JP2017123816A - 食品、食品の加熱処理方法、フィコシアニンの製造方法、有機酸の製造方法、及び水素の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
有機酸は、利用価値の高い化合物である。例えば、有機酸である乳酸からは、優れた生分解性プラスチックであるポリ乳酸を製造可能である。なかでもコハク酸は、汎用の化学・工業原料であり、ポリブチレンサクシネート(PBS)の原料や、化学品中間体、溶剤、可塑剤として広く利用されている。例えば、コハク酸を原料として製造されるポリブチレンサクシネートは、農業用マルチフィルム、包装材、農場・土木資材等に使用され、2011年の出荷量は約3100tにのぼる。
現在、コハク酸は、主に石油を原料として製造されているが、石油の代わりにバイオマスを利用しようとする流れがある。例えば、非特許文献1には、従属栄養微生物を用いてコハク酸を生産する技術が開示されている。いくつかの企業ではバクテリア又は酵母の発酵により、コハク酸の生産を開始している。
また、従来の藍藻を用いたフィコシアニンの製造方法では、フィコシアニンの回収のために、藍藻を乾燥粉末化しなくてはならず、そのための設備やコストが必要である。
また、本発明は、効率的にフィコシアニンを製造可能なフィコシアニンの製造方法の提供を課題とする。
また、本発明は、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻による、有機酸の製造方法及び水素の製造方法の提供を課題とする。
(2)飲料である上記(1)に記載の食品。
(3)上記(1)又は(2)に記載の食品を加熱処理することを含む、食品の加熱処理方法。
(4)イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻を培養物中で培養してフィコシアニンを製造させ、塩濃度が前記培養物以下である回収媒体と前記紅藻とを接触させて、前記回収媒体に前記紅藻が製造したフィコシアニンが抽出された色素回収物を得て、前記紅藻からフィコシアニンを採取することを含む、フィコシアニンの製造方法。
(5)イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻を培養物中で培養して有機酸を製造させ、前記紅藻内及び/又は前記培養物中から前記有機酸を採取することを含む、有機酸の製造方法。
(6)イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻を培養物中で培養して水素を製造させ、前記水素を採取することを含む、水素の製造方法。
また、本発明によれば、高効率に、耐熱性に優れるフィコシアニンを製造可能なフィコシアニンの製造方法を提供可能である。
また、本発明によれば、イデユコゴメ綱に属する紅藻による、有機酸の製造方法、水素の製造方法を提供可能である。
本発明の食品は、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻のフィコシアニンを含み、pHが7未満であるフィコシアニン含有物を含む。
本発明の一態様に係るフィコシアニンは、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻のフィコシアニンである。当該フィコシアニンとしては、後述するフィコシアニンの製造方法で説明したものが挙げられ、後述する本発明のフィコシアニンの製造方法によって得られたものが挙げられる。
以下、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻のことを指して、単に「紅藻」ということがある。
本発明の一態様に係るフィコシアニンは、本発明の一態様に係るフィコシアニンを含むフィコシアニン含有物に対する、加熱処理後の色素残存率が、加熱処理前と比較して50%以上であってもよく、70%以上であってもよく、80%以上であってもよく、90%以上であってもよい。当該加熱処理の条件としては、後述の≪食品の加熱処理方法≫で例示した条件が挙げられる。色素残存率は、本明細書の実施例に示されるように、フィコシアニン含有物に対する620nmにおける吸光度を指標として、吸光度の減少率により求めることができる。残存率0%とするベースの吸光度は、例えば、上記フィコシアニン含有物の組成からフィコシアニンを除いたものに対する620nmにおける吸光度から求めてもよく、上記フィコシアニン含有物のフィコシアニンを変性させたものに対する620nmにおける吸光度から求めてもよい。
発明者らは、イデユコゴメ綱に属する紅藻のフィコシアニンが、酸性条件下でより優れた耐熱性を有することを見出した。係る観点から、フィコシアニン含有物のpHは、pH0以上pH7未満であってもよく、pH1以上pH6以下であってもよく、pH2以上pH5以下であってもよく、pH3以上pH4.5以下であってもよく、pH3以上pH4未満であってもよい。なかでもpH4未満であるフィコシアニン含有物は腐敗し難く、保存のための加熱処理条件が緩和されるため好ましい。
フィコシアニン含有物中のフィコシアニン量は、分光光度計等を使用して、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。また、SDS−PAGEによりフィコシアニンを分離して、おおよそのフィコシアニン量を見積もることができる。
本発明の一実施形態として、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻のフィコシアニンを含み、pHが7未満であるフィコシアニン含有物を含む食品を提供する。
本発明の一実施形態として、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻のフィコシアニンを含み、pHが7未満であるフィコシアニン含有物を含む試薬類を提供する。
本発明の一実施形態として、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻のフィコシアニンを含み、pHが7未満であるフィコシアニン含有物を含む医薬品を提供する。
これらは、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻のフィコシアニンを含み、pHが7未満であるフィコシアニン含有物からなる食品、試薬類、又は医薬品であってもよい。
本発明の食品は、食品のなかでも、特に飲料に好適である。ここで、フィコシアニン含有物のpHは4未満であることが好ましい。例えば、pH4未満である清涼飲料の製造基準では、65℃、10分又はそれと同等以上の加熱殺菌処理が求められることがある。pHが4未満であるフィコシアニン含有物は、例えば、65℃で10分の加熱処理により、色素の発色を良好なものとしつつ、食品衛生上の十分な殺菌を達成することができ、加熱処理後そのまま飲料として提供できる。
試薬類としては、細胞標識用試薬等が挙げられる。試薬類には着色料等の試薬原料も含まれる。
医薬品としては、内用剤、外用剤のどちらであってもよく、経口剤、注射剤、ドリンク剤、坐剤、点眼剤、ゼリー剤等を例示できる。医薬品に含まれるフィコシアニンは、有効成分であってもよく、有効成分以外の添加物であってもよい。
フィコシアニン含有物には、紅藻が含まれていてもよく、紅藻が含まれていなくてもよい。紅藻が含まれているフィコシアニン含有物としては、例えば、下記の本発明のフィコシアニンの製造方法における、紅藻から抽出されたフィコシアニンを含有する色素回収物が挙げられる。紅藻が含まれていないフィコシアニン含有物としては、例えば、下記の本発明のフィコシアニンの製造方法における、紅藻から抽出されたフィコシアニンを含有する回収媒体が挙げられる。なお、本明細書におけるフィコシアニン含有物は、フィコシアニンが溶媒に溶解したフィコシアニン溶液であり、単にフィコシアニンを体内蓄積した紅藻のみを含む液は、フィコシアニン含有物として扱わないものとする。
また、本発明の一実施形態として、本発明のフィコシアニンの製造方法によって得られたフィコシアニンを含む食品を提供する。
本発明の一実施形態として、本発明のフィコシアニンの製造方法によって得られたフィコシアニンを原材料として用いることを含む、食品の製造方法を提供する。
本発明の一実施形態として、本発明のフィコシアニンの製造方法によって得られたフィコシアニンを含む飲料を提供する。
本発明の一実施形態として、本発明のフィコシアニンの製造方法によって得られたフィコシアニンを原材料として用いることを含む、飲料の製造方法を提供する。
本発明の一実施形態として、本発明のフィコシアニンの製造方法によって得られたフィコシアニンを含む試薬を提供する。
本発明の一実施形態として、本発明のフィコシアニンの製造方法によって得られたフィコシアニンを原材料として用いることを含む、試薬の製造方法を提供する。
本発明の一実施形態として、本発明のフィコシアニンの製造方法によって得られたフィコシアニンを含む医薬品を提供する。
本発明の一実施形態として、本発明のフィコシアニンの製造方法によって得られたフィコシアニンを原材料として用いることを含む、医薬品の製造方法を提供する。
食品、飲料試薬、医薬品については、上記に説明したものが挙げられる。
イデユコゴメ綱に属する紅藻としては、シアニディオシゾン メローラエ(Cyanidioschyzon merolae)等のシアニディオシゾン属 (Cyanidioschyzon)紅藻、シアニジウム カルダリウム(Cyanidium caldarium)等のシアニジウム属紅藻、ガルディエリア スルフラリア(Galdieria sulphuraria)等のガルディエリア属紅藻が挙げられる。本明細書においてイデユコゴメ綱に属する紅藻とは、上記に挙げたもの以外にも、それらの変異体や組換え体であってもよい。新たに見出されるイデユコゴメ綱又は近縁の分類群に属する紅藻であって高温酸性環境で生育可能な紅藻も、イデユコゴメ綱に属する紅藻として扱われるものとする。
高温酸性環境とは、上記イデユコゴメ綱に属する紅藻が生育可能な高温酸性環境と同等の環境を指し、例えば、温度40℃以上でpH1〜6、好ましくはpH1〜3程度の環境である。一例としてシアニディオシゾン メローラエの至適生育条件は、温度42℃、pH2.5とされる。
本発明に係るフィコシアニンは、上記イデユコゴメ綱に属する紅藻から生産されたもの、すなわちイデユコゴメ綱に属する紅藻のフィコシアニンである。なかでも、シアニディオシゾン属に属する紅藻のフィコシアニンが好ましく、シアニディオシゾン メローラエのフィコシアニンがより好ましい。
シアニディオシゾン メローラエはゲノム情報の解読が完了している。その情報に基づくと、シアニディオシゾン メローラエのフィコシアニンのαサブユニットは、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質であり、βサブユニットは、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質とされる。
一例として、本実施形態のフィコシアニンの製造方法において製造されるフィコシアニンのタンパク質は、シアニディオシゾン メローラエのフィコシアニンのタンパク質が一部改変されたものであってもよく、例えば、以下の(a)又は(b)のタンパク質であってもよい。
(a)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有し、フィコシアニン色素を構成可能なタンパク質
(b)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列との配列同一性が80%以上であるアミノ酸配列を有し、フィコシアニン色素を構成可能なタンパク質
(a)のポリペプチドにおいて、「塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列」とは、配列番号1又は2に示されるアミノ酸配列に対して、アミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であってもよく、欠失、置換、挿入及び付加からなる群から選ばれる少なくとも一種の改変又は変異により、改変前の配列番号1又は2に示されるアミノ酸配列に対して、1〜数個のアミノ酸の相違が生じたものであってもよい。
アミノ酸配列同士の配列同一性は、公知のシーケンスアライメントのアルゴリズムであるBLAST (Basic Local Alignment Search Tool)やblastpを用いて算出可能である。
本発明の食品の加熱処理方法は、本発明の食品を加熱処理することを含む。
本発明の食品としては、上記の≪食品≫の段で例示したものが挙げられる。
本発明の一態様に係るフィコシアニン含有物の加熱処理方法は、本発明の一態様に係るフィコシアニン含有物を加熱処理することを含む。
本発明の一態様に係るフィコシアニン含有物の加熱処理方法は、フィコシアニン含有物の加熱殺菌方法として用いることができる。なかでも食品のフィコシアニン含有物に対する加熱殺菌方法として好適であり、pH4未満の食品のフィコシアニン含有物の加熱殺菌方法として好適である。
本発明のフィコシアニンの製造方法は、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻を培養物中で培養してフィコシアニンを製造させ、塩濃度が前記培養物以下である回収媒体と前記紅藻とを接触させて、前記回収媒体に前記紅藻が製造したフィコシアニンが抽出された色素回収物を得て、前記紅藻からフィコシアニンを採取することを含む。
以下、図を参照しながら、本発明の一実施形態のフィコシアニンの製造方法について説明する。上記フィコシアニン、上記フィコシアニン含有物、上記食品と共通する部分について、説明を省略する。
フィコシアニンを紅藻から抽出させる際に、紅藻の細胞は破壊されていてもよく、破壊されていなくてもよい。
回収媒体に浸すイデユコゴメ綱に属する紅藻としては、シアニディオシゾン属(Cyanidioschyzon)に属する紅藻が好ましく、シアニディオシゾン メローラエがより好ましい。シアニディオシゾン メローラエ(Cyanidioschyzon merolae)を用いることで、より容易にフィコシアニンを得ることができる。これは、シアニディオシゾン メローラエは強固な細胞壁を持たないため、回収媒体に浸すことで、非常に容易に藻の体内からフィコシアニンを回収媒体中に回収することができるためと考えられる。
また、フィコシアニンの回収効率を高めるために、紅藻を回収媒体に浸すことに加え、さらに別の処理を行ってもよい。例えば、紅藻及び回収媒体を含む色素回収物を嫌気条件下に保持してもよい。
明細書中において嫌気条件下に保持するとは、例えば、色素回収物を保持する容器内を嫌気状態にすることを指す。嫌気状態とは、例えば、培養系内の気相の酸素濃度が0〜1体積%であってもよく、0〜0.5体積%であってもよく、0〜0.2体積%であってもよく、0体積%であってもよい。
色素回収物を保持する容器内を嫌気状態にする方法としては、例えば、密閉され、光照射が遮られた培養容器内で紅藻を培養することで、紅藻の呼吸により培養容器内の酸素を消費させる方法が挙げられる。したがって、本実施形態のフィコシアニンの製造方法においては、紅藻及び回収媒体を含む色素回収物を暗条件下に保持してもよく、紅藻及び回収媒体を含む色素回収物を暗嫌気条件下に保持してもよい。
別例として、例えば、培養容器内に窒素ガスを流入させ、培養容器内の酸素を窒素で置換する方法が挙げられる。
嫌気条件下に色素回収物を保持することで、フィコシアニンの回収効率を高めることができる。
紅藻を培養する培養物としては、その中で紅藻が生育可能なものが挙げられ、例えば、M-Allen培地、MA-2培地等の培地が挙げられる。
紅藻を培養する培地には、通常塩が含まれており、培養物の塩濃度は10〜80mMであることが好ましく、20〜40mMであることがより好ましく、20〜30mMであることがさらに好ましい。例えば、上記のM-Allen培地の塩濃度は、25mMである。
回収媒体の塩濃度は、0〜20mMであることが好ましく、0〜10mMであることがより好ましく、5 mM以下であることがさらに好ましい。培養物の塩濃度よりも塩濃度の低い回収媒体としては、バッファーが挙げられ、塩濃度5mM以下のバッファーが挙げられる。例えばHepesバッファーの塩濃度は、1mM以下である。バッファーのpHは、特に制限されるものではないが、一例としてpH6〜8程度のものが挙げられる。
ここで、塩濃度とは、塩化ナトリウムのみの塩濃度を指すのではなく、全ての塩の塩濃度を指すものとする。
本実施形態のフィコシアニンの製造方法は、採取したフィコシアニンを精製することを含んでいてもよい。精製は、採取と同時におこなってもよく、採取した後におこなってもよい。精製の方法としては、例えば、結晶化精製によるもの、HPLCによるクロマトグラフィーやイオン交換樹脂等のカラム精製によるもの等が挙げられる。
これは第一に、イデユコゴメ綱に属する紅藻のフィコシアニン自体が、優れた耐熱性を有しているからと考えられる。イデユコゴメ綱に属する紅藻に由来するタンパク質は、該紅藻の生育環境である高温酸性環境に、適応していることが考えられる。
また第二に、イデユコゴメ綱に属する紅藻を回収媒体に浸し、紅藻から前記回収媒体中に抽出されたフィコシアニンを採取するという方法が、得られたフィコシアニンの耐熱性を高めているもことも考えられる。本方法では、タンパク質を変性させる工程を経ずともフィコシアニンを回収可能であり、熱安定性に寄与する分子シャペロン等の結合状態や働きを阻害せずに、フィコシアニンを採取可能となっていることも考えられる。
本発明の一態様に係るフィコシアニン製造装置は、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻を培養する培養槽と、前記紅藻及び回収媒体を含み前記紅藻から前記回収媒体中にフィコシアニンが抽出された色素回収物を保持する色素回収槽と、を備える。
以下、図を参照しながら、実施形態のフィコシアニン製造装置について説明する。フィコシアニンの製造方法と共通する部分について、説明を省略する。
培養槽10では、紅藻30が培養液40中で培養されている。培養槽10では、紅藻30が増殖する。培養された紅藻30と培養液40は、配管11を介して色素回収槽20へと送られる。色素回収槽20には、培養液40とは異なる組成の液が導入され、該液と培養液40とが混ざり回収液50(回収媒体)となる。このようにして、色素回収槽20には、紅藻30と回収液50とを含む色素回収液60(色素回収物)が保持される。
色素回収液60では、紅藻30と回収液50とが接触すると、紅藻30から回収液50中にフィコシアニンが抽出される。色素回収液61(色素回収物)は、フィコシアニンが抽出された紅藻31と、回収液50に紅藻31から抽出されたフィコシアニンが溶けた回収液51とを含んでいる。その後、色素回収槽20から回収液51又は色素回収液61を採取することで、紅藻30からフィコシアニンを回収する。
色素回収槽20は、嫌気条件下で色素回収液60,61を保持可能なものであってもよく、例えば、槽外との空気の連通が遮断可能なようにされていてもよい。また、色素回収槽20は、暗条件下で色素回収液60,61を保持可能なものであってもよく、例えば、色素回収液60への光照射が遮断可能なようにされていてもよい。
本発明の有機酸の製造方法は、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻を培養液中で培養して有機酸を製造させ、前記紅藻内及び/又は前記培養物中から前記有機酸を採取することを含む。
本発明の一実施形態において、有機酸の製造方法は、上記紅藻を培養物で培養して有機酸を製造させ、紅藻内及び/又は培養後の培養物中から前記有機酸を採取することを含む。
紅藻を培養する培養系内を、紅藻が嫌気発酵可能な条件下とする方法としては、例えば、密閉され、光照射が遮られた培養容器内で紅藻を培養することで、紅藻の呼吸により培養容器内の酸素を消費させる方法が挙げられる。したがって、本実施形態の有機酸の製造方法においては、嫌気培養は暗条件下で行うことが好ましい。
別例として、例えば、培養容器内に窒素ガスを流入させ、培養容器内の酸素を窒素で置換する方法が挙げられる。
上記に例示したような培地は、好気培養、嫌気培養のいずれにも使用可能であるが、嫌気培養では、主に紅藻内に蓄積された炭素源を用いて有機酸の生産が行われるため、栄養源を含む培地を使用せずともよい。嫌気発酵では、例えば、培地の代わりとして、紅藻を生存させることが可能なバッファーを、培養物として使用できる。
紅藻を培養する期間は、培養物中の紅藻の濃度や有機酸の生産量に応じて適宜定めればよい。上記好気培養の期間は、1時間〜20日程度としてもよく、1日〜10日程度としてもよく、1〜3日程度としてもよい。好気培養は、振とう培養や通気培養により行ってもよい。上記嫌気培養の期間は、1時間〜20日程度としてもよく、1日〜10日程度としてもよく、1〜3日程度としてもよい。
紅藻が紅藻外に有機酸を放出している場合、培養後の培養物中から前記有機酸を採取すればよい。例えば、上記実施形態の紅藻を培養物で培養して有機酸を製造させ、培養後の培養物中からコハク酸及び/又は乳酸を採取してもよい。当該培養後の培養物は、遠心分離や濾過等の分離処理が施され紅藻が分離されたものであってもよく、紅藻が分離されていない状態であってもよい。分離処理された培養物中では、紅藻が完全に除かれてなくともよい。
本発明の水素の製造方法は、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻を培養物中で培養して水素を製造させ、前記水素を採取することを含む。
本明細書中において、培養物とは、紅藻を培養するために用いられるものであり、その中又はその上で紅藻が生育可能な物質である。培養物としては、例えば、培地、バッファー、水、水溶液などである。培養物は液体であっても、固体であってもよいが、水素を生産させる際には、紅藻又は水素の回収が容易であることから、液体であることが好ましい。
紅藻を培養する培養系内を、紅藻が嫌気発酵可能な条件下とする方法としては、例えば、密閉され、光照射が遮られた培養容器内で紅藻を培養することで、紅藻の呼吸により培養容器内の酸素を消費させる方法が挙げられる。したがって、本実施形態の有機酸の製造方法においては、嫌気培養は暗条件下で行うことが好ましい。
別例として、例えば、培養容器内に窒素ガスを流入させ、培養容器内の酸素を窒素で置換する方法が挙げられる。
上記に例示したような培地は、好気培養、嫌気培養のいずれにも使用可能であるが、嫌気培養では、主に紅藻内に蓄積された炭素源を用いて有機酸の生産が行われるため、栄養源を含む培地を使用せずともよい。嫌気発酵では、例えば、培地の代わりとして、紅藻を生存させることが可能なバッファーを、培養物として使用できる。
紅藻を培養する期間は、培養物中の紅藻の濃度や有機酸の生産量に応じて適宜定めればよい。上記好気培養の期間は、1時間〜20日程度としてもよく、1日〜10日程度としてもよく、1〜3日程度としてもよい。好気培養は、振とう培養や通気培養により行ってもよい。上記嫌気培養の期間は、1時間〜20日程度としてもよく、1日〜10日程度としてもよく、1〜3日程度としてもよい。
水素の採取と製造は同時に行われてもよく、別々に行われてもよい。水素の採取と製造が同時に行われる場合としては、例えば、水素を生産している紅藻の培養容器内の気相を回収して、水素を採取する場合が挙げられる。
<実施例1>
シゾン(NIESコレクション株番号:NIES-3377)を、OD730=20になるよう10 mL M−Allen培地(pH2.5)に懸濁し、40℃、空気(1%CO2)、白色光40〜60 μmol photons m−2s−1の明条件で4〜10日間好気培養した。
その後、上記好気培養後の培地を遠心してシゾンを回収し、10mLの純水(回収媒体)にOD730=20となるよう、細胞を再懸濁した。この再懸濁物(色素回収物)をガスクロバイアル瓶に入れ、ブチルゴムで密栓して栓にシリンジを2本連結した。片方のシリンジから、10分間N2ガスをガスクロバイアル瓶に1時間吹き込み、瓶内の空気をN2ガスに置換した。N2ガスを止めてシリンジを栓から抜き、瓶をアルミ箔で覆い、密閉状態で3日間、40℃、暗条件で振盪培養した。振盪培養後の上清(回収媒体)は青色を呈しており、上清にシゾンフィコシアニンが抽出されていることが確認できた。
振盪培養後の上清の吸収スペクトルを測定し、620nmの波長における吸光度から、上清中のシゾンフィコシアニン量(mg/L)を算出した。培養は2反復で行い、それぞれを実施例1−1、実施例1−2とした。結果を表2及び図3に示す。また、M−Allen培地の組成を以下の表1に示す。
上記実施例1において、瓶内の空気をN2ガスに置換しなかった以外は、実施例1と同様にして培養を行い、上清中のシゾンフィコシアニン量(mg/L)を算出した。培養は2反復で行い、それぞれを実施例2−1、実施例2−2とした。結果を表2及び図3に示す。
上記実施例1において、暗条件での振盪培養に代えて、明条件での振盪培養を行った以外は、実施例1と同様にして培養を行い、上清中のシゾンフィコシアニン量(mg/L)を算出した。培養は2反復で行い、それぞれを実施例3−1、実施例3−2とした。結果を表2及び図3に示す。
上記実施例1において、瓶内の空気をN2ガスに置換せず、暗条件での振盪培養に代えて、明条件での振盪培養を行った以外は、実施例1と同様にして培養を行い、上清中のシゾンフィコシアニン量(mg/L)を算出した。培養は2反復で行い、それぞれを実施例4−1、実施例4−2とした。結果を表2及び図3に示す。
実施例1〜2と実施例3〜4を比較すると、暗嫌気条件下にてシゾンを振盪培養させた実施例1〜2では、明嫌気条件下にてシゾンを振盪培養させた実施例3〜4に比べて、より多くのシゾンフィコシアニンが、振盪培養後の上清に含まれていた。
<実施例5>
上記実施例1において、純水(回収媒体)に細胞を再懸濁した後、1.5mLチューブへと再懸濁液(色素回収物)を移し、密閉状態で3日間室温静置した。
放置後の上清(回収媒体)は青色を呈しており(表3)、上清にシゾンフィコシアニンが抽出されていることが確認できた。
その後さらに、同条件にて密閉状態で1か月間室温静置した。図4(右)に、純水への再懸濁から、1か月経過後のサンプルを示す。1か月経過後であっても、上清は濃い青色を保っていた。これは、シゾンフィコシアニンが優れた保存安定性を有することを示している。
実施例5の静置後の上清には、多量のシゾンフィコシアニンが含まれており、純水中にシゾンを投入し、静置するという非常に簡易な操作で、シゾンからシゾンフィコシアニンを得られることが示された。
上記実施例1において、純水(回収媒体)に代えてM-Allen培地に細胞を再懸濁した後、1.5mLチューブへと再懸濁液を移し、密閉状態で3日間室温静置した。放置後の上清は青色を呈していなかった(表3)。その後さらに、同条件にて密閉状態で1か月間室温静置した。
図4(左)に、M-Allen培地への再懸濁から、1か月経過後のサンプルを示す。1か月経過後であっても、上清は青色を呈していなかった。
<実施例6>
実施例1で得られたシゾンフィコシアニンを含む回収媒体を30℃で1時間加熱処理した。
実施例6において加熱処理条件を30℃で1時間から60℃で1時間に変更した以外は、実施例6と同様にして加熱処理を行った。
実施例5において、回収媒体を純水から20mM Hepes−KOH(pH7.8)へと代えた以外は、実施例1と同様にしてシゾンフィコシアニンを含む回収媒体を得て、30℃で1時間加熱処理した。
実施例8において加熱処理条件を30℃で1時間から60℃で1時間に変更した以外は、実施例8と同様にして加熱処理を行った。
スピルリナフィコシアニン(製品:C-Phycocyanin、ジャパンアルジ社製)終濃度0.3mg/mLを、20mM Hepes−KOH(pH7.8)に懸濁し、30℃で1時間加熱処理した。
比較例2において加熱処理条件を30℃で1時間から60℃で1時間に変更した以外は、比較例2と同様にして加熱処理を行った。
<実施例10>
実施例1で得られたシゾンフィコシアニンを含む回収媒体0.1mLを、20mM Hepes−KOH(pH7.8)に懸濁し、30℃で1時間加熱処理した。
<実施例11>
実施例1で得られたシゾンフィコシアニンを含む回収媒体0.1mLを、20mM 酢酸バッファー(pH4)に懸濁し、30℃で1時間加熱処理した。
<実施例12>
実施例1で得られたシゾンフィコシアニンを含む回収媒体0.1mLを、20mM 酢酸バッファー(pH3.5)に懸濁し、30℃で1時間加熱処理した。
<実施例13>
実施例1で得られたシゾンフィコシアニンを含む回収媒体0.1mLを、20mM Hepes−KOH(pH7.8)に懸濁し、65℃で1時間加熱処理した。
<実施例14>
実施例1で得られたシゾンフィコシアニンを含む回収媒体0.1mLを、20mM 酢酸バッファー(pH4)に懸濁し、65℃で1時間加熱処理した。
<実施例15>
実施例1で得られたシゾンフィコシアニンを含む回収媒体0.1mLを、20mM 酢酸バッファー(pH3.5)に懸濁し、65℃で1時間加熱処理した。
スピルリナフィコシアニン(製品C-Phycocyanin、ジャパンアルジ社製)終濃度0.1mg/mLを、20mM Hepes−KOH(pH7.8)に懸濁し、30℃で1時間加熱処理した。
<比較例5>
スピルリナフィコシアニン(製品C-Phycocyanin、ジャパンアルジ社製)終濃度0.1mg/mLを、20mM 酢酸バッファー(pH4)に懸濁し、30℃で1時間加熱処理した。
<比較例6>
スピルリナフィコシアニン(製品C-Phycocyanin、ジャパンアルジ社製)終濃度0.1mg/mLを、20mM 酢酸バッファー(pH3.5)に懸濁し、30℃で1時間加熱処理した。
<比較例7>
スピルリナフィコシアニン(製品C-Phycocyanin、ジャパンアルジ社製)終濃度0.1mg/mLを、20mM Hepes−KOH(pH7.8)に懸濁し、65℃で1時間加熱処理した。
<比較例8>
スピルリナフィコシアニン(製品C-Phycocyanin、ジャパンアルジ社製)終濃度0.1mg/mLを、20mM 酢酸バッファー(pH4)に懸濁し、65℃で1時間加熱処理した。
<比較例9>
スピルリナフィコシアニン(製品C-Phycocyanin、ジャパンアルジ社製)終濃度0.1mg/mLを、20mM 酢酸バッファー(pH3.5)に懸濁し、65℃で1時間加熱処理した。
結果を図6に示す。図6においてフィコシアニンの吸収極大は620nm付近である。
<実施例16>
(好気培養)
シゾン(NIESコレクション株番号:NIES-3377)を、OD730=20になるよう10 mL M−Allen培地(pH2.5)に懸濁し、40℃、空気(1%CO2)、白色光40〜60 μmol photons m−2s−1の明条件で4〜10日間好気培養した。
(嫌気培養)
その後、上記好気培養後の培地を遠心してシゾンを回収し、10mLの20mM Hepes−KOH(pH7.8)にOD730=20となるよう、細胞を再懸濁した。この再懸濁物をガスクロバイアル瓶に入れ、ブチルゴムで密栓して栓にシリンジを2本連結した。片方のシリンジから、10分間N2ガスをガスクロバイアル瓶に吹き込み、瓶内の空気をN2ガスに置換した。N2ガスを止めてシリンジを栓から抜き、瓶をアルミ箔で覆い、密閉状態で3日間、40℃、暗条件で振盪培養した。
上記実施例16において、好気培養時のM−Allen培地(pH2.5)に代えて、M−Allen培地(pH2.5)から窒素を除いた培地を用いて好気培養を行った以外は、実施例16と同様にして培養を行った。M−Allen培地から窒素を除いた培地を以下の表4に示す。
移動相:3mM過塩素酸水溶液
反応液:0.2mMブロモチモールブルー(BTB),15mM リン酸水素ナトリウム(Na2HPO4・12H2O)
カラム:Shodex RSpak KC−811 x2
図7に示す結果から、シゾンによる有機酸(コハク酸、乳酸、酢酸)の細胞外生産が可能であることが示された。好気培養時に窒素欠乏条件で培養することで、培養液中のコハク酸量を増加させることが可能であった。また、培養液中に乳酸を得るためには、好気培養時に窒素欠乏条件で培養することが有効であることが示された。培養液中に酢酸を得るためには、好気培養時に窒素充足条件で培養することが有効であることが示された。
特に、乳酸は1g/Lを超える高濃度で生産可能であった。
<実施例18>
(好気培養)
シゾン(NIESコレクション株番号:NIES-3377)を、OD730=20になるよう10 mL M−Allen培地(pH2.5)に懸濁し、40℃、空気(1%CO2)、白色光40〜70 μmol photons m−2s−1の明条件で4〜10日間好気培養した。
(嫌気培養)
その後、上記好気培養後の培地を遠心してシゾンを回収し、10mLの20mM Hepes−KOH(pH7.8)にOD730=20となるよう、細胞を再懸濁した。この再懸濁物をガスクロバイアル瓶に入れ、ブチルゴムで密栓して栓にシリンジを2本連結した。片方のシリンジから、 10分間N2ガスをガスクロバイアル瓶に吹き込み、瓶内の空気をN2ガスに置換した。N2ガスを止めてシリンジを栓から抜き、瓶をアルミ箔で覆い、密閉状態で3日間、40℃、暗条件で振盪培養した。
上記実施例18において、好気培養時のM−Allen培地(pH2.5)に代えて、M−Allen培地(pH2.5)から窒素を除いた培地を用いて好気培養を行った以外は、実施例16と同様にして培養を行った。
上記実施例18において、好気培養時のM−Allen培地(pH2.5)に代えて、Hepes−KOH(pH7.8)を用いて好気培養を行った以外は、実施例16と同様にして培養を行った。
上記実施例18において、好気培養時のM−Allen培地(pH2.5)に代えて、Hepes−KOH(pH7.8)から窒素を除いたものを用いて好気培養を行った以外は、実施例16と同様にして培養を行った。
Claims (6)
- イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻のフィコシアニンを含み、pHが7未満であるフィコシアニン含有物を含む食品。
- 飲料である請求項1に記載の食品。
- 請求項1又は2に記載の食品を加熱処理することを含む、食品の加熱処理方法。
- イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻を培養物中で培養してフィコシアニンを製造させ、塩濃度が前記培養物以下である回収媒体と前記紅藻とを接触させて、前記回収媒体に前記紅藻が製造したフィコシアニンが抽出された色素回収物を得て、前記紅藻からフィコシアニンを採取することを含む、フィコシアニンの製造方法。
- イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻を培養物中で培養して有機酸を製造させ、前記紅藻内及び/又は前記培養物中から前記有機酸を採取することを含む、有機酸の製造方法。
- イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する紅藻を培養物中で培養して水素を製造させ、前記水素を採取することを含む、水素の製造方法。
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