以下、本発明に係るセパレータ及び蓄電素子の一実施形態について、図1〜図10を参照しつつ説明する。蓄電素子には、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
本実施形態の蓄電素子1は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子1は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子1は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子1は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子1は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子1は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子1と組み合わされて蓄電装置100に用いられる。前記蓄電装置100では、該蓄電装置100に用いられる蓄電素子1が電気エネルギーを供給する。
蓄電素子1は、図5〜図10に示すように、正極11と負極12とセパレータ4とを含む電極体2と、電極体2を収容するケース3と、ケース3の外側に配置される外部端子7であって電極体2と導通する外部端子7と、を備える。また、蓄電素子1は、電極体2、ケース3、及び外部端子7の他に、電極体2と外部端子7とを導通させる集電体5等を有する。
電極体2は、正極11と負極12とがセパレータ4によって互いに絶縁された状態で積層された積層体22が巻回されることによって形成される。
正極11は、金属箔111と、金属箔111の上に形成された活物質層112と、を有する。金属箔111は帯状である。本実施形態の正極の金属箔111は、例えば、アルミニウム箔である。正極11は、帯形状の短手方向である幅方向の一方の端縁部に、活物質層112の非被覆部(正極の活物質層112が形成されていない部位)105を有する。
正極の活物質層112は、正極活物質と、バインダーと、を有する。
正極活物質は、例えば、リチウム金属酸化物である。具体的に、正極活物質は、例えば、LiaMebOc(Meは、1又は2以上の遷移金属を表す)によって表される複合酸化物(LiaCoyO2、LiaNixO2、LiaMnzO4、LiaNixCoyMnzO2等)、LiaMep(XOq)r(Meは、1又は2以上の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、Vを表す)によって表されるポリアニオン化合物(LiaFepPO4、LiaMnpPO4、LiaMnpSiO4、LiaCopPO4F等)である。本実施形態の正極活物質は、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2である。
正極の活物質層112に用いられるバインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレンブタジエンゴム(SBR)である。本実施形態のバインダーは、ポリフッ化ビニリデンである。
正極の活物質層112は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の正極の活物質層112は、導電助剤としてアセチレンブラックを有する。
負極12は、金属箔121と、金属箔121の上に形成された活物質層122と、を有する。金属箔121は帯状である。本実施形態の負極の金属箔121は、例えば、銅箔である。負極12は、帯形状の短手方向である幅方向の他方(正極11の非被覆部105と反対側)の端縁部に、活物質層122の非被覆部(負極の活物質層122が形成されていない部位)105を有する。
負極の活物質層122は、負極活物質と、バインダーと、を有する。
負極活物質は、例えば、グラファイト、難黒鉛化炭素、及び易黒鉛化炭素などの炭素材、又は、ケイ素(Si)及び錫(Sn)などのリチウムイオンと合金化反応を生じる材料である。本実施形態の負極活物質は、難黒鉛化炭素である。
負極の活物質層122に用いられるバインダーは、正極の活物質層112に用いられたバインダーと同様のものである。本実施形態のバインダーは、ポリフッ化ビニリデンである。
負極の活物質層122は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の負極の活物質層122は、導電助剤を有していない。
セパレータ4は、絶縁性を有する部材である。セパレータ4は、図1に示すように、帯状である。セパレータ4は、正極11と負極12との間に配置される。これにより、電極体2(積層体22)において、正極11と負極12とが互いに絶縁される。また、セパレータ4は、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、リチウムイオンが、セパレータ4を挟んで交互に積層される正極11と負極12との間を移動する。
セパレータ4は、帯状の基材層41と、無機粒子を含む帯状の無機層42とを備える。基材層41と無機層42とは、それぞれの一方の面で互いに重ねられている。
基材層41は、例えば、織物、不織布、又は多孔膜によって多孔質に構成される。多孔質とは、蓄電素子の電解液を保持する複数の孔であって外部と連通する孔が内部に形成されていることである。
基材層41の外縁部の少なくとも一部は、外縁部以外の部分(以下、単に中央部ともいう)よりも厚み方向に圧縮されている。本実施形態では、帯状の基材層41の幅方向の両方の外縁部であって長手方向に沿った外縁部が、中央部よりも圧縮されている。外縁部の圧縮されている部分の幅方向における長さは、セパレータの総厚み分の長さの0.5倍以上3倍以下である。外縁部の圧縮されている部分の長さ(幅方向における長さ)は、通常、2μm以上15μm以下である。
基材層41の外縁部の厚みは、圧縮によって、中央部の厚みよりも薄くなっている。圧縮の方法については、後述する。
基材層41の中央部の厚みは、通常、1μm以上10μm以下である。中央部の厚みは、例えば、中央部の少なくとも5ヶ所の厚みをランダムに走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定した測定値の平均値である。基材層41の外縁部の厚みは、端縁(先端)に向かうほど薄い。即ち、外縁部の厚みは、外側へ向けて薄くなる。
基材層41では、端縁(先端)から内側へ2μm以上10μm以下までの部分は、中央部の厚みに対して、1/2以下の厚みの部分を有する。
基材層41の外縁部の気孔率は、基材層41の中央部の気孔率よりも小さい。基材層41の外縁部は、気孔率が20%以下の部分を有してもよい。基材層41の中央部の気孔率は、通常、20%以上80%以下である。気孔率は、JIS L1096「気孔容積率」に従って測定される。
基材層41の外縁部の透気度は、基材層41の中央部の透気度よりも大きい。基材層41の外縁部は、透気度が300以上の部分を有してもよい。基材層41の中央部の透気度は、通常、30以上300以下である。透気度は、JIS P8117「ガーレー試験機法」に従って測定される。
基材層41の材質としては、高分子化合物、ガラス、セラミックなどが挙げられる。高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン(PO)、又は、セルロースが挙げられる。本実施形態では、基材層41の材質は、高分子化合物としてのポリエチレン(PE)である。
セパレータ4の少なくとも一部では、無機層42の外縁が基材層41の外縁よりも内側となるように、基材層41の外縁部が無機層42の方へ曲がっている。本実施形態では、セパレータ4の短手方向(厚み方向に直交する方向であって帯状のセパレータ4の幅方向)の両側にて、基材層41の外縁部が曲がっている。
セパレータ4では、幅方向における両方の外縁部にて、基材層41の外縁部がそれぞれ曲がっている。即ち、基材層41の曲がった外縁部は、セパレータ4の幅方向の両端部分にて、長手方向に沿ってそれぞれ配置される。
基材層41の外縁部は、中央部よりも圧縮された状態で、曲がっている。また、基材層41の幅方向における外縁部は、無機層42の外側を覆うように曲がっている。即ち、無機層42の外側が基材層41の外縁部によって覆われる。基材層41の外縁部は、内側へ折り返さないように曲がっている。詳しくは、基材層41の外縁部の端縁(先端)は、セパレータ4の厚み方向であって無機層42が配置された方向へ向く。外縁部の曲がっている部分の長さは、無機層42の厚み分の長さよりも長い。
基材層41の外縁部は、厚み方向且つ幅方向に基材層41を切断した断面で見たときに、無機層42に対向する面が曲線を描くように曲がる。詳しくは、基材層41を無機層42より下に配置したセパレータ4の断面では、基材層41の外縁部の先端部は、内側から外側へ向けて、反り上がるように曲がる。
基材層41の外縁部は、通常、無機層42の厚み分の長さよりも内側にて曲がり始める。基材層41の外縁部は、端縁から内側へ0.5μm以上5μm以下のところで曲がり始める。
無機層42は、基材層41の一方の面に重ねられる。無機層42の外縁は、基材層41の外縁よりも内側に配置される。無機層42の外縁部は、図4に示すように、基材層41の方へ曲がっている。無機層42の厚みは、通常、基材層41の厚みの0.1倍以上1.0倍以下である。無機層42の厚みは、通常、1μm以上10μm以下である。
無機層42は、通常、無機粒子を10質量%以上99質量%以下含む。無機粒子としては、酸化鉄、SiO2、Al2O3、TiO2、BaTiO2、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物などの酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶粒子;タルク、モンモリロナイトなどの粘土粒子;ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカなどの鉱物資源由来物質あるいはそれらの人造物の粒子;などが挙げられる。無機粒子の粒子径は、通常、0.5μm以上10μm以下である。
無機層42は、結着剤、及び増粘剤をさらに含む。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素含有樹脂;スチレンブタジエンゴム(SBR);アクリル樹脂(分子中にエステル結合を有する);ポリオレフィン樹脂;ポリビニルアルコール;ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの窒素含有樹脂;セルロースとアクリルアミドの架橋重合体とセルロースとキトサンピロリドンカルボン酸塩の架橋重合体;及び、多糖類高分子ポリマーであるキトサン、キチン等を架橋剤で架橋したもの等が挙げられる。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
セパレータ4は、無機層42が正極11と対向するように、正極11及び負極12の間に配置される。即ち、セパレータ4は、基材層41が負極12と対向するように、正極11及び負極12の間に配置される。
セパレータ4の幅(帯形状の短手方向の寸法)は、負極12の活物質層122の幅より僅かに大きい。セパレータ4は、正極11の活物質層112及び負極12の活物質層122が重なるように幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされた正極11と負極12との間に配置される。
本実施形態の電極体2では、以上のように構成される正極11と負極12とがセパレータ4によって絶縁された状態で巻回される。即ち、本実施形態の電極体2では、正極11、負極12、及びセパレータ4の積層体22が巻回される。
電極体2においては、例えば図3に示すように、正極11と負極12とが巻回されるときの巻回軸方向(以下、幅方向ともいう)において、負極12の活物質層122の両外縁が正極11の活物質層112の両外縁よりもそれぞれ外側に配置される。即ち、電極体2の幅方向の両端部において、負極12の活物質層122の外縁が正極11の活物質層112の各外縁よりもそれぞれ外側に配置される。これにより、電極体2は、充電時に正極11の活物質層112から負極12側へ移動してきたLiイオンなどのイオン成分を負極活物質へ十分に吸蔵させ得る。
電極体2の幅方向の一方の端部においては、正極11の活物質層112の外縁と、正極11の金属箔111の外縁との間に、負極12の活物質層122の外縁が配置される。一方、電極体2の幅方向の他方の端部においては、正極11の外縁と、負極の金属箔121の外縁との間に、負極12の活物質層122の外縁が配置される。
正極11と負極12とが積層された状態で、図10に示すように、正極11の非被覆部105と負極12の非被覆部105とは重なっていない。即ち、正極11の非被覆部105が、正極11と負極12との重なる領域から幅方向に突出し、且つ、負極12の非被覆部105が、正極11と負極12との重なる領域から幅方向(正極11の非被覆部105の突出方向と反対の方向)に突出する。積層された状態の正極11、負極12、及びセパレータ4、即ち、積層体22が巻回されることによって、電極体2が形成される。正極11の非被覆部105又は負極12の非被覆部105のみが積層された部位によって、電極体2における非被覆積層部26が構成される。
非被覆積層部26は、電極体2における集電体5と導通される部位である。非被覆積層部26は、巻回された正極11、負極12、及びセパレータ4の巻回中心方向視において、中空部27(図10参照)を挟んで二つの部位(二分された非被覆積層部)261に区分けされる。
以上のように構成される非被覆積層部26は、電極体2の各極に設けられる。即ち、正極11の非被覆部105のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における正極11の非被覆積層部を構成し、負極12の非被覆部105のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における負極12の非被覆積層部を構成する。
ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。ケース3は、電極体2及び集電体5等と共に、電解液を内部空間に収容する。ケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。ケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。ケース3は、ステンレス鋼及びニッケル等の金属材料、又は、アルミニウムにナイロン等の樹脂を接着した複合材料等によって形成されてもよい。
電解液は、非水溶液系電解液である。電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO4、LiBF4、及びLiPF6等である。電解液は、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、プロピレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:2:5の割合で調整した混合溶媒に、1mol/LのLiPF6を溶解させたものである。
ケース3は、ケース本体31の開口周縁部と、長方形状の蓋板32の周縁部とを重ね合わせた状態で接合することによって形成される。また、ケース3は、ケース本体31と蓋板32とによって画定される内部空間を有する。本実施形態では、ケース本体31の開口周縁部と蓋板32の周縁部とは、溶接によって接合される。
以下では、図5に示すように、蓋板32の長辺方向をX軸方向とし、蓋板32の短辺方向をY軸方向とし、蓋板32の法線方向をZ軸方向とする。
ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。具体的に、蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐようにケース本体31に当接する。より具体的には、蓋板32が開口を塞ぐように、蓋板32の周縁部がケース本体31の開口周縁部に重ねられる。開口周縁部と蓋板32とが重ねられた状態で、蓋板32とケース本体31との境界部が溶接される。これにより、ケース3が構成される。
蓋板32は、Z軸方向視において、ケース本体31の開口周縁部に対応した輪郭形状を有する。即ち、蓋板32は、Z軸方向視において、X軸方向に長い矩形状の板材である。また、蓋板32の四隅は、円弧状である。
蓋板32は、ケース3内のガスを外部に排出可能なガス排出弁321を有する。ガス排出弁321は、ケース3の内部圧力が所定の圧力まで上昇したときに、該ケース3内から外部にガスを排出する。ガス排出弁321は、X軸方向における蓋板32の中央部に設けられる。
ケース3には、電解液を注入するための注液孔が設けられる。注液孔は、ケース3の内部と外部とを連通する。注液孔は、蓋板32に設けられる。
注液孔は、注液栓326によって密閉される(塞がれる)。注液栓326は、溶接によってケース3(本実施形態の例では蓋板32)に固定される。
外部端子7は、他の蓄電素子1の外部端子7又は外部機器等と電気的に接続される部位である。外部端子7は、導電性を有する部材によって形成される。例えば、外部端子7は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成される。
外部端子7は、バスバ等が溶接可能な面71を有する。面71は、平面である。外部端子7は、蓋板32に沿って拡がる板状である。詳しくは、外部端子7は、Z軸方向視において矩形状の板状である。
集電体5は、ケース3内に配置され、電極体2と通電可能に直接又は間接に接続される。本実施形態の集電体5は、クリップ部材50を介して電極体2と通電可能に接続される。即ち、蓄電素子1は、電極体2と集電体5とを通電可能に接続するクリップ部材50を備える。
集電体5は、導電性を有する部材によって形成される。図7に示すように、集電体5は、ケース3の内面に沿って配置される。
集電体5は、蓄電素子1の正極11と負極12とにそれぞれ配置される。本実施形態の蓄電素子1では、ケース3内において、電極体2の正極11の非被覆積層部26と、負極12の非被覆積層部26とにそれぞれ配置される。
正極11の集電体5と負極12の集電体5とは、異なる材料によって形成される。具体的に、正極11の集電体5は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成され、負極12の集電体5は、例えば、銅又は銅合金によって形成される。
本実施形態の蓄電素子1では、袋状の絶縁カバー6に収容された状態の電極体2(詳しくは、電極体2及び集電体5)がケース3内に収容される。
上記実施形態の蓄電素子1は、以下のようにして製造できる。
セパレータ4、正極11、及び負極12をそれぞれ作製する。次に、正極11と負極12との間にセパレータ4を挟み込んだ積層体22を巻回することにより、電極体2を形成する。続いて、ケース3のケース本体31に電極体2を入れ、ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぐ。最後に、電解液をケース3内に注入する。
セパレータ4の作製では、例えば、先端にT−ダイを装着した押出機中で、低密度ポリエチレン及び可塑剤を溶融混練し、混練物を押し出すことによって、基材層用のシートを作製する。基材層用のシートをジエチルエーテル等の溶媒に浸漬し、可塑剤を抽出除去する。さらに乾燥させて延伸前の基材層用の多孔膜を得る。多孔膜を二軸方向に延伸し、その後熱処理を行うことによって、基材層41の原反を作る。
セパレータ4の作製では、さらに無機層42を作る。詳しくは、アルミナ粒子等の無機粒子、結着剤、及び、CMC等の増粘剤をイオン交換水等の溶剤と混合し、無機層用のコート剤を調製する。次に、例えばグラビア法によって、コート剤を基材層41の原反に塗布し、乾燥することで、セパレータ4の原反を作製する。さらに、原反を一対のスリッターナイフで切断することによって、所望の大きさのセパレータ4を作製する。なお、切断では、一対のスリッターナイフの一方のナイフの刃先と他方のナイフの刃先とが互いに反対方向を向くように配置される。そして、一方のナイフの刃先と他方のナイフの刃先とを所定の位置に配置して、円板状の各ナイフを回転させつつ、セパレータ4の原反を切断する。斯かる切断によって、セパレータ4の原反は、一対のスリッターナイフによって、厚み方向にせん断力及び圧縮力を受けつつ、切断される。従って、基材層41の外縁部は、圧縮される。このようにして、基材層41と、基材層41の一方の面上に形成された無機層42とを備えるセパレータ4を作製する。
正極11の作製では、正極用の金属箔111の両方の面に、活物質とバインダーと溶媒とを含む合剤をそれぞれ塗布することによって活物質層を形成する。活物質層を形成するための塗布方法としては、一般的な方法が採用される。負極12も同様にして作製する。
電極体2の形成では、正極11の活物質層112と負極12の活物質層122とがセパレータ4を介して互いに向き合うように、正極11とセパレータ4と負極12とを重ね合わせ、積層体22を作る。次に、積層体22を巻回して、電極体2を形成する。
ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぐときには、ケース本体31の内部に電極体2を入れ、正極11と一方の外部端子7とを導通させ、且つ、負極12と他方の外部端子7とを導通させた状態で、ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぐ。電解液をケース3内へ注入するときには、ケース3の蓋板32の注入孔から電解液をケース3内に注入する。
上記のように構成された本実施形態のセパレータ4及び蓄電素子1では、多孔質の基材層41と、無機粒子を含み且つ基材層41の少なくとも一方の面に重ねられた無機層42とを備え、基材層41の外縁部は、該外縁部以外の部分(中央部)よりも厚み方向に圧縮されている。従って、基材層41の外縁部は、圧縮されている分、内部の孔が押しつぶされている。外縁部では、中央部よりも、微短絡経路が内部の孔を介して成長しにくい。これにより、無機層42に含まれる無機粒子がセパレータ4の基材層41の外縁付近に移動して留まっても、微短絡経路が形成されることを抑制できる。
上記のセパレータ4では、基材層41の外縁部の気孔率は、基材層41の外縁部以外(中央部)の気孔率よりも小さい。外縁部の気孔率が小さい分、外縁部にて微短絡経路が内部の孔を介して成長しにくい。従って、無機層42に含まれる無機粒子が基材層41の外縁付近に移動して留まっても、蓄電素子1において微短絡経路が形成されることを抑制できる。
上記のセパレータ4では、外縁部の圧縮されている部分の長さは、セパレータ4の総厚み分の長さの0.5倍以上3倍以下であってもよい。上記の長さがセパレータ4の総厚み分の長さの0.5倍以上であることにより、微短絡経路が形成されることを、圧縮された外縁部によってより確実に抑制できる。上記の長さがセパレータ4の総厚み分の長さの3倍以下であることにより、蓄電素子1の正極11及び負極12の間に配置されたセパレータ4が、より確実に機能できる。
上記のセパレータ4では、無機層42の外縁が基材層41の外縁よりも内側となるように、基材層41の外縁部が無機層42の方へ曲がっている。従って、無機層42の外縁部の無機粒子が基材層41の外縁よりも外側へ移動することを抑制できる。これにより、移動した無機粒子によって正極11及び負極12間に微短絡経路が生じることを抑制できる。
上記のセパレータ4では、基材層41の外縁部は、無機層42の外側を覆うように曲がっている。従って、無機層42の外側が、基材層41の外縁部によって覆われる。これにより、無機層42の外縁付近の無機粒子が外側へ移動することを確実に抑制できる。
上記のセパレータ4は、基材層41と、無機粒子を含む無機層42であって基材層41の一方の面に重ねられた無機層42とを備える。従って、無機層42が基材層41の両面に重ねられている場合よりも、無機層42が少ない分、無機粒子の移動が抑えられる。これにより、移動した無機粒子によって正極11及び負極12間に微短絡経路が生じることを抑制できる。
上記のセパレータ4では、基材層41の外縁部の厚みは、端縁(先端)に向かうほど薄い。また、無機層42の外縁部は、上記のごときセパレータ4の作製方法によって中央部よりも圧縮されている。従って、無機層42の外縁部の厚みは、中央部の厚みよりも薄い。即ち、無機層42の外縁部の密度(単位体積あたりの質量)は、中央部の密度よりも高い。これにより、無機層42の外縁部の無機粒子が無機層42から脱離して外側へ移動することを確実に抑制できる。
上記のセパレータ4では、外縁部の曲がっている部分の長さは、無機層42の厚み分の長さよりも長い。従って、無機層42の厚み分よりも、外縁部の曲がっている部分の長さが長くなる。これにより、無機層42の外縁部の無機粒子が外側へ移動することを確実に抑制できる。
上記のセパレータ4では、基材層41が多孔質である。これにより、無機層42の無機粒子が、多孔質な基材層41の孔に入り込み得る。無機粒子が孔に入り込んだアンカー効果によって、無機層42が基材層41から剥離することが抑制され、無機層42に含まれる無機粒子が、外側へ移動することをより抑制できる。また、基材層41が多孔質であることより、セパレータが電解液を保持することができる。
上記の蓄電素子1では、セパレータ4の無機層42が正極11と対向するように、セパレータ4が正極11及び負極12の間に配置されている。これにより、基材層41の材質がポリオレフィンである場合に、ポリオレフィンが酸化して導電性が高まって(いわゆるポリエン化)、セパレータ4の絶縁性が低下することを抑制できる。
上記の蓄電素子1では、無機層42の外縁が負極12に接触すると、無機層42に残存する水分や無機層42中の結着剤が分解することによって、蓄電素子1の耐久性が低下し得る。しかしながら、基材層41の外縁部は、無機層42の外側を覆うように正極11へ向けて曲がっている。従って、無機層42の外縁が負極12に接触することが防止され、蓄電素子1の耐久性が低下することを抑制できる。
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
例えば、上記の実施形態では、無機層42が正極11と対向するように配置されたセパレータ4について詳しく説明したが、本発明では、セパレータ4の無機層42は、負極12と対向してもよい。
上記実施形態では、基材層41の片面のみに無機層42が重ねられてなるセパレータ4について詳しく説明したが、本発明では、セパレータ4の無機層42は、基材層41の両面にそれぞれ重ねられてもよい。
上記実施形態では、活物質層が各電極の金属箔の両面側にそれぞれ配置された電極について説明したが、本発明の蓄電素子では、正極11又は負極12は、活物質層を金属箔の片面側にのみ備えてもよい。
上記実施形態では、積層体22が巻回されてなる電極体2を備えた蓄電素子1について詳しく説明したが、本発明の蓄電素子は、巻回されない積層体22を備えてもよい。詳しくは、それぞれ矩形状に形成された正極、セパレータ、負極、及びセパレータが、この順序で複数回積み重ねられてなる電極体を蓄電素子が備えてもよい。なお、このように構成された電極体では、セパレータの4辺の全てに沿って、基材層の曲がった外縁部が配置され得る。
上記実施形態では、蓄電素子1が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子1の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態では、蓄電素子1の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
蓄電素子1(例えば電池)は、図11に示すような蓄電装置100(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)100に用いられてもよい。蓄電装置100は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材91と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子に適用されていればよい。