JP2017125096A - 導電性高分子分散液の製造方法及び導電性フィルムの製造方法 - Google Patents

導電性高分子分散液の製造方法及び導電性フィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】保存時間が長くても、導電性が高い導電層を容易に形成できる導電性高分子分散液の製造方法を提供する。また、導電性が高い導電性フィルムを容易に製造できる導電性フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の導電性高分子分散液の製造方法は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体を含有する予備分散液に、ケトン化合物を還元して得た2級アルコールを添加する添加工程を有する。本発明の導電性フィルムの製造方法は、フィルム基材の少なくとも一方の面に、前記導電性高分子分散液を塗工する塗工工程と、塗工した導電性高分子分散液を乾燥させる乾燥工程とを有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、π共役系導電性高分子を含む導電性高分子分散液の製造方法、π共役系導電性高分子を含む導電層を備える導電性フィルムの製造方法に関する。
導電層を形成するための塗料として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)にポリスチレンスルホン酸がドープした導電性高分子水分散液を使用することがある。
通常、導電層が塗布されるフィルム基材は疎水性のプラスチックフィルムからなる。そのため、導電性高分子分散液に含まれる分散媒が水である場合、フィルム基材との密着性が低くなる傾向にある。また、分散媒が水であると、乾燥時間が長くなるため、導電層形成の生産性が低くなる傾向にあった。
そこで、導電性高分子分散液に有機溶剤を添加し、有機溶剤の含有割合を多くしてフィルム基材との密着性を向上させることがある(特許文献1)。有機溶剤としては、乾燥しやすさ、環境負荷が小さいことから、イソプロパノール等のアルコールが用いられることがある。
特開2008−115215号公報
しかし、分散媒としてアルコールを用いた導電性高分子分散液においては、調製してからの保存時間が長くなるにつれて、該導電性高分子分散液を塗工して形成した導電層の導電性が低下することがあった。
本発明は、保存時間が長くても、導電性が高い導電層を容易に形成できる導電性高分子分散液の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、導電性が高い導電性フィルムを容易に製造できる導電性フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体を含有する予備分散液に、ケトン化合物を還元して得た2級アルコールを添加する添加工程を有する、導電性高分子分散液の製造方法。
[2]前記ケトン化合物がアセトンであり、前記2級アルコールがイソプロパノールである、[1]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[3]前記ケトン化合物がメチルエチルケトンであり、前記2級アルコールが2−ブタノールである、[1]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[4]前記予備分散液が分散媒として水を含む、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[5]前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、[1]〜[4]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[6]前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、[1]〜[5]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[7]前記添加工程では、前記予備分散液に1級アルコールを添加する、[1]〜[6]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[8]前記1級アルコールがメタノールである、[1]〜[7]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[9]前記添加工程では、前記予備分散液にさらにバインダ樹脂を添加する、[1]〜[8]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[10]前記バインダ樹脂が水分散性エマルション樹脂である、[9]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[11]前記水分散性エマルション樹脂がポリエステルエマルションである、[10]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[12]前記添加工程では、前記予備分散液にさらに高導電化剤を添加する、[1]〜[11]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[13]フィルム基材の少なくとも一方の面に、[1]〜[12]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液の製造方法により製造した導電性高分子分散液を塗工する塗工工程と、塗工した導電性高分子分散液を乾燥させる乾燥工程と、を有する導電性フィルムの製造方法。
[14]前記フィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルムである、[13]に記載の導電性フィルムの製造方法。
本発明の導電性高分子分散液の製造方法によれば、保存時間が長くても、導電性が高い導電層を容易に形成できる。
本発明の導電性フィルムの製造方法によれば、導電性が高い導電性フィルムを容易に製造できる。
<導電性高分子分散液>
本発明の一態様における導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、2級アルコールとを含有する。
該導電性高分子分散液は、必要に応じて、1級アルコール、バインダ樹脂、高導電化剤、その他の添加剤を含有してもよい。
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
前記π共役系導電性高分子は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンとは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリメタクリルオキシベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボン酸基を有する高分子が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホン酸基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。
本明細書における質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定し、標準物質をポリスチレンとして求めた値である。
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下の範囲であることがより好ましく、100質量部以上500質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値未満であると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがあり、また、導電性高分子分散液における導電性複合体の分散性が低くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値を超えると、π共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
ポリアニオンが、π共役系導電性高分子に配位してドープすることによって導電性複合体を形成する。
ただし、本態様におけるポリアニオンにおいては、全てのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープすることはなく、ドープに寄与しない余剰のアニオン基を有するようになっている。
本態様における2級アルコールは、ケトン化合物を還元して得たものであり、導電性複合体の分散媒である。ケトン化合物としては、得られる2級アルコールの水との親和性が高いことから、炭素数3以上6以下が好ましい。還元法としては、汎用的であることから、水素化触媒の存在下で水素を反応させる水素還元法が好ましい。
2級アルコールの具体例としては、例えば、アセトンを水素還元して得たイソプロパノール、メチルエチルケトンを水素還元して得た2−ブタノール、ジエチルケトンを水素還元して得た3−ペンタノール、メチルプロピルケトンを水素還元して得た2−ペンタノール、シクロヘキサノンを水素還元して得たシクロヘキサノール等が挙げられる。これらのなかでも、水との親和性が高く、導電性複合体の分散性をより高くできることから、アセトンを水素還元して得たイソプロパノール、メチルエチルケトンを水素還元して得た2−ブタノールが好ましい。
2級アルコールは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記2級アルコールの分散媒中の含有割合は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。分散媒の100質量%が前記2級アルコールであってもよい。前記2級アルコールの含有割合が前記下限値以上であれば、導電性高分子分散液を長時間保存した際の導電性低下をより抑制できる。
本態様においては、前記2級アルコール以外の他の分散媒を含んでもよい。他の分散媒としては、水、前記2級アルコール以外の他の有機溶剤が挙げられる。他の分散媒は、導電性複合体の分散性が高くなることから、水を含むことが好ましい。
他の分散媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
他の有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、1級アルコールが挙げられる。1級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、アリルアルコール等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
他の有機溶剤のなかでも、導電性複合体の分散性が高く且つ安価であることから、アルコール系溶剤が好ましく、1級アルコールがより好ましく、メタノールがさらに好ましい。
バインダ樹脂は、π共役系導電性高分子及びポリアニオン以外の樹脂であり、塗膜強度を高める樹脂である。
バインダ樹脂の具体例としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
バインダ樹脂は、導電性高分子分散液中に分散可能な水分散性樹脂が好ましく、水分散性エマルション樹脂がより好ましい。
水分散性エマルション樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等であって、エマルションにされたものが挙げられる。
上記水分散性エマルション樹脂のなかでも、塗膜強度をより高くでき且つ入手容易であることから、ポリエステルエマルションが好ましい。特に、導電性高分子分散液をポリエステルフィルム基材に塗布する場合には、塗膜の密着性が高くなることから、上記水分散性樹脂のなかでも、ポリエステルエマルションが好ましい。
また、水分散性樹脂は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂であって、カルボキシ基やスルホ基等の酸基又はその塩を有するもの等の水溶性樹脂であってもよい。本明細書において、水溶性とは、25℃の蒸留水に、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上溶解することである。
前記バインダ樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
バインダ樹脂の含有割合は、導電性複合体の固形分100質量部に対して、100質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、100質量部以上5000質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上1000質量部以下であることがさらに好ましい。バインダ樹脂の含有割合が前記下限値以上であれば、製膜性と塗膜強度を向上させることができる。しかし、バインダ樹脂の含有割合が前記上限値を超えると、導電性複合体の含有割合が低下するため、導電性が低下することがある。
導電性高分子分散液は、導電性をより向上させるために、高導電化剤を含んでもよい。
具体的に、高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、2個以上のカルボキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。前記高導電化剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これら化合物の具体例は、例えば、特開2010−87401号公報に記載されている。ただし、高導電化剤は、前記π共役系導電性高分子、前記ポリアニオン、前記分散媒及び前記バインダ樹脂以外の化合物である。
高導電化剤のなかでも、導電性向上の効果が高いことから、ヒドロキシ基を2つ有する直鎖状化合物であるグリコールが好ましく、プロピレングリコールがより好ましい。
高導電化剤の含有割合は導電性複合体の合計質量に対して1倍量以上1000倍量以下であることが好ましく、2倍量以上100倍量以下であることがより好ましい。高導電化剤の含有割合が前記下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止できる。
導電性高分子分散液には、公知の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前記ポリアニオン、前記分散媒、前記バインダ樹脂及び前記高導電化剤以外の化合物からなる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
導電性高分子分散液が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、通常、導電性複合体の固形分100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲内である。
<導電性高分子分散液の製造方法>
本発明の一態様の導電性高分子分散液の製造方法は、導電性複合体を含有する予備分散液に、ケトン化合物を還元して得た2級アルコールを添加する添加工程を有する。
予備分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、該導電性複合体を分散させる分散媒とを含有する。
添加工程では、予備分散液に分散媒をさらに添加してもよいし、バインダ成分を添加してもよい。
ケトン化合物を還元して得た2級アルコールを含有させた導電性高分子分散液は、保存時間が長くても、導電性が高い導電層を容易に形成できる。
なお、通常、2級アルコールは、アルケンの水和により製造されるが、アルケンの水和により得た2級アルコールを含む導電性高分子分散液は、保存時間が長くなるにつれて、導電層の導電性が低下しやすい。その理由は明らかではないが、アルケンの水和により得た2級アルコールには、π共役系導電性高分子又はポリアニオンを劣化させる不純物が含まれ、ケトン化合物を還元して得た2級アルコールには、そのような不純物が含まれていないものと思われる。
<導電性フィルムの製造方法>
本発明の一態様の導電性フィルムの製造方法は、前記導電性高分子分散液をフィルム基材の少なくとも一方の面に塗工して塗工フィルムを形成する塗工工程と、塗工した導電性高分子分散液を乾燥させる乾燥工程とを有する。
この製造方法により得られる導電性フィルムは、フィルム基材と、該フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された導電層とを備え、導電層が、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体を含有する。
導電層の平均厚さとしては、10nm以上5000nm以下であることが好ましく、20nm以上1000nm以下であることがより好ましく、30nm以上500nm以下であることがさらに好ましい。導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層を容易に形成できる。
本態様の塗工工程において使用するフィルム基材としては、プラスチックフィルムが挙げられる。
プラスチックフィルムを構成するフィルム基材用樹脂としては、例えば、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのフィルム基材用樹脂のなかでも、安価で機械的強度に優れる点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
前記フィルム基材用樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
また、フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
また、フィルム基材には、導電性高分子分散液から形成される導電層の密着性を向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
フィルム基材の平均厚みとしては、10〜500μmであることが好ましく、20〜200μmであることがより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
本明細書における厚さは、任意の10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
導電性高分子分散液を塗工する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた塗工方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
上記のうち、簡便に塗工できることから、バーコーターを用いることがある。バーコーターにおいては、種類によって塗工厚が異なり、市販のバーコーターでは、種類ごとに番号が付されており、その番号が大きい程、厚く塗工できるものとなっている。
前記導電性高分子分散液のフィルム基材への塗工量は特に制限されないが、固形分として、0.1g/m以上2.0g/m以下の範囲であることが好ましい。
乾燥工程における乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上150℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。
上記導電性フィルムの製造方法では、上記導電性高分子分散液を用いて導電層を形成するため、導電性が高い導電性フィルムを容易に製造できる。
(製造例1)
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃にて攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した6.18gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、その溶液を12時間攪拌した。
得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。
さらに、得られたろ液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色のポリスチレンスルホン酸の固形物を得た。
(製造例2)
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、1.2質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散液(PEDOT−PSS水分散液)を得た。
(実施例1)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液10gに、水20gと、メタノール50gと、アセトンを還元して得たイソプロパノール20gとを添加して、導電性高分子分散液を得た。
(実施例2)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液10gに、水20gと、メタノール30gと、アセトンを還元して得たイソプロパノール40gとを添加して、導電性高分子分散液を得た。
(実施例3)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液10gに、水40gと、メタノール100gと、アセトンを還元して得たイソプロパノール50gとを添加して、導電性高分子分散液を得た。
(実施例4)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液10gに、水40gと、メタノール60gと、アセトンを還元して得たイソプロパノール90gとを添加して、導電性高分子分散液を得た。
(実施例5)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液10gに、水20gと、メタノール40gと、アセトンを還元して得たイソプロパノール20gと、バインダ成分(互応化学工業株式会社製プラスコートRZ−105、水分散ポリエステル、固形分濃度25質量%の水溶液)10gとを添加して、導電性高分子分散液を得た。
(実施例6)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液10gに、水20gと、メタノール50gと、アセトンを還元して得たイソプロパノール20gと、プロピレングリコール5gとを添加して、導電性高分子分散液を得た。
(実施例7)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液10gに、水20gと、メタノール50gと、メチルエチルケトンを還元して得た2−ブタノール20gとを添加して、導電性高分子分散液を得た。
(比較例1)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液10gに、水20gと、メタノール50gと、プロピレンを水和して得たイソプロパノール20gとを添加して、導電性高分子分散液を得た。
(比較例2)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液10gに、水20gと、メタノール30gと、プロピレンを水和して得たイソプロパノール40gとを添加して、導電性高分子分散液を得た。
(比較例3)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液10gに、水40gと、メタノール100gと、プロピレンを水和して得たイソプロパノール50gとを添加して、導電性高分子分散液を得た。
(比較例4)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液10gに、水40gと、メタノール60gと、プロピレンを水和して得たイソプロパノール90gとを添加して、導電性高分子分散液を得た。
(比較例5)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液10gに、水20gと、メタノール40gと、プロピレンを水和して得たイソプロパノール20gと、バインダ成分(互応化学工業株式会社製プラスコートRZ−105、水分散ポリエステル、固形分濃度25質量%の水溶液)10gとを添加して、導電性高分子分散液を得た。
(比較例6)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液10gに、水20gと、メタノール50gと、アセトンを還元して得たイソプロパノール20gと、プロピレングリコール5gとを添加して、導電性高分子分散液を得た。
(比較例7)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液10gに、水20gと、メタノール50gと、1−ブテンを水和して得た2−ブタノール20gとを添加して、導電性高分子分散液を得た。
<評価>
得られた直後の各例の導電性高分子分散液を、No.4のバーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布して、塗布膜を形成した。その塗布膜を、乾燥温度120℃、乾燥時間1分で加熱乾燥し、分散媒を除去して、導電性フィルムを得た。その導電性フィルムの表面抵抗値(初期の表面抵抗値)を、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリティック製ハイレスタ)を用い、印加電圧10Vの条件で測定した。測定結果を表1に示す。
また、各例の導電性高分子分散液を25℃で24時間保存した後、No.4のバーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布して、塗布膜を形成した。その塗布膜を、乾燥温度120℃、乾燥時間1分で加熱乾燥し、分散媒を除去して、導電性フィルムを得た。その導電性フィルムの表面抵抗値(24時間保存後の表面抵抗値)を、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリティック製ハイレスタ)を用い、印加電圧10Vの条件で測定した。測定結果を表1に示す。
Figure 2017125096
ケトン化合物を還元して得た2級アルコールを含む各実施例の導電性高分子分散液によれば、保存時間が長くても、高い導電性の導電層を形成できた。
これに対し、ケトン化合物を水和して得た2級アルコールを含む各比較例の導電性高分子分散液では、保存時間が長いと、得られる導電層の導電性が低くなることがあった。

Claims (14)

  1. π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体を含有する予備分散液に、ケトン化合物を還元して得た2級アルコールを添加する添加工程を有する、導電性高分子分散液の製造方法。
  2. 前記ケトン化合物がアセトンであり、前記2級アルコールがイソプロパノールである、請求項1に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  3. 前記ケトン化合物がメチルエチルケトンであり、前記2級アルコールが2−ブタノールである、請求項1に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  4. 前記予備分散液が分散媒として水を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  5. 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  6. 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  7. 前記添加工程では、前記予備分散液に1級アルコールを添加する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  8. 前記1級アルコールがメタノールである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  9. 前記添加工程では、前記予備分散液にさらにバインダ樹脂を添加する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  10. 前記バインダ樹脂が水分散性エマルション樹脂である、請求項9に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  11. 前記水分散性エマルション樹脂がポリエステルエマルションである、請求項10に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  12. 前記添加工程では、前記予備分散液にさらに高導電化剤を添加する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  13. フィルム基材の少なくとも一方の面に、請求項1〜12のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法により製造した導電性高分子分散液を塗工する塗工工程と、塗工した導電性高分子分散液を乾燥させる乾燥工程と、を有する導電性フィルムの製造方法。
  14. 前記フィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルムである、請求項13に記載の導電性フィルムの製造方法。
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