以下、本発明の一実施形態にかかる除塵具について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る除塵具は、例えば、電化製品や家具等の物品を掃き掃除する際に用いられ、刷毛ともモップとも称される。
図1に示すように、除塵具1は、柄部材2と、多数本の除塵用繊維からなる清掃部材3とを備えている。柄部材2は、使用者に把持される把持体部4と、清掃部材3を取付ける部分であって、把持体部4の長手方向に長い扁平な矩形板状に形成された取付部5とを備える。把持体部4は長手方向に伸縮可能とされ、取付部5は把持体部4に対して回動可能に連結されている。
図2に示すように、把持体部4は、互いに同心の小径杆6と大径杆7とを備える。小径杆6は、大径杆7に対して長手方向で摺動可能に内嵌されている。小径杆6は、長手方向一端側に、大径杆7に対する小径杆6の突出量を確定させる位置決手段8を備える。小径杆6の長手方向他端側に、取付部5の延長姿勢Xおよび回動姿勢Yを保持する保持手段9を構成する一部である、受部10が設けられている。
位置決手段8は、小径杆6および大径杆7を相対的に軸心回りに一方向に回動させることで、大径杆7に対して小径杆6が摺動可能となり、他方向に回動させることで大径杆7に対して小径杆6を保持するよう構成されている。なお、大径杆7には空気孔7bが形成されている。
図3ないし図7に示すように、位置決手段8は、偏心軸11と、鍔部材12と、偏心弾性体13とを備える。鍔部材12は、小径杆6の一端面から長手方向に離間して配置されている。鍔部材12は、円板状に形成され、小径杆6と同心に配置されている。偏心軸11は、小径杆6の軸心に対して径方向外方へ位置ずれした軸体であり、小径杆6の一端面と、該一端面と鍔部材12の対向面とを連設している。
偏心弾性体13は環状(C字形状)に形成されており、中心に対し偏心していて偏心軸11が挿通される偏心穴14と、偏心穴14から径方向外方へ向けて形成された装着用切込15とを備えている。偏心弾性体13は偏心穴14が形成されているから、偏心穴14の周りには、肉厚部と肉薄部とが形成されている。肉厚部は最も肉厚の最肉厚部16を備え、肉薄部は、最も肉薄の最肉薄部17を備えている。最肉厚部16と最肉薄部17を連続する部分は、偏心穴14の中心周りに、次第に径が変化するよう形成されている。偏心弾性体13の径は小径杆6の径と同等に形成されている。偏心弾性体13は、合成ゴムから形成されている。
装着用切込15を開いて偏心軸11が偏心穴14に挿通するよう偏心弾性体13を取付けると、偏心弾性体13の径は小径杆6の径と同等に形成されているが、小径杆6の軸心に対して偏心穴14の中心が偏心しているから、最肉薄部17を小径杆6の外周面6aに対して径方向内方に位置させ、最肉厚部16を小径杆6の外周面6aに対して径方向外方に位置させるよう、偏心弾性体13を小径杆6に対して回動させることができる。
この状態で、小径杆6を大径杆7に挿入すると、最肉厚部16が前記突出分だけ大径杆7の内周面により圧縮されて、偏心弾性体13に弾性復元力が付与され、その分だけ大径杆7の内周面に押圧される。このような状態にあって、小径杆6および大径杆7を相対的に軸心回りに一方向に回動させることで、最肉厚部16の弾性復元力により偏心弾性体13が偏心軸11回りに、突出量を減らす方向に連れ回りし、弾性復元力が小さくなる。すなわち、大径杆7の内周面7aによる偏心弾性体13の押圧力が小さくなる。よって、除塵する周囲環境に応じて使い勝手がよいように、使用者は、小径杆6を大径杆7に対しその長手方向に延ばしたり、縮めたりすることができる。
使用者が把持体部4を使い勝手の良い長さに調整した後は、小径杆6および大径杆7を相対的に軸心回りに一方向に回動させる。そうすると、偏心弾性体13の外周面と大径杆7の内周面7aとの摩擦により偏心弾性体13が偏心軸11回りに、突出量を増やす方向に連れ回りし、肉厚部に弾性復元力を付与し、最肉厚部16(あるいはその近傍)に対して大径杆7の内周面により弾性復元力が付与されると、その弾性復元力により、小径杆6および大径杆7が相対的に回転できなくなる。このような状態では、偏心弾性体13に大きな弾性復元力が付与されていることから、大径杆7に対して小径杆6が摺動できないよう保持される。
前記受部10は、長手方向に直交する幅方向に離間した一対の受環体を備える。各受環体は筒状に形成され、小径杆6の長手方向他端側に、小径杆6に比べて拡径された補強部18を介して一体的に形成されている。
幅方向一方側の一方受環体20は、幅方向他方側に環鍔状に形成された一方底壁21を備え、一方底壁21の中心に一方中心穴22が形成されている。一方底壁21の一方面の周方向複数箇所(図では四箇所)に、幅方向一方側に突出する板状の台片23が形成されている。各台片23における前記一方面からの高さは同じに設定されている。台片23は、後述する一方蓋部材38の裏面が当接される。
一方中心穴22の周壁面において、各台片23の間に、径方向外方に向かう挿通溝24が形成されている。したがって、挿通溝24は、四箇所に形成されている。挿通溝24は略三角形に形成されている。
幅方向他方側の他方受環体25は、幅方向一方側に環鍔状に形成された他方底壁26を備え、他方底壁26の中心に他方中心穴27が形成されている。他方底壁26において他方中心穴27の他方円周縁に、台環28が形成されている。一方受環体20と他方受環体25の離間距離は、後述する回動中心部30の幅に比べてわずかに大きく設定されている。台環28には、後述する他方蓋部材46の裏面が当接される。
なお、図8および図9に示すように、小径杆6と大径杆7とは、大径杆7の長手方向他方端側に内嵌された環状ブッシュ31を介して、同心に嵌合されている。以上が把持体部4の構成である。
次に、取付部5を説明する。取付部5は清掃部材3に挿入される取付部本体32と、取付部本体32の基端側に設けられた回動中心部30とを備える。取付部5は、長さLおよび幅Bに比べて厚みtが充分に薄い扁平な矩形に形成されている。幅Bに比べて長さLのほうが充分に長く形成されている。取付部5の先端面は円弧状に形成されている。該先端面が円弧状に形成されていることにより、後述する清掃部材3の袋状芯に挿入し易い形状となっている。
回動中心部30は環状に形成されている。回動中心部30の中心には、取付部5の幅方向に沿う回動中心穴33が形成されている。回動中心部30における幅方向一方側面30aにおいて回動中心穴33の周縁に、保持溝34が形成されている。保持溝34は回動中心穴33の周方向に所定間隔置きに複数形成されている。この場合、保持溝34は、十二箇所に形成されている。保持溝34は略三角形に形成されている。
取付部本体32と回動中心部30とは、合成樹脂により一体的に形成されている。回動中心部30の幅は取付部本体32の幅Bに比べて小さく形成されている。取付部本体32と回動中心部30との連続部分は、取付部本体32の厚みtに比べて厚く形成されることで、補強されている。前記連続部分がこのような厚みを備えている理由として、取付部本体32は可撓性を有しており、清掃部材3を取付けて除塵するよう動かされる際に、繰返し撓むことを考慮した構成である。
図3に示すように、取付部本体32は、回動中心部30の周方向の一部のみから、補強部分を介して回動中心部30の径方向外方に突出して形成されている。取付部本体32の回動中心部30寄りには、幅方向両側に向けて突出する突起35が形成されている。
図3および図8に示すように、前記保持手段9は、一方受環体20、他方受環体25、回動中心部30、一方キャップ36、他方キャップ37、および弾性体43を備える。このうち、一方受環体20、他方受環体25、および回動中心部30は前述したとおりの構成である。
一方キャップ36は、円板状の一方蓋部材38と、一方蓋部材38の他方面に形成された一方支軸40とを備える。一方蓋部材38は一方受環体20の内径に略等しい径に形成されている。一方支軸40は筒状に形成され、一方中心穴22に挿通可能な径に形成されている。一方蓋部材38の裏面に挿通片41が形成されている。挿通片41は、一方蓋部材38の裏面で、且つ一方支軸40の長手方向に長く形成され、挿通溝24に幅方向(軸心方向)で挿通・離脱する。したがって、挿通片41は、周方向に四箇所形成されている。挿通片41は、断面略三角形に形成されている。
一方支軸40の周壁面に、係止孔44が形成されている。係止孔44は、一方支軸40の径方向対向位置に一対で形成されている。係止孔44は、挿通片41に比べて幅方向他方側に配置されている。一方支軸40の内周面に、一方支軸40の他方端から係止孔44に至る案内平面45が形成されている。
他方キャップ37は、円板状の他方蓋部材46と、他方蓋部材46の一方面に形成された他方支軸47とを備える。他方蓋部材46は他方受環体25の内径に略等しい径に形成されている。他方支軸47は、係止孔44に係止する一対の係止片48を備える。係止片48は、他方蓋部材46の裏面から幅方向一方側へ向けて延長され、先端が係止孔44に係止されるフック状に形成されている。
弾性体43として、コイルばねが用いられている。コイルばねは、係止片48を外嵌し、他方蓋部材46の裏面と、他方底壁26の他方面をばね座として、一方蓋部材38および他方蓋部材46を幅方向他方側へ向けて付勢する。
清掃部材3は、取付部5を挿抜可能としてその長手方向両側のうちの一方に図示しない挿抜用開口が形成された扁平な袋状芯と、袋状芯の幅方向の両端において袋状芯から延長された除塵用繊維群52とを備えている。
上記構成の除塵具1では、袋状芯の挿抜用開口から取付部5を挿入して、清掃部材3が取付部5に取付けられる。清掃部材3が取付部5に取付けられると、取付部本体32に形成された突起35により、清掃部材3が取付部5から抜止めされる。
本実施形態における除塵具1では、取付部5は、把持体部4に、長手方向に直交する幅方向に沿う軸体である回動中心部30を介して取付けられて、把持体部4の長手方向に沿う延長姿勢Xと、長手方向に対し90°を超えて回動中心部30回りに把持体部4の近傍まで回動した回動姿勢Yとに切替え可能である。また、取付部5の延長姿勢Xおよび回動姿勢Yを保持する保持手段9を備え、保持手段9によって取付部5の姿勢を、延長姿勢X、回動姿勢Y、および延長姿勢Xと回動姿勢Yとの間の複数段階で保持させられる。
図8は延長姿勢Xであり、延長姿勢Xでは、取付部5は把持体部4に対して長手方向に沿っており、挿通片41が挿通溝24を挿通し、挿通片41の先端が保持溝34に係止している。係止片48が係止孔44に係止していることで、一方キャップ36および他方キャップ37が一体化されており、弾性体43が係止片48を外嵌し、他方蓋部材46の裏面と、他方底壁26の他方面をばね座として、一方蓋部材38および他方蓋部材46を幅方向他方側へ向けて付勢していることで、挿通片41の先端を保持溝34に係止させた状態が保持されている。すなわち、保持手段9によって取付部5の延長姿勢Xが保持されている。
取付部5が延長姿勢Xにあれば、清掃部材3も把持体部4の長手方向に沿う姿勢にある。このため、使用者は把持体部4を把持して、例えば机上の広い範囲を少ない動作で除塵して清掃することができる。あるいは、清掃部材3の先端側を用いて机や電子機器周りの隅部分を清掃することができる。
延長姿勢Xから、取付部5が長手方向に対し90°を超えて回動中心部30回りに把持体部4の近傍まで回動した回動姿勢Yに切替えるには、次のようにする。すなわち除塵具1の使用者は、弾性体43の弾性に抗して他方キャップ37を一方側へ押圧する。そうすると、他方キャップ37と一方キャップ36とは一体であるから、一方キャップ36が一方側へ向けて移動し、一方キャップ36の移動に伴い挿通片41が保持溝34から外れる。
挿通片41が保持溝34から外れると、回動中心部30の回動が阻止されなくなるから、取付部5が一方支軸40回りに回動可能になる。したがって、除塵具1の使用者は、取付部5を、延長姿勢Xと、図10(e)に示すように、長手方向に対し90°を超えて回動中心部30回りに把持体部4の近傍まで回動した回動姿勢Yとすることができる。
弾性体43が一方蓋部材38および他方蓋部材46を幅方向他方側へ向けて付勢しているから、回動姿勢Yでは、延長姿勢Xにおいて挿通片41が係止していた保持溝34とは別の保持溝34に係止して、回動姿勢Yが保持される。
取付部5を回動姿勢Yとすることで、清掃部材3も取付部5の傾斜方向を向く。回動姿勢Yでは、把持体部4の長手方向に対し清掃部材3が回動中心部30を中心として回動して、把持体部4の長手方向と清掃部材3の長手方向とが交差するから、把持体部4と清掃部材3との間に隙間が生じている。回動姿勢Yでは該隙間を利用して、例えば使用者は、把持体部4をパーソナルコンピュータのディスプレイ側とし、清掃部材3をディスプレイの裏面側へわたして、除塵具1を左右に動かすことで、ディスプレイの裏面に清掃部材3が接触移動し、ディスプレイの裏面(裏側)を清掃することができる。
取付部5の回動姿勢Yは、保持手段9によって保持されている。回動姿勢Yにおいては、清掃部材3がディスプレイの裏面に接触することで、取付部5を延長姿勢Xとする方向の大きな力が働き易い。しかしながら、保持手段9によって回動姿勢Yが保持されていることにより、このような力が清掃部材3を介して取付部5に働いたとしても、保持手段9で回動姿勢Yが保持されることにより、清掃部材3でディスプレイの裏面を除塵できる。
本実施形態の除塵具1では、回動姿勢Yの取付部5における把持体部4の近傍位置の一例として、長手方向に対して120°回動した姿勢を例示できる。長手方向に対して90°を超えられるのは、回動中心部30の回動が90°に制限されないからである。すなわち、回動中心部30が一方受環体20と他方受環体25との間に挟まれており、一方受環体20および他方受環体25の何れが、回動中心部30の回動を制限していない構成である。回動中心部30の回動は、把持体部4の他端側部分である補強部18により制限される。換言すれば、把持体部4の他端側部分での取付部5の制限範囲を広げることで、取付部5は、長手方向に対して120°回動を超えて回動させることもできる。
本実施形態の除塵具1では、図10(a)で示す延長姿勢Xと、図10(e)で示す回動姿勢Yの他に、例えば図10(b)ないし(d)で示すように、取付部5を両姿勢の途中の途中姿勢として、種々の部位を清掃することができる。途中姿勢は、保持手段9によって保持される。なお、保持溝34は回動中心穴33の周方向に間欠的に形成されていることから、取付部5の姿勢の保持は、保持溝34に挿通片41が係止することで、保持溝34が存在する位置として特定される。
さらに、前述したように、除塵する周囲環境に応じて使い勝手がよいように、使用者は、小径杆6を大径杆7に対しその長手方向に延ばしたり、縮めたりして把持体部4の長さを調整することができる。したがって、取付部5の姿勢、および把持体部4の長さの双方を調整することで、清掃しようとする場所に応じて使い勝手の良好な除塵具1とすることができる。
なお、上記実施形態の保持手段9では、取付部5がその回動方向において、複数箇所において保持される構成とした。しかしながら、弾性体43の弾性復元力を利用して、挿通溝24、保持溝34、挿通片41を設けず、台片23と一方蓋部材38の裏面との摩擦力により、無段階で姿勢を保持させることもできる。