JP2017138593A - 反射防止膜、光学部材及び光学部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の光学部材は、光学フィルム、レンズ、プリズム等に用いることができる。
図1に示すように、反射防止膜3は、表面に棘状の微小突起を有する中空粒子4を有する。表面に棘状の微小突起を有する中空粒子4を配列すると、棘状の突起により、中空粒子4の球状部同士が接触することが阻害されるため、粒子間にわずかなサイズの空隙5を持たせた状態で中空粒子4を配置することができる。したがって、表面に棘状の突起形状を有する中空粒子4を有する反射防止膜3は、コーティングした際に粒子の配列性を大きく乱すことなく反射防止膜全体における空気の含有量を増やすことができる。そのため、棘状の突起サイズを適宜選択することにより、屈折率が小さく散乱が少ない反射防止膜3を作製することができる。
F={2×(4/3)π×(a/2)3}/{(24√2)×(b/2)3} (式1)
図3は、本発明の表面に棘状の微小突起の棘部31を有する中空粒子4の模式図である。本明細書において、棘とは、中空粒子表面32において、接線に対して少なくとも45度以上傾斜した方向に延びた針状のものをいう。
棘の高さは、3nm以上20nm以下が好ましい。3nmより小さい場合、成膜時に粒子間距離が狭くなり、反射防止膜3の屈折率が中空粒子4の屈折率に近づくため好ましくない。また、棘の高さが20nmより大きいと、粒子間に空隙が増え、散乱が大きくなる。
反射防止膜3は、表面に棘状の微小突起を複数有する中空粒子4を有する塗料を製造した後、その塗料をコーティングすることによって得られる。
有機粒子から成るコア粒子を合成する手法としては、比較的粒子サイズの揃った100nm以下のラテックス粒子が得られる乳化重合を用いることが好ましい。乳化重合の際のモノマーとしては、スチレン、アクリル酸エステル、酢酸ビニル等を用いることが好ましいが、水中での安定性を考慮し、酸素原子の含まれないスチレン等のモノマーを用いることがより好ましい。
第二工程では、第一工程で得られるコア粒子の表面にシェルを形成し、表面に棘状の突起を有するコアシェル粒子を製造する。形成されるシェルの無機成分は、RySiOz(Rは炭化水素基、0≦y≦1、1≦z≦2)で示されることが好ましい。このRySiOz成分はケイ素アルコキシドの加水分解縮合により得ることができる。例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシランに代表されるテトラアルコキシシランや、メチルトリメトキシシランやメチルトリエトキシシランに代表されるアルキルトリアルコキシシラン、またそれらを混合したものを用いることができる。
第三工程では、第二工程で得られたコアシェル粒子からコアを取り出し、中空粒子を形成する。コアを取り出す方法には限定されないが、例えば、シランカップリング剤等でコアを疎水化した上でトルエン等の芳香族有機溶媒と一緒に抽出する既存の方法(特開2014−34488)が挙げられる。カチオン性の有機コア成分がアニオン性の中空粒子とイオン的な相互作用が強い場合は、中空粒子の精製が困難となるため、粒子とポリマーが両方溶解しやすい非プロトン性極性溶媒等の有機溶剤を使用するのが好ましい。
第四工程では、成膜に適した中空粒子塗料とするために、中空粒子及び溶媒以外の成分を除去する。除去する方法としては、濾過、遠心分離、イオン交換、限外濾過等が挙げられる。これらにより、第三工程までに使用した界面活性剤、開始剤、pH調整剤等の成分を除去できる。DLSによって、コアシェル粒子のサイズより大きな粒子径が確認できる場合、中空粒子は集合体を形成している。この場合、成膜後の反射防止膜の散乱を減らすために、集合体のサイズが250nm以下となるまで、不要成分を除去することが好ましい。また、蒸留等により、成膜に適した溶媒に適宜変更する。これにより、表面に棘状突起を有する中空粒子4と溶媒から成る、純度の高い中空粒子塗料を得ることが可能である。中空粒子の平均粒子径は、第一、第二工程と同様にDLSを用いて測定できる。
第四工程で得られた中空粒子塗料をコーティングすることによって、低屈折率の反射防止膜を得ることができる。揮発性の有機溶媒を用いてコーティングした場合、反射防止膜は中空シリカ粒子のみから成り、粒子の外側は空気であるため、膜の屈折率を大幅に低下させることができる。また、得られた反射防止膜の上に、さらに材料を成膜することが可能である。例えば、シリカオリゴマーを用いた場合、屈折率は上昇するものの、膜としての強度改善が期待できる。
粒度分布計(ゼータサイザーナノZS、マルバーン製)を用い、ガラス製セルに約1mlの溶液を入れて25℃で測定した。
棘の形状は、下記の手順で測定した。
水溶液のpHの測定には、堀場製作所製のD−71Sを用いた。
シリコンウエハ上に成膜した薄膜を用い、分光エリプソメータ(VASE、J・A・Woolam製)で、波長380nmから800nmまで屈折率を測定した。その際、薄膜に対してはCauchyモデルを適用し、フィッティングを行った。得られた屈折率の550nmの値を本実施例の屈折率として表記した。
中空粒子膜中のボイドサイズ及び密度は、下記の手順で算出した。
成膜した薄膜に対し、照度4000ルクスの光量を垂直に照射した状態で、後方45°の角度からカメラで撮影し、得られた画像から基板の映る範囲の700×700ピクセルの範囲を指定し、画像処理ソフトで解析した際の輝度値を散乱値とした。
事前にテトラエトキシシラン(キシダ化学製)2gをpH8.0の水に加えて24時間撹拌し、シリカ微粒子を合成した。この微粒子のゼータ電位を測定したところ、表1のような値となった。
スチレンを用いてコア粒子となるポリスチレン重合体を合成した。まず、反応容器内に水240gと0.01g/ml濃度の臭化セチルトリメチルアンモニウム水溶液(シグマアルドリッチ社製、以下、CTAB)5gを入れた後、窒素を充満して80℃に加熱した。加熱後、特級スチレン(キシダ化学製)2mlを加えて5分撹拌し、さらにスチレンの重合開始剤である0.1g/ml濃度の2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩水溶液(以下、AIBA)を10ml加え、4時間攪拌を行った。室温まで冷却した後、この混合液1ccを用いてDLSによる数平均粒子径を測定したところ、27.4nmであった。
第一工程で得られたコア粒子分散液245gがpH4.5となるように塩酸(キシダ化学製)を添加した。このとき、コア粒子のゼータ電位を測定すると、+47mVであった。その後、テトラエトキシシラン(キシダ化学製)を2g混合して撹拌を行い、コアシェル粒子の分散液を調製した。50時間後、1ccを取り出し、DLSで粒子径及びゼータ電位を測定したところ、32.2nm、+27mVであった。また、走査型電子顕微鏡で粒子を観察したところ、表面に棘を有するコアシェル型の粒子を確認することができた。
第二工程で得られたコアシェル粒子分散液240gに対し、n−オクチルジメチルクロロシラン(東京化成製)を5gとトルエン50gを加え、2時間撹拌を行った。24時間静置し、水層とトルエン層に分離した。
第三工程で得られる水層を抽出した後、MWCO100,000の限外濾過膜に繰り返し透過させ、水溶性の不純物を水分子と同時に除去しながら、イソプロピルアルコールを添加した。また、限外濾過により、濃縮も行い、全量が30ccとなったところで限外濾過を停止した。得られた溶液0.3gを乾燥し、走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、表面に棘形状を有する中空粒子を確認することができた。また、50万倍に拡大した画像を5枚撮影し、粒子23個に対して棘の平均高さと、棘状の突起が粒子表面に占める割合を画像処理により求めたところ、それぞれ7nm及び20%となった。
第四工程で得られた30ccのイソプロピルアルコール溶媒の中空粒子塗料をBK−7上ガラス上にスピンコートを用いて成膜した。この単層膜の屈折率を測定すると、1.11であり、散乱値は19となった。また、ダイヤモンドカッターで基材を切断し、走査型電子顕微鏡を用いて断面を観察したところ、図4に示すように膜厚123nmの粒子積層膜を観察することができた。表面の観察画像を用いて粒子の充填率を計算したところ、70%であった。この充填率を用いた場合、計算上膜の屈折率は1.14であったので、屈折率が0.03低下可能なことが確認できた。
[第一工程〜第二工程]
pHを3.0に調製する以外は、実施例1と同様にして行い、表面に棘を有する33.5nmのコアシェル型粒子を得ることができた。また、ゼータ電位を測定したところ、+30mVであった。
実施例1と同様にして行ったところ、棘の平均高さが12nmで、棘状の突起が粒子表面に占める割合が25%の中空粒子を確認することができた。
実施例1と同様にして、中空粒子の成膜を行ったところ、膜の屈折率が1.12で散乱値が20であった。表面の観察画像を用いて粒子の充填率を計算したところ、65%であった。この充填率から予想される屈折率は1.15となったため、0.03屈折率の低下を確認することができた。
[第一工程〜第二工程]
pHを5.5に調製する以外は、実施例1と同様にして行い、表面に棘を有する33.6nmのコアシェル型粒子を得ることができた。
実施例1と同様にして行ったところ、棘の平均高さが5nmで、棘状の突起が粒子表面に占める割合が10%の中空粒子を確認することができた。
実施例1と同様にして、中空粒子の成膜を行ったところ、膜の屈折率が1.11で、散乱値が20であった。表面の観察画像を用いて粒子の充填率を計算したところ、68%であった。この充填率から予想される屈折率は1.14となったため、0.03屈折率の低下を確認することができた。
[第一工程〜第二工程]
pHを6.0に調製する以外は、実施例1と同様にして行い、表面に棘を有する33.4nmのコアシェル型粒子を得ることができた。また、ゼータ電位を測定したところ、+17mVであった。
実施例1と同様にして行ったところ、棘の平均高さが4nmで、棘状の突起が粒子表面に占める割合が9%の中空粒子を確認することができた。
実施例1と同様にして、中空粒子の成膜を行ったところ、膜の屈折率が1.11で、散乱値が21であった。表面の観察画像を用いて粒子の充填率を計算したところ、67%となった。この充填率から予想される屈折率は1.14となったため、0.03屈折率の低下を確認することができた。
[第一工程〜第二工程]
実施例1と同様に行った。
第二工程で得られたコアシェル粒子分散液240gに対し、テトラヒドロフラン(THF)240gを加え、1時間撹拌を行った。
第三工程で得られた水とTHFの混合液をMWCO100,000の限外濾過膜に繰り返し透過させ、水溶性の不純物を水分子と同時に除去しながら、イソプロピルアルコールを添加した。また、限外濾過により、濃縮も行い、全量が30ccとなったところで限外濾過を停止した。このとき、DLSを用いて中空粒子の集合体のサイズを測定したところ、348nmであっため、集合体のサイズが229nmとなるまでさらに限外濾過を行った。
実施例1と同様にして、中空粒子の成膜を行ったところ、膜の屈折率が1.09で、散乱値が16であった。また、中空粒子膜のボイド密度を測定したところ、粒子が存在しない2000nm2以上のボイド空間は1個/μm2となった。
[第一工程〜第三工程]
実施例5と同様に行った。
実施例5と同様に1度目の限外濾過を行った後、中空粒子集合体のサイズを159nmとなるまで2度目の限外濾過を行った。
実施例1と同様にして、中空粒子の成膜を行ったところ、膜の屈折率が1.10で、散乱値が8.5であった。また、中空粒子膜のボイド密度を測定したところ、粒子が存在しない2000nm2以上のボイド空間は確認できなかった。
[第一工程〜第二工程]
実施例1と同様の第一工程を実施した後、第二工程でpH6.5に調製し、ケイ素アルコキシドとしてテトラエトキシシラン(東京化成製)2gを混合して撹拌したところ、3時間撹拌したところで粒子同士の凝集が目視で確認できた。走査透過型電子顕微鏡を用いて1粒子のサイズを見積もったところ、約33nmであったが、表面に棘は確認できなかった。凝集した粒子のゼータ電位を測定したところ、+7mVであった。
実施例1と同様にし、得られた粒子を走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、棘を有さない中空粒子の凝集体を確認した。
実施例1と同様にして、中空粒子の成膜を行ったところ、膜の屈折率が1.22で散乱値が75であった。
[第一工程〜第二工程]
第二工程でpH8.0に調製する以外は、比較例1と同様にして行い、コアシェル粒子を合成したところ、5時間撹拌したところで粒子同士の凝集が目視で確認できた。走査透過型電子顕微鏡を用いて1粒子のサイズを見積もったところ、約33nmであった。粒子の表面に棘は確認できなかった。凝集した粒子のゼータ電位を測定したところ、+4mVであった。
実施例1と同様にし、得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、棘を有さない中空粒子の凝集体を確認した。
実施例1と同様にして、中空粒子の成膜を行ったところ、膜の屈折率が1.21で、散乱値は82であった。
[第一工程〜第二工程]
第二工程でpHを2.0に調製する以外は、比較例1と同様にして行い、表面に棘を有する31.9nmのコアシェル型粒子を得ることができた。また、ゼータ電位を測定したところ、+32mVであった。棘の形状を測定したところ、棘の平均高さが22nmで、と棘状の突起が粒子表面に占める割合35%であった。
実施例1と同様にして得られた水層及びトルエン層の両方から0.3gずつ取り出して、乾燥させ、走査型電子顕微鏡で観察したところ、中空粒子は観察できなかった。
日揮触媒化成製の20wt%濃度の中空シリカ粒子塗料(スルーリア1110)を用いて検討を行った。まず、粒子を走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、棘を有さない中空粒子を確認した。この粒子塗料を5重量%となるようにイソプロピルアルコールで希釈し、スピンコートで成膜を行った。得られた膜の屈折率及び散乱を測定したところ、屈折率が1.19、散乱が22であった。走査型電子顕微鏡を用いて撮影した画像の中から任意の粒子20個を取り出し、二次元の空洞とシリカの割合よりこの中空粒子の屈折率を見積もったところ、1.258となった。また、充填率が70%となったため、膜の屈折率の計算値は1.19となり、実測値と同じ値となった。
2 基材
3 反射防止膜
4 表面に棘状の突起形状を有する中空粒子
5 空隙
31 棘部
32 中空粒子のシェル
33 棘の突起の粒子表面の長さ
34 棘の高さ
Claims (14)
- 基材と、前記基材の上に反射防止膜とを有する光学部材であって、
前記反射防止膜は、表面に棘状の突起を有する複数の中空粒子を有し、
前記棘の高さが3nm以上20nm以下であり、前記棘状の突起が粒子表面に占める割合が3%以上30%以下であり、
前記反射防止膜は、前記中空粒子を50体積%以上68体積%以下の割合で有していることを特徴とする光学部材。 - 前記反射防止膜において、2000nm2以上の粒子間ボイドの数が1個/μm2以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学部材。
- 前記光学部材は、レンズ又はプリズムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学部材。
- 前記粒子の個数平均粒径が、20nm以上210nm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学部材。
- 前記中空粒子がシリカ粒子からことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学部材。
- 前記反射防止膜の屈折率が1.08以上1.14以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光学部材。
- 表面に棘状の突起形状を有する中空粒子を有する反射防止膜であって、
前記棘の高さが3nm以上20nm以下であり、前記棘状の突起が粒子表面に占める割合が3%以上30%以下であり、
前記粒子が前記50体積%以上68体積%以下で充填されていることを特徴とする反射防止膜。 - 前記反射防止膜において、2000nm2以上の粒子間ボイドの数が1個/μm2以下であることを特徴とする請求項7に記載の反射防止膜。
- 前記中空粒子の個数平均粒径が、20nm以上210nm以下であることを特徴とする請求項7又は8に記載の反射防止膜。
- 前記中空粒子が中空シリカ粒子からことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の反射防止膜。
- 屈折率が1.08以上1.14以下であることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項に記載の反射防止膜。
- コア粒子の表面に、ケイ素アルコキシドをpH3以上pH6以下の条件で加水分解して棘状の突起形状を有するコアシェル粒子を形成する工程と、
形成された前記コアシェル粒子のコア粒子を除去して、表面に棘形状の突起を保持した中空粒子を製造する工程と、を有することを特徴とする中空粒子の製造方法。 - 前記ケイ素アルコキシドがテトラアルコキシシランであることを特徴とする請求項12に記載の中空粒子の製造方法。
- 請求項12又は13で製造した中空粒子と、有機溶媒とを有する塗料を基材の上に塗布して、基材の上に反射防止膜を作製することを特徴とする光学部材の製造方法。
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