JP2017119333A - エンドミルとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明によるダイヤモンド焼結体ボールエンドミル1は、工具本体2の先端に略半球状の刃部3を設けた。刃部3の表面は、粒径3μmを超え〜36μm以下のダイヤモンド粒子またはcBN粒子と結合剤とを混ぜて高温高圧で焼結した焼結体を備えた。しかも、焼結体の表面を砥石で研磨加工することでダイヤモンド粒子またはcBN粒子の凸部と結合剤の凹部を研磨加工した。研磨加工した凸部の粒子を切れ刃とした。
【選択図】図2
Description
硬脆材や高硬度鋼材等からなる被削材をエンドミルで切削加工する場合、高硬度なダイヤモンド粒子と結合剤のCo等を高温高圧で焼結したダイヤモンド焼結体(以下簡便のためにPCDという)からなるPCDエンドミルが提案されている。
そして、このボールエンドミルによって超硬合金等の被削材を切削するには、ボールエンドミルを高速回転させながら切り込んで横送りさせ、刃部のダイヤモンド粒子からなる極めて微少な凸部が被削材に切り込むことで切削加工を行うことができる。
本発明によるエンドミルは、ダイヤモンド粒子またはcBN粒子の粒径を3μmを超え〜36μm以下の範囲に設定したので粒子を結合剤で保持する部分の表面積が大きくなることで粒子の保持力が大きくなり、被削材を切削加工する場合に切込み量を大きく設定しても粒子の脱落を抑制し工具寿命を向上できる。しかも、粒子の表面は研磨加工されているので略平滑になった粒子で切れ刃を構成するため高精度で安定した加工が行える。
本発明では、焼結体の凹部を形成する結合剤を化学エッチングや電解エッチングやブラスト処理等で除去して更に凹んだ凹陥部を形成したことで、凹陥部を通した切屑排出性が良好で切屑詰まりや工具への溶着を防ぎ、しかも凹陥部をクーラントが流通して粒子に浸透するので切削抵抗が小さく工具寿命や切削加工面の安定性を向上できる。
そのため、切刃部の粒子で断続的に被削材を切削加工でき、凹溝部を通した切屑排出性が良好で切屑詰まりや工具への溶着を防ぎ、しかも凹溝部をクーラントが流通して粒子に浸透するのでクーラントの潤滑性が向上し切削抵抗が小さくなり工具寿命や切削加工面の安定性を向上できる。
しかも、本発明はダイヤモンド粒子やcBN粒子とCo等の結合剤の焼結体を研磨加工してあるため、刃部の表面に突出するダイヤモンド粒子やcBN粒子の先端を研磨すると共にエンドミルの表面に付着する高熱で劣化したダイヤモンド粒子やcBN粒子、酸化物等の不純物を研磨によって除去したため、被削材の加工面の面粗さが小さく均一になり加工精度が一層向上する。
更に、PCDやPcBNの表面の面粗さが向上するために切削加工によって生じる被削材の切屑が付着することを妨げるので被削材の加工精度が一層向上するという利点が得られる。
まず、第一実施形態によるPCDボールエンドミルについて図1乃至図5に沿って詳述する。
図1及び図2において、本実施形態によるPCDボールエンドミル1は、工具本体2の先端部が例えば略半球状の球体面を有するPCD4からなる刃部3として形成されている。刃部3はその外径Dが例えば1mmからなり、実際には半球形状より大きく球体に近い球体面形状を有している。そのため、刃部3は工具本体2の軸状先端より拡径された外径形状を有している。
また、工具本体2として超硬合金以外にPCDやPcBNを用いることができ、ソリッド工具とすることもできる。工具本体2はその中心の回転軸線O回りに回転可能とされている。
本実施形態で用いるPCD4のダイヤモンド粒子の粒径は3μmを超え〜36μm以下の範囲に設定し、好ましくは10μm〜30μmに設定するとよい。この範囲であれば粒子を結合剤で保持する表面積が大きく粒子の脱落を抑制し、切り込みを大きくすることができ、粒子の脱落を防ぐことで工具寿命を向上させることができる。
なお、粒径が3μm以下では表面を研磨する時や切削加工時にダイヤモンド粒子が脱落し易く、36μmより大きいとすくい面の間隔が大きくなって切れ味が低下し、被削材の切削による高精度な加工面粗さを達成できない。
研磨前のPCD4からなる刃部3は、図3(b)に示すように多数のダイヤモンド粒子の凸部(粒子)5と結合剤からなる凹部6とからなっていて、ダイヤモンド粒子の凸部5は不規則な突出形状を有している。凹部6は放電加工によって結合剤が抜け落ちることで形成され、それによって多数のダイヤモンド粒子が残って凸部5を形成し、この凸部5が切刃として被削材を切削加工する。
なお、砥石による刃部3のPCD4の研磨厚さ(深さ)は例えば3μm〜20μmの範囲とするが、ダイヤモンド粒子の粒径によって増減調整可能である。また、砥石に代えて、バレルやラップ盤(鋳鉄の基板にダイヤモンドパウダーを塗布したスカイフ盤)等によってPCD4の表面を研磨してもよい。
研磨により、不規則な突出をするダイヤモンド粒子の突出量の大きいものやワイヤ放電加工によって熱で生じた変質層等を除去できるためダイヤモンド粒子本来の切削性能を発揮できる。
図5は砥石で研磨した実施形態によるPCD4の要部断面図を示すものであり、粒径3μmを超え〜36μm以下のダイヤモンド粒子は表面が砥石で研磨されて平滑化され、結合剤に埋もれた部分の表面積が比較的大きく高強度で保持される。ダイヤモンド粒子の結合剤から露出する部分は研磨によって小さくなるので凸部5の粒子の先端が平滑になる。
本実施形態によるPCDボールエンドミル1の被削材として超硬合金を含む硬脆材料、焼き入れ鋼、鋼材等を加工できる。
しかも、粒径3μmを超え〜36μm以下の比較的大きいダイヤモンド粒子を切れ刃として用いたため、結合剤に埋もれた部分の表面積が大きく研磨時や切削時に粒子が脱落しにくい。その効果として工具寿命を向上できる。
また、刃部3の被削材に対する切り込み深さが0.5μm程度の浅いものに限定されることなく、3μm〜5μmに至るまで深い切り込み切削を行えるという効果を奏する。
次に本発明の他の実施形態や変形例について説明するが、上述した実施形態の部分や部品と同一または同様なものについては同一の符号を用いて説明を行うものとする。
図6に示す本変形例によるPCDボールエンドミル1において、砥石による表面研磨の後に、刃部3を溶剤、例えば化学エッチング処理として硝酸水溶液に浸すことでPCD4の表面の結合剤を除去する。これによって図6(a)に示すように、ダイヤモンド粒子の凸部5間の凹部6で結合剤が除去されて結合剤のあった部分に凹陥部6aが形成されダイヤモンド粒子を更に露出させることができる。なお、図6(b)は溶剤に接触させる前のPCD4、同図(c)は凹陥部6aを形成したPCD4を示すものである。
本変形例によれば、切削加工時に凹陥部6aが切屑排出溝として機能して生成する切屑の排出性が向上する。また、凹陥部6aにはクーラントが流れて切削に用いるダイヤモンド粒子の凸部5に流入するため潤滑性も向上する。これら切屑排出性と潤滑性によってダイヤモンド粒子の凸部5による切削抵抗を抑制して粒子の脱落を抑制でき、工具寿命を向上できる。なお、PCD4の表面の結合剤の除去は化学エッチングに限らず、電解エッチングやブラスト処理等でも除去することができる。
切刃部13は被削材を切削加工するPCD4の部分であり、凹溝部14はこのPCD4を切除して切刃部13より凹ませた非加工面である。凹溝部14は砥石で研削して切除して形成してもよいし、レーザ加工や放電加工等で切除して形成してもよい。凹溝部14にはクーラントが流れるためクーラントが切刃部13の粒子の隙間に流入して粒子に浸透し易い。
しかも、PCDボールエンドミル12は断続切削であるため、第一実施形態による刃部3の略半球状のPCD4による全面切削で得られる鏡面加工と比較すると加工面の面粗さは多少低下するが、断続切削であるため切削負荷は小さくなる。そのため、切削抵抗を抑制して粒子の脱落を抑え、凹溝部14による切屑排出性が高く切屑の刃部3への溶着を抑制できるため、工具寿命の向上と切削加工面の安定切削を得られる。
本第三実施形態によるPCDボールエンドミル16では、略半球状の刃部3を回転させながら横送り切削すると周方向に切刃部17と凹溝部18が交互に切削加工面に当接するため断続切削加工を行う。しかも、凹溝部18に貯留されるクーラントが回転によって切刃部17の粒子に浸透するので切削抵抗を抑制して切削効率を向上する等、上述の第二実施形態と同様な作用効果を奏する。
第四実施形態によるPCDスクエアエンドミル20は、図9(a)、(b)に示すように刃部21が略円柱状に形成され、その先端面21aに向けて拡径するように側面21bが形成されている。しかも、刃部21は上述した第一実施形態と同様に先端面21aと側面21bに粒径3μmを超え〜36μm以下のダイヤモンド粒子と結合剤とを混合して高温高圧で焼結した焼結体において粒子を突出させた凸部5と凹部6の表面を砥石で研磨した構成を有している。
従って、本実施形態によるPCDスクエアエンドミル20によれば、被削材に対して刃部21を横送り切削することで鏡面加工の金型を形成することができる。
図10(a)、(b)に示すPCDスクエアエンドミル23の刃部24は基本的に図9に示す第四実施形態による刃部21と同一の外形形状と構成を有しており、刃部24の先端面24aと側面24bにはダイヤモンド粒子による凸部5と結合剤による凹部6のPCD4の表面を砥石で研磨加工した切刃部25が形成されている。しかも先端面24aの切刃部25において、中心軸線Oを中心として放射状に小幅で帯状の凹溝部26が形成されている。同図(a)に示す略円筒状の側面24bには、先端面24aの凹溝部26が中心軸線Oと略平行に基端側に延びて形成されている。
本実施形態によれば、刃部24を回転させながら横送りして断続切削することで金型の加工面を形成することができる。
本実施形態においても上述した第五実施形態や第六実施形態と同様な作用効果を奏する。
なお、上述の各実施形態のPCDラジアスエンドミル32、33、34においてR面取り部35に代えて平面状の面取り部を形成してもよい。
また、本発明の各実施形態では刃部3の外径Dが0.1mm〜2.0mmのものが使用されるが、本発明は上記範囲を外れた適宜の外径を有するエンドミルに採用可能である。
また、本発明によるエンドミルは、表面を砥石等で研磨した焼結体としてダイヤモンド粒子やcBN粒子が結合剤で保持されたものや、更に溶剤でPCD4の表面の結合剤が除去されて凹陥部6aが形成されたもの等のいずれでも採用できる。
2 工具本体
3、21、24、28 刃部
4 PCD
5 凸部
6 凹部
13、17、25 切刃部
14、18、26 凹溝部
20、23、27 PCDスクエアエンドミル
32、33、34 PCDラジアスエンドミル
35 R面取り部
本発明によるエンドミルは、ダイヤモンド粒子またはcBN粒子の粒径を3μmを超え〜36μm以下の範囲に設定したので粒子を結合剤で保持する部分の表面積が大きくなることで粒子の保持力が大きくなり、被削材を切削加工する場合に切込み量を大きく設定しても粒子の脱落を抑制し工具寿命を向上できる。しかも、粒子の表面は研磨加工されているので略平滑になった粒子で切れ刃を構成するため高精度で安定した加工が行える。
また、前記刃部の表面には、前記焼結体の凹部から更に凹んだ凹陥部が形成されていてもよい。
本発明では、焼結体の凹部を形成する結合剤を化学エッチングや電解エッチングやブラスト処理等で除去して更に凹んだ凹陥部を形成したことで、凹陥部を通した切屑排出性が良好で切屑詰まりや工具への溶着を防ぎ、しかも凹陥部をクーラントが流通して粒子に浸透するので切削抵抗が小さく工具寿命や切削加工面の安定性を向上できる。
そのため、切刃部の粒子で断続的に被削材を切削加工でき、凹溝部を通した切屑排出性が良好で切屑詰まりや工具への溶着を防ぎ、しかも凹溝部をクーラントが流通して粒子に浸透するのでクーラントの潤滑性が向上し切削抵抗が小さくなり工具寿命や切削加工面の安定性を向上できる。
また、本発明によるエンドミルの製造方法は、粒径3μmを超え〜36μm以下のダイヤモンド粒子またはcBN粒子の凸部からなる複数の切れ刃と結合剤からなる複数の凹部とを配列させた焼結体の刃部は表面が略半球状または平面状に加工され、前記刃部の表面に付着した熱影響層を含む不純物を研磨加工によって除去することで前記ダイヤモンド粒子またはcBN粒子を露出させ、前記ダイヤモンド粒子またはcBN粒子を切れ刃としたことを特徴とする。
しかも、本発明はダイヤモンド粒子やcBN粒子とCo等の結合剤の焼結体を研磨加工してあるため、刃部の表面に突出するダイヤモンド粒子やcBN粒子の先端を研磨すると共にエンドミルの表面に付着する高熱で劣化したダイヤモンド粒子やcBN粒子、酸化物等の不純物を研磨によって除去したため、被削材の加工面の面粗さが小さく均一になり加工精度が一層向上する。
更に、PCDやPcBNの表面の面粗さが向上するために切削加工によって生じる被削材の切屑が付着することを妨げるので被削材の加工精度が一層向上するという利点が得られる。
Claims (3)
- 工具本体の先端に設けた刃部の表面は、粒径3μmを超え〜36μm以下のダイヤモンド粒子またはcBN粒子と結合剤による焼結体の凸部を研磨加工してなり、前記研磨加工した粒子を切れ刃としたことを特徴とするエンドミル。
- 前記刃部の表面は、前記焼結体の結合剤を除去して凹陥部を形成している請求項1に記載されたエンドミル。
- 前記刃部の表面には切刃部と凹溝部とが形成されており、前記切刃部は前記焼結体の凸部を研磨加工した粒子の切れ刃を有し、前記凹溝部は切刃部より凹んだ非加工面である請求項1または2に記載されたエンドミル。
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