JP2017125158A - 印刷方法、印刷装置、前処理液とインクの印刷セット、及び印刷物 - Google Patents
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Abstract
Description
また、軟包装用途には、安価でかつ成形性、耐薬品性、耐熱性等に優れた性能を多数有する点から、前記プラスチックフィルムの中でも、ポリプロピレンフィルムが使用されることが多い。しかし、前記ポリプロピレンフィルムは、極性を有する合成樹脂とは異なり、非極性かつ結晶性であるため水性インクが弾かれやすく、インク層を密着させるのが困難であるという問題がある。
また、前記表刷り印刷においては、印刷層が、隣接する包装物や箱等と直接接触し、摩擦によって印刷層が削られ、印刷内容が不鮮明になることがあるため、耐擦過性が求められる。
本発明の印刷方法は、基材に前処理液を付与する工程と、前記前処理液が付与された面上にインクを付与して印刷する工程と、を含み、前記前処理液が、不飽和カルボン酸に由来する構造単位と、オレフィンに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、を有するポリオレフィン共重合体を含有し、前記インクが、ポリエステルポリウレタン樹脂を含有し、更に必要に応じて、その他の工程を含有してなる。
本発明の印刷方法は、従来のインクでは、塩素化ポリオレフィン樹脂は焼却した際に塩素化合物を発生させるため環境に対するリスク、特にオゾン層の破壊が懸念されるという問題があるという知見に基づくものである。また、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ナイロン(ONY)フィルムのすべてにおいて、良好な密着性及び耐擦過性を得ることができないという知見に基づくものである。
前記前処理液を付与する工程は、基材に前処理液を付与する工程である。
前記前処理液は、ポリオレフィン共重合体を含有し、必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記ポリオレフィン共重合体は、不飽和カルボン酸に由来する構造単位と、オレフィンに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、を有し、必要に応じてその他の構造単位を有し、その構造中に、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位よりも、オレフィンに由来する構造単位の方が多く含まれる。なお、前記ポリオレフィン共重合体は、塩素を含まないことが好ましい。
前記ポリオレフィン共重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などが挙げられる。
前記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミドなどが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸が好ましく、アクリル酸、無水マレイン酸がより好ましい。
なお、前記不飽和カルボン酸に由来する構造単位が、無水マレイン酸に由来する構造単位である場合、ポリオレフィン共重合体の乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した酸無水物構造を形成しているが、特に塩基性化合物を含有する水性媒体中では、その一部又は全部が開環してカルボン酸又はその塩の構造を取りやすくなる。
前記(メタ)アクリル酸としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン共重合体を重合し易い点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルがより好ましい。
ここで、前記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位は、前記ポリオレフィン共重合体の水性化の際に、構造中のエステル結合のごく一部が加水分解してアクリル酸単位に変化することがあるが、そのような場合には、それらの変化を加味した各構成単位の比率が規定の範囲にあればよい。
前記炭素数3以上30以下のアルキルビニルエーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどが挙げられる。
ため好ましい。
前記その他の成分としては、例えば、水、有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤などが挙げられる。
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチル−1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、3−メトキシ−N,N-ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記印刷する工程は、前記前処理液が付与された面上にインクを付与して印刷する工程である。
前記インクの付与は、インクに刺激を印加し、前記インクを飛翔させることが好ましい。
前記インクは、ポリエステルポリウレタン樹脂を含有し、水、色材、有機溶剤を含有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の成分を含有してなる。
前記ポリエステルポリウレタン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ポリエステルポリウレタン樹脂としては、その構造中に、ポリエステルポリウレタン構造を有すればよく、ポリエステル系ポリウレタン樹脂も含む意味である。
前記ポリエステルポリウレタン樹脂としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記ポリエステルポリオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステル、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステル、又はこれらの共重合ポリエステルなどが挙げられる。
前記低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。
前記ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及びこれらの無水物又はエステル形成性誘導体などが挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニレンメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、m−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−ジクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−ノルボルナンジイソシアネート、2,6−ノルボルナンジイソシアネーネート等の脂環式ポリシアネート化合物などが挙げられる。これらの中でも、長期耐候性を持つ塗膜が得られる点から、脂肪族又は脂環式ジイソシアネートが好ましい。
前記分子内に酸性基及び少なくとも2個の活性水素含有基を有する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分子内に2個の水酸基及び1個のカルボキシル基を有する化合物;グリコール酸、酒石酸、4,6−ジヒドロキシイソフタル酸、α,α−ジメチロールプロピオン酸、α,α−ジメチロール酪酸、α,α−ジメチロールノナン酸、及びこれらにカプロラクトンモノマーを付加重合させて得られるカルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオール等のヒドロキシ酸;1,7−ジヒドロキシナフタリンスルホン酸等のヒドロキシスルホン酸;2,4−ジアミノベンゼンスルホン酸等のアミノスルホン酸などが挙げられる。これらの中でも、分子内に2個の水酸基及び1個のカルボキシル基を有する化合物;α,α−ジメチロールプロピオン酸、α,α−ジメチロール酪酸、及びこれらにカプロラクトンモノマーを付加重合させて得られるカルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオールが好ましい。
前記鎖延長剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミン、その他の活性水素原子含有化合物などが挙げられる。
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類;ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン等のヒドラジン類;コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類などが挙げられる。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記その他の樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
前記その他の樹脂としては、樹脂粒子として用いてもよい。前記樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。
前記有機溶剤としては、前記前処理液と同様のものを用いることができるが、樹脂の造膜性、及び耐擦過性の点から、1,2−アルカンジオール、2,3−アルカンジオールが好ましい。
前記1,2−アルカンジオールとしては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオールが挙げられる。
前記2,3−アルカンジオールとしては、例えば、2,3−ブタンジオールを挙げることができる。
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%〜60質量%がより好ましい。
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加し水中に分散可能とした自己分散顔料等が使用できる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能なものを用いることができる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT−100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
色材に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
前記その他の成分としては、前記前処理液と同様のものを用いることができる。
前記界面活性剤としては、前記前処理液と同様のものを用いることができるが、シリコーン系界面活性剤が好ましい。前記シリコーン系界面活性剤を用いると、インクの前処理液層に対する濡れ性を向上でき、インク層と前処理液層との間が強固に密着する結果、ラミネート強度を向上できる。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは整数を表わす。 R及びR’はアルキル基、アルキレン基を表わす。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF−618、KF−642、KF−643(信越化学工業株式会社)、EMALEX−SS−5602、SS−1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ−2105、FZ−2118、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK−33、BYK−387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
前記撹拌混合としては、通常の撹拌羽を用いた撹拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機などを用いることができる。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE−80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7〜12が好ましく、8〜11がより好ましい。
前記その他の工程としては、例えば、加熱工程などを含むことが好ましい。
前記加熱工程は、印字後に形成されたインク塗膜中の残留溶剤を減少できるため、より一層非浸透性基材への密着性を向上できる。
本発明に用いる基材としては、特に制限なく用いることができ、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を特に好適に用いることができる。
前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性及び/又は吸着性が低い表面を有する基材を意味しており、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれる。より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である基材を意味する。
前記ポリプロピレン(PP)フィルムとしては、例えば、商品名:P−2002、商品名:P−2161、商品名:P−4166(以上、東洋紡株式会社製)、商品名:PA−20、商品名:PA−30、商品名:PA−20W(以上、サン・トックス株式会社製)、商品名:FOA、商品名:FOS、商品名:FOR(以上、フタムラ化学株式会社製)などが挙げられる。
前記ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとしては、商品名:E−5100、商品名:E−5102(以上、東洋紡株式会社製)、商品名:P60、商品名:P375(以上、東レ株式会社製)、商品名:G2、商品名:G2P2、商品名:K、商品名:SL(以上、帝人デュポンフィルム株式会社製)などが挙げられる。
前記ナイロン(ONY)フィルムとしては、商品名:ハーデンフィルムN−1100、商品名:ハーデンフィルムN−1102、商品名:ハーデンフィルムN−1200(以上、東洋紡株式会社製)、商品名:ON、商品名:NX、商品名:MS、商品名:NK(以上、ユニチカ株式会社製)などが挙げられる。
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について図1乃至図2を参照して説明する。図1は同装置の斜視説明図である。図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
本発明の前処理液とインクの印刷セットは、不飽和カルボン酸に由来する構造単位と、オレフィンに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、を有するポリオレフィン共重合体、及び水を含有する前処理液と、ポリエステルポリウレタン樹脂、色材、有機溶剤、及び水を含有するインクと、を有し、更に必要に応じてその他の液を有してなる。
前記インクとしては、本発明の印刷方法におけるインクと同様のものを用いることができる。
本発明の印刷物は、基材を被印刷物とし、被印刷物上に、前処理、及び印刷を行うことにより、前記被印刷物上に、不飽和カルボン酸に由来する構造単位と、オレフィンに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、を有するポリオレフィン共重合体を含有する前処理層と、ポリエステルポリウレタン樹脂、及び色材を含有する印刷層と、を有し、更に必要に応じて、その他の層を有してなる。
前記前処理層、及び前記印刷層としては、残留溶媒として、水、及び有機溶剤が含まれる場合もある。
<ポリオレフィン共重合体エマルジョンAの調製>
プロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体100gと、トルエン500gとを、撹拌機、冷却管、滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコ中において、窒素雰囲気下で加熱溶融させた。その後、系内温度を110℃に保って撹拌しながら、ラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド1.0gを含むヘプタン20g溶液を1時間かけて加えた。
次いで、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸6.5gと、アクリル酸ラウリル10.0gと、ジクミルパーオキサイド0.5gを含むヘプタン10g溶液とを、それぞれ1時間かけて滴下し、その後30分間反応させた。
反応終了後、室温まで冷却し、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、共重合体を析出させた。析出した共重合体をさらにアセトンで洗浄し、未反応物を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥した。
ポリオレフィン共重合体エマルジョンAの固形物の組成をオルトジクロロベンゼン(d4)を溶媒として1H−NMR分析装置(バリアン社製、300MHz)により120℃で測定したところ、ポリオレフィン共重合体エマルジョンA中の不飽和カルボン酸に由来の構造単位の含有量は4質量%であった。
<ポリオレフィン共重合体エマルジョンBの調製>
共重合体エマルジョンの合成例1において、無水マレイン酸6.5gを無水マレイン酸4.9gに変更した以外は、共重合体エマルジョンの合成例1と同様にして、固形分濃度が40質量%のポリオレフィン共重合体エマルジョンBを得た。
共重合体エマルジョンの合成例1と同様にして、ポリオレフィン共重合体エマルジョンBの固形物の組成を測定したところ、ポリオレフィン共重合体エマルジョンB中の不飽和カルボン酸に由来の構造単位の含有量は3質量%であった。
<ポリオレフィン共重合体エマルジョンCの調製>
共重合体エマルジョンの合成例1において、無水マレイン酸6.5gを無水マレイン酸2.0gに変更した以外は、共重合体エマルジョンの合成例1と同様にして、固形分濃度が40質量%のポリオレフィン共重合体エマルジョンCを得た。
共重合体エマルジョンの合成例1と同様にして、ポリオレフィン共重合体エマルジョンCの固形物の組成を測定したところ、ポリオレフィン共重合体エマルジョンC中の不飽和カルボン酸に由来の構造単位の含有量は1質量%であった。
<ポリオレフィン共重合体Dの調製>
共重合体エマルジョンの合成例1において、無水マレイン酸6.5gを無水マレイン酸7.7gに変更した以外は、共重合体エマルジョンの合成例1と同様にして、固形分濃度が40質量%のポリオレフィン共重合体エマルジョンDを得た。
共重合体エマルジョンの合成例1と同様にして、ポリオレフィン共重合体エマルジョンDの固形物の組成を測定したところ、ポリオレフィン共重合体エマルジョンD中の不飽和カルボン酸に由来の構造単位の含有量は4.5質量%であった。
<ポリオレフィン共重合体Eの調製>
共重合体エマルジョンの合成例1において、無水マレイン酸6.5gを無水マレイン酸11.6gに変更した以外は、共重合体エマルジョンの合成例1と同様にして、固形分濃度が40質量%のポリオレフィン共重合体エマルジョンEを得た。
共重合体エマルジョンの合成例1と同様にして、ポリオレフィン共重合体エマルジョンEの固形物の組成を測定したところ、ポリオレフィン共重合体エマルジョンE中の不飽和カルボン酸に由来の構造単位の含有量は7質量%であった。
<共重合体エマルジョンFの調製>
共重合体エマルジョンの合成例1において、アクリル酸ラウリルを添加せず、プロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体100gをプロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体110gに変更した以外は、共重合体エマルジョンの合成例1と同様にして、固形分濃度が40質量%の共重合体エマルジョンFを得た。
共重合体エマルジョンの合成例1と同様にして、共重合体エマルジョンFの固形物の組成を測定したところ、共重合体エマルジョンF中の不飽和カルボン酸に由来の構造単位の含有量は4質量%であった。
<共重合体エマルジョンGの調製>
共重合体エマルジョンの合成例1において、プロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体を添加せず、アクリル酸ラウリル10.0gをアクリル酸ラウリル110gに変更した以外は、共重合体エマルジョンの合成例1と同様にして、固形分濃度が40質量%の共重合体エマルジョンGを得た。
共重合体エマルジョンの合成例1と同様にして、共重合体エマルジョンGの固形物の組成を測定したところ、共重合体エマルジョンF中の不飽和カルボン酸に由来の構造単位の含有量は4質量%であった。
ポリオレフィン共重合体エマルジョンA 25質量%、ノニオン性界面活性剤(商品名:エマルゲンLS−106、花王株式会社製)3質量%、1,3−ブタンジオール15質量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテル5質量%、プロキセルLV(アビシア社製)0.1質量%、及びイオン交換水残量を混合撹拌し、平均孔径0.2μmのポリプロピレンフィルターを用いて濾過することにより、前処理液Aを作製した。
前処理液Aの作製例1において、下記表1の組成及び含有量に変更した以外は、前処理液Aの作製例1と同様にして、前処理液B〜Gを作製した。
・ノニオン性界面活性剤:花王株式会社製、商品名:エマルゲンLS−106
・プロキセルLV:アビシア社製
<ブラック顔料分散体の調製>
カーボンブラック(商品名:Black Pearls(登録商標)1000、Cabot Corporation社製、BET比表面積:343m2/g、DBP吸油量(DBPA):105mL/100g)100gを、2.5N(規定)の次亜塩素酸ナトリウム溶液3,000mLに添加し、温度60℃、速度300rpmで撹拌し、10時間反応させて酸化処理を行い、カーボンブラックの表面にカルボン酸基が付与された顔料を得た。この反応液を濾過し、濾別したカーボンブラックを水酸化ナトリウム溶液で中和し、限外濾過を行った。
次いで、前記顔料分散体とイオン交換水を用いて透析膜による限外濾過を行い、更に、超音波分散機を用いて、超音波分散を行って、顔料固形分濃度を20質量%に濃縮したブラック顔料分散体を得た。
<シアン顔料分散体の調製>
顔料分散体の調製例1において、カーボンブラックをピグメントブルー15:4(商品名:SMART Cyan 3154BA、SENSIENT社製)に変更した以外は、顔料分散体の調製例1と同様にして、顔料固形分濃度が20質量%であるシアン顔料分散体を得た。
<マゼンタ顔料分散体の調製>
顔料分散体の調製例1において、カーボンブラックをピグメントレッド122(商品名:Pigment Red 122、Sun Chemical社製)に変更した以外は、顔料分散体の調製例1と同様にして、顔料固形分濃度が20質量%であるマゼンタ顔料分散体を得た。
<イエロー顔料分散体の調製>
顔料分散体の調製例1において、カーボンブラックをピグメントイエロー74(商品名:SMART Yellow 3074BA、SENSIENT社製)に変更した以外は、顔料分散体の調製例1と同様にして、顔料固形分濃度が20質量%であるイエロー顔料分散体を得た。
<ポリエステルポリウレタン樹脂エマルジョンAの調製>
撹拌機、還流冷却管、及び温度計を挿入した反応容器に、ポリエステルポリオール(商品名:ポリライトOD−X−2420、DIC株式会社製)1,500g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)220g、及びN−メチルピロリドン(NMP)1347gを窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。次いで、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1,445g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)2.6gを加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。この反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン149gを添加、混合したものの中から4,340gを抜き出して、強撹拌下、水5,400g、及びトリエチルアミン15gの混合溶液の中に加えた。次いで、氷1,500gを投入し、35質量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液626gを加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が30質量%となるように溶媒を留去し、ポリエステルポリウレタン樹脂エマルジョンAを得た。
<ポリエステルポリウレタン樹脂エマルジョンBの調製>
ポリエステルポリウレタン樹脂エマルジョンBとして、商品名:ユーコートUWS−145(三洋化成工業株式会社製)を用いた。
<ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョンの調製>
樹脂エマルジョンの調製例1において、ポリエステルポリオールをポリエーテルポリオール(商品名:ハイフレックスD2000、第一工業製薬株式会社製)に変更した以外は、樹脂エマルジョンの調製例1と同様にして、ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョンを得た。
<アクリル樹脂エマルジョンの調製>
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g、及びラウリル硫酸ナトリウム1gを仕込み、撹拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3g、アクリルアミド20g、スチレン365g、ブチルアクリレート545g、及びメタクリル酸10gを撹拌化に加えて乳化物を作製し、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。 滴下終了後、3時間の熟成を行い。水性エマルジョンを得た。
得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液を添加して固形分顔料が30質量%、pH8に調整することにより、アクリル樹脂エマルジョンを得た。
ブラック顔料分散体20質量%、ポリエステルポリウレタン樹脂エマルジョンA 15質量%、シリコーン界面活性剤1 2質量%、1,2−プロパンジオール30質量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテル5質量%、プロキセルLV(アビシア社製)0.1質量%、及びイオン交換水残量を混合撹拌し、平均孔径0.2μmのポリプロピレンフィルターを用いて濾過することにより、インクAを作製した。
インクAの調製例1において、下記表2及び表3の組成及び含有量に変更した以外は、インクAの調製例1と同様にして、インクB〜Kを作製した。
・シリコーン界面活性剤1:ビックケミー社製、商品名:BYK−349
・シリコーン界面活性剤2:信越化学工業株式会社製、商品名:KF353
・フッ素系界面活性剤:DuPont社製、商品名:FS−300
・炭化水素系界面活性剤:株式会社日本触媒社製、商品名:EP−5035
・プロキセルLV:アビシア社製
前処理液Aと、インクAとを組み合わせて前処理液とインクの印刷セットとした。
実施例1において、前処理液A及びインクAを表4の組合せに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜12、及び比較例1〜5の前処理液とインクの印刷セットとした。
バーコーターを用いて、各前処理液を、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(商品名:パイレンP2102、東洋紡株式会社製)、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:エスペットE5100、東洋紡株式会社製)、及びナイロン(ONY)フィルム(商品名:ハーデンN1100、東洋紡株式会社製)に塗工し、乾燥させた。
次に、各インクをインクジェットプリンター(装置名:IPSiO GXe5500、株式会社リコー製)に充填し、乾燥した各フィルムの前処理液が付与された面上に、ベタ画像を印刷し、80℃で2分間乾燥させた。なお、実施例13においては、実施例1の前処理液とインクの印刷セットを用いて、実施例1と同様にして、ベタ画像を印刷した後、室温(25℃)で12時間静置して乾燥させた。
ベタ画像部にドライラミネート用接着剤(主剤TM−320/硬化剤CAT−13B、東洋モートン株式会社製)をバーコーターを用いて塗工し、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)フィルム(商品名:パイレンP1128、東洋紡株式会社製)を貼りあわせた後、40℃で48時間エージングした。積層物を15mm幅にカットし、布粘着テープ(商品名:123LW−50、ニチバン株式会社製)を使用した碁盤目剥離試験により、強度を測定し、下記の評価基準に基づいて、「ラミネート強度」を評価した。なお、B以上が許容範囲である。
[評価基準]
A:5N/15mm以上の強度が得られる。
B:3N/15mm以上5N/15mm未満の強度が得られる。
C:1N/15mm以上3N/15mm未満の強度が得られる。
D:1N/15mm未満の強度しか得られない。
前記「ラミネート強度」と同様にして、各前処理液を付与して乾燥させた2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(商品名:パイレンP2102、東洋紡株式会社製)を得た。
次に、各インクをインクジェットプリンター(装置名:IPSiO GXe5500、株式会社リコー製)に充填し、乾燥した各フィルムの前処理液が付与された面上に、ブラックインクと、カラーインクとの混色ベタ画像を印刷し、80℃で5分間乾燥させた。なお、実施例13においては、実施例1の前処理液とインクの印刷セットを用いて、実施例1と同様にして、ベタ画像を印刷した後、室温(25℃)で12時間静置して乾燥させた。
得られたベタ画像部を乾いた木綿(カナキン3号)で400gの加重をかけて擦過し、目視により観察して、下記の評価基準に基づいて、「耐擦過性」を評価した。なお、B以上が許容範囲である。
[評価基準]
A:100回以上擦っても画像が変化しない
B:100回擦った段階で多少の傷が残るが画像には影響しない
C:51回以上99回擦っても画像が変化しない
D:50回以下擦っても画像が変化しない
実施例7、及び実施例8は、シリコーン界面活性剤を含有しない例であり、インクの液滴が前処理液上に綺麗に濡れ広がらないためラミネート強度がやや劣るが、許容範囲であることが分かる。
実施例9、及び実施例10は、ポリオレフィン共重合体中の不飽和カルボン酸の含有量が4質量%以下を満たさない例であり、ポリオレフィン共重合体の極性が高くなるためOPPフィルムに対するラミネート強度がやや劣るが、許容範囲であることが分かる。
実施例11、及び実施例12は、有機溶剤として1,2−アルカンジオール及び2,3−アルカンジオールの少なくともいずれかを含有しない例であり、ポリオレフィン共重合体の造膜性がやや劣るためラミネート強度が多少低下するが、許容範囲であることが分かる。
実施例13は、印刷後に乾燥工程を設けない例であり、ラミネート強度及び耐擦過性がやや劣るが、実使用上問題ないレベルである。
比較例2は、前処理液中の重合体成分にオレフィンに由来する構造単位を含まない例であり、OPPフィルムにおけるラミネート強度が殆ど得られないことが分かる。
比較例3〜5は、インクに含まれる樹脂がポリエステルポリウレタン樹脂以外の樹脂である例であり、前処理液層とインク層との間の親和性が失われるため、ラミネート強度が全体的に低くなり、実用に耐えない結果となることが分かる。
<1> 基材に前処理液を付与する工程と、
前記前処理液が付与された面上にインクを付与して印刷する工程と、を含み、
前記前処理液が、不飽和カルボン酸に由来する構造単位と、オレフィンに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、を有するポリオレフィン共重合体を含有し、
前記インクが、ポリエステルポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする印刷方法である。
<2> 前記インクが、シリコーン界面活性剤をさらに含有する前記<1>に記載の印刷方法である。
<3> 前記ポリオレフィン共重合体における不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量が、ポリオレフィン共重合体全量に対して、4質量%以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の印刷方法である。
<4> 前記インクが、1,2−アルカンジオール、及び2,3−アルカンジオールの少なくともいずれかを含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の印刷方法である。
<5> 前記インクの付与が、前記インクに刺激を印加し、前記インクを飛翔させることである前記<1>から<4>のいずれかに記載の印刷方法である。
<6> 前記基材を加熱する工程をさらに含む前記<1>から<5>のいずれかに記載の印刷方法である。
<7> 前記基材が、非浸透性基材である前記<1>から<6>のいずれかに記載の印刷方法である。
<8> 前記非浸透性基材が、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びナイロンフィルムから選択される少なくとも1種である前記<1>から<7>のいずれかに記載の印刷方法である。
<9> 前記ポリオレフィン共重合体における不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量が、ポリオレフィン共重合体全量に対して、0.5質量%以上4質量%以下である前記<1>から<8>のいずれかに記載の印刷方法である。
<10> 前記ポリオレフィン共重合体における、オレフィンに由来する構造単位の含有量(質量%)と、前記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量(質量%)との質量比(オレフィンに由来する構造単位/(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位)が、55/45以上95/5以下である前記<1>から<9>のいずれかに記載の印刷方法である。
<11> 前記質量比(オレフィンに由来する構造単位/(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位)が、55/45以上92/8以下である前記<1>から<10>のいずれかに記載の印刷方法である。
<12> 前記ポリオレフィン共重合体の含有量が、前記前処理液全量に対して、0.1質量%以上30質量%以下である前記<1>から<11>のいずれかに記載の印刷方法である。
<13> 前記ポリオレフィン共重合体の含有量が、前記前処理液全量に対して、0.5質量%以上20質量%以下である前記<1>から<12>のいずれかに記載の印刷方法である。
<14> 前記インクの粘度が、5mPa・s以上30mPa・s以下である前記<1>から<13>のいずれかに記載の印刷方法である。
<15> 前記インクの付与が、インクジェット記録方法である前記<1>から<14>のいずれかに記載の印刷方法である。
<16> 基材に前処理液を付与する手段と、
前記前処理液が付与された面上にインクを付与して印刷する手段と、を有し、
前記前処理液が、不飽和カルボン酸に由来する構造単位と、オレフィンに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、を有するポリオレフィン共重合体を含有し、
前記インクが、ポリエステルポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする印刷装置である。
<17> 前記インクの付与が、前記インクに刺激を印加し、前記インクを飛翔させることである前記<16>に記載の印刷装置である。
<18> 前記基材を加熱する加熱手段をさらに有する前記<16>から<17>のいずれかに記載の印刷装置である。
<19> 前記基材が、非浸透性基材である前記<16>から<18>のいずれかに記載の印刷装置である。
<20> 前記非浸透性基材が、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びナイロンフィルムから選択される少なくとも1種である前記<16>から<19>のいずれかに記載の印刷装置である。
<21> 不飽和カルボン酸に由来する構造単位と、オレフィンに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、を有するポリオレフィン共重合体、及び水を含有する前処理液と、
ポリエステルポリウレタン樹脂、色材、有機溶剤、及び水を含有するインクと、を有することを特徴とする前処理液とインクの印刷セットである。
<22> 基材上に、不飽和カルボン酸に由来する構造単位と、オレフィンに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、を有するポリオレフィン共重合体を含有する前処理層と、
ポリエステルポリウレタン樹脂、及び色材を含有する印刷層と、を有することを特徴とする印刷物である。
Claims (11)
- 基材に前処理液を付与する工程と、
前記前処理液が付与された面上にインクを付与して印刷する工程と、を含み、
前記前処理液が、不飽和カルボン酸に由来する構造単位と、オレフィンに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、を有するポリオレフィン共重合体を含有し、
前記インクが、ポリエステルポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする印刷方法。 - 前記インクが、シリコーン界面活性剤をさらに含有する請求項1に記載の印刷方法。
- 前記ポリオレフィン共重合体における不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量が、ポリオレフィン共重合体全量に対して、4質量%以下である請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法。
- 前記インクが、1,2−アルカンジオール、及び2,3−アルカンジオールの少なくともいずれかを含む請求項1から3のいずれかに記載の印刷方法。
- 前記インクの付与が、前記インクに刺激を印加し、前記インクを飛翔させることである請求項1から4のいずれかに記載の印刷方法。
- 前記基材を加熱する工程をさらに含む請求項1から5のいずれかに記載の印刷方法。
- 前記基材が、非浸透性基材である請求項1から6のいずれかに記載の印刷方法。
- 前記非浸透性基材が、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びナイロンフィルムから選択される少なくとも1種である請求項7に記載の印刷方法。
- 基材に前処理液を付与する手段と、
前記前処理液が付与された面上にインクを付与して印刷する手段と、を有し、
前記前処理液が、不飽和カルボン酸に由来する構造単位と、オレフィンに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、を有するポリオレフィン共重合体を含有し、
前記インクが、ポリエステルポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする印刷装置。 - 不飽和カルボン酸に由来する構造単位と、オレフィンに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、を有するポリオレフィン共重合体、及び水を含有する前処理液と、
ポリエステルポリウレタン樹脂、色材、有機溶剤、及び水を含有するインクと、を有することを特徴とする前処理液とインクの印刷セット。 - 基材上に、不飽和カルボン酸に由来する構造単位と、オレフィンに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、を有するポリオレフィン共重合体を含有する前処理層と、
ポリエステルポリウレタン樹脂、及び色材を含有する印刷層と、を有することを特徴とする印刷物。
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