JP2017135043A - セルロース微多孔膜及びその製造方法、並びに、電気化学素子 - Google Patents

セルロース微多孔膜及びその製造方法、並びに、電気化学素子 Download PDF

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Abstract

【課題】
低内部抵抗等の二次電池用セパレータやキャパシタ用セパレータに好適なセルロース微多孔膜であって、空孔率が高く、乾燥工程等における加熱による強度の低下が小さく、安全性の高いセルロース微多孔膜を提供することを課題とする。
【解決手段】
セルロース繊維及び高分子バインダーを原料とするセルロース微多孔膜であって、吸液率が50%〜140%であり、前記セルロース繊維に1μm以上の太さの繊維がセルロース繊維の全重量を基準として5重量%以上含まれており、当該セルロース微多孔膜の紙面pHを8.0以上11.0以下とするセルロース微多孔膜とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、特に、二次電池用セパレータやキャパシタ用セパレータに好適なセルロース微多孔膜及びその製造方法、並びに、電気化学素子に関する。
近年、化石資源の枯渇やCO削減といった環境問題に対応するためにエネルギー源としての電気の利用が高まりつつある。そこで、自動車業界では二次電池を利用した電気自動車の開発が盛んに行われている。また、太陽光、風力等の自然エネルギーの有効利用の観点からも二次電池は注目を浴びている。
電気自動車の駆動用の二次電池としては、一般に、出力とエネルギー密度の関係から現時点ではリチウムイオン二次電池が採用されている。一方で、より高いエネルギー密度、出力、安全性等の観点から次世代電池の開発に各社が力を注いでおり、大きな市場が期待される分野である。
一方、リチウムイオン二次電池に限らず、一次電池やコンデンサには紙、不織布、微多孔フィルム等のセパレータが使用されている。一般的にセパレータに要求される性能は、正負極間の短絡防止、電解液に対する化学的安定性、低い内部抵抗等である。これらの要求性能はデバイス間によって求められる程度には差があるが、種類によらずセパレータに共通して求められる特性でもある。特に低い内部抵抗を実現させるためには、セパレータの空孔率を一定以上に設計する必要がある。
ほとんどのリチウムイオン二次電池のセパレータには、ポリプロピレン、ポリエチレン等の高分子有機化合物で作られた微多孔膜が採用されている。これらの微多孔膜は、リチウムイオン二次電池に適した幾つかの特徴を有する。例えば、
1)電解液に対して化学的に安定であり、セパレータにより致命的な欠陥を起こさない。
2)セパレータの厚さを自由に設計することができるため、様々な要求に対応したセパレータの提供が可能である。
3)細孔径のサイズを小さく設計することができるため、リチウム遮断特性が優れ、リチウムデンドライトによる短絡が発生し難い。
4)リチウムイオン二次電池が熱暴走を起こした際に、ポリプロピレンやポリエチレンが溶融閉塞し、初期の熱暴走を抑制することが可能である。
といった点である。
ポリプロピレンやポリエチレンを材料としたセパレータは、上述の通り、電池が高温になった際に溶融閉塞して電池内の反応を停止し、電池温度のさらなる上昇を抑制する機構を保持している。しかしながら、稀にセパレータが溶融閉塞した後にも電池の温度が上昇することがある。この場合、セパレータが更に溶融して大きな穴が開くメルトダウンが発生し、電極が短絡するおそれがある。このようなメルトダウンの発生が、電池の熱暴走の一因であるとされている。
メルトダウンを防ぐための手法として、ポリプロピレンやポリエチレン微多孔膜の表面に、セラミック粉末等の無機フィラー層を設ける技術(特許文献1)や、耐熱性高分子による層を利用する技術(特許文献2)、アラミド繊維等の耐熱性高分子繊維を利用した不織布(特許文献3)等が知られている。しかしながら、このような特殊な材料を用いた手法は、セパレータのコスト上昇に繋がる点が問題となる。とりわけ、セパレータは電池コストの2割を占めるとされる材料であるため、今以上のコストダウンが求められており、これらの耐熱セパレータは特殊な用途にのみ使用されているのが現状である。
一方、基材としてセルロースを利用したセパレータも数多く提案されている。例えば、特許文献4では、セルロースナノファイバーを使ったセパレータが提案されている。セルロースは熱溶融を起こさず、かつ他の熱溶融しにくい合成高分子と比較して安価であることから、メルトダウンに強く安全性の高いセパレータの材料として有望視されている。
しかし、セルロースをセパレータとして利用する場合、その親水性の高さが問題となることがある。とりわけリチウムイオン二次電池の場合は、電解質が水と反応して分解することから水分は禁忌物質とされており、セルロースをセパレータとして利用する場合には、乾燥によって事前に水分を十分除去しておく必要がある。
例えば、電池部材の乾燥には真空オーブンによる減圧加熱乾燥が利用されるが、セルロースは一般に、加熱により変色や強度の低下を起こすことが知られている(例えば、特許文献5)。とりわけ強度の低下については、蓄電デバイスを組み立てる工程でのシートの破断の原因となったり、デンドライトの発生に伴う短絡を防止する能力の低下をきたしたりすることに繋がるため、セルロースを蓄電デバイスのセパレータとして利用する場合は、加熱による強度低下についての対策を講じる必要がある。
セルロースの耐熱性を向上させるためには、セルロースを無水酢酸等でアセチル化する方法、アセトニトリルによりシアノエチル化する方法等が知られている(非特許文献1)。しかし、これらの手法ではあらかじめ作成したセルロースシートを後工程で誘導化する必要があり、プロセスが複雑となることから現時点でほとんど実施されていない。
耐熱性を付与したセルロース系セパレータの事例として、特許文献6では、ポリカルボジイミド共重合体を主体とする熱硬化性樹脂を紙に塗布又は含浸し硬化することにより耐熱セパレータを得る方法が開示されている。しかし、塗工や含浸のような後加工によって耐熱性の樹脂をシートに付与する方法では、樹脂がセパレータの細孔を塞いでしまいイオンの移動を阻害することから、セパレータの基本的な性能を毀損してしまうという問題があった。
特開2000−30686号公報 特開平10−6453号公報 特開2012−9165号公報 特許第4628764号公報 特開2007−39842号公報 特開平10−8396号公報
上述の状況を鑑み、本発明の課題は、低内部抵抗であり、強度にも優れ、安全性等の電気化学素子向けのセパレータとしての性能に優れるセルロース微多孔膜及びその容易な製造方法を提供することにある。
より具体的には、本発明は、空孔率が高く、乾燥工程等における加熱による強度低下が小さく、電気化学素子用のセパレータとしても好適なセルロース微多孔膜を簡易な手法で提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セルロース繊維と高分子バインダーを含むセルロース微多孔膜の紙面pHを一定の範囲になるよう設計することで、蓄電デバイス用の特性に優れるセルロース微多孔膜を提供できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、セルロース繊維及び高分子バインダーを原料とする微多孔膜であって、前記微多孔膜の紙面pHが8.0以上11.0以下であるセルロース微多孔膜に関する。
前記高分子バインダーはカルボキシメチルセルロースであることが好ましい。
前記セルロース微多孔膜は、塩基性化合物を含むことが好ましい。
前記塩基性化合物が2価金属化合物であることが好ましい。
前記2価金属がマグネシウムであることが好ましい。
前記2価金属化合物が酸化マグネシウム及び/又は塩基性炭酸マグネシウムであることが好ましい。
前記セルロース微多孔膜は、170℃で10時間真空乾燥した後の突刺強度が25gf/25μm以上、かつ突刺強度の減少率が30%以下であることが好ましい。
前記セルロース微多孔膜の吸液率が50%〜140%であることが好ましい。
前記セルロース繊維に1μm以上の太さの繊維がセルロース繊維の全重量を基準として5重量%以上含まれていることが好ましい。
前記高分子バインダーがセルロース繊維100重量部に対して5〜50重量部の割合で含まれることが好ましい。
また、本発明は、セルロース繊維、沸点が180℃以上の親水性開孔剤、高分子バインダー及び塩基性化合物を少なくとも含むスラリーを基材上に塗布する工程、前記スラリーを乾燥させて前記基材上にシートを形成する工程、及び、前記シートを前記基材から剥離する工程を備える、セルロース微多孔膜の製造方法にも関する。
前記高分子バインダーがカルボキシメチルセルロースであることが好ましい。
前記塩基性化合物が2価金属化合物であることが好ましい。
前記2価金属がマグネシウムであることが好ましい。
前記2価金属化合物が酸化マグネシウム及び/又は塩基性炭酸マグネシウムであることが好ましい。
前記セルロース繊維に1μm以上の太さの繊維がセルロース繊維の全重量を基準として5重量%以上含まれていることが好ましい。
前記親水性開孔剤の水への溶解度が10重量%以上であることが好ましい。
前記親水性開孔剤がグリコールエーテル類であることが好ましい。
本発明の製造方法は、前記シート又は微多孔膜を有機溶媒で洗浄する工程を更に備えることが好ましい。
本発明は、前記セルロース微多孔膜からなる、電気化学素子用セパレータにも関する。
特に、本発明は、前記電気化学素子用セパレータを備える電気化学素子にも関する。
前記電気化学素子は電池又はキャパシタであることが好ましい。
本発明のセルロース微多孔膜は、十分な強度を有し、低内部抵抗等の電気化学素子向けセパレータとして好適に使用ができ、セルロース不織布、紙等では発揮できなかった高いリチウム遮断特性を有しつつ、耐熱性に優れるために、電気化学素子を製造する際の特に乾燥処理においても強度劣化を抑えることが可能であり、電気化学素子の生産効率が良好であり、更に、低コストで製造することが可能となる。
そして、本発明のセルロース微多孔膜は、セルロース繊維を用いることで熱溶融を起こさない特性を保持しつつ、電気化学素子製造時の加熱乾燥工程にセパレータとして供したとしてもその強度を保持することができるため、加工適性に優れ、また、電気化学素子の安全性に高く寄与することができる。
また、本発明のセルロース微多孔膜の製造方法では、セルロース誘導体や多糖類の誘導体をセルロースシートに塗布又は含浸する必要なくシート中に均一に分散させることができるため、シートの微細な孔が閉塞されることがない。従って、セルロース微多孔膜の低内部抵抗を実現できる。
そして、本発明のセルロース微多孔膜の製造方法では、微多孔膜の細孔径及び細孔量を自由に設計することが可能となるため、セルロース不織布、紙等では発揮できなかった高いリチウム遮断特性を有しつつ、且つ、低インピーダンス又は低体積抵抗率を有する二次電池用セパレータに好適なセルロース微多孔膜を得ることが可能であり、また、得られたセルロース多孔質膜は優れた強度を備えており、更に、そのようなセルロース微多孔膜を低コストで製造することが可能となる。
本発明のセルロース微多孔膜は、セルロース繊維及び高分子バインダーからなり、その紙面pHが8.0以上11.0以下である。
本発明において使用可能なセルロース繊維は、特にセルロースI型、セルロースII型等のセルロースの型は限定されないが、コットン、コットンリンター、木材パルプに代表されるような、セルロースI型の天然繊維が好ましい。再生セルロースに代表されるセルロースII型の繊維はセルロースI型の繊維に比べ結晶化度が低くフィブリル化処理を行う際に、短繊維化しやすい傾向があるので好ましくない。
本発明においては、セルロース繊維をミクロフィブリル化してもよい。セルロース繊維をミクロフィブリル化処理する装置は特に限定されるものではないが、例えば、高圧ホモジナイザー処理(マントン・ゴーリン型分散機による高圧分散処理)、ラニエタイプ圧力式ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー処理(アルテマイザーTM(スギノマシーン株式会社製))、ビーズミルや流星ミル等の分散装置、粒度16〜120番の砥粒を備える砥粒板を複数枚擦合せ配置した砥粒板擦合装置(マスコロイダー(、増幸産業株式会社製)等のホモジナイザー等が挙げられる。また、ミクロフィブリル化処理する前にダブルディスクリファイナー、ビーター等製紙用で使用している叩解機を前処理に使用することも可能である。また、セルロースナノファイバーを用いてもよい。
本発明のセルロース微多孔膜には、セルロース繊維間を繋ぐための接着剤として、高分子バインダーを含む。高分子バインダーとしては、特に制限はないが、親水性高分子バインダーが好ましく、カルボキシ基及び/又は水酸基を有することがより好ましく、例えばセルロース誘導体や多糖類が利用できる。親水性高分子バインダー、好ましくはカルボキシ基及び/又は水酸基を含有する親水性高分子バインダーは、樹脂の形態であっても、エマルジョンの形態であってもよい。具体的には、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース等のセルロース誘導体、アルギン酸、両性澱粉、カルボキシル変性澱粉、リン酸エステル化デンプン、コーンスターチ等の多糖類の誘導体、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、カルボキシ基変性ポリビニルアルコール等が利用可能であるが、これらに限定されるものではない。中でも、カルボキシメチルセルロースが好ましく利用可能である。これは、カルボキシメチルセルロースが、セルロースと同じくグルコース残基がβ‐1,4グリコシド結合にて繋がった骨格を持っているため、両者を混合した際に両者の親和性が高いためであると考えられる。また、セルロース誘導体のアンモニウム塩を使用すると、後述するスラリーの粘度が低くなる傾向にあることから、スラリーを高濃度で使用することができ、好ましい。
前記高分子バインダーの使用量は特に限定されるものではないが、セルロース繊維100重量部に対して3〜80重量部の割合で配合することが好ましく、5〜50重量部の割合がより好ましい。3重量部未満では、形成されるセルロース微多孔膜の強度が低下するおそれがあり、さらにはセルロース繊維の分散性も悪化するため好ましくない。また、80重量部を超えて配合すると高分子バインダーが微多孔膜の細孔を埋めてしまう形となり、セルロース微多孔膜の抵抗率が高くなるため好ましくない。
ところで、高分子バインダーとしてセルロース誘導体や多糖類の誘導体を使用した場合、加熱によりシート強度の劣化が大きいことが本発明者らの検証によって初めて判明した。特にセルロース誘導体や多糖類のアンモニウム塩を使用した場合の劣化が顕著であった。そのため、セルロース誘導体や多糖類を蓄電デバイスのセパレータに使用する場合は、加熱による強度低下についての対策を講じる必要がある。
この対策として、本発明では、セルロース微多孔膜の紙面pHを8.0以上11.0以下とすることを特徴とする。これにより、前記セルロース誘導体や多糖類誘導体を高分子バインダーとして使用した際に生じる加熱による強度低下を改善できることが本発明者らによって見出された。改善できる理由は、加熱によるセルロースの分解で生じるギ酸や酢酸等の有機酸を塩基性化合物が中和するからであると推測される。紙面pHが8.0未満の場合は、上記有機酸を中和することができず加熱後の強度劣化が著しく、紙面pHが11.0を超える場合は、セルロース繊維や高分子バインダー自体の劣化が生じて強度が大きく下がるおそれがある。
セルロース微多孔膜の紙面pHを前記の範囲に設計する手段は、特に限定されないが、本発明の性能を阻害しないものを選択する。例えばセルロース繊維及び高分子バインダーと共に塩基性化合物を含有させることが考えられる。塩基性化合物を含有させる場合、微多孔膜作成後の紙面pHを調整するため、アンモニアなどの揮発性を有する塩基性化合物は使用に適さず、無機水酸化物、無機酸化物、塩基性金属が挙げられる。具体例としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、酸化ナトリウムや酸化カリウム等のアルカリ金属酸化物、水酸化マグネシウムや水酸化カルシウム等の2価金属の水酸化物、酸化マグネシウムや酸化カルシウム等の2価金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カルシウム、リン酸三カリウム等及びこれらの混合物が挙げられる。特に、2価金属化合物が好ましい。その理由は加熱後の微多孔膜の変色が少ないからである。1価金属化合物を含有させた場合、強度劣化は少ないが微多孔膜が茶色に変色する。変色によって電気化学素子用のセパレータとしての性能が悪化するデータや知見はないが、加熱によるなんらかの変化が起きていると予想されるため、その変化が電気化学素子の安全性に悪影響を与える可能性もあることを考慮すると、変化が少ない2価金属化合物の方が好ましい。
本発明に使用される2価金属化合物は、セルロース微多孔膜の紙面pHを8以上11.0以下に制御できるものであれば特に限定はないが、例えば、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、水酸化バリウム、酸化バリウム、硫酸バリウム、塩化バリウム、水酸化ベリリウム、酸化ベリリウム、炭酸ベリリウム、塩化ベリリウム、硫酸ベリリウム等が挙げられる。特に水に溶解した際に、塩化物イオンや硫酸イオンが発生しないものが好ましく、また、強アルカリ性を示さないものが好ましい。以上を考慮し、更に入手容易性を考慮すると、2価金属がマグネシウムであることが好ましく、特に酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウムがさらに好ましい。
本発明のセルロース微多孔膜は、加熱乾燥した後の突刺強度に優れるものであり、170℃で10時間真空乾燥した後の突刺強度が25gf/25μm以上であることが好ましい。特に、電気化学素子用セパレータとして好適な空孔率を維持したまま、当該突刺強度が25gf/25μm以上を発現するには、突刺強度の減少率が30%以下であることが更に好ましい。前記加熱乾燥後の突刺強度が25gf/25μm未満では、電気化学素子を構成する電極材等の鋭利部によってセルロース微多孔膜に穴が開いたり、引き裂かれたりすることで、電気化学素子の不良率が高くなるおそれがある。
本発明においては、使用されるセルロース繊維の全重量に対して1μm以上の径を有する繊維が5重量%以上含まれていることが好ましく、10重量%以上含まれていることがより好ましい。特に、基材上でのスラリーのキャスト塗工を行うにあたり、繊維径が1μm未満の細いセルロース繊維のみを用いてスラリーを調製するとスラリーの粘度が高くなるので、当該スラリーに溶媒等を添加して低粘度化することが必要となるが、その後の溶媒等の乾燥コストが増えるため好ましくない。また、一般的手法でセルロース繊維にせん断力を与えて繊維径の細いセルロース繊維を製造すると繊維長もあわせて短くなる傾向があり、作成した微多孔膜又はシートの引裂強度等の強度が低下する傾向がある。そのため、1μm以上の太さを有する繊維が5重量%以上存在することで得られる微多孔膜又はシートの引裂強度を向上させることができる。なお、1μm以上の太さを有する繊維以外の繊維については、数nm程度の非常に細いナノファイバーを使用することも可能である。
本発明において使用されるセルロース繊維中に占める1μm以上の径を有する繊維量の上限は特に限定されるものではないが、例えば、40重量%以下とすることができ、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。1μm以上の径を有する繊維が所定量を超えて存在すると、セルロース繊維同士が水素結合によって接触する接点の数が減少するため、得られる微多孔膜又はシートの強度が低下するおそれがある。
前記の1μm以上の径を有する繊維が含まれる割合の測定は次のとおりである。X線CT解析装置を使用し、その回折データを1μm以上の太さを観察できる閾値に設定して、繊維部分を抽出し全体量に含まれる割合から繊維量を計算する方法を採用した。試料は約1mm幅にカットした後、試料保持治具に固定してTDM1000H−Sμを用いてCTスキャンした。繊維量の計測は、試料外周部の空気部分を含まないようにするため、中心部の任意の27.89μm×448.70μm×432.26μmの範囲を抽出して実施した。
本発明では、前記セルロース誘導体と多糖類の誘導体は架橋されていてもよい。架橋することでセルロース微多孔膜の強度を向上させることができ、同時に熱に対する安定性を高めることができる。この架橋は、誘導体の分子間のみで形成されていてもよいし誘導体とセルロースとの間に形成されていてもよい。
微多孔膜の強度に影響する因子として前記架橋の密度が挙げられる。架橋密度が高すぎると、架橋された分子同士は動きにくくなり、結果的に、得られる微多孔膜に応力がかかった時の伸び性が低下する。したがって、前記誘導体を架橋剤によって架橋する場合、誘導体間、及び、場合によっては誘導体とセルロース間を架橋する架橋剤の種類は特に限定されるものではないが、高分子化合物(高分子量化合物)であることが好ましい。具体的には、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、グリオキザール基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、ビニルスルホン基含有化合物等が架橋剤として利用可能である。中でも、架橋剤が架橋点を複数持つ化合物であると、より多くの分子、繊維を含んだ架橋構造を形成することが可能であるため好ましい。
本発明のセルロース微多孔膜は強度特性に優れるものである。具体的には、本発明のセルロース微多孔膜の引張強度は50N・m/g以上であり、及び/又は、その引裂強度は0.30kN/m以上であることが好ましい。引張強度はJIS C2151に従って測定することができる。一方、引裂強度はJIS K7128−1に従うトラウザー引裂法によって測定することができる。引張強度は60N・m/g以上が好ましく、70N・m/g以上がより好ましい。引裂強度は0.4kN/m以上が好ましく、0.5kN/m以上がより好ましく、0.6kN/m以上が更により好ましい。なお、通常の電気化学素子セパレータ用セルロース膜は引張強度及び引裂強度を共に優れたものとすることは困難であるが、セルロース微多孔膜を構成するセルロース繊維に1μm以上の太さの繊維がセルロース繊維の全重量を基準として5重量%以上含まれる場合は、引張強度及び引裂強度を共に優れたものとすることもできる。
本発明のセルロース微多孔膜の細孔径は、水銀圧入法で測定される細孔径の最大値が1.5μm以下であることが好ましい。リチウムイオン電池等の電気化学素子で使用される電極活物質の粒子径は様々な大きさがあるため、必ずしも細孔径が小さくなければならない訳ではない。およその基準としては、使用される活物質の粒子径の1/4の細孔径であれば短絡は起きないとされている。一方で粒子径の小さい活物質を使用する電気化学素子に用いる場合には最大値が1.5μmよりも小さくする必要がある場合もありうる。
本発明のセルロース微多孔膜は、膜厚10μm当たりの透気抵抗度が20〜600秒(/100cc)であり、20〜450秒が好ましく、20〜250秒がより好ましい。前記透気抵抗度はJIS P8117に基づいて測定することができる。前記透気抵抗度が20秒未満の場合、リチウムイオン二次電池用途ではリチウム遮断特性が低下し、リチウムデンドライトによる短絡が発生するリスクが高くなるため、安全上好ましくない。600秒超の場合は、特に体積抵抗率が大きくなり電気化学素子の出力特性を落とすことになるため好ましくない。
本発明のセルロース微多孔膜は、1mol/Lの濃度のLiPFのプロピレンカーボネート溶液を含浸させた状態において20kHzの交流電流を用いて測定される体積抵抗率が1500Ω・cm以下であることが好ましい。体積抵抗率は、前述の透気抵抗度及び空孔率と相関があり、基本的には、透気抵抗度が低く、空孔率が高くなると体積抵抗率が下がる傾向にあるが、体積抵抗率には空孔のサイズ及び膜中の空孔の分布状態も影響するため、透気抵抗度が低く、空孔率が高いものが必ずしも低い体積抵抗率を示すとは限らない。ここで、周波数が20kHzの交流を利用するのは、電極界面の反応等の電気化学的な要素を体積抵抗率の測定値から除くことが目的である。これにより、測定装置の抵抗とセルロース微多孔膜のイオン電導性の合計のみが測定値に寄与するため、当該測定値がセルロース微多孔膜細孔分布及び細孔径を反映することができる。本発明のセルロース微多孔膜は、この体積抵抗率が1500Ω・cm以下であることが好ましく、1000Ω・cm以下がより好ましい。1500Ω・cmを超えるとサイクル特性が悪くなるおそれがある。1500Ω・cm以下では良好なサイクル特性を発現し電気化学素子用セパレータとして好適に使用可能である。
本発明における20kHzの交流を用いた体積抵抗率の測定は、以下の手順で行うことができる。まず、直径20mmのサイズに打ち抜いたセルロース微多孔膜を150℃の条件で24時間以上乾燥させる。次に、乾燥したセルロース微多孔膜を、例えば、SH2−Z型固体用サンプルホルダ(東陽テクニカ製)に5枚重ねて入れ、1mol/Lの濃度のLiPF/プロピレンカーボネートの電解液に十分に浸す。そして、好ましくは、0.8MPaまで減圧してセルロース微多孔膜間に残る空気を脱気した後、対向する2枚の金電極の間に挟み、ポテンショ/ガルバノスタッドを組み合わせた周波数応答アナライザVSP(Bio−Logic製)を用いて掃引周波数100m〜1MHz、振幅10mVの条件で交流インピーダンス値(Ω)を測定する。この値とセルロース微多孔膜の厚さから単位体積当たりの抵抗率(体積抵抗率)に換算する。なお、測定装置が持つ抵抗成分のみを測定しておくか、測定結果に反映されないようキャンセルしておくことが望ましい。
本発明のセルロース微多孔膜の空孔率は、吸液率の値で評価することができ、吸液率50%〜140%が好ましく、60%〜140%がより好ましく、80%〜120%が更により好ましい。吸液率をこれらの範囲に維持することで、電気化学素子に良好に対応可能なセパレータとなる。吸液率が50%未満でも電気化学素子として作動することは可能ではあるが、抵抗値が高いため出力が下がり電気化学素子としての性能が十分ではないおそれがある。また、140%を超える場合には、細孔分布のモード径が大きくなり微多孔膜に起因する抵抗が下がるので電気化学素子の出力性能及びサイクル特性は向上するが、リチウムイオン二次電池用途ではリチウム遮断特性が低下し、リチウムデンドライトによる短絡が発生するリスクが高くなるため、安全上好ましくない。
前記吸液率の測定方法は、50mm×50mmのサイズにカットしたサンプルを23℃50%RHの雰囲気下で1日調湿した後、サンプルの厚さを測定し、更にサンプルの重量を4桁若しくは5桁秤を用いて秤量する。秤量後、ケロシンに1分間含浸させた後、表面について余分な溶媒を吸い取り紙で吸収した後、再度秤量を行い、前述の計算式より算出した。したがって、吸液率は以下の式により求めることができる。
吸液率(%)=100×(吸液後の微多孔膜又はシート重量−吸液前の微多孔膜又はシート重量)/吸液後の微多孔膜又はシート重量
本発明において空孔率を測定することが可能な溶媒は、セルロースを膨潤させない溶媒なので、極性の低い有機溶媒を用いるのが好ましい。また吸液させた溶媒が短い測定時間の間で揮発してしまわないものを選定する必要がある。特に好ましいものとしては、通常電解液で使用されるプロピレングリコールやケロシン等石油系の高沸点溶媒等が挙げられる。
本発明のセルロース微多孔膜の表面粗さは、表裏ともにRa値1.5以下が好ましい。表面粗さは、電気化学素子を作製した際の正極とセパレータの接触抵抗として交流インピーダンスに影響を与えることが知られている。この接触抵抗は、ラミネートセルやコイン電池等の電気化学素子で測定した周波数が0.1Hzの値と20000Hzの交流インピーダンス値の差から算出することができる。表面粗さRa値が大きくなるに従い0.1Hzの値と20000Hzの値の差が大きくなる。交流インピーダンスの値はオームの法則に従い対向面積に反比例するが、対向面積を大きくすると測定値自体が小さくなるため測定誤差の影響を受けやすいことや、周波数が低くなるに従い、正極、負極の抵抗成分も交流インピーダンスの値に含まれるため、セパレータの違いだけで値を指定できるものではない。但し、同じ電極、同じ電解液、同じサイズの電池であれば、セパレータの表面性の影響の違いを見ることができる。例えばCoLiO2系正極、グラファイト系負極を用い、電解液にはLiPFといった一般的なリチウムイオン二次電池で用いる材料で作成した対向面積15cm2のラミネートセルのこの値は、Ra値1.5でおよそ1Ω程度となる。電池の接触抵抗は出来るだけ低い方が好ましいことからRaができるだけ小さくなる条件が好ましい。なお電池を組んで交流インピーダンスを測定する際には、事前に3から5サイクルほど低いレートで充放電を行ったのち、一定の電圧まで充電後にインピーダンスを測定するのが望ましい。
表面粗さRaは原料の細かさ、繊維の分散状態、基材の表面性の影響により変動する。特にセパレータの基材転写面は、原料の細かさや繊維の分散状態の影響よりも顕著に影響がでるため正極側に好適に使用できる。抄紙法のワイヤーメッシュや濾布を用いるケースでは、ワイヤーメッシュは濾布の転写面がそのまま出てしまうため、Raの値を小さく制御することができず不適である。
本発明のセルロース微多孔膜は、セルロース繊維及び沸点が180℃以上の親水性開孔剤、高分子バインダー及び塩基性化合物を少なくとも含むスラリーを基材に塗布する工程、前記スラリーを乾燥させて前記基材上にシートを形成する工程、及び、前記シートを前記基材から剥離して該シートからなるセルロース微多孔膜を得る工程を少なくとも含む製造方法により得ることができる。
本発明のセルロース微多孔膜は、1μm以上の太さの繊維がセルロース繊維の全重量を基準として5重量%以上含まれているセルロース繊維を含むスラリーから得られるものが好ましい。
本発明の製造方法は、セルロース繊維からなるシートの多孔質化の手段として沸点が180℃以上の親水性開孔剤を含むスラリーを剥離基材上に塗布し乾燥することで、生産効率を大幅に改善することができる。更に、本発明では、親水性開孔剤の水への溶解度を調整することによってシートの孔のサイズを制御することができる。また、本発明では、親水性開孔剤の添加量の調整により空孔率を自由に制御することができる。例えば、本発明では、セルロース繊維100重量(質量)部に対して親水性開孔剤を好ましくは50〜600重量部、より好ましくは80〜400重量部、更により好ましくは100〜300重量部の割合で使用することができる。
本発明の製造方法で使用される親水性開孔剤は、セルロース繊維からなるシートに微細な孔を形成可能な親水性物質であれば特に限定されるものではないが、親水性開孔剤の沸点は、180℃以上であることが必要である。繊維間の水素結合は、乾燥時のシート水分が10〜20重量%の間で形成されることが知られている。この水素結合が形成される際に開孔剤がシート中に存在し、かつ繊維間の水素結合を阻害することにより多孔化が可能となる。沸点が180℃未満の開孔剤を用いた場合は、添加量を多くしても乾燥工程において開孔剤が揮発してしまい、十分に多孔化することができない。そのため沸点が180℃以上の開孔剤が必要であるが、より好ましくは200℃以上である。例えばヘキサノールよりも少ない分子量の一級アルコール等は、水溶性と疎水性をあわせ持つ材料であるが、乾燥工程において水よりも揮発しやすいため十分に水素結合を阻害することができないため本発明においては用いることはできない。但し開孔剤の蒸気で満たした空気を用いて乾燥したり、水よりも蒸気圧の低い溶媒を用いて多段乾燥を用いたりする等の通常の乾燥条件とは異なる乾燥方法を用いた場合は必ずしも沸点が180℃以上である必要はない。
本発明の製造方法で使用される親水性開孔剤は、水への溶解度が10重量%以上のものが好ましく、20重量%以上のものがより好ましく、30重量%以上のものが更により好ましい。水への溶解度が10重量%未満の開孔剤を用いた場合には、開孔剤の添加量が限られるため、目的とする空孔率を開孔剤の添加量のみでコントロールすることが困難となりうる。また乾燥が進むに従い溶媒量が減少することで溶解できない開孔剤が分離するため、シートの面方向、厚さ方向に均一に多孔化することが困難となりうる。なお、このような疎水性の開孔剤は乳化剤等によりエマルジョン化することで、ある程度均一に多孔化することが可能であるが、孔径の制御は困難である。一方、水への溶解度が10重量%以上の開孔剤を用いた場合には、スラリーに均一に分散可能であり、また、水への溶解性が高いので乾燥工程で分離しないため、乾燥工程において均一に水素結合を阻害することで細孔を均一に作ることができる。
本発明で使用される親水性開孔剤は、25℃における蒸気圧が0.1kPa未満のものが好ましく、0.09kPa未満のものがより好ましく、0.08kPa未満のものが更により好ましい。蒸気圧が0.1kPa以上の親水性開孔剤は揮発性が高いのでセルロース膜の多孔化の寄与する前に揮発する傾向が高く、結果として、微多孔質のセルロース膜を得ることが困難となるおそれがある。
本発明で使用される親水性開孔剤は、水/オクタノールの分配係数(Log Pow)が−1.2〜0.8の範囲のものが好ましく、−1.1〜0.8の範囲のものがより好ましく、−0.7〜0.4の範囲のものが更により好ましい。前記オクタノールとしてはn−オクタノールが好ましい。前記分配係数が−1.2未満の親水性開孔剤を使用すると、得られるセルロース微多孔膜のインピーダンス値が高まるおそれがある。
本発明で用いることのできる親水性開孔剤としては具体的には次のようなものがある。例えば1、5−ペンタンジオール、1-メチルアミノ-2,3-プロパンジオール等の高級アルコール類、イプロシンカプロラクトン、α−アセチル−γ−ブチルラクトン等のラクトン類、ジエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、更にその他にグリセリン、炭酸プロピレン、N-メチルピロリドン等が挙げられるがその限りではない。これらの中でもグリコールエーテル類は蒸気圧が低く、本発明の製造方法において最も適している。
本発明において使用されるスラリーは、セルロース繊維と親水性開孔剤以外に繊維間を繋ぐための接着剤として、高分子バインダーを含む。前記誘導体の配合量は、前記セルロース繊維100重量部に対して3〜80重量部が好ましく、5〜50重量部がより好ましい。誘導体は、接着剤としての機能以外に、セルロースの分散性を向上させる機能を発揮することができる。均一な細孔分布を得るためには、スラリー中に繊維が均一に分散する必要があるが、前記誘導体はセルロース繊維の表面に定着することで保護コロイドに似た役割を果たすため分散性が向上する。高分子バインダーの添加量が3重量部未満となると、出来上がった微多孔膜又はシートの強度が低下するおそれがあり、また、セルロース繊維の分散性が悪化するため、均一な細孔を得ることが困難となる。一方、80重量部よりも多い場合には、バインダーが細孔を埋めてしまう形となり、セルロース微多孔膜の体積抵抗率が高くなるため好ましくない。
上記スラリーには更に、既述した架橋剤を含有させることができる。架橋剤が十分に効果を発現するためには、高分子バインダーと架橋剤が均一に混合することが好ましい。架橋剤を微多孔膜に後から添加する方法は、架橋剤を高分子バインダーとスラリー中で事前に混合するという方法と比較して架橋剤と高分子バインダーとの接触の均一性が劣るため、架橋剤の効果が十分に発現しない、架橋剤の必要量が多くなる等の問題が発生することがある。また、一般に、架橋剤は樹脂などと比較して高価な薬品であるため、より少ない使用量で効果を発現させることが求められる。したがって、スラリー中で架橋剤と高分子バインダーを混合することが好ましい。架橋剤をスラリーの段階で添加することで、架橋剤を親水性高分子と均一に混合することができ、微多孔膜又はシート中により均一な架橋構造を形成することが可能である。また、後工程で架橋剤を付与する手法と比較して製造が一工程で可能であるため、製造コストを抑制することが可能である。架橋剤の配合量は、特に限定されるものではないが、セルロース繊維100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、2〜20重量部がより好ましく、3〜10重量部が更により好ましい。
本発明で使用される基材は、特に限定されるものではないが、高分子フィルム、ガラス板、金属板、剥離紙等が使用可能である。なお、基材は、ワイヤー、濾布、濾紙等のスラリー中の親水性開孔剤が裏に抜けないものが好ましい。本発明の製造方法では、親水性開孔剤を用いて多孔化しているため、乾燥前に親水性開孔剤が基材の裏から抜けてしまうと十分にシートを多孔化することができないからである。更に、乾燥した微多孔膜又はシートは、基材の表面性を転写する特性があるため、基材の表面はできるだけ平滑な方が好ましい。これらのことを考慮すると、二軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルムはフレキシブル性があり、溶融温度も比較的高いため、乾燥時の伸びや収縮の影響が少ない。また、ポリプロピレンフィルムと比較して極性も高いため、水系のスラリー処方においても塗工しやすく、好適に使用することが可能である。
本発明の製造方法において、セルロース繊維、親水性開孔剤、高分子バインダー及び塩基性化合物を含むスラリーを基材上に塗布する手法は、塗布層の膜厚が一定の範囲内となるように均一塗布できる塗工方法であればいかなる手段でも使うことができる。例えば、スロットダイコーター、カーテンコーター等の前計量タイプのコーターや、MBコーター、MBリバースコーター、コンマコーター等の後計量タイプでも塗工が可能である。
本発明において、必要な場合には、添加剤として界面活性剤をスラリーに添加することができる。消泡剤やレベリング剤としてアセチレングリコール等に代表されるノニオン性の界面活性剤を電気化学素子性能に影響を与えない程度であれば使用可能である。イオン性の界面活性剤は、電気化学素子性能に影響を与える可能性があるので使わない方が好ましい。
この他に、セルロース繊維、親水性開孔剤、高分子バインダー及び塩基性化合物を含むスラリーには、前記界面活性剤以外にも填料を含むことが可能である。例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子といった無機填料、シリコーンパウダー等の有機填料等を使用することが可能である。これらの粒子は、セパレータの細孔に影響を与えない程度に添加可能であるが、できるだけ平均粒子径が2μm未満のものを使用する方が好ましい。平均粒子径が2μm以上になると、粒子間の隙間により細孔径の大きな孔が開いてしまうため好ましくない。なお、これらの填料はスラリーの粘度を下げる効果があるために塗料濃度を上げることが可能となり生産効率を上げるのに好適である。一方、添加量が多すぎると強度が低下するため、セルロース繊維100重量部に対して100重量部よりも多い添加量は好ましくない。
本発明の製造方法に用いるスラリーの溶媒は基本的に水を使用する必要があるが、乾燥効率を向上させることを目的としてメタノールやエタノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル等のエーテル類等の水よりも蒸気圧の高い溶媒を溶媒全体量の50重量%まで添加することが可能である。これらの溶媒を50重量%以上添加するとセルロース繊維の分散性が悪くなり細孔分布の均一性が悪くなるため好ましくない。
本発明の製造方法では、基材上に塗布された前記スラリーを乾燥してシートを得ることができる。乾燥方法は特に限定されるものではないが、具体的には、熱風乾燥及び遠赤外線乾燥の単独又は組み合わせ等の一般的に使用されている乾燥手法を使用して実施することが可能であり、例えば熱風温度は、30〜150℃、好ましくは60〜120℃とすることができるが、できるだけシートの厚さ方向の構造が均一に乾燥されるように熱風温度、熱風量、遠赤外線の照射条件等を調整する必要がある。また乾燥効率の向上のために、マイクロ波加熱を使用することもできる。
本発明におけるシートの厚さは、10〜40μmの範囲が好ましい。セパレータの厚さは、電気化学素子性能を大きく変える要因であるが、10μm未満であるとリチウム遮断特性が十分ではなく、安全性の面で十分でないおそれがある。一方、40μmを超えるとセパレータの体積抵抗率値が大きくなってしまい、電気化学素子の出力性能を落とすことになるため好ましくない。特に好ましいのはリチウム遮断特性及び体積抵抗率の値のバランスから、15〜30μmの範囲のシートである。
本発明の製造方法では、このようにして基材上に形成されたシートを剥離して当該シートからなるセルロース微多孔膜を得ることができる。基材から微多孔膜を剥離する方法は特に限定されるものではない。
本発明の製造方法は、セルロース繊維及び沸点が180℃以上の親水性開孔剤、高分子バインダー及び塩基性化合物を少なくとも含むスラリーを基材に塗布する工程、前記スラリーを乾燥させて前記基材上にシートを形成する工程、前記シートを前記基材から剥離して該シートからなるセルロース微多孔膜を得る工程に加えて、前記シート又は微多孔膜を有機溶媒で洗浄する工程を更に有することができる。この洗浄工程は、界面活性剤等を必要に応じて使用した場合等において電気化学素子性能を阻害するような成分を取り除き、また、基材から前記シートを剥がす工程をスムーズに行うためのものである。洗浄工程に用いることのできる有機溶媒であれば、特に限定されるものではないが、残留水分が有機溶媒中に移行することによるシートの収縮の影響を避けるためには、水の溶解度が低い疎水性の溶媒が好ましい。
前記有機溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、n‐ヘキサン、トルエン、プロパノール等の比較的揮発速度の速い有機溶剤を1種類又は2種類以上を単独又は混合で1回から数回に分けて使用することができるが、これらに限定されるものではない。残留した開孔剤を洗浄する目的では、エタノール、メタノール等の水と親和性の高い溶媒が好ましいが、シート中の水分が溶媒に移行したり、空気中の水分を吸湿したりして、セルロース微多孔膜の物性やシート形状に影響を与えるため、水分量が管理された状態で使用することが必要である。n−ヘキサン、トルエン等の疎水性の高い溶媒は、親水性開孔剤の洗浄効果は劣るが吸湿しにくいため好適に使用できる。以上の理由から例えば、アセトン、トルエン、n−ヘキサンのように、次第に疎水性が高くなるような順序で洗浄を繰り返しながら溶媒置換していく手法が好ましい。
本発明のセルロース微多孔膜は、電気化学素子用セパレータの一構成要素として又はそのまま電気化学素子用セパレータとして使用することができる。
本発明の電気化学素子用セパレータは、例えば、リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム電池、アルミニウム電解コンデンサ(キャパシタ)、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等に用いることができる。
本発明の電気化学素子の構成は、本発明の電気化学素子用セパレータをセパレータとして用いていること以外は、従来の電気化学素子と全く同様の構成とすることができる。なお、電気化学素子のセル構造は特に限定するものではなく、積層型、円筒型、角型、コイン型等が挙げられる。
例えば、本発明の電気化学素子としてのリチウムイオン二次電池は、正極と負極とを有し、これらの間に本発明の電気化学素子用セパレータが配置され、この電気化学素子用セパレータに電解液が含浸されたものである。
上記正極及び負極は電極活物質を含む。正極活物質としては従来公知のものを用いることができ、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMn等のリチウム遷移金属酸化物や、LiFePO等のリチウム金属リン酸塩等が挙げられる。負極活物質としては従来公知のものを用いることができ、例えば、グラファイト等の炭素材料やリチウム合金等が挙げられる。また、電極には必要に応じて、従来公知の導電助材や結着剤が添加される。
リチウムイオン二次電池を製造するにはまず、正極活物質、負極活物質とそれぞれ、必要に応じて、従来公知の導電助材や結着剤とを含有してなる正極合剤、負極合剤を従来公知の集電体に塗布する。集電体としては例えば、正極にはアルミニウム等、負極には銅、ニッケル等が用いられる。正極合剤、負極合剤を集電体に塗布した後、乾燥させ、加圧成形することにより、集電体に活物質層が形成された正極及び負極がそれぞれ得られる。
次いで、得られた正極及び負極と、上述の電気化学素子用セパレータとを、正極、電気化学素子用セパレータ、負極の順に積層し或いは巻回して素子を構成する。次いで、その素子を外装材に収納し、集電体を外部電極に接続して、従来公知の電解液を含浸した後、外装材を封止してリチウムイオン二次電池が得られる。
また、例えば、本発明のセパレータを備える電気化学素子としての電気二重層キャパシタは、正極と負極とを有し、これらの間に本発明の電気化学素子用セパレータが配置され、この電気化学素子用セパレータに電解液が含浸されたものである。
正極及び負極の電極は例えば、活性炭粉末と従来公知の導電助剤や結着剤とを含有してなる電極合剤を従来公知の集電体に塗布し、乾燥させ、加圧成形することにより得られる。集電体としては例えば、アルミニウム等が用いられる。
電気二重層キャパシタは、正極及び負極と、本発明の電気化学素子用セパレータとを、正極、電気化学素子用セパレータ、負極の順に積層し或いは巻回して素子を構成する。次いで、その素子を外装材に収納し、集電体を外部電極に接続して、従来公知の電解液を含浸した後、外装材を封止することにより得られる。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
(1)吸液率の測定
空孔率の代替特性として、吸液率を以下のように測定した。
50mm×50mmのサイズにカットしたサンプルを23℃50%RHの雰囲気下で1日調湿した後、サンプルの重量を4桁若しくは5桁秤を用いて秤量する。秤量後、ケロシンに1分間含浸させた後、表面について余分な溶媒を吸い取り紙で吸収した後、再度秤量を行い、前述の計算式により算出した。
(2)厚さの測定
紙厚計TM600(熊谷理機社製)を用い、セルロース微多孔膜50mm×50mmのサンプルの厚さを任意で5点測定し、その平均値を膜厚とした。
(3)突刺強度及びその減少率の測定
50mm×50mmのサイズにカットしたセルロース微多孔膜のサンプルを23℃50%RHの雰囲気下で1日調湿した後、先端の曲率半径0.5mmの針を備えたハンディー圧縮試験機(商品名:KES−G5、カトーテック社製)を用い、0.01cm/秒の速度で貫通時の強度を4点測定し、その平均値を突刺強度とした。その後、サンプルをガラス板に挟んだ状態で170℃、10時間、ゲージ圧が−0.08Mpa以下の条件で減圧乾燥した後、再度前述の条件で突刺強度を測定し、以下の式で突刺強度の減少率を算出した。
突刺強度の減少率(%)=100×(乾燥前の突刺強度−乾燥後の突刺強度)/乾燥前の突刺強度
(4)電気化学素子用セパレータの適性評価
以下の要領で、セルロース微多孔膜の電気化学素子用セパレータとしての適性を評価した。
(4−1)リチウムイオン二次電池の作製
正極は、LiCoO、アセチレンブラック及びPvdf−NMP溶液(ポリフッ化ビニリデン−N−メチルピロリドン)を固形分の質量比89:6:5で混合した合剤を、アルミニウム箔上に塗布・乾燥し、加圧成型した後に加熱処理して作製した。負極は、メソカーボンマイクロビーズ黒鉛、アセチレンブラック及びPvdf−NMP溶液を、固形分の質量比90:5:5で混合した合剤を、銅箔上に塗布・乾燥し、加圧成型した後に加熱処理して作製した。ラミネートセルを組む前の乾燥処理として、電極は120℃、10時間、各実施例及び比較例のセルロース微多孔膜は170℃、10時間の真空乾燥を行った。次に各セルロース微多孔膜を負極と正極との間に介在させて電極群を形成し、その電極群と、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネートを体積比3:7で混合した溶媒に1mol/LのLiPFを溶解させた非水電解液とをアルミパック内に装填して、リチウムイオン二次電池(セルサイズ:30×50mm、電池容量:180mAh)を作製した。
(4−2)リチウムイオン電池の評価
各ラミネートセルの充放電には電池充放電装置HJ1001SD8(北斗電工社製)を用いた。5時間率0.2Cで充電し、4.2Vに達したところで2時間CC/CV充電を行い、10分休止した後、5時間率0.2Cで3Vまで放電した。この充放電サイクルを10サイクル行った。作成した5個のラミネートセルのうち、一つでも短絡が起きた場合を不合格とした。
(4−3)電気二重層キャパシタの作製
電極は、活性炭、アセチレンブラック及びテトラフルオロエチレンの混合物を固形分の質量比10:1:1で混合した合剤を、アルミニウム箔上に塗布・乾燥し、加圧成型した後に加熱処理して作製した。ラミネートセルを組む前の乾燥処理として、電極と各実施例及び比較例のセルロース微多孔膜は全て170℃、10時間の真空乾燥を行った。次に電極を対向面積15cmとなるようにし、2枚の電極の間にセルロース微多孔膜を介在させ、1mol/LのテトラエチルアンモニウムBF4塩(有機系電解質)のプロピレンカーボネート溶液を充填し、電気二重層キャパシタを作製した。
(4−4)電気二重層キャパシタの評価
各ラミネートセルの充放電には電池充放電装置HJ1001SD8(北斗電工社製)を用いた。5時間率0.2Cで2.5Vまで充電を行い、10分休止した後、5時間率0.2Cで0Vまで放電した。この充放電サイクルを10サイクル行った。作成した5個のラミネートセルのうち、一つでも短絡が起きた場合を不合格とした。
(5)紙面pHの測定
紙面pHが10以下の場合はJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.49−2:2000年の手法に従って測定した。測定には、紙面pH用の測定キット(共立理化学研究所社製)を使用した。紙面pHが10以上を示す場合はJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.49−1:2000年の手法に従って測定した。測定には表面pH測定用のpHメーターF−72F(堀場製作所社製)を使用した。
[実施例1]
NBKPをイオン交換水中に3重量%濃度になるように分散させ、ダブルディスクリファイナーを用いて長さ荷重平均繊維長1.0mm以下となるような条件までサイクリングにて叩解した。長さ荷重平均繊維長が1.0mm以下となったセルロース繊維分散液を高圧ホモジナイザーLAB−1000(エスエムテー社製)で800barの条件で10回処理することにより微細化セルロース繊維原料1を得た。同様の手法を用いて、高圧ホモジナイザーで3回処理することにより微細化セルロース繊維原料2を得た。それぞれ、繊維遠心分離装置を用いて10000rpmの条件で5分間処理することにより約10重量%まで濃縮した。
セルロース繊維の全体量に対して、セルロース繊維原料1の固形分を90重量%、セルロース繊維原料2を10重量%混ぜた原料を100重量部とし、当該原料100重量部に対して、親水性開孔剤として沸点が230℃、水への溶解度が無限大であるジエチレングリコールモノブチルエーテル(商品名:ハイソルブDB、東邦化学工業社製)を200重量部、バインダーとして1重量%濃度でイオン交換水に溶解した、カルボキシメチルセルロース(商品名:DN100L、ダイセルファインケム社製)を20重量部、塩基性炭酸マグネシウム(商品名:GP−30、神島化学工業社製)を5重量部添加し、最終的に固形分濃度が2.0重量%となるように水を加えた塗料スラリーを1.5μmのジルコニアビーズを用いて、ビーズミルを使用して均一に混ざるまで分散を行った。
調合した塗料を100μmのPETフィルム上にWET膜厚が1mmとなるようアプリケーターを用いて塗布し、熱風及び赤外線ヒーターを用いて100℃で12分間乾燥した。得られた塗工膜をPETフィルムから剥離して膜厚が25μmのセルロース微多孔膜を得た。
[実施例2]
塩基性炭酸マグネシウムの代わりに酸化マグネシウム(商品名:スターマグPSF−150、神島化学工業社製)を添加した以外は、実施例1と同様な手法によって、セルロース微多孔膜を得た。
[実施例3]
塩基性炭酸マグネシウムの代わりに炭酸カルシウム(商品名:白艶華PZ、白石工業社製)を添加した以外は、実施例1と同様な手法によって、セルロース微多孔膜を得た。
[比較例1]
塩基性炭酸マグネシウムを添加しない以外は、実施例1と同様な手法によって、セルロース微多孔膜を得た。
[比較例2]
塩基性炭酸マグネシウムの代わりに水酸化マグネシウム(商品名:マグシーズX−6、神島化学工業社製)を添加した以外は、実施例1と同様な手法によって、セルロース微多孔膜を得た。
[比較例3]
塩基性炭酸マグネシウムの代わりに高純度アルミナ(商品名:AKP−3000、住友化学社製)を添加した以外は、実施例1と同様の手法によって、セルロース微多孔膜を得た。
[比較例4]
カルボキシメチルセルロースを除いたこと以外は実施例1と同様の手法でシートの作成を試みたが、塗料スラリーの分散性が悪く、均一なシートを調製することができなかった。
実施例1〜3及び比較例1〜5で作成したセルロース微多孔膜の吸液率を表1に示す。
Figure 2017135043
実施例1〜3のいずれのセルロース微多孔膜も、十分な吸液率の値であり、つまりセパレータとして好適な空孔率を有していることから電気化学素子のセパレータとして好適に使用可能であることが示された。そして、紙面pHが8.0以上である、実施例1〜3のセルロース微多孔膜は、突刺強度の減少率が30%以下であり、電気化学素子の生産効率に寄与するものであった。さらに、実施例1〜3のセルロース微多孔膜を電気化学素子用セパレータとして用いた結果、リチウムイオン電池及び電気二重層キャパシタでそれぞれ短絡を起こさず好適に使用することができた。一方、紙面pHが8.0未満であった比較例1〜3のセルロース微多孔膜は、いずれも突刺強度の減少率が30%以上であり、電気化学素子の生産効率に悪影響を与えるものであった。そして、比較例1〜4のセルロース微多孔膜を電気化学素子用セパレータとして用いた結果、リチウムイオン電池及び電気二重層キャパシタのいずれも短絡が生じた。
以上のように、本発明のセルロース微多孔膜は加熱による強度劣化が少なく、効率的に電気化学素子を製造することができるので、電池、キャパシタに好適に使用できる。

Claims (22)

  1. セルロース繊維及び高分子バインダーを原料とする微多孔膜であって、前記微多孔膜の紙面pHが8.0以上11.0以下であるセルロース微多孔膜。
  2. 高分子バインダーがカルボキシメチルセルロースである、請求項1に記載のセルロース微多孔膜。
  3. 塩基性化合物を含む、請求項1又は2に記載のセルロース微多孔膜。
  4. 前記塩基性化合物が2価金属化合物である、請求項3に記載のセルロース微多孔膜。
  5. 前記2価金属がマグネシウムである、請求項4に記載のセルロース微多孔膜。
  6. 前記2価金属化合物が酸化マグネシウム及び/又は塩基性炭酸マグネシウムである、請求項4又は5に記載のセルロース微多孔膜。
  7. 170℃で10時間真空乾燥した後の突刺強度が25gf/25μm以上、かつ突刺強度の減少率が30%以下であることを特徴とする、請求項1乃至6に記載のセルロース微多孔膜。
  8. 吸液率が50%〜140%である、請求項1乃至7のいずれかに記載のセルロース微多孔膜。
  9. 前記セルロース繊維に1μm以上の太さの繊維がセルロース繊維の全重量を基準として5重量%以上含まれている、請求項1乃至8のいずれかに記載のセルロース微多孔膜。
  10. 前記高分子バインダーがセルロース繊維100重量部に対して5〜50重量部の割合で含まれる、請求項1乃至9のいずれかに記載のセルロース微多孔膜。
  11. セルロース繊維、沸点が180℃以上の親水性開孔剤、高分子バインダー及び塩基性化合物を少なくとも含むスラリーを基材上に塗布する工程、前記スラリーを乾燥させて前記基材上にシートを形成する工程、及び、前記シートを前記基材から剥離する工程を備える、セルロース微多孔膜の製造方法。
  12. 高分子バインダーがカルボキシメチルセルロースである、請求項11に記載のセルロース微多孔膜の製造方法。
  13. 前記塩基性化合物が2価金属化合物である、請求項11又は12に記載のセルロース微多孔膜の製造方法。
  14. 前記2価金属がマグネシウムである、請求項11乃至13のいずれかに記載のセルロース微多孔膜の製造方法。
  15. 前記2価金属化合物が酸化マグネシウム及び/又は塩基性炭酸マグネシウムである、請求項13又は14のいずれかに記載のセルロース微多孔膜の製造方法。
  16. 前記セルロース繊維に1μm以上の太さの繊維がセルロース繊維の全重量を基準として5重量%以上含まれている、請求項11乃至15のいずれかに記載のセルロース微多孔膜の製造方法。
  17. 前記親水性開孔剤の水への溶解度が10重量%以上である、請求項11乃至16のいずれかに記載のセルロース微多孔膜の製造方法。
  18. 前記親水性開孔剤がグリコールエーテル類である、請求項11乃至17のいずれかに記載のセルロース微多孔膜の製造方法。
  19. 前記シート又は微多孔膜を有機溶媒で洗浄する工程を更に備える、請求項11乃至18記載のセルロース微多孔膜の製造方法。
  20. 請求項1乃至10のいずれかに記載のセルロース微多孔膜からなる、電気化学素子用セパレータ。
  21. 請求項20記載の電気化学素子用セパレータを備える電気化学素子。
  22. 電池又はキャパシタである、請求項21記載の電気化学素子。
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