(第一実施形態)
本発明に係る温冷感調整装置の第一実施形態について、図面を参照しながら説明する。温冷感調整装置1は、室内空間Aに配設され、使用者Bの温冷感(温度感覚)および使用者Bの後述する睡眠遷移状態に応じて、寝床S内の温度を制御することにより、使用者Bの温冷感の調整および使用者Bの睡眠の質の向上を行うものである。室内空間Aは、図1に示すように、使用者Bが就寝するベッド2が置かれている。ベッド2は、フレーム部(図示なし)、フレーム部に配置された寝具としてのマットレス2a、掛け布団2b並びに4つの脚部2cを備えている。使用者Bは、頭部B1をベッド2の長手方向一端側に載せ、かつ、下腿部(足)B5をベッド2の長手方向他端側に載せて横臥する姿勢でベッド2上の寝床S内に入床する。寝床Sは、具体的には、マットレス2aと掛け布団2bによって形成される。寝床S内は、マットレス2aと掛け布団2bとの間の空間である。
温冷感調整装置1は、図1に示すように、複数(本実施形態においては15個)の温度センサ10、複数(本実施形態においては6個)の湿度センサ20、複数(本実施形態においては4個)の荷重センサ30、ファンユニット40および制御装置50を備えている。各温度センサ10、各湿度センサ20、荷重センサ30およびファンユニット40と制御装置50とは、有線または無線によって通信可能に接続されている。
各温度センサ10は、寝床Sであるマットレス2aに配設され、配設された部位の温度を検出するものである。各温度センサ10は、寝床S内の温度を検出する。温度センサ10は、本実施形態において、マットレス2a内におけるマットレス2aの表層近傍に、ベッド2の長手方向に沿って5列に、かつ、ベッド2の幅方向に沿って3列におよそ等間隔に配設されている。複数の温度センサ10は、ベッド2の長手方向に沿って使用者Bの頭部B1側から下腿部B5に向かって順に列毎に、頭部温度センサ10a、体幹部温度センサ10b、上腿部温度センサ10cおよび下腿部温度センサ10dに区別される。
頭部温度センサ10aは、使用者Bの頭部B1または頭部B1周辺の位置に配設されている。体幹部温度センサ10bは、使用者Bの上側の体幹部である上体幹部B2、下側の体幹部である下体幹部B3、または、体幹部B2,B3周辺の位置に配設されている。上体幹部B2は、使用者Bの頸部から胸部又は背部に亘る部分である。下体幹部B3は、使用者Bの腹部から腰部に亘る部分である。上腿部温度センサ10cは、使用者Bの上腿部B4または上腿部B4周辺の位置に配設されている。下腿部温度センサ10dは、使用者Bの下腿部B5または下腿部B5周辺の位置に配設されている。各温度センサ10の検出結果は、制御装置50に送信される。
各湿度センサ20は、寝床Sであるマットレス2aに配設され、配設された部位の湿度を検出するものである。各湿度センサ20は、寝床S内の湿度を検出する。また、各湿度センサ20は、使用者Bが入床している場合、使用者Bの発汗量を直接検出しない位置に配設されている。使用者Bの発汗によって、寝床S内の湿度が上昇する。各湿度センサ20の検出結果は、制御装置50に送信される。
各荷重センサ30は、ベッド2の脚部2cにそれぞれ配設されている。荷重センサ30は、使用者Bの荷重を検出するものである。荷重センサ30は、例えば歪ゲージを含んで構成されている。各荷重センサ30の検出結果は、制御装置50に出力される。
ファンユニット40は、制御装置50からの制御指令値に基づいて、寝床S内の使用者Bに対して後述する温度刺激を付与するものである。ファンユニット40は、マットレス2a外部の空気を寝床S内に供給する複数(本実施形態では三つ)の給気ファンユニット41a,41b,41cと、寝床S内に供給された空気を吸引してマットレス2a外部に放出する複数(本実施形態では二つ)の排気ファンユニット42a,42bとをベッド2の長手方向に沿って交互に隣り合う状態で配置して構成されている。また、給気ファンユニット41a,41b,41cには、寝床S内に供給される空気を加熱するヒータ(図示なし)を備えている。
三つの給気ファンユニット41a,41b,41cは、ベッド2の長手方向一端側(使用者Bの頭部B1側)から、長手方向他端側(使用者Bの下腿部B5側)に向かって順に、第一給気ファンユニット41a,第二給気ファンユニット41b,第三給気ファンユニット41cという。
二つの排気ファンユニット42a,42bは、ベッド2の長手方向一端側(使用者Bの頭部B1側)から、長手方向他端側(使用者Bの下腿部B5側)に向かって順に、第一排気ファンユニット42a,第二排気ファンユニット42bという。
各給気ファンユニット41a,41b,41cは、ベッド2の幅方向に並べた複数個(本実施形態では3個)の給気ファン41を一組として備えている。
各排気ファンユニット42a,42bは、ベッド2の幅方向に並べた複数個(本実施形態では3個)の排気ファン42を一組として備えている。
マットレス2a外部の空気は、いずれか一つの給気ファンユニット41a,41b,41cの駆動により、例えばベッド2の下部に設けた空気チャンバ(図示なし)から寝床S内に供給され、供給された空気は給気ファンユニット41a,41b,41cに隣り合ういずれか一方の排気ファンユニット42a,42bの駆動により寝床S内からマットレス2a外部に排出される。また、寝床S内の温度を上昇させたい場合、ヒータがオン状態とされる。一方、寝床S内の温度を低下させたい場合、ヒータがオフ状態とされる。
使用者Bに対する後述する温度刺激は、使用者Bの各部B2,B3,B4,B5の身体温度を変更することにより行われる。具体的には、使用者Bの上体幹部B2の身体温度は、第一給気ファンユニット41aと第一排気ファンユニット42aとの組み合わせを作動させることにより変更可能である。使用者Bの下体幹部B3の身体温度は、第二給気ファンユニット41bと第一排気ファンユニット42aとの組み合わせを作動させることにより変更可能である。使用者Bの上腿部B4の身体温度は、第二給気ファンユニット41bと第二排気ファンユニット42bとの組み合わせを作動させることにより変更可能である。使用者Bの下腿部B5の身体温度は、第三給気ファンユニット41cと第二排気ファンユニット42bとの組み合わせを作動させることにより変更可能である。
使用者Bの身体のうち、頭部B1,上体幹部B2および下体幹部B3が腰から上の上半身に相当し、上腿部B4および下腿部B5が腰より下の下半身に相当している。したがって、ファンユニット40は、給気ファンユニット41a,41b,41cと、排気ファンユニット42a,42bとの隣り合ういずれかの組み合わせを作動させることにより、使用者Bの上半身B1〜B3の一部の温度および下半身B4,B5の一部の温度を各別に変更可能に構成してある。ファンユニット40は、本発明の温冷感刺激装置に相当する。
制御装置50は、後述するように、使用者Bの温冷感の調整および使用者Bの睡眠の質を向上させる制御を行うものである。制御装置50は、図2に示すように、温度分布導出部51、体幹部温度導出部52、末梢部温度導出部53、寝床内湿度導出部54、温冷感推定部55、入床検知部56、睡眠遷移状態検知部57、温度刺激決定部58および駆動制御部59を備えている。
温度分布導出部51は、各温度センサ10の検出結果を取得するとともに、その検出結果から寝床Sの温度分布を導出する。温度分布導出部51によって導出された温度分布は、体幹部温度導出部52および末梢部温度導出部53に出力される。
体幹部温度導出部52は、寝床S内に横臥(入床)した使用者Bの体幹部の温度である体幹部温度Ttを導出するものである。本実施形態において、体幹部は、上体幹部B2および下体幹部B3である。体幹部温度導出部52は、温度分布導出部51からの温度分布に基づいて、体幹部温度Ttを導出する。例えば、体幹部温度センサ10bの上に使用者Bの体幹部が位置している場合、温度分布において、その体幹部温度センサ10bの検出結果が、他の温度センサ10の検出結果と比べて突出して高くなる。この場合、体幹部温度導出部52は、その体幹部温度センサ10bの検出結果を体幹部温度Ttとして導出する。一方、使用者Bの姿勢により体幹部温度センサ10bの上に使用者Bの体幹部が位置していない場合、温度分布において、体幹部温度センサ10bの上に使用者Bの体幹部が位置している場合に比べて、各体幹部温度センサ10bと他の温度センサ10との検出結果の差が小さくなる。この場合、体幹部温度導出部52は、寝床Sの温度勾配から使用者Bの体幹部温度Ttを推定して導出する。体幹部温度導出部52によって導出された体幹部温度Ttは、温冷感推定部55に出力される。なお、温度センサ10、温度分布導出部51および体幹部温度導出部52は、本発明の体幹部温度検出部を構成する。
末梢部温度導出部53は、寝床S内に横臥(入床)した使用者Bの末梢部の温度である末梢部温度Tmを導出するものである。本実施形態において末梢部は、下腿部B5である。末梢部温度導出部53は、温度分布導出部51からの温度分布に基づいて、末梢部温度Tmを導出する。例えば、下腿部温度センサ10dの上に使用者Bの下腿部B5が位置している場合、温度分布において、その下腿部温度センサ10dの検出結果が、他の温度センサ10の検出結果と比べて突出して高くなる。この場合、末梢部温度導出部53は、その下腿部温度センサ10dの検出結果を末梢部温度Tmとして導出する。一方、使用者Bの姿勢により下腿部温度センサ10dの上に使用者Bの下腿部B5が位置していない場合、温度分布において、下腿部温度センサ10dの上に使用者Bの下腿部B5が位置している場合に比べて、各下腿部温度センサ10dと他の温度センサ10との検出結果の差が小さくなる。この場合、末梢部温度導出部53は、寝床Sの温度勾配から使用者Bの末梢部温度Tmを推定して導出する。末梢部温度導出部53によって導出された末梢部温度Tmは、温冷感推定部55に出力される。なお、温度センサ10、温度分布導出部51および末梢部温度導出部53は、本発明の末梢部温度検出部を構成する。
寝床内湿度導出部54は、寝床内の湿度である寝床内湿度Hを導出するものである。寝床内湿度導出部54は、各湿度センサ20の検出結果を取得するとともに、その検出結果の平均値を寝床内湿度Hとして導出する。寝床内湿度導出部54によって導出された寝床内湿度Hは、温冷感推定部55に出力される。なお、湿度センサ20および寝床内湿度導出部54は、本発明の湿度検出部を構成する。
温冷感推定部55は、体幹部温度導出部52からの体幹部温度Tt、末梢部温度導出部53からの末梢部温度Tmおよび寝床内湿度導出部54からの寝床内湿度Hに基づいて、使用者Bの温冷感を推定する温冷感推定制御を行うものである(後述する)。温冷感推定部55によって推定された使用者Bの温冷感は、温度刺激決定部58に出力される。なお、温度センサ10、湿度センサ20、温度分布導出部51、体幹部温度導出部52、末梢部温度導出部53、寝床内湿度導出部54および温冷感推定部55は、本発明の温冷感推定装置を構成する。
入床検知部56は、荷重センサ30の検出結果を取得するとともに、その検出結果から使用者Bが寝床S内に入床したか否かを検知する。入床検知部56は、各荷重センサ30の検出結果の平均値が所定値以上となった場合、使用者Bが入床したと検知する。また、入床検知部56は、各荷重センサ30の検出結果の平均値が所定値より小さい場合、使用者Bが離床(入床していない状態)していると検知する。入床検知部56の検知結果は、睡眠遷移状態検知部57に出力される。
睡眠遷移状態検知部57は、荷重センサ30の検出結果および入床検知部56の検知結果を取得するとともに、使用者Bの睡眠遷移状態を検出するものである。睡眠遷移状態は、図3に示すように、使用者Bが入床してから、入床状態、入眠状態、熟眠状態、覚醒移行状態および覚醒状態の順番に遷移する。入床状態は、使用者Bが入床し、かつ目が覚めている状態である。入眠状態は、使用者Bが眠りに就こうとする状態である。熟眠状態は、使用者Bが眠りについている状態(レム睡眠とノンレム睡眠とが交互に現れる状態)である。覚醒移行状態は、使用者Bが眠りから覚めようとしている状態(熟眠状態から覚醒状態に移行している状態)である。覚醒状態は、使用者Bが眠りから覚めた状態である。また、入床状態、入眠状態および覚醒移行状態は、睡眠深度が浅い状態(レム睡眠およびノンレム睡眠における睡眠深度I,II)である。熟眠状態は、睡眠深度が深い状態(ノンレム睡眠における睡眠深度III,IV)である。一般的に、使用者Bの睡眠深度が深くなるにしたがって、使用者Bの体動数が少なくなる。体動数は、使用者Bが寝返りなどで体を動かした回数である。よって、睡眠遷移状態検知部57は、使用者Bの体動数に基づいて、使用者Bの睡眠遷移状態を検知する。
睡眠遷移状態検知部57は、具体的には、各荷重センサ30の検出結果に基づいて、体動数を導出し、その体動数および入床検知部56の検知結果から使用者Bの睡眠遷移状態を検出する。
睡眠遷移状態検知部57は、入床検知部56によって使用者Bが入床したと検知された入床時点t0から、入眠開始時点t1までの状態を入床状態であると検知する。入眠開始時点t1は、入床時点t0の後、第一所定時間(例えば10分)内における使用者Bの体動数が入眠判定用設定回数以下となる時点である。
また、睡眠遷移状態検知部57は、入眠開始時点t1から、熟眠状態開始時点t2までの状態を入眠状態であると検知する。熟眠状態開始時点t2は、入眠開始時点t1が経過した後、第一所定時間内における使用者Bの体動数が熟眠判定用設定回数以下となる時点である。
そして、睡眠遷移状態検知部57は、熟眠状態開始時点t2から、熟眠状態終了時点t3までの状態を熟眠状態であると検知する。熟眠状態終了時点t3は、熟眠状態開始時点t2が経過した後、第一所定時間内における使用者Bの体動数が覚醒移行判定用設定回数以上となる時点である。
さらに、睡眠遷移状態検知部57は、熟眠状態終了時点t3から、覚醒時点t4までの状態を覚醒移行状態であると検知する。覚醒時点t4は、熟眠状態終了時点t3が経過した後、第一所定時間内における使用者Bの体動数が覚醒判定用設定回数以上となる時点である。各設定回数は、予め実験等によって実測されて導出されている。
また、睡眠遷移状態検知部57は、覚醒時点t4から入床検知部56によって使用者Bが離床したと検知された時点までを覚醒状態であると検知する。
睡眠遷移状態検知部57によって検知された睡眠遷移状態は、温度刺激決定部58に出力される。なお、本第一実施形態において、荷重センサ30、入床検知部56および睡眠遷移状態検知部57は、本発明の睡眠モニタ部を構成する。
温度刺激決定部58は、図2に示すように、温冷感推定部55からの使用者Bの温冷感および睡眠遷移状態検知部57からの使用者Bの睡眠遷移状態を取得するものである。また、温度刺激決定部58は、制御装置50に記憶されているマップM(図6参照)に基づいて、温冷感推定部55からの使用者Bの温冷感および睡眠遷移状態検知部57からの使用者Bの睡眠遷移状態から、使用者Bに付与する温度刺激を決定するものである(後述する)。温度刺激決定部58によって導出された温度刺激は、駆動制御部59に出力される。
駆動制御部59は、温度刺激決定部58からの温度刺激を使用者Bに対して付与するように、ファンユニット40を制御するものである(後述する)。駆動制御部59は、ファンユニット40に対する制御指令値を第二所定時間(例えば1分間)毎に出力する。なお、ファンユニット40は、PWM制御されているため、制御指令値は、デューティ比にて出力される。
また、温冷感調整装置1は、室内空間Aの温度を検出する室内温度センサ(図示なし)をさらに備えている。室内温度センサの検出結果は、制御装置50に出力される。制御装置50は、室内温度センサの検出結果に基づいて、季節を検知する。制御装置50は、例えば、24時間における室内空間Aの温度変化に基づいて季節を検知する。
次に、制御装置50によって実行される使用者Bに対して温度刺激を付与する温度刺激制御について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
制御装置50は、図4に示すように、ステップS102にて、上述したように、使用者Bが入床しているか否かを判定する(入床検知部56)。使用者Bが入床していない(すなわち、使用者Bが離床している)場合、制御装置50は、ステップS102にて「NO」と判定する。そして、制御装置50は、使用者Bが入床するまでステップS102を繰り返し実行する。一方、使用者Bが入床した場合、制御装置50は、ステップS102にて「YES」と判定し、プログラムをステップS104に進める。
制御装置50は、ステップS104にて、上述したように、使用者Bの睡眠遷移状態を検知する(睡眠遷移状態検知部57)。制御装置50は、ステップS106にて、使用者Bの温冷感を推定する温冷感推定制御を行う(温冷感推定部55)。
温冷感推定制御について、図5に示すフローチャートに沿って説明する。使用者Bの温冷感は、使用者Bの温度感覚である。使用者Bが暑いと感じている場合、使用者Bの温冷感は、温感であるという。使用者Bが寒いと感じている場合、使用者Bの温冷感は、冷感であるという。使用者Bの温冷感が温感でも冷感でもない場合、使用者Bの温冷感は中立であるという。
制御装置50は、ステップS202において、上述したように、温度センサ10からの検出結果に基づいて寝床Sの温度分布を導出する(温度分布導出部51)。制御装置50は、ステップS204において、上述したように、寝床Sの温度分布に基づいて体幹部温度Ttを導出する(体幹部温度導出部52)。制御装置50は、ステップS206において、上述したように、寝床Sの温度分布に基づいて末梢部温度Tmを導出する(末梢部温度導出部53)。制御装置50は、ステップS208において、上述したように、湿度センサ20からの検出結果に基づいて寝床内湿度Hを導出する(寝床内湿度導出部54)。
制御装置50は、ステップS210において、末梢部温度Tmと体幹部温度Ttとの温度差ΔTが、第一判定温度差ThΔT1より小さいか否かを判定する。温度差ΔTは、末梢部温度Tmから体幹部温度Ttを減算した値である(温度差ΔT=末梢部温度Tm−体幹部温度Tt)。
ここで、末梢部温度Tmと体幹部温度Ttとの温度差ΔTと、使用者Bの温冷感との関係について説明する。人(使用者B)は、身体の深部温度をおよそ一定に維持するため、皮膚からの放熱量を調整している。放熱量の調整は、体幹部と末梢部の血流配分が調整されることにより行われる。体幹部と末梢部とを比較した場合、その容積に対する表面積(皮膚の面積)の割合は、体幹部より末梢部が大きいため、皮膚からの放熱量は、体幹部より末梢部の方が大きい。よって、深部温度が低下したことにより温冷感が冷感である場合、人は、末梢部より体幹部の血流を多くして、放熱量を抑制する。これにより、体幹部の温度が末梢部の温度より高くなるため、温度差ΔT(=末梢部温度Tm−体幹部温度Tt)が比較的小さくなる。したがって、温冷感が冷感である場合、温度差ΔTが比較的小さい。
一方、深部温度が上昇したことにより温冷感が温感である場合、人(使用者B)は、体幹部より末梢部の血流を多くして、放熱量を増加させる。これにより、末梢部の温度が体幹部の温度より高くなるため、温度差ΔTが比較的大きくなる。したがって、温冷感が温感である場合、温度差ΔTが比較的大きい。
図5に示すフローチャートに戻って説明を続ける。
使用者Bの温冷感が冷感である場合、使用者Bの末梢部温度Tmに対して体幹部温度Ttが高くなっている。これにより、温度差ΔTが第一判定温度差ThΔT1より小さい場合、制御装置50は、ステップS210において「YES」と判定する。そして、制御装置50は、ステップS212にて使用者Bの温冷感が冷感であると判定(推定)する。第一判定温度差ThΔT1は、使用者Bの温冷感が冷感であるか否かを判定する判定値であり、予め実験等により実測されて導出されている。一方、温度差ΔTが第一判定温度差ThΔT1以上である場合、制御装置50は、ステップS210において「NO」と判定し、プログラムをステップS214に進める。
制御装置50は、ステップS214において、寝床内湿度Hが判定湿度ThHより大きいか否かを判定する。使用者Bの温冷感が温感であることにより、使用者Bが発汗している場合、寝床内湿度Hが上昇する。これにより、寝床内湿度Hが判定湿度ThHより大きい場合、制御装置50は、ステップS214にて「YES」と判定する。そして、制御装置50は、ステップS216にて使用者Bの温冷感が温感であると判定(推定)する。判定湿度ThHは、予め実験等により実測されて導出されている。一方、寝床内湿度Hが判定湿度ThH以下である場合、制御装置50は、ステップS214にて「NO」と判定し、プログラムをステップS218に進める。
制御装置50は、ステップS218にて、温度差ΔTが第二判定温度差ThΔT2より大きいか否かを判定する。使用者Bの温冷感が温感である場合、使用者Bの体幹部温度Ttに対して末梢部温度Tmが高くなる。これにより、温度差ΔTが第二判定温度差ThΔT2より大きい場合、制御装置50は、ステップS218において「YES」と判定する。そして、制御装置50は、ステップS216にて使用者Bの温冷感が温感であると判定(推定)する。第二判定温度差ThΔT2は、使用者Bの温冷感が温感であるか否かを判定する判定値であり、予め実験等により実測されて導出されている。使用者Bの温感に対する使用者Bの発汗量には個人差があるため、寝床内湿度Hおよび温度差ΔTによって使用者Bの温冷感が温感であるか否かを判定される。
一方、温度差ΔTが第二判定温度差ThΔT2以下である場合、制御装置50は、ステップS218において「NO」と判定する。そして、制御装置50は、ステップS220にて、使用者Bの温冷感を中立であると判定(推定)する。
図4にフローチャートに戻って説明を続ける。
制御装置50は、ステップS108にて、使用者Bの睡眠遷移状態および温冷感から、使用者Bに対する温度刺激を決定する(温度刺激決定部58)。使用者Bに対する温度刺激の付与は、冬季においては、使用者Bの身体の一部(加温場所)の温度を、身体温度を上昇させる加温温度に変更することである。また、使用者Bに対する温度刺激の付与は、夏季においては、使用者Bの身体の一部(冷却場所)の温度を、身体温度を低下させる冷却温度に変更することである。加温場所、加温温度、冷却場所および冷却温度は、マップM(図6参照)に示されている。
ここで、上半身温度と睡眠遷移状態との関係について図3を参照しながら説明する。使用者Bの睡眠遷移状態が入床状態、入眠状態、熟眠状態に遷移するにしたがって、上半身体温が低下する。使用者Bが熟眠状態である場合、上半身体温は、低下した状態が維持される。さらに、使用者Bが熟眠状態から覚醒移行状態、覚醒状態に遷移するにしたがって、上半身体温が上昇する。一般に、人は、入眠後の上半身体温の低下が大きいほど熟眠することができ、入眠後の体温低下を促進するほど速く熟眠状態に移行することができる。また、人は、覚醒前の上半身体温の上昇が大きいほど快適な目覚めを得ることができる。すなわち、熟眠状態における上半身体温の低下が大きいほど、使用者Bの睡眠の質が向上する。使用者Bの睡眠の質の向上は、使用者Bの睡眠遷移状態に応じて、制御装置50によって使用者Bに対して温度刺激が付与されることにより実現される。
以下、図4のフローチャートにおけるステップS108およびステップS110については、使用者Bの睡眠遷移状態毎に場合分けをして説明する。
はじめに、使用者Bの睡眠遷移状態が入床状態である場合について説明する。この場合、使用者Bに対して、上半身温度を低下させる温度刺激(入眠促進刺激)が行われることにより、上半身体温の低下が促進されるとともに、入眠状態への移行が促進される。この場合において冬季であるとき、制御装置50は、ステップS108にて、マップM(図6参照)に基づいて、加温場所を下腿部B5に決定する(温度刺激決定部58)。
また、このとき、制御装置50は、加温温度を、所定加熱温度の範囲内において、使用者Bの温冷感に応じて決定する(温度刺激決定部58)。所定加熱温度は、定性的には皮膚温度以上、かつ、不快を伴う温度未満の温度である。所定加熱温度は、具体的には、34℃以上42℃未満である。使用者Bの温冷感が温感である場合、加熱温度は、第一加熱温度Tw1(例えば34℃以上37℃未満)に決定される。また、使用者Bの温冷感が中立である場合、加熱温度は、第一加熱温度Tw1より高い第二加熱温度Tw2(例えば37℃以上39℃未満)に決定される。さらに、使用者Bの温冷感が冷感である場合、加熱温度は、第二加熱温度Tw2より高い第三加熱温度Tw3(例えば39℃以上42℃未満)に決定される。なお、加熱温度は、使用者Bの睡眠遷移状態に関わらず、使用者Bの温冷感のみに応じて決定される。
そして、制御装置50は、ステップS110にて、下腿部B5の身体温度を加温温度とするように、使用者Bに対して温度刺激を付与する(駆動制御部59)。制御装置50は、具体的には、第三給気ファンユニット41cと第二排気ファンユニット42bとの組み合わせを、ヒータをオンにして作動させる。なお、制御装置50は、加温場所(冷却場所)の身体温度が加温温度(冷却温度)となるようにフィードバック制御を行う。加温場所(冷却場所)の身体温度は、上述した寝床Sの温度分布から導出される。
下腿部B5の身体温度が加温温度となることにより、末梢部温度Tm(下腿部B5の温度)が体幹部温度Ttより高くなるため、使用者Bは、温冷感が温感であると感じて抹消部から放熱し、上半身体温を低下させる。これにより、使用者Bの入眠状態への移行が促進される。そして、制御装置50は、プログラムをステップS102に戻す。
一方、使用者Bの睡眠遷移状態が入床状態である場合において夏季であるとき、制御装置50は、ステップS108にて、マップMに基づいて、冷却場所を上体幹部B2に決定する(温度刺激決定部58)。また、このとき、制御装置50は、冷却温度を、所定冷却温度の範囲内において、使用者Bの温冷感に応じて決定する(温度刺激決定部58)。所定冷却温度は、定性的には、不快を伴う温度以上、かつ、皮膚温度未満の温度である。所定冷却温度は、具体的には、17℃以上34℃未満の温度である。使用者Bの温冷感が温感である場合、冷却温度は、第一冷却温度Tc1(例え17℃以上23℃未満)に決定される。また、使用者Bの温冷感が中立である場合、冷却温度は、第一冷却温度Tc1より高い第二冷却温度Tc2(例えば23℃以上29℃未満)に決定される。さらに、使用者Bの温冷感が冷感である場合、冷却温度は、第二冷却温度Tc2より高い第三冷却温度Tc3(例えば29℃以上34℃未満)に決定される。なお、冷却温度は、使用者Bの睡眠遷移状態に関わらず、使用者Bの温冷感のみに応じて決定される。
そして、制御装置50は、ステップS110にて、上体幹部B2の身体温度を冷却温度とするように、第一給気ファンユニット41aと第一排気ファンユニット42aとの組み合わせを、ヒータをオフにして作動させる(駆動制御部59)。上体幹部B2の身体温度が冷却温度となることにより、末梢部温度Tmが体幹部温度Tt(少なくとも上体幹部B2)より高くなるため、使用者Bは、温冷感が温感であると感じて抹消部から放熱し、上半身体温を低下させる。これにより、使用者Bの入眠状態への移行が促進される。
次に、使用者Bの睡眠遷移状態が入眠状態である場合について説明する。この場合、使用者Bに対して、上半身温度をさらに低下させる温度刺激(熟眠促進刺激)が行われることにより、上半身体温の低下がさらに促進されるとともに、熟眠状態への移行が促進される。この場合において冬季であるとき、制御装置50は、ステップS108にて、マップMに基づいて、加温場所を上腿部B4に決定するとともに、加温温度を使用者Bの温冷感に応じて決定する(温度刺激決定部58)。そして、制御装置50は、ステップS110にて、上腿部B4の身体温度を加温温度とするように、第二給気ファンユニット41bと第二排気ファンユニット42bとの組み合わせを、ヒータをオンにして作動させる(駆動制御部59)。上腿部B4の身体温度が加温温度となることにより、末梢部温度Tmが上昇する。よって、末梢部温度Tmが体幹部温度Ttより高くなるため、使用者Bは、温冷感が温感であると感じて抹消部から放熱し、上半身体温をさらに低下させる。したがって、使用者Bの熟眠状態への移行が促進される。
一方、使用者Bの睡眠遷移状態が入眠状態である場合において夏季であるとき、制御装置50は、ステップS108にて、マップMに基づいて、冷却場所を下体幹部B3に決定するとともに、冷却温度を使用者Bの温冷感に応じて決定する(温度刺激決定部58)。そして、制御装置50は、ステップS110にて、下体幹部B3の身体温度を冷却温度とするように、第二給気ファンユニット41bと第一排気ファンユニット42aとの組み合わせを、ヒータをオフにして作動させる(駆動制御部59)。下体幹部B3の身体温度が冷却温度となることにより、末梢部温度Tmが体幹部温度Tt(少なくとも下体幹部B3の温度)より高くなるため、使用者Bは、温冷感が温感であると感じて抹消部から放熱し、上半身体温がさらに低下する。これにより、使用者Bの熟眠状態への移行が促進される。
次に、使用者Bの睡眠遷移状態が熟眠状態である場合について説明する。この場合、使用者Bに対して、上半身温度を維持させる温度刺激(熟眠維持刺激)が行われる。この場合において冬季であるとき、制御装置50は、ステップS108にて、マップMに基づいて、加温場所を下体幹部B3に決定するとともに、加温温度を使用者Bの温冷感に応じて決定する(温度刺激決定部58)。そして、制御装置50は、ステップS110にて、下体幹部B3の身体温度を加温温度とするように、第二給気ファンユニット41bと第一排気ファンユニット42aとの組み合わせを、ヒータをオンにして作動させる(駆動制御部59)。下体幹部B3の身体温度が加温温度となることにより、体幹部温度Tt(下体幹部B3の温度)が末梢部温度Tmより高くなる。この場合、抹消部からの放熱が抑制されることにより、上半身体温が低下している状態が維持されて、汗の気化が促進されるとともに発汗防止および冷え防止が図られる。よって、上半身温度が熟眠に適した温度に維持される。
一方、使用者Bの睡眠遷移状態が熟眠状態である場合において夏季であるとき、制御装置50は、ステップS108にて、マップMに基づいて、冷却場所を上腿部B4に決定するとともに、冷却温度を使用者Bの温冷感に応じて決定する(温度刺激決定部58)。そして、制御装置50は、ステップS110にて、上腿部B4の身体温度を冷却温度とするように、第二給気ファンユニット41bと第二排気ファンユニット42bとの組み合わせを、ヒータをオフにして作動させる(駆動制御部59)。上腿部B4の身体温度が冷却温度となることにより、末梢部温度Tmが低下する。よって、体幹部温度Tt(少なくとも下体幹部B3の温度)が末梢部温度Tmより高くなる。この場合、抹消部からの放熱が抑制されることにより、上半身体温が低下している状態が維持されて、上述したように、上半身温度が熟眠に適した温度に維持される。
次に、使用者Bの睡眠遷移状態が覚醒移行状態である場合について説明する。この場合、使用者Bに対して、上半身温度を上昇させる温度刺激(覚醒促進刺激)が行われることにより、上半身温度が上昇するとともに、覚醒状態への移行が促進される。この場合において冬季であるとき、制御装置50は、ステップS108にて、マップMに基づいて、加温場所を上体幹部B2に決定するとともに、加温温度を使用者Bの温冷感に応じて決定する(温度刺激決定部58)。そして、制御装置50は、ステップS110にて、上体幹部B2の身体温度を加温温度とするように、第一給気ファンユニット41aと第一排気ファンユニット42aとの組み合わせを、ヒータをオンにして作動させる(駆動制御部59)。上体幹部B2の身体温度が加温温度となることにより、体幹部温度Tt(上体幹部B2)が末梢部温度Tmより高くなる。この場合、抹消部からの放熱が抑制されることにより、上半身温度が上昇する。よって、使用者Bが快適な目覚めに誘導される。
一方、使用者Bの睡眠遷移状態が覚醒移行状態である場合において夏季であるとき、制御装置50は、ステップS108にて、マップMに基づいて、冷却場所を下腿部B5に決定するとともに、冷却温度を使用者Bの温冷感に応じて決定する(温度刺激決定部58)。そして、制御装置50は、ステップS110にて、下腿部B5の身体温度を冷却温度とするように、第三給気ファンユニット41cと第二排気ファンユニット42bとの組み合わせを、ヒータをオフにして作動させる(駆動制御部59)。下腿部B5の身体温度が冷却温度となることにより、体幹部温度Tt(少なくとも上体幹部B2の温度)が末梢部温度Tmより高くなる。この場合、抹消部からの放熱が抑制されることにより、上半身温度が上昇する。よって、使用者Bが快適な目覚めに誘導される。
このように、冬季においては、使用者Bの睡眠遷移状態が移行するにしたがって、加温場所が下腿部B5、上腿部B4、下体幹部B3および上体幹部B2の順に変更される。また、夏季においては、使用者Bの睡眠遷移状態が移行するにしたがって、冷却場所が、上体幹部B2、下体幹部B3上腿部B4および下腿部B5の順に変更される。これらにより、上述したように、熟眠状態における上半身体温を低下させるように使用者Bに対して温度刺激が付与されるため、使用者Bの睡眠の質が向上する。なお、春季および秋季においては、制御装置50は、上述した冬季および夏季の制御を同時に実行する。
本第一実施形態によれば、温冷感調整装置1は、寝床S内に横臥した使用者Bの体幹部の温度である体幹部温度Ttを検出する体幹部温度検出部(温度センサ10、温度分布導出部51および体幹部温度導出部52)と、寝床S内に横臥した使用者Bの末梢部の温度である末梢部温度Tmを検出する末梢部温度検出部(温度センサ10、温度分布導出部51および末梢部温度導出部53)と、末梢部温度検出部によって検出された末梢部温度Tmと、体幹部温度検出部によって検出された体幹部温度Ttとの温度差ΔTに基づいて、使用者Bの温冷感を推定する温冷感推定部55と、を備えている。
これによれば、温冷感調整装置1は、使用者Bの末梢部温度Tmと、使用者Bの体幹部温度Ttとの温度差ΔTに基づいて、使用者Bの温冷感を推定する。よって、使用者Bの皮膚温度と温冷感との関係に個人差がある場合においても、従来技術のように使用者Bの温冷感を使用者Bの所定部位の皮膚温度から行う場合に比べて、使用者Bの温冷感が精度よく推定される。
また、温度差ΔTは、末梢部温度Tmから体幹部温度Ttを減算した値であり、温冷感推定部55は、温度差ΔTが第一判定温度差ThΔT1より小さい場合、使用者Bの温冷感を冷感であると判定し、かつ、温度差ΔTが第一判定温度差ThΔT1より大きい第二判定温度差ThΔT2より大きい場合、使用者Bの温冷感を温感であると判定する。
これによれば、温冷感調整装置1は、各判定温度差ThΔT1,ThΔT2に基づいて使用者Bの温冷感を推定する。よって、使用者Bの温冷感がより精度よく推定される。
また、温冷感調整装置1は、寝床S内の湿度である寝床内湿度Hを検出する湿度検出部(湿度センサ20および寝床内湿度導出部54)をさらに備え、温冷感推定部55は、温度差ΔTと、湿度検出部によって検出された寝床内湿度Hとに基づいて使用者Bの温冷感を推定する。
使用者Bの温冷感が温感である場合、使用者Bは発汗する。寝床内湿度Hは、使用者Bの発汗により上昇する。よって、温冷感調整装置1が、使用者Bの体幹部温度Ttと末梢部温度Tmとの温度差ΔTだけでなく、寝床内湿度Hすなわち使用者Bの発汗状態も考慮して使用者Bの温冷感を推定するため、使用者Bの温冷感がさらに精度よく推定される。
また、温冷感調整装置1は、使用者Bの睡眠遷移状態を検出する睡眠モニタ部(荷重センサ30、入床検知部56および睡眠遷移状態検知部57)と、温冷感推定装置(温度センサ10、湿度センサ20、温度分布導出部51、体幹部温度導出部52、末梢部温度導出部53、寝床内湿度導出部54および温冷感推定部55)と、使用者Bの温冷感を刺激する温冷感刺激装置(ファンユニット40)と、睡眠モニタ部によって検出された使用者Bの睡眠遷移状態および温冷感推定装置によって推定された使用者Bの温冷感に応じて、温冷感刺激装置を制御する制御装置50と、を備えている。
これによれば、温冷感調整装置1は、上述したように、使用者Bの温冷感を調整するとともに、使用者Bの睡眠の質を向上することができる。
次に、本発明による温冷感調整装置の第一実施形態の第一変形例について、主として上述した第一実施形態と異なる部分について説明する。上述した第一実施形態において、温冷感推定部55は、温度差ΔTおよび寝床内湿度Hに基づいて使用者Bの温冷感を推定しているが、これに代えて、本第一変形例においては、温度差ΔTおよび寝床S内の湿度の分布である寝床内湿度分布に基づいて使用者Bの温冷感を推定する。具体的には、制御装置50は、上述した第一実施形態における寝床内湿度導出部54に代えて、図7に示すように、寝床内湿度分布導出部154を備えている。寝床内湿度分布導出部154は、各湿度センサ20の検出結果を取得するとともに、その検出結果から寝床内湿度分布を導出するものである。寝床内湿度分布導出部154によって導出された寝床内湿度分布は、温冷感推定部55に出力される。
さらに、制御装置50は、上述した第一実施形態における図5に示すフローチャートのステップS214において、寝床内湿度Hが判定湿度ThHより大きいか否かを判定しているが、これに代えて、寝床内湿度差が判定湿度差より大きいか否かを判定する(温冷感推定部55)。寝床内湿度差は、寝床内湿度分布導出部154からの寝床内湿度分布から導出される寝床S内の湿度の最大値と最小値との差である。使用者Bの発汗により寝床内湿度差が大きくなる。よって、寝床内湿度差が判定湿度差より大きい場合、制御装置50は、ステップS214において「YES」と判定し、ステップS216にて使用者Bの温冷感が温感であると判定(推定)する。判定湿度差は、予め実験等により実測されて導出されている。なお、本第一変形例において、湿度センサ20および寝床内湿度分布導出部154は、本発明の湿度検出部を構成する。このように、湿度検出部は、寝床S内の湿度である寝床内湿度Hまたは寝床内湿度分布を検出する。また、温冷感推定部55は、温度差ΔTと、湿度検出部によって検出された寝床内湿度Hまたは寝床内湿度分布とに基づいて使用者Bの温冷感を推定する。
(第二実施形態)
次に、本発明による温冷感調整装置の第二実施形態について、主として上述した第一実施形態と異なる部分について説明する。本第二実施形態においては、制御装置50は、図8に示すように、判定温度差補正部260をさらに備えている。本第二実施形態においては、温度センサ10、湿度センサ20、温度分布導出部51、体幹部温度導出部52、末梢部温度導出部53、寝床内湿度導出部54、温冷感推定部55および判定温度差補正部260によって、本発明の温冷感推定装置が構成される。
判定温度差補正部260は、睡眠遷移状態に応じて、第一判定温度差ThΔT1および第二判定温度差ThΔT2を補正するものである。判定温度差補正部260には、睡眠遷移状態検知部57からの睡眠遷移状態が入力される。使用者Bが熟眠状態である場合、上述したように、上半身温度が低下する。よって、判定温度差補正部260は、睡眠遷移状態が熟眠状態である場合、第一判定温度差ThΔT1および第二判定温度差ThΔT2を第一所定温度差(例えば0.5℃)だけ大きくするように補正する。これにより、温冷感推定部55は、熟眠状態における使用者Bの上半身体温の低下を考慮された各判定温度差ThΔT1,ThΔT2によって使用者Bの温冷感を推定する。
本第二実施形態によれば、温冷感調整装置1は、睡眠モニタ部(荷重センサ30、入床検知部56および睡眠遷移状態検知部57)の検出結果(睡眠遷移状態)に応じて、第一判定温度差ThΔT1および第二判定温度差ThΔT2を補正する判定温度差補正部260をさらに備えている。
これによれば、使用者Bの睡眠遷移状態が熟眠状態である場合、使用者Bの上半身温度の低下が考慮されて、判定温度差補正部260が第一判定温度差ThΔT1および第二判定温度差ThΔT2を補正する。よって、使用者Bの温冷感がさらに精度よく推定される。
(第二実施形態の第一変形例)
次に、本発明による第二実施形態の第一変形例について説明する。上述した第二実施形態において、判定温度差補正部260は、使用者Bの上半身体温の低下を考慮して睡眠遷移状態が熟眠状態である場合における各判定温度差ThΔT1,ThΔT2を補正しているが、これに代えて、本第一変形例においては、使用者Bの睡眠の質を向上させるように、使用者Bの睡眠遷移状態に応じて、各判定温度差ThΔT1,ThΔT2を補正する。
具体的には、使用者Bの睡眠遷移状態が入床状態、入眠状態および覚醒移行状態である場合において、冬季であるとき、判定温度差補正部260は、各判定温度差ThΔT1,ThΔT2を第二所定温度差(例えば1℃)だけ上げるように補正する。これにより、例えば、補正前の各判定温度差ThΔT1,ThΔT2によって中立であると推定された使用者Bの温冷感が、補正後の各判定温度差ThΔT1,ThΔT2によって冷感であると推定される場合、加温温度がより高い温度となる(図6参照)。よって、この場合、使用者Bの睡眠遷移状態が入床状態および入眠状態であるとき、加温場所が末梢部含む下半身であるため、使用者Bの上半身体温の低下が促進される。また、この場合、使用者Bの睡眠遷移状態が覚醒移行状態であるとき、加温場所が体幹部であるため、使用者Bの上半身体温の上昇が促進される。
また、使用者Bの睡眠遷移状態が入床状態、入眠状態および覚醒移行状態である場合において、夏季であるとき、判定温度差補正部260は、各判定温度差ThΔT1,ThΔT2を第二所定温度差だけ下げるように補正する。これにより、例えば、補正前の各判定温度差ThΔT1,ThΔT2によって中立であると推定された使用者Bの温冷感が、補正後の各判定温度差ThΔT1,ThΔT2によって温感であると推定される場合、冷却温度がより低い温度となる。(図6参照)、よって、この場合、使用者Bの睡眠遷移状態が入床状態および入眠状態であるとき、冷却場所が体幹部であるため、使用者Bの上半身体温の低下が促進される。また、この場合、使用者Bの睡眠遷移状態が覚醒移行状態であるとき、冷却場所が末梢部であるため、使用者Bの上半身体温の上昇が促進される。
また、使用者Bの睡眠遷移状態が熟眠状態である場合において冬季であるとき、判定温度差補正部260は、各判定温度差ThΔT1,ThΔT2を第三所定温度差(例えば0.5℃)だけ上げるように補正する。この補正後の各判定温度差ThΔT1,ThΔT2によって使用者Bの温冷感が推定された結果、上述したように、下体幹部B3に対する加温温度がより高くなる場合がある。一方、夏季であるとき、判定温度差補正部260は、各判定温度差ThΔT1,ThΔT2を第三所定温度差だけ下げるように補正する。この補正後の各判定温度差ThΔT1,ThΔT2によって使用者Bの温冷感が推定された結果、上述したように、上腿部B4に対する冷却温度がより低くなる場合がある。これらによって、末梢部からの放熱がさらに抑制されるため、熟眠状態において低下した使用者Bの上半身温度が維持される。なお、使用者Bの睡眠遷移状態が熟眠状態である場合、判定温度差補正部260は、各判定温度差ThΔT1,ThΔT2を補正しないようにしても良い。
このように、使用者Bの睡眠遷移状態に応じて、判定温度差補正部260が第一判定温度差ThΔT1および第二判定温度差ThΔT2を補正することにより、使用者Bの睡眠の質が向上する。
(第二実施形態の第二変形例)
次に、本発明による温冷感調整装置の第二実施形態の第二変形例について、主として上述した第一変形例と異なる部分について説明する。本第二変形例においては、制御装置50は、図9に示すように、寝返り状態検知部361をさらに備えている。寝返り状態検知部361は、荷重センサ30の検出結果を取得するとともに、その検出結果から使用者Bの寝返り状態を検知するものである。寝返り状態は、本第二変形例において、使用者Bの寝返りによる移動距離(以下、寝返り距離とする。)である。寝返り状態検知部361は、荷重センサ30の検出結果に基づいて使用者Bの重心位置変位を算出し、その算出結果を寝返り距離として検知する。寝返り状態検知部361の検知結果は、判定温度差補正部360に出力される。上述した第一変形例の判定温度差補正部260は、睡眠遷移状態に応じて各判定温度差ThΔT1,ThΔT2の補正を行うが、これに代えて、本第二変形例の判定温度差補正部360は、寝返り距離に応じて各判定温度差ThΔT1,ThΔT2の補正を行う。
使用者Bの温冷感が温感である場合、一般的に、寝返り距離が長くなる。よって、判定温度差補正部360は、寝返り状態検知部361によって検知された寝返り距離が、寝返り判定距離(例えば0.3m)以上である場合、第一判定温度差ThΔT1および第二判定温度差ThΔT2を第四所定温度差(例えば1℃)だけ小さくするように補正する。これにより、温冷感推定部55は、寝返り距離を考慮された補正後の各判定温度差ThΔT1,ThΔT2により使用者Bの温冷感が判定(推定)される。よって、例えば、使用者Bの温冷感が温感であるにも関わらず、個人差により温度差ΔTが比較的小さいことで、補正前の判定温度差によっては使用者Bの温冷感が温感であると推定されない場合においても、補正後の各判定温度差ThΔT1,ThΔT2によって、使用者Bの温冷感が温感であると推定される。なお、本第二変形例においては、荷重センサ30、入床検知部56、睡眠遷移状態検知部57および寝返り状態検知部361によって、本発明の睡眠モニタ部が構成される。すなわち、本第二変形例における睡眠モニタ部は、使用者Bの睡眠遷移状態および使用者Bの寝返り状態を検出する。
本第二変形例によれば、温冷感調整装置1は、睡眠モニタ部(荷重センサ30、入床検知部56、睡眠遷移状態検知部57および寝返り状態検知部361)の検出結果(寝返り距離)に応じて、第一判定温度差ThΔT1および第二判定温度差ThΔT2を補正する判定温度差補正部360をさらに備えている。
これによれば、使用者Bの寝返り距離が考慮されて、判定温度差補正部360が第一判定温度差ThΔT1および第二判定温度差ThΔT2を補正する。よって、使用者Bの温冷感がさらに精度よく推定される。
(第三実施形態)
次に、本発明による温冷感調整装置の第三実施形態について、主として上述した第一実施形態と異なる部分について説明する。本第三実施形態は、上述した第一実施形態のファンユニット40に代えて、空調装置(本発明の温冷感刺激装置に相当;図示なし)を備えている。上述した第一実施形態のファンユニット40は、寝床S内の温度を調節するが、これに対して、本第三実施形態における空調装置は、室内空間Aの温度を設定温度に調節するものである。空調装置は、例えばエアコンである。設定温度は使用者Bによって設定される。
また、上述した第一実施形態において、制御装置50は、マップM(図6参照)に基づいて温度刺激を決定する(温度刺激決定部58)。これに対して、本第三実施形態においては、制御装置50は、使用者Bの睡眠遷移状態および使用者Bの温冷感に応じて、空調装置の設定温度を変更する。
制御装置50は、具体的には、睡眠遷移状態検知部57によって使用者Bの睡眠遷移状態が入床状態および入眠状態であると検出された場合、空調装置の設定温度を第一変更温度(例えば1℃)だけ下げるように変更する。これにより、使用者Bの上半身体温の低下が促進される。
また、制御装置50は、睡眠遷移状態検知部57によって使用者Bの睡眠遷移状態が熟眠状態であると検出された場合、空調装置の設定温度を第二変更温度(例えば0.5℃)だけ下げるように変更する。これにより、眠りに就くことにより低下した使用者Bの上半身体温が維持される。
そして、制御装置50は、睡眠遷移状態検知部57によって使用者Bの睡眠遷移状態が覚醒移行状態であると検出された場合、空調装置の設定温度を第三変更温度(例えば1℃)だけ上げるように変更する。これにより、使用者Bの上半身体温の上昇が促進される。
このように、使用者Bの睡眠遷移状態に応じて、制御装置50が設定温度を変更することにより、使用者Bの睡眠の質が向上する。
この使用者Bの睡眠遷移状態に応じた空調装置の設定温度の変更に加えて、さらに、制御装置50は、温冷感推定部55によって推定された使用者Bの温冷感に応じて空調装置の設定温度を変更しても良い。制御装置50は、具体的には、温冷感推定部55によって使用者Bの温冷感が温感であると推定された場合、空調装置の設定温度を第四変更温度(例えば0.5℃)だけ下げるように変更する。また、制御装置50は、温冷感推定部55によって使用者Bの温冷感が冷感であると推定された場合、空調装置の設定温度を第五変更温度(例えば0.5℃)だけ上げるように変更する。そして、制御装置50は、温冷感推定部55によって使用者Bの温冷感が中立であると推定された場合、空調装置の設定温度を変更せずに維持する。
なお、上述した実施形態において、温冷感調整装置の一例を示したが、本発明はこれに限定されず、他の構成を採用することもできる。例えば、上述した第一実施形態において、制御装置50は、各睡眠遷移状態において、使用者Bの温冷感によって加温場所および冷却場所を変えずに、加温温度および冷却温度のみを変えている。これに対し、制御装置50は、各睡眠遷移状態において、加温場所および冷却場所を、各温度刺激による効果の妨げにならない範囲内において変更するようにしても良い。例えば、睡眠遷移状態が入床状態であり、かつ、冬季である場合において、使用者Bの温冷感が冷感であるとき、加温場所を下腿部B5のみから、上腿部B4および下腿部B5に増やすように変更しても良い。また、睡眠遷移状態が入床状態であり、かつ、夏季である場合において、使用者Bの温冷感が温感であるとき、冷却場所を上体幹部B2のみから、上体幹部B2および下体幹部B3に増やすように変更しても良い。これによれば、使用者Bの温冷感の調整がより促進される。
また、覚醒移行状態に行われる覚醒促進刺激において、全ての季節にて上腿部B4を所定冷却温度にて冷却するようにしても良い。これにより、上述したように、上半身温度の上昇が促進される。また、この場合、覚醒促進刺激が行われる前に、上腿部B4が発汗しているとき、覚醒促進刺激による上腿部B4の冷却効果が向上する。よって、覚醒移行状態の前の熟眠状態において、上腿部B4の発汗を促すために、上腿部B4を冷却しないようにしても良い。
また、上述した第一実施形態において、荷重センサ30は、4つの脚部2cそれぞれに配設されているが、これに代えて、荷重センサ30を、使用者Bの寝返りを検出可能な個数だけ配設するようにいても良い。例えば、荷重センサ30を使用者Bの頭部B1側の2つの脚部2cのみに配設する。
また、上述した第二実施形態および第二実施形態の各変形例において、判定温度差補正部260,360は、各判定温度差ThΔT1,ThΔT2を補正しているが、各判定補正部の一方のみを補正するようにしても良い。また、上述した第二実施形態の第二変形例において、本発明の睡眠モニタ部が、荷重センサ30および寝返り状態検出部によって構成されるようにしても良い。この場合、睡眠モニタ部(荷重センサ30および寝返り状態検出部)は、使用者Bの寝返り状態を検出する。このように、睡眠モニタ部は、使用者Bの寝返り状態および使用者Bの睡眠遷移状態の少なくとも一方を検出する。すなわち、制御装置50は、睡眠モニタ部の検出結果に応じて、第一判定温度差ThΔT1および第二判定温度差ThΔT2の少なくとも一方を補正する判定温度差補正部260,360を備えている。
また、上述した第二実施形態の第二変形例において、寝返り状態は、寝返り距離であるが、これに代えて、寝返り状態を体動数としても良い。一般的に使用者Bの温冷感が温感である場合、体動数が増加するため、判定温度差補正部360は、使用者Bの体動数が所定回数以上となった場合、各判定温度差ThΔT1,ThΔT2を第四所定温度差小さくする補正をする。
また、上述した第一実施形態において、末梢部温度Tmは、下腿部B5の温度としているが、これに代えて、手指や使用者Bの頭部B1の一部(例えば耳)等としても良い。
また、上述した第一実施形態において、温度センサ10は、寝床Sに配設されているが、これに代えて、温度センサ10を使用者Bの体幹部および末梢部に直接装着させるようにしても良い。この場合、温度センサ10の検出結果が体幹部温度Ttおよび末梢部温度Tmに相当する。よって、この場合、温度センサ10が本発明の体幹部温度検出部および末梢部温度検出部に相当する。
また、上述した第一実施形態および第三実施形態において、温冷感調整装置1が、睡眠モニタ部を備えないようにしても良い。この場合、制御装置50は、温冷感推定部55によって推定された使用者Bの温冷感のみに応じてファンユニット40または空調装置を制御する。
また、上述した第一実施形態において、温冷感推定部55は、温度差ΔTおよび寝床内湿度Hに基づいて使用者Bの温冷感を推定しているが、これに代えて、温度差ΔTのみに基づいて、使用者Bの温冷感を推定するようにしても良い。この場合、温冷感調整装置1が、湿度センサ20および寝床内湿度導出部54を備えない。すなわち、この場合、温度センサ10、温度分布導出部51、体幹部温度導出部52、末梢部温度導出部53および温冷感推定部55によって、本発明の温冷感推定装置が構成される。また、この場合、図3に示すフローチャートにおいて、ステップS208およびステップS214が省略される。
また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、加温場所、加温温度、冷却場所および冷却温度や温度センサ10および湿度センサ20の個数や配置位置を変更しても良い。