JP2017132954A - ビニル・シス−ポリブタジエンゴム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】融点が95〜110℃の1,2−ポリブタジエン(A)を4〜20重量%、及び融点が150〜230℃の1,2−ポリブタジエン(B)を10〜15重量%含有することを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴムである。
【選択図】なし
Description
本発明に係るビニル・シス−ポリブタジエンゴムは、マトリックス成分であるポリブタジエン中に、融点が95〜110℃の1,2−ポリブタジエン(A)を4〜20重量%、及び融点が150〜230℃の1,2−ポリブタジエン(B)を10〜15重量%含有する。
本発明に係るビニル・シス−ポリブタジエンゴムにおいて、1,2−ポリブタジエン(A)の融点は95〜110℃であるが、95〜105℃であることが好ましい。1,2−ポリブタジエン(A)の融点が95℃より低いと引張応力が低下する傾向にあり、110℃より高いと耐亀裂性が低下する傾向にあり、好ましくない。
また、本発明に係るビニル・シス−ポリブタジエンゴムは、後述するビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法の第3工程において、1,3−ブタジエンをシンジオタクチック−1,2重合することによって、1,2−ポリブタジエン(B)を含有させることができる。
本発明に係るビニル・シス−ポリブタジエンゴムにおいて、マトリックス成分であるポリブタジエンは、後述するビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法の第2工程において、1,3−ブタジエンをシス−1,4重合することによって得られる。ポリブタジエンのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、20〜60が好ましく、20〜35がより好ましい。また、ポリブタジエンのシス−1,4構造含有率は90%以上であることが好ましく、特に95%以上であることが好ましい。
本発明に係るビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法としては、融点が95〜110℃の1,2−ポリブタジエン(A)と、1,3−ブタジエンと、炭化水素を主成分とする不活性有機溶媒との混合物を調製する第1工程と、第1工程で調整された混合物に水、有機アルミニウム化合物及び可溶性コバルト化合物からなる触媒、又は、有機アルミニウム化合物、ニッケル化合物及びフッ素化合物からなる触媒を添加して、1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する第2工程と、第2工程で得られた重合反応混合物中の1,3−ブタジエンをシンジオタクチック−1,2重合する第3工程と、を備えることを特徴とする。
本発明に係るビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法において使用する、融点が95〜110℃の1,2−ポリブタジエン(A)は、コバルト化合物、一般式AlR3(但し、Rは炭素原子数1〜10の炭化水素基である)で表される有機アルミニウム化合物及び二硫化炭素、並びに、必要に応じてアルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、ニトリル、スルホキシド、アミド及び燐酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物、からなる触媒を用い、1,3−ブタジエンを重合することにより製造される。前記1,2−ポリブタジエン(A)の1,2構造含有率は、40〜99%が好ましく、50〜95%が特に好ましい。また、前記1,2−ポリブタジエン(A)は、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンであることが好ましい。
次に、第1工程で調整された混合物中の水分の濃度を調整する。水分の濃度は、シス−1,4重合で用いる有機アルミニウム化合物1モル当たり、好ましくは0.1〜1.4モル、特に好ましくは0.2〜1.2モルの範囲である。この範囲外では触媒活性が低下したり、シス−1,4構造含有率が低下したり、分子量が異常に低く又は高くなったりするため好ましくない。また、上記の範囲外では、重合時のゲルの発生を抑制することができず、このため重合槽などへのゲルの付着が起り、さらに連続重合時間を延ばすことができないので好ましくない。水分の濃度を調整する方法は、公知の方法が適用できる。多孔質濾過材を通して添加・分散させる方法(特開平4−85304号公報)も有効である。
次に、第2工程で得られた重合反応混合物中の1,3−ブタジエンをシンジオタクチック−1,2重合する。その際に、得られたシス−1,4重合物に、1,3−ブタジエンを添加しても添加しなくてもよい。また、この1,2重合する際に、一般式AlR3(但し、Rは炭素原子数1〜10の炭化水素基である)により表される有機アルミニウム化合物及び二硫化炭素、並びに、可溶性コバルト化合物を添加して1,3−ブタジエンを1,2重合することが好ましく、さらに、1,2重合する際に、重合系に水を添加してもよい。また、二硫化炭素はシス−1,4重合に与える影響が小さく、また重合終了後も溶液中に残存するため、第1工程若しくは第2工程で添加してもよい。
本発明のビニル・シス−ポリブタジエンゴムは、例えば、タイヤにおけるキャップトレッド、ランフラットタイヤのサイド補強層、カーカス、ベルト、チェーファー、ベーストレッド、ビード、スティフナー、インナーライナー等のタイヤ部材や、防振ゴム、ホース、ベルト、ゴムロール、ゴムクーラー、靴底ゴムなどの工業製品、その他のコンポジット、接着剤、プラスチックの改質剤などにも用いることができる。特に、タイヤ用のゴム組成物として用いた場合、従来よりも優れた引張応力を有する。
1.ムーニー粘度(ML1+4,100℃)
ムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、JIS K6300に準拠し、100℃にて予熱1分測定4分の値をムーニー粘度計(島津製作所製、SMV−202)により測定した。
低融点SPB(1,2−ポリブタジエン(A))の含有量は、以下の式(1)を用いて計算した。
低融点SPB(1,2−ポリブタジエン(A))の含有量=重合系中に添加した低融点SPB量÷得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴム量×100 ・・・(1)
示差走査熱量計(島津製作所製、DSC−50)により測定した融解熱量と、実測H.I.測定法で得られたH.I.の検量線から求めた。実測H.I.は2gのビニル・シス−ポリブタジエンゴムを200mlのn−ヘキサンにて4時間ソックスレー抽出器によって沸騰抽出した抽出残部を重量部で示した。
高融点SPB(1,2−ポリブタジエン(B))の融点は、試料約10mg、昇温速度10℃/minとした場合の値を示差走査熱量計(島津製作所製、DSC−50)により測定した。
1.加工性
加工性は、二次配合物のムーニー粘度(ML1+4,100℃)より評価した。また、比較例2を100とし、指数を算出した。数値が高い程加工性が良好なことを示す。
1.引張応力(M300)
M300は、JIS6251に従い引張応力M300を測定した。また、比較例1を100とし、指数を算出した。数値が大きいほど引張応力が高いことを示す。
ヘリカル羽を備えチッソ置換を終えた1.5Lステンレス製オートクレーブに、低融点SPB(1,2−ポリブタジエン(A)成分:JSR社製 RB830)2.7g及びシクロヘキサン100mlを投入しオートクレーブを密閉し、次いで、1,3−ブタジエンおよび2−ブテンの混合溶液(重量比50:50)500mlを圧送することで、原料溶液(FB)600mlを作製した。原料溶液に表1に示す水(H2O)及び二硫化炭素(CS2)をシリンジを用いて添加し、その後、オートクレーブを60℃まで昇温し、30分・500rpmで攪拌することにより、低融点SPBを完全に溶解させた。オートクレーブを25℃まで冷却した後、表1に示すジエチルアルミニウムクロライド及びトリエチルアルミニウム(モル比3:1)をシリンジを用いて添加し、5分攪拌した。次いで、表1に示す1,5−シクロオクタジエン(COD)をシリンジを用いて添加し、45℃まで昇温させた。その後、表1に示すコバルトオクトエート(Co(Oct)2)をシリンジを用いて添加し、45℃で20分シス−1,4重合を実施した。得られた重合反応混合物に、表2に示すトリエチルアルミニウム(TEA)をシリンジを用いて添加し2分間保持、次いで、表2に示すコバルトオクトエート(Co(Oct)2)をシリンジを用いて添加し、45℃で20分シンジオタクチック−1,2重合を実施した。得られた重合反応混合物に重合停止剤を添加し、シンジオタクチック−1,2重合を停止させた。その後、オートクレーブを冷却・脱圧し、重合反応混合物をバットに取り出した。100℃に温めた真空乾燥機にバットごと投入し、未反応のブタジエン及び溶剤を除去することで、実施例1に記載のビニル・シス−ポリブタジエンを得た。得られたビニル・シス−ポリブタジエンの物性を表3に示す。
ヘリカル羽を備えチッソ置換を終えた5.0Lステンレス製オートクレーブに、低融点SPB(1,2−ポリブタジエン(A)成分:JSR社製 RB830)3.0g投入し、1,3−ブタジエンと2−ブテンおよびシクロヘキサンの混合液(重量比32:31:36)を2000ml圧送、オートクレーブを密閉し原料溶液(FB)を作製した。原料溶液に表1に示す水(H2O)及び二硫化炭素(CS2)をシリンジを用いて添加し、その後、オートクレーブを60℃まで昇温し、30分・500rpmで攪拌することにより、低融点SPBを完全に溶解させた。オートクレーブを25℃まで冷却した後、表1に示すジエチルアルミニウムクロライドをシリンジを用いて添加し、5分攪拌した。次いで、表1に示す1,5−シクロオクタジエン(COD)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(TPL)をシリンジを用いて添加し、60℃まで昇温させた。その後、表1に示すコバルトオクトエート(Co(Oct)2)シリンジを用いて添加し、60℃で20分シス−1,4重合を実施した。得られた重合反応混合物に、表2に示すトリエチルアルミニウム(TEA)をシリンジを用いて添加し2分間保持、次いで、表2に示すコバルトオクトエート(Co(Oct)2)をシリンジを用いて添加し、40℃で20分シンジオタクチック−1,2重合を実施した。得られた重合反応混合物に重合停止剤を添加し、シンジオタクチック−1,2重合を停止させた。その後、オートクレーブを冷却・脱圧し、重合反応混合物をバットに取り出した。100℃に温めた真空乾燥機にバットごと投入し、未反応のブタジエン及び溶剤を除去することで、比較例1に記載のビニル・シス−ポリブタジエンを得た。得られたビニル・シス−ポリブタジエンの物性を表3に示す。
ヘリカル羽を備えチッソ置換を終えた1.5Lステンレス製オートクレーブに、低融点SPB(1,2−ポリブタジエン(A)成分:JSR社製 RB830)2.7g及びシクロヘキサン100mlを投入しオートクレーブを密閉し、次いで、1,3−ブタジエンおよび2−ブテンの混合溶液(重量比50:50)500mlを圧送することで、原料溶液(FB)600mlを作製した。原料溶液に表1に示す水(H2O)及び二硫化炭素(CS2)をシリンジを用いて添加し、その後、オートクレーブを60℃まで昇温し、30分・500rpmで攪拌することにより、低融点SPBを完全に溶解させた。オートクレーブを25℃まで冷却した後、表1に示すジエチルアルミニウムクロライド及びトリエチルアルミニウム(モル比3:1)をシリンジを用いて添加し、5分攪拌した。次いで、表1に示す1,5−シクロオクタジエン(COD)をシリンジを用いて添加し、45℃まで昇温させた。その後、表1に示すコバルトオクトエート(Co(Oct)2)をシリンジを用いて添加し、45℃で20分シス−1,4重合を実施した。得られた重合反応混合物に、表2に示すトリエチルアルミニウム(TEA)をシリンジを用いて添加し2分間保持、次いで、表2に示すコバルトオクトエート(Co(Oct)2)をシリンジを用いて添加し、45℃で20分シンジオタクチック−1,2重合を実施した。得られた重合反応混合物に重合停止剤を添加し、シンジオタクチック−1,2重合を停止させた。その後、オートクレーブを冷却・脱圧し、重合反応混合物をバットに取り出した。100℃に温めた真空乾燥機にバットごと投入し、未反応のブタジエン及び溶剤を除去することで、比較例2に記載のビニル・シス−ポリブタジエンを得た。得られたビニル・シス−ポリブタジエンの物性を表3に示す。
Claims (3)
- 融点が95〜110℃の1,2−ポリブタジエン(A)を4〜20重量%、及び融点が150〜230℃の1,2−ポリブタジエン(B)を10〜15重量%含有することを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
- 融点が95〜110℃の1,2−ポリブタジエン(A)と、1,3−ブタジエンと、炭化水素を主成分とする不活性有機溶媒との混合物を調製する第1工程と、
第1工程で調整された混合物に水、有機アルミニウム化合物及び可溶性コバルト化合物からなる触媒、又は、有機アルミニウム化合物、ニッケル化合物及びフッ素化合物からなる触媒を添加して、1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する第2工程と、
第2工程で得られた重合反応混合物中の1,3−ブタジエンをシンジオタクチック−1,2重合する第3工程と、を備える製造方法により得られたことを特徴とする請求項1記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。 - 融点が95〜110℃の1,2−ポリブタジエン(A)と、1,3−ブタジエンと、炭化水素を主成分とする不活性有機溶媒との混合物を調製する第1工程と、
第1工程で調整された混合物に水、有機アルミニウム化合物及び可溶性コバルト化合物からなる触媒、又は、有機アルミニウム化合物、ニッケル化合物及びフッ素化合物からなる触媒を添加して、1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する第2工程と、
第2工程で得られた重合反応混合物中の1,3−ブタジエンをシンジオタクチック−1,2重合する第3工程と、を備えることを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンの製造方法。
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