JP2019026626A - 細菌芽胞の殺菌方法 - Google Patents
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Abstract
Description
かかる消毒剤としては、消毒用エタノール、イソプロパノール等のアルコール製剤;次亜塩素酸ナトリウム等の塩素製剤、ヨードチンキ、複方ヨードグリセリン、ポビドンヨード等のヨード製剤といったハロゲン化合物;オキシドール、過酢酸等の過酸化物製剤;塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム等の陽イオン界面活性剤;アルキルジアミノエチルグリシン等の両性界面活性剤;グルコン酸クロルヘキシジン等のクロルヘキシジン塩;フェノール、クレゾール石鹸等のフェノール類;グルタラール、フタラール等のアルデヒド類などが一般的に用いられている。
また、1重量%を超える高濃度の第4級アンモニウム塩を含む組成物を用いて、30℃〜80℃で表面を処理することにより、枯草菌およびスポロゲネス菌の芽胞を減少させ得ること(特許文献3)や、可食性の酸を添加した、ダイマー型ビス第四級アンモニウム塩の溶液を加温または超音波照射しながら接触させる細菌芽胞の殺菌方法(特許文献4)も開示されている。
また、特許文献3に記載された組成物は、高濃度での使用を前提にしているため、実用上は環境への負荷や経済的な面での課題が残り、特許文献4に記載された殺菌方法では、加食性の酸を高濃度に配合するためpHが強酸性となること、超音波処理を加えることなどの点で、実施が困難な場合が多い方法である。
特許文献5に開示した殺菌剤組成物は、作用が温和な殺菌剤を用いながら、細菌芽胞に対して有効な組成物であるが、アルカリ剤を含有し、強いアルカリ性を示すことから、たとえば、毛、絹等の動物性繊維を用いた製品の殺菌、洗浄には不向きである。
[1]式(1)で示されるポリアルキレンビグアナイド化合物およびその塩からなる群より選択される1種または2種以上を含有する組成物を用いて、対象物を加温もしくは加熱処理することを含む、対象物の殺菌方法。
[2]ポリアルキレンビグアナイド化合物およびその塩からなる群より選択される1種または2種以上が、ポリヘキサメチレンビグアナイドおよびその塩からなる群より選択される1種または2種以上である、上記[1]に記載の殺菌方法。
[3]組成物のpHが6以上である、上記[1]または[2]に記載の殺菌方法。
[4]組成物のpHが8以上11以下である、上記[1]または[2]に記載の殺菌方法。
[5]組成物が、さらに非イオン界面活性剤の1種または2種以上を含有する、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の殺菌方法。
[6]加温もしくは加熱処理の温度が40℃以上である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の殺菌方法。
[7]加温もしくは加熱処理の温度が50℃以上85℃以下である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の殺菌方法。
[8]さらに対象物を洗浄することを含む、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の殺菌方法。
[9]対象物が繊維製品である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の殺菌方法。
[10]細菌芽胞の殺菌方法である、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の殺菌方法。
また、本発明の殺菌方法の対象については制限が少なく、安全性および取扱い性に優れるため、幅広い対象物の消毒、殺菌に有用である。
組成物のpHが12であれば、後述するように、40℃10分程度の処理時間で、細菌芽胞に対して有効な殺菌効果が認められるが、人体等への安全性や対象物への影響を考慮すると、組成物のpHは、8以上11以下であることがより好ましい。
なお、上記pH調整剤としては、各社より提供されている市販の製品を使用することができる。
本発明の殺菌方法に用いる組成物が、後述するペースト状等の高粘性の形態で提供される場合や、ゲル状等の半固形状の形態で提供される場合には、たとえば25℃にて、pHメーターの電極を直接試料に刺すまたは押し当てて測定される。また、本発明の殺菌方法に用いる組成物が、粉末状、顆粒状等の固形状の形態で提供される場合には、たとえば該組成物を一般的な使用濃度で精製水に懸濁し、25℃で測定される。
液状担体としては、水;エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ブチレングリコール等の多価アルコールなどの有機溶媒を用いることができるが、対象物に対する腐食性等の取扱い性および経済性等を考慮すると、水または水と前記有機溶媒との混合物を用いることが好ましい。
「組成物を用いて」とは、本発明の殺菌方法に用いる組成物を、本発明の方法の対象物に接触させることをいい、具体的には 、上記本発明の殺菌方法に用いる組成物が液状等の流動性を有する組成物である場合、対象物を該組成物に浸漬し、場合により撹拌したり、対象物に該組成物を塗布すること、および散布すること等が挙げられる。
また、上記本発明の殺菌方法に用いる組成物が半固形状または固形状である場合、対象物に混合すること、および塗布すること等が挙げられる。
また、加温もしくは加熱した上記組成物に対象物を浸漬し、または加温もしくは加熱した上記組成物を対象物に塗布、散布、混合等して接触させてもよい。
従って、特に細菌芽胞に汚染される可能性の高い衣類やリネン類等、繊維製品の殺菌に適する。
芽胞形成細菌としては、バチルス アンスラシス(Bacillus anthracis)(炭疽菌)、バチルス セレウス(Bacillus cereus)(セレウス菌)、バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis)(枯草菌)、バチルス コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルス シュードマイコイデス(Bacillus pseudomycoides)等のバチルス(Bacillus)属に属する細菌、アリサイクロバチルス アシドテレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)、アリサイクロバチルス アシドフィルス(Alicyclobacillus acidiphilus)、アリサイクロバチルス ハーバリウス(Alicyclobacillus herbarius)等のアリサイクロバチルス(Alicyclobacillus)属に属する細菌、ブレビバチルス コシネンシス(Brevibacillus choshinensis)等のブレビバチルス(Brevibacillus)属に属する細菌、ゲオバチルス サーモデニトリフィカンス(Geobacillus thermodenitrificans)、ゲオバチルス カルドキシロシリティカス(Geobacillus caldoxylosilyticus)、ゲオバチルス ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)等のゲオバチルス(Geobacillus)属に属する細菌、パエニバチルス ボルテックス(Paenibacillus vortex)、パエニバチルス フクイネンシス(Paenibacillus fukuinensis)等のパエニバチルス(Paenibacillus)属に属する細菌、スポロラクトバチルス イヌリナス(Sporolactobacillus inulinus)、スポロラクトバチルス ラエビス(Sporolactobacillus laevis)等のスポロラクトバチルス(Sporolactobacillus)属に属する細菌、クロストリジウム テタニ(Clostridium tetani)(破傷風菌)、クロストリジウム ボツリヌム(Clostridium botulinum)(ボツリヌス菌)、クロストリジウム パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)(ウェルシュ菌)、クロストリジウム ノビィ(Clostridium novyi)、クロストリジウム セプティクム(Clostridium septicum)(ガス壊疽菌群)、クロストリジウム ディフィシレ(Clostridium difficile)、クロストリジウム サーモセラム (Clostridium thermocellum )、クロストリジウム ブチリカム (Clostridium butyricum )、クロストリジウム アセトブチリクム (Clostridium acetobutylicum )等のクロストリジウム(Clostridium)属に属する細菌、デスルフォトマキュラム ニグリフィカンス(Desulfotomaculum nigrificans)、デスルフォトマキュラム サーモアセトキシダンス(Desulfotomaculum thermoacetoxidans)、デスルフォトマキュラム サーモベンゾイカム subsp. サーモベンゾイカム(Desulfotomaculum thermobenzoicum subsp. thermobenzoicum)、デスルフォトマキュラム サーモベンゾイカム subsp. サーモシントロフィカム(Desulfotomaculum thermobenzoicum subsp. thermosyntrophicum)、デスルフォトマキュラム サーモシステルナム(Desulfotomaculum thermocisternum)、デスルフォトマキュラム サーモサポボランス(Desulfotomaculum thermosapovorans)、デスルフォトマキュラム サーモサブテラネウム(Desulfotomaculum thermosubterraneum)等のデスルフォトマキュラム(Desulfotomaculum)属に属する細菌、ムーレラ サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)、ムーレラ グリセリネ(Moorella glycerine)、ムーレラ ムルデリ(Moorella mulderi)、ムーレラ サーモオートトロフィカ(Moorella thermoautotrophica)等のムーレラ(Moorella)属に属する細菌、サーモアネロバクター マスラニイ(Thermoanaerobacter mathranii)、サーモアネロバクター アセトエチリカス(Thermoanaerobacter acetoethylicus)、サーモアネロバクター ブロキイ(Thermoanaerobacter brockii)、サーモアネロバクター セルロリティカス(Thermoanaerobacter cellulolyticus)、サーモアネロバクター エタノリカス(Thermoanaerobacter ethanolicus)、サーモアネロバクター イタリカス(Thermoanaerobacter italicus)、サーモアネロバクター キブイ(Thermoanaerobacter kivui)、サーモアネロバクター シデロフィラス(Thermoanaerobacter siderophilus)、サーモアネロバクター スルフロフィラス(Thermoanaerobacter sulfurophilus)、サーモアネロバクター サーモコプリエ(Thermoanaerobacter thermocopriae)、サーモアネロバクター サーモヒドロスルフリカス(Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricus)、サーモアネロバクター ウィエジェリイ(Thermoanaerobacter wiegelii)等のサーモアネロバクター(Thermoanaerobacter)属に属する細菌等が挙げられる。
本発明の殺菌方法は、これらの栄養型細胞のみならず、芽胞に対しても良好な殺菌効果を示す。
対象物の洗浄は、本発明の殺菌方法に用いる組成物にさらに洗浄剤を含有させることにより、殺菌処理とともに行ってもよく、本発明の殺菌方法による殺菌処理を行った後に、洗浄剤により洗浄を行ってもよい。
洗浄剤としては、各種界面活性剤を用いることができる。
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等を用いることがより好ましい。
従って、特に細菌芽胞に汚染される可能性の高い衣類やリネン類等の繊維製品の殺菌、洗浄に適する。
表1に示す各成分を順次イオン交換水に添加溶解し、表1に示すpHに調整して、実施例1〜3および比較例1〜6の各殺菌処理用組成物を調製した。
(1)供試芽胞
供試菌として、バチルス セレウス(Bacillus cereus) ATCC14579を用い、下記の通り調製した芽胞を使用した。
細菌芽胞は、供試菌を液体ブイヨン培地で24時間培養後、1/2濃度の標準寒天培地に塗抹して、偏光顕微鏡(「ECLIPSE E600」、株式会社ニコン製)下にて、観察される細菌の90%以上で芽胞形成が確認されるまで、2〜3週間培養した。次いで培地上に冷滅菌水を加えコンラージ棒で培地表面のコロニーを回収し、数回冷滅菌水で遠心分離して洗浄した後、80℃で10分間加熱処理し氷水で急冷し、さらに冷滅菌水で数回遠心分離して洗浄し、芽胞数が107〜108 Colony Forming Unit(CFU)/mLとなるように調製し、冷凍保存した。
供試芽胞を106〜107CFU/mLとなるように滅菌水で希釈し、芽胞懸濁液とした。各芽胞懸濁液1mLと、表1に示す各殺菌処理用組成物9mLとを混合した後、表1に示す温度にて表1に示す時間それぞれ処理した。なお、表1中、殺菌処理用組成物中の各成分についての数値は、芽胞懸濁液と混合した後の終濃度(%)を示す。
次いで、芽胞懸濁液および殺菌処理用組成物の混合液の0.5mLを、レシチン・ポリソルベート80加ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト(SCDLP)ブロス4.5mLに加え、順次10倍段階希釈を行った。この段階希釈液各0.1mLをSCDLP寒天培地平板に塗抹し、35℃で、48時間培養した。
培養後、培地上に発育したコロニー数から、各殺菌処理後の菌数を算出し、接種した菌数との差(Δlog10CFU/mL)により、各殺菌剤組成物の芽胞に対する殺菌効果を評価した。
本評価においては、Δlog10 CFU/mLが3.0以上である場合に、細菌芽胞に対する殺菌効果があると評価した。
実施例1〜3および比較例1〜6の殺菌処理用組成物を用いて加温もしくは加熱処理を行った場合の、供試芽胞に対する殺菌効果の評価結果を表1に併せて示した。
一方、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩を含有しない組成物を用いた場合は、2.0〜12.0のいずれのpHで加熱処理(80℃で10分または60分)を行っても、細菌芽胞に対する殺菌効果は認められなかった。
表2に示す各成分を順次イオン交換水に添加溶解し、表2に示すpHに調整して、実施例4〜10および比較例7〜12の各殺菌処理用組成物を調製した。実施例4および9の各組成物は、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩の他に洗浄剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)を含有する。
(1)供試芽胞
供試芽胞は、上記試験例1の場合と同様に調製した。
5gのポリソルベート80および炭酸ナトリウム5gを水に溶解し、希釈して1000 mLとしたものを湿潤剤として用いた。この湿潤剤を2.5mLと、炭酸ナトリウム2.5gとを水に溶解して、5Lの洗浄液を調製した。
綿布(かなきん3号)を4〜5Lの上記洗浄液に入れ、1時間煮沸した。微量の湿潤剤を取り除くため、水を替えてさらに約5分間煮沸した。さらに、5Lの冷水で約5分間撹拌した後、自然乾燥させた。
乾燥後の綿布を2cm×2cmの大きさに裁断し、オートクレーブにて121℃で20分間滅菌処理した後、乾燥器で乾燥させて試験布とした。
供試芽胞を107CFU/mLとなるように滅菌水に懸濁し、供試芽胞懸濁液とした。
プラスチックシャーレに試験布5枚を重ならないように置き、試験布1枚につき、供試芽胞懸濁液0.02mLを接種してプラスチックシャーレの蓋を閉め、35℃の恒温槽内で1時間静置し、試験布を乾燥させた。
次いで、上記試験布5枚を、80℃に保持した実施例および比較例の各殺菌処理用組成物20mL中に入れ、ゆっくりと(300rpmで)撹拌しながら、80℃で10分間処理した。
上記処理の後、各試験液から試験布を取り出して、それぞれフタ付容器に入れたレシチン・ポリソルベート80加ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト(SCDLP)ブロス20mL中に入れ、1分間撹拌し、SCDLPブロスにより、前記撹拌液の10倍段階希釈を行った。この段階希釈液各0.1mLをSCDLP寒天培地平板に塗抹し、35℃で、48時間培養した。
培養後、培地上に発育したコロニー数を測定し、各殺菌処理用組成物にて処理した試験布に存在する生菌数を算出した。
なお、対照として、0.05(w/v)%のポリソルベート80水溶液を用い、同様に処理した。
実施例4〜10および比較例7〜12の各殺菌処理用組成物で処理した場合の生菌数(対数値)と、対照で処理した場合の生菌数(対数値)との差(Δlog10CFU/試験布)を求めた。本試験においては、「洗濯用合成洗剤及び石けんの除菌活性試験方法(洗剤・石けん公正取引協議会)」による評価方法に準拠し、Δlog10CFU/試験布が2.0以上である場合に、細菌芽胞に対する殺菌効果があると評価した。
実施例4〜10および比較例7〜12の殺菌処理用組成物を用いて加温もしくは加熱処理を行った場合の供試芽胞に対する殺菌効果の評価結果を、表2に併せて示した。
特に、非イオン界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテルを洗浄剤として含有する実施例4の殺菌処理用組成物を用いた場合、pHが6.0で、80℃で10分間という加熱処理によっても、細菌芽胞に対し十分な殺菌効果が得られた。
一方、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩も洗浄剤も含有しない組成物を用いた場合は、80℃で10分間の加熱処理を行っても、細菌芽胞に対する殺菌効果は認められなかった。
Claims (10)
- 式(1)で示されるポリアルキレンビグアナイド化合物およびその塩からなる群より選択される1種または2種以上を含有する組成物を用いて、対象物を加温もしくは加熱処理することを含む、対象物の殺菌方法。
- ポリアルキレンビグアナイド化合物およびその塩からなる群より選択される1種または2種以上が、ポリヘキサメチレンビグアナイドおよびその塩からなる群より選択される1種または2種以上である、請求項1に記載の殺菌方法。
- 組成物のpHが6以上である、請求項1または2に記載の殺菌方法。
- 組成物のpHが8以上11以下である、請求項1または2に記載の殺菌方法。
- 組成物が、さらに非イオン界面活性剤の1種または2種以上を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の殺菌方法。
- 加温もしくは加熱処理の温度が40℃以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の殺菌方法。
- 加温もしくは加熱処理の温度が50℃以上85℃以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の殺菌方法。
- さらに対象物を洗浄することを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の殺菌方法。
- 対象物が繊維製品である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の殺菌方法。
- 細菌芽胞の殺菌方法である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の殺菌方法。
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