JP2017118755A - モータ駆動制御装置およびヒートポンプ機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】低負荷時から高負荷時までできるだけ低損失で安定してモータを駆動する。
【解決手段】モータ駆動制御装置2において、インバータ回路20は、直流電圧を交流電圧に変換して圧縮機3用の三相モータ4に供給する。制御部35は、インバータ回路20にパルス幅変調信号を供給する。制御部35は、第1の制御モードAと、第1の制御モードよりも高負荷で実行される第2の制御モードCとを少なくとも含む複数の制御モードを有する。第1の制御モードAにおいて、制御部35は、三相のうちの二相にのみパルス幅変調信号を供給する二相変調を行う。第2の制御モードCにおいて、制御部35は、三相全てにパルス幅変調信号を供給する三相変調を行うとともに、パルス幅変調周期を決定するためのキャリア周波数を第2の制御モードAの場合よりも高くする。
【選択図】図1
【解決手段】モータ駆動制御装置2において、インバータ回路20は、直流電圧を交流電圧に変換して圧縮機3用の三相モータ4に供給する。制御部35は、インバータ回路20にパルス幅変調信号を供給する。制御部35は、第1の制御モードAと、第1の制御モードよりも高負荷で実行される第2の制御モードCとを少なくとも含む複数の制御モードを有する。第1の制御モードAにおいて、制御部35は、三相のうちの二相にのみパルス幅変調信号を供給する二相変調を行う。第2の制御モードCにおいて、制御部35は、三相全てにパルス幅変調信号を供給する三相変調を行うとともに、パルス幅変調周期を決定するためのキャリア周波数を第2の制御モードAの場合よりも高くする。
【選択図】図1
Description
この発明は、三相モータを駆動制御するモータ駆動制御装置に関し、たとえば、圧縮機用の三相モータの駆動制御に好適に用いられるものである。さらに、この発明は、ヒートポンプ機器に関する。
PWM(Pulse Width Modulation)インバータによって駆動される交流モータの安定性、特に低速域の安定性を高める技術として、特開昭61−203893号公報(特許文献1)に記載の技術が知られている。具体的にこの文献の制御方法では、交流モータの軽負荷時にはキャリア周波数を低く設定し、負荷の大きさに応じてキャリア周波数が高くなるようにPWMインバータが制御される。
一方、特開2007−110780号公報(特許文献2)は、二相変調制御モードと三相変調制御モードとを切替えてPWMインバータを運転する方法を開示する。ここで、二相運転制御モードとは、スイッチング素子動作時の発熱を可及的に低減してインバータの熱破壊を回避する等の目的から、交流モータのU端子、V端子及びW端子に繋がる3つの信号相の内の二相のみを使用することにより、発熱量を減少させつつPWM信号を生成するものである。二相変調は、交流モータにおいて、U端子、V端子及びW端子がスター結線され、各相のうちの2つの相における電流値が決まると残りの1つの相における電流値も決まるという原理に基づいている。
圧縮機用のモータは、近年、希土類磁石を用いることによって小型化が進んだため、モータの機械的時定数と電気的時定数とが近づいてきている。このため、モータ電流が不安定になりやすくなり、結果としてモータ電流の振動または過電流が生じやすくなっている。特に、空気調和機などのヒートポンプ機器(冷凍サイクル機器)に設けられた圧縮機では、モータの負荷が変動しやすく、さらに実際の制御では、モータの停止と起動が繰り返されるために、モータ電流の安定制御は特に重要な課題となっている。
他の問題点として、空気調和機などのヒートポンプ機器の場合には、省エネルギーのために、モータ制御用のインバータの損失をいかに低減するかが重要な課題である。さらに、圧縮機の圧力容器内に組込まれたモータ特有の課題として漏洩電流の増加という問題がある。
この発明は、上記の問題点を考慮してなされたものであり、その目的は、低負荷時から高負荷時までできるだけ低損失で安定してモータを駆動することが可能な圧縮機用のモータ駆動制御装置を提供することである。
この発明は一局面において、モータ駆動制御装置であって、インバータと制御部とを備える。インバータは、直流電圧を交流電圧に変換して圧縮機用の三相モータに供給する、パルス幅変調方式のインバータである。制御部は、インバータにパルス幅変調信号を供給する。制御部は、少なくとも第1の制御モードおよび第2の制御モードを含む複数の制御モードを有する。第2の制御モードは、第1の制御モードよりも高負荷で実行される。第1の制御モードにおいて、制御部は、三相のうちの二相にのみパルス幅変調信号を供給する二相変調を行う。第2の制御モードにおいて、制御部は、三相全てにパルス幅変調信号を供給する三相変調を行うとともに、パルス幅変調周期を決定するためのキャリア周波数を第2の制御モードの場合よりも高くする。
好ましくは、モータ駆動制御装置は、単相交流電圧を直流電圧に変換し、変換された直流電圧をインバータ回路に供給するコンバータ回路をさらに備える。コンバータ回路は、制御部の制御に従って、出力直流電圧を昇圧可能である。制御部は、上記の複数の制御モードとして、第2の制御モードよりも高負荷で実行される第3の制御モードをさらに有する。第3の制御モードにおいて、制御部は、三相変調を行うとともに、キャリア周波数を第2の制御モードの場合と等しく設定し、かつコンバータ回路の出力直流電圧を第1および第2の制御モードの場合よりも高くする。
好ましくは、制御部は、三相モータに供給するモータ電流の振幅値および振幅の変動幅の少なくとも一方に基づいて、上記の複数の制御モードのうちで実行する制御モードを変更する。
この発明は他の局面において、ヒートポンプ機器であって、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、圧縮機とを備える。凝縮器は冷媒を凝縮させる。膨張弁は凝縮器を通過した冷媒を膨張させる。蒸発器は膨張弁を通過した冷媒を蒸発させる。圧縮機は、蒸発器を通過した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を凝縮器に吐出する。圧縮機は、圧縮機構を駆動する三相モータと、三相モータを駆動制御する上記のモータ駆動制御装置とを含む。
好ましくは、モータ駆動制御装置の制御部は、凝縮器の温度に基づいて、複数の制御モードのうちで実行する制御モードを変更する。
この発明によれば、低負荷時から高負荷時までできるだけ低損失で安定してモータを駆動することができる。
以下、実施形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
<第1の実施形態>
[モータ駆動制御装置の全体構成]
図1は、第1の実施形態によるモータ駆動制御装置の構成を示すブロック図である。図1を参照してモータ駆動制御装置2は、DCブラシレスモータなどの三相モータ4の駆動制御に用いられる。三相モータ4は、圧縮機3(コンプレッサ)用のモータに好適に用いられる。図1に示すように、モータ駆動制御装置2は、コンバータ回路70と、インバータ回路20と、電圧検出回路31と、コンバータ回路用のゲート信号生成回路32と、電流電圧検出回路33と、インバータ回路用のゲート信号生成回路34と、制御用マイコン35とを含む。以下、各構成要素について説明する。
[モータ駆動制御装置の全体構成]
図1は、第1の実施形態によるモータ駆動制御装置の構成を示すブロック図である。図1を参照してモータ駆動制御装置2は、DCブラシレスモータなどの三相モータ4の駆動制御に用いられる。三相モータ4は、圧縮機3(コンプレッサ)用のモータに好適に用いられる。図1に示すように、モータ駆動制御装置2は、コンバータ回路70と、インバータ回路20と、電圧検出回路31と、コンバータ回路用のゲート信号生成回路32と、電流電圧検出回路33と、インバータ回路用のゲート信号生成回路34と、制御用マイコン35とを含む。以下、各構成要素について説明する。
(1. コンバータ回路)
コンバータ回路70は、交流電源1から供給された単相交流電圧を直流電圧に変換する。コンバータ回路70は、力率改善機能および昇圧機能を有する昇圧チョッパ型のコンバータとして構成されている。なお、コンバータ回路70の昇圧機能は第2の実施形態で利用されるものであるので、第1の実施形態の場合、コンバータ回路70は昇圧機能を有していなくてもよい。
コンバータ回路70は、交流電源1から供給された単相交流電圧を直流電圧に変換する。コンバータ回路70は、力率改善機能および昇圧機能を有する昇圧チョッパ型のコンバータとして構成されている。なお、コンバータ回路70の昇圧機能は第2の実施形態で利用されるものであるので、第1の実施形態の場合、コンバータ回路70は昇圧機能を有していなくてもよい。
より詳細には、コンバータ回路70は、リアクトル11と、倍電圧整流回路13と、ダイオードブリッジ回路12と、スイッチング素子Q7とを含む。図1では、スイッチング素子Q7としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられているが、バイポーラトランジスタまたはパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Filed Effect Transistor)など他の種類の半導体スイッチング素子であっても構わない。
倍電圧整流回路13は、正側ノードNpと負側ノードNnとの間に互いに直列に逆バイアス方向に接続されたダイオードD7,D8と、ダイオードD7,D8の全体と並列にかつ互いに直列に接続されたコンデンサC1,C2とを含む。ダイオードD7,D8の接続ノードNaと、コンデンサC1,C2の接続ノードNbとの間に、交流電源1およびリアクトル11が直列に接続されている。
ダイオードブリッジ回路12は、4個のダイオードD11,D12,D13,D14を含む。接続ノードNaにはダイオードD11のアノードとダイオードD12のカソードとが接続される。接続ノードNbにはダイオードD13のアノードとダイオードD14のカソードとが接続される。ダイオードD11,D13のカソードは共通のノードNcを介してスイッチング素子Q7の一端(IGBTのコレクタ)に接続される。ダイオードD12,D14のアノードは共通のノードNdを介してスイッチング素子Q7の他端(IGBTのエミッタ)に接続される。したがって、スイッチング素子Q7がオン状態のときは交流電源1の出力はリアクトル11のみに供給されるのに対し、スイッチング素子Q7がオフ状態のときは交流電源1の出力は、リアクトル11と倍電圧整流回路13との両方に供給される。
(2. インバータ回路)
インバータ回路20は、コンバータ回路70から出力された直流電圧Vdcを、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)方式によって三相交流電圧に変換する。インバータ回路20から出力されたU相、V相、W相の三相交流電圧は、三相モータ4のU相、V相、W相の電機子巻線にそれぞれ印加される。図1に示すように三相モータ4の電機子巻線はスター結線(Y結線)されている。
インバータ回路20は、コンバータ回路70から出力された直流電圧Vdcを、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)方式によって三相交流電圧に変換する。インバータ回路20から出力されたU相、V相、W相の三相交流電圧は、三相モータ4のU相、V相、W相の電機子巻線にそれぞれ印加される。図1に示すように三相モータ4の電機子巻線はスター結線(Y結線)されている。
図1の場合、インバータ回路20は三相ブリッジ回路として構成される。具体的にインバータ回路20は、スイッチング素子Q1〜Q6と、ダイオードD1〜D6と、3シャント方式で三相電流を検出するための抵抗素子R1〜R3とを含む。図1では、スイッチング素子Q1〜Q6としてIGBTが用いられているが、IGBTに代えてバイポーラトランジスタまたはパワーMOSFETなどを用いてもよい。半導体スイッチング素子の種類は特に限定されない。
スイッチング素子Q1,Q4と抵抗素子R1とは、U相用アーム(arms)を構成し、正側ノードNpと負側ノードNnとの間に互いに直列に接続される。正側ノードNpは、コンバータ回路70の正側出力ノードに接続され、負側ノードNnは、コンバータ回路70の負側出力ノードに接続される。スイッチング素子Q1,Q4の接続ノードNuは、三相モータ4のU相巻線に接続される。
同様に、スイッチング素子Q2,Q5と抵抗素子R2とは、V相用アームを構成し、正側ノードNpと負側ノードNnとの間に互いに直列かつU相用アームと並列に接続される。スイッチング素子Q2,Q5の接続ノードNvは、三相モータ4のV相巻線に接続される。スイッチング素子Q3,Q6と抵抗素子R3とは、W相用アームを構成し、正側ノードNpと負側ノードNnとの間に互いに直列かつU相用アームおよびV相用アームと並列に接続される。スイッチング素子Q3,Q6の接続ノードNwは、三相モータ4のW相巻線に接続される。
ダイオードD1〜D6は、スイッチング素子Q1〜Q6とそれぞれ逆並列に(各トランジスタのコレクタが各ダイオードのカソード側となるように)接続される。ダイオードD1〜D6の各々は、対応するトランジスタがオフ状態のときに回生電流(還流電流)を流すために設けられている。
なお、3シャント方式に代えて、1シャント方式によって三相電流を検出してもよい。もしくは、インバータ回路20から三相モータ4に至る三相配線の各々に電流トランスなどの電流センサを設けてもよい。
(3. 電圧検出回路)
電圧検出回路31は、交流電源1から出力された(すなわち、コンバータ70に入力された)単相交流電圧Vacを検出する。単相交流電圧Vacは、電圧検出回路31に設けられた分圧回路またはトランスによってデータ処理に適した電圧レベルに変換される。レベル変換された単相交流電圧Vacは、電流電圧検出回路33に設けられたA/D変換器(Analog to Digital Converter)によってデジタルデータに変換され、制御用マイコン35に取り込まれる。
電圧検出回路31は、交流電源1から出力された(すなわち、コンバータ70に入力された)単相交流電圧Vacを検出する。単相交流電圧Vacは、電圧検出回路31に設けられた分圧回路またはトランスによってデータ処理に適した電圧レベルに変換される。レベル変換された単相交流電圧Vacは、電流電圧検出回路33に設けられたA/D変換器(Analog to Digital Converter)によってデジタルデータに変換され、制御用マイコン35に取り込まれる。
(4. コンバータ回路用のゲート信号生成回路)
ゲート信号生成回路32は、制御用マイコン35から出力されたパルス信号Scを増幅してスイッチング素子Q7のゲートに出力する。パルス信号Scによって決まるスイッチング素子Q7の通流率δ(オン時間をTonとし、オフ時間をToffとしたとき、δ=Ton/(Ton+Toff))に応じてコンバータ回路70の出力電圧が変化する。
ゲート信号生成回路32は、制御用マイコン35から出力されたパルス信号Scを増幅してスイッチング素子Q7のゲートに出力する。パルス信号Scによって決まるスイッチング素子Q7の通流率δ(オン時間をTonとし、オフ時間をToffとしたとき、δ=Ton/(Ton+Toff))に応じてコンバータ回路70の出力電圧が変化する。
(5. 電流電圧検出回路)
電流電圧検出回路33は、コンバータ回路70から出力された直流電圧Vdcと、U相電流Iuと、V相電流Ivとを検出する。直流電圧Vdcは、電流電圧検出回路33に設けられた分圧回路またはトランスによってデータ処理に適した電圧レベルに変換される。レベル変換された直流電圧Vdcは、電流電圧検出回路33に設けられたA/D変換器によってデジタルデータに変換された後に、制御用マイコン35に取り込まれる。
電流電圧検出回路33は、コンバータ回路70から出力された直流電圧Vdcと、U相電流Iuと、V相電流Ivとを検出する。直流電圧Vdcは、電流電圧検出回路33に設けられた分圧回路またはトランスによってデータ処理に適した電圧レベルに変換される。レベル変換された直流電圧Vdcは、電流電圧検出回路33に設けられたA/D変換器によってデジタルデータに変換された後に、制御用マイコン35に取り込まれる。
U相電流IuおよびV相電流Ivは、インバータ回路20に設けられた抵抗素子R1,R2によってそれぞれ電圧信号に変換され、これらの電圧信号が電流電圧検出回路33に入力される。電流電圧検出回路33は、これらの電圧信号を内蔵アンプによって増幅した後に内蔵のA/D変換器によってデジタル信号に変換する。デジタル変換後の電圧信号が制御用マイコン35に取り込まれる。なお、U相電流Iu、V相電流Iv、およびW相電流Iwの合計は、キルヒホッフの電流則によって0になるので、U相、V相、W相のうちいずれか2つの相の電流を検出すれば残りの1相の電流は計算によって求めることができる。図1では、U相電流IuおよびV相電流Ivを検出する例を示している。
(6.インバータ回路用のゲート信号生成回路)
ゲート信号生成回路34は、制御用マイコンから出力されたU相のPWM信号Suに基づいてスイッチング素子Q1,Q4のゲート信号を生成する。同様に、ゲート信号生成回路34は、制御用マイコンから出力されたV相のPWM信号Svに基づいてスイッチング素子Q2,Q5のゲート信号を生成する。ゲート信号生成回路34は、制御用マイコンから出力されたW相のPWM信号Swに基づいてスイッチング素子Q3,Q6のゲート信号を生成する。
ゲート信号生成回路34は、制御用マイコンから出力されたU相のPWM信号Suに基づいてスイッチング素子Q1,Q4のゲート信号を生成する。同様に、ゲート信号生成回路34は、制御用マイコンから出力されたV相のPWM信号Svに基づいてスイッチング素子Q2,Q5のゲート信号を生成する。ゲート信号生成回路34は、制御用マイコンから出力されたW相のPWM信号Swに基づいてスイッチング素子Q3,Q6のゲート信号を生成する。
本実施形態の場合には、U相用のPWM信号Suがハイレベル(Hレベル)の場合は、上アームのスイッチング素子Q1がオンであり、下アームのスイッチング素子Q4がオフであることを意味する。逆に、U相用のPWM信号Suがローレベル(Lレベル)の場合は、上アームのスイッチング素子Q1がオフであり、下アームのスイッチング素子Q4がオンであることを意味する。望ましくは、HレベルとLレベルの切替わり時には両スイッチング素子ともにオフとなるデッドタイムが設けられる。V相用のPWM信号Sv、W相用のPWM信号Swについても同様である。
(7. 制御用マイコン)
制御用マイコン35は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、インターフェース回路、およびその他の周辺回路を含む。制御用マイコン35は、インバータ回路20およびコンバータ回路70の動作を制御する制御部として機能する。制御用マイコン35に代えて、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)などで構成された専用の回路を設けてもよい。
制御用マイコン35は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、インターフェース回路、およびその他の周辺回路を含む。制御用マイコン35は、インバータ回路20およびコンバータ回路70の動作を制御する制御部として機能する。制御用マイコン35に代えて、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)などで構成された専用の回路を設けてもよい。
図2は、図1の制御用マイコンの機能ブロック図である。図2を参照して、制御用マイコン35は、運転指令部40、コンバータ制御部41、およびインバータ制御部42として機能する。図2の各機能は、メモリに格納されたプログラムがCPUによって実行されることによって実現される。
(7.1 運転指令部)
運転指令部40は、三相モータ4の運転開始指令および運転停止指令、ならびに速度制御を行うために三相モータ4の角速度指令値ωcomをインバータ制御部42に出力する。さらに、運転指令部40は、三相モータ4の安定駆動およびスイッチング損失などの低減のために、モータの負荷に応じて、キャリア周波数Fcarの変更および変調モードMm(二相変調または三相変調)の切替えを行う。運転指令部40はこのための指令値をインバータ制御部42に出力する。
運転指令部40は、三相モータ4の運転開始指令および運転停止指令、ならびに速度制御を行うために三相モータ4の角速度指令値ωcomをインバータ制御部42に出力する。さらに、運転指令部40は、三相モータ4の安定駆動およびスイッチング損失などの低減のために、モータの負荷に応じて、キャリア周波数Fcarの変更および変調モードMm(二相変調または三相変調)の切替えを行う。運転指令部40はこのための指令値をインバータ制御部42に出力する。
一般に、キャリア周波数が低いほどインバータ回路20を構成する各スイッチング素子Q1〜Q6の損失が減少するが、モータの動作の安定性は低減する。たとえば、キャリア周波数が比較的低いときに負荷トルクが増大すると、モータ電流振幅が増加したり、増減を繰り返したりする。逆に、キャリア周波数が高いほどインバータ回路20を構成する各スイッチング素子Q1〜Q6の損失が増大するが、モータの動作はより安定になる。たとえば、キャリア周波数が比較的高いときに負荷トルクが増大したとしても、モータ電流の振幅の増加または変動を抑制することができる。そこで、運転指令部40は、負荷トルクに応じて、キャリア周波数Fcarを変更する。
また、変調モードMmには、二相変調と三相変調とがある。二相変調とは、三相モータ4のU相、V相、W相のうちのいずれか2相にのみ電流をインバータ回路20から供給するものである。三相モータ4においてU相巻線、V相巻線、およびW相巻線はスター結線されているので、いずれか2相にのみ電流を供給することによって他の相における電流も必然的に決定される。三相変調は、通常のインバータ回路20の駆動制御方法であり、三相モータ4の全相にインバータ回路20から電流を供給する。二相変調と三相変調とを比較した場合、二相変調のほうが三相変調よりも各スイッチング素子Q1〜Q6の損失が減少するが、モータ動作の安定性は低減する。
キャリア周波数および変調モードは、圧縮機3の漏洩電流の大きさにも関係する。以下、具体的に説明する。
図3は、圧縮機の構成を模式的に示す断面図である。図3を参照して、圧縮機3は、圧力容器50と、圧力容器50の内部に設けられた三相モータ4および圧縮部52とを含む。圧縮部52は、たとえば、スクロール式または斜板式など種々の方式であってもよい。三相モータ4の回転軸51と圧縮部52の回転軸とが直結される。図3の場合、圧縮部52の潤滑のために油53が用いられる。冷媒54は、配管56から圧力容器50の内部に流入し、圧縮部52によって圧縮された冷媒55が配管を通って外部に吐出される。
上記の圧縮機3の構成によれば、三相モータ4のモータ巻線は、冷媒54,55を介して圧力容器と交流的に接続されることになる。特に、近年のオゾン層を破壊しない代替品の冷媒の場合には、従来品に比べて誘電率が大きいために、漏洩電流が問題になる。漏洩電流の大きさは、キャリア周波数が高い程増加する。さらに、二相変調の場合よりも三相変調の場合のほうが、漏洩電流が大きい。
以上の理由から、本実施形態のモータ駆動制御装置2では、モータの負荷トルクの大きさに応じて、キャリア周波数Fcarおよび変調モードMm(二相変調または三相変調)が制御される。具体的な制御方法については、図4〜図6を参照して後述する。
さらに、運転指令部40は、コンバータ回路70において昇圧動作を行う場合に、コンバータ回路70によって生成される直流電圧の指令値Vcomdcをコンバータ制御部41に出力する。詳細については第2の実施形態において説明する。
(7.2 コンバータ制御部)
コンバータ制御部41は、交流電圧Vacの検出値に基づいて交流電源1から出力された単相交流電圧のゼロクロス点を検出する。コンバータ制御部41は、検出された電源電圧波形のゼロクロス点から所定時間の間(交流の半サイクルごとに1回)、スイッチング素子Q7をオン状態にすることによってリアクトル11に強制的に電流を流す。これによって、力率を改善することができる。コンバータ回路70において昇圧動作を行う場合には(第2の実施形態)、コンバータ制御部41は、直流電圧Vdcの検出値が指令値Vcomdcに等しくなるようにスイッチング素子Q7の通流率(パルス信号Scのオン時間および周期)を調整する。
コンバータ制御部41は、交流電圧Vacの検出値に基づいて交流電源1から出力された単相交流電圧のゼロクロス点を検出する。コンバータ制御部41は、検出された電源電圧波形のゼロクロス点から所定時間の間(交流の半サイクルごとに1回)、スイッチング素子Q7をオン状態にすることによってリアクトル11に強制的に電流を流す。これによって、力率を改善することができる。コンバータ回路70において昇圧動作を行う場合には(第2の実施形態)、コンバータ制御部41は、直流電圧Vdcの検出値が指令値Vcomdcに等しくなるようにスイッチング素子Q7の通流率(パルス信号Scのオン時間および周期)を調整する。
(7.3 インバータ制御部)
インバータ制御部42は、コンバータ回路70から出力された直流電圧Vdcの検出値、U相電流Iuの検出値、V相電流Ivの検出値に基づいて、角速度指令値ωcomで三相モータ4が回転するように、U相、V相、W相の電圧指令値であるPWM信号Su,Sv,Swを生成して出力する。
インバータ制御部42は、コンバータ回路70から出力された直流電圧Vdcの検出値、U相電流Iuの検出値、V相電流Ivの検出値に基づいて、角速度指令値ωcomで三相モータ4が回転するように、U相、V相、W相の電圧指令値であるPWM信号Su,Sv,Swを生成して出力する。
具体的な回転速度制御方法に種々の方法がある。たとえば、特開2001−112287号公報(特許文献3)に記載の方法によれば、U相およびV相の電流検出値に基づいて電流と電圧の位相差を検出し、検出した位相差が角速度指令値ωcomに応じて決まる目標位相差に等しくなるように、インバータ回路20が出力すべき三相電圧の指令値(一般的には、正弦波パターン)が決定される。決定された各相の電圧指令値と、キャリア周波数を有する三角波とを比較することによって、PWM信号Su,Sv,Swが生成される。コンバータ回路70から昇圧された直流電圧Vdcが出力される場合には(第2の実施形態)、直流電圧Vdcの大きさに応じて三角波の振幅を変化させる。
他の方法として、ベクトル制御技術を用いてPWM信号Su,Sv,Swを生成してもよい。この場合、現在のロータ角度θおよび角速度ωの情報を得るために図1に示すようにロータの回転位置を検出する位置センサPSが設けられる。あるいは、位置センサPSを設けないセンサレス方式の場合には、U相電流IuおよびV相電流Ivの検出値に基づいて、現在のロータ角度θおよび角速度ωが推定される。
[キャリア周波数Fcarおよび変調モードMmの制御方法]
以下、モータの負荷トルクの大きさに応じてキャリア周波数Fcarおよび変調モードMmを制御する方法について説明する。
以下、モータの負荷トルクの大きさに応じてキャリア周波数Fcarおよび変調モードMmを制御する方法について説明する。
図4は、モータの負荷レベルと変調モードおよびキャリア周波数の制御との関係を表形式で示す図である。図4では、モータの負荷トルクを高(H:High)、中(M:Middle)、低(L:Low)の3段階に分け、キャリア周波数Fcarを高(H)と低(L)の2段階に分けた場合の制御方法について示している。
負荷トルクのおよその大きさは、モータ電流の実測値とモータ電圧指令値とから電力を計算し、計算した電力をモータの回転速度(周波数)で除算することによって求めることができる。より簡便には、図5および図6で後述するように、モータ電流の振幅値および/またはモータ電流振幅の変動幅に基づいて、キャリア周波数Fcarおよび変調モードMmを制御することができる。以下、各負荷レベル(L,M,H)に応じた制御方法を具体的に説明する。
(1. 負荷トルクが低レベル(L)の場合)
図1、図2および図4を参照して、負荷トルクが低レベルの場合は、損失の低減のために、運転指令部40は、変調モードMmを二相変調とし、キャリア周波数Fcarを低レベルにする。以下、この場合を制御モードAと称する。これによって、インバータ回路20を構成するスイッチング素子Q1〜Q6での損失を低減することができるとともに、漏洩電流による損失を低減することができる。
図1、図2および図4を参照して、負荷トルクが低レベルの場合は、損失の低減のために、運転指令部40は、変調モードMmを二相変調とし、キャリア周波数Fcarを低レベルにする。以下、この場合を制御モードAと称する。これによって、インバータ回路20を構成するスイッチング素子Q1〜Q6での損失を低減することができるとともに、漏洩電流による損失を低減することができる。
(2. 負荷トルクが中レベル(M)の場合)
負荷トルクが中レベルの場合、運転指令部40は、変調モードMmを三相変調とし、キャリア周波数Fcarを低レベルとする。以下、この場合を制御モードBと称する。制御モードBでは、制御モードAの場合に比べてスイッチング損失および漏洩電流による損失は増大するが、三相モータ4をより安定に運転することができる。圧縮機3の始動時には、制御モードBが用いられる。
負荷トルクが中レベルの場合、運転指令部40は、変調モードMmを三相変調とし、キャリア周波数Fcarを低レベルとする。以下、この場合を制御モードBと称する。制御モードBでは、制御モードAの場合に比べてスイッチング損失および漏洩電流による損失は増大するが、三相モータ4をより安定に運転することができる。圧縮機3の始動時には、制御モードBが用いられる。
(3. 負荷トルクが高レベル(H)の場合)
負荷トルクが高レベルの場合、運転指令部40は、変調モードMmを三相変調とし、キャリア周波数Fcarを高レベルとする。以下、この場合を制御モードCと称する。制御モードCでは、制御モードBの場合に比べて損失および漏洩電流は増大するが、三相モータ4をより安定に運転することができる。
負荷トルクが高レベルの場合、運転指令部40は、変調モードMmを三相変調とし、キャリア周波数Fcarを高レベルとする。以下、この場合を制御モードCと称する。制御モードCでは、制御モードBの場合に比べて損失および漏洩電流は増大するが、三相モータ4をより安定に運転することができる。
キャリア周波数Fcarをさらに多段階に分けてもよい。この場合、キャリア周波数の段階数に応じて負荷トルクの段階数を増加させる。もしくは、負荷トルクの増加に伴ってキャリア周波数を連続的に増加させるようにしてもよい。
[モータ電流に基づくインバータ回路の駆動制御]
負荷トルクが増大したために三相モータの動作が不安定になると、モータ電流振幅が増加したり、増減を繰り返したりするようになる。そこで、モータ電流の振幅値および/またはモータ電流振幅の変動幅に基づいて、キャリア周波数Fcarおよび変調モードMmを切替えるように制御することができる。以下、図面を参照して説明する。
負荷トルクが増大したために三相モータの動作が不安定になると、モータ電流振幅が増加したり、増減を繰り返したりするようになる。そこで、モータ電流の振幅値および/またはモータ電流振幅の変動幅に基づいて、キャリア周波数Fcarおよび変調モードMmを切替えるように制御することができる。以下、図面を参照して説明する。
図5は、第1の実施形態においてインバータ回路の制御手順の一例を示すフローチャートである。図5では、モータ電流の振幅変動幅に基づいて、制御モードを変更する例が示されている。ここで、振幅変動幅とは、現時点までの所定周期(たとえば、10周期)の間での振幅の最大値と最小値との差をいうものとする。
図1、図2および図5を参照して、運転指令部40は、圧縮機3の起動時において(ステップS100でYES)、インバータ回路20を制御モードB(三相変調、低キャリア周波数)で駆動制御する(ステップS110)。
圧縮機3の運転中に負荷トルクが増大したためにモータ電流の振幅の変動幅ΔIが閾値Δ1よりも大きくなった場合には(ステップS120でYES)、運転指令部40は、モータ電流の安定化のために始動時の制御モードBを制御モードC(三相変調、高キャリア周波数)に切替えてインバータ回路20を制御する(ステップS130)。逆に、圧縮機3の運転中に負荷トルクが減少したためにモータ電流の振幅の変動幅ΔIが閾値Δ2(Δ2はΔ1よりも小さい正数)よりも小さくなった場合には(ステップS140でYES)、運転指令部40は、損失の低減のために始動時の制御モードBを制御モードA(二相変調、低キャリア周波数)に切替えてインバータ回路20を制御する(ステップS150)。
上記の制御手順は、始動時以外の場合も同様に用いることができる。具体的に、圧縮機3の運転中に負荷トルクが増大したためにモータ電流の振幅の変動幅ΔIが閾値Δ1よりも大きくなった場合には(ステップS120でYES)、運転指令部40は、モータ電流の安定化のために、現在の制御モードが制御モードBの場合には制御モードCに切替え、現在の制御モードが制御モードAの場合には制御モードBに切替える(ステップS130)。逆に、圧縮機3の運転中に負荷トルクが減少したためにモータ電流の振幅の変動幅ΔIが閾値Δ2よりも小さくなった場合には(ステップS140でYES)、運転指令部40は、損失の低減のために、現在の制御モードが制御モードCの場合には制御モードBに切替え、現在の制御モードが制御モードBの場合には制御モードAに切替える(ステップS150)。以下、圧縮機3を停止するまで(ステップS160でYESとなるまで)、上記のステップS120〜S150が繰り返される。
図6は、第1の実施形態においてインバータ回路の制御手順の他の例を示すフローチャートである。図6では、モータ電流の振幅値に基づいて、制御モードを変更する例が示されている。図6のフローチャートは、ステップS120,S140に代えてステップS120A,S140Aがそれぞれ実行される点で図4のフローチャートと異なる。
具体的に、ステップS120Aでは、運転指令部40は、モータ電流の振幅値Iが閾値I1よりも大きいか否かを判定する。この結果、モータ電流の振幅値Iが閾値I1よりも大きい場合には(ステップS120AでYES)、運転指令部40は、モータ電流の安定化のために、現在の制御モードが制御モードBの場合には制御モードCに切替え、現在の制御モードが制御モードAの場合には制御モードBに切替える(ステップS130)。
ステップS140Aでは、運転指令部40は、モータ電流の振幅値Iが閾値I2(I2は、I1より小さい正数)よりも小さいか否かを判定する。この結果、モータ電流の振幅値Iが閾値I2よりも小さい場合には(ステップS140AでYES)、運転指令部40は、損失の低減のために、現在の制御モードが制御モードCの場合には制御モードBに切替え、現在の制御モードが制御モードBの場合には制御モードAに切替える(ステップS150)。図6のその他の点は図5の場合と同様であるので、説明を繰返さない。
図5の手順によるインバータ回路20の制御と図6の手順によるインバータ回路20の制御とを組み合わせてもよい。すなわち、制御モードA,B,Cの切替えは、モータ電流の振幅変動幅に基づいて行ってもよく、モータ電流の振幅値に基づいて行ってもよい。
[三相モータ起動時のモータ電流の測定]
図7は、三相モータの起動時のモータ電流の測定例を示すフローチャートである。図7(A)のグラフは、前述の制御モードB(三相変調、低キャリア周波数)の場合における三相モータ4の起動時のモータ電流の測定例を示しており、図7(B)のグラフは、前述の制御モードC(三相変調、高キャリア周波数)の場合における三相モータ4の起動時のモータ電流の測定例を示している。キャリア周波数以外の三相モータ4の駆動制御条件は同じである。図7(A)の場合には、モータ起動後、十数秒経過した時点で、モータ電流の振幅値が過電流設定値に達したために、モータの運転が停止されている。一方、図7(A)よりも高キャリア周波数でインバータ回路20を制御している図7(B)の場合には、モータ電流振幅が過電流設定値に達することなく、三相モータ4を安定的に運転できることが分かる。
図7は、三相モータの起動時のモータ電流の測定例を示すフローチャートである。図7(A)のグラフは、前述の制御モードB(三相変調、低キャリア周波数)の場合における三相モータ4の起動時のモータ電流の測定例を示しており、図7(B)のグラフは、前述の制御モードC(三相変調、高キャリア周波数)の場合における三相モータ4の起動時のモータ電流の測定例を示している。キャリア周波数以外の三相モータ4の駆動制御条件は同じである。図7(A)の場合には、モータ起動後、十数秒経過した時点で、モータ電流の振幅値が過電流設定値に達したために、モータの運転が停止されている。一方、図7(A)よりも高キャリア周波数でインバータ回路20を制御している図7(B)の場合には、モータ電流振幅が過電流設定値に達することなく、三相モータ4を安定的に運転できることが分かる。
[効果]
以上のとおり、第1の実施形態のモータ駆動制御装置によれば、三相モータ4を安定に駆動できる低負荷時には、損失の少ない二相変調および低キャリア周波数でインバータ回路20を動作させる。一方、高負荷時には、三相変調および高キャリア周波数でインバータ回路20を動作させる。これによって、低負荷時から高負荷時までできるだけ低損失で安定してモータを駆動することができる。
以上のとおり、第1の実施形態のモータ駆動制御装置によれば、三相モータ4を安定に駆動できる低負荷時には、損失の少ない二相変調および低キャリア周波数でインバータ回路20を動作させる。一方、高負荷時には、三相変調および高キャリア周波数でインバータ回路20を動作させる。これによって、低負荷時から高負荷時までできるだけ低損失で安定してモータを駆動することができる。
<第2の実施形態>
[直流電圧Vdcの大きさの制御について]
第2の実施形態では、図1のコンバータ回路70の昇圧機能を用いることによって、コンバータ回路70から出力する直流電圧Vdcの大きさを、負荷トルクの大きさに応じて変化させる場合について説明する。以下に示すように、直流電圧Vdcの大きいほど三相モータ4の安定性を高めることができる。
[直流電圧Vdcの大きさの制御について]
第2の実施形態では、図1のコンバータ回路70の昇圧機能を用いることによって、コンバータ回路70から出力する直流電圧Vdcの大きさを、負荷トルクの大きさに応じて変化させる場合について説明する。以下に示すように、直流電圧Vdcの大きいほど三相モータ4の安定性を高めることができる。
図8は、三相モータの電気回路モデル図である。図8に示すように、三相モータ4の各相は、巻線のインダクタンス成分(Lu,Lv,Lw)と、巻線の抵抗成分(不図示)と、誘起電圧を表す電圧源(Eu,Ev,Ew)とが直列に接続されたものと考えることができる。各インダクタンス成分の大きさは等しく、その値をLとする。抵抗成分は、インダクタンス成分Lによるインピーダンスに比べて無視できるものとする。
図8ではさらに、三相モータ4の電気回路モデル図とともに三相モータ4に接続されたインバータ回路20の回路図も示している。インバータ回路20において、負側ノードNnの電位を基準電位(0V)とし、接続ノードNu,Nv,Nwの電位をそれぞれVu,Vv,Vwとする。さらに、接続ノードNu,Nv,Nwから三相モータ4の方向に流れる相電流をそれぞれIu,Iv,Iwとする。
図9は、モータの各相の電圧指令値と図8の各部の電圧波形とモータ電流との関係の一例を示す図である。U相の電圧指令値Vcomu、V相の電圧指令値Vcomv、およびW相の電圧指令値Vcomwは一般的には正弦波パターンである。図9では、U相電圧指令値Vcomuの電気角が90度付近の場合の波形を取り出して示している。この場合、V相電圧指令Vcomv値の電気角は約210度となり、W相電圧指令値Vcomwの電気角は約330度となり、これらの電圧指令値Vcomv,Vcomwは負の値を有し、互いにほぼ等しい。
PWM信号Su,Sv,Swは、電圧指令値Vcomu,Vcomv,Vcomwと三角波TWとを比較することによって得られる。具体的に図9において、時刻t2から時刻t3までと、時刻t6から時刻t7までは、三角波TWのほうが電圧指令値Vcomuよりも大きいのでU相のPWM信号SuはLレベルとなる。この結果、図1のスイッチング素子Q1がオフ状態となり、スイッチング素子Q4がオン状態となるので、接続ノードNuの電位Vuは0になる。図9のそれ以外の時間帯では、U相のPWM信号SuはHレベルとなるので、スイッチング素子Q1がオン状態となり、スイッチング素子Q4がオフ状態となり、これにより、接続ノードNuの電位Vuは入力直流電圧Vdcに等しくなる。
同様に、図9において時刻t1から時刻t4までと時刻t5から時刻t8までは、三角波TWのほうが電圧指令値Vcomv,Vcomwよりも大きいのでV相およびW相のPWM信号Sv,SwはLレベルとなる。この結果、図1のスイッチング素子Q2,Q3がオフ状態となり、スイッチング素子Q5,Q6がオン状態となるので、接続ノードNv,Nwの電位Vv,Vwは0になる。図9のそれ以外の時間帯では、V相およびW相のPWM信号Sv,SwはHレベルとなるので、スイッチング素子Q2,Q3がオン状態となり、スイッチング素子Q5,Q6がオフ状態となり、これにより、接続ノードNv,Nwの電位Vv、Vwは入力直流電圧Vdcに等しくなる。
以上により、図9の場合、時刻t1から時刻t2まで、時刻t3から時刻t4まで、時刻t5から時刻t6まで、および時刻t7から時刻t8までの各時間帯で、接続ノードNu,Nv間にVdcの電圧が印加され、接続ノードNw,Vu間に−Vdcの電圧が印加される。したがって、これらの時間帯では、インバータ回路20から出力され、三相モータ4のU相巻線を通り、中性点でV相巻線とW相巻線に分岐するモータ電流i(=Iu=−Iv−Iw)が流れる。モータ電流iの増加率di/dtは、三相モータ4の誘起電圧をeとすると、(Vdc−e)/Lによって近似的に表される。すなわち、インバータ回路20への入力直流電圧Vdcが大きいほど、モータ電流iの変化率が増大する。一方、図9のその他の時間帯では、接続ノードNu,Nv,Nw間に印加される電圧は0になる。
電圧指令値Vcomu,Vcomv,Vcomwは、キャリア周波数に対応する周期ごとに更新されるので、一般にキャリア周波数が高いほど制御性が増す。さらに、三相モータ4の負荷が急変したために、電圧指令値を大幅に変更しなればならないような場合には、入力直流電圧Vdcを大きく設定したほうが制御性の点で望ましい。なぜなら、直流電圧Vdcが大きくなるにつれてPWM信号による電圧パルスごとのモータ電流の変化率(di/dt)が増加するので、電圧指令値への追随性がよくなり、この結果、安定的にモータを動作させることができるからである。
ただし、入力直流電圧Vdcが増加するとスイッチング損失が増大するので、負荷トルクが比較的小さい場合は、入力直流電圧Vdcは比較的低く設定したほうが望ましい。入力直流電圧Vdcの大きさは、圧縮機の漏洩電流の大きさにはあまり影響しない。
以上の理由から、三相モータ4の負荷トルクに応じて、直流電圧Vdcの大きさが制御される。以下、具体的な制御方法について説明する。
[キャリア周波数Fcarおよび変調モードMmの制御方法]
図10は、モータの負荷レベルと、変調モード、キャリア周波数、および直流電圧の制御との関係を表形式で示す図である。
図10は、モータの負荷レベルと、変調モード、キャリア周波数、および直流電圧の制御との関係を表形式で示す図である。
図10の表では、第1の実施形態(図4)の場合と比較して、コンバータ回路70から出力されてインバータ回路20に入力される直流電圧Vdcの制御の項目が追加されている。図10では、直流電圧Vdcの電圧レベルは、低レベル(L)と高レベル(H)の2段階に分けられているが、より多段階に分類してもよい。負荷の大きさに応じて直流電圧Vdcの大きさを連続的に変化させてもよい。
図10の制御モードA,B,Cの場合は、図4に示した第1の実施形態の制御モードA,B,Cの場合と同じである。これらの制御モードA,B,Cでは、直流電圧Vdcの電圧レベルは低レベル(L)に設定されている。三相モータ4の負荷トルクの大きさが、制御モードCの場合よりもさらに大きい場合(以下、超高レベル(V−H)と称する)、図2の運転指令部によって直流電圧Vdcが高レベル(H)に変更される。以下、この場合を制御モードDと称する。
図10のその他の点は図4の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
[モータ電流に基づくインバータ回路の駆動制御]
図11は、第2の実施形態においてモータの制御手順の一例を示すフローチャートである。図11では、モータ電流の振幅変動幅に基づいて、制御モードを変更する例が示されている。図11のフローチャートは、ステップS130,S150がステップS130A,S150Aにそれぞれ変更されている点で、第1の実施形態の図5のフローチャートと異なる。
図11は、第2の実施形態においてモータの制御手順の一例を示すフローチャートである。図11では、モータ電流の振幅変動幅に基づいて、制御モードを変更する例が示されている。図11のフローチャートは、ステップS130,S150がステップS130A,S150Aにそれぞれ変更されている点で、第1の実施形態の図5のフローチャートと異なる。
ステップS130Aでは、現在の制御モードが制御モードCである場合が追加されている。具体的に、圧縮機3の運転中に負荷トルクが増大したためにモータ電流の振幅の変動幅ΔIが閾値Δ1よりも大きくなった場合には(ステップS120でYES)、運転指令部40は、モータ電流の安定化のために制御モードを変更する。すなわち、運転指令部40は、現在の制御モードが制御モードCの場合は制御モードDに切替え、現在の制御モードが制御モードBの場合には制御モードCに切替え、現在の制御モードが制御モードAの場合には制御モードBに切替える(ステップS130A)。
ステップS150Aでは、現在の制御モードが制御モードDである場合が追加されている。具体的に、圧縮機3の運転中に負荷トルクが減少したためにモータ電流の振幅の変動幅ΔIが閾値Δ2(Δ2はΔ1よりも小さい正数)よりも小さくなった場合には(ステップS140でYES)、運転指令部40は、損失の低減のために制御モードを変更する。すなわち、運転指令部40は、現在の制御モードが制御モードDの場合には制御モードCに切替え、現在の制御モードが制御モードCの場合には制御モードBに切替え、現在の制御モードが制御モードBの場合には制御モードAに切替える(ステップS150A)。
図11のその他の点は図5の場合と同様であるので、同一または相当するステップには同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
図12は、第2の実施形態においてモータの制御手順の他の例を示すフローチャートである。図12では、モータ電流の振幅値に基づいて、制御モードを変更する例が示されている。図12のフローチャートは、ステップS130,S150がステップS130A,S150Aにそれぞれ変更されている点で、第1の実施形態の図6のフローチャートと異なる。
ステップS130Aでは、現在の制御モードが制御モードCの場合が追加されている。具体的に、圧縮機3の運転中に負荷トルクが増大したためにモータ電流の振幅値Iが閾値I1よりも大きくなった場合には(ステップS120AでYES)、運転指令部40は、モータ電流の安定化のために制御モードを変更する。すなわち、運転指令部40は、現在の制御モードが制御モードCの場合は制御モードDに切替え、現在の制御モードが制御モードBの場合には制御モードCに切替え、現在の制御モードが制御モードAの場合には制御モードBに切替える(ステップS130A)。
ステップS150Aでは、現在の制御モードが制御モードDの場合が追加されている。具体的に、圧縮機3の運転中に負荷トルクが減少したためにモータ電流の振幅値Iが閾値I2(I2はI1よりも小さい正数)よりも小さくなった場合には(ステップS140AでYES)、運転指令部40は、損失の低減のために制御モードを変更する。すなわち、運転指令部40は、現在の制御モードが制御モードDの場合には制御モードCに切替え、現在の制御モードが制御モードCの場合には制御モードBに切替え、現在の制御モードが制御モードBの場合には制御モードAに切替える(ステップS150A)。
図12のその他の点は図6の場合と同様であるので、同一または相当するステップには同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
[効果]
以上のとおり、第2の実施形態のモータ駆動制御装置によれば、三相モータ4を安定に駆動できる低負荷時には、損失の少ない二相変調、低キャリア周波数、および低直流電圧Vdcでインバータ回路20を動作させる。一方、高負荷時には、三相変調、高キャリア周波数、および高直流電圧Vdcでインバータ回路20を動作させる。これによって、低負荷時から高負荷時までできるだけ低損失で安定してモータを駆動することができる。
以上のとおり、第2の実施形態のモータ駆動制御装置によれば、三相モータ4を安定に駆動できる低負荷時には、損失の少ない二相変調、低キャリア周波数、および低直流電圧Vdcでインバータ回路20を動作させる。一方、高負荷時には、三相変調、高キャリア周波数、および高直流電圧Vdcでインバータ回路20を動作させる。これによって、低負荷時から高負荷時までできるだけ低損失で安定してモータを駆動することができる。
なお、コンバータ回路70による直流電圧Vdcの昇圧は圧縮機3の起動後に行われるので、起動時にはコンバータ回路70に入力される単相交流電圧Vacの振幅に応じた低電圧レベルの直流電圧Vdcしかインバータ回路20に供給できない。
<第3の実施形態>
第3の実施形態では、第1および第2の実施形態のモータ駆動制御装置を、ヒートポンプ機器の圧縮機に適用した場合について説明する。以下では、空気調和機を例に挙げて説明するが、以下の実施形態は、空気調和機以外のヒートポンプ機器(たとえば、冷蔵庫、給湯機など)にも適用可能である。
第3の実施形態では、第1および第2の実施形態のモータ駆動制御装置を、ヒートポンプ機器の圧縮機に適用した場合について説明する。以下では、空気調和機を例に挙げて説明するが、以下の実施形態は、空気調和機以外のヒートポンプ機器(たとえば、冷蔵庫、給湯機など)にも適用可能である。
[空気調和機の冷媒回路]
図13は、空気調和機の冷媒回路を模式的に示す図である。図13を参照して、空気調和機100は、室外機側の熱交換器(以下「室外熱交換器」という)101と、膨張弁102と、室内機側の熱交換器(以下「室内熱交換器」という)103と、四方弁104と、圧縮機105とを含み、それらが順に閉ループ状に接続されている。
図13は、空気調和機の冷媒回路を模式的に示す図である。図13を参照して、空気調和機100は、室外機側の熱交換器(以下「室外熱交換器」という)101と、膨張弁102と、室内機側の熱交換器(以下「室内熱交換器」という)103と、四方弁104と、圧縮機105とを含み、それらが順に閉ループ状に接続されている。
圧縮機105は、図1の圧縮機3に対応し、冷媒を圧縮する。圧縮機105の圧縮機構を駆動するために、図1の三相モータ4とそのモータ駆動制御装置2とが用いられる。室外熱交換器101は、室外の空気および冷媒の間で熱交換する。膨張弁102は、冷媒の流量を調整するために制御される。室内熱交換器103は、室内の空気および冷媒の間で熱交換する。四方弁104は、冷房運転および暖房運転において冷媒の巡回方向を切替える。
冷房運転時には、図13の実線の矢印で示されるように、圧縮機105、四方弁104、室外熱交換器101、膨張弁102、室内熱交換器103、四方弁104、圧縮機105の順に冷媒が巡回する。この場合、室外熱交換器101が、圧縮された高温の冷媒を凝縮して液化させるための凝縮器として機能し、室内熱交換器103が、液化された冷媒を蒸発させることで冷媒を低温の気体に変化させるための蒸発器として機能する。暖房運転時には、図13の破線の矢印で示されるように、圧縮機105、四方弁104、室内熱交換器103、膨張弁102、室外熱交換器101、四方弁104、圧縮機105の順に冷媒が巡回する。この場合、室外熱交換器101が蒸発器として機能し、室内熱交換器103が凝縮器として機能する。
空気調和機は、さらに、室外熱交換器101の温度を測定するための温度センサ106と、圧縮機105の出口での冷媒温度である吐出温度を測定するための温度センサ107と、室内熱交換器103の温度を測定するための温度センサ108とを含む。これらの温度センサ106,107,108は、たとえばサーミスタである。室外熱交換器101用の温度センサ106および室内熱交換器103用の温度センサ108はいずれも、熱交換器の入口と出口の中間に配置される。したがって、通常の場合には、これらの熱交換器が凝縮器として機能するときに検出される温度は冷媒の凝縮温度であり、蒸発器として機能するときに検出される温度は冷媒の蒸発温度である。
さらに、外気温を測定するための温度センサ(不図示)が室外熱交換器101を収納する室外機に取り付けられ、室内温度を測定するための温度センサ(不図示)が室内熱交換器103を収納する室内機に取り付けられている。これの温度センサもたとえばサーミスタによって構成することができる。
なお、本実施の形態では、暖房運転および冷房運転を切替え可能として説明するが、空気調和機は、暖房運転および冷房運転の一方のみ可能であってもよい。その場合、室外熱交換器101および室内熱交換器103の各々の機能は、凝縮器または蒸発器として固定される。
[制御用マイコンの構成]
図14は、第3の実施形態における制御用マイコンの機能ブロック図である。図14に示すように、図1の制御用マイコン35は、運転指令部40、コンバータ制御部41、およびインバータ制御部42として機能する。図14の各機能は、メモリに格納されたプログラムがCPUによって実行されることによって実現される。
図14は、第3の実施形態における制御用マイコンの機能ブロック図である。図14に示すように、図1の制御用マイコン35は、運転指令部40、コンバータ制御部41、およびインバータ制御部42として機能する。図14の各機能は、メモリに格納されたプログラムがCPUによって実行されることによって実現される。
図14の機能ブロックは、運転指令部40が、U相およびV相の電流値Iu,Iv以外に、凝縮器温度Tcondに基づいて制御モード(変調モードMm、キャリア周波数Fcar、直流電圧Vdc)を切替える点で、図2の機能ブロックと異なる。ここで、凝縮器温度Tcondは、冷房運転時には室外熱交換器101の温度センサ106によって検出される温度T_106に等しく、暖房運転時には室内熱交換器103の温度センサ108によって検出される温度T_108に等しい。
上記の凝縮器温度Tcondに応じて制御モードを切替える理由は次のとおりである。凝縮器温度Tcondが上昇すると冷媒の圧力が増加するために三相モータ4の負荷トルクが増加し、凝縮器温度Tcondが減少すると冷媒の圧力が減少するために三相モータ4の負荷トルクが減少する。この結果、凝縮器温度Tcondが上昇した場合はモータの動作が不安定になる場合があるため、制御モードの変更が必要になる。逆に、凝縮器温度Tcondが低下した場合は負荷トルクの低下によってモータの動作の安定性は高まるので、損失を低減するように制御モードを変更する。以下、具体的な制御手順を、図15を参照して説明する。
[キャリア周波数Fcar、変調モードMm、直流電圧Vdcの制御方法]
図15は、第3の実施形態においてモータの制御手順の一例を示すフローチャートである。図15では、凝縮器温度Tcondに基づいて、制御モードを変更する例が示されている。
図15は、第3の実施形態においてモータの制御手順の一例を示すフローチャートである。図15では、凝縮器温度Tcondに基づいて、制御モードを変更する例が示されている。
図1、図14および図15を参照して、圧縮機3の起動指令を受けた場合(ステップS100でYES)、運転指令部40は、凝縮器温度Tcondが閾値温度T1よりも大きいか否かを判定する(ステップS105)。この時点では圧縮機3は未だ運転を開始していないので、冷房運転時の凝縮器温度Tcond(室外熱交換器温度T_106)は室外温度に等しく、暖房運転時の凝縮器温度Tcond(室内熱交換器温度T_108)は室内温度に等しい。
上記の判定の結果、凝縮器温度Tcondが閾値温度T1よりも大きい場合(高負荷時)には(ステップS105でYES)、運転指令部40は、制御モードC(三相変調、高キャリア周波数)でインバータ回路20を動作させることによって三相モータ4を起動する(ステップS115)。逆に、凝縮器温度Tcondが閾値温度T1以下の場合(低負荷時)には(ステップS105でNO)、運転指令部40、制御モードB(三相変調、低キャリア周波数)でインバータ回路20を動作させることによって三相モータ4を起動する(ステップS110)。
次に圧縮機3の運転中における制御モードの切替えについて説明する。圧縮機3の運転中に負荷トルクが増大したために凝縮器温度Tcondが閾値温度T2よりも大きくなった場合には(ステップS120BでYES)、運転指令部40は、モータ電流の安定化のために制御モードを切替える。すなわち、運転指令部40は、現在の制御モードが制御モードCの場合には制御モードDに切替え、現在の制御モードが制御モードBの場合には制御モードCに切替え、現在の制御モードが制御モードAの場合には制御モードBに切替える(ステップS130A)。ここで、凝縮器温度Tcondは、圧縮機3の運転中の温度であるので、通常、停止中の温度よりも高くなっている。したがって、閾値温度T2は、閾値温度T1よりも高温度に設定される。
逆に、圧縮機3の運転中に負荷トルクが減少したために凝縮器温度Tcondが閾値温度T3(閾値温度T3は閾値温度T2よりも小さい)よりも小さくなった場合には(ステップS140BでYES)、運転指令部40は、損失の低減のために現在の制御モードを変更する。すなわち、運転指令部40は、現在の制御モードが制御モードDの場合には制御モードCに切替え、現在の制御モードが制御モードCの場合には制御モードBに切替え、現在の制御モードが制御モードBの場合には制御モードAに切替える(ステップS150A)。以下、圧縮機3を停止するまで(ステップS160でYESとなるまで)、上記のステップS120B、S130A、S140B、S150Aが繰り返される。
上記の手順によるインバータ回路20およびコンバータ回路70の制御は、図11および図12の制御手順と組み合わせることができる。すなわち、圧縮機3が運転中の場合、制御モードA〜Dの切替えは、凝縮器温度、モータ電流の振幅変動幅、およびモータ電流の振幅値のいずれに基づいて行ってもよい。
[効果]
以上のとおり、第3の実施形態のヒートポンプ機器によれば、ヒートポンプ機器において用いられる圧縮機用の三相モータを、低負荷時から高負荷時までできるだけ低損失で安定して駆動することができる。特に、凝縮器温度に基づいて負荷トルクの変化を簡便かつ精度良く推定することができる。
以上のとおり、第3の実施形態のヒートポンプ機器によれば、ヒートポンプ機器において用いられる圧縮機用の三相モータを、低負荷時から高負荷時までできるだけ低損失で安定して駆動することができる。特に、凝縮器温度に基づいて負荷トルクの変化を簡便かつ精度良く推定することができる。
<付記>
以下、以上の各実施形態で開示された発明の一部を列挙する。
以下、以上の各実施形態で開示された発明の一部を列挙する。
(1) モータ駆動制御装置2が提供される。モータ駆動制御装置2は、インバータ回路20と制御部35とを備える。インバータ回路20は、直流電圧を交流電圧に変換して圧縮機3用の三相モータ4に供給する、パルス幅変調方式のインバータ回路である。制御部35は、インバータ回路20にパルス幅変調信号を供給する。制御部35は、少なくとも第1の制御モードAおよび第2の制御モードCを含む複数の制御モードを有する。第2の制御モードCは、第1の制御モードAよりも高負荷で実行される。第1の制御モードAにおいて、制御部35は、三相のうちの二相にのみパルス幅変調信号を供給する二相変調を行う。第2の制御モードCにおいて、制御部35は、三相全てにパルス幅変調信号を供給する三相変調を行うとともに、パルス幅変調周期を決定するためのキャリア周波数を第2の制御モードAの場合よりも高くする。
(2) 上記(1)において、モータ駆動制御装置2は、単相交流電圧を直流電圧に変換し、変換された直流電圧をインバータ回路20に供給するコンバータ回路70をさらに備える。コンバータ回路70は、制御部35の制御に従って、出力直流電圧Vdcを昇圧可能である。制御部35は、上記の複数の制御モードとして、第2の制御モードCよりも高負荷で実行される第3の制御モードDをさらに有する。第3の制御モードDにおいて、制御部35は、三相変調を行うとともに、キャリア周波数を第2の制御モードCの場合と等しく設定し、かつコンバータ回路70の出力直流電圧Vdcを第1および第2の制御モードA,Cの場合よりも高くする。
(3) 上記(1)または(2)において、制御部35は、三相モータ4に供給するモータ電流の振幅値および振幅の変動幅の少なくとも一方に基づいて、上記の複数の制御モードのうちで実行する制御モードを変更する。
(4) ヒートポンプ機器100が提供される。ヒートポンプ機器100は、冷媒を凝縮させる凝縮器(101,103)と、凝縮器を通過した冷媒を膨張させる膨張弁102と、膨張弁を通過した冷媒を蒸発させる蒸発器(103,101)と、蒸発器を通過した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を凝縮器に吐出する圧縮機3,105とを備える。圧縮機3,105は、圧縮機構を駆動する三相モータ4と、三相モータ4を駆動制御する上記(1)〜(3)のいずれかのモータ駆動制御装置2とを含む。
(5) 上記(4)において、モータ駆動制御装置の制御部35は、凝縮器(101,103)の温度に基づいて、上記の複数の制御モードのうちで実行する制御モードを変更する。
(6) 上記(1)または(2)において、制御部35は、三相変調を行うともに、キャリア周波数を第1の制御モードAの場合と等しく設定した第4の制御モードBをさらに有する。制御部35は、第4の制御モードBで三相モータ4を起動する。制御部35は、三相モータ4に供給するモータ電流の振幅値Iが第1の閾値I1を超えるか、またはモータ電流の振幅の変動幅ΔIが第2の閾値Δ1を超えたときに、第4の制御モードBを第2の制御モードCに切替える。制御部35は、モータ電流の振幅値Iが第3の閾値I2未満となるか、またはモータ電流の振幅の変動幅ΔIが第4の閾値Δ2未満となったときに、第4の制御モードBを第1の制御モードAに切替える。上記の第3の閾値I2は第1の閾値I1より小さい値であり、第4の閾値Δ2は第2の閾値Δ1よりも小さい値である。
(7) 上記(2)において、制御部35は、第2の制御モードCの場合において、三相モータに供給するモータ電流の振幅値Iが第5の閾値I1を超えるか、またはモータ電流の振幅の変動幅ΔIが第6の閾値Δ1を超えたときに、第2の制御モードCを第3の制御モードDに切替える。
(8) 上記(4)において、制御部35は、三相変調を行うともに、キャリア周波数を第1の制御モードAの場合と等しく設定した第4の制御モードBをさらに有する。制御部35は、第4の制御モードBで三相モータ4を起動する。制御部35は、凝縮器の温度Tcondが第7の閾値T1超えたときに、第4の制御モードBを第2の制御モードCに切替える。制御部35は、凝縮器の温度Tcondが第8の閾値T2未満となったときに、第4の制御モードBを第1の制御モードAに切替える。第8の閾値T2は第7の閾値T1より小さい値である。
(9) モータ駆動制御装置2が提供される。モータ駆動制御装置2は、コンバータ回路70とインバータ回路20と制御部35とを備える。コンバータ回路70は、単相交流電圧Vacを直流電圧Vdcに変換して出力し、出力直流電圧Vdcを昇圧可能である。インバータ回路20は、直流電圧Vdcを交流電圧に変換して圧縮機3用の三相モータ4に供給する、パルス幅変調方式のインバータ回路である。制御部35は、インバータ回路20にパルス幅変調信号を供給するとともに、コンバータ回路70の昇圧動作を制御する。制御部35は、第1の制御モードAと、第1の制御モードAよりも高負荷で実行される第2の制御モードDとを有する。第1の制御モードAにおいて、制御部35は、三相のうちの二相にのみパルス幅変調信号を供給する二相変調を行う。第2の制御モードDにおいて、制御部35は、三相全てにパルス幅変調信号を供給する三相変調を行うとともに、パルス幅変調周期を決定するためのキャリア周波数を第1の制御モードAの場合よりも高くし、かつ、コンバータ回路の出力直流電圧を第1の制御モードAの場合よりも高くする。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 交流電源、2 モータ駆動制御装置、3,105 圧縮機、4 三相モータ、11 リアクトル、12 ダイオードブリッジ回路、13 倍電圧整流回路、20 インバータ回路、31 電圧検出回路、32,34 ゲート信号生成回路、33 電流電圧検出回路、35 制御用マイコン、40 運転指令部、41 コンバータ制御部、42 インバータ制御部、70 コンバータ回路、100 空気調和機、101 室外熱交換器、102 膨張弁、103 室内熱交換器、104 四方弁、106,107,108 温度センサ。
Claims (5)
- 直流電圧を交流電圧に変換して圧縮機用の三相モータに供給するパルス幅変調方式のインバータ回路と、
前記インバータ回路にパルス幅変調信号を供給する制御部とを備え、
前記制御部は、少なくとも第1の制御モードおよび第2の制御モードを含む複数の制御モードを有し、前記第2の制御モードは、前記第1の制御モードよりも高負荷で実行され、
前記第1の制御モードにおいて、前記制御部は、三相のうちの二相にのみパルス幅変調信号を供給する二相変調を行い、
前記第2の制御モードにおいて、前記制御部は、三相全てにパルス幅変調信号を供給する三相変調を行うとともに、パルス幅変調周期を決定するためのキャリア周波数を前記第2の制御モードの場合よりも高くする、モータ駆動制御装置。 - 前記モータ駆動制御装置は、
単相交流電圧を直流電圧に変換し、変換された直流電圧を前記インバータ回路に供給するコンバータ回路をさらに備え、
前記コンバータ回路は、前記制御部の制御に従って、出力直流電圧を昇圧可能であり、
前記制御部は、前記複数の制御モードとして、前記第2の制御モードよりも高負荷で実行される第3の制御モードをさらに有し、
前記第3の制御モードにおいて、前記制御部は、前記三相変調を行うとともに、前記キャリア周波数を前記第2の制御モードの場合と等しく設定し、かつ前記コンバータ回路の出力直流電圧を前記第1および第2の制御モードの場合よりも高くする、請求項1に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記制御部は、前記三相モータに供給するモータ電流の振幅値および振幅の変動幅の少なくとも一方に基づいて、前記複数の制御モードのうちで実行する制御モードを変更する、請求項1または2に記載のモータ駆動制御装置。
- 冷媒を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器を通過した前記冷媒を膨張させる膨張弁と、
前記膨張弁を通過した前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器を通過した前記冷媒を圧縮し、圧縮した前記冷媒を前記凝縮器に吐出する圧縮機とを備え、
前記圧縮機は、
圧縮機構を駆動する三相モータと、
前記三相モータを駆動制御する請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置とを含む、ヒートポンプ機器。 - 前記モータ駆動制御装置の制御部は、前記凝縮器の温度に基づいて、前記複数の制御モードのうちで実行する制御モードを変更する、請求項4に記載のヒートポンプ機器。
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JPWO2020255690A1 (ja) * | 2019-06-21 | 2020-12-24 | ||
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2015
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