JP2017119939A - 合成繊維および複合糸 - Google Patents
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Abstract
Description
このような温度調節繊維として、常温付近に融点を有する物質をマイクロカプセルに封入し、このマイクロカプセルを基材に付着させるものや、前記物質そのものまたはマイクロカプセルを繊維中に混入するものが従来から提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
従って、本発明は、吸熱効果と発熱効果の両機能を持った良好な温度調節機能を有する繊維を得ることをその目的とする。
すなわち、本発明は、成分1と成分2とを含む熱可塑性樹脂からなる合成繊維であって、成分1は融解開始温度が34℃以上、融解ピーク温度が50℃以下の範囲であり、成分2は結晶化開始温度が30℃未満、結晶化ピーク温度が5℃以上の範囲であることを特徴とする合成繊維を要旨とする。
上記合成繊維において、成分1の融解熱量ΔHmが10〜150J/g、成分2の結晶化熱量ΔHcが10〜150J/gであり、50℃以下に観測される合成繊維の融解熱量ΔHmが1〜5J/g、50℃以下に観測される合成繊維の結晶化熱量ΔHcが1〜5J/gである合成繊維であることが好ましい。
また、上記合成繊維において、示差走査熱量分析した際に得られる成分1の融解ピークおよび成分2の結晶化ピークの半値幅が10℃以下であることが好ましい。
さらに、上記合成繊維おいて、成分1は、側鎖炭素鎖がC18、C20、C22の少なくとも1つ以上からなる結晶性ポリα−オレフィンであり、成分2は、側鎖炭素鎖がC12、C14、C16の少なくとも1つ以上からなる結晶性ポリα−オレフィンであることが好ましく、特に、成分1、成分2および熱可塑性樹脂の質量比率が、5:5:90〜20:20:60であることが好ましい。
また本発明は、融解開始温度が34℃以上、融解ピーク温度が50℃以下の範囲である成分1を含む熱可塑性樹脂からなる合成繊維と、結晶化開始温度が30℃未満、結晶化ピーク温度が5℃以上の範囲である成分2を含む熱可塑性樹脂からなる合成繊維とを合糸せしめたことを特徴とする複合糸でもある。
本発明は、成分1と成分2とを含む熱可塑性樹脂からなる合成繊維である。
本発明の成分1、成分2は、融点、凝固点は、衣服内温度の前後に設定する。通常、衣服内温度は31〜32℃であり、この温度を境にして昇温時は、固体から溶融体への相転移がもたらす融解熱による吸熱効果、降温時は、溶融体から固体への相転移がもたらす凝固熱による発熱効果を発揮し、昇温時も降温時も、良好な温度調節機能を発揮する構成とする。
以下、成分1および成分2について、詳細に説明する。
肌と衣服との間の温度は、通常31〜32℃程度となる。このとき、成分1は、固体で存在し、外気温が上昇したときに、固体から溶融体への相転移が生じ、吸熱効果により、衣服内部の急激な温度上昇を抑制できる。
より具体的には、例えば、アクリル酸としては、ポリエイコシルアクリレート、ポリノナデシルアクリレート、ポリヘプタデシルアクリレート、ポリパルミチルアクリレート、ポリペンタデシルアクリレート、ポリステアリルアクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリミリスチルアクリレート等、またはこれらのアクリル酸の誘導体が挙げられる。
メタクリル酸としては、ポリドコシルメタクリレート、ポリヘンエイコシルメタクリレート、ポリミリスチルメタクリレート、ポリペンタデシルメタクリレート、ポリパルミチルメタクリレート、ポリヘプタデシルメタクリレート、ポリノナデシルメタクリレート、ポリエイコシルメタクリレート、ポリヘステアリルメタクリレート、ポリ(パルミチル/ステアリル)メタクリレート等、またはこれらのメタクリル酸のエステルが挙げられる。
側鎖結晶性ポリマーとしては、α−オレフィン系ポリマー(結晶性ポリα−オレフィン)、アルキルアクリレート系ポリマー、アルキルメタクリレート系ポリマー、アルキルエチレンオキシド系ポリマー、ポリシロキサン系ポリマーおよびアクリルアミド系ポリマー等の側鎖結晶性ポリマーが挙げられる。
これらの中でも、特に好ましくは、結晶性ポリα−オレフィンである。結晶性ポリα−オレフィンはホモポリマーでも、エチレン、プロピレン等のオレフィンとの共重合体でもよい。また側鎖の炭素鎖は、C18、C20、C22のいずれかであることが好ましい。
肌と衣服との間の温度は、通常31〜32℃程度となる。このとき成分2は、液体で存在し、外気温が降下した場合、溶融体から固体への相転移が生じ、発熱効果により、衣服内部の急激な温度降下を抑制できる。これら成分1と成分2を含有させることにより、昇温時も降温時も、温度調節機能を有することができる。
すなわち、アクリル酸またはメタクリル酸、それらの誘導体エステルと、ワックスとの重合体、側鎖結晶性ポリマー等が好適に挙げられる。
より具体的には、例えば、アクリル酸としては、ポリエイコシルアクリレート、ポリノナデシルアクリレート、ポリヘプタデシルアクリレート、ポリパルミチルアクリレート、ポリペンタデシルアクリレート、ポリステアリルアクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリミリスチルアクリレート等、またはこれらのアクリル酸の誘導体が挙げられる。
メタクリル酸としては、ポリドコシルメタクリレート、ポリヘンエイコシルメタクリレート、ポリミリスチルメタクリレート、ポリペンタデシルメタクリレート、ポリパルミチルメタクリレート、ポリヘプタデシルメタクリレート、ポリノナデシルメタクリレート、ポリエイコシルメタクリレート、ポリヘステアリルメタクリレート、ポリ(パルミチル/ステアリル)メタクリレート等、またはこれらのメタクリル酸のエステルが挙げられる。
側鎖結晶性ポリマーとしては、α−オレフィン系ポリマー(結晶性ポリα−オレフィン)、アルキルアクリレート系ポリマー、アルキルメタクリレート系ポリマー、アルキルエチレンオキシド系ポリマー、ポリシロキサン系ポリマーおよびアクリルアミド系ポリマー等の側鎖結晶性ポリマーが挙げられる。
これらの中でも、特に好ましくは、結晶性ポリα−オレフィンである。結晶性ポリα−オレフィンはホモポリマーでも、エチレン、プロピレン等のオレフィンとの共重合体でもよい。また側鎖の炭素鎖は、C12、C14、C16のいずれかであることが好ましい。
具体的には、例えば、ポリアミド6(以下、PA6と呼ぶことがある)、ポリアミド66、ポリアミド12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、またはこれらを主成分とする重合体等が挙げられる。
上記成分1、成分2と相溶性に優れる点では、ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂が好ましい。このようなポリオレフィン系熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
この場合、芯部および鞘部の熱可塑性樹脂は、上記のような種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。
特に、好ましい熱可塑性樹脂の組合せは、芯部にポリオレフィン系の熱可塑性樹脂、鞘部にポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンから選択される熱可塑性樹脂を用いることである。
この場合、成分1、成分2および熱可塑性樹脂を溶融混練して得られるアロイ樹脂組成物を芯部の成分とし、鞘部の成分として、上記から選択される熱可塑性樹脂とした複合繊維であることが好ましい。
尚、芯鞘型複合繊維とする場合、単芯の芯鞘型としても多芯の多芯型(海島型)としてもよい。
複合方法については、例えば、以下が考えられる。
(1)成分1および成分2、熱可塑性樹脂の3種類を混練する(樹脂組成物化)
(2)成分1と熱可塑性樹脂を混練して得られる樹脂組成物および成分2と熱可塑性樹脂を混練して得られる樹脂組成物の2種類を繊維化する際にブレンドする
(3)芯部の成分に(2)で得られた2種類のアロイを多島状に配して繊維化する
芯鞘型複合繊維の場合、芯部に、成分1:成分2:熱可塑性樹脂を含有する際は、芯部が上記の割合となることが好ましい。
合糸の形態としては、(1)それぞれの合成繊維を引き揃える(2)それぞれの合成繊維をエア交絡等により混繊する(3)それぞれの合成繊維を合撚する等が好適に挙げられる。
芯部を形成する熱可塑性樹脂に成分1および成分2を、二軸混練機にて複合化させる。鞘部の熱可塑性樹脂を準備する。上記の2種の樹脂を各々、樹脂の融点以上、望ましくは融点より20℃以上の温度の押出機を用いて溶融する。溶融した樹脂を芯鞘形成する口金を通し、口金表面の孔より、所定の断面形状に樹脂を押出し、繊維化する。押出された繊維を冷風にて冷却して、油剤を付与し、巻き取る。巻き取った繊維に、熱を加えて延伸し、熱セットして、本発明の合成繊維を得る。尚、巻き取り速度は特に限定されないが、700m/min〜2000m/minであることが好ましい。
ベース樹脂:ポリプロピレン80質量%に、温調剤:1種または2種以上の結晶性ポリα−オレフィン(融点40℃タイプを成分1、融点29℃タイプを成分2として以下に記載する)20質量%の組成として、二軸混練機によりポリプロピレン8.0kg/hrを供給し、250℃にて溶融混練し、索状溶融物を水冷してペレタイザーによりペレット化してポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
<紡糸>
前記ポリプロピレン系樹脂組成物およびポリアミド6を主たる紡糸原料として溶融押出型複合紡糸機を用いて温度250℃で複合紡糸を行った。
紡糸に際しては、ポリプロピレン系樹脂組成物を芯部の成分、ポリアミド6が鞘部の成分となるように別々に溶融してから、芯鞘型紡糸用口金よりあわせて芯鞘の形態にして紡出し、冷却して、油剤を付与しつつ紡速800m/minにて捲き取った。その後50℃の熱ローラー上で3.0倍に延伸し、延伸ローラーにて140℃で熱セットした後、巻き上げ、84dtex/24fの合成繊維を得た。
<筒編み布帛の作製>
得られた合成繊維または複合糸を、筒編機(英光産業株式会社製CR−B、径3.5インチ、針数260本)にて筒編布帛を作製した。
<熱量分析:融解ピーク温度、結晶化ピーク温度、融解開始温度、結晶化開始温度>
示差走査熱量計(Diamond DSC:パーキンエルマージャパン社製)を用いて測定した。昇温、降温速度は10℃/minで統一した。温度条件は0℃〜60℃昇温、60℃で5分間保持、60℃〜0℃に降温、0℃で5分間保持しこれを1stスキャンとし、0℃〜60℃昇温、60℃で5分間保持、60℃〜0℃に降温、0℃で5分間保持したものを2ndスキャンとした。なお、融解ピーク温度、結晶化ピーク温度、融解開始温度、結晶化開始温度および融解熱量、結晶化熱量についてはJIS K 7121に準拠して算出した。
<温度調節機能評価>
10cm角の筒編布帛(試験品)を80℃に設定された熱風乾燥機内で1.0hr静置して、成分1および成分2を完全に溶融後、5℃で24hr静置し凝固させ成分1および成分2における熱履歴を統一した。熱電対型温度計を筒編布帛に包み、肌−衣服間温度である31℃にて1.0hr静置し、温度安定後、50℃に設定された乾燥機に移動した際の高温下、3℃以下に設定した断熱容器に移動した際の低温下での布帛内部の温度変化を確認した。
対照品としてポリアミド6の単独糸で作製した筒編布帛を用いて、試験品との温度差を求めた。得られたグラフから最大温度差の値および高温下に移動させてから20分後、低温下に移動させてから12分後までの温度差グラフから面積(図3の温度差グラフ:斜線部分の面積で比較)を算出し、これを評価の指標とした。
尚、最大温度差は、絶対値が、大きいほど、温度調節機能は優れている。
また温度差面積が大きいほど、温度調節機能は優れている。
尚、温度調節機能(高温下、低温下)は、以下の要領で、を評価した。
○:最大温度差の絶対値が0.5℃以上の場合
△:最大温度差の絶対値が0.4℃を超えて、0.5℃未満の場合
×:最大温度差の絶対値が0.4℃以下の場合
成分2として融点29℃タイプの結晶性ポリα−オレフィン、成分1として融点40℃タイプの結晶性ポリα−オレフィンを準備し、ポリプロピレンに対し各10質量%の組成で同時添加し、前記方法にて混練してポリプロピレン系樹脂組成物を得た。次いで、前記紡糸方法にて、この樹脂組成物を芯部に配して芯鞘比率(体積比)が67:33の芯鞘型複合繊維を得て、前記方法にて筒編み布帛を作製した。
成分1および成分2の物性は以下の通りである。
芯鞘比率(体積比)を50:50と変更する以外は実施例1と同様に芯鞘型複合繊維を得て、筒編み布帛を作製した。
成分2として、融点29℃タイプの結晶性ポリα−オレフィンをポリプロピレンに対し20質量%の組成で前記方法にて混練して樹脂組成物を得た。得られたポリプロピレン系樹脂組成物を、芯部に配する以外は実施例1と同様に芯鞘型複合繊維Aを得た。
次に、成分1として、融点40℃タイプの結晶性ポリα−オレフィンをポリプロピレンに対し20質量%の組成で前記方法にて混練して樹脂組成物を得た。得られたポリプロピレン系樹脂組成物を、芯部に配する以外は実施例1と同様に芯鞘型複合繊維Bを得た。
得られた芯鞘型複合繊維Aと芯鞘型複合繊維Bを、引き揃えて合糸し複合糸を得て、前記方法にて筒編み布帛を作製した。
融点29℃タイプの結晶性ポリα−オレフィンのみを、ポリプロピレンに対し20質量%の組成で前記方法にて混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、芯部に配する以外は実施例1と同様に芯鞘型複合繊維を得て、筒編み布帛を作製した。
融点40℃タイプの結晶性ポリα−オレフィンのみを、ポリプロピレンに対し20質量%の組成で前記方法にて混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、芯部に配する以外は実施例1と同様に芯鞘型複合繊維を得て、筒編み布帛を作製した。
ポリプロピレンを芯部に配する以外は実施例1と同様に芯鞘型複合繊維を得て、筒編み布帛を作製した。
84dtex/24fのポリアミド単独繊維を準備し、前記方法で筒編み布帛を作製した。
Claims (6)
- 成分1と成分2とを含む熱可塑性樹脂からなる合成繊維であって、成分1は融解開始温度が34℃以上、融解ピーク温度が50℃以下の範囲であり、成分2は結晶化開始温度が30℃未満、結晶化ピーク温度が5℃以上の範囲であることを特徴とする合成繊維。
- 成分1の融解熱量ΔHmが10〜150J/g、成分2の結晶化熱量ΔHcが10〜150J/gであり、50℃以下に観測される合成繊維の融解熱量ΔHmが1〜5J/g、50℃以下に観測される合成繊維の結晶化熱量ΔHcが1〜5J/gである請求項1記載の合成繊維。
- 示差走査熱量分析した際に得られる成分1の融解ピークおよび成分2の結晶化ピークの半値幅が10℃以下であることを特徴とする請求項1または2記載の合成繊維。
- 成分1は、側鎖炭素鎖がC18、C20、C22の少なくとも1つ以上からなる結晶性ポリα−オレフィンであり、成分2は、側鎖炭素鎖がC12、C14、C16の少なくとも1つ以上からなる結晶性ポリα−オレフィンであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の合成繊維。
- 成分1、成分2および熱可塑性樹脂の質量比率が、5:5:90〜20:20:60である請求項1〜4いずれか1項に記載の合成繊維。
- 融解開始温度が34℃以上、融解ピーク温度が50℃以下の範囲である成分1を含む熱可塑性樹脂からなる合成繊維と、結晶化開始温度が30℃未満、結晶化ピーク温度が5℃以上の範囲である成分2を含む熱可塑性樹脂からなる合成繊維とを合糸せしめたことを特徴とする複合糸。
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