以下、ヒートポンプ機器としてヒートポンプ方式の空気調和機を例に挙げた実施形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
<第1の実施形態>
[空気調和機の全体構成]
図1は、第1の実施形態による空気調和機の全体構成を示すブロック図である。
図1を参照して、空気調和機10は、圧縮機13、四方弁14、室外熱交換器15、膨張弁16、および室内熱交換器17を含む冷凍サイクル(ヒートポンプサイクルとも称する)18を備える。さらに、空気調和機10は、室外ファン装置20、室内ファン装置24、コンバータ回路11、およびインバータ回路12,23,27を備える。
冷凍サイクル18において、圧縮機13は、冷媒を圧縮する。四方弁14は、冷房運転および暖房運転において冷媒の巡回方向を切替える。除霜運転(リバース除霜運転)の場合の冷媒の巡回方向は冷房運転の場合と同じである。室外熱交換器15は、室外の空気と冷媒との間で熱交換する。膨張弁16は、冷媒の流量を調整するためにその開度が制御される。室内熱交換器17は、室内の空気と冷媒との間で熱交換する。
四方弁14を切替えたときの冷媒の巡回方向について説明する。冷房運転モード(または除霜運転モード)時には、図1の実線の矢印CLで示されるように、圧縮機13、四方弁14、室外熱交換器15、膨張弁16、室内熱交換器17、四方弁14、圧縮機13の順に冷媒が巡回する。この場合、室外熱交換器15が、圧縮された高温の冷媒を凝縮して液化させるための凝縮器として機能し、室内熱交換器17が、液化された冷媒を蒸発させることで冷媒を低温の気体に変化させるための蒸発器として機能する。一方、暖房運転モード時には、図2の破線の矢印HTで示されるように、圧縮機13、四方弁14、室内熱交換器17、膨張弁16、室外熱交換器15、四方弁14、圧縮機13の順に冷媒が巡回する。この場合、室外熱交換器15が蒸発器として機能し、室内熱交換器17が凝縮器として機能する。
この明細書では、運転中の熱交換器の温度の相違によって、2つの熱交換器を低温側熱交換器および高温側熱交換器と記載する場合がある。低温側熱交換器の温度は高温側熱交換器の温度よりも低い。暖房運転モード(第1の運転モード)では、室外熱交換器15は低温側熱交換器に相当し、室内熱交換器17は高温側熱交換器に相当する。冷房運転モードおよび除霜運転モード(第2の運転モード)では、室外熱交換器15は高温側熱交換器に相当し、室内熱交換器17は低温側熱交換器に相当する。
室外ファン装置20は、室外の空気(外気)を室外熱交換器15に送風することによって室外熱交換器での熱交換を促進する。室外ファン装置20は、ファン21(たとえば、プロペラファン)とファン21を回転駆動するモータ22とを含む。室内ファン装置24は、室内熱交換器17で熱交換された空気を室内に送風する。室内ファン装置24は、ファン25(たとえば、クロスフローファンまたはプロペラファン)とファン25を回転駆動するモータ26とを含む。
モータ22,26は、たとえば、3相の永久磁石同期モータ、もしくは、ブラシレスDCモータである。永久磁石同期モータ(ブラシレスDCモータ)は、回転子に永久磁石が設けられ、固定子に3相巻線が設けられる。
コンバータ回路11は、外部交流電源5から供給された交流電圧を直流電圧に変換する。インバータ回路12,23,27は、コンバータ回路11から出力された直流電圧を交流電圧(この実施形態の場合、3相交流電圧)に変換する。具体的に、インバータ回路12は圧縮機13に内蔵されたモータ(不図示)を駆動し、インバータ回路23は室外ファン装置20のモータ22を駆動し、インバータ回路27は室内ファン装置24のモータ26を駆動する。
空気調和機10は、さらに、温度センサ30〜34を備える。これらの温度センサ30〜34は、たとえば、サーミスタである。温度センサ30は、圧縮機13の出口に設けられ、冷媒の吐出温度を検出する。温度センサ31は室外熱交換器15の温度を検出し、温度センサ32は室内熱交換器17の温度を検出する。温度センサ31,32はいずれも、熱交換器の入口と出口の中間に配置される。したがって、通常の場合には、これらの熱交換器15,17が凝縮器として機能するときに検出される温度は冷媒の凝縮温度であり、蒸発器として機能するときに検出される温度は冷媒の蒸発温度である。温度センサ33は外気温を検出し、温度センサ34は室内温度を検出する。
空気調和機10は、さらに空気調和機10の全体を制御する制御部40を備える。制御部40は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを含むマイクロコンピュータをベースに構成される。具体的には、制御部40は、温度センサ30〜34の検出値、インバータ回路12,23,27において検出されたモータ電流、およびモータ電圧の検出値などに基づいて、インバータ回路12,23,27の動作、四方弁14の切替え、および膨張弁16の開度などを制御する。
[室外機の構成例]
空気調和機10は、室内機と室外機との2つのユニットに分離されて構成されるセパレート型空気調和機である。室内機には、図1の室内熱交換器17、室内ファン装置24、およびインバータ回路27と、図示しないその他の装置(イオン発生装置、リモコンとの通信装置)などが収納されている。室外機には、図1の上記以外の構成が収納されている。ユーザがリモコンを操作することによって、冷房運転、暖房運転、除霜運転などの空調運転および運転停止が行われる。
図2は、図1に示す空気調和機のうち室外機の主要部の構成の一例を示す断面図である。図2を参照して、室外機6には、室外熱交換器15、圧縮機13、および室外ファン装置20などが収納されている。室外機6の正面6F(図2の下方)から見て、室外熱交換器15は室外機6内の左側部と後背部とに略直角に曲げてL字状に配置される。圧縮機13は室外機6内の右側部に配置される。室外ファン装置20は、室外熱交換器15の正面6F側に配置される。この場合、モータ22が室外熱交換器15に近い側に配置され、ファン21が吹き出し口に近い側となるように配置される。室外ファン装置20の回転時に、図2の背面6R(A方向)および左側面(B方向)から外気を吸い込み正面6F(C方向)に吐出する。これにより、室外熱交換器15の熱交換が促進される。
外風(自然風)は、室外機6の正面6Fから背面6Rの方向に吹き抜ける場合と、室外機6の背面6Rから正面6Fに吹き抜ける場合とがある。前者の正面6Fから背面6Rの方向はファン21による送風を妨げる方向であるので、この方向の自然風を逆風と称する。後者の背面6Rから正面6Fの方向はファン21による送風と同方向であるので、この方向の自然風を順風と称する。
[室外ファン用のインバータ回路および制御部の構成]
図3は、図1の室外ファン用のインバータ回路および制御部のうち室外ファン装置の動作に関係する部分の構成を示すブロック図である。
図3を参照して、インバータ回路23は、正側電源ノードNpと、負側電源ノードNnと、出力ノードNu,Nv,Nwと、上アーム側スイッチング素子Q1,Q2,Q3と、下アーム側スイッチング素子Q4,Q5,Q6と、ダイオード素子D1〜D6と、シャント抵抗R1,R2,R3とを含む。
正側電源ノードNpと負側電源ノードNnとの間にコンバータ回路11から出力された直流電圧が印加される。出力ノードNu,Nv,Nwは、室外ファン用のモータ22のU相、V相、W相の電機子巻線とそれぞれ接続される。上アーム側スイッチング素子Q1,Q2,Q3は、正側電源ノードNpと出力ノードNu,Nv,Nwとの間にそれぞれ接続される。下アーム側スイッチング素子Q4,Q5,Q6は、正側電源ノードNpと出力ノードNu,Nv,Nwとの間にそれぞれ接続される。還流電流を流すためのダイオード素子D1〜D6はスイッチング素子Q1〜Q6とそれぞれ逆並列に(並列かつ逆バイアス方向に)接続される。シャント抵抗R1〜R3は、下アーム側のスイッチング素子Q4〜Q6と直列にそれぞれ接続される。
スイッチング素子Q1〜Q6は、図3の場合、バイポーラパワートランジスタの例が示されているが、これに限られるものではない。たとえば、スイッチング素子Q1〜Q6は、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であってもよいし、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。
制御部40は、室外ファン装置20の動作に関係する部分として、運転制御部50、電流検出回路41、室外ファン用のモータ制御部42、およびPWM信号発生回路43とを備える。
運転制御部50は、リモコン装置からのユーザの入力に基づいて、運転モード(冷房運転モード、暖房運転モードなど)に応じた制御指令を生成する。
電流検出回路41は、スイッチング素子Q4がオン状態のときに流れるU相電流を抵抗素子R1に生じた電圧Vusとして検出するとともに、スイッチング素子Q5がオン状態のときに流れるV相電流を抵抗素子R2に生じた電圧Vvsとして検出する。電流検出回路41は、これらの電圧Vus,Vvsをアンプ(図示省略)によって増幅し、増幅された信号をA/D(Analog to Digital)変換器(図示省略)によってデジタル信号に変換する。
モータ制御部42は、空気調和機の運転制御を行う運転制御部50から受信した各種の命令(起動命令、停止命令、回転速度指令値、ブレーキ制御命令など)、シャント抵抗R1,R2によって検出されたモータ電流、ならびに図示しない電圧検出部によって検出された各相のモータ電圧に基づいて、スイッチング素子Q1〜Q6のオンオフを制御する。
具体的にモータ制御部42は、電流検出回路41から受取った電圧Vus,Vvsを表わすデジタル信号に基づいてU相電流iuおよびV相電流ivを算出する。W相電流iwは、
iw=−(iu+iv) …(1)
によって算出される。
さらに、モータ制御部42は、算出した各相の固定子電流、検出した各相のモータ電圧、ならびに運転制御部50から受取ったファンモータの起動命令、停止命令、および回転速度指令値に基づいて、各相のモータ電圧(またはモータ電流)の指令値を生成してPWM信号発生回路43に出力する。
さらに、モータ制御部42は、運転制御部50からブレーキ制御開始命令を受け取ったときには、下アーム側の全てのスイッチング素子Q4〜Q6を同時にオン状態にするための指令値を生成する(このとき、上アームのスイッチング素子Q1〜Q3は全てオフ状態である)。これによってモータ22の回転にブレーキがかかるので、以下、この制御をブレーキ制御と称する。なお、ブレーキ制御では、上アーム側の全てのスイッチング素子Q1〜Q3を同時にオン状態にしてもよい(このとき、下アーム側のスイッチング素子Q4〜Q6は全てオフ状態である)。
PWM信号発生回路43は、モータ制御部42から受取ったモータ電圧(またはモータ電流)の指令値に応じたパルス信号を生成してスイッチング素子Q1〜Q6のゲートに出力する。たとえば、三角波比較方式の場合、PWM信号発生回路43は、モータ制御部42から受け取った各相のモータ電圧(またはモータ電流)の指令値と三角波信号(キャリア信号)と比較することによって、モータ電圧(またはモータ電流)の指令値に応じた通電率のパルス信号を生成する。ブレーキ制御を行う場合、通電率は100%(常にオン状態)であってもよい。
[外風の風量および風向の推定方法]
本実施形態の空気調和機10は、暖房運転モードから除霜運転モードに切替える際に、室外ファン装置20のファン21を一定の試験速度で回転させることによってモータ電流を検出する。空気調和機10は、検出した現時点のモータ電流を、無風時に試験速度でファン21を回転させることによって予め検出されたモータ電流と比較することによって外風の風量および風向を推定する。以下、図面を参照して具体的に説明する。
なお、上記の試験速度は、定格回転速度よりも小さい必要があり、たとえば、定格回転速度の半分以下の速度に設定される。ただし、モータ22の回転速度が小さすぎると、モータ電流の大きさが小さくなりすぎるためモータ22の制御が困難になるので望ましくない。また、除霜運転の開始直後に外風の風量および風向を推定する際には、除霜の妨げとならないように、試験速度は、たとえば、200rpm(毎分200回転)以下の回転速度に設定される。
図4は、室外ファン装置20のモータ22の回転速度とU相のモータ電流の振幅との関係を表す図である。図5は、3相モータ電流を同期回転座標であるdq座標に変換したときのq軸成分と負荷トルクとの関係を示す図である。なお、d軸成分は界磁方向の電流成分であり、q軸成分はd軸成分と電気角で90°離れた成分である。
一般に、ファン21は2乗逓減負荷特性を有しており、外風が無風状態での負荷トルクは回転速度の2乗に比例する。また、ファン21から出力される風量は回転速度に比例し、室外ファン装置20のモータ22の消費電力は回転速度の3乗に比例する。ここで、モータ電流振幅は負荷トルクに概ね比例するので、図4に示すように、モータ電流振幅は回転速度の2乗に概ね比例する。正確には、図5に示すように、q軸成分Iqが、負荷トルクTLoadに比例するとともに回転速度の2乗に比例する。
本実施形態の空気調和機10では、暖房運転モードから除霜運転モードに切替える際に外風を検出するために、一定の試験速度で室外ファン装置20のモータ22を回転駆動する。図4に示すようにこの試験速度は、たとえば、500rpmであり、定格回転速度(図5の例では900rpm)よりも小さい値である。
図5を参照して、試験速度で室外ファン装置20のモータ22を回転させているとき、外風が無風状態であれば、q軸成分の値がIq0であり、負荷トルクの値がTFanであるとする。なお、この無風時におけるモータ電流のq軸成分の符号は、モータの回転方向の設定等によるが、本実施形態では正であるとする。
室外ファン装置20の順方向の回転を妨げる逆風がファン21に吹き付けている場合には、この逆風によるトルクTAirがモータ22にかかるので、全負荷トルクTLoad(=TFan+TAir)が増加する。これによりモータ電流のq軸成分Iqが増加する(すなわち、q軸成分の符号は無風時と同符号であり、q軸成分の大きさは無風時よりも増加する)。また、iq−iq0の絶対値(すなわち、|iq−iq0|)が増加するほど、外風の風量が増加していることがわかる。
一方、室外ファン装置20の送風方向と同方向である順風がファン21に吹き付けている場合には、この順風による負のトルクTAirによって、全負荷トルクTLoadが減少する。これによりモータ電流のq軸成分Iqが減少する(すなわち、q軸成分の符号が無風時と同符号でありかつq軸成分の大きさが減少するか、または、q軸成分の符号が無風時と逆になる)。また、iq0−iqの絶対値(すなわち、|iq0−iq|)が増加するほど、外風の風量が増加していることがわかる。
以上を図4に示すU相電流振幅とモータ回転速度との関係を参照してさらに説明する。前述の試験速度を500rpmとする。d軸成分Idの2乗とq軸成分Iqの2乗との和の平方根がU相電流振幅Iuに比例するので、室外ファン装置20のファン21に逆風が吹き付けている場合には、逆風の風量が増加するにつれてU相電流振幅Iuの大きさは増加する。一方、室外ファン装置20のファン21に順風が吹き付けている場合には、順風の風量が増加するにつれてU相電流振幅Iuの大きさは一旦0付近まで減少した後(この場合のU相電流振幅Iuの最小値は、d軸成分Idの大きさに応じて決まる)、再び増加する。
前述の試験速度を200rpmにすると、無風状態の場合のU相電流振幅Iuがかなり小さくなる。したがって、室外ファン装置20のファン21にある程度の風量の順風が吹き付けている場合には、U相電流振幅Iuの大きさは増加する。
上記のように、3相モータ電流をdq軸回転座標に変換し、現時点のモータ電流のq軸成分と無風時のq軸成分とを比較することによって、外風の風向および風量を推定することが可能になる。なお、モータ電流のu相、v相、w相のいずれか1相の振幅値だけの情報では、一般には外風の風向を判定することは困難である。しかしながら、室外機を建物の外壁の近傍に配置しており、逆風の影響のみを考慮して良い場合には、モータ電流のu相、v相、w相のいずれか1相の振幅値の情報だけでも十分であると言える。
[除霜運転時の室外ファン装置の制御方法]
上記で説明した外風の風量および風向の検出結果に基づいて、除霜運転時の室外ファン装置の制御方法について説明する。
図6は、モータ電流のq軸成分の検出値と除霜運転時のファンモータの回転速度の設定値との関係を模式的に示す図である。図7は、図6の変形例として、モータ電流のq軸成分の検出値と除霜運転時のファンモータの回転速度の設定値との関係を模式的に示す図である。
図6および図7において、横軸は、現時点のモータ電流のq軸成分Iqと無風時に予め検出されたq軸成分Iq0との差を示す。この差の値は外風によってモータ22に与えられるトルクTAirに比例する。
現時点のモータ電流のq軸成分Iqと無風時に予め検出されたq軸成分Iq0との差iq−iq0が閾値TH0を超えている場合(すなわち、IqがIq0と同符号であり、Iqの大きさがIq0の大きさよりも閾値TH0を超えて増大している場合)には、室外ファン装置20のファン21に逆風が吹き付けていると判定される。この場合、除霜運転時には、制御部40は、この逆風を妨げるために室外ファン装置20のモータ22を一定速度で回転させる。|iq−iq0|が増加するほど外風の風量が増加するので、|iq−iq0|が増加するにつれて、図6に示すように段階的に図7に示すように連続的に除霜運転時のモータ22の回転速度を増加させるのが望ましい。
一方、現時点のモータ電流のq軸成分Iqと無風時に予め検出されたq軸成分Iq0との差iq−iq0が閾値TH0以下である場合には、外風はほとんど無風状態であるか、室外ファン装置20のファン21に順風が吹き付けていると判定される。この場合、制御部40は、室外ファン装置20をブレーキ制御に設定する。
なお、|iq−iq0|≦TH0の場合に室外ファン装置20を停止し(図3のスイッチング素子Q1〜Q6は全てオフ状態になる)、iq−iq0<−TH0の場合に室外ファン装置20をブレーキ制御に設定してもよい。このブレーキ制御によって室外ファン装置20のファン21がフリーランするのを妨げることができるので、除霜運転時に室外熱交換器15が冷やされるのを抑制することができる。
[室外ファンモータの具体的制御手順]
以下、これまでの説明を総括して、暖房運転モードから除霜運転モードへ切替える際の制御手順について説明する。
図8は、図3の運転制御部のうち除霜運転に関係する部分を示す機能ブロック図である。図8を参照して、運転制御部50は、機能的に見ると、座標変換部51と、ファン特性格納部52と、電流比較部53と、回転速度設定部54を含む。
座標変換部51は、モータ制御部42から入力されたU相、V相、W相のモータ電流iu,iv,iwを同期回転座標であるdq座標に変換する。d軸成分は界磁方向の成分であり、q軸成分はd軸成分と電気角で90°異なる電流成分である。なお、座標変換部51は、電流検出回路41から受けたシャント抵抗R1,R2による検出電圧に基づいて、U相、V相、W相のモータ電流iu,iv,iwを自ら算出してもよい。
ファン特性格納部52は、無風のときに室外ファン装置20のモータ22を回転させることによって予め検出されたモータ22の回転速度とモータ電流のq軸成分との関係を格納する。ファン特性格納部52は、回転速度設定部54で設定された回転速度に対応するq軸成分の値Iq0を出力する。
電流比較部53は、座標変換部51によって生成されたモータ電流のq軸成分Iqと、ファン特性格納部52から出力された無風時のモータ電流のq軸成分iq0との差iq−iq0を出力する。なお、図3のモータ制御部42がベクトル制御によって室外ファン装置20を制御している場合には、モータ制御部42によって生成されたq軸成分Iqを利用することができる。したがって、この場合には座標変換部51は必要でない。
回転速度設定部54は、外風を検出するために室外ファン装置20のモータ22の回転させる際の回転速度である試験速度を設定する。回転速度設定部54は、さらに、電流比較部53から出力されたiq−iq0の値に基づいて、除霜運転時に室外ファン装置20の制御を行う。すなわち、回転速度設定部54は、iq−iq0の値に応じた速度でモータ22を回転させたり、室外ファン装置20に対してブレーキ制御を行ったりする。
図9は、暖房運転モードから除霜運転モードに移行し、再び暖房運転モードに戻るまでの制御手順を示すフローチャートである。
図8および図9を参照して、ステップS100において暖房運転中であるとする。ユーザから空気調和機10の運転停止指令を受けた場合には(ステップS101でYES)、運転制御部50は暖房運転を停止して(ステップS102)処理を終了する。
ステップS103で運転制御部50は、暖房運転中に室外熱交換器15が着霜していると判定した場合には(ステップS103でYES)、暖房運転モードから除霜運転モードに運転モードを切替える。具体的には、まず、運転制御部50は、ステップS104において、圧縮機13を停止するともに室外ファン装置20および室内ファン装置24を停止することによって暖房運転を停止する。
なお、運転制御部50は、図1の温度センサ31によって検出された室外熱交換器15の温度と、温度センサ33によって検出された室外温度とに基づいて、室外熱交換器15が着霜しているか否かを判定する。室外熱交換器15の温度は室外温度が低下するにつれて低下するが、室外温度に応じて定められた基準温度よりも室外熱交換器15の温度が低下している場合に、運転制御部50は室外熱交換器15が着霜していると判定する。
ここで、圧縮機13を停止した場合には、圧縮機13の入口と出口の圧力差がほぼ完全になくなるまで、所定時間(たとえば、2〜3分程度の時間)を置かなければならない。そこで、この間(待機期間)に、運転制御部50は、室外ファン装置20のモータ22を試験速度RS1で回転させ(ステップS105)、各相のモータ電流iu,iv,iwを検出する(ステップS106)。さらに、座標変換によってq軸成分iqが計算される(ステップS107)。
次のステップS109で、運転制御部50は、現時点のモータ電流のq軸成分iqと、外風が無風状態のときに試験速度RS1でモータ22を回転させた時のq軸成分iq0とを比較する。この結果、現時点のq軸成分iqが無風時のq軸成分iq0と同符号であり、iqの大きさがiq0の大きさよりも閾値TH0を超えて増大している場合には(ステップS109でYES)、運転制御部50は、iqの大きさとiq0の大きさとの差に応じて除霜運転時の室外ファン装置20の回転速度指令値を決定する。
一方、上記の条件が満たされていない場合には(ステップS109でNO)、運転制御部50は、除霜運転時に室外ファン装置20をブレーキ制御する(ステップS111)。
次のステップS112において、運転制御部50は、四方弁14を制御することによって、冷媒の巡回方向を暖房運転時の巡回方向から冷房運転時の巡回方向に切替える。さらに、運転制御部50は、圧縮機13の運転を開始させるとともに、室外ファン装置20をステップS110で決定した回転速度またはブレーキ制御によって駆動する。これによって除霜運転が開始する。
運転制御部50は、温度センサ31によって検出された室外熱交換器15の温度が基準温度(たとえば、0℃)を超えたことを検知することによって、室外熱交換器15が完了したと判定する(ステップS113でYES)。
室外熱交換器15の除霜が完了すると、運転制御部50は、室外熱交換器15を停止し、インバータ回路23のスイッチング素子Q1〜Q6を全てオフ状態にすることによって室外ファン装置20を停止する。圧縮機13の停止から所定時間(圧縮機13の入口と出口の差圧がなくなるのに必要な時間、例えば、2〜3分程度)が経過すると、運転制御部50は、四方弁14の切替信号を出力するともに、圧縮機13の運転を開始する。さらに、運転制御部50は、室外ファン装置20および室内ファン装置24の運転を開始する。以上により、除霜運転モードから暖房運転モードへの切替えが完了する(ステップS114)。
図10は、暖房運転モードと除霜運転モードとの切替え時の圧縮機13、室外ファン装置20、および四方弁14の動作状態を示すタイミング図である。
図10を参照して、暖房運転モードから除霜運転モードに切替える場合、運転制御部50は、まず時刻t1で圧縮機13を停止する(回転速度がRSCから0に変化する)とともに、図3のインバータ回路23のスイッチング素子Q1〜Q6を全てオフ状態にすることによって室外ファン装置20のモータ22を停止する(回転速度がRS3から0に変化する)。
時刻t1から時刻t2の間で、運転制御部50は、外風の風向および風量を検出するために、室外ファン装置20のモータ22を試験速度RS1で回転させ、このときの各相のモータ電流iu,iv,iwを検出する。運転制御部50は、3相のモータ電流をdq座標に変換することによって負荷トルクTLoadに関係するq軸成分iqを計算する。運転制御部50は、無風時に試験速度RS1でモータ22を回転させることによって予め検出されたq軸成分iq0の値と現時点のモータ電流のq軸成分iqとを比較することによって、現時点の風向および風量を推定する。
時刻t2において、運転制御部50は、冷媒の巡回方向が暖房運転時の巡回方向から冷房運転時の巡回方向に切替わるように、四方弁14へ出力する制御信号をHEATからCOOLに切り替える。運転制御部50は、この状態で圧縮機13の運転を開始することによって除霜運転を開始する。
さらに、運転制御部50は、推定した外風の風向および風量に基づいて室外ファン装置20の運転を制御する。運転制御部50は、ファン21の回転を妨げる方向の逆風が閾値を超える風量で室外ファン装置20に吹き付けている場合には、推定される逆風の風量に応じた回転速度(たとえば、図10において破線で示す回転速度RS2で)室外ファン装置20のモータ22を回転させる。運転制御部50は、ほとんど無風状態であるか、または閾値を超える風量の順風が室外ファン装置20に吹き付けていると推定される場合には、室外ファン装置20をブレーキ制御する。
次の時刻t5において、運転制御部50は、除霜が完了したと判定して、除霜運転を停止する。すなわち、運転制御部50は、圧縮機13を停止するとともに、図3のインバータ回路23のスイッチング素子Q1〜Q6を全てオフ状態にすることによって室外ファン装置20のモータ22を停止する(たとえば、図10の破線の場合は、回転速度がRS2から0に変化する)。
次の時刻t6において、運転制御部50は、冷媒の巡回方向が除霜運転時の巡回方向から暖房運転時の巡回方向に切替わるように、四方弁14へ出力する制御信号をCOOLからHEATに切り替える。運転制御部50は、この状態で圧縮機13の運転を開始するともに室外ファン装置20の運転を開始することによって暖房運転を開始する。
[効果]
このように第1の実施形態の空気調和機10によれば、暖房運転から除霜運転に切替える際に、室外ファン装置20を一定の速度で回転させたときのモータ電流の検出値に基づいて外風の風量を推定できる。そして、推定した外風の風量に基づいてインバータ回路を制御することによって、除霜運転中の外風の影響を抑制することができる。特に、一定の回転速度で室外ファンを回転させたときのモータ電流のq軸成分を、無風時に予め測定されたq軸成分の値と比較することによって、外風の風向および風量を精度良く検出することができる。
さらに、外風が逆風の場合に外風を妨げるようにファン装置を回転駆動させることによって除霜運転の対する外風の影響を抑制することができる。外風が順風の場合にはファン装置をブレーキ制御することによって除霜運転に対する外風の影響を抑制することができる。
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、室外ファン装置20が順方向と逆方向の両方向に回転可能な場合について説明する。なお、室外ファン装置20の回転方向が順方向の場合、図2に示すように、室外機6の背面6Rから外気を吸い込み、正面6Fの方向に外気を吐出する。室外ファン装置20の回転方向が逆方向の場合、室外機6の正面6Fから外気を吸い込み、背面6Rの方向に外気を吐出する。
図11は、第2の実施形態の空気調和機において、モータ電流のq軸成分の検出値と除霜運転時のファンモータの回転速度の設定値との関係を模式的に示す図である。第1の実施形態の図7と同様に、図11の横軸は、現時点のモータ電流のq軸成分Iqと無風時に予め検出されたq軸成分Iq0との差を示す。この差の値は外風によってモータ22に与えられるトルクTAirに比例する。
現時点のモータ電流のq軸成分Iqと無風時に予め検出されたq軸成分Iq0との差iq−iq0が閾値TH0を超えている場合(すなわち、IqがIq0と同符号であり、Iqの大きさがIq0の大きさよりも閾値TH0を超えて増大している場合)には、室外ファン装置20のファン21に逆風が吹き付けていると判定される。この場合、図7と同様に、除霜運転時には、制御部40は、この逆風を妨げるために室外ファン装置20のモータ22を順方向に回転させる。|iq−iq0|が増加するほど外風の風量が増加するので、|iq−iq0|が増加するにつれて回転速度の設定値を増加させるのが望ましい。
一方、iq−iq0<−TH0の場合、すなわち、室外ファン装置20のファン21に順風が吹き付けており、順風の風量が閾値を超えていると判定された場合には、制御部40は、この順風を妨げるために室外ファン装置20のモータ22を逆方向に回転させる。|iq−iq0|が増加するほど外風の風量が増加するので、|iq−iq0|が増加するにつれて回転速度の設定値を増加させるのが望ましい。
このように、外風の風向に応じてモータ22の回転方向を逆転させることによって、外風が逆風の場合だけでなく順風の場合にも、外風によって除霜中の室外熱交換器15を冷やされることを効果的に防止できる。なお、図6に示すように、モータ22を順方向および逆方向のいずれの場合においても、|iq−iq0|が増加するにつれて段階的に回転速度の設定値を増加させてもよい。
<第3の実施形態>
第3の実施形態では、除霜運転中に外風を検出するための外風検出期間を設けた点に特徴がある。以下、図面を参照して具体的に説明する。
図12は、第3の実施形態の空気調和機において、暖房運転モードと除霜運転モードとの切替え時の圧縮機13、室外ファン装置20、および四方弁14の動作状態を示すタイミング図である。図12のタイミング図は第1の実施形態の図10に対応するものである。ただし、図12のタイミング図は、時刻t2から時刻t5までの除霜運転期間中に外風検出期間(時刻t3から時刻t4まで)が設けられている点で図10のタイミング図と異なる。
具体的に外風検出期間では、運転制御部50は、外風の風向および風量を検出するために、室外ファン装置20のモータ22を試験速度RS1で回転させ、このときの各相のモータ電流iu,iv,iwを検出する。なお、外風検出期間における試験速度RS1は、除霜を妨げないように200rpm以下に設定する必要がある。
運転制御部50は、検出した3相のモータ電流をdq座標に変換することによって負荷トルクTLoadに関係するq軸成分iqを計算する。そして、運転制御部50は、無風時に試験速度RS1でモータ22を回転させることによって予め検出されたq軸成分iq0の値と現時点のモータ電流のq軸成分iqとを比較することによって、現時点の外風の風向および風量を推定する。運転制御部50は、推定した外風の風向および風量に基づいて外風検出期間以降の室外ファン装置20を制御する。
除霜運転中に逆風を妨げるように一定の回転速度で室外ファン装置20を運転している場合には、モータ電流の変化によって外風の風向および風量を検出することができる。しかしながら、暖房運転から除霜運転への切替え時に外風がほとんど無風であるかまたは室外ファン装置20の送風方向と同方向の順風が吹いていると判定された場合には、除霜運転中に、室外ファン装置20が停止状態に設定されるかまたはブレーキ制御が行われる(図12の時刻t2から時刻t3までを参照)。この場合、外風の風向および風量が変化を検出することができないために、除霜が妨げられる状態になっていることがあり得る。このような外風の望ましくない変化を検出するために、外風検出期間を設けることが有効である。
<付記>
上記の実施形態の一部を以下に要約する。
[1] 一局面におけるヒートポンプ機器(10)は、冷凍サイクル(18)と、ファン装置(20)と、インバータ回路(23)と、制御部(40)とを備える。冷凍サイクル(18)は、圧縮機(13)、膨張弁(16)、低温側熱交換器(15)、高温側熱交換器(17)、および四方弁(16)を含む。ファン装置(20)は、低温側熱交換器(15)に外気を送風する。インバータ回路(23)は、ファン装置(20)の3相モータ(22)を駆動する。制御部(40)は、冷凍サイクル(18)およびインバータ回路(23)を制御する。制御部(40)は、四方弁(14)の切替えに応じて、圧縮機(13)によって圧縮された冷媒を高温側熱交換器(17)に供給する第1の運転モード(暖房運転モード)と、圧縮機(13)によって圧縮された冷媒を低温側熱交換器(15)に供給することによって低温側熱交換器(15)の除霜を行う第2の運転モード(除霜運転モード)とを有する。制御部(40)は、第1の運転モードから第2の運転モードに切替える際に、ファン装置(20)の3相モータ(22)を一定の第1速度で回転させてモータ電流を検出する。制御部(40)は、検出した現時点のモータ電流の大きさと無風時に第1速度で3相モータ(22)を回転させることによって予め検出されたモータ電流の大きさとの比較に基づいて外風の風量を推定する。制御部(40)は、推定した外風の風量が閾値を超えている場合に、第2の運転モード時に外風を妨げるようにインバータ回路(23)を制御する。
上記構成によれば、暖房運転から除霜運転に切替える際に、室外ファン装置を一定の速度で回転させたときのモータ電流の検出値に基づいて外風の風量を推定できる。そして、推定した外風の風量に基づいてインバータ回路を制御することによって、除霜運転中の外風の影響を抑制することができる。
[2] 上記の[1]において、制御部(40)は、検出したモータ電流を、界磁方向であるd軸成分とd軸成分に対して電気角が90°異なるq軸成分とに変換する。制御部(40)は、現時点のq軸成分の符号が無風時のq軸成分と同符号であり、現時点のq軸成分の大きさが無風時のq軸成分の大きさよりも増加している場合に、ファン装置(20)の送風を妨げる逆風が吹いていると判定する。制御部(40)は、現時点のq軸成分の符号が無風時のq軸成分と異符号であるか、現時点のq軸成分の大きさが無風時のq軸成分の大きさよりも減少している場合に、ファン装置(20)の送風方向と同方向の順風が吹いていると判定する。
上記の構成によれば、一定の回転速度で室外ファンを回転させたときのモータ電流のq軸成分を、無風時に予め測定されたq軸成分の値と比較することによって、外風の風向を検出することが可能になる。
[3] 上記の[2]において、制御部(40)は、現時点のq軸成分と無風時のq軸成分との差の絶対値に基づいて、逆風および順風の風量を推定する。
[4] 上記の[3]において、制御部(40)は、逆風の風量が閾値を超えている場合に、第2の運転モード時にファン装置(20)を回転駆動させるようにインバータ回路(23)を制御する。制御部(40)は、順風の風量が閾値を超えている場合に、第2の運転モード時にファン装置(20)をブレーキ制御するようにインバータ回路(23)を制御する。
上記の構成によれば、外風が逆風の場合に外風を妨げるようにファン装置を回転駆動させることによって除霜運転の対する外風の影響を抑制し、外風が順風の場合にはファン装置をブレーキ制御することによって除霜運転に対する外風の影響を抑制することができる。
[5] 上記の[4]において、制御部(40)は、逆風の風量が増加するにつれて、連続的にまたは段階的にファン装置(20)の回転速度を増加させるようにインバータ回路(23)を制御する。
[6] 上記の[3]において、ファン装置(20)は、順方向と逆方向の両方向に回転可能である。制御部(40)は、逆風の風量が閾値を超えている場合に、第2の運転モード時にファン装置(20)を順方向で回転駆動させるようにインバータ回路(23)を制御する。制御部(40)は、順風の風量が閾値を超えている場合に、第2の運転モード時にファン装置(20)を逆方向で回転駆動させるようにインバータ回路(23)を制御する。
上記のようにファン装置(20)を両方向に回転可能な場合には、外風が順風の場合にも、ファン装置(20)を逆方向に回転駆動させることによって除霜運転の対する外風の影響を効率的に抑制することができる。
[7] 上記の[6]において、制御部(40)は、順風および逆風の風量が増加するにつれて、連続的にまたは段階的にファン装置(20)の回転速度を増加させるようにインバータ回路(23)を制御する。
[8] 上記の[1]〜[7]において、制御部(40)は、第2の運転モードの実行中にファン装置(20)を停止またはブレーキ制御している場合に、一時的にファン装置(20)の3相モータ(22)を一定の第2速度で回転させてモータ電流を検出する外風検出期間を設ける。制御部(40)は、外風検出期間中に検出されたモータ電流の大きさと、無風時に第2速度で3相モータ(22)を回転させることによって予め検出されたモータ電流の大きさとの比較に基づいて外風の風量を推定する。制御部(40)は、推定した外風の風量が閾値を超えている場合に、外風検出期間以降の第2の運転モードの実行中に外風を妨げるようにインバータ回路を制御する。
上記の構成によれば、外風検出期間を設けることによって除霜運転中の外風の風向および風量の変化に応じて室外ファン装置の制御を変更すること可能になる。これによって、より効率的に除霜運転を行うことが可能になる。
[9] 上記の[8]において、第2速度は、毎分200回転以下である。除霜運転中には、室外ファン装置を冷やさないように外風検出のためのファンモータの回転速度は、モータ電流が検出可能な範囲内でできるだけ小さいほうが望ましい。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。