JP2017110174A - 洗浄殺菌剤組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】医療器具の洗浄作業初期工程において、医療器具に付着しているタンパク性汚れを除去すると同時に、感染性微生物の量を低減し、作業者の健康リスクを軽減し、環境負荷を低くすること【解決手段】実用液中で(a)タンパク質分解酵素を0.01重量%以上、(b)両性界面活性剤及びノニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を0.1重量%以上(c)ジェミニ型殺菌剤及びビグアニジン系殺菌剤からなる群から選択される少なくとも1種の殺菌剤を0.01重量%以上を含有する液体の洗浄殺菌剤組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、液体の洗浄殺菌剤組成物、好ましくは医療器具用の洗浄殺菌剤組成物に関するものである。より詳しくは、医療器具に付着した汚れ、特に血液などのタンパク質汚れの固化を抑制しながら、高い洗浄効果と殺菌効果を同時に発揮できる医療器具用洗浄殺菌剤組成物に関する。
医療器具の再生処理は、まず洗浄剤で血液などの汚れを除去した後、消毒や滅菌工程に進む。洗浄の目的は、無機物や有機物、特に微生物などの汚染物を医療器具から除去することであり、これらを可能な限り除去することでその後の消毒や滅菌の確実性を高めることができる。洗浄剤としては、主に汚れの除去効果を最大限に発揮するアルカリ洗浄剤や酵素洗浄剤が用いられている。一方で、洗浄と消毒を同時に実施可能となれば、再生処理の第一段階で、医療器具に付着している細菌やウイルスの数の減少(バイオバーデンを減少させる)、作業者の感染リスクの低減、医療器具間の交差汚染の予防、及び自然環境への汚染水の排出防止という利点を享受することができ、このため、近年、洗浄のみならず殺菌効果も謳った酵素洗浄剤が一部販売されている。
しかしながら、洗浄効果と殺菌効果の両方を持つとされる酵素洗浄剤を評価すると、有機物存在下で高い殺菌効果を有していても、血液などのタンパク質汚れに対して変性及び固着を引き起こすことが確認された。非特許文献1でも、塩化ベンザルコニウムやグルコン酸クロルヘキシジンなどの殺菌効果を有する成分(消毒薬)は、血液などのタンパク質汚れを固着させてしまい、その後の洗浄剤を用いた浸漬洗浄でも汚れが落ちず、洗浄効果が発揮されないことが示されている。
なお、医療分野以外では殺菌効果と洗浄効果が同時に期待されるものとして、環境用や衣類用に用いられる「酸素系漂白剤」及び「塩素系漂白剤」が挙げられる。
また、その他の先行技術として、特許文献1には、(a)酸性物質、(b)塩基性物質、(c)タンパク質分解酵素、並びに(d)ポリリジン、クロロヘキシジン及び第4級アンモニウム塩型殺菌剤から選ばれる1種類以上を、(a)+(b)が0.5モル/kg以上になるように配合してなる医療用殺菌洗浄剤組成物が記載されている。
さらに、特許文献2には、(A)1,4−ビス(3,3’−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロマイドを0.01質量%以上、(B)エチレンジアミン四酢酸塩を0.000625質量%以上含有する殺カリシウイルス剤組成物が記載されている。
特開2006−193684号公報 特開2010−215598号公報 特開2008−214268号公報
伏見了、花村亮、中田精三 他.一次消毒された汚染物の洗浄障害について.医科器械学,2003,73(6),281―289.
本発明者らが、酸素系漂白剤、塩素系漂白剤及び特許文献1記載の殺菌洗浄剤組成物について、医療器具用洗浄剤の洗浄力評価で頻用される洗浄インジケーター(血液汚れ用)に対する洗浄効果及びヨーロッパ標準法EN13727とEN13624にて血液汚れ存在下での殺菌効果を評価したところ、酸素系漂白剤(実用液濃度1重量%)では洗浄効果がなかったものの、塩素系漂白剤(有効塩素濃度200ppm)及び特許文献1記載の殺菌洗浄剤組成物では洗浄効果が確認された。しかし、酸素系漂白剤(実用液濃度1重量%)、塩素系漂白剤(有効塩素濃度200ppm)及び特許文献1記載の殺菌洗浄剤組成物はいずれも血液存在下での殺菌効果がないことが明らかとなった。さらに、塩素系漂白剤の有効塩素濃度を200ppm以上として殺菌効果を高めた場合、金属を主な素材とする医療器具についてはさびや腐食が生じる恐れがある。
一方、特許文献2において、ヨーロッパ標準法EN1040で99.999%以上と高い殺菌効果が得られる殺カリシウイルス剤組成物について洗浄効果を評価したところ、血液汚れに対する洗浄効果は全く見られなかった。そのため、血液などのタンパク質汚れが医療器具に残っている場合、当該特許文献2記載の殺カリシウイルス剤組成物によれば、それが医療器具に固着・変性してしまい、不十分な洗浄、消毒及び滅菌に起因して分医療器具由来の感染が生じる恐れがある。
本発明の課題は、被験対象物に付着した汚れ、特に医療器具に付着した血液などのタンパク質汚れの固化を抑制しながら、高い洗浄効果と殺菌効果を同時に発揮できる洗浄殺菌剤組成物を提供することである。さらに本発明の課題は、1種類以上の酵素を含有する洗浄殺菌剤組成物であって、酵素安定性に優れた洗浄殺菌剤組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねていたところ、下記の組成を有する液体組成物が被験対象物に付着したタンパク質汚れの固化及び変性を有意に抑制しながら、洗浄効果と殺菌効果を同時に発揮できることを見出した:
(a)タンパク質分解酵素:0.01重量%以上
(b)両性界面活性剤またはノニオン界面活性剤:0.1重量%以上
(c)ジェミニ型殺菌剤またはビグアニジン系殺菌剤:0.01重量%以上
(d)必要に応じて金属イオン封鎖剤:0.05重量%以上。
なお、上記濃度は実際に使用する実用液中の濃度である。
本発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施形態を有するものである。
(I)液状洗浄殺菌剤組成物(実用液)
(I−1)実用液において、
(a)タンパク質分解酵素を0.01重量%以上、
(b)両性界面活性剤及びノニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を0.1重量%以上
(c)ジェミニ型殺菌剤及びビグアニジン系殺菌剤からなる群から選択される少なくとも1種の殺菌剤を0.01重量%以上
を含有することを特徴とする液体形態を有する洗浄殺菌剤組成物。
(I−2)上記(b)界面活性剤が両性界面活性剤0.1重量%以上、
(c)殺菌剤がジェミニ型殺菌剤0.01重量%以上
である(I−1)に記載する洗浄殺菌剤組成物。
(I−3)上記(b)界面活性剤がノニオン界面活性剤0.3重量%以上、
(c)殺菌剤がビグアニジン系殺菌剤0.02重量%以上
である(I−1)に記載する洗浄殺菌剤組成物。
(I−4)さらに(d)金属イオン封鎖剤を0.05重量%以上含有する(I−1)または(I−2)に記載する洗浄殺菌剤組成物。
(I−5)上記金属イオン封鎖剤がニトリロ三酢酸である(I−4)に記載する洗浄殺菌剤組成物。
(I−6)pHが7〜10である(I−1)〜(I−5)のいずれかに記載する洗浄殺菌剤組成物。
(I−7)さらに(e)酵素安定剤及び(f)アルカリ剤を含有する(I−1)〜(I−6)のいずれかに記載する洗浄殺菌剤組成物。
(I−8)さらにタンパク質分解酵素以外の酵素、pH調整剤、防錆剤、消泡剤、着色剤、及び香料よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する(I−1)〜(I−7)のいずれかに記載する洗浄殺菌剤組成物。
(I−9)タンパク質に起因する汚れが付着した被験対象物を洗浄殺菌するための液体組成物である(I−1)〜(I−8)のいずれかに記載する洗浄殺菌剤組成物。
(I−10)上記被験対象物が医療器具または臨床検査器具である(I−9)に記載する洗浄殺菌剤組成物。
(II)液状洗浄殺菌剤組成物(濃縮液)
(II−1)使用時に水で50〜200倍に希釈することで(I−1)〜(I−10)のいずれかに記載する液体洗浄殺菌剤組成物になるように調製して使用される濃縮タイプの液体洗浄殺菌剤組成物。
(III)液状洗浄殺菌剤組成物による洗浄殺菌方法
(III−1)下記の工程を有する被験対象物の洗浄殺菌方法:
(1)被験対象物を(I−1)〜(I−10)のいずれかに記載する液体洗浄殺菌剤組成物または(II−1)に記載する濃縮タイプの液状洗浄殺菌剤組成物の50〜200倍希釈液に浸漬する工程、
(2)被験対象物を液体洗浄殺菌剤組成物から取り出し、水で洗浄する工程。
(III−2)(1)浸漬工程を超音波照射のもとで行う(III−1)に記載する洗浄殺菌方法。
(III−3)さらに被験対象物をブラッシングする工程を有する(III−1)または(III−2)に記載する洗浄殺菌方法。
(III−4)(1)浸漬工程の浸漬温度条件が20〜70℃である(III−1)〜(III−3)のいずれかに記載する洗浄殺菌方法。
(III−5)被験対象物がタンパク質に起因する汚れが付着した被験対象物である(III−1)〜(III−4)のいずれかに記載する洗浄殺菌方法。
(III−6)上記被験対象物が医療器具または臨床検査器具である(III−5に記載する洗浄殺菌方法。
本発明の洗浄殺菌剤組成物によれば、微生物が生残している恐れがある例えば実験器具、並びに食品工業備品及び器具(例えば食品工場、厨房または食堂等で使用される調理器具、作業台、食器、コンベアベルト、床、及び壁など)、または微生物のほか、血液などのタンパク質汚れが付着している例えば医療器具や臨床検査器具などの被験対象物を浸漬または超音波洗浄機で洗浄する操作によって、被験対象物に対する汚れの固着を有意に抑制しながら除去洗浄することが可能となる。また、本発明の洗浄殺菌剤組成物によれば、血液存在下での殺菌力評価(ヨーロッパ標準法の不潔条件下)において短時間で殺菌効果を発揮することが可能となる。このため、本発明の洗浄殺菌剤組成物によれば、初期工程の洗浄作業で滅菌前菌数(バイオバーデン)を減らして次の工程である消毒や滅菌の確実性を高めることが出来ると同時に、作業者の感染リスクの低減、医療器具や臨床検査器具間の交差汚染の予防、または/及び自然環境への汚染水の排出を防止することが出来る。
(I)液状洗浄殺菌剤組成物(実用液)
本発明で使用される用語「実用液」は、被験対象物、好ましくは医療器具や臨床検査器具等の洗浄殺菌に実際に使用される濃度を有する溶液を示す。本発明の濃縮タイプの液体洗浄殺菌剤組成物の場合、これを水で50〜200倍に希釈して実際に使用する濃度に希釈した液を「実用液」という。
以下、当該実用液を構成する各成分について説明する。
<(a)タンパク質分解酵素>(以下「(a)成分」とも称する)
(a)成分は、洗浄用に使用される酵素であれば限定されず、中性からアルカリ側pH、具体的にはpH6〜12の範囲にタンパク質分解活性の至適を持つものであれば良い。タンパク質分解酵素は一種単独で用いても良いし、また2種以上を任意に組み合わせて用いても良い。制限されないものの、より具体的には、例えば、ノボザイムズ(Novozymes)社製のプロテアーゼであるアルカラーゼ(Alcalase)、エスペラーゼ(Esperase)、サビナーゼ(Savibnase)、サビナーゼ エビティ(Savibnase Evity)、エバラーゼ(Everlase)、リカナーゼ(Liquanase)、リカナーゼ エビティ(Liquanase Evity)、及びブレーズ エビティ(Blaze Evity)など;ジェネンコア(Genencor)社製のピュラフェクト、ピュラフェクトOX、プロペラーゼ、及びプロテックスシリーズ(プロテックス7L、プロテックス14L、プロテックス6L、プロテックス89L、プロテックスOXG、プロテックス40L)、アルカリプロテアーゼGL、及びプロモッド223LPなどが例示される。
上記(a)成分の配合量は、実用液中で0.01重量%以上、好ましくは0.01〜0.2重量%、より好ましくは0.02〜0.2重量%である。酵素としての洗浄力を得るためには、0.01重量%以上の割合で配合することが好ましく、上限は特に制限されるものではない。但し、酵素を実用液中で0.2重量%よりも多く配合しても配合量の増加に応じた洗浄効果の向上が少ない。このため、経済的観点から0.2重量%程度を上限とすることができる。
<(b)界面活性剤>(以下「(b)成分」とも称する)
(b)成分としては、両性界面活性剤及びノニオン界面活性剤を挙げることができる。両性界面活性剤及びノニオン界面活性剤はそれぞれを単独で使用してもよいし、また両者を組み合わせて使用することもできる。また両性界面活性剤同士を2種以上任意に組み合わせて使用することも、またノニオン界面活性剤同士を2種以上任意に組み合わせて使用することもできる。好ましくは両性界面活性剤またはノニオン界面活性剤のいずれか一方の使用であり、より好ましくは血液汚れ存在下での真菌に対する殺菌効果に優れていることから両性界面活性剤の使用である。
両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤、及びアミンオキシド型両性界面活性剤を挙げることができる。アミノ酸型両性界面活性剤としては、例えばラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸カリウム、及びラウロイルメチル-β-アラニン、ラウリルアミノプロピオン酸塩、及びラウリルアミノジ酢酸塩等;ベタイン型両性界面活性剤としては、例えばラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、オクタデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、及びラウリン酸アミドプロピルベタイン等;アミンオキシド型両性界面活性剤としては、例えばラウリルジメチルアミンN‐オキシド、デシルジメチルアミンオキシド、及びオレイルジメチルアミンN‐オキシド等を例示することができる。好ましくはラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルアミノジ酢酸塩、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド及びデシルジメチルアミンオキシドなどから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
(b)成分として両性界面活性剤を用いる場合の当該配合量としては、実用液中で0.1重量%以上、好ましくは0.1〜0.4重量%、より好ましくは0.2〜0.4重量%である。後述する(c)殺菌剤による汚れの固着を防いで洗浄力を得るためには0.1重量%以上の割合で配合することが好ましく、上限は特に制限されない。但し、0.4重量%を超えて過剰に配合しても配合量に応じた洗浄効果の向上は少ないため、経済的観点から、好ましくは0.4重量%程度を上限とすることができる。
ノニオン界面活性剤としては、制限はされないものの、例えば高級アルコールエチレンオキサイド系、アルキルフェノールエチレンオキサイド系、脂肪酸エチレンオキサイド系、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド系、高級アルキルアミンエチレンオキサイド系、脂肪酸アミドエチレンオキサイド系、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド系などのポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤;グリセリン及びペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステルなどの多価アルコール型非イオン界面活性剤;アルキルポリグルコシド、バイオサーファクタントのソホロリピッド、ラムノリピッド、サーファクチン、マンノシルエリスリトールリピッド、アルスロファクチン、及び脂肪酸アルカノールアミドが挙げられる。
(b)成分としてノニオン界面活性剤を用いる場合の配合量としては、実用液中で0.3重量%以上、好ましくは0.3〜0.6重量%、より好ましくは0.4〜0.6重量%である。後述する(c)殺菌剤による汚れの固着を防いで洗浄力を得るためには0.3重量%以上の割合で配合することが好ましく、上限は特に制限されない。但し、0.6重量%を超えて過剰に配合しても配合量に応じた洗浄効果の向上は少ないため、経済的観点から、好ましくは0.6重量%程度を上限とすることができる。
<(c)殺菌剤>(以下「(c)成分」とも称する)
(c)成分としては、ジェミニ型殺菌剤及びビグアニジン系殺菌剤を挙げることができる。ジェミニ型殺菌剤及びビグアニジン系殺菌剤はそれぞれを単独で使用してもよいし、また両者を組み合わせて使用することもできる。またジェミニ型殺菌剤同士を2種以上任意に組み合わせて使用することも、またビグアニジン系殺菌剤同士を2種以上任意に組み合わせて使用することもできる。好ましくはジェミニ型殺菌剤またはビグアニジン系殺菌剤のいずれか一方の使用であり、より好ましくは血液汚れ存在下での真菌に対する殺菌効果に優れていることからジェミニ型殺菌剤の使用である。
ジェミニ型殺菌剤は、対応する1鎖1親水基型(モノメリック型)界面活性剤をスペーサーと呼ばれる連結基でつないだ2量体構造を有し、且つ殺菌活性を有する化合物である。この限りにおいて、ヘテロジェミニ型殺菌剤であってもよい。ジェミニ型殺菌剤としては、制限されないものの、例えば1,1’−(1,10−デカンジイル)ビス(4−オクチルイミノ−1,4−ジヒドロピリジン)(慣用名:オクテニジン)、及びその二塩酸塩、並びに1,4−ビス(3,3’−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロマイド(製品名:ハイジェニア)(タマ化学工業(株)製))(特許文献3参照)などが挙げられる。好ましくはハイジェニアである。ハイジェニアは、各種ウイルスの不活性化や防除に有効な抗ウイルス剤であるが、本発明においては他成分の洗浄効果を邪魔することなく殺菌効果を発揮することができる。なお、制限はされないものの、(c)成分としてジェミニ型殺菌剤を用いる場合、前述する(b)成分として両性界面活性剤を使用することが好ましく、そうすることで血液汚れ存在下で真菌を含むあらゆる細菌に対して優れた殺菌効果を発揮することができる。
(c)成分としてジェミニ型殺菌剤を用いる場合、その配合量は、実用液中で0.01重量%以上、好ましくは0.01〜0.1重量%、より好ましくは0.02〜0.05重量%である。その配合量が0.01重量%を大きく下回ると99.999%以上の殺菌効果が得られなくなる傾向がある。また、殺菌効果の点からは、上限は特に制限されないものの、ジェミニ型殺菌剤を過剰に配合しすぎると汚れが固着する恐れがある。このため、上記するように、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下である。
ビグアニジン系殺菌剤としては、例えばポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)及びその塩(例えばポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩)、クロルヘキシジン及びその塩(例えば、グルコン酸クロルヘキシジン等)などが挙げられる。好ましくはポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)である。
(c)成分としてビグアニジン系殺菌剤を用いる場合、その配合量は、実用液中で0.02重量%以上、好ましくは0.02〜0.1重量%、より好ましくは0.02重量%以上0.05重量%未満である。0.02重量%を大きく下回ると99.999%以上の殺菌効果が得られなくなる傾向がある。また、殺菌効果の点からは、上限は特に制限されないものの、ビグアニジン系殺菌剤を過剰に配合しすぎると汚れが固着する恐れがある。このため、上記するように、上限として好ましくは0.05重量%未満を挙げることができる。本範囲内であれば、他成分による洗浄効果を邪魔することなく殺菌効果を発揮することができる。
<(d)金属イオン封鎖剤>(以下「(d)成分」とも称する)
(d)成分は、任意成分であるが、上記(b)成分として両性界面活性剤を用い、上記(c)成分としてジェミニ型殺菌剤を用いるときは、アルカリ性条件下での緩衝作用及び殺菌効果の補助の目的で、同時に(d)成分を配合することが好ましい。
金属イオン封鎖剤としては、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミノ五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、1,3‐プロパンジアミン四酢酸(1,3‐PDTA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、β‐アラニン二酢酸(ADA)、セリン二酢酸(SDA)、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)及びそれらの金属塩を挙げることができる。これらはいずれも液状洗浄殺菌剤組成物(実用液)の良好な洗浄力及び殺菌剤に貢献するものの、保存安定性(酵素安定性を含む)の観点から、好ましくはニトリロ三酢酸及びその金属塩であり、より好ましくはニトリロ三酢酸である。
なお、金属塩としては、制限されないものの、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム等のアルカリ土類金属との塩;マグネシウムとの塩;アンモニウムとの塩を例示することができる。
この場合、(d)成分の配合量としては、実用液中で0.05重量%以上を挙げることができる。上記目的からは配合量の上限は特に制限されないものの、実用液の50〜200倍の濃さを有する濃縮タイプの液体洗浄殺菌剤組成物における(a)成分の安定性を考慮すると、その上限は好ましくは0.4重量%、より好ましくは0.2重量%を挙げることができる。この観点から(d)成分の配合量として、好ましくは0.05〜0.4重量%、より好ましくは0.05〜0.2重量%である。
<(e)酵素安定化剤>(以下「(e)成分」とも称する)
本発明の洗浄殺菌剤組成物は、上記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分(または上記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分)に加えて、酵素安定性の観点から(e)酵素安定化剤を含有することが望ましい。(e)成分の例としては、炭素数1〜4のアルコール、炭素数2〜6の多価アルコール、炭素数3〜8のグリコールエーテル、塩化カルシウムや乳酸カルシウムなどの水溶性カルシウム塩、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、4ホウ酸ナトリウム、4ホウ酸カリウム、アセトアミド、グリシン、及びマルトデキストリンなどが挙げられる。これらの中でも酵素安定性の観点からエチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、モノエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、グリセリン、及びソルビトールが好ましい。これらは単独で用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて用いても良い。
本発明の組成物が(e)成分を含有する場合、当該(e)成分の配合量は、実用液中で0.01〜0.3重量%であることが好ましい。より好ましくは0.03〜0.3重量%であり、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%である。配合安定性及び酵素安定性の観点から(e)成分の配合割合の上限は制限されないものの、0.3重量%を超えて配合しても配合量に応じた配合安定性の向上、及び組成物中の酵素安定性の向上は少ない。このため、経済性の観点から0.3重量%程度を上限とすることが好ましい。なお、配合安定性とは、組成物の安定性を維持する効果を意味し、例えば組成物中の成分の分離や沈殿物(析出物)の発生の有無からその効果を判断することができる。
<(f)アルカリ剤>(以下、「(f)成分」とも称する)
本発明の洗浄殺菌剤組成物は、上記(e)成分を含有する場合、同時に(f)アルカリ剤を含有することが望ましい。(f)成分として、炭酸塩及び重炭酸塩等の無機塩、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、モノイソプロパノールアミン(MIPA)、及びトリイソプロパノールアミン(TIPA)等のアルカノールアミンが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて用いても良い。
本発明の組成物が(f)成分を含有する場合、当該(f)成分の配合量は、実用液中で0.02重量%以上、好ましくは0.02〜0.2重量%、より好ましくは0.02〜0.15重量%である。(f)成分を0.02重量%以上の割合で配合すると、洗浄力に必要なアルカリ度を得ることができる。特にプロテアーゼとしてアルカリプロテアーゼを用いる場合は、その洗浄力を発揮するために必要なアルカリ性を保つことができる。なお、アルカリ剤としてアルカノールアミンを用いる場合、その配合量が0.2重量%を超えると不快臭が強くなる。そのため、アルカリ剤としてアルカノールアミンを用いる場合、実用液中の配合量は0.2重量%以下であることが好ましい。
<(g)pH調整剤>(以下「(g)成分」と称する)
本発明の洗浄殺菌剤組成物は、(g)成分を用いて、実用液のpHが7〜10となるように調整することが好ましい。好ましくはpH8〜10である。
(g)成分としては、酸性のpH調整剤を挙げることができる。具体的には、塩酸、硫酸及び硝酸などの無機酸;またはクエン酸、乳酸及びギ酸などの有機酸を例示することができる。
<その他の配合可能な成分>
さらに本発明には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意にタンパク質分解酵素以外の酵素、色素(着色剤)、防錆剤、消泡剤、及び/または香料などを配合することが出来る。これらは当業界において洗浄剤や殺菌剤に配合して使用されるものであればよく、慣用に従って選択使用することができる。
なお、タンパク質分解酵素以外の酵素としては、脂質分解酵素(リパーゼ)、澱粉分解酵素(アミラーゼ)、及びセルロース分解酵素(セルラーゼ)を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を任意に選択して、(a)成分であるタンパク質分解酵素と組み合わせて使用することができる。制限されないものの、好適には、脂質分解酵素、澱粉分解酵素、及びセルロース分解酵素の3種の酵素を、(a)成分であるタンパク質分解酵素と組み合わせて使用する。
また、防錆剤としてはベンゾトリアゾールやケイ酸塩などが挙げられる。
本発明の洗浄殺菌剤組成物は、上記各成分を混合配合して、上記に示した配合量(濃度)よりも50〜200倍高い濃度になるように予め調製しておいたもの(濃縮タイプ)を、使用時に水で50〜200倍に希釈してpH7〜10の洗浄液(実用液)として使用することが好ましい。
その使用方法、つまり本発明の洗浄殺菌剤組成物を用いた被験対象物の洗浄殺菌方法としては、まず本発明の液状洗浄殺菌剤組成物(実用液)を浸漬液として、これに被験対象物を浸漬し(浸漬工程)、次いで所定時間後に当該浸漬液から被験対象物を取り出し、水で洗浄する(水洗工程)方法を挙げることができる。
浸漬液の温度は、通常20℃〜70℃の範囲に調整することができる。但し、(a)タンパク質分解酵素による洗浄効果を効果的に得るためには好ましくは30〜60℃、より好ましくは35〜55℃に調整することが望ましい。浸漬時間は、制限されないものの、通常10〜60分間を例示することができる。なお、浸漬中に超音波照射をしてもよい。また、必要に応じて、浸漬中または水洗中に被験対象物をブラッシングしてもよい。
本発明の洗浄殺菌剤組成物を用いて洗浄殺菌する被験対象物としては、制限されないものの、微生物によって汚染された実験器具や食品工業備品・器具、または微生物による汚染に加えて生体試料や血液などのタンパク質汚れが付着した医療器具や臨床検査器具を例示することができる。好ましくは血液などのタンパク質汚れが付着した医療器具である。上記する本発明の洗浄殺菌剤組成物を用いて上記工程に従って被験対象物を処理することで洗浄と殺菌とを同時に実施することができる。特に生体試料や血液などのタンパク質汚れが付着した医療器具については、本発明の洗浄殺菌剤組成物を用いた上記洗浄殺菌方法により適切に医療器具を再生することができる。このため、洗浄殺菌剤組成物は医療器具用洗浄殺菌剤組成物、特に生体試料や血液などのタンパク質汚れが付着した医療器具用の洗浄殺菌剤組成物として好適に使用することができる。
なお、本発明の洗浄殺菌剤組成物(実用液)の洗浄効果は、後述する実験例に記載するように、ステンレス板にモデル血液汚れ(ヒト血漿タンパク[ヘモグロビン、アルブミン、トロンビン、フィビリン]と同組成になるように調整した精製牛タンパク[ISO15883のスウェーデン法])を付着して乾燥させた「洗浄評価インジケーターTOSI(登録商標)」(PEREG製)を用いて、評価することができる。具体的には本発明の洗浄殺菌剤組成物(実用液)(40℃)に上記洗浄評価インジケーターを所定時間浸漬し、次いでこれを水で洗浄してから「パワークイック残留タンパク検出液」(サラヤ株式会社)で染色し、洗浄後のインジケーターに残留した汚れ(血液タンパク質)の除去性を目視により評価することで実施することができる。当該インジケーターのモデル血液汚れが30分の浸漬で完全に除去された場合を「洗浄力良好」と、また10分間の浸漬で完全に除去された場合を「洗浄力が非常良好」と評価することができる。
また、本発明の洗浄殺菌剤組成物(実用液)の殺菌効果は、後述する実験例に記載するように、欧州標準化委員会(CEN)が定める欧州規格に基づいたin vitro試験(ヨーロッパ標準法)により細菌または/及び真菌に対する殺菌作用を測定することで評価することができる。例えば、細菌(例えば緑膿菌(グラム陰性菌)、黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌))に対する殺菌作用はヨーロッパ標準法のEN13727の不潔条件と同じ方法で評価することができ、試験前後の菌数の対数減少値が5Log10以上であれば細菌に対して殺菌活性を有すると判定することができる。また真菌(例えば酵母)に対する殺菌作用はヨーロッパ標準法のEN13624の不潔条件と同じ方法で評価することができ、試験前後の菌数の対数減少値が4Log10以上であれば真菌に対して殺菌活性を有すると判定することができる。本発明の洗浄殺菌剤組成物において、試験を行った細菌または/及び真菌のすべてに対する殺菌効果が、ヨーロッパ標準法に記載される判定基準において○または△の評価である場合(○及び△の評価基準は実験例参照)を、当該洗浄殺菌剤組成物(実用液)について「殺菌効果あり」とするが、より好ましい洗浄殺菌剤組成物(実用液)は、試験を行ったすべての細菌または/及び真菌に対して良好な殺菌活性(ヨーロッパ標準法に記載される判定基準において○の評価)を発揮する液体組成物であり、当該洗浄殺菌剤組成物(実用液)(またはその濃縮タイプ)をより好ましい洗浄殺菌剤組成物と位置づけることができる。
(II)液体洗浄殺菌剤組成物(濃縮タイプ)
本発明は、上記実用液である医療器具用洗浄殺菌剤組成物よりも50〜200倍濃い濃度を有する濃縮タイプの液体洗浄殺菌剤組成物であってもよい。当該濃縮タイプの液体洗浄殺菌剤組成物は、上記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分(または(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分)を下記の割合で含有することができる。
(a)タンパク質分解酵素
0.5重量%以上、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜20重量%
(b)界面活性剤
(b−1)両性界面活性剤の場合
10重量%以上、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜40重量%
(b−2)ノニオン界面活性剤の場合
30重量%以上、好ましくは30〜60重量%、より好ましくは40〜60重量%
(c)殺菌剤
(c−1)ジェミニ型殺菌剤
1重量%以上、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは2〜10重量%
(c−2)ビグアニジン系殺菌剤
2重量%以上、好ましくは2〜10重量%、より好ましくは2〜5重量%。
(b)成分として両性界面活性剤、及び(c)殺菌剤としてジェミニ型殺菌剤を配合する場合、さらに(d)成分として下記(d)金属イオン封鎖剤、好ましくは保存安定性の観点からニトリロ三酢酸またはその金属塩、より好ましくはニトリロ三酢酸を配合することが好ましい。
(d)金属イオン封鎖剤、好ましくはニトリロ三酢酸
1重量%以上、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは2.5〜20重量%。
また当該濃縮タイプの洗浄殺菌剤組成物は、上記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分(または(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分)に加えて、(e)成分及び(f)成分を下記の割合で含有することができる。
(e)酵素安定化剤
1重量%以上、好ましくは3〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%
(f)アルカリ剤
2重量%以上、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは2〜15重量%。
さらに濃縮タイプの液体洗浄殺菌剤組成物も、前述する実用液と同様に(g)pH調整剤を用いてpHが7〜10、好ましくはpH8〜9.5となるように調整されていることが好ましい。また濃縮タイプの液体洗浄殺菌剤組成物は、前述する実用液と同様に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意にタンパク質分解酵素以外の酵素(脂質分解酵素(リパーゼ)、澱粉分解酵素(アミラーゼ)、または/及びセルロース分解酵素(セルラーゼ))、色素(着色剤)、防錆剤、消泡剤、及び/または香料などを配合することが出来る。
本発明の濃縮タイプの液体洗浄殺菌剤組成物は、上記各成分を混合配合して調製しておいたものを、使用時(被験対象物の洗浄殺菌時)に水で50〜200倍に希釈してpH7〜10の洗浄液(実用液)として使用される。被験対象物は前述した通りであり、好ましくは医療器具及び臨床検査器具であり、特に生体試料や血液などのタンパク質汚れが付着した医療器具である。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。但し、組成物においては、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更を加えることが可能であるため、本発明はこれら具体例によって限定されるものではない。
実験例1
pHは、pHメーターを用いて測定した。各種液体洗浄殺菌剤組成物を実用液濃度に調製したものについてそれぞれ測定した。
(1)洗浄力評価
本発明の液体洗浄殺菌剤組成物の洗浄力評価に、医療器具用洗浄剤の洗浄力評価で頻用されている、ステンレス板にモデル血液汚れを付着して乾燥させた「洗浄インジケーターTOSI(登録商標)」(PEREG製)を用いた。インジケーターに付属しているプラスチックカバーを外して、40℃の液体洗浄殺菌剤組成物に10分間浸漬し、次いで水で洗浄してから「パワークイック残留タンパク検出液」(サラヤ株式会社製)で染色し、洗浄後のインジケーターに残留した汚れ(血液タンパク質)の除去性を下記の基準に基づいて目視観察することで評価した。
<洗浄力評価基準>
○:完全に除去
△:除去なし(初期(浸漬洗浄未処理)のインジケーターに付着した汚れの量から変わらない)
×:固着(汚れの広がり)
(2)殺菌力評価
ヨーロッパ標準法のEN13727の不潔条件と同じ方法で実施し、以下の評価基準で判定した。
<試験条件>
(有機物)作用時濃度0.3重量%ヒツジ赤血球+0.3重量%BSA
(温度/接触時間)40℃/10分間
(使用希釈水と作用時試作品濃度)CaCO換算で作用時に300ppmとなる人工硬水を用いて、作用時に表1記載の濃度となるように実用液を調製した。
(作用菌株)
Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)ATCC15442
Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)ATCC6538
<殺菌力評価基準>
初期菌数及び生存菌数から対数減少値を算出した。判定基準はヨーロッパ標準法に記載される基準から下記の通り判断した。
○:5LogReduction以上(99.999%以上)
△:3LogReduction以上、5LogReduction未満
×:3LogReduction未満(99.9%未満)
Figure 2017110174
表1に示す実施例1〜3の結果から分かるように、本発明の洗浄殺菌剤組成物は血液汚れに対して優れた洗浄力効果と殺菌効果を併せ持つ洗浄殺菌剤組成物である。そのため、血液などのタンパク質汚れが付着した医療器具や臨床検査器具であっても、本発明の洗浄殺菌剤組成物を用いて当該医療器具や臨床検査器具を洗浄殺菌処理することで、初期の洗浄作業で医療器具等に付着している細菌やウイルスの数を減らすことが出来ると同時に、作業者の感染リスクの低減、医療器具等の間における交差汚染の予防、自然環境への汚染水の排出防止が実現可能となる。
実験例2
pHはpHメーターを用いて測定した。表3及び表5については濃縮タイプの洗浄殺菌剤組成物のpHを原液pH、これを水で100倍希釈した実用液のpHを希釈pHとしてそれぞれ測定した。
(1)洗浄力評価
実験例1と同様に、ステンレス板にモデル血液汚れを付着して乾燥させた「洗浄インジケーターTOSI(登録商標)」(PEREG製)を用いた。インジケーターに付属しているプラスチックカバーを外して、表2〜5に記載する処方に従って調製し、温度を40℃に調整した液体洗浄殺菌剤組成物(実施例4〜26、比較例5〜10)に、10分間及び30分間浸漬し、次いで水で洗浄してから「パワークイック残留タンパク検出液」(サラヤ株式会社製)で染色し、洗浄後のインジケーターに残留した汚れ(血液タンパク質)の除去性を下記の基準に基づいて目視観察することで評価した。なお、表2〜5のうち、表3及び表5に示す処方は、100倍濃縮タイプの液体洗浄殺菌剤組成物の処方である。従って、表3及び表5に記載する液体洗浄殺菌剤組成物は、試験に際して水で100倍に希釈して使用した。
<洗浄力評価基準>
〔表2〕
AとA´、aとa´、BとB´、bとb´、CとC´、cとc´でそれぞれ比較し、後者に比べて10分間浸漬による洗浄効果が向上していれば+、10分間及び30分間浸漬共に洗浄効果が後者よりも向上していれば++とした。
〔表3〜5〕
○:完全に除去
△:除去なし(初期(浸漬洗浄未処理)のインジケーターに付着した汚れの量から変わらない)
×:固着(汚れの広がり)
(2)殺菌力評価
ヨーロッパ標準法のEN13727及びEN13624の不潔条件と同じ方法で実施し、以下の評価基準で判定した。
<試験条件>
(有機物)作用時濃度0.3重量%ヒツジ赤血球+0.3重量%BSA
(温度/接触時間)40℃/10分間
(使用希釈水と作用時試作品濃度)CaCO換算で作用時に300ppmとなる人工硬水を用いて、作用時に1%となるように各種液体洗浄殺菌剤組成物を希釈した。
(作用菌株)
Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)ATCC15442
Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)ATCC6538
Candida albicans(酵母)ATCC10231
<殺菌力評価基準>
初期菌数及び生存菌数から対数減少値を算出した。判定基準はヨーロッパ標準法に記載される基準から下記の通り判断した。
(細菌)○:5LogReduction以上(99.999%以上)
△:3LogReduction以上、5LogReduction未満
×:3LogReduction未満(99.9%未満)
(真菌)○:4LogReduction以上(99.99%以上)
△:2LogReduction以上、4LogReduction未満
×:2LogReduction未満(99%未満)
(3)酵素安定性
40℃で14日間保存後、カゼインを基質に用いたFolin−Lowry法にて測定して酵素活性を算出し、保存前の酵素活性に対する相対値を残存活性とした。残存活性が80%以上を○、80%未満を×とした。
結果を表2〜5に合わせて示す。
Figure 2017110174
Figure 2017110174
Figure 2017110174
Figure 2017110174
Figure 2017110174
表2に示すように、界面活性剤としてノニオン界面活性剤より両性界面活性剤を用いるほうが血液汚れに対する洗浄効果が高いことがわかる。この実施例の結果から、殺菌剤の中でも比較的洗浄効果に対する妨害が少なかった殺菌剤1(ハイジェニア)を用いた場合の実験結果を表3及び表4に示す。
表3〜5に記載する結果から分かるように、本発明の液体洗浄殺菌剤組成物は、血液汚れに対して優れた洗浄力効果と殺菌効果を併せ持ち、かつ酵素安定性も有する洗浄殺菌剤組成物である。そのため、血液などのタンパク質汚れが付着した医療器具であっても、本発明の洗浄殺菌剤組成物を用いて当該医療器具を洗浄殺菌処理することで、初期の洗浄作業で医療器具に付着している細菌やウイルスの数を減らすことが出来ると同時に、作業者の感染リスクの低減、医療器具間の交差汚染の予防、自然環境への汚染水の排出防止が実現可能となる。
タンパク質分解酵素、界面活性剤、及び殺菌剤を配合することで、使用後の血液などのタンパク質汚れが付着した医療器具の洗浄作業をより安全に行なうことができる。

Claims (10)

  1. 実用液において、
    (a)タンパク質分解酵素を0.01重量%以上、
    (b)両性界面活性剤及びノニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を0.1重量%以上
    (c)ジェミニ型殺菌剤及びビグアニジン系殺菌剤からなる群から選択される少なくとも1種の殺菌剤を0.01重量%以上
    を含有することを特徴とする液体形態を有する洗浄殺菌剤組成物。
  2. 上記(b)界面活性剤が両性界面活性剤0.1重量%以上、
    (c)殺菌剤がジェミニ型殺菌剤0.01重量%以上
    である、請求項1に記載する洗浄殺菌剤組成物。
  3. 上記(b)界面活性剤がノニオン界面活性剤0.3重量%以上、
    (c)殺菌剤がビグアニジン系殺菌剤0.02重量%以上
    である、請求項1に記載する洗浄殺菌剤組成物。
  4. さらに(d)金属イオン封鎖剤を0.05重量%以上含有する請求項1または2に記載する洗浄殺菌剤組成物。
  5. pHが7〜10である請求項1〜4のいずれかに記載する洗浄殺菌剤組成物。
  6. さらに(e)酵素安定剤及び(f)アルカリ剤を含有する請求項1〜5のいずれかに記載する洗浄殺菌剤組成物。
  7. タンパク質に起因する汚れが付着した被験対象物を洗浄殺菌するための液体組成物である、請求項1〜6のいずれかに記載する洗浄殺菌剤組成物。
  8. 上記被験対象物が医療器具または臨床検査器具である請求項7に記載する洗浄殺菌剤組成物。
  9. 使用時に水で50〜200倍に希釈することで、請求項1〜8のいずれかに記載する洗浄殺菌剤組成物になるように調製して使用される濃縮タイプの液状洗浄殺菌剤組成物。
  10. 下記の工程を有する被験対象物の洗浄殺菌方法:
    (1)被験対象物を請求項1〜8のいずれかに記載する液状洗浄殺菌剤組成物または請求項9に記載する濃縮タイプの液状洗浄殺菌剤組成物の50〜200倍希釈液に浸漬する工程、
    (2)被験対象物を液状洗浄殺菌剤組成物から取り出し、水で洗浄する工程。
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