JP2017119637A - 涙液分泌促進組成物 - Google Patents

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【課題】涙液の分泌を調整する薬剤を見出すこと。【解決手段】セロトニン5−HT3受容体の作動薬又は拮抗薬を有効成分として含有する、涙液分泌調整組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、眼科用組成物に関する。特に、涙液分泌促進組成物及び涙液分泌抑制組成物に関する。
ドライアイ症状は様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、近年注目されている要因の一つとして、パーソナルコンピュータ(PC)のディスプレイ画面(VDT)を見ながら行う作業(VDT作業)による眼への負荷がある。
IT技術の向上とインターネット基盤の充実に伴って、日常生活の中でPCを使用する機会は、飛躍的に増加している。米国Intel社が概算したところ、世界にはインターネットに接続したPCが約10億台あり、今やオフィスワーカーのほとんどがVDT(Visual Display Terminals)を見ながら仕事を行っている。そしてPCの使用頻度の増加に伴い、VDT作業が原因と考えられるドライアイ症状を訴える人も増加しており、先進工業国ではドライアイ症状が重大な健康問題として取り上げられ始めている。国内にもドライアイ患者が800万人以上いると言われており、ドライアイなどに伴う角結膜疾患治療剤の市場規模は近年さらに伸長している。VDT作業によって瞬き回数が通常の4分の1程度に減り、涙液の蒸発量が増えることが、ドライアイ症状の発症の一因と考えられている。
このドライアイ症状を緩和する方法として、人工涙液を点眼することにより不足した涙液を外部から補充する方法や、涙点に涙点プラグと呼ばれる栓を挿入して涙点を閉鎖する方法が多く用いられてきた。しかしながら、いずれの方法も一時的な対症療法に過ぎない。それゆえ、このような対症療法ではなく、涙液の分泌量を増加させることによって、眼精疲労、眼の乾燥、異物感又は不快感等の症状を根本的に改善する組成物が求められている。
涙液の分泌量を増加させる組成物として、2010年12月に参天製薬からP2Y2受容体作動薬であるジクアス(登録商標)が発売されている。この製剤は結膜上皮及び杯細胞膜上のP2Y2受容体に作用し、細胞内のカルシウム濃度を上昇させることにより水分及びムチンの分泌を促進する事で、ドライアイに対する効果を発揮する。この製剤は、人工涙液の点眼や涙点プラグの挿入等の従来の対症療法とは異なり、涙液分泌を促進することでドライアイの治療効果を発揮する点で、画期的な医薬品であるが、点眼剤であるため一日に複数回点眼する手間を要する。
また、その他の涙液分泌を促進する組成物として、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を有効成分として含有する涙液分泌促進及び角結膜障害治療剤(特許文献1)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害ペプチドを有効成分として含有する涙液分泌促進組成物(特許文献2)、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を有効成分として含有する涙液分泌促進組成物(特許文献3)、並びにキマーゼ阻害薬を有効成分として含有する涙液分泌促進剤(特許文献4)が開示されている。さらに、PAR-2(Protease-activated re
ceptor-2/プロテアーゼ活性化受容体2)を活性化させるペプチドに涙液分泌促進作用があることが開示されており(特許文献5,6)、今後新たな涙液分泌促進製剤の開発が期待される。
特開平10−218792号公報 特開2012−136440公報 特開2012−121827公報 特開2001−58958号公報 特開2001−181208号公報 特開2005−187482号公報
しかし、上記の特許文献は、脳内セロトニン活性と涙液分泌との関係については何ら開示していない。セロトニン5−HT受容体の作動薬又は拮抗薬と涙液分泌との関係については知られていなかった。
本発明の目的は、涙腺分泌に基づく疾患等の治療に用いることができる涙腺分泌を調整できる組成物を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、セロトニン5−HT受容体の作動薬又は拮抗薬を、特に経口で投与することによって、高い涙液分泌促進効果又は抑制効果を発揮し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
項1、セロトニン5−HT受容体の作動薬又は拮抗薬を有効成分として含有する、涙液分泌調整組成物。
項2、セロトニン5−HT受容体の作動薬を有効成分とする涙液分泌促進組成物である、項1に記載の組成物。
項3、セロトニン5−HT受容体の作動薬がSR 57227Aである、項2に記載の組成物。
項4、セロトニン5−HT受容体の拮抗薬を有効成分とする涙液分泌抑制組成物である、項1に記載の組成物。
項5、セロトニン5−HT受容体の拮抗薬がオンダセトロン又はその薬学的に許容されうる塩である、項4に記載の組成物。
項6、経口剤である、項1〜5のいずれか一項に記載の涙液分泌促進組成物。
項7、セロトニン5−HT受容体の作動薬を有効成分として含有する、角結膜障害の予防又は治療剤。
項8、角結膜障害がドライアイである項6に記載の予防又は治療剤。
項9、セロトニン5−HT受容体の拮抗薬を有効成分として含有する、流涙症の予防又は治療薬。
本発明のセロトニン5−HT受容体の作動薬又は拮抗薬を含有する涙液分泌調整組成物は、涙液分泌の調整をすることができる。例えば、涙液分泌促進効果を有するセロトニン5−HT受容体の作動薬を用いる場合、涙液分泌を促進し、維持ストレスによる涙液分泌量の減少を予防し得る。
トリプトファン欠乏食の涙液分泌量に対する効果。(A)血中5-HT濃度及び体重の変化。N=6, 平均±標準偏差、*** p < 0.001 vs day 0。(B)涙液量変化。N=6, 平均±標準偏差、*** p < 0.001 vs Control。 トリプトファン欠乏マウスへの5-HT投与の効果。N=6, 平均±標準偏差、*** p < 0.001 vs Vehicle。 セロトニン5−HT受容体の作動薬及び拮抗薬の投与の効果。(A)拮抗薬投与の涙腺重量及び涙液分泌量への効果。N=5, 平均±標準偏差、*** p < 0.001 vs Saline。(B)血中5−HT濃度低下条件下における、作動薬の投与の涙液分泌量への効果。作動薬はトリプトファン欠乏食への切り替えの1日前から投与を開始した。N=5, 平均±標準偏差、*** p < 0.001 vs Vehicle。(C)作動薬の投与の涙腺重量への効果。N=5, 平均±標準偏差、*** p < 0.001 vs Vehicle。(D)涙腺の組織学的変化。(E)オーファジーマーカーLC3-II のウェスタンブロット解析。 涙腺におけるセロトニン5−HT受容体作動薬の細胞内カルシウムイオン濃度([Ca2+]i)への影響(A)5-HT。(B)SR57227A。(C)Ca2+フリー及びセロトニン5−HT受容体拮抗薬の影響。(D)受容体におけるセロトニン5−HT受容体のサブタイプの発現解析。 正常マウススにおけるSR57227Aの涙液分泌亢進作用。N=5, 平均±標準偏差、* p < 0.05 vs 投与前(0)。 マウスストレス性ドライアイモデルにおけるSR57227Aの涙液分泌低下抑制作用。N=5, 平均±標準偏差、* p < 0.05 vs 溶媒対照。
本明細書において、「予防」とは、涙液の分泌量の減少若しくは増加を阻止、抑制、又は遅延すること、涙液の分泌量を維持すること、涙液の分泌量を増大若しくは減少させること、及び/又は、角膜及び/又は結膜の障害(以下、角結膜障害と称する)若しくは流涙症の発症を阻止、抑制、又は遅延することを意味する。
本明細書において、「治療」とは、涙液の分泌量の減少若しくは増大を阻止、抑制、又は遅延すること、涙液の分泌量を維持すること、涙液の分泌量を増大若しくは減少させること、及び/又は角結膜障害若しくは流涙症の症状を治癒、軽減、改善、又は抑制することを意味し「治療」には「予防」が含まれる。
本発明の一つの態様によれば、セロトニン5−HT受容体の作動薬を有効成分として含有する、涙液分泌促進組成物が提供される。
本発明の別の態様によれば、セロトニン5−HT受容体の拮抗薬をを有効成分として含有する、涙液分泌抑制組成物が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、セロトニン5−HT受容体の作動薬を有効成分として含有する、角結膜障害の予防又は治療剤が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、角結膜障害の予防若しくは治療剤又は涙液分泌促進
組成物の製造のためのセロトニン5−HT受容体の作動薬の使用が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、セロトニン5−HT受容体の拮抗薬を有効成分として含有する、流涙症の予防又は治療剤が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、流涙症の予防若しくは治療剤又は涙液分泌促進組成物の製造のためのセロトニン5−HT受容体の拮抗薬の使用が提供される。
角結膜障害としては、ドライアイ、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン
症候群、角結膜炎などが含まれ、好ましくはドライアイである。
角結膜障害としては、ドライアイ、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン
症候群、角結膜炎などが含まれ、好ましくはドライアイである。
流涙症(「なみだ目」ともいう)とは、目がうるむ感じや涙があふれ出る症状をいう。
セロトニン5−HT受容体は、中枢神経系及び末梢神経系で発現が確認できる、セロトニン受容体の1つのサブタイプである。セロトニン5−HT受容体は、イオンチャネル型の受容体であることが知られている。
「セロトニン5−HT受容体の作動薬」(「アゴニスト」ともいう)とは、セロトニン5−HT受容体に結合し、受容体を活性化させる化合物をいう。
「セロトニン5−HT受容体の拮抗薬」(「アンタゴニスト」ともいう)とは、セロトニン5−HT受容体に結合し、受容体を活性化を阻害する化合物をいう。
セロトニン5−HT受容体の作動薬又は拮抗薬は、セロトニン5−HT受容体以外の受容体に対する作用を有するもの、セロトニン5−HT受容体以外のセロトニン受容体には作用しない選択的なもののいずれをも含む。好ましくは、セロトニン5−HT受容体に選択的な作動薬又は拮抗薬である。
セロトニン5−HT受容体の作動薬としては、セロトニン、m−クロロフェニルビグアニド(m-Chlorophenylbiguanide)、2−メチル−5−ヒドロキシトリプタミン(2‐メチル‐5‐HT)(2-Methyl-5-hydroxytryptamine)、N−メチルキパジン(N-Methylquipazine)、1−フェニルビグアニド(1-Phenylbiguanide)、キパジン(Quipazine)、RS 56812((R)-N-(1-Azabicyclo[2.2.2]oct-3-yl)-2-(1-methyl-1H-indol-3-yl)-2-(1-methyl-1H-indol-3-yl)-2-oxoacetamide)、SR 57227(1-(6-Chloro-2-pyridinyl)-4-piperidinamine hydrochloride)などが例示される。これらを単独で又は2種以上混合して使用してもよい。
好ましいセロトニン5−HT受容体の作動薬としては、SR 57227またはその塩酸塩が挙げられる。
セロトニン5−HT受容体の拮抗薬としては、メトクロプラミド(特に、高用量での投与)、レンザプリド、オンダンセトロン、アロセトロン、メマンチンなどが例示される。これらを単独で又は2種以上混合して使用してもよい。
セロトニン5−HT受容体の作動薬又拮抗薬は薬学的に許容され得る塩であってもよく、そのような塩としては塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、グルタミン酸などの有機酸との酸付加塩であってもよい。作動薬又拮抗薬は市販品を入手してもよいし、又は公知の方法で製造することも可能である。
好ましいセロトニン5−HT受容体の作動薬としては、SR 57227またはその塩酸塩が挙げられる。
好ましいセロトニン5−HT受容体の拮抗薬としては、オンダンセトロが挙げられる。
本発明の予防若しくは治療剤又は医薬組成物は、必要に応じて薬学的担体と配合し、予防又は治療目的に応じて各種の投与形態を採用可能であり、経口投与、静脈内投与、経粘膜投与、皮下投与、筋肉内投与、眼局所投与などの各種の投与方法を適宜選択でき、これらの投与形態は、各々当業者に公知慣用の製剤方法により製造できる。本発明の予防若しくは治療剤又は医薬組成物は、好ましくは点眼剤以外の剤型で投与され、特に経口投与されることが好ましい。経口剤の場合、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、液剤(シロップ剤を含む、水剤、懸濁剤、乳剤、丸剤、エリキシル剤などの剤形から適宜選択でき、これらの製剤について、安定化、易吸収化、徐放化、易崩壊化、難崩壊化等の修飾を施すことも可能である。
薬学的担体には製剤素材として慣用の各種有機又は無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等として配合される。また、必要に応じて製剤には更に、賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定化剤、保存剤、溶剤、基剤、コーティング剤、矯味剤又は着色剤のような添加剤を使用してもよい。
添加剤は、一般に経口投与剤に使用されるものであれば特に限定されない。以下に使用し得る添加剤の具体例を例示する。
(1)賦形剤:デンプン類、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトール、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、トレハロース、キシリトール。
(2)結合剤:デンプン、セルロース、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、デキストリン。
(3)滑沢剤:ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ワックス類、ステアリン酸及びその塩類。
(4)安定化剤:アスコルビン酸、キレート剤、還元性物質、トコフェロール、亜硫酸水素ナトリウム。
(5)保存剤:安息香酸及びその塩類、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール。
(6)溶剤:精製水、生理食塩水、エタノール、グリセリン、植物油類。
(7)基剤:ワセリン、植物油類、タルク、マクロゴール。
(8)コーティング剤:白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース。
(9)矯味剤:白糖、ブドウ糖、サッカリン、キシリトール、アスコルビン酸、クエン酸、メントール。
(10)着色剤:水溶性食用色素。
本発明の製剤は、常法(例えば第16改正日本薬局方製剤総則に記載の方法)に従って製造することができる。
本発明の組成物が食品組成物である場合、セロトニン5−HT受容体の作動薬又は拮抗薬は涙液の分泌を調整する食品中の成分として含有される。食品は、特定保健用食品、機能性表示食品及び栄養機能食品等の保健機能食品、又は健康食品、及び食物サプリメントを含む一般食品であってよい。
本発明の予防若しくは治療剤又は組成物中のセロトニン5−HT受容体の作動薬又は拮抗薬の量は、対象の症状、年齢、剤形等により異なるが、経口投与する場合、被験者の体重1kg当たりに対して1日当たり0.01 mg/kg〜20mg/kg、好ましくは0.05 mg/kg〜10 mg/kgを、1日当たり1〜数回、好ましくは1〜3回に分けて服用する。1日に1回又は2回投与する場合には、1回の投与量が約0.5mg〜500mgであることが一般的である。
特に、1日1回の服用とすれば、点眼に比べて投与頻度が少なくて済み、効果を奏しつつ遵守が良好になる点で有利である。
投与期間は特に限定されないが、一定期間以上、例えば4日間以上、7日間以上、10日間以上、14日間以上、20日間以上、又は1ヶ月以上の長期の投与が、角結膜障害若しくは流涙症の予防又は治療により有用である。
以下、実施例及び試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこ
れらに限定されるものではない。
[実施例1]トリプトファン欠乏食
<方法>
動物
モデル動物として、8週齢の雌の C57BL/6マウス(CLEA Japanより購入)を用いた。実験は、慶應義塾大学医学部の動物実験倫理委員会の承認の下で行った。
動物は実験の1週間前に隔離及び順化を、温度23±2℃、湿度 60 ± 10%、12時間明暗サイクル(午前8時から午後8時)の条件下で、飼料及び水は自由に摂取させた。
トリプトファン欠乏食
標準食としてはAIN93G(オリエンタル酵母)の組成に基づく飼料を用いた。トリプトファン欠乏食としては、トリプトファン(Trp)を除去したAIN93Gを用いた。
順化期間中は標準食を与えて、その後トリプトファン欠乏食に切り替えた。対照(Control)は、トリプトファン欠乏食に切り替えずに標準食を与え続けた。
涙液分泌能測定
涙液分泌能をトリプトファン欠乏食を与えた7日間にわたり測定した。
マウスの左右の外眼角に綿糸(ZONE-QUICK(登録商標)、昭和薬品化工株式会社)を15秒間挿入し、綿糸が涙液の浸透により褐色変色した長さを、0.5mmの精度で測定した。左右眼の平均を個体の涙液分泌量とした。
血中5-HT濃度測定
腹大動脈から採決した血中の5-HT濃度を、HPLC法により測定した。
<結果>
結果を図1に示す。血中の5-HT濃度はトリプトファン欠乏食への切り替えから1日後に徐々に減少をし、7日目には切り替え前と比べて約70%減少した(図1A)。この間、涙液量も徐々に減少し、3日目から7日目にかけては切り替え前から約20%減少でプラトーに達した(図1B)。
[実施例2]
実施例1のトリプトファン欠乏食を摂取させたマウスに、5-HTを腹腔内注射した。トリプトファン欠乏食への切り替え後2日後に5-HTを腹腔内注射した。その後、5分間隔で涙液分泌量を測定した。
<結果>
結果を図2に示す。投与した5-HTの量に依存して、涙液分泌が促進された。促進効果は、投与後5〜10分の間に観察され、0.1及び1 mg/kg投与の場合に顕著な効果が観察された。
[実施例3]
マウスへのセロトニン5−HT受容体の作動薬及び拮抗薬の投与の効果を評価した。
対照として、セロトニン5−HT1a受容体の拮抗薬Way-100635、セロトニン5−HT2a受容体の拮抗薬及びセロトニン5−HT受容体の拮抗薬SB269970を用いた。
<方法>
セロトニン5−HT受容体の作動薬としてSR57227Aを用いた。作動薬の投与量は72 μg/kg/dayとした。
セロトニン5−HT受容体の拮抗薬としてオンダンステロンを用いた。セロトニン5−HT受容体の拮抗薬の対照として、セロトニン5−HT1a受容体の拮抗薬Way-100635、セロトニン5−HT2a受容体の拮抗薬及びセロトニン5−HT受容体の拮抗薬SB269970を用いた。拮抗薬の投与量は、120 μg/kg/dayとした。
作動薬及び拮抗薬の投与は、マウスの腹側皮下へ移植した浸透圧ポンプ(Alzet)を用いて毎時0.24μLとなるように、連続投与した。
ベヒクルとして、生理食塩水(saline)を用いた。
<結果>
結果を図3に示す。
図3Aに示すとように、オンダンステロンの投与により、涙液分泌量は顕著に減少した。このような減少はWay-100635、ケンタンセリン(Keanserin)及びSB269970の投与では見られなかった。涙液分泌量の減少に伴い、涙腺の重量の減少も観察された。
図3B及びCに示すように、実施例1の方法に従ってトリプトファン欠乏食を与えたマウスに作動薬の投与した場合、涙液分泌量の減少の回復が見られた。
図3Dに涙腺の組織学的変化を示す。オンダンステロンの投与により、涙腺の腺房細胞(acinar cells)の縮小を誘発することが観察された。トリプトファン欠乏食の投与の場合も同様の変化が観察された。作動薬の投与により、腺房細胞縮小はほぼ完全に回復した。
図3Eに、オートファジーのマーカーLC3-IIのウェスタンブロットの結果を示す。オンダンステロンの投与によりオートファジーマーカーは増加し、SR57227Aの投与によりオートファジーマーカーは通常レベルに保たれた。
[実施例4]
セロトニン5−HT受容体作動薬の涙腺における細胞内カルシウムイオン濃度([Ca2+]i)への影響を評価した。
<方法及び結果>
細胞内カルシウムイオン濃度測定
[Ca2+]iの測定は、Sprague-Dawleyラットから採取した涙腺を用いて、文献:Imada T, Nakamura S & Kitamura N et al. PLoS One 9, e106338 (2014).に記載の方法に準じて行った。
結果
図4Aに示すように、5-HT3(0.1〜10 μM)の添加により、涙腺の腺房細胞(acinar cells)における細胞内カルシウムイオン濃度([Ca2+]i)を上昇させる。本願発明者は、図4Bに示すようにSR57227Aの添加によっても、[Ca2+]iが上昇することを見出した。
図4Cに示すように、Ca2+フリー及びオンダンステロンの添加により[Ca2+]iの上昇が見られなくなったため、5-HT3受容体及びCa2+を介して涙液分泌が起きていると考えられる。
なお、Ca2+フリーは、通常の方法おけるsaline solution (140 mM NaCl, 5 mM KCl, 10 mM CaCl2, 1 mM MgCl2, 10 mM HEPES, 10 mM dextrose [pH 7.4])に替えて、CaCl2を含まない溶液を使用した。
[実施例5]
正常個体におけるセロトニン5−HT受容体作動薬の効果を検証した。
<方法>
標準食を摂取するマウスに、実施例2と同様にしてSR57227Aを0.1mg/kgの用量で単回投与を行った。投与経路は腹腔内とした。
投与前及び投与後5分間隔で30分後まで涙液測定を行った。
<結果>
結果を図5に示す。セロトニン5−HT受容体作動薬の投与10分後に、投与前(0)と比較し有意に涙液分泌量が増加した。その後減少し転じ、投与30分後には投与前の値に復した。
[実施例6]
マウスストレス性ドライアイモデルを用いて、セロトニン5−HT受容体作動薬のドライアイ予防効果を評価した。
<方法>
低下処置(ストレス処置)
文献:Nakamura, S., Tanaka, J., Imada, T.et al. Journal of Functional Foods 10, 346-354 (2014)の記載に従って、雌の8週齢C57BL/6マウスに拘束ストレスを与えた。マウスを、1日4時間、呼吸/排泄可能な処置を施したポリプロピレン製遠沈管(容量約60ml)内に拘束する。拘束中はマウス顔面に送風(風速0.5~1.0 m/s)を行った。拘束処置時間以外はケージ内で餌と飲料は自由摂取とした。
薬剤投与
セロトニン5−HT受容体の作動薬(SR57227A)をストレス処置前日、ストレス処置直前に10mg/kgの用量で投与を行った。投与経路は腹腔内とした。
涙液測定
実施例1と同様にして、ストレス処置前、投与期間中の適時実施した。
<結果及び考察>
結果を図6に示す。ストレス処置により溶媒対照では、涙液分泌量が約1/4に減少したのに対し、SR57227A投与により、その低下が溶媒対照に比較し有意に抑制された。この結果は、セロトニン5−HT受容体作動薬の投与により、ドライアイ予防効果(涙液分泌低下を抑制)が期待できることを示している。
以上の結果は、セロトニン5−HT受容体の作動薬又は拮抗薬は、ヒトで摂取可能な用量において、涙液分泌能を調整する作用を有することを示唆するものである。特に、セロトニン5−HT受容体の作動薬本発明の薬剤を経口投与した被験動物のドライアイ症状を有効に抑制し得ることが確認された。

Claims (9)

  1. セロトニン5−HT受容体の作動薬又は拮抗薬を有効成分として含有する、涙液分泌調整組成物。
  2. セロトニン5−HT受容体の作動薬を有効成分とする涙液分泌促進組成物である、請求項1に記載の組成物。
  3. セロトニン5−HT受容体の作動薬がSR 57227Aである、請求項2に記載の組成物。
  4. セロトニン5−HT受容体の拮抗薬を有効成分とする涙液分泌抑制組成物である、請求項1に記載の組成物。
  5. セロトニン5−HT受容体の拮抗薬がオンダセトロン又はその薬学的に許容されうる塩である、請求項4に記載の組成物。
  6. 経口剤である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の涙液分泌促進組成物。
  7. セロトニン5−HT受容体の作動薬を有効成分として含有する、角結膜障害の予防又は治療剤。
  8. 角結膜障害がドライアイである請求項6に記載の予防又は治療剤。
  9. セロトニン5−HT受容体の拮抗薬を有効成分として含有する、流涙症の予防又は治療薬。
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US20080261890A1 (en) * 2004-03-19 2008-10-23 Ousler George W Use of neurotransmitters and neuropeptides for the treatment of dry eye diseases and related conditions
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