6. 前記表面層(A)と前記中間層(C)との合計厚みが、全厚の40%以上である請求項1〜の何れか1項記載の低吸着性ラミネート用多層フィルム。
  7. 請求項1〜の何れか1項記載の低吸着性ラミネート用フィルムの表面層(A)上に、プラスチック基材を積層した複合フィルム。
  8. 請求項7記載の複合フィルムからなることを特徴とする包装材。
  9. 揮発性成分を含む医薬品または工業薬品用の包装袋である請求項記載の包装材。
  10. 環状ポリオレフィン系樹脂(a)を主成分とする表面層(A)、
    環状構造を有さないオレフィン系樹脂(b)を主成分とする中間層(B)、
    環状ポリオレフィン系樹脂(c)を主成分とする中間層(C)、
    環状構造を有さないオレフィン系樹脂(d)を主成分とするシール層(D)とが、
    (A)/(B)/(C)/(D)の順で積層されてなる、共押出積層法で製造する多層フィルムの製造方法であって、
    前記中間層(C)の環状ポリオレフィン系樹脂(c)の40質量%以上が、ガラス転移点が100℃以上の環状ポリオレフィン系樹脂からなり、且つ中間層(C)の全厚に対する厚み比率が15〜30%であり、
    前記シール層(D)のオレフィン系樹脂(d)の80質量%以上が、密度が0.90g/cm 以上のオレフィン系樹脂からなり、シール層(D)の全厚に対する厚み比率が10〜25%であって、且つ厚さが5〜10μmの範囲である、低吸着性ラミネート用多層フィルムの製造方法。
  11. 請求項7記載の複合フィルムのシール層(D)同士を重ねてヒートシール、又はシール層(D)と基材とを重ね合わせてヒートシールする、シール層(D)を内側として形成された包装袋の製造方法。
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