JP2017178342A - 多層フィルムおよび液体包装体 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、そのようなフィルムは、包装機における滑り性を満たすことは出来るものの、液体を充填した包装袋(パウチ)を段ボール箱内に段積みで梱包し輸送する際には、パウチ同士が圧着して擦れ合い、パウチ表面に傷が入ってしまう問題がある。
本発明のフィルムは、最外層にポリエチレン樹脂層(A)を有し、(A)層は密度935kg/m3以上950kg/m3以下、重量平均分子量5万以上、分子量分散度(Mw/Mn)3.0以上6.0以下のポリエチレン樹脂によって構成される。
(A)層に用いるポリエチレン樹脂としては、エチレンホモポリマー、またはエチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体のエチレン−α−オレフィンコポリマーを用いることができる。また、炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、1種あるいは2種以上を組み合わせることができる。中でも、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが特に好ましい。
ポリエチレン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、フィルム強度の点から、下限は6万以上がより好ましく、7万以上が更に好ましい。上限は特に制限はないが、一般に50万以下であり、25万以下が好ましい。
分子量分散度(重量平均分子量/数平均分子量、Mw/Mn)の下限は、3.5以上がより好ましく、4.0以上が更に好ましい。上限は5.5以下がより好ましい。代表的なシングルサイト触媒であるメタロセン触媒で製造される場合の分子量分散度は、一般的に2〜3であり、チーグラー・ナッタ系触媒で製造される場合の分子量分散度は一般的に6以上であるので、本発明のフィルムに用いるポリエチレンの好ましい分子量分散度は、その両者間に位置する。
Mw/Mnが3.0以上であることにより、ポリエチレンの密度が高くなり剛性が得られ、Mw/Mnが6.0以下で小さいほど、耐衝撃性が良好となるので、製袋、梱包、輸送時などに液体内容物による包装体の圧迫や揺れが強く起こって袋同士が擦れ合っても、袋表面に傷が生じ難く、ピンホールの発生を抑制し易くなる。
それらの最外層における添加濃度は、10000ppm以上30000ppm以下が好ましい。
また、天然シリカ、合成ゼオライトの粒子径は、2μm以上であることが好ましい。2μm未満では、耐ブロッキング効果を発現することが難しい。
一般的に、包装フィルムには脂肪酸アミド等が多用されるが、臭気性やブリードアウトによるフィルム加工機のロール汚染の点から、本発明のフィルムの(A)層には有機系滑材を添加しない。
本発明のフィルムは、ポリエチレン樹脂層(A)に隣接してポリエチレン樹脂(B)層を配し、(B)層は密度900kg/m3以上935kg/m3以下のポリエチレン樹脂により構成される。(B)層のポリエチレン樹脂の密度は、下限は910kg/m3以上がより好ましく、上限は925kg/m3以下がより好ましい。密度が上記範囲であることにより、包装体が揺れ動いたりした場合に、ポリエチレン樹脂層(A)とポリアミド樹脂層(C)との間の応力を緩和でき、フィルムのピンホール発生抑制に効果があると考えられる。
また、特に、より臭気の少ないという利点から、メタロセン系触媒を使用して製造した分子量分散度が3以下のLLDPEが好ましい。
下限を20%以上とすることにより、フィルムに適度な柔軟性をもたせることができ、上限を70%以下とすることにより、製膜適性が向上する。
本発明のフィルムは、フィルムに強度、特に耐ピンホール性を付与する目的で、ポリアミド樹脂層(C)を少なくとも1層配する。
ポリアミド樹脂層(C)は、吸湿によってより柔軟性を増し、フィルムの強靭性、耐ピンホール性を向上させるので、(C)層の配設位置を収容物側に近づけると、収容物の水分によりポリアミド樹脂層(C)が吸湿し易くなり効果的と考えられる。
(C)層を2層以上設ける場合は、各層が異なる種類のポリアミド樹脂で構成されてもよい。
下限を10%以上とすることにより、フィルムに十分な耐ピンホール性を付与することができ、また上限を50%以下とすることにより、製造コストを抑制することができる。
本発明のフィルムは、酸素バリア性を向上させる目的で、外気側の(A)層と内容物側の(D)層との間の何れかの位置に、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物樹脂(EVOH)層を備えてもよい。
EVOH層と隣接層との層間密着性を向上させる観点から、(B)層と(C)層の間、2層の(C)層の間、(C)層と(D)層の間の配置が好ましく、中でも2層の(C)層の間が好ましい。
また、EVOHのケン化度は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
下限を3%以上とすることにより、フィルムに十分な酸素バリア性を付与することができ、また、上限を20%以下とすることにより、フィルムの耐ピンホール性の低下や製造コストを抑制することができる。
本発明のフィルムは、最内層にポリエチレン樹脂層(D)を有し、(D)層は前記(B)層と同様、密度900kg/m3以上935kg/m3未満のポリエチレン樹脂からなり、フィルムにヒートシール機能を付与する。
(D)層のポリエチレン樹脂の密度の下限は、910kg/m3以上がより好ましく、上限は、925kg/m3以下がより好ましい。
密度900kg/m3以上では、フィルム表面の滑り性が良好であり、且つ、内容物充填時にフィルムが伸び過ぎることなく内容物の計量が行い易い。
密度935kg/m3未満では、適度な結晶化度により、フィルムの柔軟となり屈曲疲労によるピンホールが発生し難くなる。
また、包装フィルムには、スリップ剤として脂肪酸アミド等の添加が一般医に多用されるが、フィルム加工機のロール汚染の点と、有機物添加剤であるが故の臭気、および内容物の液体へ移行が起きる点などから、本発明のフィルムの(D)層には有機化合物滑材を添加しない。
(D)層厚比が5%以上により、フィルムのヒートシールを十分に為すことができる。また、50%未満により、ポリアミド樹脂層(C)の配設位置を収容物側に近づけることとなり、(C)層の吸湿に依る、フィルムの強靭性、耐ピンホール性の向上効果を得ると考えられる。
本発明のフィルムは、各層の層間剥離強度を高める目的で、接着樹脂層を設けることができる。接着層は1層であってもよいし、複数であってもよい。
接着樹脂層がポリエチレン樹脂を含む層に隣接する場合は、ポリエチレン系接着樹脂を用いると好適である。
下限が3μm以上であれば、層間剥離強度を向上させることができる。また接着層が厚過ぎると、透明性の悪化やフィルムの総厚みが厚くなってしまう他、製造コストもかさむため上限は30μm以下であることが望ましい。
本発明のフィルムの総厚は、60〜250μmであり、包装袋に収容する液体の重量やその衝撃性とコストとの案配を鑑みて、総厚を加減選定して好適に使用できる。
フィルム総厚の下限は、80μm以上が好ましく、100μm以上が好ましく、上限は、240μm以下がより好ましい。フィルム総厚が60μm以上によって、フィルムの耐衝撃性が良好となる。また、250μm以下により、必要十分なフィルム特性を得ると共に包材コストを抑制できる。
本発明のフィルムは、(A)層を包装体の外気に接する側、(D)層を収容物に接する側なるように、公知の包装機に供給し、各種の液体包装体を作製できる。その形態は、例えば、ピローパウチ包装、スタンディングパウチ包装、三方・四方シール袋などが挙げられる。
収容物としては、液体調味料、飲料、液体洗剤等の種々の液体が挙げられ、特に、ミネラルウォーター、ジュース等のドリンクサーバー用や業務用大袋のように、大きな液体包装体に好適に使用できる。
(多層フィルムの作製)
下記に記載の原材料を用い、共押出Tダイ法により、各例に記した層構成で無延伸多層フィルムを作製した。
(密度)
JIS K 7112:1999に準拠して測定した。
(メルトフローレート)
JIS K 7210に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定した。
(重量平均分子量、分子量分散度(Mw/Mn))
ゲルパーミエーションクロマトグラフ分析装置を用い、カラムにShodex製AT−807Sと東ソー製TSK−gelGMH−H6を直列にして用い、溶媒にイルガノックス10ppm添加のトリクロロベンゼンを用い、単分散ポリスチレンによる検量線を作成し、140℃で分析した。
PE1: 高密度ポリエチレン(メタロセン触媒、スラリー重合法、密度941kg/m3、重量平均分子量7.7万、分子量分散度5.0)
PE2: 直鎖状低密度ポリエチレン(チーグラー・ナッタ触媒、溶液重合法、密度931kg/m3、重量平均分子量4.5万、分子量分散度2〜3)
PE3: 直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン触媒、密度913kg/m3)
PE4: 低密度ポリエチレン(高圧重合法、密度924kg/m3)
PE5: 直鎖低密度ポリエチレン(メタロセン触媒、密度920kg/m3)
Ny1: 6ナイロン
Ny2: 6−66ナイロン
EVOH: エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(エチレン含有率32mol%)
添加2: 合成ゼオライト(5μm径)、層中濃度5万ppmで配合した。
添加3: オレイン酸アミド、層中濃度2万ppmで配合した。
また、「/」は層界面を意味し、「+」は層中の混合配合を意味する。
PE1+添加1(5μm)/PE3(50μm)/接着1(10μm)/Ny1(25μm)/接着1(10μm)/PE5+添加2(20μm)、計120μm
実施例1において、(A)層と(B)層の厚みを変更した。
PE1+添加1(8μm)/PE3(47μm)/接着1(10μm)/Ny1(25μm)/接着1(10μm)/PE5+添加2(20μm)、計120μm
実施例1において、(B)層、接着樹脂層、(D)層の厚さを変更し、また(D)層の樹脂を変更した。
PE1+添加1(5μm)/PE3(70μm)/接着1(5μm)/Ny1(25μm)/接着1(5μm)/PE3+添加2(10μm)、計120μm
実施例1において、各層を厚くし総厚200μmとした。
PE1+添加1(8μm)/PE3(82μm)/接着1(15μm)/Ny1(50μm)/接着1(15μm)/PE5+添加2(30μm)、計200μm
実施例1において、(B)層の樹脂を変更した。
PE1+添加1(5μm)/PE2(50μm)/接着1(10μm)/Ny1(25μm)/接着1(10μm)/PE5+添加2(20μm)、計120μm
実施例1において、(B)層の樹脂を変更した。
PE1+添加1(5μm)/PE4(50μm)/接着1(10μm)/Ny1(25μm)/接着1(10μm)/PE5+添加2(20μm)、計120μm
実施例1において(C)層の樹脂を変更した。
PE1+添加1(5μm)/PE3(50μm)/接着1(10μm)/Ny2(25μm)/接着1(10μm)/PE5+添加2(20μm)、計120μm
実施例1において、(C)層と(D)層の間にEVOH層を配し、(C)層の厚さを薄くした。
PE1+添加1(5μm)/PE3(50μm)/接着1(10μm)/Ny1(20μm)/EVOH(5μm)/接着1(10μm)/PE5+添加2(20μm)、計120μm
実施例1において、(B)層を設けず、(A)層と(D)層の厚さを変更した。
PE1+添加1(20μm)/接着1(10μm)/Ny1(25μm)/接着1(10μm)/PE5+添加2(55μm)、計120μm
実施例1において、(B)層と(D)層の厚さを変更した。
PE1+添加1(5μm)/PE3(5μm)/接着1(10μm)/Ny1(25μm)/接着1(10μm)/PE5+添加2(65μm)、計120μm
実施例1において、(B)層の樹脂を変更した。
PE1+添加1(5μm)/PE1(50μm)/接着1(10μm)/Ny1(25μm)/接着1(10μm)/PE5+添加2(20μm)、計120μm
実施例1において、(A)層と(B)層の樹脂を変更した。
PE2+添加1(5μm)/PE1(50μm)/接着1(10μm)/Ny1(25μm)/接着1(10μm)/PE5+添加2(20μm)、計120μm
実施例1において、(A)層の添加剤を変更した。
PE1+添加3(5μm)/PE3(50μm)/接着1(10μm)/Ny1(25μm)/接着1(10μm)/PE5+添加2(20μm)、計120μm
各例で得られたフィルムについて、下記の評価を行い、結果を表1に記す。
各例で得たフィルムを用いて、大栄科学精器製作所製染色物摩擦堅牢度試験機を用い、ステンレス製試験台にフィルム(長さ15cm、幅3cm)外層を摩擦子側へ向けて固定し、また、摩擦子にもフィルム外層を試験台側へ向けて取り付け、試験台上のフィルムと摩擦子のフィルムとの外層同士を、摩擦子面積2cm角、荷重2.5N、移動距離60mm、30往復/分、往復回数100回、室温下の条件で擦り合わせ、摩擦堅牢度試験を行った。
試験台側に取り付けたフィルムの摩擦箇所(長さ6cm、幅2cm)について、傷の数を計測した。
各例で得たフィルム(長さ18cm、幅18cm)2枚を用い、水道水500mlを収容し四辺をヒートシールした袋を作製した。1つの段ボール箱(内寸:縦15cm、横15cm、高さ13cm)の中に4袋を横たえて置き入れ、振動試験機を用い、水平移動距離50mm、振動周期160rpm、15時間の条件で振動させた後に、袋にピンホールが発生したか否かを確認した。各例のフィルムあたり3回同じ振動試験を行い、計12袋中のピンホールが発生した袋数を計測した。
各例で得られたフィルムを用いて、縦ピロー包装機で製袋した。
幅750mmのフィルム長さ500m程度を包装機で走行させ、ロールに異物が付着するかどうかを観察した。
(フィルム外層表面擦傷性)
実施例1〜8、比較例1〜3、比較例5の擦傷数は、10〜13箇所であった。
実施例2は、硬質の(A)層が厚いため、僅かに多めであった。
比較例4は、(A)層樹脂の密度、平均重量分子量、分子量分散度が小さく、擦傷数が多かった。
実施例1〜8、比較例5は、10袋あたり1〜2袋と少なかった。総厚に対する(D)層の厚比が小さく、収容物の飲料水による湿気が(D)層を通り、ポリアミド樹脂層(C)が吸湿した効果と推察した。
比較例1〜4は10袋あたり7〜8袋と多かった。その理由は、比較例1、比較例2は、(D)層が厚く(C)層の吸湿効果が得られなかったためと考えられた。比較例3、比較例4は、(B)層が硬質な高密度ポリエチレンであったからと考えられた。
比較例5以外は、結果良好であった。
比較例5は、外層ポリエチレン樹脂層(A)に添加した有機系滑剤のオレイン酸アミドがフィルム表面にブリードアウトし、包装機のロールに付着した。
Claims (6)
- ポリエチレン樹脂層(A)、ポリエチレン樹脂層(B)、ポリアミド樹脂層(C)、およびポリエチレン樹脂層(D)をこの順に有し、
総厚が60〜250μmである多層フィルムにより構成され、
前記(A)層と前記(D)層が共に有機系滑剤を含有せず、
前記(A)層のポリエチレン樹脂が密度935kg/m3以上950kg/m3以下、重量平均分子量5万以上、分子量分散度(Mw/Mn)3.0以上6.0以下であり、
前記(B)層と前記(D)層のポリエチレン樹脂が密度900kg/m3以上935kg/m3未満であり、
フィルム総厚に対する前記(D)層の厚比が5%以上50%未満である
ことを特徴とする液体包装用フィルム。 - フィルム総厚に対する前記(B)層の厚比が20%以上70%以下である請求項1に記載の液体包装用フィルム。
- フィルム総厚に対する前記(B)層の厚比が30%以上60%以下、且つ前記(D)層のフィルム総厚に対する厚比が5%以上25%以下である請求項1に記載の液体包装用フィルム。
- 前記(C)層が、6ナイロンまたは6−66ナイロンである請求項1〜3のいずれかに記載の液体包装用フィルム。
- 前記(A)層と前記(D)層が無機系滑剤を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の液体包装用フィルム。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の液体包装用フィルムを用いた液体包装体。
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