JP2017133060A - 溶銑の精錬方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 酸素を供給して行う複数の精錬工程を、1つの転炉型精錬炉に収容された溶銑に施すにあたり、上記複数の精錬工程の間の中間排滓工程において、スラグポット内でのスラグのフォーミングを抑制しつつ、目標とする所定量の炉内スラグを速やかに短時間で炉外に排出する。【解決手段】 複数に分割された精錬工程の間の中間排滓工程で、スラグ6の一部を排出する溶銑5の精錬方法において、中間排滓工程よりも以前に、炉内の溶銑浴面からのスラグ高さを測定し、炉内の溶銑浴面から炉口までの炉内フリーボードの高さに対する測定されたスラグ高さの比率をスラグ高さ比率と定義したとき、スラグ高さ比率が0.3以上0.6未満のときに中間排滓工程の前に行う精錬を終了し、その後、底吹きガスを吹き込みながら1.0分間以上5.0分間以下保持し、次いで、スラグ高さ比率が0.3以上0.6未満のときにスラグの排出を開始する。【選択図】 図2
Description
本発明は、1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑に複数の精錬工程を施して脱燐された溶銑または脱燐及び脱炭された溶鋼とする精錬方法に関するものであり、特に、複数の精錬工程の間で、溶銑及びスラグの一部を転炉型精錬炉に残留させたまま、スラグの残部を排出する精錬方法に関する。
近年、転炉型精錬炉を用いた溶銑の予備処理技術の開発が進み、以下の予備処理方法が開発されている。即ち、転炉型精錬炉内の溶銑に脱珪処理を行った後に転炉型精錬炉を傾転させて炉内のスラグ(脱珪処理で生成するスラグを「脱珪スラグ」という)の少なくとも一部を排出し、その後、炉内にCaO系媒溶剤を投入し、残留させた溶銑に脱燐処理を行うという精錬方法(この精錬方法を「2回排滓法」という)が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
この2回排滓法は、転炉型精錬炉における従来の予備処理方法、つまり、精錬開始時にCaO系媒溶剤を投入して転炉型精錬炉内の溶銑に脱珪・脱燐処理を行う予備処理方法と比較して、以下の利点がある。即ち、(1)途中で脱珪スラグを排出することから珪素含有量の高い溶銑の処理が可能であり、溶銑中の珪素を熱源として有効活用することが可能、(2)途中で脱珪スラグを排出することで、その後の脱燐処理時でのCaO系媒溶剤の使用量を削減することが可能、という利点がある。
この2回排滓法においては、脱珪処理後の中間排滓工程で、如何に速やかに短時間で且つ目標とする所定量の脱珪スラグを炉内から排出するかが、操業の重要なポイントとなる。中間排滓工程での脱珪スラグの排出量が少ない場合には、上記の効果は得られず、前述した従来の転炉型精錬炉における予備処理方法と同等になる。
また、脱燐処理の終了後、脱燐処理した溶銑は炉から出湯するものの、脱燐処理で生成したスラグ(脱燐処理で生成するスラグを「脱燐スラグ」という)を炉内に残留させ、脱燐スラグを残留させた転炉型精錬炉に次チャージの溶銑を装入し、この溶銑に対して上記手順に沿って予備処理を行うという精錬方法も開発されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。この精錬方法には、更に、以下の利点がある。即ち、(3)脱燐処理で生成した脱燐スラグを炉内に残すことにより、脱珪処理時でのCaO系媒溶剤の削減、脱燐スラグの顕熱の活用、脱燐スラグ中の鉄分の回収が可能、(4)脱燐スラグを再使用することで熱効率が高く、冷鉄源の配合比率を高めることが可能、(5)塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))が比較的高く、エージング処理が必要である脱燐スラグの発生を抑制し、脱燐スラグを、エージング処理を省略しても良好な体積安定性が得られる脱珪スラグに転換することが可能、という利点がある。
しかし、脱燐スラグを残留させる方法では、脱珪処理後のスラグの排出量が不十分であると、前チャージで残留させた脱燐スラグに由来する燐が炉内に大量に残留し、次の脱燐処理では溶銑の燐濃度を目標レベルまで低下させることが困難となるので、脱珪処理後の中間排滓工程におけるスラグの排出量を十分に確保する必要がある。一方、スラグの排出量を確保するべく、排滓のための作業時間が長くなると、このような予備処理の実施可能なチャージ数が制限されたり、また、スラグの排出速度を増す目的で炉体の傾き角度を大きくし過ぎると、スラグとともに流出する溶銑の流出量が増大して鉄歩留まりが低下したりするという問題が起こる。従って、これらの問題が起こらないように、脱珪処理後の中間排滓工程ではスラグの排出を効率良く行う必要がある。
そこで、本発明者らは、脱珪処理後の中間排滓工程における脱珪スラグの排出性について検討した。その結果、脱珪処理中での脱珪スラグのフォーミングが少ないと、脱珪スラグの流動性が低く、所定時間内で十分な量の脱珪スラグを排出することは困難であることがわかった。従って、中間排滓工程で速やかに且つ十分な量の脱珪スラグを炉内から流出させるためには、脱珪吹錬中に脱珪スラグを安定的にフォーミングさせなければならないことを知見した。ここで、スラグのフォーミングとは、溶融状態のスラグが気泡を含み、見掛け上、体積膨脹する現象である。
つまり、脱珪処理中のスラグレベルを検知し、脱珪スラグのフォーミングを制御することが重要であることを知見した。但し、脱珪スラグの過剰なフォーミングは、中間排滓工程時に突沸的なスラグの流出を招き、これを抑える処置が必要となり、却って中間排滓工程の時間を延長させることから、脱珪スラグのフォーミングを適度に制御することが重要であることも知見した。
特許文献3には、溶銑の脱珪処理工程と、溶銑を保持したまま脱珪処理工程で生成したスラグの一部を排出する中間排滓工程と、残留させた溶銑の脱燐処理工程とを有する溶銑の予備処理方法において、脱珪処理中に炉内のスラグ高さを測定し、スラグのフォーミング高さが、炉内の溶銑浴面から炉口までの炉内フリーボードの高さに対して所定の範囲の比率となっている状態で、脱珪処理を終了することによって、短時間での排滓が可能となることが開示されている。特に、炉内スラグのフォーミング高さの上記比率が、0.5〜0.9の範囲において、脱珪処理を終了することが好適とされており、ランス高さや送酸速度、底吹き流量を調整することによって、脱珪処理中のスラグのフォーミング高さを制御する方法も記載されている。
しかし、溶銑予備処理におけるスラグのフォーミングは、スラグ中の酸化鉄濃度の上昇に伴って加速度的に進行することがあり、一旦酸化鉄濃度が上昇してフォーミング高さが上昇したスラグでは、上吹き酸素ガスによる酸化鉄生成が更に促進されることから、安定した制御が困難になる場合がある。また、フォーミング高さが高くなり過ぎると、吹錬終了後もスラグ中の酸化鉄濃度が低下するまで、スラグ中に巻き込まれた粒鉄などに含まれる炭素とスラグ中の酸化鉄との反応によるCOガス生成が活発に起こるため、活発なフォーミング状態が長時間にわたって維持される。
このようにフォーミング高さが過度なままで、酸化鉄濃度の高いスラグを排出すると、スラグに混入した溶銑滴中の炭素とスラグ中の酸化鉄とが反応してCOガスが活発に生成され、これにより、受け入れたスラグポットにおいて、フォーミングを招いてスラグがオーバーフローするおそれがある。スラグポット内でのフォーミングが著しい場合には、一旦スラグの排出を中断したり、スラグの排出速度を低減せざるを得なくなったりして、排滓時間の延長を招くことになる。
そこで、吹錬終了前後にフォーミング鎮静剤を添加してスラグのフォーミング高さを或る程度低下させてから、中間排滓を実施することも行われるが、スラグポット内でのフォーミングの抑制には、十分な効果が得られない場合がある。これは、フォーミングを物理的な効果によって一次的に抑制しても、スラグの粘度上昇によってスラグ中の粒鉄の沈降が遅れ、スラグに混入した粒鉄量が増大すると、スラグポット内でのフォーミング抑制には逆効果となる場合があるためと考えられる。
また、吹錬終了後に直ちに中間排滓を開始すると、スラグポット内でのスラグのフォーミングが活発になる傾向がある。これは、炉内のスラグ中に混入した粒鉄を十分に沈降させることができないまま中間排滓を行うと、スラグポット内のスラグに混入する粒鉄量が多くなることによると考えられる。このため、スラグポット内でのスラグのフォーミングを抑制するためには、スラグに混入する粒鉄量も低減することが重要と考えられる。
つまり、短時間で効率的に中間排滓を行うためには、炉内スラグを中間排滓に適正なフォーミング高さとしつつ、スラグポット内でのスラグのフォーミングを抑制することが重要と考えられる。また、このような中間排滓における課題は、1つの転炉型精錬炉を用いて、溶銑の脱珪・脱燐処理を行った後に、転炉型精錬炉を傾転させて溶銑を保持したまま炉内のスラグの一部を排出する中間排滓を行い、その後、炉内に残留させた溶銑に脱炭処理を行って溶鋼とする精錬方法においても共通するものであり、同様に、短時間で効率的に中間排滓を行う方法が求められていた。
また、特許文献3には、炉内スラグのフォーミング高さの制御のために、フォーミング高さを測定する方法として、マイクロ波を用いて対象物までの距離に対応する伝播時間と反射強度との関係を求め、信号処理によりスラグ表面からの反射波を判定して、スラグのフォーミング高さを測定する方法が開示されている。その際、スラグ表面からの反射波を判定する方法としては、(A)所定強度以上の反射波のうちで対象物までの距離が炉口までの距離よりも大きく且つ炉口までの距離に最も近い反射波をスラグ表面からの反射波と判定する方法、(B)脱珪処理開始時から対象物までの距離が変化せずに継続して存在する反射波の信号をノイズとして除去したうえで、上記(A)による方法でスラグ表面からの反射波と判定する方法、(C)珪処理開始時から対象物までの距離が変化せずに継続して存在する反射波の信号をノイズとして除去したうえで、溶鉄浴面に対応する反射波の信号を除いて最も反射強度を高い信号をスラグ表面からの反射波と判定する方法、が提案されている。
しかし、上記(A)の方法では、対象とする反射波を選別するための強度の閾値の決定方法が不明確であり、試行錯誤して閾値を定めても確度の高いスラグ表面からの反射波の判定が困難な場合があった。また、上記(B)または(C)の方法では、ノイズとして除去する反射波の信号を特定する際に、対象物までの距離が変化しない反射波であっても、対象物までの距離が変化する反射波が重畳すると、見掛け上対象物までの距離が変化するものと判定される場合があり、短時間の測定で精度良くノイズとして除去すべき反射波の信号を特定することが困難なために、スラグ表面からの反射波を判定する際の応答性に問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、酸素を供給して行う複数の精錬工程を、1つの転炉型精錬炉に収容された溶銑に施すにあたり、前記複数の精錬工程の間の中間排滓工程において、溶銑及びスラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたままスラグの残部を排出し、前記中間排滓工程では、炉内スラグを中間排滓に適正なフォーミング高さとし、且つ、スラグポット内でのスラグのフォーミングを抑制することができ、これにより、目標とする所定量の炉内スラグを速やかに短時間で炉外に排出することが可能となり、次の精錬工程では、コスト面及び品質面から効率的な精錬を行うことを可能とする、溶銑の精錬方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]1つの転炉型精錬炉に収容された溶銑に対して、複数に分割された、酸素を供給して行う精錬工程を施し、複数に分割された精錬工程の間の中間排滓工程で、炉内の溶銑及びスラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたままスラグの残部を排出する溶銑の精錬方法において、
前記中間排滓工程よりも以前に、炉内の溶銑浴面からのスラグ高さを測定し、炉内の溶銑浴面から前記転炉型精錬炉の炉口までの炉内フリーボードの高さに対する測定された前記スラグ高さの比率をスラグ高さ比率と定義したとき、スラグ高さ比率が0.3以上0.6未満のときに前記中間排滓工程の前に行う精錬を終了し、
その後、前記転炉型精錬炉に設けられた底吹き羽口から底吹きガスを吹き込みながら1.0分間以上5.0分間以下保持し、次いで、スラグ高さ比率が0.3以上0.6未満のときに、前記転炉型精錬炉を傾転させて炉内のスラグの排出を開始することを特徴とする、溶銑の精錬方法。
[2]前記中間排滓工程の前に行う精錬の終了からスラグの排出を開始するまでの間に、前記転炉型精錬炉の炉内にフォーミング鎮静剤を投入しないことを特徴とする、上記[1]に記載の溶銑の精錬方法。
[3]複数に分割された、酸素を供給して行う前記精錬工程が脱珪処理工程と脱燐処理工程とを含み、脱珪処理工程と脱燐処理工程との間で、前記中間排滓工程を実施することを特徴とする、上記[1]または上記[2]に記載の溶銑の精錬方法。
[4]前記脱珪処理工程終了時の炉内のスラグの塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))を0.8以上1.5以下に制御し、且つ、前記脱珪処理工程において、炉内に供給される酸素源のうちで脱珪反応に使用される分を除いた酸素源を脱珪外酸素量と定義したとき、前記脱珪処理工程における脱珪外酸素量原単位を3.0〜5.0Nm3/溶銑−tの範囲にし、且つ、前記脱燐処理工程における酸素量原単位を8.0〜10.0Nm3/溶銑−tの範囲に制御することを特徴とする、上記[3]に記載の溶銑の精錬方法。
[5]前記脱珪処理工程終了時の炉内スラグのトータル鉄(T.Fe)濃度を20質量%以下に制御することを特徴とする、上記[3]または上記[4]に記載の溶銑の精錬方法。
[6]前チャージの溶銑の脱燐処理工程で生じたスラグの一部または全部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、新たな溶銑を前記転炉型精錬炉に装入し、前記脱珪処理工程を行うことを特徴とする、上記[3]ないし上記[5]のいずれか1項に記載の溶銑の精錬方法。
[7]擬似ランダム信号処理レーダー方式マイクロ波距離計または周波数変調連続波式マイクロ波距離計を用い、10GHz以下の周波数のマイクロ波を前記転炉型精錬炉内に送信して炉内からの反射波を受信し、マイクロ波の反射波の反射強度と往復伝播時間との関係を所定の時間間隔毎に求めて記録し、前記記録した反射波の反射強度と往復伝播時間との関係から、所定の時間間隔をおいて差分をとった反射波の反射強度と往復伝播時間との関係を求め、炉口から溶銑浴面までの範囲に対応する反射波の往復伝播時間の範囲において、最も反射強度の差分または反射強度の差分の絶対値が大きい反射波の信号をスラグ表面からの反射波の信号と判定してスラグ面までの距離を求め、前記スラグ高さを測定することを特徴とする、上記[1]ないし上記[6]のいずれか1項に記載の溶銑の精錬方法。
[1]1つの転炉型精錬炉に収容された溶銑に対して、複数に分割された、酸素を供給して行う精錬工程を施し、複数に分割された精錬工程の間の中間排滓工程で、炉内の溶銑及びスラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたままスラグの残部を排出する溶銑の精錬方法において、
前記中間排滓工程よりも以前に、炉内の溶銑浴面からのスラグ高さを測定し、炉内の溶銑浴面から前記転炉型精錬炉の炉口までの炉内フリーボードの高さに対する測定された前記スラグ高さの比率をスラグ高さ比率と定義したとき、スラグ高さ比率が0.3以上0.6未満のときに前記中間排滓工程の前に行う精錬を終了し、
その後、前記転炉型精錬炉に設けられた底吹き羽口から底吹きガスを吹き込みながら1.0分間以上5.0分間以下保持し、次いで、スラグ高さ比率が0.3以上0.6未満のときに、前記転炉型精錬炉を傾転させて炉内のスラグの排出を開始することを特徴とする、溶銑の精錬方法。
[2]前記中間排滓工程の前に行う精錬の終了からスラグの排出を開始するまでの間に、前記転炉型精錬炉の炉内にフォーミング鎮静剤を投入しないことを特徴とする、上記[1]に記載の溶銑の精錬方法。
[3]複数に分割された、酸素を供給して行う前記精錬工程が脱珪処理工程と脱燐処理工程とを含み、脱珪処理工程と脱燐処理工程との間で、前記中間排滓工程を実施することを特徴とする、上記[1]または上記[2]に記載の溶銑の精錬方法。
[4]前記脱珪処理工程終了時の炉内のスラグの塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))を0.8以上1.5以下に制御し、且つ、前記脱珪処理工程において、炉内に供給される酸素源のうちで脱珪反応に使用される分を除いた酸素源を脱珪外酸素量と定義したとき、前記脱珪処理工程における脱珪外酸素量原単位を3.0〜5.0Nm3/溶銑−tの範囲にし、且つ、前記脱燐処理工程における酸素量原単位を8.0〜10.0Nm3/溶銑−tの範囲に制御することを特徴とする、上記[3]に記載の溶銑の精錬方法。
[5]前記脱珪処理工程終了時の炉内スラグのトータル鉄(T.Fe)濃度を20質量%以下に制御することを特徴とする、上記[3]または上記[4]に記載の溶銑の精錬方法。
[6]前チャージの溶銑の脱燐処理工程で生じたスラグの一部または全部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、新たな溶銑を前記転炉型精錬炉に装入し、前記脱珪処理工程を行うことを特徴とする、上記[3]ないし上記[5]のいずれか1項に記載の溶銑の精錬方法。
[7]擬似ランダム信号処理レーダー方式マイクロ波距離計または周波数変調連続波式マイクロ波距離計を用い、10GHz以下の周波数のマイクロ波を前記転炉型精錬炉内に送信して炉内からの反射波を受信し、マイクロ波の反射波の反射強度と往復伝播時間との関係を所定の時間間隔毎に求めて記録し、前記記録した反射波の反射強度と往復伝播時間との関係から、所定の時間間隔をおいて差分をとった反射波の反射強度と往復伝播時間との関係を求め、炉口から溶銑浴面までの範囲に対応する反射波の往復伝播時間の範囲において、最も反射強度の差分または反射強度の差分の絶対値が大きい反射波の信号をスラグ表面からの反射波の信号と判定してスラグ面までの距離を求め、前記スラグ高さを測定することを特徴とする、上記[1]ないし上記[6]のいずれか1項に記載の溶銑の精錬方法。
本発明によれば、1つの転炉型精錬炉を用いて、複数に分割された、酸素を供給して行う精錬工程を、途中の中間排滓工程を挟んで連続して溶銑に施す精錬方法において、中間排滓工程よりも以前に、炉内の溶銑浴面からのスラグ高さを測定し、炉内の溶銑浴面から炉口までの炉内フリーボードの高さに対する測定されたスラグ高さの比率で定義されるスラグ高さ比率が0.3以上0.6未満のときに中間排滓工程の前に行う精錬を終了するので、その後のスラグ高さ比率を適正な範囲に制御することが容易となる。その後、底吹きガスを吹き込みながら1.0分間以上5.0分間以下保持するので、作業時間の大幅な延長を招くことなくスラグ中に混入する粒鉄量を低減してスラグポット内でのスラグのフォーミングを抑制することが可能となる。
また、その後、スラグ高さ比率が0.3以上0.6未満のときに、前記転炉型精錬炉を傾転させてスラグの排出を開始するので、その後の中間排滓工程では、スラグポットでの過剰なスラグフォーミングを抑えたうえで、目標とする所定量のスラグを速やかに短時間で炉外に排出することが実現される。これにより、中間排滓工程を遅延させることなく円滑に行うことが可能になるとともに、次の精錬工程では、少ないCaO系媒溶剤の使用量で溶銑または溶鋼の燐濃度を低濃度まで低減することが可能となる。
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、本発明に係る溶銑の精錬方法を実施する際に用いる転炉型精錬炉の概略断面図、図2は、本発明の1つの実施形態である溶銑の精錬方法(予備処理方法)を工程順に示す概略図である。以下に、1つの転炉型精錬炉を用いて脱珪処理工程と脱燐処理工程とを行い、脱珪処理工程と脱燐処理工程との間で前記中間排滓工程を実施する溶銑の予備処理方法(以下、本発明による溶銑予備処理方法と称する)について、本発明に係る溶銑の精錬方法の実施形態の1例として説明する。
本発明による溶銑予備処理方法では、図1に示すような上底吹き可能な転炉型精錬炉1を用いる。上吹きは、転炉型精錬炉1の内部を昇降可能な上吹きランス2を介して、上吹きランス2の先端から気体酸素源として酸素含有ガスを溶銑5に向けて供給して行われる。酸素含有ガスとしては、酸素ガス、酸素富化空気、空気、酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを使用することができる。図1では、酸素含有ガスとして酸素ガス8を使用した例を示している。ここで、酸素ガス8とは工業用純酸素である。底吹きは、転炉型精錬炉1の底部に設けられた底吹き羽口3を介して行われる。底吹きガス9としては、酸素ガスを含むガスでも、或いはアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスのみでもよい。また、溶銑中に吹き込むことにより溶銑5の攪拌を強化して冷鉄源の溶解を促進する機能を有するほか、底吹き羽口3から搬送用ガスとともに造滓剤を溶銑中に吹き込む機能を有するものでもよい。尚、図1の詳細な説明は後述する。
本発明による溶銑予備処理方法においては、溶銑5の精錬に2基以上の転炉型精錬炉1を使用し、そのうちの少なくとも1基の転炉型精錬炉1を本発明による溶銑予備処理に使用し、残りの少なくとも1基を、本発明による溶銑予備処理の施された溶銑5の脱炭精錬に使用する。つまり、溶銑予備処理用の転炉型精錬炉1で予備処理を行い、次いで、予備処理が施された溶銑5を脱炭精錬用の転炉型精錬炉1に移し替えて脱炭処理を行う。
本発明による溶銑5の予備処理方法では、図2−(A)に示すように、予め鉄スクラップなどの冷鉄源7が装入された転炉型精錬炉1に、装入鍋10を介して脱珪処理及び脱燐処理の施されていない溶銑5を装入する(溶銑装入工程)。
次いで、この転炉型精錬炉内の溶銑5に、酸素源として気体酸素源或いは気体酸素源及び酸化鉄などの固体酸素源を供給して、図2−(B)に示すように脱珪処理を実施する(脱珪処理工程)。溶銑5に含有される珪素と酸素源中の酸素とが反応(Si+2O→SiO2)して脱珪処理が進行する。この脱珪反応による珪素の酸化熱で溶銑温度が上昇し、溶銑中の冷鉄源7の溶解が促進される。
本発明による溶銑予備処理方法では、1つの転炉型精錬炉1を用いて脱珪処理及び脱燐処理を実施しており、脱珪処理を実施する際には、前チャージの脱燐処理で生成した脱燐スラグが、転炉型精錬炉1の炉壁に付着して残留する。従って、脱珪処理において、脱珪スラグ6の塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))(以下、単に「塩基度」とのみ表示することもある)を制御しない場合には、残留した脱燐スラグに含有される燐酸化物(P2O5)が分解して、溶銑5の燐濃度が上昇する、所謂、「復燐」が発生するおそれがある。脱珪処理時でのCaO系媒溶剤の使用量を削減するべく、脱燐スラグを意図的に炉内に残留させる場合には、復燐による燐濃度のピックアップがより大きくなるおそれがある。つまり、このような復燐を防止するために、脱珪処理で生成する脱珪スラグ6の塩基度を調整することが好ましい。
通常の脱珪処理条件においては、溶銑温度が1300℃程度で、且つ、脱珪スラグ中のFeO濃度が10〜20質量%程度であり、これらを勘案すると、脱珪処理後の脱珪スラグ6の塩基度を0.8以上とすることで復燐反応が抑制される。
脱珪スラグ6の塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))は、下記の(1)式に基づいて計算することができる。
塩基度=[(炉内残留CaO量(kg/溶銑-t))+(脱珪処理での添加CaO量(kg/溶銑-t))]/[(炉内残留SiO2量(kg/溶銑-t))+(脱珪処理での生成SiO2量(kg/溶銑-t))]・・・(1)
尚、炉内残留CaO量及び炉内残留SiO2量は、炉内に残留する前チャージの脱燐スラグ中に含有されるCaO量及びSiO2量であり、脱珪処理での生成SiO2量は、脱珪処理前後の溶銑中Si濃度の変化から算出できる。
塩基度=[(炉内残留CaO量(kg/溶銑-t))+(脱珪処理での添加CaO量(kg/溶銑-t))]/[(炉内残留SiO2量(kg/溶銑-t))+(脱珪処理での生成SiO2量(kg/溶銑-t))]・・・(1)
尚、炉内残留CaO量及び炉内残留SiO2量は、炉内に残留する前チャージの脱燐スラグ中に含有されるCaO量及びSiO2量であり、脱珪処理での生成SiO2量は、脱珪処理前後の溶銑中Si濃度の変化から算出できる。
脱珪処理のための酸素源としては、上吹きランス2からの酸素ガス8のみでもよく、また、酸素ガス8と酸化鉄(図示せず)などの固体酸素源とを併用してもよい。短時間で行われる脱珪処理中に目標とする塩基度の脱珪スラグ6を生成させるためには、CaO系媒溶剤の滓化を促進させる機能を有する酸化鉄を使用することが効果的である。但し、本発明の目的の1つである多量の冷鉄源7を溶解させる観点からは、昇熱時及び分解時に吸熱する酸化鉄を多量に用いることは好ましくなく、従って、酸化鉄の使用量は必要最小限にすることが好ましい。また、精錬容器として転炉型精錬炉1を使用するので、酸素ガス供給速度を増大することが可能であり、酸素ガス8のみを用いて脱珪処理を行っても、十分にCaO系媒溶剤の滓化を促進させて目標とする塩基度の脱珪スラグ6を生成させることができる。
脱珪処理における溶銑1トンあたりの酸素の総供給量(酸素量原単位)は脱珪処理前の溶銑1トンが含有する珪素を全て酸化するのに化学量論的に必要な酸素量よりも3.0〜5.0Nm3/溶銑−t大きい量とすること、即ち、脱珪外酸素量は3.0〜5.0Nm3/溶銑−tの範囲とすることが望ましい。ここで、脱珪外酸素量を算出する際には、酸化鉄や酸化マンガンなどの脱珪処理において炭素により還元されやすい酸化物を添加する場合は、これに含まれる酸素も酸素供給量に加算し、また、酸化物でない珪素を脱珪処理において添加する場合には、この添加した珪素を酸化するために消費される酸素量も差し引いて脱珪外酸素量を算出する。
上記脱珪外酸素量と次工程の脱燐処理で供給される酸素量の合計値は、脱燐処理工程後の溶銑中炭素濃度を2.7質量%前後に保つ必要があることから、13Nm3/溶銑−t程度にすることが望ましい。
本発明者らは、脱珪処理における脱珪外酸素量(原単位)と、その後の工程である脱燐処理後の溶銑中燐濃度との関係、及び、脱燐処理における酸素量(原単位)と脱燐処理後の溶銑中燐濃度との関係を調査した。脱珪処理における脱珪外酸素量(原単位)と、その後の工程である脱燐処理後の溶銑中燐濃度との関係を図3に示す。また、脱燐処理における酸素量(原単位)と、脱燐処理後の溶銑中燐濃度との関係を図4に示す。
脱珪処理における脱珪外酸素量を3.0〜5.0Nm3/溶銑−tの範囲とすることにより、脱燐処理後の溶銑中燐濃度が低位に安定することがわかる。これは、脱珪処理工程における脱珪外酸素量を5.0Nm3/溶銑−t以下とすることにより、脱燐処理工程における酸素量が8.0Nm3/溶銑−t以上となり、脱燐処理工程における脱燐が進行したためと考えられる。即ち、CaO系媒溶剤の使用量を低減するためには脱珪処理後のスラグ塩基度は1.3以下、より望ましくは1.2以下とすることが好ましく、スラグの塩基度が高い脱燐処理工程の方が脱燐が進行しやすい条件であるため、脱珪処理における脱珪外酸素量を過剰に増大させることなく、脱燐処理における酸素量を所定量以上確保することによって、合計の酸素量に対する脱燐酸素効率が向上したと考えられる。
また、脱珪処理工程における脱珪外酸素量を5.0Nm3/溶銑−t以下とすることによって、脱珪処理終了時におけるスラグの過剰なフォーミングを抑制して、その後のスラグ高さ比率の制御を容易にするとともに、中間排滓に要する作業時間の抑制に寄与することができる。
但し、脱珪処理において、脱珪外酸素量が3.0Nm3/溶銑−tよりも下回ると、脱珪処理後の珪素濃度が0.1質量%以上となり、後の脱燐工程におけるスラグ塩基度が低下する傾向となるため、脱珪処理における脱珪外酸素量は3.0Nm3/溶銑−t以上とし、脱燐工程における酸素量は10.0Nm3/溶銑−t以下とすることが望ましい。また、脱珪処理における脱珪外酸素量が3.0Nm3/溶銑−tよりも下回ると、脱珪処理終了時におけるスラグのフォーミングが不十分で、その後の中間排滓において排滓率を十分に確保できないおそれがある。
また、脱珪処理工程終了時のスラグ中のトータル鉄(T.Fe)の濃度は、フォーミングを促進するためには或る程度高くすることが望ましいが、過大になると中間排滓時にスラグポット内でのスラグのフォーミングが過剰になって中間排滓工程に要する時間の延長を招くおそれがあるため、20質量%以下とすることが望ましい。
この脱珪処理工程のあとに、図2−(C)に示すように、転炉型精錬炉1を、出湯口4が設置された側とは反対側に傾動させて、脱珪処理で発生した、SiO2を大量に含む脱珪スラグ6を転炉型精錬炉1の炉口を介して下方の軌道上に配置したスラグポット(図示せず)に排出する(中間排滓工程)。
炉口から溶銑5が流出しない範囲で転炉型精錬炉1を傾動させて、炉口からの溢流によって脱珪スラグ6を排出しており、傾動した炉体の炉口下端からのスラグ表面までの高さが高いほど効率的に排出することができるが、溶銑の流出を避けるために、脱珪スラグ6を完全に排出することはできず、脱珪スラグ6の一部は炉内に残留する。また、排出されたスラグは、スラグポット内で更にフォーミングが継続して進行する場合があり、スラグがスラグポットからオーバーフローして操業を阻害するリスクがあるため、スラグポット内の状況を監視しながらスラグの排出速度を調整する必要もある。
スラグポット内でのフォーミングは、スラグとともに排出されたスラグ中の粒鉄に含まれる炭素とスラグ中の酸化鉄とが反応してCOガスが生成する現象に基づくものであり、スラグ排出時の炉内でのフォーミングが激しい場合ほど顕著となる傾向がある。スラグポット内でのフォーミングが著しい場合には、一旦スラグの排出を中断したり、スラグの排出速度を低減せざるを得なくなったりして、排滓時間の延長を招くことになる。
中間排滓工程後は、転炉型精錬炉内に残留させた溶銑5にCaO系媒溶剤及び酸素源を供給して、図2−(D)に示すように、溶銑5を脱燐処理する(脱燐処理工程)。脱燐処理工程において、炉内のスラグの塩基度は1.3〜3.5、より望ましくは1.6〜3.2の範囲に調整する。この脱燐処理工程において使用する酸素源は、脱珪処理工程と同様に、上吹きランス2からの酸素ガス8を主体とするが、一部酸化鉄を使用しても構わない。但し、本発明は多量の冷鉄源7の溶解を目的の1つとするものであり、前述したように、昇熱時及び分解時に吸熱する酸化鉄を酸素源として使用することはできるだけ少量に止めることが好ましい。
脱燐処理で使用するCaO系媒溶剤としては、生石灰や炭酸カルシウムなどが使用できる。但し、これらに限定されず、CaOを40質量%以上含有し、必要に応じてフッ素やアルミナ、酸化鉄などの他の成分を含有するものも、脱燐処理時のCaO系媒溶剤として使用することができる。このCaO系媒溶剤の添加方法としては、粒状及び塊状のものは炉上のホッパーから、粉状のものは上吹きランス2を介するなどして投入することができる。
溶銑中の燐は供給される酸素源中の酸素に酸化されて燐酸化物(P2O5)となり、この燐酸化物が、CaO系媒溶剤の滓化によって生成され、脱燐精錬剤として機能するスラグ中に、3CaO・P2O5なる安定形態の化合物として取り込まれ、溶銑5の脱燐反応が進行する。脱燐処理後には、燐酸化物を含有する脱燐スラグが生成される。
所定の酸素量を供給して脱燐反応が進行し、溶銑中燐濃度を目標とする値に低下させて脱燐処理を終了する。次いで、図2−(E)に示すように、転炉型精錬炉1を出湯口4が設置された側に傾転させ、転炉型精錬炉内の溶銑5を、出湯口4を介して溶銑保持容器(図示せず)に出湯する(出湯工程)。
この出湯工程後、炉内の脱燐スラグを排出せずに、転炉型精錬炉1に冷鉄源7及び溶銑5を装入し、次チャージの脱珪処理工程を開始してもよく、また、炉内の脱燐スラグを排出した後、冷鉄源7及び溶銑5を装入し、次チャージの脱珪処理工程を開始してもよい。炉内に生成された脱燐スラグの全量または大半を炉内に残留させて次チャージの脱珪処理を開始した場合には、前チャージの脱燐スラグの有する熱量及び鉄分を次チャージの脱珪処理において回収することができるとともに、前チャージの脱燐スラグ中のCaO分を次チャージの脱珪処理におけるCaO源として活用することができ、脱珪処理時のCaO系媒溶剤の使用量を削減することができる。
本発明による溶銑予備処理方法では、このようにして溶銑5に脱珪処理及び脱燐処理を施す際に、中間排滓工程で所定量以上の脱珪スラグ6を迅速に炉外へ流出させることを目的として、脱珪処理中に脱珪スラグ6の高さを測定し、脱珪処理終了時点で測定されるスラグ高さ(炉内の静止時の溶銑浴面から脱珪スラグ6の上端までの距離)が目標範囲となるように、即ち、炉内の溶銑浴面から炉口までの炉内フリーボードの高さに対する測定されたスラグ高さの比率で定義されるスラグ高さ比率を0.3以上且つ0.6未満とするように、脱珪処理中に脱珪スラグ6のフォーミングを調整し、脱珪処理終了後、底吹きガスを吹き込みながら1.0分間以上5.0分間以下保持した後、スラグ高さ比率を上記の範囲内としたまま、転炉型精錬炉1を傾転させて脱珪スラグ6の排出を開始する。
尚、本発明者らは、排滓直前での脱珪スラグ6のフォーミングが少ないと、脱珪スラグ6の流動性が低いので、所定時間内で十分な量の脱珪スラグ6を排出することが困難であることを確認している。一方、フォーミングが過剰な状態で脱珪スラグ6を排出すると、スラグポット内でスラグとともに排出された粒鉄中の炭素とスラグ中の酸化鉄とが反応して更にフォーミングが進行し、スラグがスラグポットをオーバーフローして操業を阻害するリスクがあるため、スラグの排出速度を低減せざるを得ず、排滓時間の延長を招く場合がある。従って、中間排滓工程で速やかに且つ十分な量の脱珪スラグ6を炉内から流出させるためには、排滓直前に所定のスラグ高さの範囲となるように、脱珪スラグ6の高さを、炉内フリーボードの高さに対するスラグ高さ比率で0.3以上且つ0.6未満に調整する必要がある。
上記のように、排滓直前のスラグ高さを調整すれば、適正量のスラグを排出することが可能となるため、脱珪処理終了時のスラグ高さが、炉内フリーボードの高さに対するスラグ高さ比率で0.6以上となった場合においても、フォーミング鎮静剤を用いてスラグ高さを上記の範囲内に調整してからスラグの排出を行うことが考えられる。ここで、スラグのフォーミング鎮静材としては、廃プラスチックを金属鉄や酸化鉄を含むダストなどの比重調整用の物質と混合してブリケット状などに成形したものなどが用いられている。
しかし、フォーミング鎮静剤を大量に使用すると、スラグの温度が低下し、スラグ粘度が上昇することから、スラグ中の粒鉄の沈降速度が低下するため、排出されたスラグ中の粒鉄の含有量が増加する傾向にあり、スラグポット内でスラグ中の粒鉄に含まれる炭素とスラグ中の酸化鉄とが反応して更にフォーミングが進行し、スラグがオーバーフローして操業を阻害するリスクが高くなる。従って、フォーミング鎮静剤は使用しないか、使用量を少量に止めることが望ましい。このため、フォーミング鎮静剤を使用するとしても、脱珪処理終了時のスラグ高さ比率は0.6未満とすることが必要である。また、脱珪処理終了時のスラグ高さ比率が0.3未満では、後述する底吹きガスのみによる攪拌の期間後に、スラグ排出に適正なスラグ高さ比率0.3を確保することが困難となる。
本発明による溶銑予備処理方法では、上記のように、脱珪処理終了時のスラグ高さ比率を0.3以上0.6未満に調整した後、転炉型精錬炉1を傾転させて脱珪スラグ6の排出を開始する前に、1.0〜5.0分間の範囲の所定時間の間、底吹き羽口3からの底吹きガスのみによる攪拌を実施する。
脱珪処理終了後、直ちに炉を傾動させて脱珪スラグ6を排出すると、スラグ中の粒鉄が十分に沈降せず、スラグポット内で、排出されたスラグ中の粒鉄に含まれる炭素とスラグ中の酸化鉄とが反応して更にフォーミングが進行し、スラグがオーバーフローして操業を阻害するリスクが高くなる。これを防止するために、脱珪処理終了後に底吹きガスによる攪拌を実施して、スラグ中の粒鉄量を低減させたうえで、脱珪スラグ6を排出する。
この際、攪拌時間が1.0分間未満ではスラグポット内でのスラグのフォーミングを抑制する効果を十分に得られない。また、攪拌時間が5.0分間を超えると、スラグのフォーミングを抑制する効果は飽和に達していて、作業時間の延長に伴って、転炉型精錬炉1の生産性の低下や、放散熱の増加による溶銑温度の低下を招く。従って、底吹きガスによる攪拌時間は、1.0分間以上5.0分間以下の範囲とする。より好ましくは、1.0分間以上3.0分間以下の範囲内の攪拌時間とすることが好適である。
また、脱珪処理終了後に底吹きガスによる攪拌を実施する際、底吹きガス流量を増加させると、溶銑中の炭素とスラグ中の酸化鉄との反応によるCOガス生成が活発になってスラグ高さが増加するが、底吹きガス流量を減少させると、スラグ高さは相対的に減少して経時変化は小さなものとなる傾向にある。従って、所定の攪拌時間後のスラグ高さ比率を所定の範囲内とするように、スラグ高さの測定値の経過に応じて、底吹きガス流量を調整することが望ましい。
この際、底吹きガス流量は0.05Nm3/(min・溶銑−t)以上0.40Nm3/(min・溶銑−t)以下の範囲内で調整することが好ましい。0.05Nm3/(min・溶銑−t)未満では、スラグ浴の攪拌が弱すぎて、粒鉄の沈降が不十分となるおそれがある他、底吹き羽口3に溶銑が侵入して閉塞し、ガス流量の増大が困難となるおそれもある。一方、0.40Nm3/(min・溶銑−t)超えでは、溶銑がスラグ中に巻き込まれて粒鉄の混入量が増大するおそれがある。より好ましくは、0.05〜0.20Nm3/(min・溶銑−t)の範囲内とする。
上記のように、本発明を実施するためには、使用する転炉型精錬炉1は、炉内のスラグ高さを測定する機能を備えていることが必要となる。
図1に示した本発明で用いる転炉型精錬炉1では、転炉型精錬炉1の炉口の上方には、炉内から発生する排ガスを回収するためのフード12が設けられ、フード12の上部には排ガスを集塵機に導入するための煙道11が設けられている。フード12には開口部13及び開口部14が設けられており、開口部13を貫通して上吹きランス2が炉内に挿入され、また、開口部14を貫通して、マイクロ波距離計15(以下、「マイクロ波スラグレベル計15」と記す)に取り付けられた2本の導波管16が設置されている。2本の導波管16の先端には、それぞれ送信アンテナ17及び受信アンテナ18が開口部14の直下位置に設けられている。つまり、マイクロ波スラグレベル計15によって炉内の脱珪スラグ6の高さが測定されるように構成されている。
フォーミングした脱珪スラグ6のマイクロ波に対する反射率は10-4以下と極めて小さいので、本発明の一つの実施形態では、擬似ランダム信号でマイクロ波を変調した信号を利用することによって、測定感度を高めた擬似ランダム信号処理方式マイクロ波レーダーを使用している。擬似ランダム信号としては、例えば、800MHz程度の高周波のクロック信号から適当な論理回路を組み合わせて発生させる、6MHz程度の周波数で同じ波形を繰り返す擬似ランダム信号を用いることができる。これは、クロック信号が27回(128回)入力されて一巡する論理回路によって擬似ランダム信号を発生させた場合の例である。
使用するマイクロ波の搬送波としては、例えば周波数約10GHzのマイクロ波を使用し、擬似ランダム信号を乗算して変調させたマイクロ波を、炉上のフード12の開口部14に設置した送信アンテナ17を介して転炉型精錬炉1の内部に向けて放射する。
ここで、周波数10GHzの電磁波の空中での波長は約3.0cmであり、10GHz未満の場合には波長はそれ以上であり、転炉型精錬炉内の粉塵や煙の粒子に比べて十分長いので、粉塵などの影響を受けにくく、しかも波長が短いので、アンテナの小形化に有利である。また送信アンテナ17及び受信アンテナ18は例えばホーンアンテナを用い、指向性を鋭く絞ることによりスラグ表面以外からの反射波を可及的に小さくする。マイクロ波の周波数は、低い方が粉塵などの影響を受けにくく、従って、本発明で使用するマイクロ波としては、周波数の上限値を10GHzとし、10GHzよりも低い方が好ましく、8GHz以下がより好ましい。但し、マイクロ波の周波数が低すぎると、時間及び距離の分解能が低下する問題があるとともに、アンテナの大型化が必要となり、アンテナへのダストの付着を防止するうえでも好ましくないことから、マイクロ波の周波数は2GHz以上とすることが好ましい。
送信アンテナ17から転炉型精錬炉内に向けて放射された電磁波はスラグ表面で反射され、受信アンテナ18を介して電気信号に変換される。マイクロ波スラグレベル計15の受信器へ入力信号が供給されるタイミングは、当然、送信アンテナ17から電磁波が放射されたタイミングから、電磁波が転炉型精錬炉内のスラグレベルまでの距離を往復し、受信アンテナ18に到達するまでの電磁波の伝播時間だけ遅延している。この伝播時間は、マイクロ波の搬送波に変調させた疑似ランダム信号の位相差を受信波と送信波とで比較することにより測定できる。
その際、受信波と送信波とに変調された疑似ランダム信号成分の時間相関関数から、直接伝播時間を求めることもできるが、僅かにクロック周波数を変更して発生させた擬似ランダム信号を利用して信号処理を行うことで、時間相関関数の時間軸を大幅に拡大して分解能の高い測定を行うことが可能となる。
例えば、800MHzの高周波のクロック信号から倫理回路を用いて発生させた約6MHzの周波数で同じ波形を繰り返す擬似ランダム信号に対して、4kHzだけ周波数を変化させたクロック信号(例えば、800.004MHz)から同じ論理回路を用いて発生させた擬似ランダム信号を利用する場合、両者の擬似ランダム信号を乗算すると、両者の位相が一致しない場合には乗算結果はクロック周波数程度以上の高周波成分のみとなるが、両者の位相が一致する場合には2つの同じ波形の擬似ランダム信号の乗算結果には直流成分あるいは低周波成分が生じることになる。そこで、更にローパスフィルタにより擬似ランダム信号の繰り返し周波数程度よりも高い周波数の信号成分を除去すると、4kHzの周期で2つの擬似ランダム信号の位相が一致するタイミングが検出される。これは、両者の擬似ランダム信号は、基準とするクロック周波数が4kHzだけ異なることから、少しずつ位相差が変化して、4kHzの周期で1回だけ位相が一致することによる。
このようにして、約6MHzの擬似ランダム信号の繰り返し周波数の周期内での位相差、即ち時間遅れが、4kHzの周期内での時間差に変換されて、時間軸を約1500倍に拡大して、受信波と送信波の擬似ランダム信号の位相差を検出できる。
受信した反射波には、様々な経路及び対象物からの反射波が含まれており、それぞれの対象物からの反射波には、反射強度及び伝播時間分の位相遅れに対応した擬似ランダム信号成分が含まれている。このような反射波に対して、上記のクロック信号周波数を変更した擬似ランダム信号を用いた信号処理を行って、同様に信号処理した、送信波の信号と比較すると、伝播時間を約1500倍に拡大して、それぞれの対象物からの反射波成分の伝播時間及び強度に応じた信号が検出される。
このようにして検出された信号について、送信波からの時間遅れを伝播時間に換算し、これにマイクロ波の伝播速度(3×108m/s)を乗じて、2で割ることにより、検出された信号に対応する対象物までの距離を算出できる。
マイクロ波距離計としては、上記の擬似ランダム処理レーダー方式マイクロ波距離計の他に、比較的外乱に強い周波数変調連続波式マイクロ波距離計(FMCW式マイクロ波レーダー)を用いることも可能である。以下、FMCW式マイクロ波レーダーの原理を説明する。
図5に、FMCW式マイクロ波レーダーの測定原理を示す。10GHzまたはそれ以下の周波数、望ましくは8GHz以下の周波数f0を基準として、図5に示すように、f0を周波数が周期Tで三角波状に変化する信号で変調し、アンテナを介して転炉炉内へ送信する。送信波と受信波とをミキシングすることでビート信号周波数を得る。
この際、周波数変調によるマイクロ波周波数の基準周波数f0からの周波数の変動幅は、10〜100MHz程度の範囲が好ましく、例えば30MHzが例示できる。また、マイクロ波周波数の変動周期、即ち上記三角波の変動周期は、10−4〜10−2秒程度の範囲が好ましく、例えば10−3秒が例示できる。
周波数が上昇する区間のビート周波数fubは、下記の(2)式で表され、周波数が下降する区間のビート周波数fdbは、下記の(3)式で表される。
fub=fR+fV・・・(2)
fdb=fR−fV・・・(3)
ここで、fRはスラグ面との距離に比例する周波数、fVはスラグ面の移動速度に比例する周波数と考える。スラグ面が一定であるときはfV=0であり、fR=fub=fdbとなる。
fdb=fR−fV・・・(3)
ここで、fRはスラグ面との距離に比例する周波数、fVはスラグ面の移動速度に比例する周波数と考える。スラグ面が一定であるときはfV=0であり、fR=fub=fdbとなる。
まず、スラグ面の高さが一定の状況を考える。スラグ面が一定であるとき、送信波に対して受信波(反射波)は、スラグ面までの距離をL、cを光速とすると、下記の(4)式で表される時間(ΔT)だけ遅れる。
ΔT=2L/c・・・(4)
送信信号を変調する三角波の周期をT、変調した周波数の最大値と最小値との差、即ち変調周波数の変化幅をΔfとし、送信波の周波数と受信波の周波数との差をΔFとすると、変調する周波数の変化率(ΔF/ΔT)は、下記の(5)式で表される。
送信信号を変調する三角波の周期をT、変調した周波数の最大値と最小値との差、即ち変調周波数の変化幅をΔfとし、送信波の周波数と受信波の周波数との差をΔFとすると、変調する周波数の変化率(ΔF/ΔT)は、下記の(5)式で表される。
ΔF/ΔT=2Δf/T・・・(5)
(5)式を変形し、且つ、ΔTに(4)式を代入すると、下記の(6)式が得られる。
(5)式を変形し、且つ、ΔTに(4)式を代入すると、下記の(6)式が得られる。
ΔF=(2Δf/T)×ΔT=4ΔfL/(cT)・・・(6)
この周波数は距離Lに比例するので、前述のfRは、下記の(7)式で表すことができる。
この周波数は距離Lに比例するので、前述のfRは、下記の(7)式で表すことができる。
fR=4△fL/(cT)・・・(7)
次に、スラグ面が上昇または下降する場合を考える。スラグ面の上昇速度または下降速度をVとすると、送信周波数f0はドップラー効果によってシフトする。このドップラー効果を加味すると、(2)式及び(3)式に示される周波数fVは、下記の(8)式で表される。
次に、スラグ面が上昇または下降する場合を考える。スラグ面の上昇速度または下降速度をVとすると、送信周波数f0はドップラー効果によってシフトする。このドップラー効果を加味すると、(2)式及び(3)式に示される周波数fVは、下記の(8)式で表される。
fV=f0−[(c−V)/(c+V)]×f0=[2V/(c+V)]×f0≒(2V/c)×f0・・・(8)
スラグレベルが変化すると、ビート信号周波数は周期的に高低を繰り返すが、(2)式及び(3)式からfRを求めて、(7)式から距離Lを導出することができる。実際には、送信信号と受信信号とのミキシングを行い、得られた信号に対してフーリエ変換を行うことで、反射波形を得ることができる。
スラグレベルが変化すると、ビート信号周波数は周期的に高低を繰り返すが、(2)式及び(3)式からfRを求めて、(7)式から距離Lを導出することができる。実際には、送信信号と受信信号とのミキシングを行い、得られた信号に対してフーリエ変換を行うことで、反射波形を得ることができる。
即ち、このようにしてビート信号の周波数と強度の関係を求めることで、FMCW式マイクロ波レーダーによって、反射波の対象物までの距離と反射強度の関係を測定することができる。このほか、粉塵によるマイクロ波距離計の性能低下の問題がなければ、パルス式、位相変調式連続波レーダーなど、スラグレベルまでの測距が可能なレーダーを使用することも可能である。
マイクロ波レーダーから得られた反射波形(反射強度と対象物までの距離の関係)は、擬似ランダム信号方式では擬似ランダム信号の周期ごとに、FMCW方式では変調する三角波の周期Tごとに得られる。この反射波形から演算処理することにより、スラグ高さを求めることができるので、スラグ高さを所定の時間間隔おきに記録しておき、予め設定した高さに達したことを知らせることで、脱珪処理の最適な終了時間を検知することも可能である。この場合、「所定の高さに達する」とは、例えば、設定した高さを一旦超えたのち低下して所定の高さに達するなど、スラグ高さが所定の変化を示したのちに終了とする、などの意味合いも含まれる。
ところで、スラグレベルを測定する際、転炉の炉内には地金が多量に付着することがある。炉壁から大きく出っ張った地金により、マイクロ波が反射して測定に影響する場合がある。この場合、付着地金とスラグ面からの反射信号とが重なって観測されることとなる。また、これらの地金からの反射波はスラグ面からの反射強度とほとんど同じか、それよりも大きい場合もある。
そこで発明者らは、異なる時間の反射波形を比較調査した。その結果、これら付着地金からの反射は、反射波が出現する位置、強度ともほとんど変化しないが、スラグ面からの反射信号は時々刻々変化することがわかった。スラグフォーミングにおいては、様々な場所で泡立っており、アンテナから発信されたマイクロ波信号が照射される範囲では、スラグ高さは局所的には異なっている。よって、反射波形には、地金からの反射の信号とスラグ面からの反射の信号とが重なり合わさった状態であり、短時間の差で得られた反射波形の差分をとることで、地金による反射波の影響は大きく低減可能なことがわかった。
その際に、反射波形データは記録装置に記録するが、記録装置としてはA/D変換器を介してPC(パーソナルコンピュータ)に記録するのが簡便である。擬似ランダム信号の周期、またはFMCWの変調する三角波の周期Tに同期したトリガー信号を時間基準として、必要な対象物までの距離に対応する時間範囲を含むように所定のデータ点数を記録する。このとき、反射波形を再現するのに十分なサンプリング速度が必要である。
この記録した所定のデータ点数を1波形記録単位とする。また、複数回の波形記録単位分のデータを積算または平均化したものを新たに波形記録単位とすることによって、ノイズの影響を小さくして測定誤差を低減してもよい。但し、積算回数を多くし過ぎるとスラグ面からの反射波の変動成分が相対的に小さくなり、後述する差分処理で抽出するスラグ面からの信号が小さくなってしまうので注意を要する。上記のようにして得る波形記録単位の記録周期をΔt秒ごととする。
いま、波形記録開始後n番目の波形記録単位はnΔt秒後に記録される。このときn−1番目の波形記録単位データとの差分をとることにより、スラグ面以外の地金などからの反射波の影響を低減できる。また、Δtの整数倍の所定の時間間隔をおいて差分をとってもよい。差分をとったのちに、炉口から溶銑浴面までの範囲に対応する反射波の往復伝播時間の範囲において、最も反射強度の差分または反射強度の差分の絶対値が大きい反射波の信号をスラグ表面からの反射波の信号と判定する。差分をとったのちに残った信号またはその絶対値の、炉口から溶銑浴面までの範囲に対応する反射波の往復伝播時間の範囲における最大値に対応する位置は、スラグレベルを良く表しており、周囲の不要な反射による影響も低減するのでS/N比も向上することがわかった。
この際、差分をとるデータ間の時間間隔は、0.05秒〜10秒の範囲内とすることが好ましい。時間間隔が0.05秒未満では、差分をとった場合のスラグレベルに対応する変動成分の大きさが次第に小さくなってS/N比が低下するおそれがあり、時間間隔が10秒超えでは、平均的なスラグレベルの時間間隔内での変化が大きくなると測定誤差の要因となる場合があるからである。より望ましくは、時間間隔は0.1秒〜2秒の範囲内とすることが好ましい。
図6〜図9に、脱珪吹錬中の或る瞬間において測定された、擬似ランダム信号処理マイクロ波レーダーの反射波形(図6)及びその1記録単位後の反射波形(図7)、並びに、FMCW式マイクロ波レーダーの反射波形(図8)及びその1記録単位後の反射波形(図9)を示す。各図の横軸は、検出された信号の送信波からの遅れ時間を、送信アンテナ17及び受信アンテナ18から対象物までの距離に換算した値を用いている。
どの波形データにも同じ位置に同程度の大きさの反射波が存在しており、これらの反射波が地金からの反射と考えられる。スラグが上昇すると、これらの地金からの反射信号に重なって、スラグからの反射信号が重なることになるが、地金からの反射信号は一定の位置と大きさなので、短時間をおいて測定し、両者の差分をとれば、その差がスラグ面からの反射信号の変動成分に対応するということになる。
炉内でフォーミングしているスラグの表面は、スラグ層を通過する大量の気体による攪拌で激しく波立っており、局所的には瞬間的なスラグ面の高さは常に大きく変動していると考えられる。また、或る一回の単位測定における反射波の信号は、マイクロ波の照射範囲に存在する多数の局所的なスラグ面からの反射波の信号などが重畳されたものである。従って、或る短い時間間隔の前と後において、反射マイクロ波の信号強度と往復伝播時間との関係を測定し、2つの測定結果の差分をとれば、平均的なスラグ表面の位置に対応する往復伝播時間の近辺に反射信号強度の増減が統計的に分布するように現れる。
そこで、炉口から溶銑浴面までの範囲に対応する反射波の往復伝播時間の範囲において、最も信号強度の差分が大きい往復伝播時間が、前後いずれかの測定時点における代表的なスラグ表面からの反射波に対応するものと判定することができる。或いは、信号強度の差分の絶対値を或る時間幅で平均化し、炉口から溶銑浴面までの範囲に対応する反射波の往復伝播時間の範囲において、最も信号強度の差分の絶対値が大きい往復伝播時間を求めることにより、その時間範囲における代表的なスラグ表面の位置を求めることができる。
上記の方法で判定したスラグ表面の基準面(アンテナの位置)に対する高さから、当該チャージで投入した溶銑及び鉄スクラップ量の和から推定される溶銑浴面の基準面(アンテナの位置)に対する高さを減じ、その差の絶対値をスラグ高さとした。
図10及び図11に、それぞれ擬似ランダム信号処理式マイクロ波レーダーで測定したときの、波形データの差分処理を行わない従来の測定方法によって検出したスラグ高さの時間変化(図10)と、波形データの差分処理を行って、更に炉口から溶銑浴面までの範囲に対応する反射波の往復伝播時間の範囲における最大値をスラグ面からの信号と判定したときのスラグ高さの時間変化(図11)とを比較して示す。図10では地金の反射の影響でスラグ高さの時間変化のばらつきが大きくなるが、図11ではスラグ高さのばらつきは小さく、単調に高さが上昇する様子がわかる。
尚、図10及び図11に示した脱珪処理では、吹錬の初期に極端に排ガス中のダスト濃度が高くなる時期があり、その結果、炉口以下からの反射波の強度が著しく低下してスラグ高さを検知できなかった。図10及び図11において、スラグ高さの測定値が記載されていない範囲は、上記の検知不能な時期であるが、これはスラグがフォーミングする前の吹錬初期の極短期間であるため、スラグ高さの測定結果を利用して精錬の制御を行ううえで特に問題になることはない。
また、脱珪スラグ6の排滓率を増大するためには、脱珪処理終了時において、脱珪スラグ6の塩基度は0.5以上1.5以下とし、且つ、溶銑温度或いは脱珪スラグ6の温度を1280℃以上とすることが好ましい。脱珪スラグ6の塩基度が0.5未満の場合、粘度が上昇してスラグの流動性が低くなり、排出速度や排滓率の低下を招き易くなり、塩基度が1.5を超える場合、固相スラグが生じることでスラグ流動性が低くなる。また、スラグ温度が1280℃を下回っても、同様に固相スラグの増加によるスラグ流動性の低下、並びに、液相スラグ自体の粘性上昇が生じることから、脱珪スラグ6の流動性が低くなりスラグの排出速度や排滓率の低下を招き易くなる。
一般に、脱燐スラグは、脱珪スラグと比較して比較的高塩基度であるため、水和膨張性などの特性から、土木材料に用いる際に用途に制約を受ける場合も多い。従って、脱燐スラグの発生量を極力低減し、脱燐スラグをこのような用途制約の少ない脱珪スラグ6に転換するためには、前チャージの脱燐処理工程後、炉内の溶銑を出湯した後、炉内の脱燐スラグを排出せず、炉内に前チャージの脱燐スラグを残留させたまま新たな溶銑を装入し、この溶銑に脱珪処理工程を施し、この脱珪処理後、中間排滓工程によって脱珪スラグ6の一部を精錬炉から排出し、その後、炉内に残留させた溶銑に脱燐処理工程を施す、という手順を繰り返して行う予備処理方法を採用することが好ましい。その際には、脱珪処理終了時において、脱珪スラグ6の塩基度は0.8以上1.5以下とし、溶銑温度或いは脱珪スラグ6の温度を1280℃以上1380℃以下とし、溶銑中珪素含有量を0.10質量%以下として、且つ、中間排滓工程では、脱珪スラグ6の40質量%以上を排出することが好ましい。
脱珪スラグ6の塩基度を0.8以上1.5以下とし、溶銑温度或いは脱珪スラグ6の温度を1280℃以上1380℃以下とすることにより、前チャージの脱燐スラグから溶銑への復燐を防止しつつ、中間排滓工程での脱珪スラグ6の排出を効率的に行うことができる。ここで、脱珪処理終了時においては、脱珪スラグ6の温度は溶銑温度に近いので、溶銑温度或いは脱珪スラグ6の温度のどちらを指標としても構わない。溶銑温度は熱電対を溶銑に浸漬することによって測定できるが、測定値に代えて、脱珪処理前の溶銑の温度及び成分、鉄スクラップなどの各種冷鉄源の使用量、生石灰などの各種副原料の使用量、フェロシリコンなどの各種昇熱剤の使用量、並びに、酸素ガス供給量などの操業条件から、熱収支を計算して算出される溶銑温度を用いても構わない。
また、脱珪処理後の溶銑中珪素含有量を0.10質量%以下とすることにより、スラグ中酸化鉄濃度が比較的低くなっても、脱珪処理中に脱炭反応によるCOガス発生が活発となるので、脱珪スラグ6のフォーミングが促進され、脱珪処理終了時においてスラグ高さを高くすることに有利になる。また、この場合には、中間排滓工程中にも脱珪スラグ6のフォーミングが維持されてスラグ高さが高く維持されるので、脱珪スラグ6の排出効率を高める点でも有利である。
中間排滓工程での脱珪スラグ6の排滓率(排滓率(質量%)=(排出スラグ質量)×100/[(脱珪処理工程で生成したスラグ質量)+(前チャージの残留スラグ質量)])は40質量%以上とすることが好ましい。これにより、前チャージの脱燐スラグを炉内に過剰に蓄積させることなく、また脱燐処理工程でのスラグ塩基度の過剰な低下を招くことなく、脱燐処理工程において生石灰などの脱燐剤使用量を抑制して溶銑中燐濃度を低下させることができる。
以上説明したように、本発明に係る溶銑の精錬方法の一つの実施形態である溶銑の予備処理方法によれば、1つの転炉型精錬炉1を用いて、溶銑5の脱珪処理と脱燐処理とを、途中の中間排滓工程を挟んで連続して行う溶銑の予備処理において、脱珪処理の際に、フォーミングした脱珪スラグ6のスラグ高さ比率が0.3以上0.6未満となっている状態で脱珪吹錬を終了した後、底吹きガスのみによる攪拌を1.0〜5.0分間行ってスラグ中の粒鉄量を低減させてから、スラグ高さ比率が0.3以上0.6未満となっている状態で転炉型精錬炉1を傾動させて中間排滓を開始するので、スラグポットでの過剰なスラグフォーミングを抑えたうえで、十分な量の脱珪スラグ6を5.0分間程度の短時間で炉外に排出することが実現される。これにより、中間排滓工程を遅延させることなく円滑に行うことが可能となるとともに、次の脱燐処理工程では、少ないCaO系媒溶剤の使用量で脱燐処理後の溶銑の燐含有量を低位に安定することが実現される。
尚、本発明は上記説明の範囲に限るものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記説明では、マイクロ波スラグレベル計15を用いてスラグ高さを測定しているが、炉内の高さ方向温度プロフィールの測定、上吹きランスまたは炉体に取り付けた振動計の測定値、炉体から生じる音量の測定値などによるスラグ面の検知情報からもスラグ高さを測定することができる。
また、上記説明では、1つの転炉型精錬炉を用い、溶銑に対して一次吹錬として脱珪処理を施し、この脱珪処理後に炉内に溶銑を残したままスラグを排出し、その後、更に溶銑に対して二次吹錬として脱燐処理を施して行う、溶銑の予備処理における本発明の実施形態について主に説明した。しかし、本発明の実施形態は上記説明の範囲に限定されるものではなく、1つの転炉型精錬炉を用い、溶銑に対して一次吹錬として脱珪・脱燐処理を施し、その後、炉内に溶銑を残したままスラグを排出し、その後、更に溶銑に対して二次吹錬として脱炭処理を施し、溶銑から溶鋼を溶製する溶銑の精錬においても、本発明を適用することができる。
この場合、上記説明に準じて、一次吹錬として行う脱珪・脱燐処理中にスラグ高さを測定して制御しつつ吹錬を行い、スラグ高さ比率が0.3以上0.6未満となっている状態で脱珪・脱燐処理を終了した後、底吹きガスのみによる攪拌を1.0〜5.0分間行ってスラグ中の粒鉄量を低減させてから、スラグ高さ比率が0.3以上0.6未満となっている状態で転炉型精錬炉の傾動を開始して中間排滓を行う。これにより、中間排滓工程では、スラグポットでの過剰なスラグフォーミングを抑えたうえで、十分な量の脱燐スラグを短時間で炉外に排出することが実現される。また、その後の二次吹錬工程である脱炭処理では、少ないCaO系媒溶剤の使用量で溶鋼の燐含有量を低位に安定することが実現される。
図1に示す容量330トンの転炉型精錬炉を用い、溶銑の脱珪処理工程、中間排滓工程及び脱燐処理工程を、この順に行う溶銑の予備処理方法を繰り返し実施して、脱珪処理工程及び中間排滓工程におけるスラグのフォーミングを制御する種々の試験条件について評価した。この際、脱燐処理後の溶銑を出湯後、脱燐スラグを排滓することなく、炉内に残留させたままとして次チャージの溶銑の予備処理に利用する方法を繰り返し実施した。
中間排滓工程より前に行う脱珪処理工程において、マイクロ波レベル計を用いて炉内の溶銑浴面からのスラグ高さを測定し、測定されたスラグ高さに基づいて所定の試験条件で中間排滓開始までの脱珪処理工程の制御を行うことを、各試験条件ごとにそれぞれ10チャージ程度繰り返して実施し、種々の試験条件について評価した。
いずれの試験条件においても、前チャージの脱燐スラグを炉内に残留させた転炉型精錬炉に、鉄スクラップ45トン/チャージを装入し、更に高炉から出銑した後、溶銑鍋で脱硫処理した、珪素含有量が0.35〜0.45質量%、燐含有量が0.11〜0.13質量%の溶銑285トン/チャージを装入して、合計330トン/チャージを原料として溶銑の予備処理を実施した。
脱珪処理工程では、炉内に残留させた前チャージの脱燐スラグの計算塩基度と計算スラグ量、当該チャージの脱珪処理の酸化珪素生成量及び添加物の組成と添加量から計算されるスラグの計算塩基度が1.10未満となる場合には、計算塩基度を1.10とするように転炉スラグを添加した。また、脱珪外酸素量原単位を3.0Nm3/溶銑−t以上とし、マイクロ波レベル計を用いて測定したスラグ高さ比率が所定の値に達した時点で送酸を停止して脱珪処理を終了した。
脱珪処理終了後、所定の底吹き窒素ガス流量で、所定の攪拌時間だけ保持してスラグ中の粒鉄の沈降を図った後、所定のスラグ高さ比率において炉体の傾動を開始して、中間排滓を行った。脱珪処理終了時点でのスラグ高さ比率が高い幾つかの試験条件では、所定量のスラグのフォーミング鎮静剤の添加も行った。
脱珪処理終了時のスラグ高さ比率を所定の範囲とし、脱珪処理終了後の底吹きガス流量及び攪拌時間を所定の値とし、中間排滓時の炉傾動開始直前のスラグ高さ比率を所定の範囲とした各試験条件について、主な試験条件と得られた結果を表1にまとめて示す。尚、表1に示す、炉内に残留させた前チャージの脱燐スラグの計算スラグ量と計算塩基度、脱珪処理における転炉スラグの添加量と脱珪外酸素量、底吹きガスのみによる攪拌時間も含めた脱珪処理工程後の脱珪スラグの計算塩基度、計算スラグ量及びスラグ中トータル鉄(T.Fe)の各値は、同じ試験条件で連続して実施した約10チャージでの平均値を示している。
中間排滓工程では、スラグがスラグポットからオーバーフローして操業を阻害するリスクがあるため、スラグポット内のスラグのフォーミング状況を監視しながら炉体の傾動角度によってスラグの排出速度を調整した。その際、スラグポット内でのフォーミングが著しい場合には、一旦スラグの排出を中断して中間排滓を実施した。また、炉の傾動を開始してから炉の傾動角度を復帰させて排滓を終了するまでの排滓時間は、4〜10分の範囲内とし、目視観察により、溶銑を流出させることなく適度な排出速度で排滓できる範囲内で、排滓率50質量%以上を目安として、できるだけ排滓量を増大させるように中間排滓を継続して行った。つまり、排滓率50質量%未満且つ排滓時間10分未満でも、溶銑を流出させないようにスラグを排出した場合のスラグの排出速度が著しく低下した場合には、中間排滓を終了した。
また、中間排滓工程での排滓率は、上記の脱珪処理工程後の脱珪スラグの計算スラグ量に対する排滓量の質量比率であり、排滓質量は、スラグポットを積載するための移動台車に設置した秤量器による排出物の質量の測定値に、スラグ質量比率の平均値0.95を乗じて求めた。
脱燐処理工程では、脱燐処理後の溶銑中燐濃度を0.030質量%未満まで低下させるべく、各試験チャージの脱燐スラグの計算塩基度を1.8とするように、CaO系媒溶剤の使用量を調整した。CaO系媒溶剤としては、粉状の生石灰を、使用量2.5トンを上限として上吹きランスから吹き付けて使用し、CaO源が不足する場合には、小塊状の生石灰を追加して、脱燐処理の初期に炉上から投入した。また、脱燐処理後の溶銑中炭素濃度を2.7質量%程度とするように、脱珪処理での脱珪外酸素量と脱燐処理での送酸量との合計酸素量原単位を約13Nm3/溶銑−tに調整した。
各試験条件における、中間排滓工程における排滓率と排滓時間、脱燐処理工程における生石灰原単位、酸素量原単位及び脱燐処理後の溶銑中燐濃度の各平均値を、同様に表1に示した。
表1中、比較例1で示した試験条件では、脱珪処理終了時点のスラグ高さ比率を0.2以上0.3未満とし、脱珪処理終了後、底吹きガスによる攪拌を2.0分間実施した後、スラグ高さ比率が0.2以上0.3未満の状態で炉傾動を開始して中間排滓を行った。また、比較例2で示した試験条件では、脱珪処理終了時点のスラグ高さ比率を0.3以上0.4未満としたが、底吹きガス流量を低下させて攪拌時間を延長する条件としたために、炉傾動開始直前のスラグ高さ比率は0.2以上0.3未満となった。
これらの試験条件では、排滓率が40質量%未満と低位であったことから、脱燐処理での生石灰原単位が8kg/溶銑−t以上に増大し、また、スラグ量も過大となって攪拌不足による反応効率の低下を招き、その結果、脱燐処理後の溶銑中燐含有量も0.030質量%超えに増大する傾向となった。
また、表1中、比較例3及び比較例4で示した試験条件では、脱珪処理終了時点のスラグ高さ比率を0.5以上0.6未満としたが、比較例3では底吹きガスによる攪拌時間を0.5分間と短くしたことから、また、比較例4では底吹きガス流量を0.40Nm3/(min・溶銑−t)に増大させたために、炉傾動開始直前のスラグ高さ比率が0.6以上0.7未満となったことから、スラグポット内のスラグのフォーミングを招き、排滓速度を調節したために、排滓時間の延長を招く結果となった。これは、排出したスラグ中の粒鉄量が増大してスラグポット内でのスラグのフォーミングが助長されたためと考えられる。
更に、表1中、比較例5及び比較例6で示した試験条件では、脱珪処理終了時点のスラグ高さ比率を0.6以上0.7未満とし、底吹きガスによる攪拌時間と底吹きガス流量とを調節したが、炉傾動開始直前のスラグ高さ比率は0.6以上0.7未満に維持されたことから、スラグポット内のスラグのフォーミングを招き、排滓速度を調節したために、排滓時間の延長を招く結果となった。
そこで、比較例7では、スラグ高さ比率が0.6以上0.7未満で脱珪処理を終了後、炉内にスラグのフォーミング鎮静剤を添加して、底吹きガスによる攪拌を4.0分間実施し、攪拌直後のスラグ高さ比率を0.5以上0.6未満に低下させた試験条件について評価した。しかしながら、比較例7において、スラグポット内でのスラグのフォーミング状況は比較例5及び比較例6の場合と同程度であり、同様に排滓時間の延長を招く結果となった。これは、フォーミング鎮静剤の添加によってスラグ中粒鉄の沈降が阻害されて、スラグポット内でのスラグのフォーミングが助長されたためと考えられる。
また、脱珪処理終了時点のスラグ高さ比率を0.6以上0.7未満まで増大させた比較例5〜7の試験条件では、脱珪処理工程における脱珪外酸素量原単位が増大する傾向にあり、その分だけ脱燐処理工程における酸素量原単位を減少させたために、総合での脱燐酸素効率が低下して、脱燐処理後の溶銑中燐濃度が増大する傾向となった。
一方、本発明による溶銑の予備処理方法を適用した試験条件(本発明例1〜7)では、脱珪処理終了時のスラグ高さ比率を0.3以上0.6未満とし、脱珪処理終了後の底吹きガスによる攪拌時間を1.0分間以上5.0分間以下の範囲内とし、中間排滓時の炉傾動直前でのスラグ高さ比率を0.3以上0.6未満とした他、底吹きガス流量やフォーミング鎮静剤の添加量も変更した種々の試験条件において、その後の中間排滓工程では、スラグポットでの過剰なスラグフォーミングを抑えたうえで、目標とする所定量のスラグを速やかに短時間で炉外に排出することが可能となることがわかった。これによって、次の脱燐精錬工程においても、少ない生石灰使用量で、溶銑の燐濃度を安定して低濃度まで低減することが可能となっている。
1 転炉型精錬炉
2 上吹きランス
3 底吹き羽口
4 出湯口
5 溶銑
6 脱珪スラグ
7 冷鉄源
8 酸素ガス
9 底吹きガス
10 装入鍋
11 煙道
12 フード
13 開口部
14 開口部
15 マイクロ波スラグレベル計
16 導波管
17 送信アンテナ
18 受信アンテナ
2 上吹きランス
3 底吹き羽口
4 出湯口
5 溶銑
6 脱珪スラグ
7 冷鉄源
8 酸素ガス
9 底吹きガス
10 装入鍋
11 煙道
12 フード
13 開口部
14 開口部
15 マイクロ波スラグレベル計
16 導波管
17 送信アンテナ
18 受信アンテナ
Claims (7)
- 1つの転炉型精錬炉に収容された溶銑に対して、複数に分割された、酸素を供給して行う精錬工程を施し、複数に分割された精錬工程の間の中間排滓工程で、炉内の溶銑及びスラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたままスラグの残部を排出する溶銑の精錬方法において、
前記中間排滓工程よりも以前に、炉内の溶銑浴面からのスラグ高さを測定し、炉内の溶銑浴面から前記転炉型精錬炉の炉口までの炉内フリーボードの高さに対する測定された前記スラグ高さの比率をスラグ高さ比率と定義したとき、スラグ高さ比率が0.3以上0.6未満のときに前記中間排滓工程の前に行う精錬を終了し、
その後、前記転炉型精錬炉に設けられた底吹き羽口から底吹きガスを吹き込みながら1.0分間以上5.0分間以下保持し、次いで、スラグ高さ比率が0.3以上0.6未満のときに、前記転炉型精錬炉を傾転させて炉内のスラグの排出を開始することを特徴とする、溶銑の精錬方法。 - 前記中間排滓工程の前に行う精錬の終了からスラグの排出を開始するまでの間に、前記転炉型精錬炉の炉内にフォーミング鎮静剤を投入しないことを特徴とする、請求項1に記載の溶銑の精錬方法。
- 複数に分割された、酸素を供給して行う前記精錬工程が脱珪処理工程と脱燐処理工程とを含み、脱珪処理工程と脱燐処理工程との間で、前記中間排滓工程を実施することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の溶銑の精錬方法。
- 前記脱珪処理工程終了時の炉内のスラグの塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))を0.8以上1.5以下に制御し、且つ、前記脱珪処理工程において、炉内に供給される酸素源のうちで脱珪反応に使用される分を除いた酸素源を脱珪外酸素量と定義したとき、前記脱珪処理工程における脱珪外酸素量原単位を3.0〜5.0Nm3/溶銑−tの範囲にし、且つ、前記脱燐処理工程における酸素量原単位を8.0〜10.0Nm3/溶銑−tの範囲に制御することを特徴とする、請求項3に記載の溶銑の精錬方法。
- 前記脱珪処理工程終了時の炉内スラグのトータル鉄(T.Fe)濃度を20質量%以下に制御することを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の溶銑の精錬方法。
- 前チャージの溶銑の脱燐処理工程で生じたスラグの一部または全部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、新たな溶銑を前記転炉型精錬炉に装入し、前記脱珪処理工程を行うことを特徴とする、請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の溶銑の精錬方法。
- 擬似ランダム信号処理レーダー方式マイクロ波距離計または周波数変調連続波式マイクロ波距離計を用い、10GHz以下の周波数のマイクロ波を前記転炉型精錬炉内に送信して炉内からの反射波を受信し、マイクロ波の反射波の反射強度と往復伝播時間との関係を所定の時間間隔毎に求めて記録し、前記記録した反射波の反射強度と往復伝播時間との関係から、所定の時間間隔をおいて差分をとった反射波の反射強度と往復伝播時間との関係を求め、炉口から溶銑浴面までの範囲に対応する反射波の往復伝播時間の範囲において、最も反射強度の差分または反射強度の差分の絶対値が大きい反射波の信号をスラグ表面からの反射波の信号と判定してスラグ面までの距離を求め、前記スラグ高さを測定することを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の溶銑の精錬方法。
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JP2016013104A JP2017133060A (ja) | 2016-01-27 | 2016-01-27 | 溶銑の精錬方法 |
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Cited By (3)
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---|---|---|---|---|
CN114941049A (zh) * | 2022-05-26 | 2022-08-26 | 莱芜钢铁集团银山型钢有限公司 | 一种转炉炉底控制方法 |
CN115369308A (zh) * | 2022-07-15 | 2022-11-22 | 首钢京唐钢铁联合有限责任公司 | 一种生产高强if钢的方法 |
WO2024202742A1 (ja) * | 2023-03-29 | 2024-10-03 | 日本製鉄株式会社 | 製鋼炉の操業方法 |
-
2016
- 2016-01-27 JP JP2016013104A patent/JP2017133060A/ja active Pending
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