(第1実施形態)
第1実施形態の温調シート装置1について、図1~図5を参照して説明する。温調シート装置1は、シート10に着座した乗員に対して表皮部材12、17を介して空気を送風するシートベンチレーションシステムである。温調シート装置1は、図1に示すように、シート10と、温熱供給部20と、冷風供給部30と、制御装置50とを備える。温調シート装置1は、加熱された空気および冷却された空気を選択的にシート10から吹き出すことが可能な構成を有する。温調シート装置1は、車両のインストルメントパネル、センターコンソール等に設けられた操作パネルを使用者が操作することでその作動を制御される。
温調シート装置1は、以下に説明する知見に基づいて構成されている。本発明者は、シートの表面にシリコンチューブを埋め込み、このシリコンチューブに温水と冷水と交互に流して、温水による温熱を着座者が暖かいと感じるまでの時間、冷水による冷熱を冷たいと感じるまでの時間を測定した。すると、着座者は45℃の温水を90秒より長い時間で暖かいと感じ始め、20℃の冷水を30秒より長い時間で冷たいと感じ始めた。そして本発明者は、上述のシートにおいて45℃の温水を90秒間、20℃の冷水を30秒間交互に切り替えて流す実験を行った。すると、温水と冷水を流さない場合と比較して着座者の主観的な疲労度合が軽減し、温熱による暑さも感じないという知見を得た。
すなわち、着座者が温熱による温度刺激を感じ始める前に温熱の供給から冷熱の供給に切り替え、冷熱による温度刺激を感じ始める前に冷熱の供給から温熱の供給に切り替えることで、着座者の疲労軽減と温熱による不快の抑制を両立できる。
図1に示すように、シート10は、着座者である乗員の臀部および太腿部等を支持する着座部11と、乗員の背中を支持する背もたれ部16とを有する。背もたれ部16は、シートパッド18と、シートパッド18を覆う表皮部材17とを有する。着座部11は、背もたれ部16と同様に、シートパッド13とシートパッド13を覆う表皮部材12とを有する。シートパッド13、18は、弾性変形可能な材料、例えば連続気泡型の発泡ポリウレタンによって構成される。シートパッド13、18は、表皮部材12、17に対して十分大きな厚み寸法を有する。シートパッド13、18は、着座した乗員の荷重を弾性変形によって吸収し、乗員を支持するクッション部材である。シートパッド13、18は、内部に送風装置22によって駆動された空気が通過する第1空気通路40aと、送風装置32によって駆動された空気が通過する第2空気通路40bとを有する。第1空気通路40aは、着座部11の内部の通路と背もたれ部16の内部の通路とに分岐するように形成されている。第2空気通路40bも同様に、着座部11の内部の通路と背もたれ部16の内部の通路とに分岐するように形成されている。
表皮部材12、17は、シートパッド13、18を覆い、着座者と直接接触する部材である。表皮部材12は、着座部11のシートパッド13を覆い、着座部11における着座面を有する。着座面は、シート10において着座した乗員の臀部および太腿部が接触し得る面である。表皮部材17は、背もたれ部16のシートパッド18を覆い、背もたれ部16における背もたれ面を形成する。背もたれ面は、シート10において着座した乗員の背中が接触し得る面である。表皮部材12、17は、通気性を有する。表皮部材12、17は、通気可能となるように複数の孔部が形成された部材や、通気性を有する素材によって提供される。表皮部材12、17は、例えば革やファブリック等を使用することができる。空気通路40a、40bを通過した送風空気は、通気性の表皮部材12、17を通過して着座面および背もたれ面から車室内に対して吹き出す。
温熱供給部20は、凝縮器21と、送風装置22とを含んで構成されている。温熱供給部20は、人の体温よりも温度の高い温風を生成して第1空気通路40aに対して送風する。すなわち、温熱供給部20は温風供給を行う。温風供給は、温熱供給の一例である。送風装置22は、吸込口および吹出口を有するケーシングと、ケーシングに収容されたファンとを含んで構成されている。ファンは、例えば遠心式の送風ファンである。ファンは、その回転軸が上下方向を向くようにケーシングに収容されている。送風装置22は、例えば吸込口を下方に向けてシート10の骨格部材に取り付けられている。吹出口は、第1空気通路40aと連通している。したがって、吹出口から吹き出された空気が第1空気通路40aに流入可能になっている。送風装置22は、その作動を制御装置50によって制御される。送風装置22は、特許請求の範囲における第1送風装置に相当する。
凝縮器21は、内部を冷凍サイクルの高温冷媒が流通する熱交換器である。凝縮器21は、送風装置22によって駆動された空気と内部を流通する高温冷媒との間の熱交換を提供する。換言すれば、凝縮器21は送風装置22によって駆動された空気を加熱する。凝縮器21は、特許請求の範囲における加熱部に相当する。凝縮器21は、送風装置22の下方に設けられる。凝縮器21は、吸込口の直前に配置され、送風装置22によって吸い込まれる空気を加熱可能になっている。
冷風供給部30は、蒸発器31と送風装置32とを含んで構成されている。冷風供給部30は、人の体温よりも温度の低い冷風を生成して第2空気通路40bに対して送風する。すなわち、冷風供給部30は冷風供給を行う。送風装置32は、送風装置22と同様に、吸込口および吹出口を有するケーシングとケーシングに収容されたファンとを含んで構成されている。送風装置32の吹出口は、第2空気通路40bと連通している。したがって、吹出口から吹き出された空気が第2空気通路40bに流入可能になっている。送風装置32は、その作動を制御装置50によって制御される。送風装置32は、特許請求の範囲における第2送風装置に相当する。
蒸発器31は、内部を冷凍サイクルの低温冷媒が流通する熱交換器である。蒸発器31は、送風装置32によって駆動された空気と内部を流通する低温冷媒との間の熱交換を提供する。換言すれば、蒸発器31は送風装置32によって駆動された空気を冷却する。蒸発器31は、送風装置32の下方に設けられる。蒸発器31は、吸込口の直前に配置され、送風装置32によって吸い込まれる空気を冷却可能になっている。
凝縮器21および蒸発器31は、共通の冷凍サイクル装置100における冷凍サイクル機能部品である。図3に示すように、冷凍サイクル装置100は、凝縮器21と、蒸発器31と、圧縮機60と、減圧弁とを有する。これら複数の冷凍サイクル機能部品は配管によって環状に接続されている。冷凍サイクル装置100は、例えば着座部11の下方に収容されている。冷凍サイクル装置100は、制御装置50によってその作動を制御される。
第1空気通路40aは、着座部11において例えば導入通路41a、配風通路42a、連通孔43aを含んで構成される。導入通路41aは、上下方向に延びるように形成された通路である。導入通路41aは、送風装置22の吹出口と連通している。導入通路41aは送風装置22の吹出口から吹き出された空気を着座部11の内部に導入するための通路である。
配風通路42aは、導入通路41aから分岐するように延びる複数の通路である。配風通路42aは、着座面に平行に延びるように形成されている。配風通路42aは、導入通路41aから導入された空気を各連通孔43aに配風するための通路である。連通孔43aは、シートパッド13において配風通路42aから表皮部材12に対して延びるように形成された複数の孔部である。配風通路42aを流通する空気は、連通孔43aから表皮部材12を介して着座者に対して吹き出される。
第2空気通路40bは、第1空気通路40aと同様に導入通路41b、配風通路42b、連通孔43bを含んで構成される。導入通路41bは送風装置32の吹出口と連通し、送風装置32からの空気を着座部11の内部に導入する。背もたれ部16の空気通路40a、40bは、着座部11と同様に、導入通路46a、46b、配風通路47a、47b、連通孔48a、48bを有する。
第1空気通路40aおよび第2空気通路40bは、それぞれ互いに独立した通路である。すなわち、送風装置22から吹き出された温風と、送風装置32から吹き出された冷風とは、それぞれ別の空気通路40a、40bを流通してシート10から吹き出す。
第1空気通路40aの配風通路42a、47aと、第2空気通路40bの配風通路42b、47bとは、例えば図2に模式的に示すように、交互に並ぶように形成されている。すなわち、第1空気通路40aおよび第2空気通路40bは、シート10の着座面および背もたれ面において温風が吹き出す領域と冷風が吹き出す領域とが偏りなく分布するように形成されている。換言すれば、第1空気通路40aおよび第2空気通路40bは、温風の当たる着座者の身体部位と、冷風の当たる着座者の身体部位との偏りを抑えるように形成されている。なお図2では、第1空気通路40aの導入通路41a、46a、配風通路42a、47a、連通孔43a、48aを実線で示し、点線で示した第2空気通路40bの導入通路41b、46b、配風通路42b、47b、連通孔43b、48bと区別している。
制御装置50は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータを主なハードウェア要素として備える。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能な所定のプログラムを非一時的に記憶する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。制御装置50が提供する手段および/または機能は、記憶媒体に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置50がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって提供することができる。
制御装置50は、例えば冷凍サイクル装置100と同様に着座部11の下方に設けられている。または、車両のインストルメントパネルの前方に設けられていてもよい。または、車両用空調装置のECUが制御装置50の機能を提供するように構成されていてもよい。ここでECUとはElectronic Control Unitの略であり、電子制御装置を意味する。
制御装置50は、圧縮機60の作動を制御する。制御装置50は、例えば圧縮機60のON/OFFを切り替えて冷凍サイクル装置100を循環する冷媒の流量を調節することで、冷凍サイクル装置100の冷房能力を調整する。または、制御装置50は圧縮機60の回転数を調節することで冷凍サイクル装置100の冷房能力を調整する。または、圧縮機60が可変容量型圧縮機の場合、制御装置50はその吐出容量を調節することで冷凍サイクル装置100の冷房能力を調整することができる。制御装置50は、以上のように冷凍サイクル装置100の冷房能力を調節することで、冷風供給部30が供給される冷風の温度および温熱供給部20が供給する温風の温度を調節することができる。制御装置50は、送風装置22、32を選択的に作動させることで、シート10から温風と冷風のいずれかを選択的に吹き出させることができる。
制御装置50は、温風吹出と冷風吹出とを周期的に切り替える切替制御を実行する。制御装置50は、この切替制御によって着座者の疲労軽減が可能な送風処理を温調シート装置1に実行させる。
すなわち、制御装置50は温風をシート10から吹き出すことで着座者の皮膚に対して温熱による温度刺激を与える。温熱による温度刺激が与えられると、皮膚内部の血管が拡張されて血行が促進され、血流量が増加する。これにより、血液中の疲労物質の代謝が促進され、着座者の疲労の軽減や疲労の蓄積の抑制が可能となる。なお以下において「温熱による温度刺激」を「温熱刺激」と表記することがある。
ところで、着座者に対して温風を時間的に連続して与え続けると、着座者が温風の温熱による温度刺激を知覚する。ここで「温熱による温度刺激を知覚する」とは、着座者が温熱によって暖かさを感じることを意味する。すなわち、所定の時間以上温風を送風し続けると、着座者は温風の温熱による暖かさを感じ続けることになる。このため、所定の時間以上の温風の送風が、着座者に対して温熱刺激の知覚による煩わしさ等の不快を生じさせてしまう。
そこで制御装置50は、温風の供給を開始して着座者が温熱による温度刺激を知覚するまでの時間である温熱知覚時間が経過する前に、温風の供給から冷風の供給に切り替え、冷熱による温度刺激、すなわち冷熱刺激を着座者に与える。これにより、温熱刺激を着座者が知覚することを抑制し、温熱刺激による着座者の不快を抑制できる。ここで温熱知覚時間は、着座者が温熱による温度刺激を不快に感じるまでの時間である温熱不快時間よりも短い時間である。
さらに、着座者に冷風を時間的に連続して与え続けると、着座者が冷熱刺激を知覚して冷熱刺激による不快を感じるようになる。ここで「冷熱刺激を知覚する」とは、着座者が冷熱によって冷たさを感じることを意味する。そのため、冷熱刺激を知覚するまでの時間である冷熱知覚時間が経過する前に、冷風の供給から温風の供給に切り替え、再び着座者に対して温熱刺激を与える。ここで冷熱知覚時間は、着座者が冷風による温度刺激を不快に感じるまでの時間である冷熱不快時間よりも短い時間である。
制御装置50は、この温風の供給と冷風の供給の切替を周期的に繰り返すことで、着座者が温度刺激による不快を感じることを抑制しつつ、着座者の疲労を軽減することが可能な送風処理を実現する。
温風供給から冷風供給に切り替える時間である第1閾時間t1、および冷風供給から温風供給に切り替える時間である第2閾時間t2は、予め制御装置50に記憶されて設定された時間である。第1閾時間t1は、予め決められた温熱知覚時間よりも短い時間として設定された時間である。第2閾時間t2は、予め決められた冷熱知覚時間よりも短い時間として予め設定された時間である。第1閾時間t1は、温熱供給の実行時間、第2閾時間t2は、冷風供給の実行時間、とそれぞれ言い換えることができる。
温熱知覚時間は、例えば実験によって決められる。すなわち、被験者がシート10に着座した状態で温風の吹出を行い、吹出の開始から被験者が温風の温熱刺激を「暖かい」と知覚するまでの時間を計測する。この計測を複数人の被験者に対して行い、温熱刺激を「暖かい」と知覚するまでの時間の平均を温熱知覚時間として決める。こうして決められた温熱知覚時間よりも短い時間を第1閾時間t1として設定する。
冷熱知覚時間の場合も同様に、複数人の被験者が冷風の吹出開始から冷熱刺激を「冷たい」と知覚するまでの時間を算出し、この時間の平均を冷熱知覚時間として決める。こうして決められた冷熱知覚時間よりも短い時間を第2閾時間t2として設定することができる。閾時間t1、t2は、例えば所定の範囲の吹出温度との相関関係のマップまたは相関式等として設定してよい。
第1閾時間t1は、温熱知覚時間未満の時間範囲内で、より長い時間に設定することが望ましい。換言すれば、第1閾時間t1は温熱知覚時間により近い時間に設定することが望ましい。これによって、着座者に対してより長時間温熱刺激を与えることができるため、着座者の血行をより促進することができる。
第2閾時間t2は、例えば、温風の供給を開始してから第1閾時間t1経過して冷風の供給に切り替え、第2閾時間t2が経過するまでの1周期における温度の時間平均が、着座者の体温、例えば37℃と同等になる時間として設定されることが望ましい。これによって、1周期の時間平均が人の体温と同等となるように温風と冷風とを吹き出すことができるため、着座者の温度感覚に与える影響をより抑制することが可能となる。または、第2閾時間t2は、第1閾時間t1と同様に冷熱知覚時間により近い時間に設定してもよい。
閾時間t1、t2は、温調シート装置1の使用者によって任意に変更可能とされていてよい。例えば、上述のあらかじめ設定された時間以内であっても使用者が温熱刺激または冷熱刺激によって不快を感じた場合、操作パネルを操作することで使用者が時間をより短い時間に変更できる構成であってもよい。すなわち、実際の使用者における温度刺激を知覚するまでの時間の個人差に合わせて任意に時間を設定できる構成であってもよい。
温風の温度、冷風の温度は、所定の温度範囲内において任意に設定される。以下に、温風の温度および冷風の温度の設定の一例について説明する。ここでの温度範囲は、温風、冷風ともに表皮部材12、17を通過してシート10から吹き出す際の温度における温度範囲である。温風の場合、温度は着座者の皮膚温度を上げるための熱量を与える温度に設定される。温風の温度は、例えば人間の体温、すなわち37℃を上回る温度に設定される。冷風の温度は、着座者の皮膚温度を下げるための熱量を与える温度に設定される。冷風の温度は、人間の体温、すなわち37℃を下回る温度に設定される。
一般的に、人間は皮膚温度が41℃~43℃以上で焼けるような熱さを感じ、25℃以下で冷たさによる皮膚感覚の麻痺を感じることが知られている。したがって、温風の温度としては、着座者の皮膚温度を41℃~43℃以上には上げない程度の温度を設定することが望ましい。また、冷風の温度としては、着座者の皮膚温度を25℃以下には下げない程度の温度を設定することが望ましい。制御装置50は、温風および冷風の温度の設定を、例えば着座者の着衣量に応じて変更する。具体的には、制御装置50は着座者の着衣量が比較的少ない夏季、比較的多い冬季、夏季と冬季の中間の着衣量となる中間期でそれぞれ異なる温度を設定する。
例えば、夏季は一般的に人の着衣が比較的薄着となる。すなわち、熱抵抗である着衣量が比較的小さくなる。したがって、温風の温度と皮膚温度とが比較的温度差の小さい状態で熱平衡状態となることが想定できる。したがって、夏季の場合は、人が焼けるような熱さを感じる皮膚温度である41℃~43℃と同程度の温度、例えば42℃を温風の温度として設定する。また、冷風の温度も、25℃に設定する。
また、冬季の場合は、一般的に人の着衣が比較的厚着となる。すなわち、着衣量が比較的大きくなる。したがって、温風の温度と皮膚温度とが比較的温度差の大きい状態で熱平衡状態となる。したがって、冬季の場合は、夏季の温風の設定温度よりも高い温度を温風の温度とする。例えば、温風の温度として50℃を設定する。冷風の温度は、温風の温度が夏季と冬季で8℃の差が設定されているので、夏季の冷風の温度である25℃よりも8℃低い17℃を設定温度とする。
中間期の場合は、着衣量が夏季と冬季の中間であることが想定できる。したがって、温風の温度および冷風の温度は、それぞれ夏季の場合と冬季の場合との中間の温度を設定する。すなわち、この場合は温風の温度が46℃であり冷風の温度が21℃である。
以上のように、制御装置50は、人の着衣量が比較的小さい時期と大きい時期とでは、大きい時期における温風の上限温度を高く、また冷風の下限温度を低く設定する。これにより、着座者に対して、時期による着衣量の変化に対応して着座者の皮膚温度を上げる温熱刺激および皮膚温度を下げる冷熱刺激を与えることが可能となる。
制御装置50は、夏季、冬季、中間期を、例えばあらかじめ記憶されたもしくは通信によって取得した暦情報によって判断すればよい。または、車両の外気センサから取得される外気温度情報によって判断してもよい。または、暦や外気温度等の情報から総合的に判断してもよい。
次に制御装置50が実行する温風と冷風の吹き出しの切替制御の一例について、図4のフローチャートを用いて説明する。制御装置50は、図4のフローチャートの処理を、例えば使用者が操作パネルにおける温調シート装置1の作動スイッチを投入した場合に実行開始する。
温調シート装置1が、温風のみを供給して着座者に温感を与える温風モードや、冷風のみを供給して着座者に冷感を与える冷風モード、送風のみを実行する送風モード等の、疲労軽減モード以外の機能を提供可能に構成されている場合、疲労軽減モードの実行スイッチを投入することで図4のフローチャートの処理を開始する。または、制御装置50は、着座者の生体情報をセンサ等によって検出し、検出した情報から着座者に疲労が蓄積されていると判定した場合に図4のフローチャートの処理を開始するように構成されていてもよい。
スイッチが投入されると、ステップS10で温風供給を開始する。具体的には、冷凍サイクル装置100および送風装置22を作動させ、所定温度の温風をシート10から吹き出させる。このとき、冷風供給部30が作動している場合、すなわち送風装置32が作動している場合は作動を停止させる。
次にステップS12に進み、ステップS10で温風供給を開始してから第1閾時間t1が経過したか否かを判定する。第1閾時間t1が経過したと判定された場合には、着座者が温風による温熱刺激を知覚していない状態で着座者に対して冷熱刺激を与えるためにステップS14へと進む。
ステップS14では、温風の供給を停止して冷風の供給を開始する。具体的には、送風装置22の作動を停止して送風装置32の作動を開始する。なおここで、送風装置32が作動を開始してからシート10から冷風が吹き出されるまでの時間差を考慮して、送風装置22の作動を停止する少し前のタイミングで送風装置32の作動を開始してもよい。
次にステップS16に進み、ステップS14で冷風供給を開始してから第2閾時間t2経過したか否かを判定する。第2閾時間t2経過したと判定された場合には、着座者が冷風による冷熱刺激を知覚していない状態で着座者に対して温熱刺激を与えるためにステップS10へと戻る。
制御装置50は、以上の処理を着座者がスイッチの再投入等の停止処理を実行するまで繰り返し実行する。または、制御装置50はタイマーによって所定の時間が経過すると自動で停止処理を実行するように設定されていてもよい。以上の処理により、制御装置50は、着座者に温熱刺激があること自体を知覚させる前に温風の吹き出しから冷風の吹き出しに切り替えるとともに、冷熱刺激があること自体を知覚させる前に温風の吹き出しから冷風の吹き出しに切り替える。したがって、着座者の温度感覚を変化させることなく着座者の疲労の軽減が可能である。
図4のフローチャートの処理を実行した場合の、着座者に与えられる温熱刺激と冷熱刺激のサイクルの一例について、図5のタイムチャートを参照して説明する。図4のフローチャートの処理が開始されると、ステップS10の処理によって温風供給が実行される。ステップS12の処理によって温風供給の開始から第1閾時間t1が経過するまで温風供給が継続され、第1閾時間t1の間温熱刺激がON状態、すなわち着座者に温熱刺激が連続的に与えられる状態となる。温風供給の開始から第1閾時間t1が経過した時点で、ステップS14の処理により温風供給から冷風供給に切り替えられる。そしてステップS16の処理により第2閾時間t2が経過するまで冷風供給が継続され、第2閾時間t2の間冷熱刺激がON状態、すなわち着座者に冷熱刺激が連続的に与えられる状態となる。図4のフローチャートが繰り返し実行されることで、着座者に対して第1閾時間t1だけ刺激を与え、その後冷熱刺激を第2閾時間t2与えるサイクルが繰り返される。
次に第1実施形態の温調シート装置1がもたらす作用効果について説明する。温調シート装置1は、着座者が着座するシート10と、シート10を介して着座者に対して着座者の皮膚温度を上昇させる温熱を供給する温熱供給が可能な温熱供給部20とを有する。温調シート装置1は、シート10を介して着座者に対して着座者の皮膚温度を低下させる冷風を供給する冷風供給が可能な冷風供給部30と、温熱供給部20および冷風供給部30を制御する制御装置50とを備える。制御装置50は、温熱供給を実行して着座者が温熱による温度刺激を不快に感じるまでの時間である温熱不快時間が経過する前に温熱供給から冷風供給に切り替える制御を実行する。制御装置50は、冷風供給を実行して着座者が冷風による温度刺激を不快に感じるまでの時間である冷熱不快時間が経過する前に冷風供給から温熱供給に切り替える制御を実行する。
これによれば、着座者に対して温熱を供給して皮膚温度を上昇し、血行を促進することができる。そして、着座者が温熱による温度刺激を不快に感じるまでの時間である温熱不快時間が経過する前に温熱の供給から冷風の供給へと切り替えるため、着座者が温熱による温度刺激を不快に感じることを冷熱による温度刺激で抑制することができる。また、着座者が冷風による温度刺激を不快に感じるまでの時間である冷熱不快時間が経過する前に冷風の供給から温熱の供給へと切り替えるため、着座者が冷風による温度刺激を不快に感じることを温熱による温度刺激で抑制することができる。以上により、温度刺激による不快を抑制しつつ着座者の疲労軽減が可能な温調シート装置1を提供することができる。
また、着座者に冷熱刺激を与えると、着座者の皮膚近傍の血管が収縮し、血流量が減少する。温熱刺激と冷熱刺激が交互に繰り返されると、血管が拡張と収縮の繰り返しによる機械的刺激を受ける。これにより、血管内部での血管拡張物質の作用が強くなり、血管の拡張がより促進される。したがって、温熱刺激と冷熱刺激とを繰り返すこと自体によっても、血流量の増加が促進され、温度刺激による不快を抑制しつつ着座者の疲労軽減を可能とすることができる。すなわち、温熱時間を与える時間が比較的短い場合であっても、温熱刺激と冷熱刺激を繰り返すことで、十分に着座者の疲労軽減が可能となる。
冷媒が流通する蒸発器31および凝縮器21を有する冷凍サイクル装置100を有する。温熱供給部20は、凝縮器21と送風装置22とを有する。冷風供給部30は、空気を送風する送風装置32と、送風装置32によって送風された空気を冷却する蒸発器31とを有する。これによれば、温熱供給部20における空気の加熱と、冷風供給部30における空気の冷却とを、1つの冷凍サイクル装置100における凝縮器21と蒸発器31とによって実現できる。したがって、温調シート装置1の省スペース化が可能となる。
シート10は、温熱供給部20から送風される加熱された空気が流通する第1空気通路40aと、冷風供給部30から送風される冷風が流通する第2空気通路40bとを有する。第1空気通路40aと第2空気通路40bとは、互いに独立した通路として形成されている。
これによれば、温熱供給部20からの温風と冷風供給部30からの冷風とをそれぞれ別の空気通路40a、40bを流通させてからシート10より吹き出させることができる。したがって、温風と冷風とを共通の空気通路に流通させる場合よりも、通路を形成する通路壁が流通する空気に及ぼす熱的な影響が小さくなる。すなわち、温風供給から冷風供給に切り替えた際に、温風供給時に加熱された通路壁によって冷風の温度が上昇することを抑制できる。また、冷風供給から温風供給に切り替えた際に、冷風供給時に冷却された通路壁によって温風の温度が低下することを抑制できる。さらに、これによってシート10から吹き出す空気の温度が所望の温度に到達するまでの時間の遅れを抑制することができる。
制御装置50は、温熱供給部20を駆動する電力の供給と冷風供給部30を駆動する電力の供給とを切り替えることで冷風供給部30の作動と温熱供給部20の作動とを切り替える。これによれば、温風を供給している際は冷風供給部30への電力の供給を停止し、冷風を供給している際は温熱供給部20への電力の供給を停止できるので、消費電力を抑制することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態における温調シート装置1の変形例について説明する。第1実施形態において、第1閾時間t1は人が温熱刺激を受けてから「暖かい」と知覚するまでの時間よりも短い時間として決定されるとした。これに代えて、第1閾時間t1を人が温熱刺激を受けてからその温熱刺激を不快に感じるまでの時間よりも短い時間として決定してもよい。例えば、冬季では多少の「暖かい」という知覚は着座者にとって好ましい場合がある。したがって、人が温熱刺激を受けてから温熱刺激を不快であると知覚するまでの時間を温熱不快時間として実験等により決定し、その時間よりも短い時間を第1閾時間t1として制御装置50に予め設定してもよい。ここで、温熱刺激を「不快であると知覚する」とは、例えば温熱刺激を「熱いと感じる」または「煩わしいと感じる」こと等を意味する。
また第1実施形態において、第2閾時間t2は冷熱刺激を「冷たい」と感じるまでの時間よりも短い時間で決定されるとした。これに代えて、第2閾時間t2を人が冷熱刺激を受けてからその冷熱刺激を不快に感じるまでの時間よりも短い時間として決定してもよい。例えば、夏季では多少の「冷たい」という知覚は着座者にとって好ましい場合がある。したがって、人が冷熱刺激を受けてから冷熱刺激を不快であると知覚するまでの時間を冷熱不快時間として実験等により決定し、その時間よりも短い時間を第2閾時間t2として制御装置50に予め設定してもよい。ここで冷熱刺激を「不快であると知覚する」とは、例えば冷熱刺激を「煩わしいと感じる」こと等を意味する。
制御装置50は、第1閾時間t1を夏季には温熱知覚時間よりも短い時間、冬季には温熱不快時間よりも短く温熱知覚時間よりも長い時間とするように設定を切り替える構成になっていてもよい。また、制御装置50は、第2閾時間t2を夏季には冷熱不快時間よりも短く冷熱知覚時間よりも長い時間、冬季には冷熱知覚時間よりも短い時間とするように設定を切り替える構成になっていてもよい。これにより、着座者に対してより好ましい温度感覚を与えることができる。また、着座者が任意に上記の設定を切替可能な構成であってもよい。
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態における温調シート装置1の変形例について説明する。図6において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
図6に図示されるように、第3実施形態の温調シート装置1は、第1空気通路40aを開閉する第1開閉弁23と、第2空気通路40bを開閉する第2開閉弁33とを有する。各開閉弁23、33は、各送風装置22、32からの送風空気が各空気通路40a、40bを流通してシート10から吹き出すことを許可する開状態と、各空気通路40a、40bを閉塞して送風空気がシート10から吹き出すことを禁止する閉状態とを切り替える。開閉弁23、33の機構としては、ゲートバルブやバタフライバルブ等の種々の弁機構を適宜採用することができる。開閉弁23、33は例えば応答速度が比較的速い電磁弁によって提供される。第1開閉弁23および第2開閉弁33は、制御装置50によってその作動が制御される。第1開閉弁23は、特許請求の範囲における第1弁部に相当し、第2開閉弁33は、特許請求の範囲における第2弁部に相当する。
第3実施形態の温調シート装置1は、温風の供給と冷風の供給との切り替えを開閉弁23、33の制御によって実行する。すなわち、温風の供給時には、制御装置50によって第1開閉弁23が開状態でかつ第2開閉弁33が閉状態に制御される。そして冷風の供給時には、第1開閉弁23が閉状態でかつ第2開閉弁33が開状態に制御される。この場合、送風装置22、32は、図4のフローチャートの制御を実行している間常に作動している状態である。
第3実施形態の温調シート装置1は、温風の供給と冷風の供給との切り替えを開閉弁23、33によって実行する。このため温風および冷風の供給動作そのものの切替制御、例えば第1実施形態における送風装置22、32の作動の開始と停止との切替制御よりも素早い切替が可能となる。
(第4実施形態)
第4実施形態では、第1実施形態における温調シート装置1の変形例について説明する。図7において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
第4実施形態の温調シート装置1は、ヒータ装置421を有する。ヒータ装置421は、例えばPTCヒータやニクロム線ヒータ等によって提供される。ヒータ装置421は、例えば送風装置22の吹出口付近に設けられ、送風装置22によって駆動された空気を加熱するように構成されている。ヒータ装置421は、特許請求の範囲における加熱部に相当する。
(第5実施形態)
第5実施形態では、第1実施形態における温調シート装置1の変形例について説明する。図8において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
第5実施形態の温調シート装置1は、温風と冷風の両方が流通する共通の空気通路440を有する。これによれば、冷風と温風とを同じ領域から着座者に対して供給できる。すなわち、着座者の同じ身体部位に対して温熱刺激および冷熱刺激を与えることができる。このため、着座者の受けた温熱刺激をより確実に冷熱刺激で打ち消すことが可能になる。したがって、温熱刺激による不快を冷熱刺激によってより効果的に抑制することができる。
(第6実施形態)
第6実施形態では、第1実施形態における温調シート装置1の変形例について説明する。図9において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
第6実施形態の温調シート装置1は、シートヒータ520を有する。シートヒータ520は、例えば通電によって発熱する電熱線である。シートヒータ520は、特許請求の範囲における発熱体に相当する。シートヒータ520は、シート10の内部、例えば表皮部材12、17とシートパッド13、18との間に埋め込まれるようにして設けられる。
温調シート装置1は、シートヒータ520の発熱によって発せられる温熱を着座者に供給することで着座者の皮膚温度を上昇させる。シートヒータ520は、温風を供給する場合に比べて、温熱と冷風との供給の素早い切替が可能となる。
(第7実施形態)
第7実施形態では、第1実施形態における温調シート装置1の変形例について説明する。図10において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。図10に示すように、制御装置50は、着座センサ71、室温センサ70、個人情報入力部80、および設定温度入力部90と通信可能に構成されている。
着座センサ71は、車室内のシート10に設けられている。着座センサ71は、シート10に加わる圧力の大きさを検出する圧力検出手段である。着座センサ71は、シート10に加わる圧力を検出することで、着座した乗員がシート10に付与する荷重の大きさを検出する。シート10に加わる圧力の大きさは、着座した着座者の体重に関連する体重関連情報である。体重関連情報は、着座者の体格の大きさを表す体格情報の一例であり、着座センサ71は体格検出部の一例である。
室温センサ70は、車室内の空気温度(以下、室温と表記)を検出する室温情報検出部である。室温センサ70が検出した室温情報は、車両用空調装置における吹出温度や、温調シート装置1における閾時間t1、t2の算出に利用される。
個人情報入力部80は、乗員が自身の個人情報を入力可能である。個人情報入力部80は、例えば物理ボタン、タッチセンサ等の入力装置によって提供することができる。個人情報入力部80は、例えば車室内のインストルメントパネルやセンターコンソール等に設けられ、任意のタイミングで乗員が個人情報を入力したり、入力した情報を訂正したりすることができる。個人情報入力部80によって入力された個人情報は、記憶部52に記憶される。記憶された個人情報は、温調シート装置1における閾時間t1、t2の算出に利用される。
個人情報入力部80によって入力される個人情報は、例えば性別、年齢等の着座者の身体的属性に関する情報や、主観的な温熱感覚の傾向に関する情報等である。「主観的な温熱感覚の傾向」とは、着座者が自覚する着座者自身の暑さや寒さに対する感じ方の特性であり、例えば着座者の自身についての「暑がり」である、「寒がり」である、「冷え症」であるといった評価である。主観的な温熱感覚の傾向に関する情報は、着座者の温熱感覚について着座者自身が評価した情報である主観情報の一例である。
設定温度入力部90は、室温を調整する車両用空調装置における冷房運転時および暖房運転時の設定温度を着座者が入力する入力部である。設定温度入力部90は、インストルメントパネルやセンターコンソール等に設けられた物理ボタン、タッチセンサ等の入力装置によって提供することができる。設定温度入力部90は、冷房運転時における設定温度情報(冷房設定温度情報)と暖房運転時における設定温度情報(暖房設定温度情報)をそれぞれ制御装置50へと送信する。設定温度情報は、車両用空調装置の吹出温度を算出する際に利用される。設定温度情報は、制御装置50の記憶部52に着座者が設定した設定温度の履歴情報として蓄積される。
制御装置50は、個人情報取得部51と、記憶部52と、温熱快適度評価部53と、冷熱快適度評価部54と、第1閾時間設定部57と、第2閾時間設定部58とを機能ブロックとして有する。
個人情報取得部51は、温熱快適度および冷熱快適度に影響を及ぼす着座者の個人情報を取得する。個人情報取得部51は、例えば着座センサ71、個人情報入力部80、設定温度入力部90等から複数の個人情報を取得する。個人情報取得部51は、取得した個人情報を記憶部52に記憶させたり、温熱快適度評価部53や冷熱快適度評価部54に対して出力したりする。
記憶部52は、制御装置50が取得した各種情報を記憶する。記憶部52は、個人情報取得部51にて取得した圧力情報、身体属性情報、主観情報、設定温度の履歴情報等の個人情報を、対応する着座者に関連付けて記憶する。記憶部52は、記憶した個人情報を、温熱快適度評価部53や冷熱快適度評価部54に対して出力する。
温熱快適度評価部53は、個人情報取得部51にて取得された個人情報に基づいて、温熱刺激の乗員に対する快適度である温熱快適度を評価する。温熱快適度は、所定の基準となる温度で基準となる時間与えられる温熱刺激(基準温熱刺激)に対して着座者が感じる快適さの度合である。温熱快適度が高いほど、着座者は基準温熱刺激を快適であると感じ、温熱快適度が低いほど、着座者は基準温熱刺激を不快であると感じる。
すなわち、温熱快適度が高い着座者ほど、より温熱不快時間が長くなる。したがって、温熱快適度が高い着座者に対しては、比較的長い第1閾時間t1の設定が許容される。また、温熱快適度が高い着座者に対して比較的長い第1閾時間t1を設定することにより、着座者が温熱刺激による快適さより長い時間感じやすくなる。対して、温熱快適度が低い着座者は、温熱不快時間がより短くなる。これにより、温熱快適度が低い着座者に対しては、比較的短い第1閾時間t1の設定が求められる。
温熱快適度評価部53は、例えば取得された個人情報に対応して第1閾時間t1の初期値t1aを補正する補正値の大きさとして温熱快適度を評価する。温熱快適度の高さ(補正値の大きさ)と個人情報との関係は、実験等によって予め調べることができる。図11は、17名の被験者に対して、暑がり、寒がりと温熱刺激、冷熱刺激との関係を調べた実験結果を示す表である。この実験では、各被験者に対して、自身の温熱感覚の傾向について「暑がり」、「やや暑がり」、「普通」、「やや寒がり」、「寒がり」の5段階レベルで主観的に評価させた。図11の表は、15度の冷熱刺激を3分与えた場合、および41~43度の温熱刺激を15分与えた場合に、自身の温熱感覚についてどのレベルにあると評価をした被験者がそれぞれの温度刺激に対して快適と不快のどちらの感覚を抱くかを分類している。
この実験結果より、「暑がり」の評価をした被験者は、温熱刺激を不快に感じる傾向があるといえる。すなわち、「暑がり」の傾向がある被験者は、他の被験者よりも温熱快適度が小さく、温熱不快時間が比較的短い傾向にあるといえる。
したがって、着座者が「暑がり」であるという主観情報は、第1閾時間t1を初期値t1aより短く補正する補正値を選択する条件として利用することができる。このときの補正値のより具体的な大きさは、実験等に基づき予め設定されたマップやテーブル、式等によって算出することができる。
同様に、例えば、年齢が高い着座者は低い着座者と比較して温度変化に対する感度が鈍感であるために温熱不快時間が比較的長く、温熱快適度が比較的高くなる傾向があると考えられる。このため、年齢が所定年齢以上であるという身体属性情報は、第1閾時間t1を初期値t1aより長く補正する補正値を選択する条件として利用できる。また、体格の大きい着座者は、体格の小さい着座者と比較して温熱不快時間が短く、温熱快適度が小さくなる傾向がある。このため着座者の体格が所定レベル以上であるという体格情報は、第1閾時間t1を初期値t1aより短く補正する補正値を選択する条件として利用できる。
また、冷え症である着座者は、冷え症ではない着座者と比較して温熱不快時間が比較的長く、温熱快適度が比較的高くなる傾向があると考えられる。このため着座者が「冷え症」であるという主観情報は、第1閾時間t1を初期値t1aより長く補正する補正値を選択する条件として利用できる。また、車両用空調装置の暖房運転時の設定温度が高い着座者は、低い着座者と比較して、温熱刺激を好む傾向が強いと考えられる。このため、暖房設定温度が所定温度以上であるという履歴情報は、第1閾時間t1を初期値t1aより長く補正する補正値を選択する条件として利用できる。それぞれの補正値の具体的な大きさは、実験等に基づき予め設定されたマップやテーブル、式等によって算出すればよい。
温熱快適度評価部53は、例えば上述のように取得された1つ1つの個人情報に対応する補正値を決定する。または温熱快適度評価部53は、取得された複数の個人情報に基づき総合的な補正値を決定してもよい。また、温熱快適度評価部53は、複数の個人情報の中から特に温熱快適度に対する影響の大きい個人情報を選定して対応する補正値を決定してもよい。温熱快適度評価部53にて決定された補正値は、第1閾時間設定部57に出力される。
室温取得部55は、室温センサ70により検出された室温情報を取得する。室温取得部55は、室温情報を室温影響度評価部56に出力する。室温影響度評価部56は、取得された室温情報に基づいて、第1閾時間t1の初期値t1aおよび第2閾時間t2の初期値t2aに対する補正値を決定する。室温が比較的高いと、比較的低い場合よりも着座者の温熱不快時間が短くなり、また冷熱不快時間が長くなることが考えられる。このため、室温影響度評価部56は、室温が高いほど、第1閾時間t1がより短くなるような補正値と第2閾時間t2がより長くなるような補正値とを決定する。
第1閾時間設定部57は、温熱快適度評価部53による温熱快適度の評価(補正値の決定)と、室温影響度評価部56における室温の評価に基づいて第1閾時間t1を設定する。第1閾時間設定部57は、温熱快適度評価部53にて決定された補正値を用いて、実際に温調シート装置1を利用する着座者に対応した第1閾時間t1を算出して設定する。第1閾時間設定部57は、例えば予め設定された補正式に補正値を代入することで初期値t1aを補正して第1閾時間t1を算出する。これにより、複数の個人情報を総合した結果、着座者の温熱快適度が比較的高い場合には、第1閾時間設定部57は比較的長い第1閾時間t1を設定し、温熱快適度が比較的低い場合には比較的短い第1閾時間t1を設定することになる。第1閾時間t1の算出方法としては、補正式以外にもマップ、テーブル等種々の手段を採用することができる。第1閾時間設定部57は、温熱供給時間設定部の一例である。
冷熱快適度評価部54は、個人情報取得部51にて取得された個人情報に基づいて、冷熱刺激の乗員に対する快適度である冷熱快適度を評価する。冷熱快適度は、所定の基準となる温度で基準となる時間与えられる冷熱刺激(基準冷熱刺激)に対して着座者が感じる快適さの度合である。冷熱快適度が高いほど、着座者は基準冷熱刺激を快適であると感じ、冷熱快適度が低いほど、着座者は基準冷熱刺激を不快であると感じる。
したがって、温熱快適度と同様に、冷熱快適度が高い着座者ほど、より冷熱不快時間が長くなり、冷熱快適度が低い着座者ほど、冷熱不快時間がより短くなる。これにより、冷熱快適度が高い着座者に対しては、比較的長い第2閾時間t2の設定が許容され、冷熱快適度が低い着座者に対しては、比較的短い第2閾時間t2の設定が求められる。
冷熱快適度評価部54は、温熱快適度評価部53と同様に、取得された個人情報に対応して第2閾時間t2の初期値t2aを補正する補正値の大きさとして冷熱快適度を評価する。例えば図11の実験結果より、「暑がり」、「やや暑がり」の評価をした被験者は、冷熱刺激を快適に感じる傾向があるといえる。すなわち、「暑がり」の傾向があると自信を評価する被験者は、他の被験者よりも冷熱快適度が高く、冷熱不快時間が比較的長い傾向にあるといえる。
したがって、着座者が「暑がり」であるという主観情報は、第2閾時間t2を初期値t2aより長く補正する補正値を選択する条件として利用することができる。このときの補正値のより具体的な大きさは、実験等に基づき予め設定されたマップやテーブル、式等によって算出することができる。
同様に、例えば、着座者が「寒がり」であるという主観情報は、第2閾時間t2を初期値t2aより短く補正する補正値を選択する条件として利用できる。また、女性は男性と比較して冷熱不快時間が比較的短く、冷熱快適度が低くなる傾向があると考えられる、このため着座者が女性であるという身体属性情報は、第2閾時間t2を初期値t2aより短く補正する補正値を選択する条件として利用できる。
また、冷え症である着座者は、冷え症ではない着座者と比較して冷熱不快時間が比較的短く、冷熱快適度が比較的低くなる傾向があると考えられる。このため着座者が「冷え症」であるという主観情報は、第2閾時間t2を初期値t2aより短く補正する補正値を選択する条件として利用できる。また、車両用空調装置の冷房運転時の設定温度が低い着座者は、高い着座者と比較して、冷熱刺激を好む傾向が強いと考えられる。このため、冷房設定温度が所定温度以下であるという履歴情報は、第2閾時間t2を初期値t2aより長く補正する補正値を選択する条件として利用できる。
第2閾時間設定部58は、第1閾時間設定部57と同様に、冷熱快適度評価部54による冷熱快適度の評価(補正値の決定)と室温影響度評価部56における室温の評価に基づいて第2閾時間t2を設定する。第2閾時間設定部58は、冷熱快適度評価部54にて決定された補正値を用いて、実際に温調シート装置1を利用する着座者に対応した第2閾時間t2を算出して設定する。第2閾時間設定部58は、例えば予め設定された補正式に補正値を代入することで初期値t2aを補正して第2閾時間t2を算出する。これにより、複数の個人情報を総合した結果、着座者の冷熱快適度が比較的高い場合には、第2閾時間設定部58は比較的長い第2閾時間t2を設定し、冷熱快適度が比較的低い場合には比較的短い第2閾時間t2を設定することになる。第2閾時間t2の算出方法としては、補正式以外にもマップ、テーブル等種々の手段を採用することができる。第2閾時間設定部58は、冷熱供給時間設定部の一例である。
次に、第7実施形態の温調シート装置1において制御装置50が実行する処理の一例について、図12のフローチャートを参照して説明する。制御装置50は、図12に示す処理を、温風と冷風の吹き出しの切替制御の実行前に行う。または、切替制御の実行中に行って閾時間t1、t2を適宜設定し直してもよい。
制御装置50は、ステップS701でセンサ、記憶部52から体格情報、身体属性情報、主観情報、履歴情報等の個人情報を取得する。ステップS701の処理は、個人情報取得部51の機能に相当する。
ステップS703では、身体属性情報から着座者が女性であるか否かを判定する。女性であると判定されると、ステップS704へと進む。ステップS704では、第2閾時間t2を初期値t2aより短くする補正値を決定する。ステップS704の処理を終えると、ステップS705へと進む。一方ステップS703で女性でないと判定されると、ステップS704をスキップしてステップS705へと進む。ステップS703、S704の処理は、冷熱快適度評価部54の機能に相当する。
ステップS705では、身体属性情報から着座者の年齢が所定年齢よりも大きいか否かを判定する。年齢が所定年齢よりも大きいと判定されると、ステップS706へと進む。ステップS706では第1閾時間t1を初期値t1aより長くする補正値および第2閾時間t2を初期値t2aより長くする補正値をそれぞれ決定してステップS707へと進む。一方ステップS705で年齢が所定年齢以下であると判定されると、ステップS706をスキップしてステップS707へと進む。ステップS705、S706の処理は、冷熱快適度評価部54および温熱快適度評価部53の機能に相当する。
ステップS707では、主観情報から着座者が自身について「暑がり」であると評価しているか否かを判定する。「暑がり」である評価していると判定されると、ステップS708へと進み、第1閾時間t1を初期値t1aより短くする補正値および第2閾時間t2を初期値t2aより長くする補正値をそれぞれ決定してステップS709へと進む。一方ステップS707で「暑がり」であると評価していないと判定されると、ステップS708をスキップしてステップS709へと進む。ステップS707、S708の処理は、温熱快適度評価部53および冷熱快適度評価部54の機能に相当する。
ステップS709では、主観情報から着座者が自身について「寒がり」であると評価しているか否かを判定する。「寒がり」である評価していると判定されると、ステップS710へと進み、第2閾時間t2を初期値t2aより短くする補正値を決定してステップS711へと進む。一方ステップS709で「寒がり」であると評価していないと判定されると、ステップS710をスキップしてステップS711へと進む。ステップS709、S710の処理は、冷熱快適度評価部54の機能に相当する。
ステップS711では、主観情報から着座者が自身について「冷え症」であると評価しているか否かを判定する。「冷え症」である評価していると判定されると、ステップS712へと進み、第1閾時間t1を初期値t1aより長くする補正値および第2閾時間t2を初期値t2aより短くする補正値をそれぞれ決定してステップS713へと進む。一方ステップS711で「冷え症」であると評価していないと判定されると、ステップS712をスキップしてステップS713へと進む。ステップS711、S712の処理は、冷熱快適度評価部54および温熱快適度評価部53の機能に相当する。
ステップS713では、検出された体格情報から着座者の体格が所定レベルよりも大きいか否かを判定する。体格が所定レベルよりも大きいと判定されると、ステップS714へと進む。ステップS714では第1閾時間t1を初期値t1aより短くする補正値および第2閾時間t2を初期値t2aより長くする補正値をそれぞれ決定してステップS715へと進む。一方ステップS713で体格が大きくないと判定されると、ステップS714をスキップしてステップS715へと進む。ステップS713、S714の処理は、冷熱快適度評価部54および温熱快適度評価部53の機能に相当する。
ステップS715では、履歴情報から暖房設定温度が閾設定温度以上であるか否かを判定する。暖房設定温度が閾設定温度以上であると判定されると、ステップS716へと進む。ステップS716では第1閾時間t1を初期値t1aより長くする補正値を決定してステップS717へと進む。一方ステップS715で暖房設定温度が閾設定温度より小さいと判定されると、ステップS716をスキップしてステップS717へと進む。ステップS715、S716の処理は、温熱快適度評価部53の機能に相当する。
ステップS717では、履歴情報から冷房設定温度が閾設定温度以下であるか否かを判定する。冷房設定温度が閾設定温度以下であると判定されると、ステップS718へと進む。ステップS718では第2閾時間t2を初期値t2aより長くする補正値を決定してステップS719へと進む。一方ステップS717で冷房設定温度が閾設定温度より大きいと判定されると、ステップS718をスキップしてステップS719へと進む。ステップS717、S718の処理は、冷熱快適度評価部54の機能に相当する。
ステップS719では、室温取得部55により取得された室温情報から、第1閾時間t1の初期値t1aおよび第2閾時間t2の初期値t2aに対する補正値を設定する。ステップS719の処理を行うと、ステップS720へと進む。
ステップS720では、ステップS703~S719の一連の処理にて決定された、第1閾時間t1の初期値t1aおよび第2閾時間t2の初期値t2aのそれぞれを補正する補正値を用いて、実際の第1閾時間t1および第2閾時間t2を算出し、設定する。S720の処理は、第1閾時間設定部57および第2閾時間設定部58の機能に相当する。
なお、制御装置50は、温調シート装置1に着座者が着座するごとに図12のフローチャートを実行して第1閾時間t1および第2閾時間t2を設定し直してよい。または一旦第1閾時間t1および第2閾時間t2を設定するとそれらをプリセット情報として記憶部52等に記憶し、対応する着座者が着座した際に記憶したプリセット情報を利用して第1閾時間t1および第2閾時間t2を設定する構成でもよい。
次に第7実施形態の温調シート装置1がもたらす作用効果について説明する。第7実施形態の温調シート装置1において、制御装置50は、温熱快適度に影響を及ぼす着座者の個人情報を取得する個人情報取得部51と、個人情報に基づいて温熱快適度を評価する温熱快適度評価部53とを有する。制御装置50は、温熱快適度が高いほど第1閾時間t1を長くする第1閾時間設定部57を有する。
これによれば、温調シート装置1は、個人情報に基づいて着座者の温熱快適度を評価し、温熱快適度が高いほど温熱供給の実行時間を長くする。このため、着座者個人の温熱快適度の違いに応じて、温熱供給の実行時間を調整することができる。例えば、温熱快適度の高い着座者は低い着座者と比較して温熱供給の時間が長くなるため、温熱刺激による快適さを感じ易くなる。また、温熱快適度の低い着座者は高い着座者と比較して温熱供給の時間が短くなるため、温熱刺激による不快を感じにくくなる。
個人情報取得部51は、着座者の温熱感覚について着座者が評価した情報である主観情報を個人情報として取得する。これによれば、着座者自身の温熱感覚に対する主観的な評価を、温熱快適度および冷熱快適度の評価に利用できる。したがって、個人個人の温熱刺激および冷熱刺激に対する主観的な感じ方の違いを反映した閾時間t1、t2の調整が可能となる。
個人情報取得部51は、体重関連情報である着座センサ71が検出した圧力情報を個人情報として取得する。これによれば、着座者をセンシングした情報を温熱快適度および/または冷熱快適度の評価に利用できる。したがって、これらの情報について着座者が操作して入力する必要がないため、着座者の煩わしさを軽減できる。
個人情報取得部51は、車室内の空気温度を調整する空調装置において着座者が設定した設定温度の履歴情報を個人情報として取得する。これによれば、着座者による空調装置の設定温度の履歴情報を温熱快適度および冷熱快適度の評価に利用できる。履歴情報は、着座者の温熱刺激および冷熱刺激に関する嗜好が反映される。このため、履歴情報を取得することで、温熱刺激および冷熱刺激に関する着座者の嗜好を、自動で温熱快適度および冷熱快適度の評価に利用することができる。
(第8実施形態)
第7実施形態において、第1閾時間t1と第2閾時間t2は、取得された個人情報に基づいて設定されるとしたが、温熱刺激と冷熱刺激の繰り返しによる人の皮膚血流量の増加量に基づいて、予め設定されてもよい。図13は、足踏み運動と温冷サイクルとによる皮膚血流量の増加率を比較したグラフである。実験では、5人の被験者に対して、足踏み運動と温冷サイクルとによる皮膚血流量の実験開始前と比較した腰部の皮膚血流量の増加率を血流増加率として測定した。ここで足踏み運動とは、歩行を模擬した足踏みを5分間継続した運動である。また温冷サイクルとは、高速道路を2時間連続運転する着座者に対して与えた、第1閾時間t1を5分、第2閾時間t2を1分30秒に設定した温熱刺激と冷熱刺激の繰り返しである。グラフ中の白抜きの丸は、5人の被験者のそれぞれの血流増加率の値を示し、棒グラフは5人の血流増加率の平均値を示す。
図13によれば、足踏み運動によって血流増加率が約3倍となり、温冷サイクルを与えることによって血流増加率が約2.5倍となることが分かる。温冷サイクルによって、足踏み運動と比較的近い血流増加率を得ることができる。このように、温熱不快時間および冷熱不快時間の範囲内で、血流増加率が足踏み運動の場合の血流増加率に近づくような第1閾時間t1および第2閾時間t2を予め調べて制御装置50に記憶させてもよい。これにより、足踏み運動と同程度の疲労低減効果を得ることの可能な温熱供給と冷風供給との繰り返し運転を実行することができる。
(第9実施形態)
第9実施形態では、第7実施形態における温調シート装置1の変形例について説明する。図14において第7実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。第9実施形態の温調シート装置1において、制御装置50は、図14に示すように温熱温度設定部957と冷熱温度設定部958とを機能ブロックとして有する。
第9実施形態において、温熱快適度評価部53は、取得された個人情報に対応して温熱供給部20が供給する温熱温度の初期温度を補正する補正値の大きさとして温熱快適度を評価する。冷熱快適度評価部54は、取得された個人情報に対応して冷風供給部30が供給する冷風温度の初期温度を補正する補正値の大きさとして冷熱快適度を評価する。
温熱温度設定部957は、温熱供給部20によって供給される温熱刺激の温度を設定する。温熱温度設定部957は、温熱快適度評価部53による温熱快適度の評価(補正値の決定)に基づいて温熱温度を設定する。温熱温度設定部957は、温熱快適度評価部53にて決定された補正値を用いて、実際に温調シート装置1を利用する着座者に対応した温熱温度を算出して設定する。これにより、複数の個人情報を総合した結果、着座者の温熱快適度が比較的高い場合には、温熱温度設定部957は比較的高い温熱温度を設定し、温熱快適度が比較的低い場合には比較的低い温熱温度を設定することになる。
冷熱温度設定部958は、冷風供給部30によって供給される冷熱刺激の温度を設定する。冷熱温度設定部958は、冷熱快適度評価部54による冷熱快適度の評価(補正値の決定)に基づいて冷熱温度を設定する。冷熱温度設定部958は、冷熱快適度評価部54にて決定された補正値を用いて、実際に温調シート装置1を利用する着座者に対応した冷風温度を算出して設定する。これにより、複数の個人情報を総合した結果、着座者の冷熱快適度が比較的高い場合には、冷熱温度設定部958は比較的低い冷風温度を設定し、冷熱快適度が比較的低い場合には比較的高い冷風温度を設定することになる。
第9実施形態の温調シート装置1がもたらす作用効果について説明する。第9実施形態の温調シート装置1において、制御装置50は、個人情報取得部51と、温熱快適度評価部53と、温熱快適度が高いほど温熱供給の温度を高くする温熱温度設定部957とを有する。これによれば、温熱快適度が高いほどより高温の温熱を着座者に対して供給できる。これにより、温熱快適度の高い着座者に、温熱快適度の低い着座者と比較してより高い温度の温熱を供給し、温熱刺激による快適さを向上できる。また、温熱快適度の低い着座者に温熱快適度の高い着座者と比較してより低温の温熱を供給し、温熱刺激による不快を抑制することができる。
制御装置50は、個人情報取得部51と、冷熱快適度評価部54と、冷熱快適度が高いほど冷風供給の温度を低くする冷熱温度設定部958とを有する。これによれば、冷熱快適度が高いほどより低温の冷風を着座者に対して供給できる。これにより、冷熱快適度の高い着座者に、冷熱快適度の低い着座者と比較してより低温の冷風を供給し、冷熱刺激による快適さを向上できる。また、冷熱快適度の低い着座者に冷熱快適度の高い着座者と比較してより高温の冷熱を供給し、冷熱刺激による不快を抑制することができる。
なお、第9実施形態において、第1閾時間t1および第2閾時間t2は、それぞれ予め設定された値でもよいし、第7実施形態と同様に、制御装置50における温熱快適度や冷熱快適度の評価に基づいて調整される値であってもよい。
また、第9実施形態において制御装置50は、個人情報に基づいて温熱温度の初期温度を補正する補正値の大きさを決定するのではなく、予め設定された個人情報と温熱温度との対応関係を直接参照してもよい。また、冷熱温度に関しても同様に、個人情報に基づいて冷熱温度の初期温度を補正する補正値の大きさを決定する代わりに、予め設定された個人情報と冷熱温度との対応関係を直接参照してもよい。
(他の実施形態)
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
上述の実施形態において、冷風は冷凍サイクル装置100の蒸発器31によって送風空気を冷却することで生成される。これに代えて、蒸発器31以外の冷熱発生手段によって送風空気を冷却して冷風を生成してもよい。例えば、ペルチェ素子によって送風空気を冷却してもよい。または、車両用空調装置における蒸発器を利用してもよい。すなわち、車両用空調装置とシート10の空気通路とをダクト等で接続し、車両用空調装置の蒸発器を通過して冷却された空気を空気通路に導入する構成としてもよい。
上述の実施形態において、温風は冷凍サイクル装置100の凝縮器21によって送風空気を加熱することで生成される。これに加えて、凝縮器21以外の加熱手段で送風空気をさらに加熱して温風を生成してもよい。例えば、PTCヒータやニクロム線ヒータ等のヒータ装置を補助的な加熱手段として有する構成であってもよい。
第7実施形態において、制御装置50は、着座センサ71によって検出された圧力情報を着座者の体格情報として取得するとしたが、着座者の体格情報はこれに限らない。例えば、ドライバーモニタによって検出された着座者の撮像データを体格情報として取得してもよい。この場合ドライバーモニタが体格検出部に相当する。または、IRセンサによるサーモグラフィの画像データを体格情報として取得してもよい。この場合IRセンサが体格検出部に相当する。制御装置50は、着座者の身長、体重、BMI、身体形状等の着座者の体格を推定可能な情報であれば多様な情報を体格情報として取得することができる。
第7実施形態において、制御装置50は、第1閾時間t1および第2閾時間t2の両方を取得された個人情報に基づいて算出するとしたが、いずれか一方のみを第7実施形態に記載された方法によって算出する構成であってもよい。
第7実施形態において、温熱快適度評価部53は、第1閾時間t1の初期値t1aに対する補正値を決定することで、温熱快適度を評価するとした。これに代えて、制御装置50は、取得された個人情報と第1閾時間t1の長さとの対応関係がマップやテーブル等によって予め設定され、その対応関係を参照することで第1閾時間t1を算出してもよい。この場合、対応関係の参照が温熱快適度の評価に相当する。また、第2閾時間t2に関しても同様に、制御装置50は、予め設定された、個人情報と第2閾時間t2の長さとの対応関係を直接参照することで第2閾時間t2を算出してもよい。