JP6912060B2 - 含リンチオフェン化合物およびその含リンポリチオフェン化合物、並びにそれらの製造方法。 - Google Patents

含リンチオフェン化合物およびその含リンポリチオフェン化合物、並びにそれらの製造方法。 Download PDF

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Description

本発明は、新規なチオフェン化合物およびそれから得られるポリチオフェン化合物、並びにそれらの製造方法に関する。さらに詳しくは帯電防止剤、静電気防止剤、太陽電池、プラスチック電極の電極材料、EMI材料、有機強磁性体、各種センサーとして期待できる含リンポリチオフェン化合物およびその製造方法に関する。
ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどに代表される導電性高分子は近年“有機エレクトロニクス”分野において盛んに開発が行われている化合物群である。その中でも特許文献1で開示されているPEDOT(poly(3,4−ethylenedioxythiophene))は、良好な導電性、ドーピングされた状態での優れた環境安定性、薄膜として使用した場合の妥当な光透過性を持つことからもっとも一般的に使用されている導電性高分子のひとつである。ただし、PEDOTコーティングとして用いるにはPEDOTとポリアニオン(ポリスチレンスルホン酸塩)すなわちPEDOT−PSSとの混合物を水に分散した水分散液の調製が必要である。ここで、PEDOTは様々な課題を抱えている。例えば、PEDOTは水への溶解性が低いため、水分散液を調製することが難しい。また、水を溶媒として使用することは、多くの電子工業用途には適していない。さらに、高い酸性度を有するため、デバイス表面に塗布した場合にそのデバイス表面を腐食させてしまいやすい。
これらの課題を解決するために、最近になってPEDOTにスルホ基(−S(O)OH)を導入することにより、水溶性を付与させたポリマーが開発されてきている。このポリマーにおいては、スルホ基の導入と同時に自身でドーピングを行うことができるため、ドーピング操作を必要としないというメリットも得ることができる(自己ドープまたは自己ドーピングと呼ばれる)。スルホ基が導入されたPEDOT誘導体は特許文献2〜4および非特許文献1などに開示されている。しかしながら、スルホン酸は強酸であり、また、硫酸の水溶液中の酸解離定数は、−3.00(K)、1.96(K)であることなどからも理解されるとおり、スルホ基の酸性度が高いという特徴を有する。そのため、スルホ基が導入されたPEDOT誘導体をデバイス表面に塗布した場合にそのデバイス表面が腐食しやすい等の悪影響がある。
特開平1−313521号公報 特開2014−28760号公報 特開2014−65898号公報 特開2014−74007号公報
Zottietal,Macromol.Chem.Phys.203,1958(2002)
本発明は、新規なポリチオフェン化合物を提供する。本発明は、優れた導電性を有し、使用したデバイスを腐食することが少ない、新規なポリチオフェン化合物を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、上記課題は、特定構造の含リンチオフェン化合物モノマーを酸化重合させたポリチオフェン化合物により達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の化合物等を提供する。
(項1) 下記一般式(1):
Figure 0006912060
(式中、Lは、−(CH−であり、ここで、nは独立して0〜12である。MおよびMは各々独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム基である。ただし、MまたはMの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMまたはMの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。)
で表される構造単位を含むポリチオフェン化合物。
(項2)
およびMのうちの少なくとも1つが、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびアンモニウム基から選ばれる構造単位を含む、上記項1に記載の化合物。
(項3)
Lは、−CH−である、上記項1または上記項2に記載の化合物。
(項4)
下記一般式(2):
Figure 0006912060
(式中、Lは、−(CH−であり、ここで、nは0〜12である。MおよびMは各々独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム基である。ただし、MまたはMの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMまたはMの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。)
で表される化合物。
(項5)
およびMは各々独立して炭素原子数1〜15のアルキル基である、上記項4に記載の化合物。
(項6)
およびMが水素原子である、上記項4に記載の化合物。
(項7)
Lが、−CH−である、上記項4〜項6のいずれかに記載の化合物。
(項8)
上記項1に記載のポリチオフェン化合物を製造する方法であって、
上記項4〜項7のいずれか1項に記載の化合物を酸化重合する工程を含む、
方法。
(項9)
前記酸化重合が−20℃〜80℃の温度で行われる、上記項8に記載の方法。
(項10)
前記一般式(2)の化合物に対して1〜100当量の酸化剤を使用して前記酸化重合を行う、上記項8または上記項9に記載の方法。
(項11)
溶媒の存在下で前記酸化重合を行う、上記項8〜項10のいずれか1項に記載の方法。
(項12)
前記溶媒が、水、アンモニア水、塩酸、メタノール、エタノール、クロロホルム、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフランおよびトルエンならびにそれらの混合物から選択される、上記項11に記載の方法。
(項13)
上記項4〜項7のいずれか1項に記載の化合物を製造する方法であって、
下記一般式(3):
Figure 0006912060
(式中、Lは、−(CH−であり、ここで、nは0〜12である。Xはハロゲン原子である。)
で表される化合物を、トリアルキルホスファイトまたはトリス(トリアルキルシリル)ホスファイトと反応させて転位生成体を得る工程を含み、
ここで、該トリアルキルホスファイト中の3つのアルキル基のうち、1つが上記項4中で定義されるMと同一であり、もう1つが上記項4中で定義されるMと同一である、
方法。
(項14)
下記一般式(1A):
Figure 0006912060

(式中、Lは、−(CH−であり、ここで、nは独立して0〜12である。MおよびMは各々独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム基である。ただし、MまたはMの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMまたはMの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。
は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、または式(15)で表される基である。
Figure 0006912060

式中、Lは、−(CH−であり、ここで、mは独立して0〜12である。M1cおよびM2cは、各々独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム基である。ただし、M1cまたはM2cの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてM1cまたはM2cの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。)
で表される構造単位を含むポリチオフェン化合物。
(項15)
下記一般式(2D):
Figure 0006912060

(式中、Lは、−(CH−であり、ここで、nは0〜12である。MおよびMは各々独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム基である。ただし、MまたはMの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMまたはMの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。
は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、または式(16)で表される基である。
Figure 0006912060

式中、Lは、−(CH−であり、ここで、mは、0〜12である。M3cおよびM4cは、各々独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム基である。ただし、M3cまたはM4cの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてM3cまたはM4cの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。)
で表される化合物。
(項16)
上記項14に記載のポリチオフェン化合物を製造する方法であって、
上記項15に記載の化合物を酸化重合する工程を含む、
方法。
本発明の含リンポリチオフェン化合物は、優れた導電性を示す。また、本発明の含リンポリチオフェン化合物は、スルホ基を有するポリチオフェン化合物よりもデバイスを腐食させにくい。例えば、硫酸の水溶液中の解離定数(pKa)は、−3.00(K)、1.96(K)であることから理解されるとおり、スルホ基は酸性度が高く、そのため、スルホ基を有する化合物に接触するデバイスを腐食させやすい。他方、リン酸の酸解離定数(pKa)は、1.83(K)、6.43(K)、11.46(K)であることが理解されるとおり、ホスホン酸基は、スルホ基と比較して酸性度が低く、ホスホン酸基を有する化合物に接触するデバイスを腐食させにくい。従って、本発明のポリチオフェン化合物は、スルホ基を有するポリチオフェン化合物よりもデバイスを腐食させることが少ない。そのため、本発明の含リンポリチオフェン化合物は、電子材料分野への応用が期待できる。
図1は、合成例3で得られたポリチオフェン化合物の紫外可視近赤外吸収スペクトルである。
以下、本発明について詳細に説明する。
〔ポリチオフェン化合物〕
本発明におけるポリチオフェン化合物は、下記一般式(1A)で表される構造単位を含むポリチオフェン化合物である。
Figure 0006912060
(式中、Lは、−(CH−であり、ここで、nは独立して0〜12である。nは好ましくは0〜4であり、より好ましくは0〜2である。特に好ましくはnは1である。MおよびMは各々独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム基である。1つの好ましい実施形態において、MおよびMの少なくとも1つは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびアンモニウム基から選ばれる1つである。Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、または式(15)で表される基である。
Figure 0006912060

式中、Lは、−(CH−であり、ここで、mは独立して0〜12である。M1cおよびM2cは、各々独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム基である。ただし、M1cまたはM2cの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてM1cまたはM2cの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。
におけるアルキル基は、直鎖、分岐鎖状または環状のいずれでもよい。環状のアルキル基は、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキル基が結合した構造であってもよい。アルキル基の炭素原子数は1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基およびペンタデシル基などが挙げられる。
におけるアルコキシ基は、直鎖、分岐鎖状または環状のいずれでもよい。環状のアルコキシ基は、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキル基および/または鎖状アルコキシ基が結合した構造であってもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基およびペンタデシルオキシ基などが挙げられる。
におけるアシル基は、直鎖、分岐鎖状または環状のいずれでもよい。環状のアシル基は、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキル基および/または鎖状アシル基が結合した構造であってもよい。アシルの炭素原子数は1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基およびペンタデカノイル基などが挙げられる。
1つの好ましい実施形態において、Rは、水素原子である。)
およびMは、同一であってもよく、互いに異なってもよい。1つの好ましい実施形態においては、MおよびMは、同一である。M1cおよびM2cは、同一であってもよく、互いに異なってもよい。1つの好ましい実施形態においては、M1cおよびM2cは、同一である。
なお、一般式(1A)は、Rが存在すること以外は、一般式(1)と同一であるので、本明細書中において、Rの説明以外は、一般式(1A)の説明は一般式(1)の説明でもある。
上記一般式(1A)中、MおよびMならびにM1cおよびM2cにおけるアルキル基は、直鎖または分岐鎖状のどちらでもよく、炭素原子数が1〜12であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜5であることが特に好ましい。さらに好ましい実施形態ではアルキル基の炭素原子数が2である。アルキル基の炭素原子数が好ましい範囲内であれば導電性の良好なポリチオフェン化合物が得られる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基およびペンタデシル基などが挙げられる。
上記一般式(1A)中、MおよびMならびにM1cおよびM2cにおけるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムなどが挙げられる。原料の金属化合物の入手のし易さや操作性の観点から、好ましくはナトリウムおよびカリウムである。
上記一般式(1A)中、MおよびMならびにM1cおよびM2cにおけるアルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムなどが挙げられる。原料の金属化合物の入手のし易さや操作性の観点から、好ましくはマグネシウムおよびカルシウムである。ただし、MまたはMの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMまたはMの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。すなわち、分子内で架橋する構造となるか、または2分子を架橋する構造となる。また、M1cまたはM2cの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてM1cまたはM2cの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。すなわち、分子内で架橋する構造となるか、または2分子を架橋する構造となる。
上記一般式(1A)中、MおよびMは全てアルキル基であっても良いが、導電性の観点から、少なくとも1つは水素原子、アルカリ金属およびアルカリ土類金属であることが好ましい。少なくとも1つが水素原子であることが特に好ましい。また、MおよびMは水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のいずれかのみで構成されていてもよいが、ポリチオフェンを用いたデバイスへの腐食性の観点から、少なくとも1つはアルキル基であることが好ましい。また、M1cおよびM2cは全てアルキル基であっても良いが、導電性の観点から、少なくとも1つは水素原子、アルカリ金属およびアルカリ土類金属であることが好ましい。少なくとも1つが水素原子であることが特に好ましい。また、M1cおよびM2cは水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のいずれかのみで構成されていてもよいが、ポリチオフェンを用いたデバイスへの腐食性の観点から、少なくとも1つはアルキル基であることが好ましい。
1つの実施形態において、本発明のポリチオフェン化合物は、上記一般式(1A)の構成単位のみから構成されても良い。上記一般式(1A)の構成単位のみからポリマーが構成されれば、その有利な特性を高く発揮させることができる。
別の実施形態において、本発明のポリチオフェン化合物は、本発明の効果を阻害しない範囲で上記一般式(1A)の構成単位以外の構成単位を含んでいても良い。例えば、従来公知のポリチオフェン化合物中の構成単位を、上記一般式(1A)の構成単位に加えて含んでもよい。具体的には、例えば、リンを含まないポリチオフェン化合物中の構成単位を含んでもよい。そのようなリンを含まないポリチオフェン化合物としては、例えば、PEDOTや、PEDOTにスルホ基が導入されたポリマーなどが挙げられる。
ただし、上記他種構成単位の含有量が多すぎると、本発明の利点が損なわれることになるので、他種構成単位の含有量は多すぎないことが好ましい。他種構成単位の含有量は、構成単位の合計のうちの40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましく、10モル%以下であることがいっそう好ましく、5モル%以下であることがひときわ好ましく、3モル%以下であることが特に好ましく、1モル%以下であることが最も好ましい。
本発明の1つの好ましい実施形態においては、ポリチオフェン化合物は、自己ドーピング性を有する導電性ポリチオフェン化合物である。
自己ドーピング性を有する導電性ポリチオフェン化合物においては、ホスホン酸残基に水素が存在することが必要である。ポリチオフェン化合物中の水素が存在するホスホン残基の数は、任意に選択することができる。水素が存在するホスホン残基の比率は、ポリチオフェン中に存在するチオフェンモノマー残基の数を100%として、例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上から選択することが可能である。あるいは、100%としてもよい。また、何らかの理由により、水素の含有量を制御することが所望される場合には、水素が存在するホスホン酸残基の数が抑制されるように設計することもできる。そのような場合には、ポリチオフェン化合物中に存在するチオフェンモノマー残基の数を100%として、例えば、その比率を95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、または70%以下に設計することが可能である。
また、ホスホン酸残基の総数に対する水素が存在するホスホン酸残基の比率も任意に設計することができる。ポリチオフェン中に存在するホスホン酸残基の数を100%として、水素が存在するホスホン酸残基の比率を、例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上から選択することが可能である。あるいは、100%としてもよい。また、何らかの理由により、水素の含有量を制御することが所望される場合には、水素が存在するホスホン酸残基の数が抑制されるように設計することもできる。そのような場合には、ポリチオフェン化合物中に存在するホスホン酸残基の数を100%として、例えば、その比率を95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、または70%以下に設計することが可能である。
上述したホスホン酸残基の水素の比率は、ポリチオフェン化合物を製造する際に使用するチオフェン化合物の種類、加水分解の反応条件、およびイオン交換の条件などを調整することによって制御することができる。
自己ドーピング性を有する導電性ポリチオフェン化合物は、後述する方法を用いて製造することができる。後述する一般式(2A)のジエステル化合物を作製する工程、および一般式(2A)のジエステル化合物を重合する工程、および得られたポリマーを加水分解する工程を含む方法を採用することが好ましい。
(分子量)
本発明のポリチオフェン化合物の分子量は、特に限定されない。本発明のポリチオフェン化合物の重量平均分子量は、好ましくは、1千以上であり、より好ましくは2千以上である。さらに好ましくは3千以上である。本発明のポリチオフェン化合物の重量平均分子量は、好ましくは、50万以下であり、より好ましくは20万以下である。さらに好ましくは10万以下である。
(ポリチオフェン)
ポリチオフェン化合物は、例えば、一般式(12)で表される:
−(A)− (12)
ここで、Aはそれぞれ独立してチオフェンモノマー残基である。qは重合度であって、任意の正の整数である。具体的には、例えば、3以上、6以上または10以上とすることが可能であり、また、2,000以下、1,000以下、800以下または400以下とすることが可能である。
なお、ポリチオフェン化合物の構造を一般式で記載する場合、その両末端を省略することが一般的であるので、本明細書においても、原則として、ポリチオフェン化合物の構造を記載する際には両末端は省略する。しかしながら、例えば、上記一般式(12)に敢えて両末端基を記載すれば、以下の一般式(12A)となる。
−(A)−E (12A)
ここで、EおよびEはそれぞれ末端基である。通常は、一方が重合開始末端であって他方が重合終了末端である。
ポリチオフェン化合物中のモノマー残基(上記一般式(12)中の「A」)は、すべて同一であっても良く、複数種類であっても良い。すなわち、ポリチオフェン化合物は実質的に上記一般式(1A)の構造単位のみからなるホモポリマーであっても良く、その他の構造単位を含むコポリマーであっても良い。また、コポリマーはブロックコポリマーであっても良く、ランダムコポリマーであっても良い。ランダムコポリマーにおいては、複数種類のモノマー残基が無秩序に並ぶ。
ポリチオフェン化合物は、好ましくは、ホスホン酸基[−P(O)(OH)]、ホスホン酸モノアルキルエステル基[−P(O)(OH)(OR)、ここでRは炭素原子数1〜15のアルキル基である]またはホスホン酸一水素塩基[−P(O)(OH)(OM)、ここでMは、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウム基である]を有するモノマー残基を含む。ホスホン酸基、ホスホン酸モノアルキルエステル基またはホスホン酸一水素塩基は、その水素原子により、ポリチオフェン主鎖の硫黄に対してドーピングすることが可能である。
なお、本明細書中においてホスホン酸一水素塩基とは、ホスホン酸一水素塩の構造を有する基を意味する。すなわち、ホスホン酸基の2つの水素のうち、1つの水素のみが金属原子等で置換されて塩となり、他方の水素がそのまま残っている基をいう。
〔チオフェン化合物〕
本発明のチオフェン化合物は、下記一般式(2D)で表される化合物である。
Figure 0006912060
上記一般式(2D)中、Lは、−(CH−であり、ここで、nは0〜12である。MおよびMは、各々独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム基である。ただし、MまたはMの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMまたはMの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。
は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、または式(16)で表される基である。
Figure 0006912060

は、−(CH−であり、ここで、mは0〜12である。M3cおよびM4cは、各々独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム基である。ただし、M3cまたはM4cの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてM3cまたはM4cの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。
上記MおよびMならびにM3cおよびM4cにおけるアルキル基は、直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基のどちらでもよい。炭素原子数が1〜12であることが好ましく、炭素原子数が1〜8であることが更に好ましく、炭素原子数が1〜5であることが特に好ましい。炭素原子数が2であることが最も好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基およびペンタデシル基などが挙げられる。上記範囲であれば酸化重合反応の進行がスムーズであり、本発明のポリチオフェン化合物を得ることが容易になる。
上記MおよびMならびにM3cおよびM4cにおけるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムなどが挙げられる。原料の金属化合物の入手のし易さや操作性の観点から、好ましくはナトリウムおよびカリウムである。
上記MおよびMならびにM3cおよびM4cにおけるアルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムなどが挙げられる。原料の金属化合物の入手のし易さや操作性の観点から、好ましくはマグネシウムおよびカルシウムである。ただし、MまたはMの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMまたはMの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。すなわち、分子内で架橋する構造となるか、または2分子を架橋する構造となる。また、M3cまたはM4cの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてM3cまたはM4cの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。すなわち、分子内で架橋する構造となるか、または2分子を架橋する構造となる。
チオフェン化合物の酸化重合反応のし易さを考慮すると、MもしくはMのどちらか一方はアルキル基であることが好ましく、MおよびMの両方がアルキル基であることが更に好ましい。また、M3cもしくはM4cのどちらか一方はアルキル基であることが好ましく、M3cおよびM4cの両方がアルキル基であることが更に好ましい。
また、1つの実施形態においては、MおよびMが水素原子である。MおよびMが水素原子であれば、ジアシッド体のポリチオフェン化合物の製造が容易であるという利点がある。ポリチオフェンにおいて一般的に、ジアシッド体は、ジアルキル体およびモノアシッド体よりも導電性に優れるため、ジアシッド体のポリマーを容易に製造できることは有利である。
また、1つの実施形態においては、M3cおよびM4cが水素原子である。M3cおよびM4cが水素原子であれば、ジアシッド体のポリチオフェン化合物の製造が容易であるという利点がある。
およびMは、同一であってもよく、互いに異なってもよい。1つの好ましい実施形態においては、MおよびMは、同一である。また、M3cおよびM4cは、同一であってもよく、互いに異なってもよい。1つの好ましい実施形態においては、M3cおよびM4cは、同一である。
なお、一般式(2D)は、Rが存在すること以外は、一般式(2)と同一であるので、本明細書中において、Rの説明以外は、一般式(2D)の説明は一般式(2)の説明でもある。
1つの好ましい実施形態においては、MおよびMは、一般式(2D)の化合物を重合して得られる一般式(1A)の化合物のMおよびMと同一である。
1つの好ましい実施形態においては、M3cおよびM4cは、一般式(2D)の化合物を重合して得られる一般式(1A)の化合物のM1cおよびM2cと同一である。
およびMが両方ともアルキルである場合は、上記チオフェン化合物を酸化重合して得られる化合物を加水分解することで、導電性の良好なポリチオフェン化合物を得ることができる。
同様に、M3cおよびM4cが両方ともアルキルである場合にも、上記チオフェン化合物を酸化重合して得られる化合物を加水分解することで、導電性の良好なポリチオフェン化合物を得ることができる。
におけるアルキル基は、直鎖、分岐鎖状または環状のいずれでもよい。環状のアルキル基は、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキル基が結合した構造であってもよい。アルキル基の炭素原子数は1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基およびペンタデシル基などが挙げられる。
におけるアルコキシ基は、直鎖、分岐鎖状または環状のいずれでもよい。環状のアルコキシ基は、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキル基および/または鎖状アルコキシ基が結合した構造であってもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基およびペンタデシルオキシ基などが挙げられる。
におけるアシル基は、直鎖、分岐鎖状または環状のいずれでもよい。環状のアシル基は、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキル基および/または鎖状アシル基が結合した構造であってもよい。アシルの炭素原子数は1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基およびペンタデカノイル基などが挙げられる。
1つの好ましい実施形態において、Rは、水素原子である。)
〔チオフェン化合物の製造方法〕
本発明のチオフェン化合物は、Rが水素である場合には、例えば、以下の方法で製造することができる。特に、収率および操作性を考慮すると、下記第一工程および第二工程で製造することが好ましい。
(第一工程)
第一工程においては、公知の方法により、下記一般式(3)で表される化合物を得る。
Figure 0006912060
式(3)中、Lは、−(CH−である。ここで、nは0〜12である。nは好ましくは0〜4であり、より好ましくは0〜2である。特に好ましくはnは1である。Xはハロゲン原子であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子などが挙げられる。原料の入手のし易さおよび操作性の観点から塩素原子および臭素原子が好ましい。
具体的には、例えば、特許文献4(特開2014−74007号公報)に記載されている方法で上記式(3)の化合物を得ることができる。
また、n=1の実施形態、すなわち、下記一般式(3A)で表される化合物については、3−ハロゲン化−1,2−プロパンジオールと3,4−ジメトキシチオフェンを酸性触媒の存在下において加熱する方法により得ることができる。
Figure 0006912060
上記酸性触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸およびメタンスルホン酸などが挙げられる。好ましくはパラトルエンスルホン酸である。
(反応温度)
上記加熱は反応を進行させるために行うものであり、適切な速度で反応が進行するのであれば、加熱温度に特に制限はないが、60℃以上が好ましく、70℃以上が更に好ましく、80℃以上が特に好ましい。200℃以下が好ましく、150℃以下が更に好ましく、120℃以下が特に好ましい。
(反応時間)
上記加熱の時間は特に制限はないが、各々の条件において、出発材料が反応するのに充分な時間を適宜選択すればよい。反応が充分に進行していれば、反応時間の違いが本発明の効果に大きな影響を及ぼすことはない。例えば、6時間以上が好ましく、12時間以上がより好ましい。3日間以下が好ましく、2日間以下がより好ましい。
(溶媒)
第一工程では、必要に応じて、溶媒を使用してもよい。溶媒としては酸化重合反応において反応性がないものであれば特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロルベンゼンおよびo−ジクロルベンゼン等の芳香族炭化水素、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−オクタンおよびn−デカン等の脂肪族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムおよび四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタンおよびジオキサン等のエーテル等が挙げられる。好ましくはベンゼン、トルエンおよびジオキサンであり、更に好ましくはベンゼンおよびトルエンである。
(精製)
第一工程において得られた生成物については、精製等の後処理を行わずに第二工程に用いても良い。また、必要に応じて、第一工程で得られた生成物に、公知の方法による精製を行った精製物を第二工程に用いても良い。
(第二工程)
第二工程においては、上記一般式(3)で表される化合物とトリアルキルホスファイトもしくはトリス(トリアルキルシリル)ホスファイトとを反応させて、一般式(3)で表される化合物中のXをホスホン酸ジエステル基もしくはホスホン酸ビス(トリアルキルシリル)基で置換する。
トリアルキルホスファイトは、以下の一般式(11)で表される。
Figure 0006912060
ここで、M3a、M4aおよびM5aは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜15のアルキルである。炭素原子数が1〜12であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜5であることが特に好ましい。さらに好ましい実施形態ではアルキル基の炭素原子数が2である。M3aおよびM4aは、それぞれ一般式(2)中のMおよびMと同じである。一般式(2)の化合物において目的とするMおよびMに応じてM3aおよびM4aが選択される。M3aおよびM4aは、同一であってもよく、異なっても良い。M5aは、一般式(2)の化合物において目的とするMおよびMから独立して選択されても良いが、M5aがM3aまたはM4aのいずれかと同一であることが好ましい。一つの好ましい実施形態においては、M3a、M4aおよびM5aが同一である。具体例としては、例えば、トリメチルホスファイト、およびトリエチルホスファイトなどである。
例えば、上記一般式(3)で表される化合物とトリアルキルホスファイトの混合物を加熱することにより、ミカエリス−アルブゾフ転位反応が起こり、その転位生成体として、一般式(2A)の化合物が得られる。
Figure 0006912060
式中、M3aおよびM4aは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜15のアルキルである。
トリス(トリアルキルシリル)ホスファイトは、以下の一般式(11B)で表される。
Figure 0006912060

ここで、M3b、M4bおよびM5bは、それぞれ独立して、トリメチルシリル、トリエチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、トリイソプロピルシリルであり、トリメチルシリル、トリエチルシリルであることが好ましく、トリメチルシリルであることが更に好ましい。M3b、M4bおよびM5bは独立して選択されても良いが、同一であることが好ましい。具体例としては、例えば、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、およびトリス(トリエチルシリル)ホスファイトなどである。
例えば、上記一般式(3)で表される化合物とトリス(トリアルキルシリル)ホスファイトの混合物を加熱することにより、ミカエリス−アルブゾフ転位反応が起こり、その転位生成体として、一般式(2B)の化合物が得られる。
Figure 0006912060

式中、M3bおよびM4bは、それぞれ独立して、トリメチルシリル、トリエチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、トリイソプロピルシリルである。これらは一般的に水酸基の保護基として用いられるものであり、公知の方法で脱保護を行うことで下記一般式(2C)の化合物を得ることができる。
例えば、上記一般式(2B)の化合物に炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよびアンモニアの水溶液などの塩基性水溶液を作用させることで脱保護が起こる。
Figure 0006912060

上記一般式(2C)の化合物は上記一般式(2A)を公知の方法で加水分解することでも得られるが、上記のトリス(トリアルキルシリル)ホスファイトを用いた方法により、比較的容易に得ることができる。
一般式(3)で表される化合物とトリアルキルホスファイトまたはトリス(トリアルキルシリル)ホスファイトの混合比率(モル比)は特に限定されない。ただし、収率などの観点から、一般式(3)で表される化合物とトリアルキルホスファイトまたはトリス(トリアルキルシリル)ホスファイトの混合比率(モル比)は、一般式(3)で表される化合物1モルに対してトリアルキルホスファイトまたはトリス(トリアルキルシリル)ホスファイトが0.8モル以上であることが好ましく、1モル以上であることがより好ましい。また、一般式(3)で表される化合物1モルに対してトリアルキルホスファイトまたはトリス(トリアルキルシリル)ホスファイトが10モル以下であることが好ましく、5モル以下であることが更に好ましく、3モル以下であることが特に好ましい。
(反応温度)
上記加熱は反応を進行させるために行うものであり、適切な速度で反応が進行するのであれば、特に反応の際の温度に制限はないが、100℃以上が好ましく、110℃以上が更に好ましく、120℃以上が特に好ましい。また、220℃以下が好ましく、200℃以下が更に好ましく、160℃以下が特に好ましい。
(反応時間)
上記加熱の時間は特に制限はない。その温度などの条件下において、反応材料が反応するのに充分な時間を適宜選択すればよい。反応が充分に進行していれば、反応時間の違いが本発明の効果に大きな影響を及ぼすことはない。好ましくは、6時間以上であり、より好ましくは、12時間以上である。また、好ましくは、3日間以下であり、より好ましくは、2日間以下である。
(溶媒)
第二工程では、必要に応じて、溶媒を使用してもよい。溶媒としては第二工程において反応性のない液体であって反応材料を溶解または分散できる液体であれば特に制限はない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロルベンゼンおよびo−ジクロルベンゼン等の芳香族炭化水素、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−オクタンおよびn−デカン等の脂肪族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムおよび四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタンおよびジオキサン等のエーテル等が挙げられる。好ましい溶媒は、トルエン、キシレンおよびメシチレンなどである。
(加水分解)
上記反応により得られた一般式(2)の化合物においては、必要に応じて加水分解またはイオン交換を行ってもよい。
例えば、上記反応により得られた一般式(2A)の化合物においては、必要に応じて加水分解を行ってもよい。一般式(2A)の化合物に加水分解を行った後にさらにイオン交換を行ってもよい。一般式(2A)の化合物に加水分解を行うことにより、一般式(2)においてMおよびMが水素原子またはアルカリ金属などである化合物を得ることができる。また、さらにイオン交換を行うことにより、MおよびMの種類を所望の種類に変換することができる。
加水分解の方法としては、公知各種の方法を使用することができる。また、ポリチオフェン化合物の加水分解について後述する方法および条件を使用することができる。
イオン交換の方法としては、公知各種の方法を使用することができる。また、ポリチオフェン化合物のイオン交換について後述する方法および条件を使用することができる。
なお、好ましい実施形態においては、一般式(2A)の化合物に加水分解を行わずに、重合を行い、そして重合により得られたポリマーに加水分解を行う。
(精製)
第二工程において得られた生成物については、精製等の後処理を行わずにチオフェン化合物の製品として、重合工程に用いても良い。あるいは、公知の方法による精製などの後処理を行っても良い。
(Rが水素以外である場合の製造方法)
本発明のチオフェン化合物は、Rが水素以外である場合にも、上記方法と基本的に同様の方法で製造することができる。
が式(16)の基である場合には、例えば、以下の方法でチオフェン化合物を製造することができる。
(第一工程)
第一工程においては、以下の反応により、一般式(17A)のジオールと一般式(18)の3,4−ジアルコキシチオフェンを反応させて一般式(19A)で表される中間体を得る。
Figure 0006912060

ここで、RおよびRは、アルキル基(例えば、メチル基)である。
例えば、LおよびLが−(CH)−である場合には、上記3−ハロゲン化−1,2−プロパンジオールの代わりに、式(17A)の化合物として1,4−ジハロゲン化−2,3−ブタンジオールを使用する。
(第二工程)
第一工程で得られた一般式(19A)の中間体と一般式(11)の化合物とを上記方法で反応させることにより、または一般式(19A)の中間体と一般式(11B)の化合物とを上記方法で反応させて、脱保護を行うことにより、一般式(2D)のチオフェンモノマーが得られる。
Figure 0006912060

ここで、Rは、以下の一般式(16)で表される基である。
Figure 0006912060

中間体とホスファイトの混合比率は、中間体1モルに対してホスファイト1.6モル以上が好ましく、2モル以上がより好ましい。また、中間体1モルに対してホスファイト20モル以下が好ましく、10モル以下が更に好ましく、6モル以下が特に好ましい。
が、アルキル基、アルコキシ基、またはアシル基である場合には、例えば、以下の方法でチオフェン化合物を製造することができる。
(第一工程)
第一工程においては、以下の反応により、一般式(17B)のジオールと一般式(18)の3,4−ジアルコキシチオフェンを反応させて一般式(19B)で表される中間体を得る。
Figure 0006912060

(第二工程)
第一工程で得られた一般式(19B)の中間体と一般式(11)の化合物とを上記方法で反応させることにより、または一般式(19B)の中間体と一般式(11B)の化合物とを上記方法で反応させて、脱保護を行うことにより、一般式(2D)のチオフェンモノマーが得られる。
Figure 0006912060

ここで、Rは、アルキル基、アルコキシ基、またはアシル基である。
〔ポリチオフェン化合物の製造方法〕
本発明のポリチオフェン化合物は上記チオフェン化合物を酸化重合することで得られる。酸化重合の方法としては、チオフェン化合物を重合する酸化重合方法として従来公知の方法を使用することができる。収率および操作性を考慮すると、後述する条件で製造することが好ましい。
なお、本明細書中において「酸化重合」とは、酸化剤を用いてチオフェンモノマー化合物またはチオフェンモノマー混合物を重合してポリチオフェン化合物を合成する反応を意味する。ここで、「酸化」とは、この重合反応において、チオフェンモノマー化合物から水素原子を引き抜くことを意味する。本明細書中において「酸化剤」とは、そのような酸化反応を引き起こす試薬をいう。チオフェンモノマーの酸化重合反応については、例えば、上記特許文献1〜4などに説明されている。なお、酸化重合との用語について、化学大辞典においては、「二重結合を含む炭化水素残基をもつ化合物が酸素に触れて漸次重合する過程をいう。最もよい例は油脂の乾燥である。」と記載されている。しかし、チオフェンモノマーの重合は一般に空気中の酸素を酸化剤として使用するものではないので、その点において、本明細書中の「酸化重合」との用語は、化学大辞典等において使用される意味と若干異なる意味を有する。
(モノマー)
上記一般式(2D)のチオフェン化合物を重合用モノマーとして用いて酸化重合を行うことにより、上記一般式(1A)のポリチオフェン化合物を得ることができる。好ましい実施形態においては、上記一般式(2)のチオフェン化合物を重合用モノマーとして用いて酸化重合を行う。
なお、酸化重合を行う際には、一般式(2D)のチオフェン化合物を1種類のみ用いて酸化重合を行ってもよく、一般式(2D)のチオフェン化合物を2種類以上用いて酸化重合を行ってもよい。また、一般式(2D)のチオフェン化合物を1種類以上用いて、さらに、一般式(2D)以外のチオフェン化合物を1種類以上用いて、酸化重合を行ってもよい。
ただし、一般式(2D)以外のモノマーの量が多すぎると、本発明の利点が損なわれることになるので、一般式(2D)以外のモノマーの量は多すぎないことが好ましい。一般式(2D)以外のモノマーの量は、重合反応に使用されるモノマーの合計のうちの40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましく、10モル%以下であることがいっそう好ましく、5モル%以下であることがひときわ好ましく、3モル%以下であることが特に好ましく、1モル%以下であることが最も好ましい。
(酸化剤)
本発明における酸化重合反応は酸化剤の存在下で行われる。酸化剤としては、チオフェン化合物の酸化重合反応に一般的に用いられている酸化剤が使用できる。具体的には、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、第二塩化鉄、パラトルエンスルホン酸第二鉄・六水和物、硫酸第二鉄などが挙げられる。好ましくはパラトルエンスルホン酸第二鉄・六水和物および第二塩化鉄が挙げられる。
酸化剤の使用量は、酸化重合反応が良好に進行する限り特に限定されない。酸化重合反応に使用するモノマーに対して1当量以上であることが好ましく、2当量以上であることが更に好ましく、3当量以上であることが特に好ましい。また、100当量以下であることが好ましく、60当量以下であることが更に好ましく、20当量以下であることが特に好ましい。
使用量が上記範囲であれば反応がスムーズに進行する。
なお、空気中の酸素は、通常、チオフェンモノマーの重合のための酸化剤とはならないので、空気の存在下で重合反応を行う場合においても、通常、空気中の酸素は、重合反応に使用される酸化剤の量に含めない。すなわち、「酸化重合」という用語は、空気中に存在する酸素を酸化剤として使用する重合反応を意味するものとして使用される場合があるが、本発明における重合反応はこのような重合反応とは異なる。
(溶媒)
本発明の重合反応は、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
溶媒としては反応材料を溶解または分散できる液体であれば特に限定されない。溶媒の具体例としては、例えば、水、アンモニア水、塩酸などの水溶液、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノンなどのケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。好ましくは、水、アンモニア水、塩酸、メタノール、エタノール、クロロホルム、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフランおよびトルエンであり、水、メタノール、アセトニトリルおよびクロロホルムが更に好ましい。
上記溶媒については、1種類の溶媒を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。2種類以上を混合した混合溶媒が好ましい。
(反応温度)
重合の際の反応温度は、特に限定されない。−20℃以上が好ましく、0℃以上がより好ましく、10℃以上が更に好ましく、20℃以上が特に好ましい。また、80℃以下が好ましく、60℃以下が更に好ましい。
(反応時間)
本発明における重合の反応時間は、各々の条件において、反応するのに充分な時間を適宜選択すればよい。反応が充分に進行していれば、反応時間の違いが本発明の効果に大きな影響を及ぼすことはない。
反応時間は、好ましくは、1時間以上であり、より好ましくは、3時間以上であり、さらに好ましくは、6時間以上であり、いっそう好ましくは、9時間以上であり、特に好ましくは12時間以上であり、必要に応じて、15時間以上、18時間以上、21時間以上、または24時間以上とすることも可能である。また、好ましくは、7日間以下であり、より好ましくは、5日間以下であり、さらに好ましくは、3日間以下であり、いっそう好ましくは、2日間以下であり、特に好ましくは36時間以下であり、必要に応じて、30時間以下、28時間以下または26時間以下とすることも可能である。
(加水分解)
重合反応により得られたポリチオフェン化合物には、必要に応じて、加水分解を行っても良い。加水分解を行うことにより、ポリチオフェン化合物中のホスホン酸アルキルエステル部分のエステル結合を分解してホスホン酸基[−P(O)(OH)]、ホスホン酸モノアルキルエステル基[−P(O)(OH)(OR)、ここでRは炭素原子数1〜15のアルキル基である]またはホスホン酸一水素塩基[−P(O)(OH)(OM)、ここでMは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム基である]を得ることができる。
例えば、強酸で処理する方法、または強アルカリで処理することなどの方法により、加水分解を行うことができる。例えば、酸性水溶液またはアルカリ性水溶液中で加熱するなどの方法により加水分解を行うことが出来る。強酸としては、例えば、塩酸、硫酸などのプロトン酸、およびトリメチルシリルブロマイドなどのルイス酸などが挙げられる。強アルカリとしては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。ここで、ルイス酸を用いる場合は、例えば、ルイス酸と反応させた後、水と反応させる方法などが好ましく使用可能である。ポリチオフェン化合物骨格の安定性を考慮すると、アルカリで処理することが好ましい。
加水分解の際に加熱を行う場合、その温度は特に限定されない。好ましくは30℃以上であり、より好ましくは50℃以上である。また、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは90℃以下である。
加水分解を行う時間も特に限定されない。好ましくは1時間以上であり、より好ましくは6時間以上である。また、好ましくは4日間以下であり、より好ましくは2日間以下である。
上記ポリチオフェン生成物に対して、加水分解を行えば、エステル部分が分解されて、ホスホン酸性水酸基またはホスホン酸性金属塩を有するポリチオフェン化合物が得られる。このようにして得られたポリチオフェン化合物は、導電性ポリマーとして有用である。
加水分解をして得られたポリチオフェン化合物については、さらに、必要に応じてイオン交換を行って水素を含有するホスホン酸残基の量を調整してもよい。
(精製)
重合反応により得られたポリチオフェン化合物には、必要に応じて、精製操作を行うことができる。精製操作としては、ポリチオフェン化合物の精製方法として公知の任意の方法を使用することができる。例えば、遠心分離、濾過、脱水、乾燥、蒸留、洗浄、限外濾過、透析などの操作を行うことができる。精製操作の回数および種類は特に限定されない。1種類の精製操作を1回行うことのみによって精製操作を終了しても良いが、必要に応じて、2回以上の精製操作を行ってもよい。例えば、精製操作を3回以上、4回以上または5回以上行ってもよい。ここで、1種類の精製操作を繰り返して2回以上行ってもよく、複数種類の精製操作を組み合わせて合計として2回以上の精製操作を行ってもよい。精製操作の回数に特に上限はないが、好ましくは20回以下であり、より好ましくは15回以下であり、さらに好ましくは10回以下である。回数が多すぎる場合には、製造プロセス全体として長時間を要することになり、製造効率が低下する。
(イオン交換)
重合反応により得られたポリチオフェン化合物には、必要に応じて、イオン交換を行ってドープの量を調節しても良い。イオン交換は酸性水溶液やイオン交換樹脂などにより行うことが出来る。
すなわち、重合により得られたポリチオフェン化合物のホスホン酸、ホスホン酸モノアルキルまたはホスホン酸一水素塩の水素がポリマー全体として所望の量よりも少ない場合には、ホスホン酸に結合している金属イオンやアンモニウムイオンを水素イオンにイオン交換することにより、ドープの効果を大きくすることができる。
また逆に、重合により得られたポリチオフェン化合物のホスホン酸、ホスホン酸モノアルキルまたはホスホン酸一水素塩の水素がポリマー全体として所望の量よりも多すぎる場合には、ホスホン酸、ホスホン酸モノアルキルまたはホスホン酸一水素塩の水素イオンを他のイオン(例えば、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン等)にイオン交換することにより、ドープの効果を小さくすることができる。
イオン交換は、ポリチオフェン化合物を重合した後に行うことができる。上記精製の操作と同時に行うことも可能であり、精製の操作より前に行ってもよく、精製の操作の後に行ってもよい。例えば、ろ過により精製を行う際には、ろ過を行うカラムにイオン交換樹脂を充填しておけば、ろ過による精製と同時にイオン交換を行うことができる。
イオン交換の方法としては、従来公知のイオン交換の方法が使用可能である。
例えば酸性水溶液を用いる場合、重合により得られたポリチオフェン生成物を酸性水溶液に接触させることにより、イオン交換を行うことができる。具体的には例えば、ポリチオフェン生成物を酸性水溶液中で攪拌してポリチオフェン生成物中に存在するホスホン酸塩化合物の塩の部分を水溶液中の水素イオンと反応させるなどの方法により、イオン交換を行うことができる。ドープの効果を大きくするために水素イオンを増やす場合には、ポリチオフェン生成物の酸性置換基に対して過剰量の酸を用いることが好ましい。ドープの効果を小さくするためには用いる酸の量を少なくすればよい。つまり、用いる酸の量によりドープの効果は任意に設定できる。また、ポリチオフェン生成物と酸を反応させる時間も任意に設定できる。
例えばイオン交換樹脂を用いる場合、ポリチオフェン生成物を水中でイオン交換樹脂に接触させるなどの方法により、イオン交換を行うことができる。ドープの効果を大きくするために水素イオンを増やす場合には、強酸性陽イオン交換樹脂を用いることが好ましい。ドープの効果を小さくするために水素イオンを減らす場合には、強塩基性陽イオン交換樹脂を用いることが好ましい。イオン交換樹脂にポリチオフェン生成物を接触させる方法としては任意の方法が使用可能である。例えば、カラムにイオン交換樹脂を詰めて、ポリチオフェン生成物を含む溶液を流してもよいし、また、単に容器にイオン交換樹脂を入れて、その容器にポリチオフェン生成物を含む溶液を入れてもよい。また、ポリチオフェン生成物とイオン交換樹脂とを接触させる場合には、その容器を振盪させたり、溶液を攪拌したりすることにより、その効率を向上させても良い。ポリチオフェン生成物とイオン交換樹脂とを接触させる時間は任意に設定できる。例えば、カラムに少量(例えば、1滴)のポリチオフェン生成物溶液を流す場合であれば、その少量の溶液がイオン交換樹脂に上部に接触した時間からイオン交換樹脂の下部から離れるまでの時間として設定される。また例えば、カラムに大量のポリチオフェン生成物溶液を流す場合であれば、その溶液の最初の部分がイオン交換樹脂に上部に接触した時間からイオン交換樹脂の下部から離れるまでの時間と、その溶液の最後の部分がイオン交換樹脂に上部に接触した時間からイオン交換樹脂の下部から離れるまでの時間との平均として設定される。また、容器にイオン交換樹脂とポリチオフェン生成物溶液を入れる場合であれば、その溶液とイオン交換樹脂が容器中で混合される時間として設定される。
ポリチオフェン生成物のイオン交換の1回の操作を行う時間(例えば、上述したポリチオフェン生成物と酸性水溶液の接触時間あるいはイオン交換樹脂とポリチオフェン生成物の接触時間)は、所望とされるイオン交換の程度に応じて任意に設定されるが、例えば、5秒間以上とすることが好ましく、10秒間以上とすることがより好ましく、いっそう好ましくは1分間以上であり、さらに好ましくは、10分間以上である。接触時間が短すぎる場合にはイオン交換が不十分になりやすい。また、1日間以下とすることが好ましく、より好ましくは12時間以下であり、さらに好ましくは、2時間以下である。接触時間が長すぎる場合には、製造プロセス全体として長時間を要することになり、製造効率が低下する。
イオン交換の操作を行う回数は特に限定されない。ポリチオフェン生成物に対して1回のみのイオン交換の操作でイオン交換を完了してもよく、イオン交換の操作を2回以上繰り返して行っても良い。2回以上繰り返して行えば、ドープ効果が高いポリチオフェン化合物を容易に得ることができる。具体的には、3回以上繰り返して行うことが好ましく、4回以上繰り返して行うことがより好ましく、5回以上繰り返して行うことがさらに好ましい。また、イオン交換の操作を行う回数は、好ましくは20回以下であり、より好ましくは15回以下であり、さらに好ましくは10回以下である。回数が多すぎる場合には、製造プロセス全体として長時間を要することになり、製造効率が低下する。
また、イオン交換の操作を2回以上行う場合、同一のイオン交換の操作のみを2回以上繰り返してもよく、2種類以上のイオン交換の操作を行ってもよい。
1つの好ましい実施形態においては、イオン交換の操作を精製の操作と組み合わせて一連の工程とすることができる。例えば、ポリチオフェン生成物に酸性水溶液を添加してイオン交換を行った後、ポリチオフェン生成物の精製工程(例えば、遠心分離)を行って水等を除去して純度が高くなったポリチオフェン化合物を取り出すことにより、ドープ効率が高く、かつ純度も高いポリマーを得ることができる。さらに、このイオン交換の操作を精製の操作と組み合わせた一連の工程を一つのサイクルとして、このサイクルを複数回繰り返して行うこともできる。例えば、ポリチオフェン生成物に酸性水溶液を添加してイオン交換を行った後、ポリチオフェン生成物の精製工程(例えば、遠心分離)を行って純度が高くなったポリチオフェン化合物を取り出し、その第1回精製後のポリチオフェン化合物に再度酸性水溶液を添加して2回目のイオン交換を行い、その後、再度精製工程を行って純度がさらに高くなった第2回精製後のポリチオフェン化合物を取り出す、という一連の工程を繰り返すことにより、ドープ効率が非常に高く、かつ純度も高いポリマーを効率良く得ることができる。すなわち高純度で電導性の高いポリマーを効率良く得ることができる。イオン交換の操作および精製の操作を含む一連の工程からなるサイクルを繰り返す回数は特に限定されない。具体的には、3回以上繰り返して行うことが好ましく、4回以上繰り返して行うことがより好ましく、5回以上繰り返して行うことがさらに好ましい。また、好ましくは20回以下であり、より好ましくは15回以下であり、さらに好ましくは10回以下である。回数が多すぎる場合には、製造プロセス全体として長時間を要することになり、製造効率が低下する。
(用途)
本発明のポリチオフェン化合物は、導電性ポリチオフェン化合物の用途として従来公知の各種用途に使用することができる。具体的には、例えば、帯電防止剤として使用することができる。
(帯電防止剤)
本発明のポリチオフェン化合物を帯電防止剤に使用する方法としては、従来の導電性ポリチオフェン化合物が帯電防止剤に用いられていた各種公知の方法を採用することができる。例えば、水あるいはその他適切な溶剤中に、本発明の製造方法により得られるポリチオフェン化合物を溶解または分散させたものを基材にコーティングすれば、その基材の表面に帯電防止作用が付与される。基材としては、帯電防止作用が望まれる任意の固体物質が挙げられる。具体例としては、例えば、高分子フィルム、高分子繊維、高分子樹脂成形品などが挙げられる。
コーティング方法としては、従来のポリチオフェン化合物を基材にコーティングする方法として使用されている任意の方法が、本発明の製造方法により得られるポリチオフェン化合物においても使用可能である。具体例としては、例えば、スピンコート、ディップコートなどが挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定される訳ではない。
〔導電性の測定方法〕
本発明の含リンポリチオフェン化合物の導電性は、その電気伝導度を下記方法で測定することで確認した。
(試験片の作成1)
測定するポリチオフェン化合物の10mg/mL水溶液1mL(パラトルエンスルホン酸・一水和物10mg含有)をドロップキャスト法で下記基板のスリット上に薄膜を作成し、温風により乾燥させた。
基板:長さ5mm×幅30mmのガラス板上に厚み150nmのITO膜を製膜し、その膜に幅200μmのスリットを入れたものを基板として使用した。
(試験片の作成2)
測定するポリチオフェン化合物の10mg/mL水溶液1mL(1Nアンモニア水8.5uL含有)をドロップキャスト法で下記基板のスリット上に薄膜を作成し、温風により乾燥させた。
基板:長さ5mm×幅30mmのガラス板上に厚み150nmのITO膜を製膜し、その膜に幅200μmのスリットを入れたものを基板として使用した。
(電気伝導度の測定)
絶縁抵抗計(CUSTOM社製、CX−180N)を用いて、2端子法により測定した。
[紫外可視近赤外吸収スペクトルの測定方法]
測定サンプル1mgをクロロホルム5mlに溶解させたものをセル長1cm石英セルに加え、紫外可視近赤外吸収スペクトル装置(日本分光株式会社製、V−670)を用いて測定した。
〔含リンチオフェン化合物の合成〕
(ホスホン酸ジアルキル基含有チオフェンの合成)
(合成例1)
<2−ブロモメチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ジオキシンの合成[下記式(4)で表される化合物]>
フラスコ内を乾燥させた後、窒素雰囲気下においてパラトルエンスルホン酸・一水和物0.34g(1.79mmol)を入れた。次にトルエン75mL、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール6.76g(43.6mmol)、3,4−ジメトキシチオフェン2.51g(17.4mmol)を加えた。混合溶液を100℃で24時間撹拌後、室温(20〜25℃)に冷却してから、固形物をセライトでろ別し、濾滓をCHClで洗浄した。得られたろ液と濾滓の洗浄液を混合し、溶媒を留去した後、CHClで抽出した。その時に得られた有機相をNaSOで乾燥させた後、溶媒を留去した。得られた黒色液体をカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体の下記式(4)で表される化合物2.23g(9.49mmol、収率54.6%)を得た。
Figure 0006912060
H−NMR(CDCl,400MHz):δ3.46−3.55(2H,m),4.13−4.38(3H,m),6.33−6.36(2H,m)。
(実施例1)
<ジエチル(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)ホスホネートの合成[下記式(5)で表される化合物]>
フラスコ内を乾燥させた後、窒素雰囲気下において、合成例1で得られた式(4)で表される化合物0.99g(4.23mmol)およびトリエチルホスファイト1.06g(6.38mmol)を加え、150℃で24時間撹拌後、室温(20〜25℃)に冷却した。その後、残存トリエチルホスファイトなどの低沸点成分を留去した。得られた褐色液体をカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体の下記式(5)で表される化合物1.08g(3.68mmol、収率87.0%)を得た。
Figure 0006912060
H−NMR(CDCl,400MHz):δ1.28−1.35(6H,m),2.02−2.26(2H,m),3.94−4.51(7H,m),6.28−6.31(2H,m)。
〔ポリチオフェン化合物の合成〕
(合成例2)
<ポリチオフェン化合物の合成1[下記式(6)で表される構造単位を含む重合体]>
フラスコに実施例1で得られた上記式(5)で表される化合物100.2mg(0.34mmol)、クロロホルム15mL、第二塩化鉄1128.3mg(6.96mmol)を加えて混合溶液を作製した。混合溶液を室温(20〜25℃)で24時間撹拌した後、メタノール50mLを加え、室温で3時間攪拌したところ、固体が析出した。桐山ろうとで析出した固体をろ別し、メタノール数mLで洗浄した。得られた固体を133Paの減圧下室温で乾燥し、黒色固体のポリチオフェン生成物42.7mgを得た。得られた生成物を用いて上記「試験片の作成1」の方法で試験片を作成し、該試験片の導電性を上記「電気伝導度の測定」に記載した方法により測定したところ、0.27S/mの導電性を示した。チオフェン化合物のモノマーは導電性を有さないのに対してこの生成物では導電性が測定されたことにより、モノマーが重合してポリマーになっている事を確認した。更に生成物のリン含有率および硫黄含有率を測定した。
(合成例3)
<ポリチオフェン化合物の合成2[下記式(6)で表される構造単位を含む重合体]>
フラスコに第二塩化鉄・六水和物939.4mg(3.48mmol)および水1mLを入れて第二塩化鉄を溶解させた後、実施例1で得られた上記式(5)で表される化合物50.7mg(0.17mmol)およびアセトニトリル2mLを加えて混合溶液を作製した。混合溶液を50℃で24時間撹拌後、アセトニトリル50mLを加え、室温(20〜25℃)で3時間攪拌したところ、固体が析出した。桐山ろうとで固体をろ別し、アセトニトリル数mLで洗浄した。得られた固体を133Paの減圧下室温で乾燥し、黒色固体のポリチオフェン生成物25.5mgを得た。得られた生成物を用いて上記「試験片の作成1」に記載の方法で試験片を作成し、該試験片の導電性を上記「電気伝導度の測定」に記載した方法により測定したところ、0.27S/mの導電性を示した。また、紫外可視近赤外吸収スペクトル測定結果を行った。その結果を図1に示す。チオフェン化合物のモノマーは導電性を有さないのに対してこの生成物では導電性が測定されたこと、および紫外可視近赤外吸収スペクトル測定により、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の特徴的な電荷移動バンドの吸収が400〜600nmの波長近辺で見られたことで、モノマーが重合してポリマーになっている事を確認した。更に生成物のリン含有率および硫黄含有率を測定した。
Figure 0006912060
合成例2および3で得られたポリチオフェン生成物のリン含有率および硫黄含有率の結果を表1に示す。
Figure 0006912060
〔ポリチオフェン化合物の加水分解[ホスホンモノアルキル基含有ポリチオフェン化合物の合成]〕
(実施例2)
<ポリチオフェン化合物の合成3[下記式(9)または下記式(10)で表される構造単位を含む重合体]>
フラスコに合成例3と同様の方法で得られたポリチオフェン化合物98.8mg(0.34mmol)、水10mL、および24%苛性ソーダ水123.3mg(0.74mmol)を加え、65℃で12時間撹拌した。得られた混合溶液に陽イオン交換樹脂レバチット(MonoPlusS100型)を添加して6時間撹拌した。デカンテーションによりレバチットを除去して、桐山ろうとで固体をろ別し、エタノール数mLで洗浄した。得られた固体を133Paの減圧下室温(20〜25℃)で乾燥し、黒色固体のポリチオフェン生成物31.5mgを得た。得られた生成物を用いて上記「試験片の作成1の方法」に記載した方法で試験片を作成し、該試験片の導電性を、上記「電気伝導度の測定」に記載した方法により測定した。その結果を表2に記す。
Figure 0006912060
Figure 0006912060
(比較例1)
<ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)の合成>
特開2013−115077号公報を参考にしてPEDOTを合成した。フラスコに3,4−エチレンジオキシチオフェン(東京化成工業株式会社製、E0741)2.00g(14.07mmol)、エタノール100.00g、パラトルエンスルホン酸・一水和物2.53g(14.69mmol)、2−ナフタレンスルホン酸・一水和物5.86g(28.14mmol)および過硫酸アンモニウム6.47g(28.35mmol)を加え、室温(20〜25℃)で12時間撹拌した。その後、脱イオン水300mLが入っているコニカルビーカーの中へ反応溶液を注ぎ、吸引濾過により黒色の固体を得た。得られた固体を終夜、加熱下(40℃)で真空乾燥した。固体の収量は26.1mgであった。また、得られた固体を用いて上記「試験片の作成1」に記載した方法で試験片を作成し、該試験片の導電性を上記「電気伝導度の測定」に記載した方法により測定した。その結果を表2に記す。
Figure 0006912060
この結果から、実施例2において高い導電性を有するポリマーが得られたことが確認された。
(ホスホン酸基含有チオフェンの合成)
(実施例3)
<(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)ホスホニックアシッドの合成[下記式(13)で表される化合物]>
フラスコ内を乾燥させた後、窒素雰囲気下において、合成例1で得られた式(4)で表される化合物0.50g(2.16mmol)および亜リン酸トリス(トリメチルシリル)5.0g(16.75mmol)を加え、150℃で24時間撹拌後、室温(20〜25℃)に冷却した。その後、残存亜リン酸トリス(トリメチルシリル)などの低沸点成分を留去した。さらに、得られた反応生成物に1.5Mアンモニア水5mLおよびメタノール5mLを加え、1時間撹拌した。溶媒留去後、133Paの減圧下室温(20〜25℃)で乾燥し、白色固体の下記式(13)で表される化合物0.51g(2.16mmol、収率99.9%)を得た。
Figure 0006912060

H−NMR(DMSO−d,400MHz):δ1.61−1.83(2H,m),3.78−3.83(1H,m),4.23−4.25(1H,m),4.55−4.58(1H,m),6.47−6.50(2H,m)。
〔ホスホン酸基含有ポリチオフェン化合物の合成〕
(実施例4)
<ポリチオフェン化合物の合成4[下記式(14)で表される構造単位を含む重合体]>
フラスコに実施例3で得られた上記式(13)で表される化合物100.0mg(0.42mmol)および水0.2mLを加え、室温(20〜25℃)で撹拌した。その後、過硫酸アンモニウム193.3mg(0.84mmol)および水0.3mLの混合溶液をフラスコへゆっくり滴下し、8時間撹拌した。得られた混合溶液に陽イオン交換樹脂レバチット(MonoPlusS100型)を添加して6時間撹拌した。デカンテーションによりレバチットを除去して、桐山ろうとで固体をろ別し、ジエチルエーテル数mLで洗浄した。得られた固体を133Paの減圧下室温で乾燥し、黒色固体のポリチオフェン生成物8.9mgを得た。得られた生成物を用いて上記「試験片の作成2」に記載した方法で試験片を作成し、該試験片の導電性を上記「電気伝導度の測定」に記載した方法により測定したところ、0.27S/mの導電性を示した。
Figure 0006912060

(比較例2)
比較例1で得られた固体(PEDOT)を用いて上記「試験片の作成2」に記載した方法で試験片を作成し、その導電性を上記「電気伝導度の測定」に記載した方法により測定したところ、導電性を確認できなかった。
実施例4および比較例2から、パラトルエンスルホン酸などのドープ剤を用いない場合においても、本願のホスホン酸含有ポリチオフェン化合物は導電性を示すが、PEDOTは導電性を示さないことが確認できた。
本発明のポリチオフェン化合物は、比較的酸性度の低いホスホン酸基を用いていても、PEDOTより優れた導電性が得られることが実施例2および4の結果から理解される。
本発明によれば、優れた導電性を有する新規なポリチオフェン化合物が提供される。本発明のポリチオフェン化合物は、スルホ基を有するポリチオフェン化合物よりも、デバイスを腐食させることが少ない。本発明のポリチオフェン化合物は、帯電防止剤、静電気防止剤、プラスチック電極の電極材料、EMI材料、有機強磁性体、各種センサー等の様々な用途に適用することができる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。

Claims (16)

  1. 下記一般式(1):
    Figure 0006912060

    (式中、Lは、−(CH−であり、ここで、nは独立して0〜12である。MおよびMは各々独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム基である。ただし、MまたはMの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMまたはMの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。)
    で表される構造単位を含むポリチオフェン化合物。
  2. およびMのうちの少なくとも1つが、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびアンモニウム基から選ばれる構造単位を含む、請求項1に記載の化合物。
  3. Lは、−CH−である、請求項1または請求項2に記載の化合物。
  4. 下記一般式(2):
    Figure 0006912060

    (式中、Lは、−(CH−であり、ここで、nは0〜12である。MおよびMは各々独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム基である。ただし、MまたはMの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMまたはMの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。)
    で表される化合物。
  5. およびMは各々独立して炭素原子数1〜15のアルキル基である、請求項4に記載の化合物。
  6. およびMが水素原子である、請求項4に記載の化合物。
  7. Lが、−CH−である、請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の化合物。
  8. 請求項1に記載のポリチオフェン化合物を製造する方法であって、
    請求項4〜請求項7のいずれか1項に記載の化合物を酸化重合する工程を含む、
    方法。
  9. 前記酸化重合が−20℃〜80℃の温度で行われる、請求項8に記載の方法。
  10. 前記一般式(2)の化合物に対して1〜100当量の酸化剤を使用して前記酸化重合を行う、請求項8または請求項9に記載の方法。
  11. 溶媒の存在下で前記酸化重合を行う、請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記溶媒が、水、アンモニア水、塩酸、メタノール、エタノール、クロロホルム、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフランおよびトルエンならびにそれらの混合物から選択される、請求項11に記載の方法。
  13. 請求項4〜請求項7のいずれか1項に記載の化合物を製造する方法であって、
    下記一般式(3):
    Figure 0006912060

    (式中、Lは、−(CH−であり、ここで、nは0〜12である。Xはハロゲン原子である。)
    で表される化合物を、トリアルキルホスファイトまたはトリス(トリアルキルシリル)ホスファイトと反応させて転位生成体を得る工程を含み、
    ここで、該トリアルキルホスファイト中の3つのアルキル基のうち、1つが請求項4中で定義されるMと同一であり、もう1つが請求項4中で定義されるMと同一である、
    方法。
  14. 下記一般式(1A):
    Figure 0006912060

    (式中、Lは、−(CH−であり、ここで、nは独立して0〜12である。MおよびMは各々独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム基である。ただし、MまたはMの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMまたはMの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。
    は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、または式(15)で表される基である。
    Figure 0006912060

    式中、Lは、−(CH−であり、ここで、mは独立して0〜12である。M1cおよびM2cは、各々独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム基である。ただし、M1cまたはM2cの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてM1cまたはM2cの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。)
    で表される構造単位を含むポリチオフェン化合物。
  15. 下記一般式(2D):
    Figure 0006912060

    (式中、Lは、−(CH−であり、ここで、nは0〜12である。MおよびMは各々独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム基である。ただし、MまたはMの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMまたはMの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。
    は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、または式(16)で表される基である。
    Figure 0006912060

    式中、Lは、−(CH−であり、ここで、mは0〜12である。M3cおよびM4cは、各々独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム基である。ただし、M3cまたはM4cの一方がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてM3cまたはM4cの他方が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となる。)
    で表される化合物。
  16. 請求項14に記載のポリチオフェン化合物を製造する方法であって、
    請求項15に記載の化合物を酸化重合する工程を含む、
    方法。
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