JP7233007B2 - 睡眠誘導装置、および睡眠誘導方法 - Google Patents

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Description

本開示は、利用者を入眠に導くための睡眠誘導装置および睡眠誘導方法、ならびに利用者を覚醒に導くための覚醒誘導装置および覚醒誘導方法に関する。
従来、利用者を快適に睡眠させるための装置が提供されている。例えば、このような装置の一例として、特許文献1には、利用者の体温調節を行うベッドが開示されている。
特表2017-527428号公報
しかしながら、特許文献1に開示されたベッドは、利用者を快適に入眠させるには十分であると言えない。
そこで、本開示は、利用者をより快適に入眠させる睡眠誘導装置等を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る睡眠誘導装置は、利用者の深部体温を判定する深部体温判定部と、前記利用者の体から放熱される放熱量を制御する放熱量制御部と、前記深部体温判定部が判定した前記利用者の前記深部体温が、人の入眠時における深部体温の低下速度に対応する第1速度範囲内で低下するよう、前記放熱量制御部が制御する前記放熱量を変更するコントローラと、を備える。
また、本開示の一態様に係る睡眠誘導方法は、利用者の深部体温を判定する第1判定ステップと、前記利用者の体から放熱される放熱量を制御する第1制御ステップと、判定した前記利用者の前記深部体温が、人の入眠時における深部体温の低下速度に対応する第1速度範囲内で低下するよう、前記第1制御ステップにおいて制御する前記放熱量を変更する第1変更ステップと、を含む。
また、本開示の一態様に係る覚醒誘導装置は、利用者の深部体温を判定する深部体温判定部と、前記利用者の体から放熱される放熱量を制御する放熱量制御部と、前記深部体温判定部が判定した前記利用者の前記深部体温が、人の覚醒時における深部体温の上昇速度に対応する第2速度範囲内で上昇するよう、前記放熱量制御部が制御する前記放熱量を変更するコントローラと、を備える。
また、本開示の一態様に係る覚醒誘導方法は、利用者の深部体温を判定する第2判定ステップと、前記利用者の体から放熱される放熱量を制御する第2制御ステップと、判定した前記利用者の前記深部体温が、人の覚醒時における深部体温の上昇速度に対応する第2速度範囲内で上昇するよう、前記第2制御ステップにおいて制御する前記放熱量を変更する第2変更ステップと、を含む。
本開示によれば、利用者は、より快適に入眠できる。
図1は、実施の形態1に係る睡眠誘導装置を説明する概観図である。 図2は、実施の形態1に係る睡眠誘導装置の機能構成を示すブロック図である。 図3は、実施の形態1に係る第1速度範囲について説明する第1図である。 図4は、実施の形態1に係る第1速度範囲について説明する第2図である。 図5は、実施の形態1に係る睡眠誘導装置の動作を説明するフローチャートである。 図6Aは、実施の形態1の変形例1に係る睡眠誘導装置の概観図である。 図6Bは、実施の形態1の変形例2に係る睡眠誘導装置の概観図である。 図7は、実施の形態2に係る覚醒誘導装置の機能構成を示すブロック図である。 図8は、実施の形態2に係る第2速度範囲について説明する図である。
(本開示を得るに至った知見)
一般的に、人を入眠に導くためには、体温の調節が効果的であることが知られている。例えば、睡眠前に入浴を行う等によって体温を高めることは、人を効果的に入眠に導くことが広く知られている。睡眠前の入浴は、人の体温を急激に上昇させ、人の体温調節機能による体温を元に戻そうする放熱作用(つまり体温の低下)を誘発させる。このような放熱による体温の低下とともに、人は、眠気を感じるようになる。つまり、人を入眠に導くためには、体温を低下させることが重要となる。
一方で、人の体温を単純に低下させるのみでは、人を入眠に導くことは困難である。例えば、入眠前に氷菓子等を摂取した人は、その後の入眠が困難であることが知られている。つまり、急激な体温低下では、人を入眠に導くことはできない。言い換えると、人をより快適に入眠に導くためには、体温の低下の速度、および程度が重要であると考えられる。特に、本来、人が睡眠を行う深夜から明け方にかけて人の体温は、所定の速度範囲で低下していく。したがって、このような所定の速度範囲で人為的に体温を低下させることにより、人をより快適に入眠させることが可能となる。このとき、体温の低下に下限を設け、体温の低下の程度を規定しておくことで、自然な睡眠時に近い体温変化を再現することができ、さらに人を快適に入眠させることができる。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の包括的または具体的な例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、並びに、ステップおよびステップの順序等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺などは必ずしも一致していない。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
(実施の形態1)
[睡眠誘導装置]
はじめに、図1を用いて、実施の形態1に係る睡眠誘導装置について説明する。図1は、実施の形態1に係る睡眠誘導装置を説明する概観図である。
図1に示すように、本実施の形態における睡眠誘導装置100は、利用者が着座して利用する椅子型の装置である。睡眠誘導装置100は、椅子部11と、深部体温判定部20と、放熱量制御部30と、コントローラ13(後述する図2参照)とを備える。
椅子部11は、睡眠誘導装置100が設置された床面よりも高い位置に利用者を着座させるための座面と、利用者がもたれかかるためのバックレストとを有する。椅子部11は、座面に対してバックレストの角度を変更可能なように、回動機構を有している。したがって、利用者は、座面とバックレストとの角度を任意に調整し、任意の姿勢で睡眠誘導装置100を利用することができる。
睡眠誘導装置100は、深部体温判定部20により利用者の深部体温の判定を行う。より具体的には、深部体温判定部20は、利用者の深部体温を判定により取得する。深部体温判定部20は、一例として、椅子部11のバックレストに接続されたヘッドレストに装着され、利用者の鼓膜の温度を測定する。
ここで、睡眠誘導装置100は、深部体温を用いて利用者の体温の変動をモニタする。深部体温は、外気温に影響されにくく概日リズムに基づいて略一様な変動を示すことから、実施の形態における利用者の体温の変動をモニタするために好適である。また、鼓膜の温度は、一般に深部体温に近い値が取得できるとされ、睡眠誘導装置100により体外から直接的に測定された値を深部体温として判定して用いてもよい。
なお、深部体温判定部20は、取得した温度値を演算により補正し、補正された温度値を深部体温として判定してもよい。また、深部体温判定部20は、ZHF(Zero-Heat-Flow)法、またはDHF(Dual-Heat-Flux)法を用いて深部体温を判定してもよい。また、深部体温判定部20は、利用者の首もしくは顔の皮膚温、または舌下温を取得して補正により深部体温を判定してもよい。また、深部体温判定部20は、利用者から放射される電磁波を捕捉することで非接触により深部体温を判定してもよい。
放熱量制御部30は、利用者の体から放熱される放熱量を制御する装置である。放熱量制御部30は、一例として、椅子部11にアームレストおよびフットレストとして装着される。放熱量制御部30は、利用者の手足を覆うように変形可能な柔軟性を有する。このようにして、放熱量制御部30は、利用者の手足の形状に変形することで、利用者の手足との接触面積を広く確保することができ、より効率的に利用者の体から放熱される放熱量を制御できる。
コントローラ13は、深部体温判定部20が判定した利用者の深部体温が、第1速度範囲内で低下するよう、放熱量制御部30が制御する放熱量を変更する装置である。
以下では、図2を用いて、睡眠誘導装置100についてさらに詳細に説明する。図2は、実施の形態1に係る睡眠誘導装置の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施の形態における睡眠誘導装置100は、コントローラ13に接続された深部体温判定部20と放熱量制御部30とによって実現される。コントローラ13は、深部体温判定部20において判定された利用者の深部体温に基づき、放熱量制御部30の制御内容を変更する。
ここで、図2に示すように、放熱量制御部30は、血流センサ31と、血管拡張装置33と、温調装置35とを備える。血流センサ31は、利用者の皮下血管における血流量を測定する計測装置である。血流センサ31は、一例として、レーザ光源と受光素子とによって構成される。血流センサ31は、レーザ光の反射光における周波数シフトを利用して血液中の移動成分の速度を算出する。血液中の移動成分の速度から、単位時間あたりに通流する血流量が算出される。
血管拡張装置33は、利用者の手足等の末梢部において、利用者の皮下血管を拡張させ、当該皮下血管における血流量を増大させる装置である。血管拡張装置33は、温調装置35を用いた加熱により利用者の皮下血管の管径を拡張させる。なお、血管拡張装置33は、利用者の末梢部を真空環境に保持する真空チャンバ等によって実現されてもよい。
温調装置35は、利用者の末梢部を加熱または冷却する装置である。温調装置35は、一例として、ペルチェ素子と電源ユニットとによって実現される。温調装置35は、電源ユニットによりペルチェ素子に電圧が印加された際に発生する温度勾配を用いて、利用者の末梢部を加熱または冷却する。
放熱量制御部30は、上記構成により、利用者の深部体温を低下させる。より具体的には、放熱量制御部30は、利用者の末梢部の皮下血管を拡張させ、利用者の体から放熱が行われやすい状態にする。続いて、放熱量制御部30は、血流センサ31を用いて利用者の血流量をモニタしながら、皮下血管における血流量が規定量よりも大きい状態で、利用者の末梢部から温調装置35により吸熱する。血流量が規定量よりも大きい状態に保たれることにより、皮下血管の拡張が維持されている。末梢部から吸熱が行われることで、利用者からみれば、末梢部から放熱が行われる。ここで、温調装置35において印加される電圧の制御により、吸熱量が制御されることで、利用者の体から放熱される放熱量が制御される。
[第1速度範囲]
人の概日リズムにおける深部体温の変動では、入眠に適した深夜から明け方にかけて深部体温が低下していくことが判明している。したがって、人為的にこのような深部体温の低下を起こすことによって利用者を入眠に導くことが可能であると考えられる。つまり、本実施の形態における睡眠誘導装置100は、利用者の深部体温を低下させることで、当該利用者を入眠に導く装置である。ここで、睡眠誘導装置100は、前述したように利用者の深部体温が、第1速度範囲内で低下するよう、放熱量制御部30が制御する放熱量を変更する。以下では、第1速度範囲について図3および図4を用いて説明する。
図3は、実施の形態1に係る第1速度範囲について説明する第1図である。また、図4は、実施の形態1に係る第1速度範囲について説明する第2図である。
図3の上図は、利用者が立位から臥位に変換した際(つまり入眠姿勢をとった際)における、利用者の深部体温(CBT:Core Body Temperature)の変動を示すグラフである。また、図3の下図は、上図と同じタイミングにおいて利用者が感じる眠気のレベルを示すグラフである。図3の下図では、縦軸のプラス側に向かうほど眠気のレベルが強いことを示している。
図3に示すように、利用者には、入眠姿勢をとったのみで深部体温の低下が生じ、同時に眠気のレベルの上昇が生じている。ここでの深部体温の低下は、時刻10時から時刻11時までの間において0.05℃以上かつ0.25℃以下の範囲内で低下している。つまり、利用者が入眠する際に、0.05℃/h以上、0.25℃/h以下の範囲内における深部体温の低下が生じている。このような第1速度範囲内において深部体温の低下を人為的に生じさせることで、利用者を入眠に導くことができる。
図4の上図は、睡眠中の各時刻における利用者の睡眠の深度の変動を示すグラフである。また、図4の下図は、上図と同タイミングにおける利用者の深部体温の変動を示すグラフである。
図4の下図に示すように、睡眠中の利用者の深部体温は、最大値の37.0℃から最小値の36.2℃まで、入眠の約1時間前から5時間程度をかけて徐々に低下していくことがわかる。1時間あたりに平均すると0.16℃/hであり、第1速度範囲の0.05℃/h以上、0.25℃/h以下の範囲内の変動であることがわかる。ここで、利用者の深部体温を極端に低下させると、低体温等の可能性があるため、深部体温の調整には所定の下限を設けることが好ましい。例えば、図4の下図では、睡眠中の深部体温が最大0.8℃低下している。また、深部体温の調整における下限は、利用者に合わせて調整されてもよい。例えば、利用者の安全を考慮して、0.8℃よりも小さい0.5℃であってもよい。したがって、深部体温の調整における所定の下限は、利用者の平常時における体温(例えば覚醒時の37.0℃等)に対して-0.5℃以下、-0.8℃以上の範囲から選択されるとよい。
なお、図4の上図に示すように、利用者の睡眠は、レム睡眠と、ノンレム睡眠とを繰り返している。例えば、睡眠誘導装置100は、はじめのノンレム睡眠の深度に合わせて、深部体温の低下速度をさらに速めてもよい。これによれば、睡眠誘導装置100の利用開始から、利用者が入眠するまでに必要な深部体温の低下を速めることができ、睡眠誘導装置100の利用開始から、利用者が入眠するまでの時間差を短縮することができる。
[動作]
次に図5を用いて、本実施の形態における睡眠誘導装置100の動作について説明する。図5は、実施の形態1に係る睡眠誘導装置の動作を説明するフローチャートである。
はじめに、睡眠誘導装置100の利用者は、椅子部11に着座して利用を開始する。睡眠誘導装置100は、深部体温判定部20を用いて利用者の鼓膜の温度を測定することにより深部体温を判定する(S101)。睡眠誘導装置100は、あらかじめ、利用者ごとの平常時における体温を記憶しており、深部体温を低下させることが適切であるか否かの判定を行う。より具体的には、睡眠誘導装置100は、利用者の深部体温が、目標の深部体温に達しているか否かを判定する(S102)。本判定により、すでに深部体温が下がっている状態の利用者に対して、深部体温を低下させる動作が行われないようにすることができる。なお、目標の深部体温については後述する。
例えば、利用者の深部体温が目標の深部体温に達していると判定された場合(S102でYes)、利用者の深部体温が既に低下している状態であり、深部体温をさらに低下させると低体温等の可能性があるため、睡眠誘導装置100は、処理を終了する。利用者の深部体温が目標の深部体温に達していないと判定された場合(S102でNo)、睡眠誘導装置100は、利用者の深部体温が、所定の下限を下回っていないか否かを判定する(S103)。
例えば、利用者の深部体温が、所定の下限を下回っていると判定された場合(S103でNo)、利用者の深部体温が既に低下している状態であり、深部体温をさらに低下させると低体温等の可能性があるため、睡眠誘導装置100は、処理を終了する。なお、以上の処理の終了の際、睡眠誘導装置100は、利用者に対して、深部体温が低下しているため動作を終了したことを通知してもよい。また、以上のステップS101~ステップS103における睡眠誘導装置100の動作は、利用者の安全面への配慮のために設けられるが、利用者を入眠に導くためには必須ではない。したがって、ステップS101~ステップS103は、実施されなくてもよい。
利用者の深部体温が、所定の下限を下回っていないと判定された場合(S103でYes)、睡眠誘導装置100は、利用者の体から放熱される放熱量を制御する第1制御ステップ(S104)を実施する。より具体的には、睡眠誘導装置100は、放熱量制御部30を用いて利用者の体から放熱される放熱量を制御する。放熱量制御部30の血管拡張装置33は、はじめに、温調装置35を用いて、利用者の皮下血管が拡張される(つまり血流量が増大する)まで利用者の手足を加熱する。放熱量制御部30は、その後、温調装置35を用いて利用者の手足を冷却することで利用者の手足から放熱される放熱量を制御する。
このとき、放熱量制御部30は、血流センサ31により皮下血管が拡張された状態を維持するよう、温調装置35の温度勾配を制御する。これにより、拡張された皮下血管をより多くの血液が循環しながら、熱交換による放熱が行われる。睡眠誘導装置100は、さらに、利用者の深部体温を判定する第1判定ステップ(S105)を実施する。なお、第1判定ステップ(S105)と、第1制御ステップ(S104)とは、同時並行で実施されてもよい。第1判定ステップ(S105)では、ステップS101と同様に、深部体温判定部20を用いて利用者の深部体温を判定し取得する。
睡眠誘導装置100は、続いて、取得された利用者の深部体温が目標の深部体温に達したか否かを判定する(S106)。目標の深部体温は、睡眠誘導装置100の利用方法によってあらかじめ定まる値である。例えば、睡眠誘導装置100の利用予定時間により、目標の深部体温は、深部体温の低下速度と利用予定時間との積によって定まる。また、例えば、深部体温の低下速度と利用予定時間との積が所定の下限を下回る場合、目標の深部体温は、所定の下限と同値に定まる。なお、この他の方法によって目標の深部体温が定められてもよい。
睡眠誘導装置100により、利用者の深部体温が目標の深部体温に達したと判定された場合(S106でYes)、睡眠誘導装置100は、処理を終了する。一方、睡眠誘導装置100により、利用者の深部体温が目標の深部体温に達していないと判定された場合(S106でNo)、睡眠誘導装置100は、さらに、利用者の深部体温が所定の下限を下回っていないか否かを判定する(S107)。
利用者の深部体温が、所定の下限を下回っていると判定された場合(S107でNo)、睡眠誘導装置100は、処理を終了する。また、利用者の深部体温が、所定の下限を下回っていないと判定された場合(S107でYes)、睡眠誘導装置100は、さらに、利用者の深部体温の変化が第1速度範囲内であるか否かを判定する(S108)。利用者の深部体温の変化が第1速度範囲内であると判定された場合(S108でYes)、睡眠誘導装置100は、第1制御ステップ(S104)に戻り、目標の深部体温に達する(S106でYes)または深部体温が所定の下限を下回る(S107でNo)まで処理を繰り返す。
また、利用者の深部体温の変化が第1速度範囲内でないと判定された場合(S108でNo)、睡眠誘導装置100のコントローラ13は、放熱量制御部30の動作を変更させ、利用者の体から放熱される放熱量を変更する第1変更ステップ(S109)を実施する。より具体的には、例えば、利用者の深部体温の変化が第1速度範囲よりも遅い場合、コントローラ13は、放熱量制御部30の温度勾配をより大きくし、温調装置35による利用者の手足の冷却をより促進する。また、例えば、利用者の深部体温の変化が第1速度範囲よりも速い場合、コントローラ13は、放熱量制御部30の温度勾配をより小さくし、温調装置35による利用者の手足の冷却をより緩和する。この際、PID制御等の公知のフィードバック制御を適用してもよい。その後、睡眠誘導装置100は、第1制御ステップ(S104)に戻り、目標の深部体温に達する(S106でYes)または深部体温が所定の下限を下回る(S107でNo)まで処理を繰り返す。
一例として、上記の繰り返し処理の中で、利用者の深部体温を判定する第1判定ステップ(S105)は1分ごとに実施される。つまり、第1制御ステップ(S104)~第1変更ステップ(S109)の繰り返し処理は、1分間隔で実施される。例えば、コントローラ13は、利用者の深部体温の変化速度を、取得された深部体温と、1分前の深部体温との2点から算出し、1分おきに利用者の体から放熱される放熱量を変更する第1変更ステップ(S109)を実施する。なお、第1判定ステップ(S105)で判定される深部体温は、複数回の測定によって得られた深部体温の平均であってもよい。
なお、以上の繰り返し処理は、利用者の体格、および室内の温度状況等により様々に変更されうる。したがって、繰り返し処理は、5分間隔で実施されてもよく、10秒間隔で実施されてもよく、その他であってもよい。また、利用者の体温変化の速度をより正確に算出するため、2点の深部体温に代えて3点の深部体温を用いて速度を算出してもよく、5点の深部体温を用いて速度を算出してもよく、その他であってもよい。
以上の処理により、本実施の形態における睡眠誘導装置100は、利用者の深部体温を第1速度範囲内の変化速度において低下させることができる。利用者は、深部体温が適切な変化速度で低下されることで、自然な睡眠時に近い体温変化が再現される。したがって、利用者は、自然な睡眠時に近い深部体温の低下により入眠に導かれるため、より快適に入眠することができる。
[効果等]
以上説明したように、本実施の形態における睡眠誘導装置100は、利用者の深部体温を判定する深部体温判定部20と、利用者の体から放熱される放熱量を制御する放熱量制御部30と、深部体温判定部20が判定した利用者の深部体温が、人の入眠時における深部体温の低下速度に対応する第1速度範囲内で低下するよう、放熱量制御部30が制御する放熱量を変更するコントローラ13と、を備える。
これによれば、利用者の体からの放熱に伴う深部体温の変化が第1速度範囲内の変化となるよう、放熱量が制御される。利用者の体から放熱される放熱量が制御されることにより、利用者の深部体温が第1速度範囲内の速度で低下していく。このような深部体温の低下は、自然な睡眠時に近い現象である。したがって、利用者は、自然な睡眠時に近い体温変化により入眠に導かれる。よって、利用者は、睡眠誘導装置100を利用することにより、より快適に入眠することができる。
また、例えば、放熱量制御部30は、利用者の末梢部から吸熱を行うことにより、利用者の末梢部から放熱される放熱量を制御してもよい。
これによれば、利用者は、末梢部に放熱量制御部30を取り付けるのみで利用者の体から放熱される放熱量が制御される。したがって、空調装置等の大掛かりな装置が必要にならない。つまり、睡眠誘導装置100をコンパクトに実現することができる。
また、例えば、第1速度範囲は、0.05℃/h以上、0.25℃/h以下であってもよい。
これによれば、利用者の深部体温は、0.05℃/h以上、0.25℃/h以下の速度範囲内で低下していく。したがって、利用者は、自然な睡眠時に近い体温変化により入眠に導かれる。よって、利用者は、睡眠誘導装置100を利用することにより、より快適に入眠することができる。
また、例えば、コントローラ13は、さらに、深部体温が所定の下限を下回らないように、放熱量制御部30が制御する放熱量を変更してもよい。
これによれば、利用者の深部体温を低下させすぎることによる低体温等の可能性が回避される。よって、利用者は、より快適に入眠することができる。
また、例えば、所定の下限は、利用者の平常時における体温に対して-0.5℃以下、-0.8℃以上の範囲から選択されてもよい。
これによれば、利用者の深部体温の低下は、利用者の平常時における体温に対して-0.5℃以下、-0.8℃以上の範囲内に維持される。したがって、利用者の深部体温を低下させすぎることによる低体温等の可能性が回避される。よって、利用者は、より快適に入眠することができる。
また、例えば、さらに、利用者を着座させる椅子部11を備え、深部体温判定部20および放熱量制御部30は、椅子部に装着されてもよい。
これによれば、利用者は、着座した状態で睡眠誘導装置100を利用することができる。よって、比較的所要面積の小さい座位姿勢で睡眠誘導装置100を実現できる。つまり、睡眠誘導装置100をコンパクトに実現することができる。
また、例えば、放熱量制御部30は、利用者の末梢部において、利用者の皮下血管を拡張させ、当該皮下血管における血流量を増大させる血管拡張装置33を有してもよい。
これによれば、利用者の末梢部における皮下血管が拡張される。拡張された皮下血管においては、血流量が増大するため、多くの熱交換が行われる。つまり、利用者の体から放熱される放熱量の制御をより効率的に行うことができる。よって、睡眠誘導装置100は、利用者をより効率的に入眠に導くことができる。
また、例えば、放熱量制御部30は、さらに、皮下血管における血流量を測定する血流センサ31と、利用者の末梢部を加熱または冷却する温調装置35と、を有し、血流センサ31が測定した皮下血管における血流量が規定量より小さかった場合、温調装置35により利用者の末梢部を加熱することで、皮下血管における血流量を増大させてもよい。
これによれば、温調装置35を用いた加熱により利用者の末梢部における皮下血管が拡張される。また、皮下血管の拡張は、血流センサ31によってモニタすることができる。拡張された皮下血管においては、血流量が増大するため、多くの熱交換が行われる。つまり、利用者の体から放熱される放熱量の制御をより効率的に行うことができる。よって、睡眠誘導装置100は、利用者をより効率的に入眠に導くことができる。
また、例えば、放熱量制御部30は、皮下血管における血流量が規定量よりも大きい状態で、利用者の末梢部から吸熱することにより、利用者の末梢部から放熱される放熱量を制御してもよい。
これによれば、睡眠誘導装置100は、利用者の末梢部の皮下血管を拡張させた後、冷却により利用者の末梢部から放熱される放熱量を制御する。この際、睡眠誘導装置100は、冷却により利用者の末梢部における皮下血管が収縮しない範囲内で冷却することができる。よって、睡眠誘導装置100は、利用者をより効率的に入眠に導くことができる。
また、本実施の形態における睡眠誘導方法は、利用者の深部体温を判定する第1判定ステップ(S105)と、利用者の体から放熱される放熱量を制御する第1制御ステップ(S104)と、判定した利用者の深部体温が、人の入眠時における深部体温の低下速度に対応する第1速度範囲内で低下するよう、第1制御ステップ(S104)において制御する放熱量を変更する第1変更ステップ(S109)と、を含む。
これによれば、利用者の体からの放熱に伴う深部体温の変化が第1速度範囲内の変化となるよう、放熱量が制御される。利用者の体から放熱される放熱量が制御されることにより、利用者の深部体温が第1速度範囲内の速度で低下していく。このような深部体温の低下は、自然な睡眠時に近い現象である。したがって、利用者は、自然な睡眠時に近い体温変化により入眠に導かれる。よって、利用者は、睡眠誘導方法を利用することにより、より快適に入眠することができる。
[変形例]
以下では、さらに、上記実施の形態1の変形例について図6Aおよび図6Bを用いて説明する。なお、以下で説明される変形例では、放熱量制御部30の構成が上記実施の形態1と異なる。したがって、放熱量制御部30について中心に説明し、その他の実施の形態1と実質的に同一の箇所については、省略または簡略化して説明する。
図6Aは、実施の形態1の変形例1に係る睡眠誘導装置の概観図である。
図6Aに示すように、変形例1における睡眠誘導装置100aは、ミトン状のグローブにより実現される放熱量制御部30を備える。放熱量制御部30は、ケーブル等によりコントローラ(不図示)に接続される。睡眠誘導装置100aは、同様にコントローラに接続された深部体温判定部(不図示)が判定した利用者の深部体温に基づき、実施の形態1と同様の処理を実行する。なお、本変形例では、放熱量制御部30は、利用者の手を覆う形状であるが、足を覆うブーツにより実現される放熱量制御部30を備えてもよい。
また、図6Bは、実施の形態1の変形例2に係る睡眠誘導装置の概観図である。
図6Bに示すように、変形例2における睡眠誘導装置100bは、ベッドのマットレス上に敷かれたパッドによって実現される放熱量制御部30を備える。本変形例における放熱量制御部30は、マットレス上で利用者が仰臥位をとった際に、左右の手足に対応する位置であればどのように配置されてもよい。放熱量制御部30は、ケーブル等によりコントローラ(不図示)に接続される。睡眠誘導装置100bは、同様にコントローラに接続された深部体温判定部(不図示)が判定した利用者の深部体温に基づき、実施の形態1と同様の処理を実行する。
以上説明したように、本開示における放熱量制御部30は、椅子部11に装着されるものに限らず、利用者の手足を加熱または冷却できればどのような形で実現されてもよい。したがって、睡眠誘導装置100を利用する利用者の姿勢も椅子部11に着座した座位に限らない。しかしながら、睡眠誘導装置100の利用者は、座位においても深部体温を低下させることにより快適に入眠することができる。つまり、利用者は、睡眠をとるにあたって臥位姿勢である必要がなく、限られた設置スペースにおいても睡眠誘導装置100を利用して睡眠をとることができる。
(実施の形態2)
[覚醒誘導装置]
以下では、本開示の実施の形態2について、図7を用いて説明する。なお、本実施の形態における覚醒誘導装置200は、実施の形態1における睡眠誘導装置100に対して一部の装置構成と動作が異なる。したがって、以下では、実施の形態1と実質的に同一の箇所については、省略または簡略化して説明する。
図7は、実施の形態2に係る覚醒誘導装置の機能構成を示すブロック図である。
本実施の形態における覚醒誘導装置200は、図1に示す睡眠誘導装置100と同様に、利用者が着座して利用する椅子型の装置である。
図7に示すように、覚醒誘導装置200は、深部体温判定部60と、放熱量制御部70と、コントローラ53とを備える。
覚醒誘導装置200は、深部体温判定部60により利用者の深部体温の判定を行う。より具体的には、覚醒誘導装置200は、深部体温を用いて利用者の体温の変動をモニタする。放熱量制御部70は、利用者の体から放熱される放熱量を制御する装置である。コントローラ53は、深部体温判定部60が判定した利用者の深部体温が、第2速度範囲内で上昇するよう、放熱量制御部70が制御する放熱量を変更する装置である。
ここで、図7に示すように、放熱量制御部70は、血流センサ71と、血管収縮装置73と、温調装置75とを備える。血流センサ71は、利用者の皮下血管における血流量を測定する計測装置である。血管収縮装置73は、利用者の手足等の末梢部において、利用者の皮下血管を収縮させ、当該皮下血管における血流量を減少させる装置である。血管収縮装置73は、温調装置75を用いた冷却により利用者の皮下血管の管径を収縮させる。温調装置75は、利用者の末梢部を加熱または冷却する装置である。
放熱量制御部70は、上記構成により、利用者の深部体温を上昇させる。より具体的には、放熱量制御部70は、利用者の末梢部の皮下血管を収縮させ、利用者の体から放熱が行われにくい状態にする。続いて、放熱量制御部70は、血流センサ71を用いて利用者の血流量をモニタしながら、皮下血管における血流量が規定量よりも小さい状態で、利用者の末梢部を温調装置75により加熱する。血流量が規定量よりも小さい状態に保たれることにより、皮下血管の収縮が維持されている。末梢部から加熱が行われることで、利用者からみれば、末梢部からの放熱が抑制される。ここで、温調装置75により、加熱量が制御されることで、利用者の体から放熱される放熱量が制御される。
[第2速度範囲]
実施の形態1における深部体温の低下とは逆に、人為的に深部体温の上昇を起こすことによって利用者を入眠に導くことが可能であると考えられる。つまり、本実施の形態における覚醒誘導装置200は、利用者の深部体温を上昇させることで、当該利用者を覚醒に導く装置である。特に、覚醒誘導装置200は、覚醒状態にあり、かつ、眠気のレベルが高い利用者において、当該利用者の眠気のレベルを低下させることで覚醒状態を高める用途に用いることができる。
ここで、覚醒誘導装置200は、前述したように利用者の深部体温が、第2速度範囲内で上昇するよう、放熱量制御部70が制御する放熱量を変更する。以下では、第2速度範囲について図8を用いて説明する。
図8は、実施の形態2に係る第2速度範囲について説明する図である。
図8の上図は、利用者が臥位から立位に変換した際(つまり覚醒姿勢をとった際)における、利用者の深部体温の変動を示すグラフである。また、図8の下図は、上図と同じタイミングにおいて利用者が感じる眠気のレベルを示すグラフである。図8の下図では、縦軸のプラス側に向かうほど眠気のレベルが強いことを示している。
図8に示すように、利用者には、覚醒姿勢をとったのみで深部体温の上昇が生じ、同時に眠気のレベルの低下が生じている。ここでの深部体温の上昇は、時刻13時から時刻14時までの間において0.10℃以上かつ0.30℃以下の範囲内で上昇している。つまり、利用者が覚醒する際に、0.10℃/h以上、0.30℃/h以下の範囲内における深部体温の上昇が生じている。このような第2速度範囲内において深部体温の上昇を人為的に生じさせることで、利用者を覚醒に導くことができる。
[動作]
次に、本実施の形態における覚醒誘導装置200の動作について説明する。なお、覚醒誘導装置200の基本的な動作は、図5で説明した睡眠誘導装置100の動作を示すフローチャートと同様であるため、図示を省略する。
覚醒誘導装置200は、利用者の体から放熱される放熱量を制御する第2制御ステップを実施する。より具体的には、覚醒誘導装置200は、放熱量制御部70を用いて利用者の体から放熱される放熱量を低下させる。放熱量制御部70の血管収縮装置73は、はじめに、温調装置75を用いて、利用者の皮下血管が収縮される(つまり血流量が減少する)まで利用者の手足を冷却する。放熱量制御部70は、その後、温調装置75を用いて利用者の手足を加熱することで利用者の手足から放熱される放熱量を低下させる。
このとき、放熱量制御部70は、血流センサ71により皮下血管が収縮された状態を維持するよう、温調装置75の温度勾配を制御する。これにより、収縮された皮下血管をより少ない血液が循環しながら、熱交換による放熱が行われる。覚醒誘導装置200は、さらに、利用者の深部体温を判定する第2判定ステップを実施する。なお、第2判定ステップと、第2制御ステップとは、同時並行で実施されてもよい。第2判定ステップでは、深部体温判定部60を用いて利用者の深部体温を判定し取得する。
覚醒誘導装置200は、続いて、取得された利用者の深部体温が目標の深部体温に達したか否かを判定する。覚醒誘導装置200により、利用者の深部体温が目標の深部体温に達したと判定された場合、覚醒誘導装置200は、処理を終了する。一方、覚醒誘導装置200により、利用者の深部体温が目標の深部体温に達していないと判定された場合、覚醒誘導装置200は、さらに、利用者の深部体温の変化が第2速度範囲内であるか否かを判定する。利用者の深部体温の変化が第2速度範囲内であると判定された場合、覚醒誘導装置200は、第2制御ステップに戻り、目標の深部体温に達するまで処理を繰り返す。
また、利用者の深部体温の変化が第2速度範囲内でないと判定された場合、覚醒誘導装置200のコントローラ53は、放熱量制御部70の動作を変更させ、利用者の体から放熱される放熱量を変更する第2変更ステップを実施する。より具体的には、例えば、利用者の深部体温の変化が第2速度範囲よりも遅い場合、コントローラ13は、放熱量制御部70の温度勾配をより大きくし、温調装置75による利用者の手足の加熱をより促進する。また、例えば、利用者の深部体温の変化が第2速度範囲よりも速い場合、コントローラ53は、放熱量制御部70の温度勾配をより小さくし、温調装置75による利用者の手足の加熱をより緩和する。その後、覚醒誘導装置200は、第2制御ステップに戻り、目標の深部体温に達するまで処理を繰り返す。
これにより、本実施の形態における覚醒誘導装置200は、利用者の深部体温を第2速度範囲内の変化速度において上昇させることができる。利用者は、深部体温が適切な変化速度で上昇されることで、自然な覚醒時に近い体温変化が再現される。したがって、利用者は、自然な覚醒時に近い深部体温の上昇により覚醒に導かれるため、より快適に覚醒することができる。
[効果等]
以上説明したように、本実施の形態における覚醒誘導装置200は、利用者の深部体温を判定する深部体温判定部60と、利用者の体から放熱される放熱量を制御する放熱量制御部70と、深部体温判定部60が判定した利用者の深部体温が、人の覚醒時における深部体温の上昇速度に対応する第2速度範囲内で上昇するよう、放熱量制御部70が制御する放熱量を変更するコントローラ53と、を備える。
これによれば、利用者の体からの放熱に伴う深部体温の変化が第2速度範囲内の変化となるよう、放熱量が制御される。利用者の体から放熱される放熱量が制御されることにより、利用者の深部体温が第2速度範囲内の速度で上昇していく。このような深部体温の上昇は、自然な覚醒時に近い現象である。したがって、利用者は、自然な覚醒時に近い体温変化により覚醒に導かれる。よって、利用者は、覚醒誘導装置200を利用することにより、より快適に覚醒することができる。
また、例えば、第2速度範囲は、0.10℃/h以上、0.30℃/h以下であってもよい。
これによれば、利用者の深部体温は、0.10℃/h以上、0.30℃/h以下の速度範囲内で上昇していく。したがって、利用者は、自然な覚醒時に近い体温変化により覚醒に導かれる。よって、利用者は、覚醒誘導装置200を利用することにより、より快適に覚醒することができる。
また、例えば、放熱量制御部70は、利用者の末梢部において、利用者の皮下血管を収縮させ、当該皮下血管における血流量を減少させる血管収縮装置73を有してもよい。
これによれば、利用者の末梢部における皮下血管が収縮される。収縮された皮下血管においては、血流量が減少するため、熱交換が少なくなる。つまり、利用者の体から放熱される放熱量を減少させることができる。よって、覚醒誘導装置200は、利用者をより効率的に覚醒に導くことができる。
また、例えば、放熱量制御部70は、さらに、皮下血管における血流量を測定する血流センサ71と、利用者の末梢部を加熱または冷却する温調装置75と、を有し、血流センサ71が測定した皮下血管における血流量が規定量より大きかった場合、温調装置75により利用者の末梢部を冷却することで、皮下血管における血流量を減少させてもよい。
これによれば、温調装置75を用いた冷却により利用者の末梢部における皮下血管が収縮される。また、皮下血管の収縮は、血流センサ71によってモニタすることができる。収縮された皮下血管においては、血流量が減少するため、熱交換が少なくなる。つまり、利用者の体から放熱される放熱量を減少させることができる。よって、覚醒誘導装置200は、利用者をより効率的に覚醒に導くことができる。
また、本実施の形態における覚醒誘導方法は、利用者の深部体温を判定する第2判定ステップと、利用者の体から放熱される放熱量を制御する第2制御ステップと、判定した利用者の深部体温が、人の覚醒時における深部体温の上昇速度に対応する第2速度範囲内で上昇するよう、第2制御ステップにおいて制御する放熱量を変更する第2変更ステップと、を含む
これによれば、利用者の体からの放熱に伴う深部体温の変化が第2速度範囲内の変化となるよう、放熱量が制御される。利用者の体から放熱される放熱量が制御されることにより、利用者の深部体温が第2速度範囲内の速度で上昇していく。このような深部体温の上昇は、自然な覚醒時に近い現象である。したがって、利用者は、自然な覚醒時に近い体温変化により覚醒に導かれる。よって、利用者は、覚醒誘導方法を利用することにより、より快適に覚醒することができる。
また、例えば、覚醒誘導方法では、覚醒状態にあり、かつ、眠気のレベルが高い利用者において、当該利用者の眠気のレベルを低下させることで覚醒状態を高めてもよい。
これによれば、覚醒状態にあるものの、眠気のレベルが高い利用者において、利用者の眠気のレベルが低下され、覚醒状態が高められる。よって、利用者は、覚醒誘導方法を利用することにより、より快適に覚醒することができる。
(その他の実施の形態)
以上、本開示に係る睡眠誘導装置100および睡眠誘導方法、ならびに覚醒誘導装置200および覚醒誘導方法について、上記実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
例えば、深部体温判定部により判定された深部体温が、室温と同等である、または人の標準的な体温を大きく外れる値等であった場合に、利用者に対して深部体温の測定異常を通知してもよい。また、例えば、利用者の頭部の複数個所にあらかじめ設置された電極により取得される脳波等に基づき、利用者が入眠状態にあると判定された場合、上記の測定異常の通知を行わなくてもよい。さらに、この場合、睡眠誘導装置の動作を停止してもよい。また、利用者の入眠状態を判定し、図5の入眠誘導の動作が始まる前に、既に利用者が入眠していた場合、睡眠誘導装置は、入眠誘導動作を終了してもよい。さらに、睡眠誘導装置は、脳波等に基づき、利用者の睡眠深度を判定し、所定の睡眠深度に達したら、入眠誘導動作を終了してもよい。さらに、睡眠誘導装置は、利用者の睡眠深度に応じて、利用者の体から放熱される放熱量を変更してもよい。利用者の入眠状態の判定は、脳波以外に基づいてもよく、カメラ等の撮像装置を用いた表情判定および体動検知、ならびに光学センサ等を用いた脈拍計測等の公知のセンシングにより実現されてもよい。
上記実施の形態1において説明した睡眠誘導装置、および、上記実施の形態2において説明した覚醒誘導装置は、構成要素のすべてを共用可能である。したがって、例えば、睡眠誘導装置と覚醒誘導装置とは一体化されて実現されてもよい。
また、例えば、実施の形態において説明したコントローラは、利用者によって所有されるスマートホンまたはタブレット端末等の携帯端末と、当該携帯端末上で実行されるアプリケーション等によって実現されてもよい。
また、例えば、放熱量制御部は、スポット空調装置等によって実現されてもよい。この場合、利用者の手足等の末梢部に向けて局所的に冷風または温風を衝突させ、末梢部の皮下血管を拡張または収縮させ、深部体温の低下または上昇を生じさせてもよい。
また、放熱量制御部は、利用者の手足等の末梢部における放熱量を制御するものとしたが、他の部位でもよい。例えば、放熱量制御部は、椅子の座部に設置されたペルチェ素子により、利用者の臀部および大腿部からの放熱を制御するものであってもよい。
また、例えば、本開示は、睡眠誘導装置および覚醒誘導装置として実現できるだけでなく、睡眠誘導装置および覚醒誘導装置の各構成要素が行う処理をステップとして含むプログラム、及び、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現することもできる。プログラムは、記録媒体に予め記録されていてもよく、あるいは、インターネットなどを含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
つまり、上述した包括的又は具体的な態様は、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能な記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
本開示の睡眠誘導装置等は、利用者の自宅、オフィス、医療機関等の建物内、自動車等の移動体内等に設置され、利用者が快適な睡眠をとる目的等に利用される。
11 椅子部
13、53 コントローラ
20、60 深部体温判定部
30、70 放熱量制御部
31、71 血流センサ
33、 血管拡張装置
35、75 温調装置
73 血管収縮装置
100、100a、100b 睡眠誘導装置
200 覚醒誘導装置

Claims (5)

  1. 利用者の深部体温を判定する深部体温判定部と、
    前記利用者の体から放熱される放熱量を制御する放熱量制御部と、
    前記深部体温判定部が判定した前記利用者の前記深部体温が、0.05℃/h以上、0.25℃/h以下の速度範囲内で低下するよう、前記放熱量制御部が制御する前記放熱量を変更するコントローラと、を備え、
    前記放熱量制御部は、
    前記利用者の末梢部において、前記利用者の皮下血管を拡張させ、当該皮下血管における血流量を増大させる血管拡張装置と、
    前記皮下血管における血流量を測定する血流センサと、
    前記利用者の末梢部を加熱または冷却する温調装置と、を有し、
    前記血流センサが測定した前記皮下血管における血流量が規定量より小さかった場合、前記温調装置により前記利用者の末梢部を加熱することで、前記皮下血管における血流量を増大させ、
    前記皮下血管における血流量が前記規定量よりも大きい状態で、前記利用者の末梢部から吸熱することにより、前記利用者の末梢部から放熱される前記放熱量を制御する
    睡眠誘導装置。
  2. 前記コントローラは、さらに、前記深部体温が所定の下限を下回らないように、前記放熱量制御部が制御する前記放熱量を変更する
    請求項1に記載の睡眠誘導装置。
  3. 前記所定の下限は、前記利用者の平常時における体温に対して-0.5℃以下、-0.8℃以上の範囲から選択される
    請求項2に記載の睡眠誘導装置。
  4. さらに、前記利用者を着座させる椅子部を備え、
    前記深部体温判定部および前記放熱量制御部は、前記椅子部に装着される
    請求項1~3のいずれか一項に記載の睡眠誘導装置。
  5. 利用者の深部体温を、深部体温判定部が判定する第1判定ステップと、
    前記利用者の体から放熱される放熱量を、放熱量制御部が制御する第1制御ステップと、
    判定した前記利用者の前記深部体温が、0.05℃/h以上、0.25℃/h以下の速度範囲内で低下するよう、前記第1制御ステップにおいて制御する前記放熱量をコントローラが変更する第1変更ステップと、を含み、
    前記第1制御ステップでは、
    前記利用者の末梢部において、前記利用者の皮下血管を拡張させ、当該皮下血管における血流量を増大させるステップと、
    前記皮下血管における血流量を測定するステップと、
    前記利用者の末梢部を加熱または冷却するステップと、を実施し、
    前記血流センサが測定した前記皮下血管における血流量が規定量より小さかった場合、前記温調装置により前記利用者の末梢部を加熱することで、前記皮下血管における血流量を増大させ、
    前記皮下血管における血流量が前記規定量よりも大きい状態で、前記利用者の末梢部から吸熱することにより、前記利用者の末梢部から放熱される前記放熱量を制御する
    睡眠誘導方法。
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