JP2017137457A - 含リンポリアニリンおよびその製造方法 - Google Patents

含リンポリアニリンおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】非常に容易に高収率で含リンポリアニリンを製造する方法を提供すること
【解決手段】本発明は、含リンポリアニリンおよびその製造方法が提供される。本発明によれば、新規な含リンポリアニリンを従来の方法よりも容易に、高収率かつ安価に得ることができる。また、得られた含リンポリアニリンのひとつは水溶性という特徴を有し、π電子系を介する電子伝導性とイオン伝導性を有する導電性ポリマーであり、キャスト法により高導電性ポリマー薄膜となる。本発明の1つの実施形態によれば、自己ドーピング機能を持つ、ホスホン酸基を有するポリアニリンを容易に得ることができる。さらに、本発明によれば、従来の方法よりも簡単に、高収率かつ安価にポリアニリンを製造することができる。本発明の方法により得られたホスホン酸基を有するポリアニリンは高い導電性を示し、帯電防止剤として有用である。
【選択図】なし

Description

本発明は、含リンポリアニリン、特に含リンポリアニリンエステルおよび導電性ポリアニリンならびにその製造方法に関する。本発明の含リンポリアニリンエステルは、自己ドーピング機能を有する導電性ポリアニリンを製造するための中間体として有用である。本発明の含リンポリアニリンエステルを中間体として用いる製造方法により得られる導電性ポリアニリンは、帯電防止剤、静電気防止剤、プラスチック電極の電極材料、EMI材料、有機強磁性体、および各種センサーなどの様々な用途に有用である。
ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどに代表される導電性高分子は近年“有機エレクトロニクス”分野において盛んに開発が行われている化合物群である。その中でも特にポリアニリンは安価な原料より簡単に得ることが可能であって、最も早く実用化されたもののひとつである。ただし、ポリアニリンに導電性を発現させるためにはプロトンやヨウ素などでアクセプターまたはドナーによるドーピング操作をほどこす必要があって、ポリアニリンのみで使用することはできない。さらに、置換基を持たないポリアニリンは一般に有機溶剤や水に不溶であって、加工性に乏しいという課題をかかえている。
このような、置換基を有さないポリアニリンの課題を解決するために、ポリアニリンに長鎖のアルキル基、ケトン基、エーテル基などを導入して有機溶剤に対する溶解性を向上させたポリアニリン類が報告されている。なお、本明細書中では、特に断らない限り、用語「ポリアニリン」は、置換基を有さないものと置換基を有するものとの両方を意味する。ポリアニリンを可溶化することは加工、取り扱いを容易にするために工業的に非常に重要であるが、製造設備的には水溶性とするのが、コスト的にはさらに有利である。
そこで、最近になってポリアニリンに酸性置換基を導入することによって水溶性を付与させたものが開発されてきている。さらに、その酸性置換基の導入と同時にポリアニリン自身でドーピングを行うことができるため、ドーピング操作を必要としないというメリットも得ることができる(自己ドープや自己ドーピングと呼ばれる)。ここでいう酸性置換基とはたとえば、スルホ基(−S(O)OH)やホスホン酸基(−P(O)(OH))などである。
スルホ基が導入されたポリアニリンは“無置換のポリアニリンを発煙硫酸やクロロ硫酸でスルホン化されたもの”や“アニリンスルホン酸類を重合させて得られたもの”などがある。前者はポリアニリンに対して大過剰のスルホン化剤を用いてスルホン化を行っており、大量の酸性廃棄物が生成し、その処理が困難という問題がある。後者は原料が高価であるという課題を有している。
ホスホン酸基を有するポリアニリンについては“o−アミノベンジルホスホン酸を重合させたポリアニリンベンジルホスホン酸”(非特許文献1)や“3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸塩酸塩を重合させたポリ(2−メトキシアニリン−5−ホスホン酸)”(特許文献1)が報告されている。前者は重合前の原料を得るために多段階の反応を必要とし、各反応において精製をほどこさねばならない。後者は、重合前の原料合成にかかる収率は各反応において精製しなければ低く(約40%)、効率を上げるためには各反応において精製をほどこさねばならなく、工業的には多くの課題をかかえている。
国際公開WO2014/167818
Chan et al, J.Am.Chem.Soc. 117, 8517 (1995)
上記のように含リンポリアニリンは、そのメリット・性能から新たな開発が望まれているが、従来より開発されているものは、特に生産性の面で十分に満足するものとは言えなかった。本発明は、従来の方法とは異なり非常に容易に重合度の高い含リンポリアニリンを効率よく製造する方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、上記諸課題は、特定構造のポリアニリン化合物をホスホン化させてポリアニリンエステルまたは導電性ポリアニリンを製造することにより達成されることを見出し、本発明を完成させた。
例えば、本発明は、下記のポリアニリン、その製造方法等を提供する。
(項1)
下記一般式(1):
−(A− (1)
で表される含リンポリアニリンエステルであって、ここで、
は置換もしくは非置換アニリンモノマー残基であって、
各Aは各々独立してm個のホスホン酸残基Rとn個の置換基Rとを有し、
ホスホン酸残基Rは、以下の式で表され:
式中、
およびMは各々独立して炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素数6〜30のアリール基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択され、
とMは同じであってもよく異なってもよく、
ただし、該含リンポリアニリンエステル中の少なくとも1つのRにおいて、Mは炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基または炭素数6〜30のアリール基であり、
ただし、該含リンポリアニリンエステル中のすべてのエステルがエチルエステルである場合には、少なくとも1つのRにおいて、MおよびMが共にエチル基であり、
また、MまたはMのうちの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのR基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMまたはMのうちの他方が存在しない構造となるか、または、2つのR基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となり、
Rは、各々独立してハロゲン原子、炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素原子数1〜15のアルコキシ基、炭素原子数1〜15のアルキルチオ基、炭素原子数1〜15のアルキルアミノ基、カルボキシル基、エステル残基の炭素原子数が1〜15のカルボン酸エステル基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選ばれた少なくとも1つであり、
mは各々独立して0〜4の整数であり、ただし、該含リンポリアニリンエステル中のmの合計は1以上であり、
nは各々独立して0〜3の整数であり、
それぞれのアニリンモノマー誘導体残基において各々独立してmとnの和は4以下であり、
kは4〜3000の整数である、
含リンポリアニリンエステル。
(項2)
少なくとも1つのRにおいてMおよびMが両方とも、炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基または炭素数6〜30のアリール基である、上記項1に記載の含リンポリアニリンエステル。
(項3)
前記含リンポリアニリンエステル中に導入されたホスホン酸残基の数が、アニリンモノマー残基の数に対して10%以上である、上記項1または2に記載の含リンポリアニリンエステル。
(項4)
およびMは各々独立して炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素数6〜30のアリール基および水素原子からなる群から選択される、上記項1に記載の含リンポリアニリンエステル。
(項5)
含リンポリアニリンを製造する方法であって、
下記一般式(2):
−(A− (2)
で表されるポリアニリン化合物に、ホスホン化反応を行って含リンポリアニリンを得る工程
を包含し、ここで、
は置換もしくは非置換アニリンモノマー残基であって、
各Aは各々独立してn個の置換基Rを有し、
R、nおよびkは上記項1中の定義と同じである、
方法。
(項6)
上記項5に記載の方法であって、前記ホスホン化反応がホスファイト化合物を用いて行われ、ここで、
該ホスファイト化合物が、下記一般式(3):
で表される化合物であって、ここで、M〜Mは同じであってもよく、異なってもよく、それぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素数6〜30のアリール基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択され、
ただし、M〜Mのうちの1つがアルカリ土類金属である場合には、2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてM〜Mの残りの2つのうちの1つが存在しない構造となるか、あるいは、
該ホスファイト化合物が下記一般式(4):
で表される化合物であって、ここで、MおよびMは同じであってもよく、それぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素数6〜30のアリール基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択され、
ただし、MおよびMのうちの一方がアルカリ土類金属である場合には、2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMおよびMのうちの他方が存在しない構造となる、
方法。
(項7)
前記ホスホン化において、前記一般式(2)で表されるポリアニリン化合物を酸化させて、前記一般式(3)で表されるホスファイト化合物と反応させる、上記項6に記載の方法。
(項8)
前記ホスホン化において、前記一般式(2)で表されるポリアニリン化合物を、平尾反応により、一般式(4)で表されるホスファイト化合物と反応させる、上記項6に記載の方法。
(項9)
上記項8に記載の方法であって、
前記置換もしくは非置換アニリンモノマー残基の合計のうちの10%以上が、置換基Rとしてハロゲンを含む置換アニリンモノマー残基である、方法。
(項10)
前記ホスホン化の反応温度が20℃〜200℃である上記項5〜9のいずれか1項に記載の方法。
(項11)
前記ホスファイト化合物を、前記一般式(2)で表されるポリアニリン化合物に対して0.05〜10当量使用してホスホン化を行う、上記項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
(項12)
溶媒の存在下でホスホン化を行う上記項5〜11のいずれか1項に記載の方法。
(項13)
前記溶媒が、水、アンモニア水、塩酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、アセトン、2−ブタノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエンおよびN―メチル−2−ピロリドンから選ばれた少なくとも1つである上記項12に記載の方法。
(項14)
導電性ポリアニリンの製造方法であって、上記項1〜4のいずれか1項に記載の含リンポリアニリンエステルを加水分解する工程を包含する、方法。
(項15)
導電性ポリアニリンの製造方法であって、上記項5〜13のいずれか1項に記載の方法を行って上記項1〜4のいずれか1項に記載の含リンポリアニリンエステルを製造する工程、および該含リンポリアニリンエステルを加水分解する工程を包含する、方法。
(項16)
上記項14または15に記載の製造方法により製造された導電性ポリアニリン。
本発明によればホスホン酸残基を有する新規のポリアニリンを得ることができる。さらに従来の方法よりも簡単に、高収率かつ安価に製造することができる。
図1は、実施例2で得られた含リンポリアニリンの紫外可視近赤外吸収スペクトル測定の結果である。 図2は、実施例3で得られた含リンポリアニリンの紫外可視近赤外吸収スペクトル測定の結果である。 図3は、実施例4で得られた含リンポリアニリンの紫外可視近赤外吸収スペクトル測定の結果である。
以下、本発明について詳細に説明する。
[含リンポリアニリンの製造方法]
本発明の製造方法においては、ポリアニリン化合物またはポリアニリン化合物を含むポリアニリン混合物をホスホン化することにより、含リンポリアニリンが製造される。
(ポリアニリン化合物)
本明細書において、「ポリアニリン化合物」とは、含リンポリアニリンを得るためのホスホン化反応を行うことができるポリアニリンを意味する。具体的には無置換のポリアニリンまたは置換ポリアニリンである。置換ポリアニリンは、そのベンゼン環およびアミノ基残基の窒素のうちの少なくとも1つに置換基を有するものをいう。ベンゼン環においては、アミノ基残基の窒素を1位として、2位、3位、5位および6位(すなわち、オルト位またはメタ位)のうちの1つから4つに置換基が存在することができる。
本明細書において「ポリアニリン混合物」とは、2種類以上のポリアニリン化合物が混合された混合物をいう。
アニリンモノマー化合物またはアニリンモノマー混合物を重合することにより、ポリアニリンが得られる。重合方法としては、アニリンモノマーからポリアニリンを得る重合方法として従来公知の任意の方法を採用することができる。
本明細書において、「アニリンモノマー」または「アニリンモノマー化合物」とは、アニリンからポリアニリンを得る重合反応を行うことができるモノマーを意味する。具体的には、無置換のアニリン(CNH)または置換アニリンあるいはそれらの塩である。置換アニリンは、そのベンゼン環およびアミノ基のうちの少なくとも1に置換基を有するものをいう。ベンゼン環においては、アミノ基を1位として、2位、3位、5位および6位(すなわち、オルト位またはメタ位)のうちの1つ〜4つに置換基が存在することができる。ただし、4位(パラ位)に置換基を有する置換アニリンは重合できないので、4位(パラ位)置換アニリンはアニリンモノマーに含まない。無置換もしくは置換アニリンの塩は、アミノ基の部分が塩になったものであって、その塩の部分が重合反応に支障をもたらさないものをいう。無置換もしくは置換アニリンの塩の例としては、例えば、アンモニウム塩が挙げられる。
本明細書において「アニリンモノマー混合物」とは、2種類以上のアニリンモノマー化合物が混合された混合物をいう。
本願発明の製造方法において原料として使用されるポリアニリン化合物は、アミノ基残基の窒素を1位として、1つのアニリンモノマー残基の1位(窒素)と、別のアニリンモノマー残基の4位とが結合した構造を有する。そのため、得られる含リンポリアニリン(導電性ポリアニリンおよび含リンポリアニリンエステル)も1つのアニリンモノマー残基の1位(窒素)と、別のアニリンモノマー残基の4位とが結合した構造を有する。そして得られる含リンポリアニリン(導電性ポリアニリンおよび含リンポリアニリンエステル)は、アミノ基残基の窒素を1位として、2位、3位、5位および6位(すなわち、オルト位またはメタ位)のうちの1つから4つに置換基が存在し得る構造となる。
本明細書において、「含リンポリアニリン」とは、ポリアニリンであって、ホスホン酸残基を有するものをいう。
本明細書において、「含リンポリアニリンエステル」とは、含リンポリアニリンであって、アルキルエステルまたはアラルキルエステルになっているホスホン酸残基を有するものをいう。
本明細書において「残基」とは、反応材料が反応した後に残る基をいう。上記アミノ基残基とは、アニリンを重合した際に、アニリンのアミノ基から水素が脱離して生成したポリマー中に残った部分をいう。また、例えば、非置換アニリンモノマー残基とは、アニリンを重合した際に、1つの非置換アニリンモノマー分子が生成したポリマー中に残った部分、すなわち1つのベンゼン環および1つの窒素原子と水素からなる部分をいう。置換アニリンモノマー残基とは、アニリンを重合した際に、1つの置換アニリンモノマー分子が生成したポリマー中に残った部分、すなわち1つのベンゼン環および1つの窒素原子とを骨格としてさらに水素または置換基を含む部分をいう。なお、本明細書中においては、アニリンモノマー残基をアニリンユニットとも記載する。
本発明の含リンポリアニリンの製造方法において、ホスホン化を行う際に原料となるポリマーとしては、下記一般式(2)で表されるポリアニリン化合物を使用する。
−(A− (2)
ここで、Aは置換もしくは非置換アニリン残基であって、各Aは、n個の置換基Rを有する。
Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、カルボン酸アルキルエステル基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選択される少なくとも1種である。これらのうち、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基などの電子供与性基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基が特に好ましい。
ハロゲン原子の具体例としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、塩素原子、臭素原子が好ましい。
なお、本明細書において「アルキル」とは、鎖状または環状の脂肪族炭化水素(アルカン)から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいう。鎖状の場合は、一般にC2j+1−で表される(ここで、jは正の整数である)。鎖状のアルキルは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のアルキルは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。アルキルの炭素数は、任意の自然数であり得る。アルキルの炭素数は、1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。さらに別の実施形態では、1〜10であり、さらにまた別の実施形態では、1〜5である。
特に、上記Rにおけるアルキル基については、アルキル基の炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基およびペンタデシル基などが挙げられる。
本明細書において、「アラルキル基」とは、アルキル基の水素原子の一部がアリール基で置換された構造を指す。
本明細書において「アリール基」とは、芳香族炭化水素の環に結合する水素原子が1個離脱して生ずる基をいう。アリール基を構成する芳香族炭化水素の環の数は、1つであってもよく、2つ以上であっても良い。好ましくは、1〜3である。分子内芳香族炭化水素の環が複数存在する場合、それらの複数の環は縮合していてもよく、縮合していなくてもよい。具体的には、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ビフェニリルなどである。アリール基の炭素数は、6〜30であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜10であることがさらに好ましい。
特に、上記一般式(2)の置換基Rにおけるアラルキル基を構成するアルキル基は、直鎖であっても良く、分岐状であっても良く、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数が1〜5であることが更に好ましい。アラルキル基を構成するアリール基は、置換基を有していてよい1〜4個のベンゼン環を備えるアリール基が好ましく、例えば、1または2以上の置換基を有しいてよいフェニル基、ビフェニル基、テルフェニル(ターフェニル)基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基およびフルオレニル基などが挙げられ、フェニル基、ビフェニル基およびナフチル基が更に好ましい。置換基としては、例えば、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、炭素数7〜21のフェニルアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ハロゲン原子、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基およびスルホン基などが挙げられる。
アラルキル基の全体の炭素原子数としては7〜34であることが好ましく、7〜15であることが特に好ましい。具体例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、ナフチルブチル基、ナフチルペンチル基、アンスリルメチル基、アンスリルエチル基、アンスリルプロピル基、アンスリルブチル基、アンスリルペンチル基、ビフェニルメチル基、ビフェニルエチル基、ビフェニルプロピル基、ビフェニルブチル基およびビフェニルペンチル基などが挙げられる。
本明細書において「アルコキシ」とは、上記アルキル基に酸素原子が結合した基をいう。すなわち、上記アルキル基をR−と表した場合にRO−で表される基をいう。鎖状のアルコキシは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のアルコキシは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。アルコキシの炭素数は、任意の自然数であり得る。1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。
中でも、上記一般式(2)の置換基Rにおけるアルコキシ基としては、アルキル基部分が、直鎖であってもよく、分岐状であってもよく、炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基およびペンタデシルオキシ基などが挙げられる。
本明細書において「アルキルチオ」とは、上記アルキル基に硫黄原子が結合した基をいう。すなわち、上記アルキル基をR−と表した場合にRS−で表される基をいう。鎖状のアルキルチオは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のアルキルチオは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。アルキルチオの炭素数は、任意の自然数であり得る。1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。
上記一般式(2)の置換基Rにおけるアルキルチオ基としては、アルキル基部分が、直鎖であってもよく、分岐状であってもよく、炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、ウンデシルチオ基、ドデシルチオ基、トリデシルチオ基、テトラデシルチオ基およびペンタデシルチオ基などが挙げられる。
本明細書において「アルキルアミノ」とは、上記アルキル基にアミノ基が結合した基をいう。すなわち、上記アルキル基をR−と表した場合にRNH−で表される基をいう。鎖状のアルキルアミノは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のアルキルアミノは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。アルキルアミノの炭素数は、任意の自然数であり得る。1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。
上記一般式(2)の置換基Rにおけるアルキルアミノ基としては、アルキル基部分が、直鎖であってもよく、分岐状であってもよく、炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ウンデシルアミノ基、ドデシルアミノ基、トリデシルアミノ基、テトラデシルアミノ基およびペンタデシルアミノ基などが挙げられる。
本明細書において「カルボン酸アルキルエステル」とは、上記アルキル基にカルボン酸基が結合した基をいう。すなわち、上記アルキル基をR−と表した場合に−COORで表される基をいう。鎖状のカルボン酸アルキルエステルは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のカルボン酸アルキルエステルは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。カルボン酸アルキルエステルの炭素数は、任意の自然数であり得る。1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。
上記一般式(2)の置換基Rにおけるカルボン酸アルキルエステル基は、そのカルボン酸の炭素原子が一般式(2)のベンゼン環に結合する。すなわち、ベンゼン環をPhと記載すると、Ph−C(=O)−ORの構造となる。このカルボン酸アルキルエステル基としては、アルキル基の炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、カルボン酸メチル基、カルボン酸エチル基、カルボン酸プロピル基、カルボン酸ブチル基、カルボン酸ペンチル基、カルボン酸ヘキシル基、カルボン酸ヘプチル基、カルボン酸オクチル基、カルボン酸ノニル基、カルボン酸デシル基、カルボン酸ウンデシル基、カルボン酸ドデシル基、カルボン酸トリデシル基、カルボン酸テトラデシル基およびカルボン酸ペンタデシル基などが挙げられる。
上記一般式(2)中、nは0〜4の整数(すなわち、0、1、2、3または4)であり、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0〜1の整数である。kは4〜3000の整数であり、好ましくは6〜2000の整数であり、より好ましくは8〜1200の整数である。
本明細書において「アルカリ金属」は、周期律表の第1族に属する任意の原子をいう。アルカリ金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムなどが挙げられる。
本明細書において「アルカリ土類金属」とは、周期律表の第2族に属する任意の原子をいう。アルカリ土類金属の具体例としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムなどが挙げられる。
一つの実施形態において、上記一般式(2)中のポリアニリン化合物における置換基Rはハロゲンである。ポリアニリンの置換基にハロゲンが存在すれば、後述する平尾反応を行うことができる。置換基Rとしてハロゲンを有するポリアニリンを使用する場合、置換基としてハロゲンが存在するアニリンモノマー残基の数は、任意に選択することができる。置換基としてハロゲンが存在するアニリンモノマー残基の比率は、ポリアニリン中に存在するアニリンモノマー残基の数を100%として、例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上から選択することが可能である。あるいは、100%としてもよい。また、何らかの理由により、ハロゲンの含有量を制御することが所望される場合には、ハロゲンが存在するアニリンモノマー残基の数が抑制されるように設計することもできる。そのような場合には、例えば、その比率を95%以下、90%以下、85%以下、または80%以下に設計することが可能である。
(その他のポリマー)
本発明の含リンポリアニリンの製造方法においては、上述した、置換または非置換のポリアニリン化合物をホスホン化の際のポリマーとして使用することが好ましい。しかし、必要に応じて、含リンポリアニリン製造の際の原料となるポリマー混合物には、上記置換または非置換のポリアニリン化合物以外のホスホン化可能なポリマー(以下、「他種ポリマー」)を、本発明の効果を妨げない程度の少量含んでいてもよい。すなわち、ホスホン酸を有さない置換もしくは非置換のポリアニリン化合物を必要に応じて、共重合させても良い。例えば、酸性の置換基を有さない置換もしくは非置換のポリアニリン化合物を少量用いても良いし、ホスホン酸以外の酸性の置換基(例えば、スルホン酸)を有する置換もしくは非置換のポリアニリン化合物を少量用いても良いし、あるいは、ホスホン酸基が直接ベンゼン環に結合せずに間接的に結合している置換もしくは非置換のポリアニリン化合物を少量用いても良い。
ただし、上記他種ポリマーの使用量が多すぎると、本発明の利点が損なわれることになるので、他種ポリマーの使用量は多すぎないことが好ましい。他種ポリマーの使用量は、重合に使用される置換または非置換のポリアニリン化合物総量のうちの40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましく、10モル%以下であることがいっそう好ましく、5モル%以下であることがひときわ好ましく、3モル%以下であることが特に好ましく、1モル%以下であることが最も好ましい。
[ホスホン化反応]
ポリアニリン化合物またはポリアニリン混合物をホスファイトと反応させてホスホン化を行うことにより、含リンポリアニリンが得られる。ホスホン化方法としては、ポリアニリン化合物にホスホン酸残基を導入し得る任意のホスホン化方法を採用することができる。ホスファイトとしては、ポリアニリン化合物またはポリアニリン混合物と反応し得る任意のホスファイトが使用可能である。
好ましくは、酸化剤を用いてポリアニリン化合物またはポリアニリン混合物を酸化して下記一般式(3)または一般式(4)で表されるホスファイト化合物(好ましくはトリアルキルホスファイトまたはジアルキルホスファイト)と反応させて含リンポリアニリンを合成する方法を採用することができる。
一般式(3):
(ここで、M〜Mは同じであってもよく、異なってもよく、それぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素数6〜30のアリール基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択される。ただし、M〜Mのうちの1つがアルカリ土類金属である場合には、2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてM〜Mの残りの2つのうちの1つが存在しない構造となる。)
一般式(4):
(ここで、MおよびMは同じであってもよく、それぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素数6〜30のアリール基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択される。ただし、MおよびMのうちの一方がアルカリ土類金属である場合には、2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMおよびMのうちの他方が存在しない構造となる。)
なお、一般式(3)において、M〜Mのうちの1つだけが水素原子である化合物は、一般式(4)と互変異性体の関係となり、同一の化合物となる。本明細書中では、その化合物については一般式(4)の化合物として説明する。
本明細書中において「ホスホン化」とは、ポリアニリン化合物またはポリアニリン混合物とホスファイトとを反応させて含リンポリアニリンを合成する反応を意味する。本明細書中において「ホスホン化剤」とは、酸化剤または平尾反応などに用いる触媒を意味する。本明細書中において「酸化」とは、酸化剤を用いてポリアニリン化合物またはポリアニリン混合物から水素原子を引き抜くことを意味する。本明細書中において「酸化剤」とは、そのような酸化反応を引き起こす試薬をいう。
従って、酸化剤を用いた場合、ポリアニリン化合物から水素原子が失われる。そして脱水素化されたポリアニリン化合物が一般式(3)のホスファイト化合物(例えば、トリアルキルホスファイト)と反応する。
(その他のホスホン化反応)
本発明のホスホン化反応においては、上述した、酸化剤を用いてポリアニリン化合物またはポリアニリン混合物と酸化により、一般式(3)で表されるホスファイトとの反応により含リンポリアニリンを合成する「求核付加によるホスホン化反応」を使用することが好ましい。しかし、必要に応じて、平尾反応によるホスホン化と呼ばれる方法を採用してもよい。
本明細書中において「平尾反応によるホスホン化」とは、ポリアニリン化合物またはポリアニリン混合物と一般式(4)で表されるジアルキルホスファイトとのカップリングにより含リンポリアニリンを合成する反応を意味する。なお、本明細書において、「平尾反応」とは、パラジウム化合物などの触媒の存在下でベンゼン環にホスファイトを結合させる反応を言う。
平尾反応の触媒としては、公知の任意の触媒が使用可能であり、好ましくはパラジウム化合物であり、より好ましくはPd(PPhまたはPd(OAc)である。また、必要に応じて、平尾反応によるホスホン化は触媒失活防止のため、反応仕込み前に反応容器を真空加熱(以下、フレームドライと表記する)することが好ましい。平尾反応は、具体的には、特許文献1などに説明されている。
(ホスファイトの量)
本発明の方法に用いるホスファイトの量は特に限定されない。ポリアニリン化合物の種類およびポリアニリン化合物に導入しようとするホスファイトの種類などを考慮して適宜設計することができる。例えば、ポリアニリン化合物が非置換のアニリンであれば、ベンゼン環の4か所にホスホン酸残基を導入できるので、導入できるホスホン酸残基の数はアニリンモノマー残基の数の4倍となる。そのうちの導入しようとするホスホン酸残基の数に応じて、適宜ホスファイトの量を決めることができる。多数のホスホン酸残基を導入しようとする場合には、多量のホスファイトを使えば良いし、少数のホスホン酸残基を導入しようとする場合には、少量のホスファイトを使えば良い。
例えば、1つの実施形態においては、ホスファイトを、前記一般式(2)で表されるポリアニリン化合物に対して0.05当量以上、10当量以下使用する。必要に応じて、例えば、ホスファイトの量を、0.1当量以上、0.3当量以上、0.5当量以上、1当量以上、または2当量以上としてもよい。また例えば、ホスファイトの量を、9当量以下、8当量以下、7当量以下、6当量以下、または5当量以下としてもよい。
なお、ここで、ホスファイトのポリアニリン化合物に対する当量は、ポリアニリン化合物中に存在するホスホン酸残基が導入され得る場所の総数の計算値(例えば、非置換ポリアニリンであればアニリンモノマー残基の数の4倍)に対するホスファイトのモル数として計算される。
(ホスホン化剤の量)
本発明の方法に用いるホスホン化剤の量は特に限定されない。ポリアニリン化合物の種類およびポリアニリン化合物に導入しようとするホスホン酸残基の種類および量などを考慮して適宜設計することができる。例えば、ポリアニリン化合物が非置換のアニリンであれば、ベンゼン環の4か所にホスホン酸残基を導入できるので、導入できるホスホン酸残基の数はアニリンモノマー残基の数の4倍となる。そのうちの導入しようとするホスホン酸残基の数に応じて、適宜ホスホン化剤の量を決めることができる。多数のホスホン酸残基を導入しようとする場合には、多量のホスホン化剤を使えば良いし、少数のホスホン酸残基を導入しようとする場合には、少量のホスホン化剤を使えば良い。
例えば、1つの実施形態においては、ホスホン化剤を、前記一般式(2)で表されるポリアニリン化合物に対して0.05当量以上、10当量以下使用する。必要に応じて、例えば、ホスホン化剤の量を、0.1当量以上、0.3当量以上、0.5当量以上、1当量以上、または2当量以上としてもよい。また例えば、ホスホン化剤の量を、9当量以下、8当量以下、7当量以下、6当量以下、または5当量以下としてもよい。
なお、ここで、ホスホン化剤のポリアニリン化合物に対する当量は、ポリアニリン化合物中に存在するホスホン酸残基が導入され得る場所の総数の計算値(例えば、非置換ポリアニリンであればアニリンモノマー残基の数の4倍)に対するホスホン化剤のモル数として計算される。
(ホスホン化率)
本発明の方法においては、ホスホン酸残基をポリアニリン化合物に導入する量を適宜設計することができる。すなわち、目的とする含リンポリアニリンに必要とされる物性等を考慮して、所望の量を導入することができる。含リンポリアニリン中に存在するアニリンモノマー残基の数を100%として、例えば、導入率を10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上にできるように調整することが可能である。あるいは、100%としてもよい。高い導電性が所望される場合には、より多くのホスホン酸残基が導入されるように設計することができる。また、何らかの理由により、ホスホン化率を制御することが所望される場合には、導入されるホスホン酸残基の数が抑制されるように設計することもできる。そのような場合には、例えば、導入率を95%以下、90%以下、85%以下、または80%以下にできるように調整することが可能である。
ホスホン酸残基をポリアニリン化合物に導入する量を多くすれば、ホスホン酸残基の導入効果を高くすることができる。例えば、導電性の付与効果を高くすることができる。ホスホン酸残基をポリアニリン化合物に導入する量を調整する手段としては、上述したホスファイトの量またはホスホン化剤の量を調整することが好ましい。また、反応条件、例えば、反応温度や反応時間を調整することによって、ホスホン酸残基をポリアニリン化合物に導入する量を調整しても良い。
(酸化剤)
本発明においてホスホン化反応に酸化剤を用いる場合、ポリアニリン化合物から水素原子が除去される。すなわち、酸化状態がエメラルディン塩基のポリアニリン化合物がペルニグラニリン塩または塩基に変換されることになる。そのため、ホスホン化反応は、この脱水素を引き起こすための酸化剤の存在下で行われる。酸化剤としては、ホスホン化において一般的に用いられている酸化剤が使用できる。具体例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ硫酸ナトリウム、過酸化水素、第二塩化鉄などが挙げられ、好ましく用いられるものとしてはペルオキソ二硫酸アンモニウムが挙げられる。
酸化剤の使用量は、酸化が進行し得る量である限り限定されない。ホスホン化するポリアニリン化合物の総量に対して、0.5当量以上であることが好ましく、0.7当量以上であることがより好ましく、1.0当量以上であることがさらに好ましく、1.5当量以上であることが最も好ましい。そして、必要に応じて、2.1当量以上、2.2当量以上、2.4当量以上、2.6当量以上、2.8当量以上または3.0当量以上とすることも可能である。また、ホスホン化するポリアニリン化合物に対して、10当量以下であることが好ましく、8当量以下であることがより好ましく、6当量以下であることがさらに好ましく、5当量以下であることが特に好ましく、4当量以下であることが最も好ましい。そして、必要に応じて、3.9当量以下、3.7当量以下、3.6当量以下、3.5当量以下、3.4当量以下、3.3当量以下、3.2当量以下、または3.1当量以下とすることも可能である。
なお、ここで、酸化剤のポリアニリン化合物に対する当量は、ポリアニリン化合物中に存在するホスホン酸残基が導入され得る場所の総数の計算値(例えば、非置換ポリアニリンであればアニリンモノマー残基の数の4倍)に対する酸化剤のモル数として計算される。例えば、過硫酸塩などの、1モルの化合物が2モルの水素を引き抜くことができる酸化剤であれば、その酸化剤の0.5モルが1当量である。
(塩基)
本発明の平尾反応によるホスホン化は塩基を用いて行ってもよい。
塩基としてはトリエチルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、酸化プロピレン等が挙げられ、特にトリエチルアミン、炭酸セシウムが好ましい。
(溶媒)
本発明のホスホン化の反応は、必要に応じて溶媒を用いて行ってもよい。好ましい溶媒としては水、アンモニア水、塩酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、アセトン、2−ブタノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと表記する)等が挙げられる。水およびNMPが特に好ましい。
(反応温度)
本発明の方法において、ホスホン化の反応温度は特に限定されない。好ましくは、20℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは40℃以上である。また、好ましくは、200℃以下であり、より好ましくは160℃以下であり、いっそう好ましくは130℃以下であり、さらに好ましくは、120℃以下である。反応温度が好ましい範囲内であれば、高い収率で含リンポリアニリンエステルを得ることができる。
(反応時間)
本発明の方法において、ホスホン化の反応時間は特に限定されない。各々の条件において、反応するのに充分な時間を適宜選択すればよい。反応が充分に進行していれば、反応時間の違いが本願の効果に大きな影響を及ぼすことはない。
反応時間は、好ましくは、1時間以上であり、より好ましくは、3時間以上であり、さらに好ましくは、6時間以上であり、いっそう好ましくは、9時間以上であり、特に好ましくは12時間以上であり、必要に応じて、15時間以上、18時間以上、21時間以上、または24時間以上とすることも可能である。また、好ましくは、7日間以下であり、より好ましくは、5日以下であり、さらに好ましくは、3日以下であり、いっそう好ましくは、2日以下であり、特に好ましくは36時間以下であり、必要に応じて、30時間以下、28時間以下または26時間以下とすることも可能である。
[加水分解]
本発明の方法においてホスホン化により得られた含リンポリアニリンがエステルである場合、すなわち、ポリアニリン化合物に導入されたホスホン酸残基がエステルである場合には、必要に応じて、そのエステルを加水分解する工程を行うことができる。加水分解を行うことにより、例えば、導電性を有するポリアニリンを得ることができる。
加水分解の方法としては、ホスホン酸エステルを加水分解する方法として公知の任意の方法を採用することができる。例えば、強酸で処理する方法、または強アルカリで処理することなどの方法により、加水分解を行うことができる。強酸としては、例えば、塩酸、硫酸などのプロトン酸、およびトリメチルシリルブロマイドなどのルイス酸などが挙げられる。強アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。ここで、ルイス酸を用いる場合は、例えば、ルイス酸と反応させた後、水と反応させる方法などが好ましく使用可能である。
加水分解の反応温度、反応時間などの反応条件は所望の程度にまで加水分解が進行するように調整すればよく、特に限定されない。例えば、すべてのエステルを加水分解して高い導電性を達成したい場合には、より高い、反応温度、より長い反応時間などを採用することができる。
例えば、加水分解の際の反応温度は、20℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは40℃以上である。また、好ましくは、200℃以下であり、より好ましくは160℃以下であり、いっそう好ましくは130℃以下であり、さらに好ましくは、120℃以下である。反応温度が好ましい範囲内であれば、高い収率で含リンポリアニリンエステルを得ることができる。
また例えば、加水分解の反応時間は、好ましくは、1時間以上であり、より好ましくは、2時間以上であり、さらに好ましくは、3時間以上である。また、好ましくは、2日間以下であり、より好ましくは、1日間以下であり、さらに好ましくは、12時間以下であり、いっそう好ましくは、6時間以下である。
[含リンポリアニリン]
本発明の含リンポリアニリンは、上記方法により製造される。
本明細書において「含リンポリアニリン」は、ポリアニリン化合物をホスホン化することによって得られるものをいう。本発明の含リンポリアニリンは、ホスホン酸残基部分にエステル結合を有さない含リンポリアニリンであってもよく、ホスホン酸残基部分にエステル結合を有する含リンポリアニリンエステルであってもよい。ポリアニリン化合物にホスホン酸エステルが置換基として結合しているものを、本明細書中においてポリアニリンエステルという。含リンポリアニリンエステルは、特に、導電性ポリアニリンを製造するための中間体として有用である。
ポリアニリンの重合度は任意に設定することが可能であり、例えば、4以上、6以上、または8以上とすることが可能であり、また、3,000以下、2,000以下、または1,200以下とすることが可能である。あるいは、下記一般式(1)のkについて記載した重合度とすることが可能である。
同様に、ポリアニリンの分子量は任意に設定することが可能である。例えば、下記一般式(1)のkについて記載した重合度に対応する分子量とすることが可能である。
ポリアニリンの数平均分子量としては、例えば、400以上、600以上、または800以上とすることが可能であり、また、600,000以下、400,000以下、または240,000以下とすることが可能である。
ポリアニリンの重量平均分子量としては、例えば、800以上、1,200以上、または1,600以上とすることが可能であり、また、1,200,000以下、800,000以下、または480,000以下とすることが可能である。
本発明の含リンポリアニリンの製造方法によれば、重合度が高い含リンポリアニリンを容易に得ることが可能である。また、重合度が高い含リンポリアニリンエステルも容易に得ることが可能である。より具体的には、例えば、ホスホン化反応を行う原料として重合度の高いポリアニリン化合物を使用することにより、容易に重合度の高い含リンポリアニリンを得ることができる。
含リンポリアニリンは、例えば、一般式(1)で表される:
−(A− (1)
ここで、Aはそれぞれ独立してアニリンモノマー残基である。kは重合度であって、任意の正の整数である。具体的には、例えば、4以上、10以上、100以上、500以上、1,000以上または2,000以上とすることが可能であり、また例えば、10,000以下、5,000以下、4,000以下または3,000以下とすることが可能である。一般式(1)のポリアニリンの分子量は、重合度に対応する量になる。なお、数平均分子量および重量平均分子量について、本明細書中のポリアニリンに関して上述した説明は一般式(1)のポリアニリンにも当てはまる。
隣接するアニリンモノマー残基どうしは、パラ位置で結合している。すなわち、第1のアニリンモノマー残基に第2のアニリンモノマー残基が結合し、そして第2のアニリンモノマー残基に第3のアニリンモノマー残基が結合している場合、第1のアニリンモノマー残基と第3のアニリンモノマー残基は、第2のアニリンモノマー残基中のベンゼン環においてパラの位置関係にある。
具体的には、上記一般式(1)は、例えば、以下の一般式(1a)で記載され得る。
一般式(1a)中、R、M、M、m、n、kは上記と同じである。
ただし、ポリアニリンについては、その骨格構造が上記一般式(1a)のような構造に限定されないことが知られている。そのため、本明細書中のポリアニリンの骨格構造は、一般式(1a)の基本構造に限定されるものではない。
具体的には、一般的に、ポリアニリンは下記一般式(1b)の還元型単位のフェニレンジアミン骨格の繰り返し単位および
下記一般式(1c)の酸化型単位のキノンジイミン骨格の繰り返し単位の2種類の繰り返し単位をその骨格に有することが知られている。
したがって、本明細書中のポリアニリン中のアニリン残基は、上記一般式(1b)または(1c)に示されるような骨格構造を有するものでもあり得る。
そして、本明細書中のポリアニリンは、下記一般式(1d):
の繰り返し単位を有する構造を有するものであり得る。
一般式(1d)中、Rは上記定義と同じであり、M1aは上記Mと同じであり、M2aは上記Mと同じであり、M1bは上記Mと同じであり、M2bは上記Mと同じである。mおよびmは上記mと同じであり、nおよびnは上記nと同じである。
また、特許文献1には、以下の4種類のポリアニリンが説明されている。
本発明のポリアニリンも、これらの構造を取ることが可能である。
また、本発明のポリアニリンは、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の繰り返し単位または成分を含んでいてもよい。例えば、下記一般式(1e):
(式中、Rは上記定義と同じであり、M1cおよびM2cは各々独立して、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびアンモニウム基、ピリジニウム基よりなる群から選ばれた少なくとも1つである。mは0〜4の整数であり、nは0〜4の整数である。但し、mとnの和は4以下である。)
で表される繰り返し単位などを含むことができる。
なお、ポリアニリンの構造を一般式で記載する場合、その両末端を省略することが一般的であるので、本明細書においても、原則として、ポリアニリンの構造を記載する際には両末端は省略する。しかしながら、例えば、上記一般式(1)に敢えて両末端基を記載すれば、以下の一般式(1f)となる。
−(A−E (1f)
ここで、EおよびEはそれぞれ末端基である。通常は、一方が重合開始末端であって他方が重合終了末端である。
ポリアニリンの末端の構造は、完全には解明されていない。アニリンモノマーの化学構造から単純に予想されるように、アニリンモノマーのアミン部分が別のアニリンモノマーのパラ位に結合するという反応が起こる場合であれば、ポリアニリンの一方の末端のアニリンモノマー残基においては、パラ位の水素がそのまま残存して末端を形成し、他方の末端のアニリンモノマー残基においては、アミノ基がそのまま残存して末端を形成すると考えられる。この場合、上記式(1)に敢えて両末端の水素(一方の末端のパラ位の水素および他方の末端のアミノ基の水素)を記載すると、以下の一般式(1g)で表される。
[H−(A−H] (1g)
他方、例えば、特許文献1には、アニリンの重合の初期段階においてフェナジン環構造を有するアニリンオリゴマーが生成し、そのオリゴマー残基がポリマーの重合開始側末端となることが説明されている。しかし、このように繰り返し単位におけるモノマー残基の構造と異なる構造が末端に存在する場合においても、そのポリアニリンの末端基の種類がポリアニリンの性能に与える影響は小さいので、末端基の構造は無視することができる。
ポリアニリン中のモノマー残基(上記一般式(1)中の「A」、一般式(2)中の「A」)は、すべて同一であっても良く、複数種類であっても良い。すなわち、ホモポリマーであっても良く、コポリマーであっても良い。コポリマーであることが好ましい。また、コポリマーはブロックコポリマーであっても良く、ランダムコポリマーであっても良い。ランダムコポリマーにおいては、複数種類のモノマー残基が無秩序に並ぶ。なお、上述した特許文献1などに記載されているとおり、アニリンモノマーを酸化重合して得られるポリアニリンは、一定の規則的な繰り返し単位を有する構造となることが知られている。本発明の製造方法においても、そのような規則性を有するポリアニリンが生成され得ると考えられるものであり、そのような規則性を有するポリアニリンを本発明の製造方法の目的とするポリマーとして使用することができる。
ポリアニリンが、少なくともホスホン酸基(−PO)またはホスホン酸一水素塩基(−POHM、ここでMは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択される)を有するモノマー残基を含む場合、ホスホン酸基またはホスホン酸一水素塩基は、その水素原子により、ポリアニリン主鎖の窒素に対してドーピングすることが可能である。
なお、本明細書中においてホスホン酸一水素塩基とは、ホスホン酸一水素塩の構造を有する基を意味する。すなわち、ホスホン酸基の2つの水素のうち、1つの水素のみが金属原子等で置換されて塩となり、他方の水素がそのまま残っている基をいう。
本発明の1つの実施形態において、含リンポリアニリンは、自己ドーピング性を有する導電性ポリアニリンである。
自己ドーピング性を有する導電性ポリアニリンにおいては、ホスホン酸残基に水素が存在することが必要である。含リンポリアニリン中の水素が存在するホスホン残基の数は、任意に選択することができる。水素が存在するホスホン残基の比率は、含リンポリアニリン中に存在するアニリンモノマー残基の数を100%として、例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上から選択することが可能である。あるいは、100%としてもよい。また、何らかの理由により、水素の含有量を制御することが所望される場合には、水素が存在するホスホン酸残基の数が抑制されるように設計することもできる。そのような場合には、含リンポリアニリン中に存在するアニリンモノマー残基の数を100%として、例えば、その比率を95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、または70%以下に設計することが可能である。
また、ホスホン酸残基の総数に対する水素が存在するホスホン酸残基の比率も任意に設計することができる。含リンポリアニリン中に存在するホスホン酸残基の数を100%として、水素が存在するホスホン酸残基の比率を、例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上から選択することが可能である。あるいは、100%としてもよい。また、何らかの理由により、水素の含有量を制御することが所望される場合には、水素が存在するホスホン酸残基の数が抑制されるように設計することもできる。そのような場合には、含リンポリアニリン中に存在するホスホン酸残基の数を100%として、例えば、その比率を95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、または70%以下に設計することが可能である。
(イオン交換)
導電性ポリアニリンは、ホスホン化を行う際に、水素が存在するホスホン酸残基が所望の量導入されるように反応材料を調節しても良い。例えば、所望の量の水素が存在するホスホン酸残基が所望の量導入されるようにホスファイト化合物の種類および量を選択することができる。
また、本発明の方法により得られたポリアニリンには、必要に応じて、イオン交換を行ってドープの量を調節しても良い。イオン交換は酸性水溶液やイオン交換樹脂などにより行うことが出来る。
すなわち、得られたポリアニリンのホスホン酸またはホスホン酸一水素塩の水素がポリマー全体として所望の量よりも少ない場合には、ホスホン酸に結合している金属イオンやピリジニウムイオンやアンモニウムイオンを水素イオンにイオン交換することにより、ドープの効果を大きくすることができる。
また逆に、重合により得られたポリアニリンのホスホン酸またはホスホン酸一水素塩の水素がポリマー全体として所望の量よりも多すぎる場合には、ホスホン酸またはホスホン酸一水素塩の水素イオンを他のイオン(例えば、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等)にイオン交換することにより、ドープの効果を小さくすることができる。
イオン交換は、ポリアニリンを合成した後に行うことができる。上記精製の操作と同時に行うことも可能であり、精製の操作より前に行ってもよく、精製の操作の後に行ってもよい。例えば、ろ過により精製を行う際には、ろ過を行うカラムにイオン交換樹脂を充填しておけば、ろ過による精製と同時にイオン交換を行うことができる。
イオン交換の方法としては、従来公知のイオン交換の方法が使用可能である。
[含リンポリアニリンエステル]
本発明の1つの実施形態において、含リンポリアニリンは、エステル結合を有する含リンポリアニリンエステルである。含リンポリアニリンエステルは、特に、導電性ポリアニリンを製造するための中間体として有用である。
含リンポリアニリンエステルは、その分子中の少なくとも1つのホスホン酸残基に1つまたは2つのエステル結合が存在する。すなわち、上記一般式(1)の各Aに存在するホスホン酸残基R中のMおよびMのうちの1つまたは両方が炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基または炭素数6〜30のアリール基から選択されて、エステル結合を形成する。MおよびMのうち1つのみがエステルである構造について、本明細書中では、モノエステルという。MおよびMの両方がエステルである構造について、本明細書中では、ジエステルという。
含リンポリアニリンエステルは、エステルを有すること以外は、基本的に上述した含リンポリアニリンと同様であるので、上述した含リンポリアニリンについての説明は、基本的に含リンポリアニリンエステルにもあてはまる。
導電性ポリアニリンを製造するための中間体としては、モノエステルおよびジエステルの両方を使用することができるが、ジエステルが合成の容易さなどの点で好ましい。エステルを形成する上記MおよびMの種類としては、アルキルまたはアラルキルが好ましく、アルキルがより好ましい。具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基およびペンタデシル基などが挙げられる。エステルを形成する上記MおよびMの種類としては、さらに好ましくは、炭素数が1〜6のアルキルであり、特に好ましくは、炭素数が1〜4のアルキルである。
含リンポリアニリンエステル中のすべてのホスホン酸残基にジエステルが存在しない場合、すなわち、すべてのエステルがモノエステルである場合の1つの実施形態においては、少なくとも1つのホスホン酸残基がエチルエステル以外のエステルである。
含リンポリアニリンエステルは、1つの好ましい実施形態においては、ポリアニリン化合物をホスホン化することによって得られる。例えば、ポリアニリン化合物にホスファイトを反応させることによって得られる。反応させるホスファイトとしては、具体的には、例えば、上記一般式(3)のホスファイトまたは一般式(4)のホスファイトが挙げられる。一般式(3)のホスファイトにおいて、M〜Mのうちの少なくとも1つを炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、または炭素数6〜30のアリール基とすることにより、あるいは、一般式(4)のホスファイトにおいて、M〜Mのうちの少なくとも1つを炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、または炭素数6〜30のアリール基とすることにより、得られる含リンポリアニリンにエステルを導入することができる。
含リンポリアニリンエステルも、上述した一般式(1)で表すことができる:
−(A− (1)
各Aは各々独立してm個のホスホン酸残基Rとn個の置換基Rとを有し、
ホスホン酸残基Rは、以下の式で表される:
ただし、含リンポリアニリンエステル中のk個のアニリンモノマー残基Aのうちの少なくとも1つにエステル結合を有するホスホン酸残基が存在する。エステルが存在するホスホン残基の数は、任意に選択することができる。エステルが存在するホスホン残基の比率は、含リンポリアニリンエステル中に存在するアニリンモノマー残基の数を100%として、例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上から選択することが可能である。あるいは、100%としてもよい。また、何らかの理由により、エステルの含有量を制御することが所望される場合には、エステルが存在するホスホン酸残基の数が抑制されるように設計することもできる。そのような場合には、例えば、その比率を95%以下、90%以下、85%以下、または80%以下に設計することが可能である。
また、エステル結合を有するホスホン酸残基は、上述したとおりモノエステルであってもジエステルであってもよい。例えば、含リンポリアニリンエステル中のエステル結合を有するホスホン酸残基のすべてがモノエステルであってもよく、すべてがジエステルであってもよい。また、モノエステルのホスホン酸残基とジエステルのホスホン酸残基との両方が存在しても良い。モノエステルのホスホン酸残基とジエステルのホスホン酸残基との両方が存在する含リンポリアニリンエステルは、例えば、2種類以上のホスファイト化合物を使用することにより製造することができる。含リンポリアニリンエステル中のモノエステルのホスホン酸残基の数とジエステルのホスホン酸残基の数とは任意に選択することができる。例えば、モノエステルのホスホン酸残基の数とジエステルのホスホン酸残基の数の合計を100%として、ジエステルの数を10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上から選択することが可能である。また、モノエステルの数を10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上から選択することも可能である。
(加水分解して得られるポリアニリン)
上記含リンポリアニリンエステルに対して、加水分解を行えば、エステル部分が分解されて、エステルを含まない含リンポリアニリンが得られる。このようにして得られた、エステルを含まない含リンポリアニリンは、導電性ポリマーとして有用である。
加水分解をして得られた含リンポリアニリンについては、さらに、必要に応じてイオン交換を行って水素を含有するホスホン酸残基の量を調整してもよい。
(用途)
本発明の製造方法により得られる導電性ポリアニリンは、導電性ポリアニリンの用途として従来公知の各種用途に使用することができる。具体的には、例えば、帯電防止剤として使用することができる。
(帯電防止剤)
本発明の製造方法により得られる導電性ポリアニリンを帯電防止剤に使用する方法としては、従来の導電性ポリアニオンが帯電防止剤に用いられていた各種公知の方法を採用することができる。例えば、水あるいはその他適当な溶剤中に、本発明の製造方法により得られるポリアニリンを溶解または分散させたものを基材にコーティングすれば、その基材の表面に帯電防止作用が付与される。基材としては、帯電防止作用が望まれる任意の固体物質が挙げられる。具体例としては、例えば、高分子フィルム、高分子繊維、高分子樹脂成形品などが挙げられる。
コーティング方法としては、従来の導電性ポリアニリンを基材にコーティングする方法として使用されている任意の方法が、本発明の製造方法により得られるポリアニリンにおいても使用可能である。具体例としては、例えば、スピンコート、ディップコートなどが挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定される訳ではない。
[導電性の測定方法]
本発明のポリアニリンの導電性は、その電気伝導度を下記方法で測定することで確認した。
(試験片の作成)
固体1mgを溶媒(99μL;MeOH/HO/0.15M NH3aq=1/1/1)に溶かし、4μLを櫛型Pt電極(BAS社製、櫛間隔:3μm、本数:65対)にドロップキャストし、約2分間アニーリングした。
(電気伝導度の測定)
絶縁抵抗計(CUSTOM社製 CX−180N)を用いて、2端子法により測定した。
[ICP−AES分析方法]
精密天秤で20mg程度のサンプルを正確に秤量し、濃硝酸を加えて100mLにし、ICP(誘導結合プラズマ)発光分析装置(SHIMAZU ICPS−8100)にて測定した。なお、検量線としてブランクとリン標準液を用いて、5ppm、10ppm、または20ppmに調整したものを用いた。
[紫外可視近赤外吸収スペクトル測定方法]
適当量のサンプルをNMPに溶解させたものをセル長1cm石英セルに加え、紫外可視近赤外吸収スペクトル装置(JASCO V−670)を用いて測定した。薄膜のスペクトルは、固体1mgを溶媒(100μL;MeOH/HO/0.15M NH3aq=1/1/1)に溶かし、50μLをスライドグラスにドロップキャストし、100℃で3分間アニーリングした後、紫外可視近赤外吸収スペクトル装置(JASCO V−670)を用いて測定した。
[平尾反応によるホスホン化]
(実施例1)
ChemiStation Personal Synthesizer PPS−CTRL1(EYELA社製)用容器(φ24)に回転子を入れ、フレームドライを行った。反応容器内を窒素置換し、ポリブロモアニリン118.7mg(0.69mmol(アニリンユニット基準)、Synthetic Metals 2004,142,41−48.に従って合成したもの)、炭酸セシウム244.5mg(0.75mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)36mg(0.03mmol)の順に加えた。続いて、容器内にNMP2mLを加え、撹拌した。その後、亜リン酸ジエチル0.44mL(2.97mmol)を加え、ChemiStation Personal Synthesizer PPV(EYELA社製)を用いて120℃に昇温し、撹拌を続けた。反応開始から2日後、コニカルビーカーに脱イオン水100mLを注いでおき、そこへ反応溶液を脱イオン水で洗い込みながら加えた。その後、1M塩酸10mlを用いて酸処理し、吸引濾過により黒色固体を得た。得られた固体を終夜、加熱下(40℃)で真空乾燥した。固体の収量は81.1mgであった。
ICP−AES分析の結果、ホスホン酸エステルがアニリンユニット(1つのアニリンモノマー残基)に2つ以上導入されないと仮定すると全アニリンユニットのうち71%に導入されているのに等しい含有量が示された(すなわち、アニリンユニットの総数を100%として、71%の数のホスホン酸エステル残基がポリアニリン化合物に導入された)。
Anal Calcd for C10NOP(モノマー構造):
C,48.25;H,5.06;N,7.03%.
Found C,53.13;H,5.53;N,6.36;Br,1.48%。
[酸化によるホスホン化]
(実施例2)
ポリ(アミノフェニルホスホン酸ジエチル)
ChemiStation Personal Synthesizer PPV(EYELA社製)用容器(φ60)に回転子を入れ、ポリアニリン1.81g(5.0mmol(アニリン4量体基準)、SIGMA−ALDRICH:ポリアニリン(エメラルディン塩基)、重量平均分子量約10000)を加えた。続いて、容器内にNMP100mLを加え、撹拌した。その後、5分間超音波を照射した。そこへ、過硫酸アンモニウム1.71g(7.5mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。30分後、脱イオン水900μL(50mmol)、亜リン酸トリエチル26.0mL(155mmol)の順に添加し、ChemiStation Personal Synthesizer PPV(EYELA社製)を用いて60℃に昇温し、撹拌を続けた。昇温して撹拌する際、還流管を取り付け、空冷した。昇温してから1時間後、脱イオン水1000mLが入っているコニカルビーカーの中へ反応溶液を注いだ。その後、吸引濾過により黒緑色の固体を得た。続いて、脱ドープを行うため、0.15mol/Lアンモニア水400mLが入っているコニカルビーカーに得られた固体を入れ、撹拌し、超音波照射を10分間行った。その後、吸引濾過により黒青色の固体を得た。次に、脱イオン水400mLが入っているコニカルビーカーに脱ドープ後の固体を入れ、撹拌し、超音波照射を10分間行った。その後、吸引濾過により黒青色の固体を得た。また、得られた固体をコニカルビーカーに移し、そこへジエチルエーテルを200mL注ぎ、撹拌し、吸引濾過を行うことで黒青色の固体を得た。得られた固体を終夜、加熱下(40℃)で真空乾燥した。固体の収量は2.49gであった。
ICP−AES分析の結果、ホスホン酸エステルがアニリンユニット(1つのアニリンモノマー残基)に2つ以上導入されないと仮定すると全アニリンユニットのうち50%に導入されているのに等しい含有量が示された。溶液状態の紫外可視近赤外吸収スペクトル測定の結果を図1に記す。紫外可視近赤外吸収スペクトルより、ポリアニリンの特徴的なエメラルディン塩基の電荷移動バンドが形成された目的化合物が得られた。
(ホスホン酸基導入率の向上)
(実施例3)
ポリ(アミノフェニルホスホン酸ジエチル)
ChemiStation Personal Synthesizer PPS−CTRL1(EYELA社製)用容器(φ34)に回転子を入れ、ホスホン化ポリアニリン214.5mg(0.34mmol(アニリン4量体基準)、実施例2で合成したもの)を加えた。続いて、容器内にNMP20mLを加え、撹拌した。その後、5分間超音波を照射した。そこへ、過硫酸アンモニウム119.8mg(0.53mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。30分後、脱イオン水63μL(3.5mmol)、亜リン酸トリエチル1.82mL(10.9mmol)の順に添加し、ChemiStation Personal Synthesizer PPS−CTRL1(EYELA社製)を用いて60℃に昇温し、撹拌を続けた。昇温して撹拌する際、還流管を取り付け、空冷した。昇温してから1時間後、反応溶液を200mLのナスフラスコへ脱イオン水で洗い込みながら移した。その後、蒸留器具を組み立て、真空下で加熱し、溶媒を留去した。溶媒を留去する際、アルカリトラップを使用した。大部分の溶媒を留去した後、トルエンを約40mL加え、超音波を5分間照射した。その後、再び真空下で加熱し、溶媒を留去した。続いて、ナスフラスコ内の固体に脱イオン水を加え、吸引濾過により黒緑色の固体を得た。続いて、脱ドープを行うため、0.15mol/Lアンモニア水200mLが入っているコニカルビーカーに得られた固体を入れ、撹拌し、超音波照射を10分間行った。その後、吸引濾過により黒色の固体を得た。次に、脱イオン水200mLが入っているコニカルビーカーに脱ドープ後の固体を入れ、撹拌し、超音波照射を10分間行った。その後、吸引濾過により黒色の固体を得た。また、得られた固体をジエチルエーテル約200mLで洗浄した。得られた固体を終夜、加熱下(40℃)で真空乾燥した。固体の収量は104.6mgであった。
ICP−AES分析の結果、ホスホン酸エステルがアニリンユニット(1つのアニリンモノマー残基)に2つ以上導入されないと仮定すると全アニリンユニットのうち68%に導入されているのに等しい含有量が示された。溶液状態の紫外可視近赤外吸収スペクトル測定の結果を図2に記す。紫外可視近赤外吸収スペクトルより、ポリアニリンの特徴的なエメラルディン塩基の電荷移動バンドが形成された目的化合物が得られた。
(加水分解)
(実施例4)
ポリ(アミノフェニルホスホン酸)
ChemiStation Personal Synthesizer PPS−CTRL1(EYELA社製)用容器(φ24)に回転子を入れ、フレームドライを行った。反応容器内を窒素置換し、ホスホン化ポリアニリン200mg(0.33mmol(アニリン4量体基準)、実施例2で合成したもの)を加えた。そこへ、アセトニトリル20mL(超脱水)とトリメチルシリルブロマイド2.2mL(16.8mmol)を添加した。ChemiStation Personal Synthesizer PPS−CTRL1(EYELA社製)を用いて、90℃に昇温し、撹拌して、反応させた。反応開始から3時間半後、コニカルビーカーに脱イオン水300mLを注いでおき、そこへ反応溶液を脱イオン水で洗い込みながら加えた。その後、アルカリトラップを使用し、吸引濾過により黒色固体を得た。得られた固体を終夜、加熱下(40℃)で真空乾燥した。固体の収量は117.2mgであった。
ICP−AES分析の結果、ホスホン酸がアニリンユニット(1つのアニリンモノマー残基)に2つ以上導入されないと仮定すると全アニリンユニットのうち46%に導入されているのに等しい含有量が示された。
また、得られた固体の導電性は上記「導電性の測定方法」に記載した方法により測定した。抵抗値を測定した結果、シート抵抗は2.3×10Ω/□であった。ドロップキャスト膜の紫外可視近赤外吸収スペクトル測定の結果を図3に記す。紫外可視近赤外吸収スペクトルより、近赤外域まで吸収が見られたことから自己ドープした導電性の目的化合物が得られた。


本発明の製造方法は、特許文献1に記載された方法に比べ合成にかかるステップ数が少なく、精製手段も容易である。さらに、本発明の製造方法で得られた導電性ポリマーは、良好な導電性を得ることができる。本発明の製造方法は、特許文献1における方法と比べて、より簡便で実用的な方法であることがわかる。
本発明によれば、新規な含リンポリアニリンを従来の方法よりも容易に、高収率かつ安価に得ることができる。また、得られた含リンポリアニリンのひとつは水溶性という特徴を有し、π電子系を介する電子伝導性とイオン伝導性を有する導電性ポリマーであり、キャスト法により高導電性ポリマー薄膜となる。
本発明の1つの実施形態によれば、自己ドーピング機能を持つ、ホスホン酸基を有するポリアニリンを容易に得ることができる。さらに、本発明によれば、従来の方法よりも簡単に、高収率かつ安価にポリアニリンを製造することができる。本発明の方法により得られたホスホン酸基を有するポリアニリンは高い導電性を示し、帯電防止剤として有用である。
本発明の1つの実施形態によれば、自己ドーピング機能を持つ、ホスホン酸基を有するポリアニリンを製造するための中間体を容易に得ることができる。
本発明の製造方法により得られるポリマーは、帯電防止剤、静電気防止剤、プラスチック電極の電極材料、EMI材料、有機強磁性体、各種センサー、燃料電池用触媒、太陽光発電用正孔輸送材料等の様々な用途に適用することができる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。

Claims (16)

  1. 下記一般式(1):
    −(A− (1)
    で表される含リンポリアニリンエステルであって、ここで、
    は置換もしくは非置換アニリンモノマー残基であって、
    各Aは各々独立してm個のホスホン酸残基Rとn個の置換基Rとを有し、
    ホスホン酸残基Rは、以下の式で表され:

    式中、
    およびMは各々独立して炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素数6〜30のアリール基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択され、
    とMは同じであってもよく異なってもよく、
    ただし、該含リンポリアニリンエステル中の少なくとも1つのRにおいて、Mは炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基または炭素数6〜30のアリール基であり、
    ただし、該含リンポリアニリンエステル中のすべてのエステルがエチルエステルである場合には、少なくとも1つのRにおいて、MおよびMが共にエチル基であり、
    また、MまたはMのうちの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのR基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMまたはMのうちの他方が存在しない構造となるか、または、2つのR基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となり、
    Rは、各々独立してハロゲン原子、炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素原子数1〜15のアルコキシ基、炭素原子数1〜15のアルキルチオ基、炭素原子数1〜15のアルキルアミノ基、カルボキシル基、エステル残基の炭素原子数が1〜15のカルボン酸エステル基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選ばれた少なくとも1つであり、
    mは各々独立して0〜4の整数であり、ただし、該含リンポリアニリンエステル中のmの合計は1以上であり、
    nは各々独立して0〜3の整数であり、
    それぞれのアニリンモノマー誘導体残基において各々独立してmとnの和は4以下であり、
    kは4〜3000の整数である、
    含リンポリアニリンエステル。
  2. 少なくとも1つのRにおいてMおよびMが両方とも、炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基または炭素数6〜30のアリール基である、請求項1に記載の含リンポリアニリンエステル。
  3. 前記含リンポリアニリンエステル中に導入されたホスホン酸残基の数が、アニリンモノマー残基の数に対して10%以上である、請求項1または2に記載の含リンポリアニリンエステル。
  4. およびMは各々独立して炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素数6〜30のアリール基および水素原子からなる群から選択される、請求項1に記載の含リンポリアニリンエステル。
  5. 含リンポリアニリンを製造する方法であって、
    下記一般式(2):
    −(A− (2)
    で表されるポリアニリン化合物に、ホスホン化反応を行って含リンポリアニリンを得る工程
    を包含し、ここで、
    は置換もしくは非置換アニリンモノマー残基であって、
    各Aは各々独立してn個の置換基Rを有し、
    R、nおよびkは請求項1中の定義と同じである、
    方法。
  6. 請求項5に記載の方法であって、前記ホスホン化反応がホスファイト化合物を用いて行われ、ここで、
    該ホスファイト化合物が、下記一般式(3):

    で表される化合物であって、ここで、M〜Mは同じであってもよく、異なってもよく、それぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素数6〜30のアリール基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択され、
    ただし、M〜Mのうちの1つがアルカリ土類金属である場合には、2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてM〜Mの残りの2つのうちの1つが存在しない構造となるか、あるいは、
    該ホスファイト化合物が下記一般式(4):

    で表される化合物であって、ここで、MおよびMは同じであってもよく、それぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素数6〜30のアリール基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択され、
    ただし、MおよびMのうちの一方がアルカリ土類金属である場合には、2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMおよびMのうちの他方が存在しない構造となる、
    方法。
  7. 前記ホスホン化において、前記一般式(2)で表されるポリアニリン化合物を酸化させて、前記一般式(3)で表されるホスファイト化合物と反応させる、請求項6に記載の方法。
  8. 前記ホスホン化において、前記一般式(2)で表されるポリアニリン化合物を、平尾反応により、一般式(4)で表されるホスファイト化合物と反応させる、請求項6に記載の方法。
  9. 請求項8に記載の方法であって、
    前記置換もしくは非置換アニリンモノマー残基の合計のうちの10%以上が、置換基Rとしてハロゲンを含む置換アニリンモノマー残基である、方法。
  10. 前記ホスホン化の反応温度が20℃〜200℃である請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記ホスファイト化合物を、前記一般式(2)で表されるポリアニリン化合物に対して0.05〜10当量使用してホスホン化を行う、請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 溶媒の存在下で前記ホスホン化を行う請求項5〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記溶媒が、水、アンモニア水、塩酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、アセトン、2−ブタノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエンおよびN−メチル−2−ピロリドンから選ばれた少なくとも1つである請求項12に記載の方法。
  14. 導電性ポリアニリンの製造方法であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の含リンポリアニリンエステルを加水分解する工程を包含する、方法。
  15. 導電性ポリアニリンの製造方法であって、請求項5〜13のいずれか1項に記載の方法を行って請求項1〜4のいずれか1項に記載の含リンポリアニリンエステルを製造する工程、および該含リンポリアニリンエステルを加水分解する工程を包含する、方法。
  16. 請求項14または15に記載の製造方法により製造された導電性ポリアニリン。
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