JP2017115005A - シリコーンモノマー、シリコーンポリマーおよびそれを用いたメディカルデバイス並びにシリコーンモノマーおよびシリコーンポリマーの製造方法 - Google Patents

シリコーンモノマー、シリコーンポリマーおよびそれを用いたメディカルデバイス並びにシリコーンモノマーおよびシリコーンポリマーの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡便に調製が可能で、設計の汎用性が高く、十分な酸素透過性を有し耐脂質汚染性に優れ、かつ透明度が高いメディカルデバイス特にコンタクトレンズに用いるのに好適な含フッ素炭化水素基を有するシリコーンモノマーを提供する。【解決手段】式(a)で表されるシリコーンモノマー。(Xは酸素原子又はNH;RaはH又はメチル基;Rbはシロキサニル基;Rcは直鎖/分岐状のC1〜20の含フッ素炭化水素基;Yはエーテル結合、エステル結合、側鎖に水酸基を有するエチレンオキサイド等;Lは直鎖/分岐状のC1−10の二価の炭化水素基)【選択図】なし

Description

本発明は含フッ素炭化水素基を有するシリコーンモノマーおよびシリコーンポリマーに関するもので、該シリコーンモノマーおよびシリコーンポリマーはメディカルデバイス、特に眼用レンズおよびコンタクトレンズに好適に用いられる。
近年、酸素透過性に優れたシリコーンハイドロゲルレンズが人気を博している。例えば、シリコーンモノマー、親水性モノマーおよび架橋剤モノマーを共重合することにより得られるシリコーンハイドロゲルレンズが知られている。
一般的に、シリコーンハイドロゲルレンズはシリコーンモノマーが有する疎水性のために脂質等の生体由来分子によって汚染しやすいという問題があった。この問題の解決のため、優れた耐脂質汚染性を与える含フッ素炭化水素基を有するモノマーと、優れた酸素透過性を与えるシリコーンモノマーとを用いたシリコーンハイドロゲルレンズが提案されているが、これら両モノマーの相溶性のバランス調整が難しく、透明性の良いレンズを得ることが困難であった。
そこで、含フッ素炭化水素基とシロキサニル基の両方を1分子中に有するモノマーが提案されている。該モノマーは、含フッ素炭化水素基とシロキサニル基とが1分子中に共有結合で連結されているため、両者の相溶性のバランスを調整する必要がない。
例えば、特許文献1では、下記式(1)で表されるモノマーが開示されている。
Figure 2017115005
式(1)中、Aはシロキサニル基を表す。Rfは置換されていてもよい炭素数1〜20のフルオロアルキル基、および置換されていてもよい炭素数6〜20のフルオロアリール基から選ばれた置換基を表す。Xは酸素原子、硫黄原子およびN−Rから選ばれた基を表す。YはN−R、酸素原子および硫黄原子から選ばれた基を表す。RはH、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基および置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基からなる群から選ばれた置換基を表す。RはH、置換されていてもよいアルキル基、および置換されていてもよいアリール基から選ばれた置換基を表す。lは0〜3の整数を表す。mは1〜20の整数を表す。
また、上式(1)における具体例は下記式(1a)の通りである。
Figure 2017115005
特許文献2では、下記式(2)で表されるモノマーが開示されている。
Figure 2017115005
式(2)中、Rは炭素数1〜4の一価炭化水素基であり、Rは炭素数1〜4の一価炭化水素基であり、nは2または3であり、Rは炭素数1〜10の二価炭化水素基であり、Rは炭素数1〜8のフッ素置換一価炭化水素基であり、Rは炭素数4〜8の(メタ)アクリルオキシ基置換一価炭化水素基であり、Rは水素原子または炭素数1〜4の一価炭化水素基である。
また、上式(2)における具体例は下記式(2a)の通りである。
Figure 2017115005
また、含フッ素炭化水素基とシロキサニル基が共有結合で連結され、その両端に重合性官能基を有するマクロモノマー型の化合物が提案されている(例えば特許文献3)。
特開2002−128828号公報 特開2015−160816号公報 特開平8−245737号公報
特許文献1に記載のシリコーンモノマーを得るためには、工程の多い煩雑な合成を行う必要があった。また、上記式(1)におけるRfで示される含フッ素炭化水素基の導入反応の条件では、シロキサニル基が加水分解等の反応をしてしまうおそれがあり、副生成物の生成および精製操作の困難を避けるために、実質的に上記式(1)中のRfで示される含フッ素炭化水素基の導入後に上記式(1)中のAで表されるシロキサニル基を導入する必要があるものであった。そのため、特にシロキサニル基の分子量分布の狭い目的物を得ようとすると収率が低下するという問題があった。
特許文献2に記載のシリコーンモノマーは、1ステップ反応のみの簡便な手法で目的物として得ることができるが、用いることのできる原料が限られるために分子設計の自由度が少なく、また、該原料の入手が容易ではないために汎用性が不十分であり工業的に不利であった。
特許文献3に記載のシリコーンモノマーは、二官能型であり架橋剤として作用する。しかし、かかる架橋効果を有するモノマー単独でポリマーを形成する場合、単官能型のモノマーを用いる場合に比べて、架橋点が増えることに起因して重合体が固すぎたり脆くなってしまう等、諸物性の調整に困難が生じるおそれがあった。
以上の様に、耐脂質汚染性に優れ十分な酸素透過性を有するポリマーおよびメディカルデバイス、特にコンタクトレンズに代表される眼用レンズが望まれており、該ポリマーおよびメディカルデバイスを得るために、合成が比較的簡便であり汎用性が高い単官能型の含フッ素炭化水素基含有シリコーンモノマーおよびその製造方法が望まれている。
そこで、本発明においては、簡便に調製が可能で、設計の汎用性が高く、十分な酸素透過性を有し耐脂質汚染性に優れ、かつ透明度が高いメディカルデバイスに用いるのに好適な含フッ素炭化水素基含有シリコーンモノマーを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達するべく、鋭意検討した結果、下記式(a)で表されるシリコーンモノマーが、簡便に調製が可能で、設計の汎用性が高く、十分な酸素透過性を有し耐脂質汚染性に優れ、かつ透明度が高いメディカルデバイスに用いるのに好適であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は下記式(a)で表されるシリコーンモノマー、および該シリコーンモノマー由来の構造を含むメディカルデバイスを提供する。
Figure 2017115005
式(a)中、Rは水素またはメチル基を表す。
Xは酸素原子またはNHを表す。
Yは下記式(a2)の構造のうちのいずれか少なくとも1つを表す。
Figure 2017115005
但し、*はRとの共有結合を表す。
Lは直鎖状でも分岐状でもよい炭素数1〜10の二価の炭化水素基を表す。
はシロキサニル基を表す。
は直鎖状でも分岐状でもよい炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基を表す。
本発明の含フッ素炭化水素基を有するシリコーンモノマーは、簡便に調製が可能で、設計の汎用性が高く、比較的所望の通りに含フッ素炭化水素基とシロキサニル基の組み合わせを有するモノマーとして調製することができる。また、該モノマーはシロキサニル基を有することによって良好な酸素透過性を有すると共に、含フッ素炭化水素基による撥油性によって耐脂質汚染性に優れ、かつ含フッ素炭化水素基とシロキサニル基が1分子中に共存することにより重合溶液の調製時に相分離が起こりにくく、透明度が高いポリマーが得られる。以上の特性から、該モノマーはメディカルデバイスに用いるのに好適であり、その中でも眼用レンズ、とりわけコンタクトレンズに好適に用いることができる。
本発明の含フッ素炭化水素基を有するシリコーンモノマーは、上記式(a)に表すとおりであり、分子内に1つの(メタ)アクリルアミド基または(メタ)アクリロイロキシ基と、直鎖状でも分岐状でもよい炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基(R)と、シロキサニル基(R)を有する。該モノマーを重合して得られるポリマーにおいて、含フッ素炭化水素基は耐脂質汚染性を向上させる効果を示し、また、シロキサニル基は酸素透過性を向上させる効果を示す。
(好ましい構造について)
上記式(a)中、Yは上記式(a2)の構造のうちのいずれか少なくとも1つを表す。
Yはシリコーンモノマーと含フッ素炭化水素基の連結部であるが、かかる連結部は、含フッ素炭化水素基を導入する際の原料となる化合物の官能基が反応して生ずる構造であり、該官能基との反応性から、下記式(a3)で表される構造が好ましく、下記式(a4)で表される構造がより好ましい。
Figure 2017115005
Figure 2017115005
但し、*はRとの共有結合を表す。
上記式(a)中、Lはシロキサニル基とその他の部分との連結部であって、直鎖状でも分岐状でもよい炭素数1〜10の二価の炭化水素基を表す。優れた柔軟性が得られるという観点から、炭素数2〜10が好ましく、2〜8がより好ましく、3〜6が最も好ましい。なお、好ましい範囲の上限値と下限値はどれとどれを組み合わせてもよい。
該二価の炭化水素基において、一部のメチレン基が酸素原子または硫黄原子またはNHおよびこれらの組み合わせによって置換されていてもよい。その場合には、優れた柔軟性が得られるという観点から、該二価の炭化水素基の一部において、メチレン基が酸素原子に置換されているものが好ましい。
また、該二価の炭化水素基において、一部の水素原子がヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基(−SOH)、硫酸基(−OSOH))、ホスホン酸基(−PO(OH))、りん酸基(−OPO(OH))、メルカプト基(−SH)に置換されていてもよい。その場合には、水濡れ性が向上するという観点から、ヒドロキシ基、カルボキシ基が好ましい。また、水濡れ性と該モノマーの加水分解に対する安定性との両立の観点から、ヒドロキシ基が最も好ましい。
ここで、本発明において、(メタ)アクリロイロキシとはアクリロイロキシおよびメタクリロイロキシを指し、(メタ)アクリルアミドとはアクリルアミドおよびメタクリルアミドを指す。上記式(a)中のRを含む末端の構造については、上記の内、重合速度が速く短時間で重合が進行するという観点から、アクリルアミド基および(メタ)アクリロイロキシ基が好ましく、アクリルアミド基およびアクリロイロキシ基がより好ましく、アクリルアミド基が最も好ましい。
本発明において、含フッ素炭化水素基とは、炭化水素基の少なくとも1つの水素原子がフッ素に置換されているものを指す。上記式(a)のRは直鎖状でも分岐状でもよい炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基であるが、かかる含フッ素炭化水素基の一部をなすCH,CHF,CFのいずれかの基が、酸素原子または硫黄原子またはNHおよびこれらの組み合わせによって置換されていてもよい。その場合には、優れた柔軟性が得られるという観点から、上記の基が酸素原子に置換されているものが好ましい。Rcに含まれる炭素数の上限は20が好ましく、12がより好ましく、8が最も好ましく、下限は1が好ましく、2がより好ましく、3が最も好ましい。なお、上限値と下限値は、どれとどれを組み合わせても良い。
また、該含フッ素炭化水素基において、一部の水素またはフッ素原子がヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基(−SOH)、硫酸基(−OSOH))、ホスホン酸基(−PO(OH))、りん酸基(−OPO(OH))、メルカプト基(―SH)のいずれかに置換されていてもよい。その場合には、水濡れ性が向上するという観点から、ヒドロキシ基、カルボキシ基が好ましい。また、水濡れ性と該モノマーの加水分解に対する安定性との両立の観点から、ヒドロキシ基が最も好ましい。
上記Rの好適な例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロペンタデシル基、パーフルオロエイコシル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル基、ジフルオロメチル基、2,2−ジフルオロメチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、1−(トリフルオロメチル)−2,2,2−トリフルオロエチル基、1−(トリフルオロメチル)―2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基などが挙げられる。
上記のうち、特に入手の容易さの観点から、Y−Rが下記式(d)で表される構造を有するものが好ましい。
Figure 2017115005
式(d)中、pおよびqはそれぞれ独立に0〜19の整数を表す。但し0≦p+q≦19である。pは少ない方が耐脂質汚染性を向上させることができ、p≦qが好ましく、0≦p≦5が好ましく、0≦p≦2がより好ましく、0≦p≦1が最も好ましい。特に眼用レンズ等の軟質メディカルデバイスに用いる場合には、成形後の硬さを抑えるために0≦q≦17が好ましく、0≦q≦9がより好ましく、0≦q≦5が最も好ましい。
上式(d)を満たす中でも、入手が容易という観点でより好ましいのは、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基である。
本発明において、シロキサニル基とは、少なくとも1つのシロキサン結合を有する基を指し、工業的に比較的安価に入手できることから特に好適なものはトリス(トリメチルシロキシ)シリル基、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル基、トリメチルシロキシジメチルシリル基、ポリジメチルシロキサン基、ポリメチルシロキサン基などである。
本発明において、シロキサニル基は直鎖状でも分岐状でもよい。
ここで、直鎖状のシロキサニル基とは、上記式(a)中において、Lに結合しているケイ素原子から始まる単線状に結合されている構造を指し、好ましくは下記式(b)で表される構造を指す。
Figure 2017115005
式(b)中、R〜Rは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6から20のアリール基を表す。
nは0〜10の整数を表す。nは小さすぎると十分な酸素透過性が得られないことがある。一方で、大きすぎると他のモノマーとの相溶性が低下し、透明な重合体を得ることが困難になることがある。したがって、いくつかの実施形態においては、nの下限値は1が好ましく、2がより好ましい。また、nの上限値は6が好ましく、5がより好ましく、4が最も好ましい。下限値と上限値はどれとどれを組み合わせてもよい。さらに、得られるポリマーの物性の再現性を高めるためには、nは分布を有しないことが好ましい。ここで、本発明において、分布を有しないとは、ガスクロマトグラフィー(GC)(FID分析計)で測定できるモノマーの場合はGCで測定した場合の、あるいはGCで測定できない場合は液体クロマトグラフィー(LC)(RIおよび/またはUV検出器)で測定した際の異なるnの値の種々のピークにおいて、最大ピークの比率が80%以上であることを示す。
また、本発明において、分岐状のシロキサニル基とは、Lに結合しているケイ素原子から始まる単線上に結合されている構造の一部から枝分かれしているシロキサン結合を有する構造を指す。好ましくは下記式(c)で表される構造を指し、式(c)中のR10〜R15からさらにシロキサニル基が分岐していてもよい。
Figure 2017115005
式(c)中、R〜R11はそれぞれ独立に水素または置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基のいずれかを表す。w,x,y,zはそれぞれ独立に0〜10の整数を表す。但しx,y,zのうちいずれか2つ以上が0である場合は除く。
また、w,x,yおよびzの和は小さすぎると十分な酸素透過性が得られないことがあり、大きすぎると他のモノマーとの相溶性が低下し、透明な重合体を得ることが困難になることがあり、この場合形状回復性が低下してしまうことがある。したがって、いくつかの実施形態においては、w,x,yおよびzの和は3〜8が好ましく、3〜5がより好ましく、3〜4が最も好ましい。さらに、得られるポリマーの物性の再現性を高めるためにはw,x,yおよびzの和は分布を有しないことが好ましい。
(製造方法について)
本発明のモノマーは、一般的な有機合成化学の方法を用いて調製できる。上記式(a)で表されるモノマーの調製方法の例としては、下記式(e)で表される化合物が有するヒドロキシ基に含フッ素炭化水素基を導入する方法が挙げられる。
Figure 2017115005
式(e)中、Rは水素またはメチル基を表す。
Zは水素または加水分解可能な基またはアルカリ金属塩となる様な基を表す。加水分解可能な基としては、加水分解性の保護基として知られている基が好ましく、例えばアルキルエステル、トリアルキルシラン、トリチル基などが挙げられる。上記式(e)中において、Zは水素原子が最も好ましい。ある実施形態では、OZに保護基を有するものを用いて、含フッ素炭化水素基の導入の前に脱保護をしてから該反応に供してもよい。
またある実施形態では、OZが部分的にアルカリ金属塩となるような基を含んでいてもよく、脱塩処理を行ってから該反応に供してもよい。アルカリ金属塩となる様な基としては、ONa,OK,OLiなどが挙げられる。
Xは酸素原子またはNHを表す。
Lは直鎖状でも分岐状でもよい炭素数1〜10の二価の炭化水素基を表す。
はシロキサニル基を表す。
上記式(e)で表される化合物の合成方法は、例えば特開昭54−61126号公報、特表2009−542674号公報、特表2009−542850号公報、国際公開第2005/078482号公報、特表2013−525512号公報に記載の方法で合成することができる。
上記式(e)で表される化合物は、反応に用いることの出来る官能基としてヒドロキシ基を有しているために、所望の置換基を導入することが可能である。一方で、多くの入手可能なラジカル重合性のシリコーンモノマーはこの様な官能基を有しないことが多く、例えば含フッ素炭化水素基の導入などによる新たな機能性の付与が困難である。
含フッ素炭化水素基の導入に際しては、ハロゲン化アルキル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カルボキシ基、酸無水物基及びカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1つを有する含フッ素化合物を利用することができる。上記の官能基の内では、反応の利便性の観点から、イソシアネート基、イソチオシアネート基、カルボン酸ハライド基、エポキシ基が好ましく、不要な副生成物を生じにくいためにイソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基がより好ましい。
(シリコーンポリマーについて)
続いて、本発明のシリコーンポリマーについて説明する。本発明のシリコーンポリマーは、上記したシリコーンモノマーを重合して得られる物であるが、良好な機械物性が得られ、消毒液や洗浄液に対する良好な耐性が得られるという意味で、1分子中に2個以上の共重合可能な炭素‐炭素不飽和結合を有するモノマーを共重合成分として用いることが好ましい。1分子中に2個以上の共重合可能な炭素‐炭素不飽和結合を有するモノマーの共重合比率は、重合原液等の中におけるモノマー成分およびポリマー成分の総量を基準として、0.1質量%以上が好ましく、0.3%質量以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。
本発明のシリコーンポリマーは、上記式(a)で表されるモノマーを単独で重合して得ることも、他のモノマーと共重合して得ることも可能である。
共重合する場合の他のモノマーとしては、共重合可能であれば特に制限はなく、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、アリル基、ビニル基、および他の重合可能な炭素‐炭素不飽和結合を有するモノマーを使用することができる。以下、その例をいくつか挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、ビニル安息香酸、メチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、N,N−ジメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、スチレンなどの芳香族ビニルモノマーなどである。
特にコンタクトレンズを作製する場合には、親水性モノマーと共重合してシリコーンハイドロゲルレンズとしても、疎水性モノマーと共重合して非含水性レンズとしてもよい。
シリコーンハイドロゲルを調製する場合には、本発明のシリコーンポリマーは、少なくとも1種の親水性モノマーと本発明のシリコーンモノマーとを共重合することにより得ることが好ましい。親水性モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、グリセリル(メタ)アクリレートおよびポリ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、ビニル安息香酸等の重合性カルボン酸モノマー、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドおよびN−ビニル−N−メチルアセトアミド等のN−ビニルアミドモノマーならびに(メタ)アクリルアミド、Ν,Ν−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミドモノマーなどが挙げられる。使用する親水性モノマーの量の範囲が大きすぎると酸素透過性が低下することがあり、小さすぎるとシリコーンハイドロゲルが硬くなりすぎることがあるため、親水性モノマーの量は、重合原液等の中におけるモノマー成分およびポリマー成分の総量を基準として好ましくは1〜50質量%、いくつかの実施形態において好ましくは10〜40質量%、また他の実施形態において好ましくは15〜35質量%である。好ましい下限値は、1質量%、10質量%および15質量%である。好ましい上限値としては、50質量%、40質量%および35質量%が挙げられる。上記好ましい下限値と好ましい上限値とはどれとどれを組み合わせてもよい
本発明のシリコーンポリマーは、紫外線吸収剤や色素、着色剤などを含むものでもよい。また重合性基を有する紫外線吸収剤や色素、着色剤を共重合した形で含有してもよい。
本発明のシリコーンポリマーを重合により得る際は、重合をしやすくするために、過酸化物やアゾ化合物に代表される熱重合開始剤や、光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合は、所望の反応温度に対して最適な分解特性を有するものを選択して使用する。一般的には10時間半減期温度が40℃〜120℃のアゾ系開始剤および過酸化物系開始剤が好適である。光重合開始剤としてはカルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、および金属塩などを挙げることができる。これらの重合開始剤は単独または混合して用いられ、およそ1質量%くらいまでの量で使用される。
本発明のシリコーンポリマーを重合により得る際は、重合溶媒を使用することができる。溶媒としては有機系、無機系の各種溶媒が適用可能であり特に制限はない。例を挙げれば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノールなどの各種アルコール系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチルなどの各種エステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどの各種グリコールエーテル系溶剤であり、これらは単独あるいは混合して使用することができる。
(シリコーンポリマーの用途について)
本発明のシリコーンポリマーは、単独で所望の形状に成型して使用できるが、他の材料とブレンドしてから成型することもできる。また、成形品の表面にコーティングを施してもよい。
本発明のシリコーンポリマーの用途としては、メディカルデバイスが好適である。具体的には、眼用レンズ、内視鏡、カテーテル、輸液チューブ、気体輸送チューブ、ステント、シース、カフ、チューブコネクター、アクセスポート、排液バッグ、血液回路、創傷被覆材及び各種の薬剤担体が挙げられるが、中でもコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜、角膜インレー及び角膜オンレー等の眼用レンズが好適であり、コンタクトレンズが最も好適である。
本発明のシリコーンポリマーを成型して眼用レンズとして用いる場合、その重合方法及び成形方法は次のような標準的な方法でよい。例として、まずシリコーンポリマーを丸棒や板状に成形してから切削加工や旋盤加工などによって所望の形状に仕上げる方法、モールド重合法、スピンキャスト法などが挙げられる。
一例として、モールド重合法により本発明のシリコーンポリマーから眼用レンズを作製する場合について次に説明する。
モノマー組成物を、レンズ形状を有する2枚のモールドの間の空隙に注入する。次に、光重合又は熱重合を行ってレンズ形状に賦型する。モールドは樹脂、ガラス、セラミックス、金属等で製作されているが、光重合の場合は光重合波長を通す素材が用いられ、通常は樹脂又はガラスが使用される。レンズを製造する場合には、2枚の対向するモールドにより空隙が形成されており、その空隙にモノマー組成物が注入される。続いて、空隙にモノマー組成物を充填したモールドに、紫外線、可視光線又はそれらの組合せ等の活性光線を照射するか、またはモールドをオーブンや液槽に入れて加熱して、モノマーを重合する。光重合の後に加熱重合したり、逆に加熱重合後に光重合するなど、両者を併用する方法もあり得る。光重合の場合は、例えば水銀ランプや蛍光灯等の光源からの高レベルの光を含む光を短時間(通常は1時間以下)照射するのが一般的である。熱重合を行う場合には、室温付近から徐々に昇温し、数時間ないし数十時間かけて60℃〜200℃の高温まで高めていく条件が、シリコーンポリマーの光学的な均一性、品位を保持し、かつ再現性を高めるために好まれる。
(表面処理について)
本発明のシリコーンポリマーおよびメディカルデバイスは、種々の方法で改質することができる。用途が眼用レンズであり、かつ内部に親水性ポリマーを含まない場合は、レンズの湿潤性を向上させるために改質処理を行ってもよい。
具体的な改質方法としては、電磁波(光を含む)照射、プラズマ照射、蒸着、スパッタリングなどのケミカルベーパーデポジション処理、加熱、モールドトランスファーコーティング、塩基処理、酸処理、及びその他好適な表面処理剤による処理が挙げられ、またこれらを組み合わせて使用することもできる。より具体的な方法としては、例えば浸漬法、噴霧法、ヘラ、刷毛等で塗布する方法、スピンコート法、ディップコート法などを挙げることができる。最も簡便に大きな改質効果が得られる方法は、例えば国際公開第2013/024799号公報および国際公開第2011/102356号公報に記載されている様な、成型品を好適な表面処理剤を含む溶液に浸漬する方法である。
以上のような改質処理は、メディカルデバイス全体に対して行ってもよく、表面の一部のみに行ってもよい。表面の一部のみに改質処理を行った場合には、メディカルデバイス全体の物性を大きく変えることなく表面の濡れ性を向上させることができる。
(評価方法について)
本発明のシリコーンポリマーの酸素透過性に関しては、酸素透過率(Dk/t)が30×10−9(cm mLO)/(mL sec mmHg)以上が好ましく、50×10−9(cm mLO)/(mL sec mmHg)以上がより好ましく、80×10−9(cm mLO)/(mL sec mmHg)以上が最も好ましい。本発明のシリコーンポリマーの酸素透過率は、例えばMOCON社製OX−TRAN2/21を用いてクーロメトリック法により測定することができる。
本発明のシリコーンポリマーの耐脂質汚染性に関しては、後述する脂質付着試験によって評価することができる。例えば脂質付着試験は、パルミチン酸メチルを脂質モデル分子とし、その付着量から評価することができる。パルミチン酸メチルの付着量が少ないほど好ましく、ほとんど付着しないのがより好ましく、全く付着しないのが最も好ましい。
本発明のシリコーンポリマーの透明性に関しては、ホウ酸緩衝液による湿潤状態のサンプルの透明性を目視観察することで評価できる。白濁、むら、光学歪みが観察されないのが好ましく、完全に透明で均一であるのがより好ましい。
本発明のシリコーンポリマーの形状回復性を表す値は、後述する測定方法により測定する応力ゼロ時間である。応力ゼロ時間は、短いほどシリコーンハイドロゲルの形状回復性が良好であることを示し、値は1秒以下が望ましく、0.95秒以下がより好ましく、0.9秒以下が最も好ましい。本発明のシリコーンポリマーの応力ゼロ時間の測定は以下の方法で行う。幅5mm長さ1.5cmの短冊状サンプルをレンズ中央付近から切り出して、動的粘弾性測定装置で測定する。チャック幅5mmにてサンプルを取り付け、速度100mm/分で5mm引っ張った後、このサンプルを同速度で初期長(5mm)まで戻す、というこのサイクルを3回繰り返す。サンプルを初期長まで戻す2回目の途中で応力がゼロになった時点から3回目の引っ張りサイクル開始後に応力がかかり始めた(応力がゼロでなくなった)時点までの時間の長さを求め、応力ゼロ時間とする。
本発明のシリコーンポリマーの引っ張り弾性率は、用途が眼用レンズ、特にソフトコンタクトレンズの場合、快適な装用感を得るためには200psi以下、いくつかの実施形態においては150psi未満以下、また他の実施形態においては100psi未満以下である。
本発明のシリコーンポリマーの伸度は好ましくは100%以上、いくつかの実施形態において好ましくは150%以上、また他の実施形態において好ましくは200%以上である。伸度の値が高いほど、シリコーンハイドロゲルが破れにくいことを意味する。本発明のシリコーンポリマーの弾性率および伸度は、最も狭い部分の幅が5mmのアレイ型サンプルを切り出した後に引張試験機で速度100mm/分で引っ張って測定する。
本発明のシリコーンポリマーの水濡れ性は、水濡れ時間を測定することによって評価できる。試験片を緩衝溶液中より取り出し、空中で垂直になるように試験片を保持した際の表面の様子を目視観察し、表面の液膜の保持時間を測定する。液膜の保持時間は5秒以上が好ましく、10秒以上がより好ましく、20秒以上がさらに好ましい。
以下、実施例により本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
<測定方法>
本実施例における各種測定は、以下に示す方法で行った。
(1)プロトン核磁気共鳴スペクトル
日本電子社製のEX270型を用いて測定した。溶媒にクロロホルム−dを使用した。
(2)ガスクロマトグラフィー(GC)
島津製作所製GC−18A(FID検出器)を用い、キャピラリーカラムにアジレント社HP−ULTRA2(長さ25m×内径0.32mm×膜厚0.52マイクロメートル)を用いて以下の条件で測定した。
温度プログラム 注入口温度:300℃ 検出器温度:320℃
カラム温度:初期温度50℃(1分)→10℃/分の速度で温度上昇→300℃(14分間保持)(合計40分)
キャリアガス:ヘリウムガス(110kPa)
サンプル調製:1mLの溶媒(酢酸エチル)で希釈した100μLの反応液をサンプルとして用いた。
(3)酸素透過率
MOCON社製OX−TRAN2/21を用いて測定した。35℃の温度下でコンタクトレンズ形状の測定治具を用いてレンズ中央部の面積0.347cmを測定対象とした。
(4)脂質付着試験(耐脂質汚染性)
測定対象となる球冠形状のコンタクトレンズサンプル10枚を準備した。500mlのビーカーに攪拌子(36mm)を入れ、パルミチン酸メチル1.5gと純水500gを入れた。ウォーターバスの温度を37℃に設定し、前述のビーカーをウォーターバスの中央に置き、マグネチックスターラーで1時間攪拌した。回転速度は600rpmとした。球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)のコンタクトレンズサンプルを1枚ずつバスケットに入れ、前述のビーカー内に投入し、そのまま攪拌した。1時間後、攪拌を止め、バスケット内のサンプルを40℃の水道水と家庭用液体洗剤(ライオン株式会社製“ママレモン”(登録商標))でこすり洗いした。洗浄後のサンプルを蒸留水が入った12ウェルプラスチックディッシュに入れ、冷蔵庫中で終夜静置した。サンプルの白濁を目視観察し、下記の基準に分類してサンプルへのパルミチン酸メチルの付着の度合いの目安として、耐脂質汚染性の指標とした。
5:白濁が無く透明である。
4:白濁した部分がわずかにある。
3:白濁した部分が相当程度ある。
2:大部分が白濁している。
1:全体が白濁している。
(5)透明性
ホウ酸緩衝液による湿潤状態のサンプルを3枚重ねにして透明性を目視観察し、下記の基準で5段階評価した。
5:濁りがなく透明。
4:かすかに白濁。
3:若干白濁があり半透明。
2:白濁があり透明性が全くない。
1:完全に白い。
(6)応力ゼロ時間
レンズ中央付近から幅5mm、長さ約1.5cmの短冊状サンプルを切り出し、(株)サン科学製レオメータCR−500DXを用いて測定した。チャック幅5mmにてサンプルを取り付け、速度100mm/分で5mm引っ張った後、このサンプルを同速度で初期長(5mm)まで戻す、というサイクルを3回繰り返した。サンプルを初期長まで戻す2回目の途中で応力がゼロになった時点から3回目の引っ張りサイクル開始後に応力がかかり始めた(応力がゼロでなくなった)時点までの時間の長さを求め、応力ゼロ時間とした。
(7)弾性率・伸度
湿潤状態のコンタクトレンズサンプルから、鉄亜鈴型サンプル(持ち手部分に相当する最も狭い部分の幅が5mm)を切り出し、ABCデジマチックインジケータ(ID−C112、株式会社ミツトヨ製)を用いて厚みを測定し、次にテンシロン(東洋ボールドウィン社製RTM−100、クロスヘッド速度100mm/分)により、弾性率及び伸度を測定し、3枚のレンズの測定結果の平均値を求めた。
(8)濡れ時間
コンタクトレンズサンプルを、室温(25℃)でビーカー中のホウ酸緩衝液中に24時間以上浸漬して試験片とした。試験片とホウ酸緩衝液の入ったビーカーを超音波洗浄器にかけた(1分間)。試験片をホウ酸緩衝液から引き上げ、空中に直径方向が垂直になるように保持した際の表面の様子を目視観察し、表面の液膜の保持時間を測定した。ここで直径とはコンタクトレンズの縁部が形成する円の直径である。
(9)ホウ酸緩衝液
本発明においてホウ酸緩衝液とは、特表2004−517163号公報の実施例1中に記載の「塩溶液」である。具体的には塩化ナトリウム8.48g、ホウ酸9.26g、ホウ酸ナトリウム(四ホウ酸ナトリウム十水和物)1.0g、及びエチレンジアミン四酢酸0.10gを純水に溶かして1000mLとした水溶液である。
<モノマー合成例>
(合成例1)
Figure 2017115005
特表2009−542674号公報に記載の方法に従って、シリコーンモノマー(化合物M1)を合成した。得られた化合物M1を0.6131g(1mmol)採って酢酸エチル10mLに溶解しトリエチルアミン0.42mL(3mmol、3当量)を加え、マグネチックスターラーで撹拌後、氷浴上でヘプタフルオロブチリルクロリド(東京化成工業株式会社製)0.14mL(1mmol、1当量)を滴下した。室温で1時間撹拌した後、生じた塩を濾去し濃縮し、その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(体積比でヘキサン:酢酸エチル=15:1)で精製し、透明な油状の目的物(M2)を0.75g(0.927mmol)得た。M2の収率は92.7%であり、GC測定から求めた純度は98.2%であった。目的物はプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定することにより確認した。測定結果は下記の通りであった。H(270MHz, CDCl) δ(ppm)=6.09(1H)、5.61(1H)、5.49(1H)、4.51−4.27(2H)、3.65(2H)、3.43(2H)、1.93(3H)、1.64(2H)、1.32(4H)、0.90(3H)、0.52(4H)、0.10−0.05(30H)
(合成例2)
Figure 2017115005
特開昭54−61126号公報に記載の方法に従って、シリコーンモノマー(化合物M3)を合成した。化合物M3を5.07g(12mmol)採ってヘキサン50mLに溶解し、トリエチルアミン5.05mL(36mmol、3当量)を加え、マグネチックスターラーで撹拌後、氷浴上でヘプタフルオロブチリルクロリド(東京化成工業株式会社製)1.78mL(12mmol、1当量)を滴下した。1時間室温で撹拌した後、生じた塩を濾去し、有機層を飽和重曹水と飽和食塩水で洗浄・分液し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ヘキサンを留去して透明な油状の目的物(M4)を7.31g(11.8mmol)得た。M4の収率は98.3%であり、GCによる純度は95.6%であった。目的物はプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定することにより確認した。測定結果は下記の通りであった。H(270MHz, CDCl) δ(ppm)=6.11(1H)、5.60(1H)、5.49(1H)、4.51(2H)、4.35(2H)、3.67−3.38(4H)、1.93(3H)、1.53(2H)、0.44(2H)、0.09(18H)、0.01(3H)
(実施例1)
化合物M2を15質量%、大阪有機化学工業製“ビスコート” (登録商標) 3Fを74.9質量%、東京化成工業株式会社製1,6−ビス(アクリロイルオキシ)−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサンを2質量%、東京化成工業株式会社製 アクリル酸1H,1H−ペンタデカフルオロ−n−オクチルを8質量%としてガラス製スクリューキャップに秤量し、光開始剤としてBASF製イルガキュア819を0.5質量%、tert−アミルアルコール10質量%をさらに加えてよく撹拌した。この溶液を窒素ガス環境下のグローブボックス中で、球冠状のコンタクトレンズ形状を作成するための透明樹脂(フロントカーブ側:ゼオノア、ベースカーブ側:ポリプロピレン)製モールドの空隙にモノマー混合物を注入し、光照射(フィリップスTL03、1.6mW/cm、15分間)して硬化させることによりレンズを得た。得られたレンズをモールドから剥離し、2−プロパノールに70℃で60分間浸漬することにより残存モノマーなどの不純物を抽出した。風乾して2−プロパノールを除いた後、国際公開第2011/102356号公報の実施例19に記載の方法に従って表面処理を施した後、サンプルを5mLバイアル瓶中のホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)中に沈め、バイアル瓶をオートクレーブに入れて120℃で30分間煮沸した。
得られたレンズの評価は良好であった。
(実施例2)
化合物M2の代わりに化合物M4を用いた以外は実施例1と同様にしてサンプルを作成した。得られたレンズの評価は良好であった。
(実施例3)
化合物M4の量を30質量%、ビスコート3Fの量を59.9質量%にした以外は実施例2と同様にしてサンプルを作成した。得られたレンズの評価は良好であった。
以上の様にして得られたレンズを用いて各種物性の評価を行った。結果を表1に示す。
耐脂質汚染性に優れ、十分な酸素透過性を有し、透明で柔らかく形状回復性の良いレンズが得られた。
Figure 2017115005
本発明のシリコーンモノマーおよびシリコーンポリマーの用途としては、メディカルデバイスが好適である。具体的には、眼用レンズ、内視鏡、カテーテル、輸液チューブ、気体輸送チューブ、ステント、シース、カフ、チューブコネクター、アクセスポート、排液バッグ、血液回路、創傷被覆材及び各種の薬剤担体が挙げられるが、中でもコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜、角膜インレー及び角膜オンレー等の眼用レンズが好適であり、コンタクトレンズが最も好適である。

Claims (10)

  1. 下記式(a)で表されるシリコーンモノマー。
    Figure 2017115005
    式(a)中、Rは水素またはメチル基を表す。
    Xは酸素原子またはNHを表す。
    Yは下記式(a2)の構造のうちのいずれか少なくとも1つを表す。
    Figure 2017115005
    但し、*はRとの共有結合を表す。
    Lは直鎖状でも分岐状でもよい炭素数1〜10の二価の炭化水素基を表す。
    はシロキサニル基を表す。
    は直鎖状でも分岐状でもよい炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基を表す。
  2. 前記L−Rが下記式(b)で表わされる請求項1記載のシリコーンモノマー。
    Figure 2017115005
    式(b)中、R〜Rは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表す。nは1〜10の整数を表す。
  3. 前記L−Rが下記式(c)で表される、請求項1記載のシリコーンモノマー。
    Figure 2017115005
    式(c)中、R〜R18は、それぞれ独立に、水素または置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基のいずれかを表す。w,x,y,zはそれぞれ独立に0〜10の整数を表す。但しx,y,zのうちいずれか2つ以上が0である場合は除く。
  4. 前記Y−Rが下記式(d)で表される請求項1〜3のいずれか一項記載のシリコーンモノマー。
    Figure 2017115005
    式(d)中、pおよびqはそれぞれ独立に0〜19の整数を表す。但し0≦p+q≦19である。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項記載のシリコーンモノマー由来の構造単位を含むシリコーンポリマー。
  6. 前記1〜4のいずれか一項記載のシリコーンモノマー由来の構造単位を含むメディカルデバイス。
  7. 眼用レンズである請求項6記載のメディカルデバイス。
  8. コンタクトレンズである請求項7記載の眼用レンズ。
  9. 下記式(e)で表される化合物に、ハロゲン化アルキル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カルボキシ基、酸無水物基およびカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1つを有する含フッ素化合物を反応させる、シリコーンモノマーの製造方法。
    Figure 2017115005
    式(e)中、Rは水素またはメチル基を表す。
    Zは水素または加水分解可能な基またはアルカリ金属塩となる様な基を表す。
    Xは酸素原子またはNHを表す。
    Lは直鎖状でも分岐状でもよい炭素数1〜10の二価の炭化水素基を表す。
    はシロキサニル基を表す。
  10. 請求項9記載の製造方法において得られたシリコーンモノマーを重合して得られる、シリコーンポリマーの製造方法。
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